移動式防音塀
【課題】特許文献1の利点を生かしつつ、遮音部材の内面に乱反射した音(回折音)を、極力遮音部材の外側に逃げないようにすること。
【構成】支持体が、少なくとも下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、該支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材を備え、騒音発生場所の少なくとも片側に配設される移動式防音塀であって、前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、その上端部が前記騒音発生場所側に延在する前後の上部支持腕の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部を介して棒状体を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段を介して遮音部材の吊り下げ端部が取り付け部よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げた移動式防音塀。
【構成】支持体が、少なくとも下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、該支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材を備え、騒音発生場所の少なくとも片側に配設される移動式防音塀であって、前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、その上端部が前記騒音発生場所側に延在する前後の上部支持腕の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部を介して棒状体を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段を介して遮音部材の吊り下げ端部が取り付け部よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げた移動式防音塀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事、水道管の交換や修理に関する工事等の工事現場に於いて、切削機、設置機械器具等から発生する騒音を低減するために用いられる移動式防音塀に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動式防音塀の一例が記載されている。この移動式防音塀の課題は、建設・土木工事等に伴う多種多様の騒音を低減する騒音対策において、比較的簡易な防音塀で作業員一人が作業する工事から大型の作業機械による工事まで広範囲の防音に柔軟に対応できると共に、低周波域を含めた多種多様の騒音を確実に低減できることである。
【0003】
そして、これらの目的を達成するために、特許文献1の移動式防音塀は、防音パネルと移動可能な軽量枠支持フレームからフレーム構造または蛇腹状の防音パネル等によるフレキシブルな平面構造により、移動する騒音発生箇所に応じて防音範囲を変化できる移動式防音塀を騒音発生箇所の両側等に設置し、音源スピーカから騒音と逆位相の音を発することで防音塀の回折音を低減する能動消音装置を移動式防音塀の上下に設け、または下部は遮音部材5とし、防音パネル によるパッシブ消音とアクティブ消音とで低周波域を含む多種多様の騒音を低減する構成を採用している。
【0004】
上記構成に於いては、工事の進行に合わせて移動式防音塀を簡単に移動設置できるようにすることができるという利点があるものの、左右に対向する移動式防音塀は、互いに垂直状態で対向し、しかも、それらの上端部は内側に覆いかぶさるような形状や構造をしていないので、切削機、設置機械器具等から発生する騒音を低減するために防音塀の回折音を低減する能動消音装置を移動式防音塀の上部や下部に設ける必要がある。
【0005】
したがって、移動式防音塀の組立・設置が面倒である、構造が複雑化する、設置費用がかかる等の問題点があり、そのため「実用的」ではなかった。
【0006】
なお、特許文献2は、仮設用門扉に関する技術事項ではあるが、各揺動アームの上下端部を、枢軸、支板等を介して左右の連結支柱にそれぞれ連結して「伸縮枠」を形成していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−342592号公報
【特許文献2】特開平6−146758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の所期の目的は、工事の進行に合わせて簡単に移動設置できるという特許文献1の利点を活用しつつ、特許文献1の問題点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移動式防音塀は、支持体が、少なくとも下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、該支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材を備え、騒音発生場所の少なくとも片側に配設される移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、その先端部に相当する上端部が前記騒音発生場所側に延在する前後の上部支持腕の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部を介して棒状体を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段を介して前記遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の移動式防音塀は、騒音発生場所の左右を囲むように対向配設され左右一対の支持体が、それぞれ下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、各左右の支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材をそれぞれ備える移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、左右の垂直杆部分と、該左右の垂直杆部分に連設する横方向の連結部分を有する連結腕杆をそれぞれ取り外し可能に取り付け、これら前後の連結部分には係合部を介して左右一対の棒状体をそれぞれ取り外し可能に架設し、これらの棒状体にそれぞれ掛着手段を介して前記左右の遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりもそれぞれ内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする。
