説明

移動業務支援ジャケット

【課題】 移動業務支援ジャケットは、緊急での対応が要求され、移動業務遂行時にバッテリーが消耗し動作しなくなる、出動時に機器の接続に手間を取ったりオペレーションミスをしたりする、必要な小道具を持っていくのを忘れるなどがある。
ジャケットに情報機器を装着すると、ケーブルが引っかかる、汚れたときの洗濯困難、ジャケットデザインのフレキシビリティがないなどの課題があった。
【解決手段】 機器固定、接続のためにフレームジャケットを用意し情報機器、動画撮像用カメラ、音声入出力機器、環境センサー、無線通信機器などを装備しておき、その上にアウタージャケットを装備するものである。このアウタージャケットには巡回・警備など移動業務を実施するときに必要な小物を装備して置き、ジャンパー使用待機時には充電機能のついた専用のジャケットハンガーに吊り下げておき、着用時にはいつでも機器類がスタンバイ状態に維持することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の設備巡回、緊急警備などの移動業務のときに、移動業務遂行者は動画撮像カメラ画像伝達手段、音声伝達手段、環境センサーなどを装着し、巡回状況や異常時にその現場の状況を無線で警備センター側に伝達することができるシステムを提供するための移動業務支援ジャケットの構造に関する。
また管理センターと頻繁に情報のやり取りが行われる宅配業務や、屋外にある設備機器の巡回などにも応用が可能である。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2002−300570号公報 モバイル画像情報システム
巡回警備員、技術員、ビル管理センターの技術員及び本社の技術員の三者間でのリアルタイムで双方向の情報の交換を可能にする方式として、巡回警備員がヘルメットにカメラを装着しベルトに通信端末を装着し手に情報端末を持ち、逐次情報の入出力する方式の発明がなされている。
しかしながらこの発明では装着する機器が一つ一つばらばらで、装着のたびに機器の接続をする必要があり、又ケーブル類が身の回りで煩雑になり行動の制約があるばかりでなく緊急で装着することは困難であるという欠点がある。
【0003】
【特許文献2】特開2006−86582号公報 携帯型防犯カメラ
この発明は通常の服を着用したうえで、通常業務をしている人に対し、防犯カメラをもたせるというもので、防犯カメラを稼動させ、このカメラが捕らえた情報を遠距離に転送するためのシステム、電源などの装着や配線に対する配慮がされておらず、作業のときに配線が引っかかるなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
課題としては、移動業務遂行時にバッテリーが消耗し動作しなくなる、出動時に機器の接続に手間を取ったりオペレーションミスをしたりする、移動業務遂行時に必要な小道具を持っていくのを忘れるなどがある。
また、一般にジャケットに情報機器を装着すると、ケーブルが煩雑に入り組み、更に外部に出ているケーブルが移動中に引っかかる、上着が汚れ洗濯するときに全てはずさなくてはならない、ジャケットのサイズを色々用意しなければならない、利用する会社の制服に合わせて複雑な構造のジャケットをデザインしなければならないなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明ではこれらの課題を解決するために、予め機器固定のために専用のフレームジャケット2を用意しておき、このジャケットに無線通信機能つき情報機器、動画撮像用カメラ、音声入出力機器、無線通信機器などを装備しておき、その上にアウタージャケットを装備するものであり、このアウタージャケットには巡回・警備など移動業務を実施するときに必要な懐中電灯、警備用品などをも装備して置く。ジャンパー使用待機時には専用のジャケットハンガーに吊り下げて保管され、常に充電して置き、着用時にはいつでも機器類がスタンバイ状態に維持することを可能にする。
この情報入出力接続部に温度計、湿度計、ガス漏れセンサーなどの環境データを収集するための伝サーを接続することも可能である。
ガス漏れセンサーを情報機器に接続しておくことにより、事前にガス中毒などの事故を防ぐことができる。
巡回・警備などの移動業務を開始するときにこのジャケットを装着するだけで、巡回・警備に必要なシステム、機器類を所持することを可能にし、更にこれらの機器類の動作を保証しておくことを可能にした。
【0006】
また移動業務支援ジャケットは、業務を遂行するための制服であるため企業によりそれぞれ違ったデザインが採用され、また着用する人のサイズもばらばらである。この課題を解決するために、本発明では、フレームジャケットに全ての機能要素を組み込んでしまい、アウタージャケットに関しては、サイズ、デザインのフレキシブルを持たせることを可能にした。
【発明の効果】
【0007】
