説明

移動体測位装置

【課題】衛星毎に異なる誤差を適切に反映させた重み付け測位演算を行うこと。
【解決手段】本発明による移動体用測位装置は、移動体の停止中に取得される前記位相の観測値を用いて、移動体の停止中における衛星と移動体の間の擬似距離を、衛星毎に計測する擬似距離計測手段と、移動体の停止中における複数の時点で前記擬似距離計測手段により計測された擬似距離に基づいて、該計測された擬似距離の誤差を表わす指標値を、衛星毎に算出する誤差指標値算出手段と、前記誤差指標値算出手段により算出された衛星毎の誤差指標値に基づいて、衛星毎の重み付け係数を決定する重み係数決定手段と、移動体の移動中に取得される前記位相の観測値を用いて、前記重み係数決定手段により決定された衛星毎の重み付け係数を用いた重み付け測位演算により、移動中の移動体の位置を測位する測位演算手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置等を測位する移動体測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、連立位置方程式から求めた地心直交デカルト座標系でのユーザ位置および時計オフセットと、測定衛星から得た軌道パラメータによって算出した測定時刻での衛星位置のデカルト座標値と、前回の測定時刻または今回の測定時刻よりΔTだけ以前の時刻での衛星位置のデカルト座標値との差分を今回と前回の測定時間間隔TIまたはΔTで割って得た衛星速度と、擬似レンジレイトの測定値とを使って組立てた他方の連立速度方程式によって地心直交デカルト座標系でのユーザ速度及び時間オフセットレイトを算出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2963912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、GPS測位では、一般的に、複数の衛星からの信号の受信結果に基づいて移動体位置の測位を行っている。この際、衛星から移動体までの電波の伝播経路は衛星毎に異なるので、各衛星からの信号に基づき計測される測定値(例えば擬似距離)には、衛星毎に異なる誤差が含まれうる。このため、測位を行う際に衛星毎に重み付けが行われる場合がある。従来では、かかる重み付けに用いられる重み付け係数は、前回測位演算時の残差や、各衛星の仰角の差異、各衛星からの信号の受信強度の差異等の因子によって決定されることが多い。しかしながら、このようにして決定される重み付け係数は、衛星毎に異なる誤差を適切に反映できない場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、衛星毎に異なる誤差を適切に反映させた重み付け測位演算を行うことが可能な移動体測位装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、衛星電波に乗せられた擬似雑音コードの位相を移動体で観測して、該移動体の位置を測位する移動体用測位装置において、
移動体の停止中に取得される前記位相の観測値を用いて、移動体の停止中における衛星と移動体の間の擬似距離を、衛星毎に計測する擬似距離計測手段と、
移動体の停止中における複数の時点で前記擬似距離計測手段により計測された擬似距離に基づいて、該計測された擬似距離の誤差を表わす指標値を、衛星毎に算出する誤差指標値算出手段と、
前記誤差指標値算出手段により算出された衛星毎の誤差指標値に基づいて、衛星毎の重み付け係数を決定する重み係数決定手段と、
移動体の移動中に取得される前記位相の観測値を用いて、前記重み係数決定手段により決定された衛星毎の重み付け係数を用いた重み付け測位演算により、移動中の移動体の位置を測位する測位演算手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、衛星電波の搬送波のドップラ周波数を移動体で観測して、該移動体の速度を測位する移動体用測位装置において、
移動体の停止中に取得される前記ドップラ周波数の観測値を用いて、移動体の停止中における移動体の速度を、衛星毎に導出する移動体速度導出手段と、
移動体の停止中における複数の時点で前記移動体速度導出手段により導出された移動体速度に基づいて、該導出された移動体速度の誤差を表わす指標値を、衛星毎に算出する誤差指標値算出手段と、
前記誤差指標値算出手段により算出された衛星毎の誤差指標値に基づいて、衛星毎の重み付け係数を決定する重み係数決定手段と、
移動体の移動中に取得される前記ドップラ周波数の観測値を用いて、前記重み係数決定手段により決定された衛星毎の重み付け係数を用いた重み付け測位演算により、移動中の移動体の速度を測位する測位演算手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第1又は2の発明に係る移動体用測位装置において、
前記指標値が分散又は標準偏差であることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第1の発明に係る移動体用測位装置において、
移動体の停止中における複数の時点で前記擬似距離計測手段により計測された擬似距離に基づいて、該計測された擬似距離の誤差の平均値を、衛星毎に算出する誤差平均値算出手段を更に備え、