【0011】
上記発明に於いて、前記脚部の取り付け部が筒状嵌合部であるか、それとも逆に、前記上部支持腕の下端部に前記脚部の上方の端部に外嵌合する取付け部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(a)請求項1及び請求項3に記載の各発明は、棒状体に掛着手段を介して遮音部材の吊り下げ端部が支持体の取り付け部よりも内側に入るように吊り下げられているので、遮音部材の内面に乱反射した音(回折音)を、極力遮音部材の外側に逃げないようにすることができる。したがって、特許文献1に記載のような能動消音装置を複数固配設する必要がない。
(b)軽量化を図ったので、運搬、組立て、設置が容易である。付言すると、支持体の支持脚本体から上方の部材は、いわばテント型フレーム構造体なので、工事現場で、各部材を極めて簡単に組み合わせることができる。
(c)さらに、上方が開口しているので、埃が騒音発生場所Yに留まらない。
(d)請求項2に記載の発明は、脚部の取り付け部が筒状嵌合部であるか、それとも逆に、前記上部支持腕の下端部に前記脚部の取り付け部に外嵌合する取付け部が設けられているので、上部支持腕の脱着が容易である。
(e)請求項4に記載の発明は、連結腕杆の連結部分は、アーチ状、或いは山形状、或いはまた水平状のいずれかであるから、作業の邪魔に成らない。
(f)請求項5に記載の発明は、連結腕杆の結腕杆部分は、左右方向に伸縮可能であるから、移動する騒音発生箇所に応じて防音範囲(位置や形状)を容易に変化できるができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至図9は本発明の第1実施形態を示各説明図。図10乃至図14は本発明の第2実施形態を示各説明図。図15は第2実施形態の要部の設計変更例を示す説明図。
【図1】第1実施例を遮音部材の外側から見た斜視図。
【図2】図1を基準として、左側面からの概略説明図。
【図3】図1に於いて、支持体から遮音部材を取り外した状態の斜視図。
【図4】図3を基準として、左側面からの概略説明図。
【図5】支持体の取り付け部の一例を示す概略説明図。
【図6】図3に於いて、主たる部材の組み合わせ状態の説明図。
【図7】要部(係合部と棒状体)の概略説明図。
【図8】要部(掛着手段、上部側の遮音部材と下部側の防音カバーとの関係)の概略説明図。
【図9】要部(下部側の防音カバーの取付け構成)の概略説明図。
【図10】第2実施例を遮音部材の外側から見た斜視図。
【図11】図10を基準として、左側面からの概略説明図。
【図12】図10に於いて、左右の支持体から遮音部材をそれぞれ取り外した状態の斜視図。
【図13】要部(支持体の取り付け部、連結腕杆、係合部、棒状体)の概略説明図。
【図14】要部(連結腕杆)の概略説明図。
【図15】図15(a)と図15(b)は、第2実施例の要部の設計変更例を示す説明図。
【図16】支持体の取り付け部と連結腕杆の取り付け構造等の他の実施例を示す分解斜視図。
【図17】図16の実施例の取り付け構造を示す概略断面説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1乃至図9に示す一実施例により本発明を詳細に説明する。図1は支持体に遮音部材を掛け止めした状態の斜視図である。
【0015】
(1)移動式防音塀Xの基本的構成
図1で示すように、移動式防音塀Xは、支持体1が、少なくとも下端部にキャスター2b、3bを有する前後の脚部2,3と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材5とから成り、該支持体1の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ前後方向に伸縮可能な遮音部材12を備え、騒音発生場所Yの少なくとも片側に移動可能に配設される移動式防音塀Xであって、前記前後の脚部2,3の上方の端部に円筒或いは角筒状の取り付け部6をそれぞれ設け、該前後の取り付け部6,6に対して、その先端部に相当する上端部が前記騒音発生場所Y側に延在する前後の上部支持腕7,8の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部7d、8dを介して棒状体10を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段11を介して前記遮音部材12の吊り下げ端部12aが前記取り付け部6よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げられている(特徴事項)。
【0016】
そして、該実施例では、前記遮音部材12の中途部12bは、支持体1の外側に脱着可能に取付けられる下部防音カバー13の外縁部13aに支えられている。以下、各構成部材を詳細に説明する。
【0017】
なお、前記遮音部材12の下端部は、図2で示すように中途まで垂れ下がっているが、もちろん、脚部の下端部或いはキャスター2bまで垂れ下がっていても良い。また、前記下部防音カバー13は、本発明の本質的事項ではない。
【0018】
(2)支持体1
図3は、図1に於いて、支持体1から遮音部材を取り外した状態の斜視図である。この図3を基準にすると、手前に位置するのが前脚部2である。この前脚部2は、主として、水平ベース板2aと、該水平ベース板の下面に設けられた2個の自在キャスター2bと、前記水平ベース板2aの上面に固定的に立設された支持脚本体2cと、該支持脚本体の内外側壁の中央部にそれぞれ突出状態に設けられた把手2d、2dと、支持脚本体2cの外側側壁の上端部に取付けられた掛け止め具2eとから成る。
【0019】
ところで、前記把手2d、2dも、本発明の本質的事項ではない。あっても、なくても良い。支持脚本体2cの形態は特に問わないが、その長さは、例えば作業員の身長程度である。これに対して、前脚部2を基準として、これよりも後方に連結されている脚部(図面上、中間以降に位置するもの)を、ここでは「後脚部」という。
【0020】
したがって、図面上、中間に位置するものが、第1の後脚部3、該第1後脚部よりも後方に位置するものが第2後脚部4である。本実施例では、説明の便宜上、第2後脚部4まで示しているが、第3後脚部、第4後脚部、第5後脚部等を連続的に配設しても良い。なお、後脚部3、4の水平ベース板3a、4a、自在キャスター3b、4b、支持脚本体3c、4c等は、前脚部2のそれらと同一なので、同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、同一の構成には同一或いは同様の符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
