説明

移動通信システム、移動機及びそれらに用いる通信処理終了時間短縮方法

【課題】通信終了の時間を削減可能な移動機を提供する。
【解決手段】移動機はMACにおけるa4の処理にてエラー監視状態となり、同期判定が実施される。移動機内でRLC→MACの階層への設定が、a3の処理のUTRAN側の停波以降、RLC−UM送信要求[MAC−DATAREQ]が繰り返される場合(a5の処理)、SIR判定によってSIR劣化時点で(a7の処理)、移動機は同期判定後のDCHエラー検出前にMAC−DATAREQ送信を停止し、DCHクローズ処理へ移行し(a10の処理)、通信を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信システム、移動機及びそれらに用いる通信処理終了時間短縮方法に関し、特に3G(Third Generation)移動機(UE:User Equipment)の通信処理終了時間短縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信制御(再送)に関するものとしては、STATUS−PDU(Protocol Data Unit)の送達確認を行うことができ、タイマによるオーバヘッドをなくして、データ転送におけるスループットを向上させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この送信制御装置は、受信側から送信情報に対する送達確認を示す制御情報の送信を要求された時にその時点で存在している送信すべき送信情報に送達確認を示す制御情報を付与するRLC(Radio Link Control)ヘッダ設定・ピギーバック型STATUS−PDU設定ブロックと、送達確認を示す制御情報を付与した送信情報の識別符号を送達確認を示す制御情報と関連付けて記憶するSTATUS−PDU再送バッファとを備えている。
【0004】
しかしながら、上記の方法では、送達確認を示す制御情報を付与した送信情報の識別符号を、送達確認を示す制御情報と関連付けて記憶するSTATUS−PDU再送バッファが必要で、UE内の制御が複雑になり、かつ内部バッファも必要になる。
【0005】
UEとUTRAN(Universal Terrestrial Radio Access Network)との間の送受信の動作は、通信終了時の”RRC(Radio Resource Control) CONNECTION RELEASE COMPLETE MESSAGE”が最大再送回数となるN308が“1”に指定された場合、UEから該当メッセージを2回送信し、T308が2回タイムアウト(Time−Out.)した時点(V308>N308)で、DCH(Dedicated CHannel)をクローズ(Close)し、アイドル(idle)状態へと遷移することとなる。
【0006】
従来の処理を図1に示す。図1においては、UTRAN側での動作とUE動作とを示している。UE側からの“RRC CONNECTION RELEASE COMPLETE MESSAGE”をUTRANで受け取った場合(図1のb1,b2)、UTRAN網の停波が行われると(図1のb3)、UEはエラー監視状態になり(図1のb4)、同期判定が実施され、同期はずれが検出された場合(図1のb7)、DCH ERR IND(INDicator)が検出され(図1のb9)、DCHクローズ要求が発行される(図1のb10)。この時のT312タイマ(Timer)値が3s(秒)で規定されていた場合には、DCHクローズ処理まで(切断まで)に3sかかることになる。
【0007】
DCH同期はずれ(DCHエラー状態)は過去4回のSIR値がSIR≧Qinを満たした場合、In−sync数はカウントアップされるが、m(=t312*10)でT312タイムアウト発生まで、In−sync数がn312回連続で発生しなかった場合、T312タイムアウト状態となる。
【0008】
従来の処理では、DCH同期判定でT313タイムアウト判定され、DCH Err IND処理が発行されるまでの間(3s間)、RLCからMAC(Medium Access Control)へのMAC−DATA−REQ(REQuest)送信が繰り返され、通信終了が遅れるが、SIR(Signal−to−Interference Ratio)判定によってSIR劣化[out sync(同期はずれ)を検出した]時点で、RLC−UM(Unacknowledged Mode)の場合、MAC−DATA−REQの繰り返される送信回数を削減し、UEは同期判定後のDCHエラー検出前にMAC−DATA−REQ送信を停止し、DCHクローズ処理へと移行して通信を終了させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−094230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の処理では、UEから該当メッセージの2回目を送信する前に、RLC−UM(Unacknowledged Mode)送信設定不可[UTRANへの送信MAC(Medium Access Control)−STATUSIND(INDicator)がmode 01のまま]状態が継続する(UTRANが停波していることはUE側にはわからない)。
【0011】
これは、1回目の該当メッセージ送信時点でUTRAN側の上り同期が停止されているために、2回目のメッセージ送信設定ができないためである。設定不可状態で約3秒後、同期はずれ検出(DCH ERROR発生)となり、エラー検出でのアイドル遷移となり、通信終了に時間がかかってしまう。
