説明

移動床ガス化炉

【課題】移動床ガス化炉内での廃棄物のブリッヂや吹き抜けの発生を確実になくして適切なガス化を可能とする移動床ガス化炉を提供する。
【解決手段】ガス化炉10の熱分解帯A2が形成される高さ位置に炉内壁10aの周方向に沿った所定長さの押圧面3を有する箱状の押圧体2を周方向に複数設け、この押圧体2が炉心方向に前進することによって形成されたブリッヂを押圧面3で押圧して破壊し、最も前進した際に押圧体2の後端が挿通孔6を抜け出ない長さを有し、炉内壁10aに設けた挿通孔6に後退した際に押圧面3が上方の炉内壁10aより後退した位置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動床ガス化炉に関し、さらに詳しくは移動床ガス化炉内での廃棄物のブリッヂや吹き抜けを確実になくして適切なガス化を可能とする移動床ガス化炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般ごみ等の廃棄物を熱分解させてガス化するガス化炉が提案されている。このガス化炉は、炉内に廃棄物を供給充填し、底部から主に空気を供給して点火することによって廃棄物の一部を燃焼させてガス化するようにしている。
【0003】
廃棄物には、不燃性ペレットが混合されて、供給される空気等の流通が確保され、安定した位置に燃焼帯が形成される。その上方には還元雰囲気の熱分解帯が形成され、さらにその上方に乾燥帯が形成される。燃焼残渣は燃焼帯の下方に流下して底部から供給される空気等によって冷却されて冷却帯を形成し、順次、炉外に排出される。
【0004】
廃棄物は上述した乾燥帯、熱分解帯、燃焼帯、冷却帯の順に自重によって降下するが、廃棄物が一般ごみ等の場合は疎密のばらつきが大きく、自重による降下では疎密のばらつきが解消されず、ブリッヂが形成され易くなる。廃棄物の一部が熱分解帯で炉内壁に固着することによってもブリッヂが形成される。ブリッヂが形成されるとその部分の廃棄物の円滑な降下が妨げられ、ブリッヂを放置しておくと益々、降下不良範囲が拡大することになる。
【0005】
これによって供給された空気等が特定の経路に偏って上方へ流通するという吹き抜けが生じる。このようなブリッヂや吹き抜けが生じると、各帯域が安定して形成されず適正なガス化が実現できないという問題があった。
【0006】
ブリッヂや吹き抜けを防止する方法として、ガス化炉の側周壁に傾斜角度を有する複数の挿通孔を穿設して、この挿通孔に突き棒を炉心方向へ進退可能に配備したガス化炉が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
この提案では、突き棒を進退させることによって、炉内の廃棄物に多数の連通孔を穿設して、この連通孔によって燃焼ガスの均一な流通を確保するようにしているので、多数の挿入孔および突き棒を配置しなければならないという問題があった。
【0008】
また、突き棒では廃棄物に対して、非常に狭い範囲で局部的な外力を与えることしかできず、形成されたブリッヂを破壊することはできなかった。
【特許文献1】特開2002―61816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、移動床ガス化炉内での廃棄物のブリッヂや吹き抜けを確実になくして適切なガス化を可能とする移動床ガスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の移動床ガス化炉は、上部に廃棄物投入路を有し、廃棄物を低酸素雰囲気で熱分解させてガス化する移動床ガス化炉において、前記ガス化炉の高さ方向中途に炉内壁の周方向に沿った所定長さの押圧面を有する押圧体を周方向に複数設け、該複数の押圧体をそれぞれ炉心方向に進退可能としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移動床ガス化炉によれば、上部に廃棄物投入路を有し、廃棄物を低酸素雰囲気で熱分解させてガス化する移動床ガス化炉において、ガス化炉の高さ方向中途に炉内壁の周方向に沿った所定長さの押圧面を有する押圧体を周方向に複数設け、この複数の押圧体をそれぞれ炉心方向に進退可能として、形成されたブリッヂを所定の大きさを有する押圧面で押圧することによって確実にブリッヂを破壊することができ、廃棄物の降下を促進させて吹き抜けをなくすことができる。加えて、ブリッヂの形成を予防することもできる。
【0012】