移動作業用支援のフレームジャケットに予め動画撮像カメラ、音声入力機器、無線通信手段を装備した情報機器を固定しケーブル接続しておくことにより、ジャケット装着時にすぐ機器の動作をさせることができる。
【0008】
また保管用のジャケットハンガーにバッテリー充電用の電源を装着しジャケットをハンガーに吊り下げる共に充電を開始し、完了したときに、ジャケットハンガーに配備されている電源ボックスに取り付けられている充電状態表示に各々のジャケットの充電完了を示す表示がされているジャケットを着用することにより電池を常にフル充電の状態で緊急出動ができる。
【0009】
アウタージャケットとフレームジャケットに分離することによりジャケットデザインのフレキシビリティが確保でき、サイズのフレキシビリティも確保でき、夏服・冬服の衣替え、男女服の対応、クリーニング性の確保などが可能である。
更にアウタージャケットには移動業務に必要な小道具をポケットに装備しておき、待機中に消耗品などは補給しておくことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するにあたり最良の形態は、アウタージャケット、フレームジャケットの他にインナージャケットの3枚のジャケット構成により移動業務支援ジャケットを構成することである。
【実施例】
【0011】
図1は移動業務支援ジャケットの外観図である。
外観はアウタージャケット1の外観であり、実施例では袖のない図となっているが袖付でもよい。
【0012】
また夏服、冬服、男性用、女性用、企業毎の制服対応などはアウタージャケット1のみをデザインすることにより対応が可能である。
外観からはフレームジャケット2、インナージャケット3はほとんど見えず、襟元に配備されている充電用のコネクタ8と、情報機器カバーを開けたときにフレームジャケット2が見えるだけである。
【0013】
アウタージャケット1にはポケット15が装備されており、移動業務に必要な小道具を入れておく。
警備、巡回などの業務の時は懐中電灯、メジャー、簡易工具など予め最小限必要な小物を揃えておき、ポケットに収納しておくことにより、巡回場所の異常確認などの業務に必要なものを忘れないようにすることが可能である。
情報機器4は直接操作したり、情報を確認したりするために情報機器カバー12が装備されている。
情報機器カバー12は開くと情報機器4を直接操作することが可能である。
また情報の内容を覗き込むことなく見るために、情報機器カバー12の裏側にミラー16を配備することにより立ったままで情報機器4のディスプレーの内容を見ることも可能である。
【0014】
フレームジャケット2に取り付けられている情報機器4に動画撮像カメラ用のコネクタであるカメラ接続部10が備え付けられている。
このカメラ接続部10には動画撮像カメラ5が接続され、アウタージャケット1に取り付けられている。
アウタージャケット1に取り付けた場合は、ジャケット着用のときにわざわざカメラ接続を必要とせず便利である。
【0015】
しかしながら、ジャケットにカメラを取り付けると、移動作業者の目線とカメラの撮像範囲が一致せず情報センター側で、モニタしている画像と、移動作業者との間隔のズレが大きくなる。
この様なときはカメラに被写体の場所を示すポインタ機能のついたカメラを利用することにより移動作業者が被写体を認識できるようにすることも可能である。
更に情報機器にカメラの画像をモニタすることも可能である。
【0016】
また移動作業者が着用するヘルメットに動画撮像カメラを取り付ける場合もある。
移動作業者の音声の入出力の為に、フレームジャケット2には情報機器4の音声入出力機器接続部11に接続されたマイク7とイヤーホン6が接続されており、マイク7はフレームジャケットの中で利用者の口元に近い位置に固定されており、イヤーホン6は耳元まで届くケーブルの長さで取り付けられている。
実施例ではカメラ接続部10、音声入出力機器接続部11は情報機器4のコネクタに直接接続しているが、これらの入出力機器のケーブルが作業の邪魔になうようであれば、肩口、もしくは襟元にこれら入出力機器用の接続部を独立させてフレームジャケット2に配備することも可能である。
【0017】
図2は移動業務支援ジャケットからアウタージャケットを外したジャケットの内部構造正面図である。
内部構造はインナージャケット3とフレームジャケット2で構成される。
インナージャケット3は移動作業支援機能に直接関係はないが、フレームジャケット2に取り付けられている機器、ケーブルの保護の目的、ジャケット着用のし易さ、色々な体型の人に対するデザインの対応のし易さ向上の為には必要である。
フレームジャケット2はインナージャケット3の上に装着されており、情報機器4、バッテリー9、充電用コネクタ8、音声出力機器としてマイク7が取り付けられている。
また、イヤーホン6と動画撮像カメラ5への接続部もしくは、ケーブルで接続されたこれらの機器が取り付けられている。
これらの機器を接続するケーブル13は、人の動作中にズレを起こさないように適宜ケーブル止め14でフレームジャケット2に固定されている。
【0018】
