説明

移動通信方法、サービス制御ネットワーク装置及び移動管理用ノード

【課題】IMSを用いた着信処理において、無線アクセスネットワークやコアネットワークの混雑状況に応じて、事前に着信処理を規制する。
【解決手段】本発明に係る移動通信方法は、IMS装置が、通信相手ネットワークから、UE宛ての着信信号を受信すると、HSSに対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程Aと、HSSが、MMEに対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程Bと、MMEが、所定の問い合わせ信号に応じて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定する工程Cと、MMEが、HSSに対して、かかる判定結果を通知するための応答信号を送信する工程Dと、HSSが、IMS装置に対して、かかる応答信号を送信する工程Eと、IMS装置が、かかる応答信号によって通知された判定結果に基づいて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定する工程Fとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信方法、サービス制御ネットワーク装置及び移動管理用ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に、IMS(IP Multimedia Subsystem)を用いた着信処理(例えば、音声呼の着信処理)について規定されている。
【0003】
IMSを構成するS-CSCF(Serving-Call Session Control Function、セッション制御用ノード)やP-CSCF(Proxy-Call Session Control Function、セッション制御用ノード)等のIMS装置は、UE(User Equipment、移動局)の在圏状態(例えば、現在、どのエリアにいるか)に依存せず、呼制御処理を行う基盤である。
【0004】
また、IMSは、実際の通信経路を提供する無線アクセスネットワークやコアネットワークとは独立の基盤である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS23.228
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の移動通信システムでは、IMSは、着信信号を受信した場合には、UEの在圏状態に依存せずに、かかる着信処理に基づく着信処理を開始してしまうため、UEの在圏エリアの無線アクセスネットワークやコアネットワークが混雑している場合であっても、コアネットワークに対して、かかる着信信号を転送してしまう。
【0007】
かかる場合、コアネットワークは、かかる着信信号がどのようなサービスに起因するものか(例えば、音声着信であるか、SMS着信であるか、等)を特定することができないため、サービス種別によらず、通常通り、呼び出し処理等を開始してしまう。
【0008】
このように、従来の移動通信システムでは、UEの在圏エリアの無線アクセスネットワークやコアネットワークが混雑している場合であっても、事前に着信処理を規制することができないという問題点があった。
【0009】
さらに、従来の移動通信システムでは、IMSによる提供サービスの種別に応じて、着信処理を規制することができないという問題点があった。
【0010】
かかる問題点について、図10を参照して説明する。
【0011】
図10に示すように、第1に、S-CSCFが、通信相手ネットワークから、着信信号(INVITE)を受信すると、UEの在圏状態に依存せずに、P-CSCFに対して、かかる着信信号(INVITE)を転送する。
【0012】
第2に、P-CSCFが、UEの在圏エリアの無線アクセスネットワークやコアネットワークの混雑状況を把握していないため、UEの在圏エリアの無線アクセスネットワークやコアネットワークが混雑しているか否かに関係なく、P-GW(PDN-Gateway、パケットデータネットワーク用ゲートウェイ装置)に対して、かかる着信信号(INVITE)を転送する。
【0013】
第3に、P-GWは、S-GW(Serving Gateway、サービングゲートウェイ装置)に対して、かかる着信信号(INVITE)を転送する。
【0014】
第4に、S-GWは、UEが「IDLE状態」であるため、MME(Mobility Management Entity、移動管理用ノード)に対して、「DDN(Downlink Data Notification、下りリンク着信通知信号)」を送信する。
【0015】
ここで、輻輳状態にあるMMEは、S-GWから「DDN」を受信することによって、更に輻輳状態が悪化する可能性がある。
【0016】
第5に、MMEは、「DDN」の受信に応じて、eNodeB(無線基地局)に対して、「Paging(ページング信号)」を送信する。
【0017】
ここで、輻輳状態にあるeNodeBは、MMEから「Paging」を受信することによって、更に輻輳状態が悪化する可能性がある。
【0018】
このように、従来の移動通信システムでは、UEの在圏エリアの無線アクセスネットワークやコアネットワークが混雑している場合であっても、事前に着信処理を規制することができず、無線アクセスネットワークやコアネットワークの混雑状況を更に悪化させてしまう可能性があるという問題点があった。
【0019】
また、従来の移動通信システムでは、無線アクセスネットワークやコアネットワークの混雑状況において、IMSによる提供サービスの種別に応じて、着信処理を規制することができないという問題点があった。
【0020】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、IMSを用いた着信処理において、無線アクセスネットワークやコアネットワークの混雑状況に応じて、事前に着信処理を規制することができる移動通信方法、サービス制御ネットワーク装置及び移動管理用ノードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の特徴は、移動通信方法であって、サービス制御ネットワーク装置が、通信相手ネットワークから、移動局宛ての着信信号を受信すると、加入者管理サーバ装置に対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程Aと、前記加入者管理サーバ装置が、移動管理用ノードに対して、前記所定の問い合わせ信号を送信する工程Bと、前記移動管理用ノードが、前記所定の問い合わせ信号に応じて、前記着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定する工程Cと、前記移動管理用ノードが、前記加入者管理サーバ装置に対して、前記判定結果を通知するための応答信号を送信する工程Dと、前記加入者管理サーバ装置が、前記サービス制御ネットワーク装置に対して、前記応答信号を送信する工程Eと、前記サービス制御ネットワーク装置が、前記応答信号によって通知された前記判定結果に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定する工程Fとを有することを要旨とする。