【0012】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、通信終了の時間を削減することができる移動通信システム、移動機及びそれらに用いる通信処理終了時間短縮方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による移動通信システムは、RRC(Radio Resource Control)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)、PHY(PHYsical layer)の階層構造を持つ移動機を含む移動通信システムであって、
前記移動機が、前記RLCより前記MACへのRLC−UM(Unacknowledged Mode)送信要求を、当該RLC−UM送信要求の前記RLCと前記MACとの間の送信回数で閾値判定し、その判定結果に応じて前記RLC−UM送信要求の送信回数を制御している。
【0014】
本発明による移動機は、RRC(Radio Resource Control)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)、PHY(PHYsical layer)の階層構造を持つ移動機であって、
前記RLCより前記MACへのRLC−UM(Unacknowledged Mode)送信要求を、当該RLC−UM送信要求の前記RLCと前記MACとの間の送信回数で閾値判定し、その判定結果に応じて前記RLC−UM送信要求の送信回数を制御している。
【0015】
本発明による通信処理終了時間短縮方法は、RRC(Radio Resource Control)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)、PHY(PHYsical layer)の階層構造を持つ移動機に用いる通信処理終了時間短縮方法であって、
前記移動機が、前記RLCより前記MACへのRLC−UM(Unacknowledged Mode)送信要求を、当該RLC−UM送信要求の前記RLCと前記MACとの間の送信回数で閾値判定し、その判定結果に応じて前記RLC−UM送信要求の送信回数を制御している。
【0016】
すなわち、本発明の移動通信システムは、UE(User Equipment:移動機)内でRLC(Radio Link Control)→MAC(Medium Access Control)階層への設定が、UTRAN(Universal Terrestrial Radio Access Network)側の停波以降、RLC−UM(Unacknowledged Mode)送信要求[MAC−DATA−REQ(REQuest)]が繰り返される場合に、SIR(Signal−to−Interference Ratio)判定によってSIR劣化[out sync(同期はずれ)を検出した]時点でUEが同期判定後のDCH(Dedicated CHannel)エラー(ERROR)検出前にMAC−DATA−REQ送信を停止し、DCHクローズ(Close)処理へと移行し、通信を終了する。
【0017】
そのため、UE内ではRLCよりMACへRLC−UM送信要求を繰り返し実施した場合に、MAC−DATA−REQ送信回数をMACで保持し、保持している送信回数>閾値(MAC送信回数の指定)を越えた場合に、MAC−STATUS−IND(INDicator)で送信停止処理へRLCを移行させる。
【0018】
3G(Third Generation)移動機(UE)の通信処理終了時には、UTRAN側にUEよりL3(Layer 3)メッセージが通知される。“RRC(Radio Resource Control) CONNECTION RELEASE COMPLETE MESSAGE”をUTRANで受け取った場合には、UTRAN側でUEのdedicated resourcesとすべてのprocedureを終了する。
【0019】
UTRAN側に複数回L3メッセージを送信する際、1回目のL3メッセージ到達後、UE側より先にUTRAN側でdedicated resourcesが開放され、通信が停波される場合がある。この時、UE内のRLC/MAC階層ではRLC→MACへUTRAN側の停波後も送信要求(MAC−DATA−REQ)が繰り返しされるため、同期判定によるエラー監視状態後、T313タイムアウト判定されるまでDCH(Dedicated CHannel)クローズ処理が実行されず、その間も送信要求が繰り返され、通信を終了すること(dedicated resourcesとすべてのprocedureを終了すること)ができない。
【0020】
そこで、本発明の移動通信システムでは、C−Plane(RLC−UM)の場合、同期判定実施中に繰り返されるMAC−DATA−REQの回数を削減することで、送信停止処理へと移行し、DCHクローズ処理を行い、通信終了(dedicated resourcesとすべてのprocedureを終了)し、通信終了の時間を削減することを可能としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、通信終了の時間を削減することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の移動通信システムの処理動作を示すシーケンスチャートである。