前記測位演算手段は、前記誤差平均値算出手段により算出された誤差平均値で補正した前記位相の観測値を用いて、前記測位を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衛星毎に異なる誤差を適切に反映させた重み付け測位演算を行うことが可能な移動体測位装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明に係る移動体位置測位装置が適用されるGPS(Global Positioning System)の全体的な構成を示すシステム構成図である。図1に示すように、GPSは、地球周りを周回するGPS衛星10と、地球上に位置し地球上を移動しうる車両90とから構成される。尚、車両90は、あくまで移動体の一例であり、その他の移動体としては、自動二輪車、鉄道、船舶、航空機、ホークリフト、ロボットや、人の移動に伴い移動する携帯電話等の情報端末等がありうる。
【0012】
GPS衛星10は、航法メッセージ(衛星信号)を地球に向けて常時放送する。航法メッセージには、対応するGPS衛星10に関する衛星軌道情報(エフェメリスやアルマナク)、時計の補正値、電離層の補正係数が含まれている。航法メッセージは、C/Aコードにより拡散されL1波(周波数:1575.42MHz)に乗せられて、地球に向けて常時放送されている。尚、L1波は、C/Aコードで変調されたSin波とPコード(Precision Code)で変調されたCos波の合成波であり、直交変調されている。C/Aコード及びPコードは、擬似雑音(Pseudo Noise)符号であり、−1と1が不規則に周期的に並ぶ符号列である。
【0013】
尚、現在、24個のGPS衛星10が高度約20,000kmの上空で地球を一周しており、各4個のGPS衛星10が55度ずつ傾いた6つの地球周回軌道面に均等に配置されている。従って、天空が開けている場所であれば、地球上のどの場所にいても、常時、少なくとも5個以上のGPS衛星10が観測可能である。
【0014】
車両90には、移動体位置測位装置としての車載器1が搭載される。
【0015】
図2は、車載器1の主要構成を示すブロック図である。車載器1は、図2に示すように、主要な構成要素として、GPS受信機20と、車両停止判定部40とを備える。GPS受信機20の主要機能について後述する。
【0016】
車両停止判定部40は、車両90が停止しているか否かを判定する。かかる判定方法は、多種多様であり、任意の適切な方法が採用されてよい。例えば、車両停止判定部40は、車両90に搭載される加速度センサや角速度センサの出力信号(微分値等)に基づいて、車両が停止しているか否かを判定してもよい。或いは、車両停止判定部40は、車両90に搭載される車輪速センサの出力信号に基づいて、車両が停止しているか否かを判定してもよい。車両停止判定部40は、車輪速センサに代えて若しくはそれに加えて、トランスミッションの出力軸の回転数を測定するセンサ等のような、車速に関連する物理量を出力できる他の車載センサの出力信号や、ブレーキペダルの操作状態やシフト位置等の検出するセンサの出力信号を用いて、車両が停止しているか否かを判定してもよい。
【0017】
図3は、GPS受信機20の内部構成の一例を示す。以下では、説明の複雑化を避けるため、ある1つのGPS衛星10からの衛星信号に関する信号処理(1チャンネルの信号処理)を代表して説明する。以下で説明する信号処理は、観測周期毎(例えば1ms)に、観測可能な各GPS衛星10,10,10等からの衛星信号に対して並列的(同時)に実行される。
【0018】
GPS受信機20は、GPSアンテナ21、高周波回路22、A/D(analog-to-digital)変換回路24、DDL(Delay―Locked Loop)110、PLL(Phase−Locked Loop)120、衛星位置算出部124、及び、フィルタ130を含む。DDL110は、相互相関演算部111,112、位相進め部113、位相遅れ部114、位相ずれ計算部115、位相補正量計算部116、レプリカC/Aコード生成部117、擬似距離算出部118、及び、測位演算部50を含む。
【0019】
GPSアンテナ21は、GPS衛星10から発信されている衛生信号を受信し、受信した衛星信号を電圧信号(本例では、周波数1.5GHz)に変換する。1.5GHzの電圧信号をRF(radio frequency)信号と称する。
【0020】
高周波回路22は、GPSアンテナ21を介して供給される微弱なRF信号を後段でA/D変換できるレベルまで増幅すると共に、RF信号の周波数を信号処理できる中間周波数(典型的には、1MHz〜20MHz)に変換する。尚、このようにRF信号をダウンコンバートして得られる信号を、IF(Intermediate frequency)信号と称する。
【0021】
A/D変換回路24は、高周波回路22から供給されるIF信号(アナログ信号)を、デジタル信号処理ができるようにデジタルIF信号に変換する。デジタルIF信号は、DDL110及びPLL120等に供給される。
【0022】
DDL110のレプリカC/Aコード生成部117では、レプリカC/Aコードが生成される。レプリカC/Aコードとは、GPS衛星10からの衛星信号に乗せられるC/Aコードに対して、+1、−1の並びが同一のコードである。
【0023】
相互相関演算部111には、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードが、位相進め部113を介して入力される。即ち、相互相関演算部111には、Earlyレプリカ符号が入力される。位相進め部113では、レプリカC/Aコードが所定の位相だけ進められる。位相進め部113で進められる位相進み量をθとする。