図3はこのジャケットの背面図である。
フレームジャケット2の背面には情報機器を動作させるためのバッテリー9とバッテリーを充電するための電源供給口として、充電用コネクタ8が装備されている。
情報機器4は、動画撮像カメラの駆動と画像読み取り、音声入出力機器に対する情報の入出力を制御し、これらの情報を無線で情報センターとの間でやり取りをする。
無線の手段として、構内無線LANや、携帯電話、PHSなどのインフラを使う。
通常携帯機器4にはバッテリーを内蔵しているが、移動作業中センターと情報の通信を継続しなければならず、情報機器のバッテリーだけでは、バッテリー駆動できる連続時間が短く、補助バッテリーを必要とする。バッテリー9はこのために用意したバッテリーである。
充電コネクタ8は、情報機器4内蔵バッテリー及びバッテリー9を充電するために電源を供給するためのコネクタである。
またこのコネクタ8はジャケットハンガー20に吊り下げるとジャケットハンガーに装着されている充電コネクタと結合する構造になっている。
【0019】
図4は移動業務支援ジャケットの待機のときの待機管理状態管理ハンガーである。
ジャケットハンガー20には充電コネクタ21が多数装備されている。
この充電コネクタ21はジャケットを吊るす機能と、ジャケットに電源を供給するためのコネクタの機能を持っている。
ジャケットのバッテリーを充電するための電源を供給するのが電源ボックス23である。電源ボックス23にはAC電源ケーブル22を介してAC電源が供給される。
電源ボックス23では、充電コネクタ21にバッテリー充電用の電気を供給すると共に各吊り下げられたジャケットの充電状態を監視している。
電源ボックス23には充電状態表示24が装備されており、多数の充電コネクタ21に吊り下げられたジャケットの充電状態が表示される。
吊り下げ用の充電コネクタ21の数に対応しただけ充電状態表示が配備されており、充電コネクタそれぞれに対応した充電状態表示がなされる。
充電状態表示内容は、対象ジャケットなし、充電中、充電完了という内容が表示される。これにより、吊り下げられているジャケットの充電状態を管理することができ、フル充電と表示されているジャケットを着用することにより、移動作業中にバッテリー切れにより発生するトラブルを解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の移動業務支援ジャケットはビルなどの設備管理巡回業務に対して利用価値は高い。設備管理巡回には多様な設備機器の稼動状態に関する知識を必要とし、巡回のときに正常か異常かを判断する必要がある。
このため設備管理巡回のために新人を採用したとしても、かなり長期間の間ベテランとペアで巡回しベテランがノウハウを教育しながら巡回をする必要があった。
しかも若い労働者層がこの様な巡回業務を嫌がり、リタイヤしたシルバー人材の再雇用などにより巡回労働者を確保せざるを得なくなってきている。
【0021】
この様な状況下でシルバー人材を新人として雇用したとしても、労働継続期間が短くベテランになったとたん退職するという状況になり、ノウハウ、管理知識の伝達が困難になってきている。
本発明の移動業務支援ジャケットを着用し、設備管理巡回業務を遂行することにより、新人でも設備管理業務が可能になる。
また、設備管理のノウハウ、知識を持ってはいるが体力がなくなったシルバー人材を管理センターに配置しておくことにより的確な指示を出したり、新人の教育などをしたりすることが可能になり、安い労働力で運営が可能になる。
【0022】
この発明を実施するためには、無線通信環境が必要である。
無線通信技術の発達と共に携帯電話の通信速度が速くなり、動画の通信が可能になってきており、このインフラをこの発明の通信手段として使うことができる。
またビルの地下などは電波が届きにくい場合が多く、この様なときには、無線LANを管理対象エリアに対し設置しておくことにより、運用が可能になる。
この様に巡回範囲を無線通信可能領域でカバーしておくことにより、巡回業務者がビルの設備を点検しようとすると、動画撮像カメラ5で撮像された画面が、情報機器4を介して無線LANを通じて管理センターに送られる。
この画像をモニタすることにより、巡回業務者がどこを巡回しているかとかどの機器を点検しているかを知ることが可能になる。
管理センターに待機しているベテランがこの画像を見ながら点検場所の設備巡回作業者に指示することが可能になる。
音声入出力機器であるイヤーホン6とマイク7により管理センター側のベテランとの会話することが可能になり、ベテランは指示を出したり巡回作業者は設備管理ノウハウを学んだりすることができる。
【0023】
また設備の異常時も動画撮像カメラ5の画像により、ベテランが現場の詳細な現象を把握することができ、設備巡回者に的確な作業指示を出すことが可能である。
現場の詳細な情報を入力するときには、動画撮像カメラ5をジャケットから外し、ケーブルを延長し、撮像し管理センターの画像を送信することが可能になる。