前脚部2と後脚部3の間には、伸縮部材としての複数枚の伸縮パネル或いは複数本の揺動アームが接続状態で介在している。この点、第1後脚部3と第2後脚部4の間に介在する伸縮部材も同様である。本実施例では、前脚部2と第1後脚部3の間には、不番のX型揺動アームを複数本組み合わせて形成された伸縮枠5が採用されている。この伸縮枠5に代えて、特許文献1に記載のように複数枚の縦長パネルを、蝶番を介して連結しても良い。また伸縮枠5を構成する各揺動アームの上下端部は、枢軸、支板等を介して適宜に枢支されている(例えば特許文献2)。
【0022】
(3)取り付け部6と上部支持腕7
取り付け部6は、支持穴で良いし、又は支持柱でも良い。本実施例では、例えば図5で示すように支持筒或いは嵌合筒状の取り付け部6を採用している。すなわち、6は前記前後の脚部2、3(本実施例では第2後脚部4も含む)の上端部の水平板に支持柱6、6,6をそれぞれ固定的に垂設している。支持柱6の長さは、図2で示す不番の作業員が作業現場(騒音発生場所Y)に於いて、上部支持腕7を差し込むので、望ましくは、支持体1の長さ、作業員の普通一般の身長等を考慮して適宜に設定される。取り付け部6の形状や構造は、上部支持腕が脱着可能の範囲内で任意に設計変更が可能である。
【0023】
上部支持腕7は、下端部7aと、下端部7aに連続する弧状中途部7bと、この弧状中途部7bに連続する上端部7cと、この上端部7cの上面に一体的に設けた把持型、受け型、貫通型等の係合部7dとから成り、前述した前後の取り付け部6、6,6に対して、その上端部7cが騒音発生場所Y側に延在するように、その下端部を取り外し可能に嵌着する。この点は、図6及び図7で示すように、前脚部2の取り付け部6に嵌挿される或いは外嵌合する前の上部支持腕7に対して、該前上部支持腕7よりも後方に位置する第1後方上部支持腕8並びに該第1後方上部支持腕8よりも後方に位置する第2後方上部支持腕9も同様である。
【0024】
(4)係合部7dと棒状体10
図7は係合部7dと竿状の棒状体10との係合状態を示す概略説明図である。係合部7dの構成は、把持型或いは受け型或いはまた貫通型のいずれかを用いることができる。本実施例では、端面コ字形状の係合片を採用し、その底壁面を上部支持腕7の上面に溶着している。したがって、係合片7dの前後の対向壁には、竿状棒状体10用の不番の貫通孔が形成されている。したがって、図3で示すように、棒状体10は各上部支持腕7、8、9の上端部に設けられた各係合部8d、9dを介して前後の上部支持腕に取り外し可能に架設される。
【0025】
(5)掛着手段11、上部側の遮音部材12と下部側の防音カバー13との関係
図8は掛着手段11、上部側の遮音部材12と下部側の防音カバー13との関係を示す概略説明図である。各掛着手段11は、竿状棒状体10に余裕を持って外嵌合する嵌合環部分11aと、この嵌合環部分から半径外方向に延びるフック部分11bと、このフック部分11bに係合する「はとめ(環状の金具)11c」とから成り、前記はとめ11cは、上部側の遮音部材12の上端部に前後方向に所定間隔を有して設けられている。
【0026】
しかして、本実施例では、上部側の遮音部材12は、複数の掛着手段11を介して、その吊り下げ端部12aが前述した取り付け部6よりも内側に入るように、かつ、前記はとめ11cを介して取り外し可能に吊り下げられている。そして、遮音部材12の中途部12bは、支持体1の外側に脱着可能に取付けられる下部防音カバー13の外縁部13aに支えられ、しかも、その下端部12cは下部側の防音カバー13の外側へ屋根状に突出している。
【0027】
なお、図9は下部側の防音カバー13の取付け構成を示す概略説明図で、2eは前述したように支持脚本体2c(3c、4cも同様)の外側側壁の上端部に取付けられた複数固の掛け止め具で、これらの掛け止め具2eには、防音カバー13の上端部に固定された複数固の「はとめ(環状の金具)14」が掛け止めされる。
【0028】
(6)設置と組立
上記構成の移動式防音塀Xは、該移動式防音塀を構成する各部材を分解した状態で車両に搭載し、図2で示す騒音発生場所Y、すなわち、工事現場まで運搬する。騒音発生場所Yは、例えば水道管の交換や修理に関する工事であれば、水道管が埋設されている地盤Gの工事箇所を特定し、そこを騒音発生場所Yとする。そして、例えば道路と平行になるように騒音発生場所Yの少なくとも片側に配設するために各部材を車両から降ろし、かつ、その場で組み立てる。
【0029】
そこで、図6を参照にして組立の順序について簡単に説明する。まず、支持体1の前脚部2と第1後脚部3と第2後脚部4を適宜に開く。次に、支持脚本体2c、3c、4cの各取り付け部6に手前の上部支持腕7、第1後方上部支持腕8、第2後方上部支持腕9の各下端部をそれぞれ差し込む。次に、上部支持腕7、第1後方上部支持腕8、第2後方上部支持腕9の各係合部7d、8d、9dに棒状体10を水平方向に順番に差し込んで行く。つまり、架設する。この時、例えば手前の上部支持腕7の係合部7dに棒状体10の一端部を差し込んで場合には、その差し込んだ箇所に掛着手段11の複数個の係合環11aを嵌める。この点は係合部8dに棒状体10を差し込んだ場合も同様である。次に、下部防音カバー13の各はとめ14を支持脚本体2c、3c、4cの各掛け止め具2eに掛ける。そして、遮音部材12の吊り下げ端部12aを各はとめ11cを介して複数個の係合環11aの各フック11bに掛ける。そうすると、図1に示すような「移動式防音塀X」が出来上がる。
【0030】
この移動式防音塀Xは、図2で示すように騒音発生場所の少なくとも片側に前後方向に移動可能に配設され、管の切断音、掘削時、埋め戻し時の音が軽減される。特に、本実施例の移動式防音塀Xは、棒状体10に掛着手段11を介して遮音部材12の吊り下げ端部12aが支持体1の取り付け部6よりも内側に入るように吊り下げられているので、遮音部材12の内面に乱反射した音(回折音)を、極力遮音部材12の外側に逃げないようにすることができる。また、上方が開口しているので、埃が騒音発生場所Yに留まらない。
【実施例】
【0031】
本実施例では、遮音部材12の中途部は、支持体1の外側に脱着可能に取付けられる下部防音カバー13の外縁部13aに支えられ、その下端部12cは下部側の防音カバー13の外側へ屋根状に突出しているが、遮音部材12は一部ではなく、前述したように全体的に支持体1の下端部まで垂れ下がるようにしても良い。したがって、遮音部材12の長さは適宜に設計変更し得る事項である。また、取り付け部6の嵌合穴や嵌合柱等は、望ましくは角穴、角筒柱等であり、上部支持腕の下端部の形状も角穴、角筒柱等に対応している。
【0032】