【0024】
相互相関演算部111には、また、デジタルIF信号が、図示しないミキサにより、PLL120で生成されるレプリカキャリアが乗算されてから入力される。
【0025】
相互相関演算部111では、入力されるデジタルIF信号と、位相進み量θのEarlyレプリカ符号を用いて、相関値(Early相関値ECA)が演算される。Early相関値ECAは、例えば以下の式で演算される。
Early相関値ECA=Σ{(デジタルIF)×(Earlyレプリカ符号)}
相互相関演算部112には、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードが、位相遅れ部114を介して入力される。即ち、相互相関演算部112には、Lateレプリカ符号が入力される。位相遅れ部114では、レプリカC/Aコードが所定の位相だけ遅らされる。位相遅れ部114で遅らされる位相遅れ量は、位相進み量θと大きさ同一で符号が異なる。
【0026】
相互相関演算部112には、また、デジタルIF信号が、図示しないミキサにより、PLL120で生成されるレプリカキャリアが乗算されてから入力される。
【0027】
相互相関演算部112では、入力されるデジタルIF信号と、位相遅れ量−θのLateレプリカ符号を用いて、相関値(Late相関値LCA)が演算される。Late相関値LCAは、例えば以下の式で演算される。
Late相関値LCA1=Σ{(デジタルIF)×(Lateレプリカ符号)}
このようにして、相互相関演算部111、112では、コリレータ間隔d(“スペーシング”とも称される)を2θとした相関値演算が実行される。相互相関演算部111、112にてそれぞれ演算されたEarly相関値ECA及びLate相関値LCAは、位相ずれ計算部115に入力される。
【0028】
位相ずれ計算部115では、デジタルIF信号と、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードとの間に、どの程度位相のずれがあるかが算出される。即ち、位相ずれ計算部115では、受信したC/Aコードに対するレプリカC/Aコードの位相ずれ量Δφが算出(推定)される。レプリカC/Aコードの位相ずれ量Δφは、例えば以下の式で演算される。
(位相ずれ量Δφ)=(ECA−LCA)/2(ECA+LCA
このようにして算出された位相ずれ量Δφは、位相補正量計算部116に入力される。
【0029】
位相補正量計算部116では、位相ずれ量Δφを無くすべく、適切な位相補正量が算出される。適切な位相補正量が、例えば以下の演算式に従って、算出される。
(位相補正量)=(Pゲイン)×(位相ずれ量Δφ)+(Iゲイン)×Σ(位相ずれ量Δφ)
この式は、PI制御を利用したフィードバック制御を表す式であり、Pゲイン及びIゲインは、それぞれバラツキと応答性の兼ね合いから実験的に決定される。このようにして算出された位相補正量は、レプリカC/Aコード生成部117に入力される。
【0030】
レプリカC/Aコード生成部117では、生成されるレプリカC/Aコードの位相が、位相補正量計算部116により算出された位相補正量だけ補正される。即ち、レプリカC/Aコードの追尾点が補正される。かくして生成されたレプリカC/Aコードは、上述の如く位相進め部113及び位相遅れ部114を介して相互相関演算部111、112に入力されると共に、擬似距離算出部118に入力される。尚、相互相関演算部111、112では、このようにして生成されたレプリカC/Aコードは、次回の観測周期で入力されるIFデジタル信号に対する相関値演算に用いられることになる。
【0031】
擬似距離算出部118では、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードの位相情報に基づいて、擬似距離ρ’が、例えば以下の式により演算される。尚、符号の意味として、擬似距離ρに付された「’」は、後述のフィルタ処理が実行されていないことを示し、下付き文字「」は、GPS衛星10に係るC/Aコードに基づいて算出された擬似距離ρであることを示す。
ρ’=N×300
ここで、Nは、GPS衛星10と車両90との間のC/Aコードのビット数に相当し、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードの位相及び受信機1内部の受信機時計に基づいて算出される。尚、数値300は、C/Aコードが、1ビットの長さが1μsであり、1ビットに相当する長さが約300m(1μs×光速)であることに由来する。このようにして算出された擬似距離ρ’を表す信号は、DDL110からフィルタ130に入力される。
【0032】
PLL120では、内部で発生させたキャリアレプリカ信号を用いて、ドップラシフトした受信搬送波(受信キャリア)のドップラ周波数Δfが測定される。即ち、PLL120では、レプリカキャリアの周波数frと既知の搬送波周波数fL1(1575.42MHz)に基づいて、ドップラ周波数Δf(=fr−fL1)が測定される。尚、PLL120に入力されるデジタルIF信号は、図示しないミキサにより、DDL110から供給されるレプリカC/Aコードが乗算されたものである。PLL120からのドップラ周波数Δfを表す信号は、フィルタ130及び測位演算部50に入力される。
【0033】
フィルタ130では、ドップラ周波数Δfを用いて、擬似距離ρ’のフィルタ処理が実行される。フィルタ130では、例えば以下の演算式に従って、フィルタ処理後の擬似距離ρが計算される。
【0034】
【数1】