【0022】
本発明の第2の特徴は、サービス制御ネットワーク装置であって、通信相手ネットワークから、移動局宛ての着信信号を受信すると、加入者管理サーバ装置に対して、所定の問い合わせ信号を送信するように構成されており、前記加入者管理サーバ装置から、前記所定の問い合わせ信号に対する応答信号を受信した場合、該応答信号によって通知された判定結果に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定するように構成されていることを要旨とする。
【0023】
本発明の第3の特徴は、移動管理用ノードであって、加入者管理サーバ装置から、所定の問い合わせ信号を受信した場合、通信相手ネットワークから受信した移動局宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するように構成されており、前記加入者管理サーバ装置に対して、前記判定結果を通知するための応答信号を送信するように構成されていることを要旨とする。
【0024】
本発明の第4の特徴は、移動通信方法であって、サービス制御ネットワーク装置が、通信相手ネットワークから、移動局宛ての着信信号を受信すると、加入者管理サーバ装置に対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程と、前記加入者管理サーバ装置が、移動管理用ノードに対して、前記所定の問い合わせ信号を送信する工程と、前記移動管理用ノードが、前記所定の問い合わせ信号に応じて、前記加入者管理サーバ装置に対して、前記着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するために必要な判定情報を送信する工程と、前記加入者管理サーバ装置が、前記判定情報に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定する工程と、前記加入者管理サーバ装置が、前記サービス制御ネットワーク装置に対して、前記判定結果を通知するための応答信号を送信する工程と、前記サービス制御ネットワーク装置が、前記応答信号によって通知された前記判定結果に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定する工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、IMSを用いた着信処理において、無線アクセスネットワークやコアネットワークの混雑状況に応じて、事前に着信処理を規制することができる移動通信方法、サービス制御ネットワーク装置及び移動管理用ノードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムで用いられる「Sh-Pull」のデータ構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムで用いられる「Insert Subscriber Data Request」のデータ構成の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムで用いられる「Insert Subscriber Data Answer」のデータ構成の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムで用いられる「Sh-Pull Response」のデータ構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図9】本発明の変更例1に係る移動通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図10】従来の移動通信システムの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システム)
図1乃至図8を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムについて説明する。本実施形態に係る移動通信システムは、E-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)方式が用いられている移動通信システムである。
【0028】
なお、本発明は、UTRAN(Universal Terrestrial Radio Access Network)/GERAN(GSM Edge Radio Access)方式やその他の無線アクセスネットワークが用いられている移動通信システムや、GPRS(General Packet Radio Servide)ネットワークやその他のパケットコアネットワークが用いられている移動通信システムにも適用可能である。
【0029】
例えば、GPRSネットワークに適応する場合、本実施形態におけるMMEを、SGSN(Serving GPRS Support Node、パケット交換機)と読み替えることで対応可能である。
【0030】

図1に示すように、本実施形態に係る移動通信システムには、eNodeBや、MMEや、S-GWや、P-GWや、PCRF(Policy and Charging Rules Function、ポリシー及び課金制御用ノード)や、HSS(Home Subscriber Server、加入者管理サーバ装置)や、IMS装置等が設けられている。
【0031】
また、IMS装置としては、S-SCSFや、P-CSCFや、I-CSCF(Interrogating-Call Session Control Function、セッション制御用ノード)や、AS(Application Server、アプリケーションサーバ装置)等が設けられている。
【0032】
以下、図2乃至図8を参照して、本実施形態に係る移動通信システムの動作について説明する。
【0033】