【図2】本発明の一実施例による移動機のSW/HWの階層構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施例による移動機の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施例による移動通信システムの処理動作を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図2は本発明の一実施例による移動機(UE:User Equipment)のSW(ソフトウェア)/HW(ハードウェア)の階層構造を示す図である。図2において、移動機1はRRC(Radio Resource Control)11と、L2(Layer 2)・RLC(Radio Link Control)12と、L2・MAC(Medium Access Control)13と、L1(Layer 1)・PHY(PHYsical layer)14との階層構造を有している。送信時はRLC12→MAC13→PHY14の順に各レイヤ(Layer)の送信データが設定される。
【0024】
図3は本発明の一実施例による移動機1の構成例を示すブロック図である。図3において、移動機1はCPU(中央処理装置)15と、CPU15が実行する制御プログラム16aを格納するメインメモリ16と、後述するRLC−UM(Unacknowledged Mode)送信要求[MAC−DATA−REQ(REQuest)]の送信回数を保持する送信回数保持部171を備えた記憶部17と、無線通信部18と、アンテナ19とから構成されている。尚、CPU15は制御プログラム16aを実行して移動機1の各部を制御することで、図2に示す階層構造の各階層の処理動作を実現する。この各階層の処理動作については後述する。
【0025】
図4は本発明の一実施例による移動通信システムの処理動作を示すシーケンスチャートである。これら図2及び図4を参照して本発明の一実施例による移動通信システムの処理動作、特に移動機1内の処理動作について説明する。尚、図4に示す移動機1内の処理動作はCPU15が制御プログラム16aを実行することで実現される。
【0026】
移動機1側からの“RRC CONNECTION RELEASE COMPLETE MESSAGE”をUTRAN(NW:Network)で受け取った場合(図4のa1,a2)、UTRAN網の停波が行われる(図4のa3)。
【0027】
移動機1はMAC13においてエラー監視状態となり(図4のa4)、同期判定が実施される。移動機1内でRLC12→MAC13の階層への設定が、UTRAN側の停波以降、RLC−UM(Unacknowledged Mode)送信要求[MAC−DATA−REQ(REQuest)]が繰り返される場合(図4のa5)、SIR(Signal−to−Interference Ratio)判定によってSIR劣化[out sync(同期はずれ)を検出した]時点で(図4のa7)、移動機1は同期判定後のDCH(Dedicated CHannel)エラー検出前にMAC−DATA−REQ送信を停止し、DCHクローズ(Close)処理へ移行し(図4のa10)、通信を終了する(図4のa11〜a13)。
【0028】
送信回数については、特に移動機1内でRLC12よりMAC13へRLC−UMデータを送信した場合、MAC−DATA−REQ送信回数をMAC13で保持し、保持している送信回数>閾値(MAC送信回数の指定)を越えた場合に、MAC−STATUSIND(INDicator)通知(図4のa12)で、移動機1内動作を送信停止処理へ移行させる。
【0029】
従来の処理では、DCH同期判定でT313タイムアウト判定され、DCH Err IND処理が発行されるまでの間(3s間)、RLCからMACへのMAC−DATAREQ送信が繰り返され、通信終了が遅れる。
【0030】
これに対して、本実施例では、SIR判定によってSIR劣化(out syncを検出した)時点で、RLC−UMの場合、MAC−DATA−REQの繰り返される送信回数を削減し、移動機1が同期判定後のDCHエラー検出前にMAC−DATA−REQ送信を停止し、DCHクローズ処理へと移行し、通信を終了させているので、通信終了の時間を削減することができる。
【0031】
これによって、本実施例では、STATUS−PDUの送達確認を行うことができ、タイマによるオーバヘッドをなくして、データ転送におけるスループットを向上させることができる。
【0032】
この出願は、2006年9月20日に出願された日本出願特願2006−253659を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0033】
1 移動機
11 RRC
12 L2・RLC
13 L2・MAC
14 L1・PHY
15 CPU
16 メインメモリ
16a 制御プログラム
17 記憶部
18 無線通信部
19 アンテナ
171 送信回数保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RRC(Radio Resource Control)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)、PHY(PHYsical layer)の階層構造を持つ移動機を含む移動通信システムであって、
前記移動機が、前記RLCより前記MACへのRLC−UM(Unacknowledged Mode)送信要求を、当該RLC−UM送信要求の前記RLCと前記MACとの間の送信回数で閾値判定し、その判定結果に応じて前記RLC−UM送信要求の送信回数を制御することを特徴とする移動通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−213213(P2012−213213A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139363(P2012−139363)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2008−535327(P2008−535327)の分割
【原出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】