ここで、(i)は今回値を表し、(i−1)は前回値を表し、Mは、重み係数である。Mの値は、精度と応答性を考慮しつつ適切に決定される。また、ΔVは、GPS衛星10と車両90との間の相対速度(ドップラ速度)であり、例えば以下の関係式を用いて、算出される。
ΔfL1=ΔV・fL1/(c−ΔV)
尚、cは光速である。数1で示すフィルタ処理は、本分野で知られているキャリアスムージングと呼ばれる処理であってよく、上記のハッチフィルタの他、カルマンフィルタを用いても実現可能である。フィルタ130からの擬似距離ρを表す信号は、測位部50に入力される。
【0035】
衛星位置算出部124は、航法メッセージの衛星軌道情報に基づいて、GPS衛星10の、ワールド座標系での現在位置S=(X、Y、Z)及び移動速度V=(V、V、V)を計算する。衛星移動速度ベクトルV=(V、V、V)は、算出した衛星位置Sの今回値と前回値の差分を、演算周期の時間幅で除算することにより演算されてよい。このようにして衛星位置算出部124にて導出される衛星位置S及び衛星移動速度ベクトルVは、測位演算部50に入力される。
【0036】
次に、本実施例の測位演算部50の詳細について説明する。
【0037】
図4は、本実施例の測位演算部50の主要構成を示すブロック図である。本実施例の測位演算部50は、図4に示すように、σ算出部42、dave算出部44、σ算出部46、重み行列生成部48、及び、重み付け測位演算部49を備える。各部42,44,46,48,49の機能については、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0038】
図5は、本実施例の測位演算部50により実現される車両位置測位処理の一例を示すフローチャートである。図5に示す処理ルーチンは、例えば車両90のイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、所定の周期毎に繰り返し実行される。所定の周期は、上述の観測周期に対応していてよい。
【0039】
ステップ500では、カウンタが初期化される。即ち、カウンタの値が“1”にセットされる。
【0040】
ステップ502では、車両停止判定部40からの判定結果に基づいて、現在車両90が停車中であるか否かが判定される。停車中である場合には、ステップ504に進む。かかる状況としては、典型的には、エンジン始動後の車両走行開始前の状況や、車両走行開始後に信号待ち等により車両90が一時的に停止する状況が想定される。一方、車両90が移動中である場合には、ステップ514に進む。
【0041】
ステップ504では、現在のカウンタの値が“1”であるか否かが判定される。カウンタの値が“1”である場合には、ステップ506に進み、それ以外の場合には(即ち、カウンタの値が1より大きい場合には)、ステップ508に進む。
【0042】
ステップ506では、最新の測位結果に基づく車両90の位置(X,Y,Z)が、停止直後の車両位置u=(Xu0,Yu0,Zu0)として記憶される。停止直後の車両位置u=(Xu0,Yu0,Zu0)は、後述の重み付け測位演算により導出されたものであってもよいし、他の測位方法(例えば慣性航法)により導出されたものであってもよい。尚、慣性航法を用いる場合には、道路標識の既知の位置情報を含む地図データと、車載カメラを用いた同道路標識の画像認識結果とのマッチングにより補正した車両位置を、初期位置として用いる慣性航法が好適である。
【0043】
ステップ508では、カウンタの値が“1”だけインクリメントされる。
【0044】
ステップ510では、dave算出部44において、擬似距離ρの誤差の平均値dave_j(以下、「距離誤差平均値dave_j」という)が、現在観測可能なGPS衛星10に関してGPS衛星10毎に算出される。尚、下付き文字「」は、現在観測可能なGPS衛星10の衛星番号(j=1,2,3,4,...)に対応し、GPS衛星10毎の値であることを表わす。ここで、注意すべきことは、距離誤差平均値dave_jは、停車状態において観測される擬似距離ρの誤差の平均値である。距離誤差平均値dave_jは、例えば以下のようにして算出される。
【0045】
【数2】