次に、図10乃至図14を参照にして第2実施形態を説明する。この第2実施形態を説明するにあたって、第1実施形態と同一の構成には、同一又は同様の符号を付して重複する説明を省略する。第2実施形態が前記第1実施形態と主として異なる事項は、(a)移動式防音塀X1が、騒音発生場所Yを左右に取り囲むように、例えば平行状態に配設した点、(b)左右に対向配設され左右一対の支持体1、1は、第1実施形態の上部支持腕を含む連結腕杆7A、8A、9Aを介して一体的に連結されている点、付言すると、支持体の脚部を基準とした上方の部材のフレーム構造体が、いわば「テント型のフレーム構造体」である点である。
【0033】
しかして、第2実施形態の移動式防音塀X1は、騒音発生場所Yの左右を囲むように対向配設され左右一対の支持体1、1が、それぞれ下端部にキャスター2bを有する前後の脚部2、3、4と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材5とから成り、各左右の支持体1、1の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材12をそれぞれ備える。
【0034】
そして、前記前後の脚部2、3、4の上端部に取り付け部6、6、6をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、左右の垂直杆部分7a、8a、9aと、該左右の垂直杆部分に中途部(折り曲げ部分)7b、8b、9bを介して連設する横方向の連結部分(上部部分)7c、8c、9cを有する連結腕杆7A、8A、9Aをそれぞれ取り外し可能に嵌着し、これら前後の連結部分7c、8c、9cにはそれぞれ係合部7d、8d、9dが一体的に設けられ、これらの係合部7d、8d、9dを介して左右一対の棒状体10、10をそれぞれ取り外し可能に架設し、これらの棒状体10、10にそれぞれ掛着手段11、11、11を介して前記左右一対の遮音部材12、12の吊り下げ端部12a、12aが前記取り付け部6、6、6よりもそれぞれ内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げられている。
【0035】
この第2実施形態の移動式防音塀X1の組立て態様は、第1実施形態のそれと同一である。この移動式防音塀X1の互い前後する連結腕杆7A、8A、9Aの間は開口している。なお、連結腕杆の連結部分は、アーチ状或いは山形状或いはまた水平状のいずれかが採用される。
【0036】
次に、図15は、第2実施例の要部の設計変更例を示す説明図である。この変形例では、連結腕杆7B(8B、9B)が左右方向に伸縮自在である点が、第2実施形態の連結腕杆7A(8A、9A)と異なる。このように構成すると、騒音発生場所Yの横幅に対応して左右の支持体1、1を設置することができるという利点がある。
【0037】
なお、遮音部材12及び下部防音カバー13の材質や構成は、特に問わないが、支持体1を構成する前後の支持脚本体2c、3c、4cは、それぞれ伸縮部材5で接続しているので、例えば前後方向に伸縮する素材や蛇腹状のパネル、テントに使用されるシート等が適宜に採用され得る。
【0038】
次に、図16は支持体の取り付け部と上部支持腕の取り付け構造等の他の実施例を示す分解斜視図、図17は、その取り付け構造を示す概略断面説明図である。例えば図5を示すと明らかなように、第1実施例の手前や後方の上部支持腕を、支持体1の前脚部2等に取り付ける場合には、脚部の取り付け部6が筒状嵌合部、つまり、パイプ状であって、このパイプ状の取り付け部6に上部支持腕の下端部を嵌入(差し込む)または、外嵌合する構成であるが、図16及び図17の他の実施例では、それとは逆に、上部支持腕7(8、9)の下端部に取付け部6Aが設けられている。
【0039】
しかして、前記取付け部6Aは脚部2(3,4)の上方の端部に外嵌合するものであるから、その下端部は開口15していると共に、望ましくは、取り付けの利便性を考慮して、一側に第2開口16が設けられている。後者の場合、脚部2(3,4)に上部支持腕7(8、9)の下端部の取付け部6Aを外嵌合した際、該上部支持腕7(8、9)が脚部2(3,4)から外れないように、固着手段17(ボルト17a、ナット17b)を介して、両方は確実に連結される。なお、取付け部6A及び脚部2(3,4)の上方の端部には、それぞれ固着手段17用の取り付け孔18、19が形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、道路工事、水道管の交換や修理に関する工事等の工事現場に於いて、切削機、設置機械器具等から発生する騒音を低減するために用いられる。
【符号の説明】
【0041】
X、X1…移動式防音塀、Y…騒音発生場所、1…支持体、2…前脚部、2c、3c、4c…支持脚本体、3…第1後脚部、4…第2後脚部、5…伸縮部材、6、6A…取り付け部、7…手前の上部支持腕、7A…手前の連結腕杆、8…第1後方上部支持腕、8A…第1後方連結腕杆、9…第2後方上部支持腕、9A…第2後方連結腕杆、7d、8d、9d…係合部、10…棒状体、11…掛着手段、12…遮音部材、12a…吊り下げ端部、12b…中途部、13…下部防音カバー、15…下端の開口、16…側壁の開口、17…固着手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事、水道管の交換や修理に関する工事等の工事現場に於いて、切削機、設置機械器具等から発生する騒音を低減するために用いられる移動式防音塀に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動式防音塀の一例が記載されている。この移動式防音塀の課題は、建設・土木工事等に伴う多種多様の騒音を低減する騒音対策において、比較的簡易な防音塀で作業員一人が作業する工事から大型の作業機械による工事まで広範囲の防音に柔軟に対応できると共に、低周波域を含めた多種多様の騒音を確実に低減できることである。
【0003】
そして、これらの目的を達成するために、特許文献1の移動式防音塀は、防音パネルと移動可能な軽量枠支持フレームからフレーム構造または蛇腹状の防音パネル等によるフレキシブルな平面構造により、移動する騒音発生箇所に応じて防音範囲を変化できる移動式防音塀を騒音発生箇所の両側等に設置し、音源スピーカから騒音と逆位相の音を発することで防音塀の回折音を低減する能動消音装置を移動式防音塀の上下に設け、または下部は遮音部材5とし、防音パネル によるパッシブ消音とアクティブ消音とで低周波域を含む多種多様の騒音を低減する構成を採用している。
【0004】
上記構成に於いては、工事の進行に合わせて移動式防音塀を簡単に移動設置できるようにすることができるという利点があるものの、左右に対向する移動式防音塀は、互いに垂直状態で対向し、しかも、それらの上端部は内側に覆いかぶさるような形状や構造をしていないので、切削機、設置機械器具等から発生する騒音を低減するために防音塀の回折音を低減する能動消音装置を移動式防音塀の上部や下部に設ける必要がある。
【0005】
したがって、移動式防音塀の組立・設置が面倒である、構造が複雑化する、設置費用がかかる等の問題点があり、そのため「実用的」ではなかった。