また、押圧面は炉内壁の周方向に沿った形状なので、押圧体を炉心方向において後退させることによって、押圧面の炉内壁からの突出量を最小限またはなくすことができ、廃棄物の円滑な降下を妨害することもない。
【0013】
これによって、炉内の廃棄物が燃焼することで形成される燃焼帯や熱分解帯等の各帯域を安定して形成させることができ、適正なガス化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の移動床ガス化炉を図に示した実施形態に基づいて説明する。図1に第1の実施形態の移動床ガス化炉10を縦断面図で示し、図2に図1のA−A断面図を示す。このガス化炉10は上部に投入路16を立設し、上方側面に生成ガス排出路11を有する円筒形の縦型のガス化炉10である。
【0015】
投入路16には被燃焼物となる廃棄物Tを貯蔵する廃棄物ホッパ13がスクリューフィーダ15を介して接続され、ガス化炉10内の通気性を確保するための移動床を形成する軽石、セラミックス等の粒状の不燃性ペレットPを貯蔵するペレットホッパ12がペレット導入路8を介して接続されている。
【0016】
廃棄物ホッパ13、ペレットホッパ12の上方に接続されている廃棄物受入口7、ペレット受入口9には、それぞれ交互に開閉する開閉ゲート1a、1bが離間して設けられている。
【0017】
ガス化炉10の高さ方向中途には、押圧体2が炉心方向に進退可能に設けられている。押圧体2およびその周辺構造の詳細については後述する。
【0018】
ガス化炉10の底部には回転駆動モータ18で回転する回転軸21に固定されたテーブルフィーダ19が備わり、離間して配置された開閉ゲート1a、1bを備えた残渣排出室17がテーブルフィーダ19に隣接して設けられている。回転軸21にはガス供給孔20が備わり、ガス化炉10内に空気等と水蒸気が放射状に噴射可能となっている。
【0019】
ガス化炉10の側面には図示しない複数の温度センサ、複数の炉内圧力センサおよび充填された廃棄物Tのレベルを検知するレベルセンサが適所に配置されている。
【0020】
このガス化炉10内は微負圧または微正圧に設定されるため、各所に配置された離間して設けられた開閉ゲート1a、1bは、交互に開閉することで、ガス化炉10内の気密性を保っている。これによって、ガス化炉10内が微負圧の場合は、外気がガス化炉10内に流入して生成ガスGの質が低下することを防止し、ガス化炉10が微正圧の場合は、生成ガスGが大気中に流出することを防止する。
【0021】
廃棄物Tはスクリューフィーダ15によって投入路16を経て炉内に供給され、不燃性ペレットPは投入機14によってペレット導入路8および投入路16を経て炉内に供給される。
【0022】
ガス化炉10内の底部の廃棄物Tが点火されると、ガス化炉10底部のガス供給孔20から供給される空気等によって廃棄物Tの一部が燃焼して例えば1000℃程度の燃焼帯A3が形成される。ここで空気等の流通性は不燃性ペレットPによって確保される。
【0023】
定常状態ではこの燃焼帯A3が安定した位置に形成され、その上方に還元雰囲気の熱分解帯A2が形成され、さらにその上方に乾燥帯A1が形成される。燃焼帯A3の下方には燃焼して流下した燃焼残渣Dからなる層がガス供給孔20から供給される空気等によって、冷却されて冷却帯A4となる。燃焼残渣Dと不燃性ペレットPの抜き出し速度を制御することによって各帯域の形成位置を制御する。
【0024】
熱分解帯A2においては、廃棄物Tが低酸素雰囲気で熱分解されて可燃性の熱分解ガス、炭素(チャー)、不燃性の残渣Dとなる。生成したチャーの一部はガス供給孔20から供給される水蒸気と反応して水性ガス(CO、H2)が生成される。
【0025】
残渣Dはテーブルフィーダ19によって、残渣排出室17を経て、外部へ排出される。熱分解ガスと水性ガスとからなる生成ガスGは、熱分解帯A2の上方にある廃棄物Tのすき間を通って上昇する際に廃棄物Tを乾燥させて乾燥帯A1を形成し、これによって生成ガスGは、例えば200℃程度に冷却されて生成ガス排出路11から排出されて燃料ガス等として有効利用される。
【0026】
残渣Dが排出されることによって、ガス化炉10内の廃棄物Tは既述した乾燥帯A1、熱分解帯A2、燃焼帯A3、冷却帯A4の順に自重で降下する。
【0027】
ガス化炉10内の廃棄物Tが一般ごみ等の雑多なごみである場合は、特に疎密のばらつきが大きく、また、炉内壁に固着する成分を含んでいることがあるので、主に熱分解帯A2でブリッヂが形成され易く、ブリッヂによっていわゆる吹き抜けが発生し、各帯域が形成される位置が不安定になる。尚、ガス化炉10の適所に配置した図示しない温度センサが検知した炉内の温度でブリッヂ、吹き抜けの発生有無を判断する。