ここで、nは、データ数であり、この例では、n=(カウンタ値)である。d(i)は、停車が検出された初回の周期を1番目としたi番目の周期で検出された擬似距離ρ(i)の誤差を表わす。d(i)は、停止直後の測位結果が最も位置精度が高いことを利用して、例えば以下のようにして算出される。
【0046】
【数3】

ここで、(X(i)、Y(i)、Z(i))は、i番目の周期で算出された衛星位置を表わし、上述の如くi番目の周期に対応した周期で衛星位置算出部124により算出された衛星位置Sが用いられる。(Xu0,Yu0,Zu0)は、上記のステップ506で記憶された停止直後の車両位置uを表わす。同様に、ρ(i)は、i番目の周期でGPS衛星10に関して算出された擬似距離ρを表わす。c・ΔTは、GPS受信機20における時計誤差を表わす。c・ΔTは、後述の重み付け測位演算部49の測位時に求まる値が用いられてよい。
【0047】
ステップ512では、σ算出部46において、現在観測可能なGPS衛星10に関して算出された擬似距離ρの誤差の標準偏差値σd_j(以下、「距離誤差標準偏差値σd_j」という)が、GPS衛星10毎に算出される。同様に、ここで、注意すべきことは、距離誤差標準偏差値σd_jは、停車状態において観測される擬似距離ρの誤差の標準偏差値である。距離誤差標準偏差値σd_jは、例えば以下の関係式を算出される。
σd_j=Σ(d(i)−dave_j/n
尚、σd_jは、擬似距離ρの誤差dの分散値を表わしている。また、距離誤差標準偏差値σd_jは、上記のdave算出部44において算出される各値d(i)、dave_jを利用して算出されてよい。
【0048】
このようにして、車両90が停止している間、ステップ508及びステップ510の処理が繰り返され、車両90が停止している間に随時観測されるデータに基づいて、距離誤差平均値dave_j及び距離誤差標準偏差値σd_jがGPS衛星10毎に所定周期毎に算出されていく。尚、明らかであるが、距離誤差平均値dave_j及び距離誤差標準偏差値σd_jは、車両90が停止している間の周期数iが増加するにつれて、標本数が増加するが故に信頼性が高くなる。このようにして車両90が停止している間に算出される距離誤差平均値dave_j及び距離誤差標準偏差値σd_jは、以下で説明するステップ514〜518において、当該停止後に車両90が移動し始めた後の車両90の位置の測位に有効に利用される。
【0049】
ステップ514では、カウンタが所定の閾値より大きいか否かが判定される。この判定は、車両90が停止している間に算出された距離誤差平均値dave_j及び距離誤差標準偏差値σd_jが信頼性のあるものかを判定するものであり、所定の閾値は、かかる観点から適切に設定されればよい。例えば、10〜20個以上の標本数に対応して、所定の閾値は、11〜21の間の任意の値であってもよい。カウンタが所定の閾値より大きい場合には、ステップ516に進む。カウンタが所定の閾値以下の場合には(例えば停車時間が非常に短い場合には)、車両90が停止している間に算出された距離誤差平均値dave_j及び距離誤差標準偏差値σd_jの信頼性が低いと判断して、今回周期の処理ルーチンが終了する(ステップ500に戻る)。
【0050】
ステップ516では、重み行列生成部48において、直前の停止中の最後の周期で上記のステップ510及び512にて算出された距離誤差平均値dave_j及び距離誤差標準偏差値σd_jに基づいて、重み付け行列Wの各成分が決定される。重み付け行列Wは、対角成分以外はゼロであり、対角成分には、上述の如くσ算出部46により算出された距離誤差標準偏差値σd_jが代入される。以下では、説明の都合上、現在4つのGPS衛星10、10、10、10が観測可能であるとする。この場合、重み付け行列Wは、以下の通りとなる。
【0051】
【数4】

ステップ518では、重み付け測位演算部49において、今回周期で観測された擬似距離ρ、ρ、ρ、ρに基づいて、上記のステップ516で生成された重み付け行列Wを用いた重み付け測位演算により、現在の車両90の位置(X,Y,Z)が測位される。重み付け測位演算は、例えば以下のような重み付き最小二乗法を用いて実行される。
【0052】
先ず、前提として、擬似距離ρと衛星位置(X,Y,Z)と車両位置(X,Y,Z)との間には、以下の関係式が成り立つ。
【0053】
【数5】

ここで、b=c・ΔTとおき、未知数を(X,Y,Z,b)を状態量ηとして、各状態量により数5の式を線形化した近似式の一般式は、以下のようになる。
【0054】
【数6】

ここで、状態量ηの適当な初期値を(0,0,0,0)とすると、Δρは、以下のようになる。
【0055】
【数7】

また、偏微分項は、以下のようになる。
【0056】
【数8】

よって、Δρを観測量zとしたとき、観測量zと状態量ηとの関係は、観測行列Hを用いて、以下のようになる。
=H・η
ここで、観測量z及び観測行列Hは、4つのGPS衛星10、10、10、10に関して、以下の通りである。
【0057】
【数9】

従って、状態量ηは、重み付け行列Wを用いて、次の通り求まる。
【0058】
【数10】

ここで、上記の重み付け測位演算において、好ましくは、観測量zは、擬似距離ρをそのまま用いるのではなく、擬似距離ρを距離誤差平均値dave_jで補正したものが用いられる。即ち、好ましい観測量zは、以下の通りである。
【0059】
【数11】