またこのときに必要な簡易工具、測定器器具などは常にポケット15に装着されているので、巡回作業者はこのベテランから指示された作業を遂行することができる。
これらの情報のやりとりは全て、情報として記録されるため報告書の作成も定型化、自動化が可能になる。
【0024】
また、巡回した経路情報を記録しておくことができるため、巡回サービスの内容の履歴管理が可能になる。
環境データ取得のためのセンサーとしてガス漏れセンサーを装備することにより、ガス漏れの検出が可能になる。
さらに万が一巡回作業中に事故が起きたり、ガス中毒により意識不明になり、連絡が不能になったことも管理センター側で認識することができるため、大事故に至ることを防いだりすることも可能である。
情報機器4に手書き情報入力機能を備えておくと、巡回作業者が現場の状況のメモ情報を直接送り、報告書に反映することも可能である。
【0025】
設備機器を遠隔管理している場合、定期巡回をしない管理方式がある。
この様な場合は遠隔管理センターに異常警報発信されると、管理センター側から現場に駆けつけなければならない。
この場合、出動までの緊急性を要するため、情報機器は設定、立上などに時間をかけずに電源を入れたらすぐに動作開始しなければならない。更に長時間の動作を保証するために、バッテリーの充電はフル充電状態でなければならない。
本発明記載の移動業務支援ジャケットではジャケットハンガーに保管されている状態で常に緊急使用の対応ができているため、これらの課題は全て対応が可能である。
【0026】
同じような業務に警備巡回業務がある。
この場合設備管理巡回業務と異なるが、基本的にこのジャケットは有効である。
警備巡回のときは、巡回中に不用意に襲われる可能性を秘めており、この対応が必要である。
この対応として、防刃性のある素材でフレームジャケットを構成することが可能である。また動画撮像カメラを備えているため、現場の状況を管理センター側が把握することも可能であり、また襲われたとき緊急連絡をしたり、現場証拠画像を残したりすることも可能である。
【0027】
カメラを持ちながら警備をしている状況は犯意を持った人には犯罪の抑止効果があり、犯罪事故の減少にもつながる。
このため非力な女性、シルバーといったこれまで警備巡回者としては使えなかったような人に対しても警備巡回業務を委託することが可能になり、より安い労働コストで作業を請け負うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】移動業務支援ジャケットの外観図。
【図2】ジャケットの内部構造正面図。
【図3】ジャケットの内部構造背面図。
【図4】待機状態管理用ハンガー。
【符号の説明】
【0029】
1. アウタージャケット
2. フレームジャケット
3. インナージャケット
4. 情報機器
5. 動画撮像カメラ
6. イヤーホン
7. マイク
8. 充電用コネクタ
9. バッテリー
10. カメラ接続部
11. 音声入出力機器接続部
12. 情報機器カバー
13. ケーブル
14. ケーブル止め
15. ポケット
16. ミラー
20. ジャケットハンガー
21. 充電コネクタ
22. AC電源ケーブル
23. 電源供給ボックス
24. 充電状態表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報入出力機器接続部と、
前記情報入出力機器の情報を無線で情報管理部門に送受信する情報機器と、
これらの機器を駆動するためのバッテリーと、
このバッテリーを充電するための充電用コネクタと
を持っていることを特徴とする、移動業務を支援するためのジャケット。
【請求項2】
情報入出力機器接続部には動画撮像カメラ、音声入力機器、音声出力機器、環境センサーのうち少なくとも1つ以上が接続されていることを特徴とする請求項1項記載の移動業務を支援するためのジャケット。
【請求項3】
ジャケットは少なくともアウタージャケットとフレームジャケットから構成されていることを特徴とする請求項1記載の移動業務を支援するためのジャケット。
【請求項4】
フレームジャケットには情報機器、バッテリー、情報入出力機器接続部およびそれらの機器を接続するためのケーブルが固定されていることを特徴とする請求項2記載の移動業務を支援するためのジャケット。
【請求項5】
フレームジャケットに配備した充電用コネクタはジャケットハンガーの一部に装着されている充電用のコネクタに接続されることを特徴とする請求項1記載の移動業務を支援するためのジャケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−133574(P2008−133574A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345023(P2006−345023)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(501151931)株式会社アサヒファシリティズ (1)
【Fターム(参考)】