【0028】
押圧体2はガス化炉10においてブリッヂが形成され易い熱分解帯A2となる500〜800℃に制御される高さ位置に配置するのが好ましい。この実施形態では箱状の押圧体2が、熱分解帯A2となる高さ位置にガス化炉10の側壁に設けられた挿通孔6を挿通して炉心方向に図示しない油圧機構等のロッド5によって略水平に進退可能となっている。押圧体2の水平方向の移動距離は1cm〜5cm程度、好ましくは1cm〜2cmで十分である。
【0029】
押圧体2は、前面に炉内壁10aの周方向に沿った所定長さの押圧面3を有している。所定長さとは、炉内壁10aの周長の50〜100%程度であり、周方向に配置する押圧体2の数等によって決定される。例えば、周方向に沿って2つの押圧体2を配置する場合は、この所定長さを長く設定し、配置数が多い場合は短く設定する。尚、縦方向寸法は形成される熱分解帯A2の厚みや進退させ易さ等を考慮して決定する。
【0030】
ガス化炉10の側壁外側には、挿通孔6を覆うようにシールカバー4が設置され、押圧体2の進退スペースを確保しつつ、炉内の気密性を保つようにしている。
【0031】
温度センサの検知温度に基づいてブリッヂや吹き抜けが発生していると判断すると、通常は炉心方向において後退した位置にある押圧体2が前進して押圧面3で廃棄物Tを押圧し、廃棄物Tを炉内壁10aからはく離させてから通常の後退位置に戻り、空洞等をなくして偏りのない空気等の流路を確保する。それぞれの押圧体2は、個別独立に進退させてもよく、対向する押圧体2を同位相、逆位相で進退させてもよい。
【0032】
このように、炉内壁10aの周方向に沿った所定長さを有する押圧面3、即ち、所定の広さを有する押圧面3で廃棄物Tを押圧するので、確実にブリッヂや吹き抜けをなくすことができ、適正なガス化が可能となる。ブリッヂを破壊するだけでなく、適宜、押圧体2を進退させてブリッヂ、吹き抜けの予防をすることもできる。
【0033】
温度センサの検知温度からブリッヂや吹き抜けの発生有無を判断して、押圧体2を進退させる一連のプロセスは、図示しない制御装置に必要データを入力しておき、この予め入力したデータと検知した温度データとに基づいて自動制御運転することが好ましい。
【0034】
また、図3に示すように挿通孔6内部に引っ込んで後退位置にある押圧体2の押圧面3は、押圧面3の上方にある炉内壁10aと同じ位置にあり、通常時に炉内壁10aから突出しないので廃棄物Tの自重降下を妨げることがない。廃棄物Tの降下を円滑にするには、このように押圧面3を炉内壁10aと同一または炉内壁10aよりも後退した位置なるように押圧体2を後退可能にするのが好ましい。
【0035】
この挿入孔6は押圧体2が進退可能であり、炉内壁10aを拡径する部分となるので、本発明で規定する拡径部10bに該当する。
【0036】
また、図2に示すように押圧体2が炉心方向において、最も前進した際に押圧体2の後端が押圧体2の上方の炉内壁10aよりも後退した位置となる長さ、即ち、後端が炉内壁10aから突出せず抜け出ない長さを有しているので、押圧体2を進退させても押圧体2の後端面に廃棄物Tが入り込むことがなく、円滑に進退させることができる。押圧体2は中実体でもよいが、中空体として軽量化することができる。
【0037】
押圧体2の周方向の配置は、図2では均等に4分割した位置にしているがこれに限定されず、少なくとも2つの押圧体2を周方向に配置するようにすればよい。
【0038】
また、それぞれの押圧体2の高さ位置は、すべて同一高さでも、それぞれ高さ位置を変えてもよく、熱分解帯A2となる位置に配置されるようにすれば効果的である。
【0039】
実施形態では、押圧体2を炉心方向においてほぼ水平に進退させる構造となっているが、傾斜をつけて斜め下方、斜め上方に進退させてもよく、水平に進退する押圧体2、斜めに進退する押圧体2を組合せてもよい。
【0040】
図4に第2実施形態の押圧体2およびその周辺の構造を示す。この押圧体2はガス化炉10の炉内壁10aの周方向に沿った所定長さの押圧面3を有する縦方向寸法の短い円弧状の棒体となっている。
【0041】
この押圧体2も先の実施形態と同様にロッド5によって炉心方向に進退し、円弧状の面で廃棄物Tを押圧して確実にブリッヂや吹き抜けをなくすことができる。炉内壁10aの高さ方向中途より下方には炉内壁10aを外側に拡大した拡径部10bが設けられている。