尚、このようにして得られる車両90の位置(X,Y,Z)の測位結果は、例えばナビゲーションシステムに出力されてよい。
【0060】
ステップ520では、車両停止判定部40からの判定結果に基づいて、車両90が移動状態から停止状態に変化したか否かが判定される。車両90が移動状態から停止状態に変化した場合には、ステップ500に戻り、それ以外の場合には(即ち車両90が移動中である場合には)、ステップ518に進む。即ち、ステップ518の処理は、車両90の移動中、随時観測される擬似距離ρ及び衛星位置(X,Y,Z)に基づいて継続して実行される。
【0061】
尚、車両90の移動中に、観測可能なGPS衛星10が変化した場合には、それに応じて重み付け行列Wが再決定されてよい。例えば、あるGPS衛星10が観測不能になった場合には、当該GPS衛星10に係る成分を除いた重み付け行列Wが作成され、それに伴い、当該GPS衛星10に係る観測量zを除いた他のGPS衛星10に係る観測量zに基づいて、上述の重み付け測位演算が実行されればよい。また、新たなGPS衛星10(車両90が停止している間に観測されていなかったGPS衛星10)が観測された場合、かかる新たなGPS衛星10に対しては、距離誤差平均値dave_k及び距離誤差標準偏差値σd_kが算出されていないので、適当な重み付け係数の初期値(重み付け行列の対角成分)を用いて、上述の重み付け測位演算が実行されてもよい。
【0062】
以上の図5に示す車両位置測位処理によれば、上述の如く、重み付け行列Wの重み付け係数として用いられる距離誤差平均値dave_jが、車両90が停止している間の各GPS衛星10の観測データに基づいて算出されるので、信頼性の高い重み付け行列Wの重み付け係数を設定することができる。これは、車両90が停止している間は、車両90の移動に起因した誤差要因の影響を受けないことから、各GPS衛星10の観測データ(特に擬似距離ρの観測値)に含まれる誤差をGPS衛星10毎に高い精度で評価できるからである。このように、図5に示す車両位置測位処理によれば、車両90の停止中に車両位置が変化しないことを利用して、精度の高い重み付け行列Wを設定することで、車両90の移動中に精度の高い測位結果を得ることができる。
【0063】
また、上述の如く、擬似距離ρを距離誤差平均値dave_jで補正して重み付け測位演算が実行されるので、精度の高い測位結果を得ることができる。即ち、擬似距離ρに含まれる誤差を、距離誤差平均値dave_jにより除去することで、精度の高い測位結果を得ることができる。また、この距離誤差平均値dave_jは、上述の如く、車両90が停止している間の各GPS衛星10の観測データに基づいて算出されることから、精度が高く、測位結果の精度の更なる向上を図ることができる。
【0064】
尚、以上の図5に示す車両位置測位処理において、重み行列Wの対角成分には、距離誤差標準偏差値σd_jに代えて、擬似距離ρの誤差dの分散値σd_jが代入されてもよい。
【0065】
図6は、本実施例の測位演算部50により実現される車両速度測位処理の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理ルーチンは、例えば車両90のイグニッションスイッチがオンにされてからオフにされるまで、所定の周期毎に繰り返し実行される。所定の周期は、上述の観測周期に対応していてよい。尚、図6に示す処理ルーチンは、上述の図5に示す処理ルーチンと別個に説明しているが、並列して別々に実行されてもよいし、一体的な処理ルーチンに統合されて実行されてもよい。
【0066】
ステップ600では、カウンタが初期化される。即ち、カウンタの値が“1”にセットされる。
【0067】
ステップ602では、車両停止判定部40からの判定結果に基づいて、現在車両90が停車中であるか否かが判定される。停車中である場合には、ステップ604に進み、それ以外の場合には(即ち車両90が移動中である場合には)、ステップ614に進む。
【0068】
ステップ604では、現在のカウンタの値が“1”であるか否かが判定される。カウンタの値が“1”である場合には、ステップ606に進み、それ以外の場合には(即ち、カウンタの値が1より大きい場合には)、ステップ608に進む。
【0069】
ステップ606では、最新の測位結果に基づく車両90の位置(X,Y,Z)が、停止直後の車両位置u=(Xu0,Yu0,Zu0)として記憶される。停止直後の車両位置u=(Xu0,Yu0,Zu0)は、上述の重み付け測位演算により導出されたものであってもよいし、他の測位方法(例えば慣性航法)により導出されたものであってもよい。
【0070】
ステップ608では、カウンタの値が“1”だけインクリメントされる。
【0071】
ステップ610では、σ算出部42において、先ず、GPS衛星10に対する車両90の視線方向の車両速度Vu_jの、標準偏差値σv_j(以下、「速度標準偏差値σv_j」という)が、GPS衛星10毎に算出される。同様に、ここで、注意すべきことは、速度標準偏差値σv_jは、停車状態において観測される車両速度Vu_jの標準偏差値である。GPS衛星10に関する速度標準偏差値σv_jは、例えば以下の関係式を算出される。
σv_j=Σ(Vu_j(i)−Vave_j/n
尚、σv_jは、車両速度Vu_jの分散値を表わしている。Vu_j(i)は、停車が検出された初回の周期を1番目としてi番目の周期で算出されるGPS衛星10に関する車両速度Vu_jである。Vave_jは、各周期でのVu_j(i)の平均値であり、例えば以下のようにして算出される。
【0072】
【数12】

ここで、nは、データ数であり、この例では、n=(カウンタ値)である。尚、Vave_jは、車両90が停止状態であることを利用して、ゼロが用いられてもよい。この場合、速度標準偏差値σv_jは、実質的には、車両速度Vu_jの誤差の標準偏差値となる。
【0073】
車両速度Vu_j(i)は、GPS衛星10に関するドップラレンジdρ(i)と、GPS衛星10に対する車両90の視線方向の単位ベクトルl(i)と、GPS衛星10の衛星移動速度ベクトルV=(V(i)、V(i)、V(i))との関係を用いて、例えば以下のようにして算出される。
【0074】
【数13】

ここで、ドップラレンジdρ(i)は、搬送波の波長λ(既知)と、周期(i)で得られるGPS衛星10に関するドップラ周波数Δf(i)を用いて、例えばdρ(i)=λ・Δf(i)により、算出される。また、上記の式において、l・Vは、単位ベクトルlと衛星移動速度ベクトルVとの内積である。単位ベクトルlは、上記のステップ606で記憶された停止直後の車両位置u=(Xu0,Yu0,Zu0)と、GPS衛星10の位置S(i)=(X(i),Y(i),Z(i))と、車両90とGPS衛星10との間の距離r(i)とを用いて、例えば以下のようにして算出される。
【0075】
【数14】