第1に、図2乃至図7を参照して、本実施形態に係る移動通信システムにおいて、IMSを用いた着信処理が成功する場合の動作(例えば、無線アクセスネットワークやMMEにおいて輻輳が発生していない場合の動作)について説明する。
【0034】
図2に示すように、S-CSCFは、ステップS101において、通信相手ネットワークから、UE宛ての着信信号(INVITE)を受信すると、ステップS102において、HSSに対して、所定の問い合わせ信号を送信する。
【0035】
例えば、図3に示すように、ステップS102において、IMS装置は、「MSISDN」及び「Requested data」を含む「Sh-Pull」によって、所定の問い合わせ信号を送信してもよい。
【0036】
かかる所定の問い合わせ信号は、図4に示す「Sh-Pull(3GPP TS29.328のTable6.1.1.1参照)」内の情報要素「Requested data」内に設定される「Location Information(UEの在圏エリアの問い合わせ信号)」や「T-ADS Information」や混雑状況の問い合わせ信号等であってもよいし、他の問い合わせ信号であってもよい。
【0037】
また、所定の問い合わせ信号を送信するIMS装置は、S-CSCFではなくて、P-CSCFやAS等の他のIMS装置であってもよい。
【0038】
ステップS103において、HSSは、MMEに対して、所定の問い合わせ信号を送信する。
【0039】
例えば、図3に示すように、ステップS103において、HSSは、「IMSI」及び「IDR-Flag」を含む「Insert Subscriber Data Request」によって、所定の問い合わせ信号を送信してもよい。
【0040】
かかる所定の問い合わせ信号は、図5に示す「Insert Subscriber Data Request(3GPP TS29.272のTable5.2.2.1.1/1参照)」内の情報要素「IDR-Flag」内に設定される「EPS Location Information Request(UEの在圏エリアの問い合わせ信号)」や「Current Location Request(UEの現在接続位置情報の問い合わせ信号)」や「T-ADS Data Request」や混雑状況の問い合わせ信号等であってもよいし、他の問い合わせ信号であってもよい。
【0041】
ステップS104において、MMEは、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定する。
【0042】
例えば、MMEは、無線アクセスネットワーク装置やMMEやS-GWやP-GWにおける輻輳状態(無線アクセスネットワークやコアネットワークにおける規制率等)や、ユーザ種別(通常ユーザ又は優先ユーザ)等に応じて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定してもよい。
【0043】
ここで、eNodeBが、MMEに対して、無線アクセスネットワークにおける規制率について通知してもよいし、ネットワーク制御装置(オペレーション操作台等)が、MMEに対して、無線アクセスネットワークにおける規制率について指示してもよい。
【0044】
ここで、eNodeBは、MMEとeNodeBとの間における信号送受信の発生毎に、MMEに対して、eNodeBにおける負荷情報を通知してもよいし、eNodeBにおける負荷情報が所定閾値を上回った場合に、MMEに対して、eNodeBにおける負荷情報を通知してもよいし、eNodeBにおける負荷情報が所定閾値を下回った場合に、MMEに対して、eNodeBにおける負荷情報を通知してもよい。
【0045】
また、eNodeBは、MMEに対して、規制対象エリア情報を通知してもよいし、ネットワーク制御装置(オペレーション操作台等)が、MMEに対して、規制対象エリア情報について指示してもよい。
【0046】
なお、IMS装置が、問い合わせ信号によって、IMSにより提供するサービス種別に係る情報を提供し、MMEが、上述の要素に加えて、かかるサービス種別に係る情報を加味することで、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否を判定してもよい。
【0047】
或いは、MMEは、応答信号によって、HSSに対して、上述の着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するために必要な判定情報を送信し、HSSが、かかる判定情報に基づいて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定してもよい。
【0048】
さらに、HSSが、IMS装置に対して、応答信号によって、かかる判定情報を転送し、IMS装置が、かかる判定情報に基づいて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定してもよい。
【0049】
ここで、かかる判定情報としては、無線アクセスネットワークやコアネットワークにおける混雑状況(規制率等)の情報や、ユーザ種別(通常ユーザ又は優先ユーザ)や、規制対象エリア情報等が含まれていてもよい。
【0050】
かかる場合、MMEは、ステップS109において、「DDN」を受信するまで、ステップS110の処理を実行しないように構成されていてもよいし、MMEも、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否を判定することによって、ステップS105において、応答信号を送信する前に、ステップS110の処理を実施するように構成されていてもよい。
【0051】
図3の例では、MMEは、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続が可能であると判定するものとする。
【0052】
ステップS105において、MMEは、HSSに対して、かかる判定結果を通知するための応答信号を送信する。
【0053】
ここで、MMEは、所定の応答信号として、UEの在圏エリアの問い合わせ信号を受信した場合、かかる応答信号によって、UEの在圏エリア情報(例えば、位置登録エリアやセルID等)を通知してもよい。
【0054】
例えば、図3に示すように、ステップS105において、MMEは、「IMSI」及び「EPS-Location-Information」を含む「Insert Subscriber Data Answer」によって、かかる応答信号を送信してもよい。
【0055】