【0006】
なお、特許文献2は、仮設用門扉に関する技術事項ではあるが、各揺動アームの上下端部を、枢軸、支板等を介して左右の連結支柱にそれぞれ連結して「伸縮枠」を形成していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−342592号公報
【特許文献2】特開平6−146758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の所期の目的は、工事の進行に合わせて簡単に移動設置できるという特許文献1の利点を活用しつつ、特許文献1の問題点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移動式防音塀は、支持体が、少なくとも下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、該支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材を備え、騒音発生場所の少なくとも片側に配設される移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、その先端部に相当する上端部が前記騒音発生場所側に延在する前後の上部支持腕の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部を介して棒状体を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段を介して前記遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の移動式防音塀は、騒音発生場所の左右を囲むように対向配設され左右一対の支持体が、それぞれ下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、各左右の支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材をそれぞれ備える移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、左右の垂直杆部分と、該左右の垂直杆部分に連設する横方向の連結部分を有する連結腕杆をそれぞれ取り外し可能に取り付け、これら前後の連結部分には係合部を介して左右一対の棒状体をそれぞれ取り外し可能に架設し、これらの棒状体にそれぞれ掛着手段を介して前記左右の遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりもそれぞれ内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする。
【0011】
上記発明に於いて、前記脚部の取り付け部が筒状嵌合部であるか、それとも逆に、前記上部支持腕の下端部に前記脚部の上方の端部に外嵌合する取付け部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(a)請求項1及び請求項3に記載の各発明は、棒状体に掛着手段を介して遮音部材の吊り下げ端部が支持体の取り付け部よりも内側に入るように吊り下げられているので、遮音部材の内面に乱反射した音(回折音)を、極力遮音部材の外側に逃げないようにすることができる。したがって、特許文献1に記載のような能動消音装置を複数固配設する必要がない。
(b)軽量化を図ったので、運搬、組立て、設置が容易である。付言すると、支持体の支持脚本体から上方の部材は、いわばテント型フレーム構造体なので、工事現場で、各部材を極めて簡単に組み合わせることができる。
(c)さらに、上方が開口しているので、埃が騒音発生場所Yに留まらない。
(d)請求項2に記載の発明は、脚部の取り付け部が筒状嵌合部であるか、それとも逆に、前記上部支持腕の下端部に前記脚部の取り付け部に外嵌合する取付け部が設けられているので、上部支持腕の脱着が容易である。
(e)請求項4に記載の発明は、連結腕杆の連結部分は、アーチ状、或いは山形状、或いはまた水平状のいずれかであるから、作業の邪魔に成らない。
(f)請求項5に記載の発明は、連結腕杆の結腕杆部分は、左右方向に伸縮可能であるから、移動する騒音発生箇所に応じて防音範囲(位置や形状)を容易に変化できるができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至図9は本発明の第1実施形態を示各説明図。図10乃至図14は本発明の第2実施形態を示各説明図。図15は第2実施形態の要部の設計変更例を示す説明図。
【図1】第1実施例を遮音部材の外側から見た斜視図。
【図2】図1を基準として、左側面からの概略説明図。
【図3】図1に於いて、支持体から遮音部材を取り外した状態の斜視図。
【図4】図3を基準として、左側面からの概略説明図。
【図5】支持体の取り付け部の一例を示す概略説明図。
【図6】図3に於いて、主たる部材の組み合わせ状態の説明図。
【図7】要部(係合部と棒状体)の概略説明図。
【図8】要部(掛着手段、上部側の遮音部材と下部側の防音カバーとの関係)の概略説明図。
【図9】要部(下部側の防音カバーの取付け構成)の概略説明図。
【図10】第2実施例を遮音部材の外側から見た斜視図。
【図11】図10を基準として、左側面からの概略説明図。
【図12】図10に於いて、左右の支持体から遮音部材をそれぞれ取り外した状態の斜視図。
【図13】要部(支持体の取り付け部、連結腕杆、係合部、棒状体)の概略説明図。
【図14】要部(連結腕杆)の概略説明図。
【図15】図15(a)と図15(b)は、第2実施例の要部の設計変更例を示す説明図。
【図16】支持体の取り付け部と連結腕杆の取り付け構造等の他の実施例を示す分解斜視図。
【図17】図16の実施例の取り付け構造を示す概略断面説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1乃至図9に示す一実施例により本発明を詳細に説明する。図1は支持体に遮音部材を掛け止めした状態の斜視図である。
【0015】
(1)移動式防音塀Xの基本的構成
図1で示すように、移動式防音塀Xは、支持体1が、少なくとも下端部にキャスター2b、3bを有する前後の脚部2,3と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材5とから成り、該支持体1の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ前後方向に伸縮可能な遮音部材12を備え、騒音発生場所Yの少なくとも片側に移動可能に配設される移動式防音塀Xであって、前記前後の脚部2,3の上方の端部に円筒或いは角筒状の取り付け部6をそれぞれ設け、該前後の取り付け部6,6に対して、その先端部に相当する上端部が前記騒音発生場所Y側に延在する前後の上部支持腕7,8の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部7d、8dを介して棒状体10を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段11を介して前記遮音部材12の吊り下げ端部12aが前記取り付け部6よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げられている(特徴事項)。