尚、r(i)は、以下のとおりである。
【0076】
【数15】

このようにして、車両90が停止している間、ステップ608及びステップ610の処理が繰り返され、車両90が停止している間に随時観測されるデータに基づいて、速度標準偏差値σv_jがGPS衛星10毎に所定周期毎に算出される。尚、明らかであるが、速度標準偏差値σv_jは、車両90が停止している間の周期数iが増加するにつれて、標本数が増加するが故に信頼性が高くなる。このようにして車両90が停止している間に算出される速度標準偏差値σv_jは、以下で説明するステップ614〜618において、当該停止後に車両90が移動し始めた後の車両90の速度の測位に有効に利用される。
【0077】
ステップ614では、カウンタが所定の閾値より大きいか否かが判定される。この判定は、車両90が停止している間に算出された速度標準偏差値σv_jが信頼性のあるものかを判定するものであり、所定の閾値は、かかる観点から適切に設定されればよい。例えば、10〜20個以上の標本数に対応して、所定の閾値は、11〜21の間の任意の値であってもよい。カウンタが所定の閾値より大きい場合には、ステップ616に進む。カウンタが所定の閾値以下の場合には(例えば停車時間が非常に短い場合には)、車両90が停止している間に算出された速度標準偏差値σv_jの信頼性が低いと判断して、今回周期の処理ルーチンが終了する(ステップ600に戻る)。
【0078】
ステップ616では、重み行列生成部48において、直前の停止中の最後の周期で上記のステップ610にて算出された速度標準偏差値σv_jに基づいて、重み付け行列W_vの各成分が決定される。重み付け行列W_vは、対角成分以外はゼロであり、対角成分には、上述の如くσ算出部42により算出された速度標準偏差値σv_jが代入される。以下では、説明の都合上、現在4つのGPS衛星10、10、10、10が観測可能であるとする。この場合、重み付け行列W_vは、以下の通りとなる。
【0079】
【数16】

ステップ618では、重み付け測位演算部49において、今回周期で観測されたドップラレンジdρ、dρ、dρ、dρに基づいて、上記のステップ616で生成された重み付け行列W_vを用いた重み付け測位演算により、現在の車両90の速度v=(v,v,v)が測位される。重み付け測位演算は、例えば以下のような重み付き最小二乗法を用いて実行される。
【0080】
先ず、前提として、ドップラレンジdρと、衛星移動速度ベクトルVと、車両90の速度ベクトルv=(v,v,v)との間には、以下の関係式が成り立つ。尚、文字の上についた記号黒丸は、ドット(時間微分)を表し、例えばドップラレンジdρは、ρドット(時間微分)である。
【0081】
【数17】

ここで、Iドット及びTドットは、電離層誤差の変動量及び対流圏誤差の変動量を表すが、非常に小さいので、ここでは、白色ノイズεとして扱う。また、bドットは、時計誤差の微分値である。数17の式は、4つのGPS衛星10、10、10、10からの観測データを用いる場合、以下のように変形できる。
【0082】
【数18】

数18の式において、左辺を、観測量zとする。GPS衛星10に関する観測量zの「dρ」は、上述の如くドップラ周波数Δf(i)に基づいて、dρ=λ・Δf(i)により算出される。また、GPS衛星10に関する観測量zの「l・V」は、周期(i)における単位ベクトルl(i)と衛星移動速度ベクトルV(i)との内積であり、衛星移動速度ベクトルV(i)は、上述の如く衛星位置算出部124にて航法メッセージの衛星軌道情報に基づいて算出され、単位ベクトルl(i)は、周期(i)において上述の如く重み付け測位演算部49(図5のステップ518)にて算出される車両90の位置の測位結果(X(i),Y(i),Z(i))を用いて、以下のように、算出されてよい。
【0083】
【数19】

そして、観測行列Gを以下のように設定する。
【0084】
【数20】

状態量ηは、車両90の速度ベクトルv=(v,v,v)とbドットからなり、η=(v,bドット)とおくと、状態量ηは、重み付け行列W_vを用いて、次の通り求まる。
【0085】
【数21】