【0042】
押圧体2は、この拡径部10bに後退して、この後退位置にある押圧体2の押圧面3は、押圧面3の上方の炉内壁10aよりも後退した位置となる。即ち、通常時となる後退位置においては、押圧面3は上方の炉内壁10aよりも突出しないので、廃棄物Tの自重降下を妨げることはない。尚、炉内壁10aに拡径部10bを設けず直線状にすることもできる。
【0043】
この押圧体2は縦方向寸法を比較的短い10〜20cmとしているので後退する際に、後端面に廃棄物が入り込んでも、後退している過程で滞留することなく排出されて、押圧面3を上方の炉内壁10aから突出させることなく、所定の後退位置まで後退させることができる。
【0044】
図5に押圧体2およびその周辺構造の変形例を示す。図5(a)に示す押圧体2は板状で、炉内壁の周方向に沿った所定長さの押圧面3を有している。この押圧体2も既述した実施形態と同様に、ロッド5によって炉心方向に進退可能となっている。このロッド5はガス化炉10の側壁の挿通孔6を挿通し、側壁外側には、挿通孔6およびロッド5を覆うシールカバー4が設置されている。
【0045】
この押圧体2では、押圧面3が広いので広範囲の廃棄物Tを押圧することができ、ブリッヂの破壊には効果的である。この例では、炉内壁10aに凹状の拡径部10bが設けられ、押圧体2が後退位置にある際に廃棄物Tの降下を妨げない構造となっている。
【0046】
図5(b)に示す押圧体2は、縦断面形状がL字状で、炉内壁10aの周方向に沿った所定長さの押圧面3を有し、この押圧面3の上端に平板2aが連結した形状となっている。
【0047】
この押圧体2では、押圧面3が広いのでブリッヂの破壊には効果的であり、押圧体2が進退した際に、上端の平板2aが廃棄物Tの押圧面3裏側への回り込みを防止するので、円滑に押圧体2を進退させることが可能となる。
【0048】
炉内壁10aには拡径部10bが設けられ、押圧体2が後退位置にある際に廃棄物Tの降下を妨げない構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態のガス化炉を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面拡大図である。
【図3】図1において押圧体を後退させた状態を例示する一部拡大図である。
【図4】第2実施形態のガス化炉の押圧体およびその周辺を示し、炉内壁を縦方向に切り取って一部を拡大した斜視図である。
【図5】押圧体およびその周辺構造の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b 開閉ゲート
2 押圧体 2a 押圧体の上端平板
3 押圧面
4 シールカバー
5 ロッド
6 挿通孔
7 廃棄物受入口
8 ペレット導入路
9 ペレット受入口
10 ガス化炉 10a 炉内壁 10b 拡径部
11 生成ガス排出路
12 ペレットホッパ
13 廃棄物ホッパ
14 ペレット投入機
15 スクリューフィーダ
16 投入路
17 残渣排出室
18 回転駆動モータ
19 テーブルフィーダ
20 ガス供給孔
21 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に廃棄物投入路を有し、廃棄物を低酸素雰囲気で熱分解させてガス化する移動床ガス化炉において、前記ガス化炉の高さ方向中途に炉内壁の周方向に沿った所定長さの押圧面を有する押圧体を周方向に複数設け、該複数の押圧体をそれぞれ炉心方向に進退可能としたことを特徴とする移動床ガス化炉。
【請求項2】
前記炉内壁に前記押圧体が後退可能な拡径部を設けるとともに、該拡径部に後退した押圧体の押圧面が炉心方向において、押圧面の上方の炉内壁と同一またはこの炉内壁より後退した位置となる請求項1に記載の移動床ガス化炉。
【請求項3】
前記押圧体は箱状であり、炉心方向において最も前進した際に、その後端が押圧体の上方の炉内壁よりも後退した位置となる長さを有する請求項1または2に記載の移動床ガス化炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−285599(P2007−285599A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113224(P2006−113224)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】