【0016】
そして、該実施例では、前記遮音部材12の中途部12bは、支持体1の外側に脱着可能に取付けられる下部防音カバー13の外縁部13aに支えられている。以下、各構成部材を詳細に説明する。
【0017】
なお、前記遮音部材12の下端部は、図2で示すように中途まで垂れ下がっているが、もちろん、脚部の下端部或いはキャスター2bまで垂れ下がっていても良い。また、前記下部防音カバー13は、本発明の本質的事項ではない。
【0018】
(2)支持体1
図3は、図1に於いて、支持体1から遮音部材を取り外した状態の斜視図である。この図3を基準にすると、手前に位置するのが前脚部2である。この前脚部2は、主として、水平ベース板2aと、該水平ベース板の下面に設けられた2個の自在キャスター2bと、前記水平ベース板2aの上面に固定的に立設された支持脚本体2cと、該支持脚本体の内外側壁の中央部にそれぞれ突出状態に設けられた把手2d、2dと、支持脚本体2cの外側側壁の上端部に取付けられた掛け止め具2eとから成る。
【0019】
ところで、前記把手2d、2dも、本発明の本質的事項ではない。あっても、なくても良い。支持脚本体2cの形態は特に問わないが、その長さは、例えば作業員の身長程度である。これに対して、前脚部2を基準として、これよりも後方に連結されている脚部(図面上、中間以降に位置するもの)を、ここでは「後脚部」という。
【0020】
したがって、図面上、中間に位置するものが、第1の後脚部3、該第1後脚部よりも後方に位置するものが第2後脚部4である。本実施例では、説明の便宜上、第2後脚部4まで示しているが、第3後脚部、第4後脚部、第5後脚部等を連続的に配設しても良い。なお、後脚部3、4の水平ベース板3a、4a、自在キャスター3b、4b、支持脚本体3c、4c等は、前脚部2のそれらと同一なので、同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、同一の構成には同一或いは同様の符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
前脚部2と後脚部3の間には、伸縮部材としての複数枚の伸縮パネル或いは複数本の揺動アームが接続状態で介在している。この点、第1後脚部3と第2後脚部4の間に介在する伸縮部材も同様である。本実施例では、前脚部2と第1後脚部3の間には、不番のX型揺動アームを複数本組み合わせて形成された伸縮枠5が採用されている。この伸縮枠5に代えて、特許文献1に記載のように複数枚の縦長パネルを、蝶番を介して連結しても良い。また伸縮枠5を構成する各揺動アームの上下端部は、枢軸、支板等を介して適宜に枢支されている(例えば特許文献2)。
【0022】
(3)取り付け部6と上部支持腕7
取り付け部6は、支持穴で良いし、又は支持柱でも良い。本実施例では、例えば図5で示すように支持筒或いは嵌合筒状の取り付け部6を採用している。すなわち、6は前記前後の脚部2、3(本実施例では第2後脚部4も含む)の上端部の水平板に支持柱6、6,6をそれぞれ固定的に垂設している。支持柱6の長さは、図2で示す不番の作業員が作業現場(騒音発生場所Y)に於いて、上部支持腕7を差し込むので、望ましくは、支持体1の長さ、作業員の普通一般の身長等を考慮して適宜に設定される。取り付け部6の形状や構造は、上部支持腕が脱着可能の範囲内で任意に設計変更が可能である。
【0023】
上部支持腕7は、下端部7aと、下端部7aに連続する弧状中途部7bと、この弧状中途部7bに連続する上端部7cと、この上端部7cの上面に一体的に設けた把持型、受け型、貫通型等の係合部7dとから成り、前述した前後の取り付け部6、6,6に対して、その上端部7cが騒音発生場所Y側に延在するように、その下端部を取り外し可能に嵌着する。この点は、図6及び図7で示すように、前脚部2の取り付け部6に嵌挿される或いは外嵌合する前の上部支持腕7に対して、該前上部支持腕7よりも後方に位置する第1後方上部支持腕8並びに該第1後方上部支持腕8よりも後方に位置する第2後方上部支持腕9も同様である。
【0024】
(4)係合部7dと棒状体10
図7は係合部7dと竿状の棒状体10との係合状態を示す概略説明図である。係合部7dの構成は、把持型或いは受け型或いはまた貫通型のいずれかを用いることができる。本実施例では、端面コ字形状の係合片を採用し、その底壁面を上部支持腕7の上面に溶着している。したがって、係合片7dの前後の対向壁には、竿状棒状体10用の不番の貫通孔が形成されている。したがって、図3で示すように、棒状体10は各上部支持腕7、8、9の上端部に設けられた各係合部8d、9dを介して前後の上部支持腕に取り外し可能に架設される。
【0025】
(5)掛着手段11、上部側の遮音部材12と下部側の防音カバー13との関係
図8は掛着手段11、上部側の遮音部材12と下部側の防音カバー13との関係を示す概略説明図である。各掛着手段11は、竿状棒状体10に余裕を持って外嵌合する嵌合環部分11aと、この嵌合環部分から半径外方向に延びるフック部分11bと、このフック部分11bに係合する「はとめ(環状の金具)11c」とから成り、前記はとめ11cは、上部側の遮音部材12の上端部に前後方向に所定間隔を有して設けられている。
【0026】
しかして、本実施例では、上部側の遮音部材12は、複数の掛着手段11を介して、その吊り下げ端部12aが前述した取り付け部6よりも内側に入るように、かつ、前記はとめ11cを介して取り外し可能に吊り下げられている。そして、遮音部材12の中途部12bは、支持体1の外側に脱着可能に取付けられる下部防音カバー13の外縁部13aに支えられ、しかも、その下端部12cは下部側の防音カバー13の外側へ屋根状に突出している。
【0027】
なお、図9は下部側の防音カバー13の取付け構成を示す概略説明図で、2eは前述したように支持脚本体2c(3c、4cも同様)の外側側壁の上端部に取付けられた複数固の掛け止め具で、これらの掛け止め具2eには、防音カバー13の上端部に固定された複数固の「はとめ(環状の金具)14」が掛け止めされる。
【0028】
(6)設置と組立