尚、このようにして得られる車両90の速度ベクトルvの測位結果は、例えばナビゲーションシステムに出力されてよい。
【0086】
ステップ620では、車両停止判定部40からの判定結果に基づいて、車両90が移動状態から停止状態に変化したか否かが判定される。車両90が移動状態から停止状態に変化した場合には、ステップ600に戻り、それ以外の場合には(即ち車両90が移動中である場合には)、ステップ618に進む。即ち、ステップ618の処理は、車両90の移動中、随時観測されるドップラレンジdρや衛星移動速度ベクトルV等に基づいて継続して実行される。
【0087】
尚、車両90の移動中に、観測可能なGPS衛星10が変化した場合には、それに応じて重み付け行列W_vが再決定されてよい。例えば、あるGPS衛星10が観測不能になった場合には、当該GPS衛星10に係る成分を除いた重み付け行列W_vが作成され、それに伴い、当該GPS衛星10に係る観測量zを除いた他のGPS衛星10に係る観測量zに基づいて、上述の重み付け測位演算が実行されればよい。また、新たなGPS衛星10(車両90が停止している間に観測されていなかったGPS衛星10)が観測された場合、かかる新たなGPS衛星10に対しては、速度標準偏差値σv_kが算出されていないので、適当な重み付け係数の初期値(重み付け行列の対角成分)を用いて、上述の重み付け測位演算が実行されてもよい。
【0088】
以上の図6に示す車両速度測位処理によれば、上述の如く、重み付け行列W_vの重み付け係数として用いられる速度標準偏差値σv_jが、車両90が停止している間の各GPS衛星10の観測データに基づいて算出されるので、信頼性の高い重み付け行列W_vの重み付け係数を設定することができる。これは、車両90が停止している間は、車両90の移動に起因した誤差要因の影響を受けないことから、各GPS衛星10の観測データ(特にドップラレンジdρの観測値)に含まれる誤差をGPS衛星10毎に高い精度で評価できるからである。このように、図6に示す車両速度測位処理によれば、車両90の停止中に車両位置が変化しないこと(即ち車両90の停止中に車両速度がゼロであること)を利用して、精度の高い重み付け行列W_vを設定することで、車両90の移動中に精度の高い測位結果を得ることができる。
【0089】
尚、以上の図6に示す車両速度測位処理において、重み行列W_vの対角成分には、速度標準偏差値σv_jに代えて、分散値σv_jが代入されてもよい。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0091】
例えば、上述の実施例において、重み行列W及びW_vの重み付け係数は、前回測位演算時の残差や、各衛星の仰角の差異、各衛星からの信号の受信強度の差異等のような、他の因子をも考慮して設定されてもよい。
【0092】
また、上述の実施例では、C/Aコードを用いて擬似距離ρを導出しているが、擬似距離ρは、L2波のPコードのような他の擬似雑音コードに基づいて計測されてもよい。尚、Pコードの場合、Wコードで暗号化されているので、Pコード同期を行う際に、クロス相関方式を利用したDLLにより、Pコードを取り出すこととしてよい。Pコードに基づく擬似距離ρは、GPS衛星10でPコードが0ビット目であるとしてPコードのMビット目が車両90にて受信されているかを計測することで、ρ’=M×30として求めることができる。
【0093】
また、上述の実施例では、GPSに本発明が適用された例を示したが、本発明は、GPS以下の衛星システム、例えばガリレオ等の他のGNSS (Global Navigation Satellite System)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る移動体用測位装置が適用されるGPSの全体的な構成を示すシステム構成図である。
【図2】車載器1の主要構成を示すブロック図である。
【図3】GPS受信機20の内部構成の一例を示す図である。
【図4】本実施例の測位演算部50の主要構成を示すブロック図である。
【図5】本実施例の測位演算部50により実現される車両位置測位処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施例の測位演算部50により実現される車両速度測位処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 車載器
10 GPS衛星
20 GPS受信機
40 車両停止判定部
42 σ算出部
44 dave算出部
46 σ算出部
48 重み行列生成部
49 重み付け測位演算部
50 測位演算部
90 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星電波に乗せられた擬似雑音コードの位相を移動体で観測して、該移動体の位置を測位する移動体用測位装置において、
移動体の停止中に取得される前記位相の観測値を用いて、移動体の停止中における衛星と移動体の間の擬似距離を、衛星毎に計測する擬似距離計測手段と、
移動体の停止中における複数の時点で前記擬似距離計測手段により計測された擬似距離に基づいて、該計測された擬似距離の誤差を表わす指標値を、衛星毎に算出する誤差指標値算出手段と、
前記誤差指標値算出手段により算出された衛星毎の誤差指標値に基づいて、衛星毎の重み付け係数を決定する重み係数決定手段と、
移動体の移動中に取得される前記位相の観測値を用いて、前記重み係数決定手段により決定された衛星毎の重み付け係数を用いた重み付け測位演算により、移動中の移動体の位置を測位する測位演算手段とを備えることを特徴とする、移動体用測位装置。
【請求項2】
衛星電波の搬送波のドップラ周波数を移動体で観測して、該移動体の速度を測位する移動体用測位装置において、
移動体の停止中に取得される前記ドップラ周波数の観測値を用いて、移動体の停止中における移動体の速度を、衛星毎に導出する移動体速度導出手段と、
移動体の停止中における複数の時点で前記移動体速度導出手段により導出された移動体速度に基づいて、該導出された移動体速度の誤差を表わす指標値を、衛星毎に算出する誤差指標値算出手段と、
前記誤差指標値算出手段により算出された衛星毎の誤差指標値に基づいて、衛星毎の重み付け係数を決定する重み係数決定手段と、
移動体の移動中に取得される前記ドップラ周波数の観測値を用いて、前記重み係数決定手段により決定された衛星毎の重み付け係数を用いた重み付け測位演算により、移動中の移動体の速度を測位する測位演算手段とを備えることを特徴とする、移動体用測位装置。
【請求項3】
前記指標値が分散又は標準偏差である、請求項1又は2に記載の移動体用測位装置。
【請求項4】
移動体の停止中における複数の時点で前記擬似距離計測手段により計測された擬似距離に基づいて、該計測された擬似距離の誤差の平均値を、衛星毎に算出する誤差平均値算出手段を更に備え、
前記測位演算手段は、前記誤差平均値算出手段により算出された誤差平均値で補正した前記位相の観測値を用いて、前記測位を実行する、請求項1に記載の移動体用測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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