上記構成の移動式防音塀Xは、該移動式防音塀を構成する各部材を分解した状態で車両に搭載し、図2で示す騒音発生場所Y、すなわち、工事現場まで運搬する。騒音発生場所Yは、例えば水道管の交換や修理に関する工事であれば、水道管が埋設されている地盤Gの工事箇所を特定し、そこを騒音発生場所Yとする。そして、例えば道路と平行になるように騒音発生場所Yの少なくとも片側に配設するために各部材を車両から降ろし、かつ、その場で組み立てる。
【0029】
そこで、図6を参照にして組立の順序について簡単に説明する。まず、支持体1の前脚部2と第1後脚部3と第2後脚部4を適宜に開く。次に、支持脚本体2c、3c、4cの各取り付け部6に手前の上部支持腕7、第1後方上部支持腕8、第2後方上部支持腕9の各下端部をそれぞれ差し込む。次に、上部支持腕7、第1後方上部支持腕8、第2後方上部支持腕9の各係合部7d、8d、9dに棒状体10を水平方向に順番に差し込んで行く。つまり、架設する。この時、例えば手前の上部支持腕7の係合部7dに棒状体10の一端部を差し込んで場合には、その差し込んだ箇所に掛着手段11の複数個の係合環11aを嵌める。この点は係合部8dに棒状体10を差し込んだ場合も同様である。次に、下部防音カバー13の各はとめ14を支持脚本体2c、3c、4cの各掛け止め具2eに掛ける。そして、遮音部材12の吊り下げ端部12aを各はとめ11cを介して複数個の係合環11aの各フック11bに掛ける。そうすると、図1に示すような「移動式防音塀X」が出来上がる。
【0030】
この移動式防音塀Xは、図2で示すように騒音発生場所の少なくとも片側に前後方向に移動可能に配設され、管の切断音、掘削時、埋め戻し時の音が軽減される。特に、本実施例の移動式防音塀Xは、棒状体10に掛着手段11を介して遮音部材12の吊り下げ端部12aが支持体1の取り付け部6よりも内側に入るように吊り下げられているので、遮音部材12の内面に乱反射した音(回折音)を、極力遮音部材12の外側に逃げないようにすることができる。また、上方が開口しているので、埃が騒音発生場所Yに留まらない。
【実施例】
【0031】
本実施例では、遮音部材12の中途部は、支持体1の外側に脱着可能に取付けられる下部防音カバー13の外縁部13aに支えられ、その下端部12cは下部側の防音カバー13の外側へ屋根状に突出しているが、遮音部材12は一部ではなく、前述したように全体的に支持体1の下端部まで垂れ下がるようにしても良い。したがって、遮音部材12の長さは適宜に設計変更し得る事項である。また、取り付け部6の嵌合穴や嵌合柱等は、望ましくは角穴、角筒柱等であり、上部支持腕の下端部の形状も角穴、角筒柱等に対応している。
【0032】
次に、図10乃至図14を参照にして第2実施形態を説明する。この第2実施形態を説明するにあたって、第1実施形態と同一の構成には、同一又は同様の符号を付して重複する説明を省略する。第2実施形態が前記第1実施形態と主として異なる事項は、(a)移動式防音塀X1が、騒音発生場所Yを左右に取り囲むように、例えば平行状態に配設した点、(b)左右に対向配設され左右一対の支持体1、1は、第1実施形態の上部支持腕を含む連結腕杆7A、8A、9Aを介して一体的に連結されている点、付言すると、支持体の脚部を基準とした上方の部材のフレーム構造体が、いわば「テント型のフレーム構造体」である点である。
【0033】
しかして、第2実施形態の移動式防音塀X1は、騒音発生場所Yの左右を囲むように対向配設され左右一対の支持体1、1が、それぞれ下端部にキャスター2bを有する前後の脚部2、3、4と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材5とから成り、各左右の支持体1、1の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材12をそれぞれ備える。
【0034】
そして、前記前後の脚部2、3、4の上端部に取り付け部6、6、6をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、左右の垂直杆部分7a、8a、9aと、該左右の垂直杆部分に中途部(折り曲げ部分)7b、8b、9bを介して連設する横方向の連結部分(上部部分)7c、8c、9cを有する連結腕杆7A、8A、9Aをそれぞれ取り外し可能に嵌着し、これら前後の連結部分7c、8c、9cにはそれぞれ係合部7d、8d、9dが一体的に設けられ、これらの係合部7d、8d、9dを介して左右一対の棒状体10、10をそれぞれ取り外し可能に架設し、これらの棒状体10、10にそれぞれ掛着手段11、11、11を介して前記左右一対の遮音部材12、12の吊り下げ端部12a、12aが前記取り付け部6、6、6よりもそれぞれ内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げられている。
【0035】
この第2実施形態の移動式防音塀X1の組立て態様は、第1実施形態のそれと同一である。この移動式防音塀X1の互い前後する連結腕杆7A、8A、9Aの間は開口している。なお、連結腕杆の連結部分は、アーチ状或いは山形状或いはまた水平状のいずれかが採用される。
【0036】
次に、図15は、第2実施例の要部の設計変更例を示す説明図である。この変形例では、連結腕杆7B(8B、9B)が左右方向に伸縮自在である点が、第2実施形態の連結腕杆7A(8A、9A)と異なる。このように構成すると、騒音発生場所Yの横幅に対応して左右の支持体1、1を設置することができるという利点がある。
【0037】
なお、遮音部材12及び下部防音カバー13の材質や構成は、特に問わないが、支持体1を構成する前後の支持脚本体2c、3c、4cは、それぞれ伸縮部材5で接続しているので、例えば前後方向に伸縮する素材や蛇腹状のパネル、テントに使用されるシート等が適宜に採用され得る。
【0038】
次に、図16は支持体の取り付け部と上部支持腕の取り付け構造等の他の実施例を示す分解斜視図、図17は、その取り付け構造を示す概略断面説明図である。例えば図5を示すと明らかなように、第1実施例の手前や後方の上部支持腕を、支持体1の前脚部2等に取り付ける場合には、脚部の取り付け部6が筒状嵌合部、つまり、パイプ状であって、このパイプ状の取り付け部6に上部支持腕の下端部を嵌入(差し込む)または、外嵌合する構成であるが、図16及び図17の他の実施例では、それとは逆に、上部支持腕7(8、9)の下端部に取付け部6Aが設けられている。
【0039】
しかして、前記取付け部6Aは脚部2(3,4)の上方の端部に外嵌合するものであるから、その下端部は開口15していると共に、望ましくは、取り付けの利便性を考慮して、一側に第2開口16が設けられている。後者の場合、脚部2(3,4)に上部支持腕7(8、9)の下端部の取付け部6Aを外嵌合した際、該上部支持腕7(8、9)が脚部2(3,4)から外れないように、固着手段17(ボルト17a、ナット17b)を介して、両方は確実に連結される。なお、取付け部6A及び脚部2(3,4)の上方の端部には、それぞれ固着手段17用の取り付け孔18、19が形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、道路工事、水道管の交換や修理に関する工事等の工事現場に於いて、切削機、設置機械器具等から発生する騒音を低減するために用いられる。
【符号の説明】
【0041】
X、X1…移動式防音塀、Y…騒音発生場所、1…支持体、2…前脚部、2c、3c、4c…支持脚本体、3…第1後脚部、4…第2後脚部、5…伸縮部材、6、6A…取り付け部、7…手前の上部支持腕、7A…手前の連結腕杆、8…第1後方上部支持腕、8A…第1後方連結腕杆、9…第2後方上部支持腕、9A…第2後方連結腕杆、7d、8d、9d…係合部、10…棒状体、11…掛着手段、12…遮音部材、12a…吊り下げ端部、12b…中途部、13…下部防音カバー、15…下端の開口、16…側壁の開口、17…固着手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体が、少なくとも下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、該支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材を備え、騒音発生場所の少なくとも片側に配設される移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、その先端部に相当する上端部が前記騒音発生場所側に延在する前後の上部支持腕の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部を介して棒状体を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段を介して前記遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする移動式防音塀。
【請求項2】
請求項1に於いて、前記脚部の取り付け部が筒状嵌合部であるか、それとも逆に、前記上部支持腕の下端部に前記脚部の上方の端部に外嵌合する取付け部が設けられていることを特徴とする移動式防音塀。
【請求項3】
騒音発生場所の左右を囲むように対向配設され左右一対の支持体が、それぞれ下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、各左右の支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材をそれぞれ備える移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、左右の垂直杆部分と、該左右の垂直杆部分に連設する横方向の連結部分を有する連結腕杆をそれぞれ取り外し可能に取り付け、これら前後の連結部分には係合部を介して左右一対の棒状体をそれぞれ取り外し可能に架設し、これらの棒状体にそれぞれ掛着手段を介して前記左右の遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりもそれぞれ内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする移動式防音塀。
【請求項4】
請求項3に於いて、連結腕杆の連結部分は、アーチ状或いは山形状或いはまた水平状のいずれかであることを特徴とする移動式防音塀。
【請求項5】
請求項3に於いて、連結腕杆の結腕杆部分は、左右方向に伸縮可能であることを特徴とする移動式防音塀。
【請求項1】
支持体が、少なくとも下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、該支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材を備え、騒音発生場所の少なくとも片側に配設される移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、その先端部に相当する上端部が前記騒音発生場所側に延在する前後の上部支持腕の下端部をそれぞれ取り外し可能に取り付け、該前後の上部支持腕の前記上端部に係合部を介して棒状体を取り外し可能に架設し、この棒状体に掛着手段を介して前記遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりも内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする移動式防音塀。
【請求項2】
請求項1に於いて、前記脚部の取り付け部が筒状嵌合部であるか、それとも逆に、前記上部支持腕の下端部に前記脚部の上方の端部に外嵌合する取付け部が設けられていることを特徴とする移動式防音塀。
【請求項3】
騒音発生場所の左右を囲むように対向配設され左右一対の支持体が、それぞれ下端部にキャスターを有する前後の脚部と、該前後の脚部にそれぞれ連結された伸縮部材とから成り、各左右の支持体の外側に一部又は全部が位置するように設けられかつ伸縮可能な遮音部材をそれぞれ備える移動式防音塀であって、前記前後の脚部の上方の端部に取り付け部をそれぞれ設け、該前後の取り付け部に対して、左右の垂直杆部分と、該左右の垂直杆部分に連設する横方向の連結部分を有する連結腕杆をそれぞれ取り外し可能に取り付け、これら前後の連結部分には係合部を介して左右一対の棒状体をそれぞれ取り外し可能に架設し、これらの棒状体にそれぞれ掛着手段を介して前記左右の遮音部材の吊り下げ端部が前記取り付け部よりもそれぞれ内側に入るようにかつ取り外し可能に吊り下げたことを特徴とする移動式防音塀。
【請求項4】
請求項3に於いて、連結腕杆の連結部分は、アーチ状或いは山形状或いはまた水平状のいずれかであることを特徴とする移動式防音塀。
【請求項5】
請求項3に於いて、連結腕杆の結腕杆部分は、左右方向に伸縮可能であることを特徴とする移動式防音塀。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−214337(P2011−214337A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84825(P2010−84825)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(590002208)横浜市 (13)
【出願人】(507093226)明治テック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(590002208)横浜市 (13)
【出願人】(507093226)明治テック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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