かかる応答信号は、図6に示す「Insert Subscriber Data Answer(3GPP TS29.272のTable5.2.2.1.1/2参照)」内の情報要素「EPS-Location-Information」内に設定される「MME-Location-Information(MME配下におけるUEの在圏エリアの応答信号)」や「SGSN-Location-Information(SGSN配下におけるUEの在圏エリアの応答信号)」やT-ADSに関わる情報である「Last UE Activity Time」や混雑状況の応答信号等であってもよいし、他の応答信号であってもよい。
【0056】
ステップS106において、HSSは、S-CSCFに対して、かかる応答信号を送信する。
【0057】
例えば、図3に示すように、ステップS106において、MMEは、「MSISDN」及び「Location Information」を含む「Sh-Pull Response」によって、かかる応答信号を送信してもよい。
【0058】
かかる応答信号は、図7に示す「Sh-Pull Response(3GPP TS29.328のTable6.1.1.2参照)」内の情報要素「DATA」内に設定される「Location Information(UEの在圏エリアの応答信号)」や「T-ADS Information」や混雑状況の応答信号等であってもよいし、他の応答信号であってもよい。
【0059】
ステップS107において、S-CSCFは、受信した応答信号によって通知された判定結果が、上述の着信処理の継続が可能であることを示すことを確認し、P-CSCFに対して、UE宛ての着信信号(INVITE)を転送する。
【0060】
ステップS108において、P-CSCFは、P-GWに対して、UE宛ての着信信号(INVITE)を転送し、P-GWは、S-GWに対して、UE宛ての着信信号(INVITE)を転送する。
【0061】
ステップS109において、S-GWは、UEが「IDLE状態」であるため、MMEに対して、「DDN」を送信する。
【0062】
ステップS110において、MMEは、「DDN」に応じて、eNodeBに対して、「Paging」を送信し、ステップS111において、eNodeBは、UEに対して、「Paging」を送信する。
【0063】
その後、ステップS112において、「Service Request処理」が行われ、ステップS113において、通常のIMSを用いた着信処理が継続される。
【0064】
第2に、図8を参照して、本実施形態に係る移動通信システムにおいて、IMSを用いた着信処理が失敗する場合の動作(例えば、無線アクセスネットワークやMMEやS-GWやP-GWにおいて輻輳が発生している場合の動作)について説明する。以下、かかる動作について、図3の動作との相違点に着目して説明する。
【0065】
図8の例では、ステップS104において、MMEは、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続が不可であると判定するものとする。
【0066】
ステップS105において、MMEは、HSSに対して、かかる判定結果を通知するための応答信号を送信する。
【0067】
ここで、MMEは、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続が不可であると判定したため)、かかる応答信号によって、上述のUEの在圏エリア情報に加えて、着信処理の継続が不可である理由を通知してもよい。
【0068】
ステップS106において、HSSは、S-CSCFに対して、かかる応答信号を送信する。
【0069】
ステップS106aにおいて、S-CSCF等のIMS装置は、上述の応答信号によって通知された判定結果が、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続が不可であることを示すため、通信相手ネットワークに対して、かかる着信処理が失敗したことを示す着信エラー応答信号を送信する。
【0070】
なお、IMS装置が、問い合わせ信号によって、IMSにより提供するサービス種別に係る情報を提供し、MMEが、上述の要素に加えて、かかるサービス種別に係る情報を加味することで、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否を判定してもよい。
【0071】
かかる動作によれば、MMEは、サービス種別ごとに、着信処理の継続可否を判定することができる。例えば、MMEは、音声着信については拒否するが、SMS着信については許容するというように判定することができる。
【0072】
或いは、MMEは、応答信号によって、HSSに対して、上述の着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するために必要な判定情報を送信し、HSSが、かかる判定情報に基づいて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定してもよい。
【0073】
さらに、HSSが、IMS装置に対して、応答信号によって、かかる判定情報を転送し、IMS装置が、かかる判定情報に基づいて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定してもよい。
【0074】
ここで、かかる判定情報としては、無線アクセスネットワークやコアネットワークにおける混雑状況(規制率等)の情報や、ユーザ種別(通常ユーザ又は優先ユーザ)や、規制対象エリア情報等が含まれていてもよい。
【0075】
かかる場合、MMEは、ステップS109において、「DDN」を受信するまで、ステップS110の処理を実行しないように構成されていてもよいし、MMEも、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否を判定することによって、ステップS105において、応答信号を送信する前に、ステップS110の処理を実施するように構成されていてもよい。
【0076】
かかる動作によれば、IMS装置は、サービス種別ごとに、着信処理の継続可否を判定することができる。例えば、IMS装置は、音声着信については継続しないが、SMS着信については着信処理を継続するというように判定することができる。
【0077】
本実施形態に係る移動通信システムによれば、IMS装置は、UE宛の着信信号に基づく着信処理を開始する前に、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否(例えば、無線アクセスネットワークやMMEやS-GWやP-GWにおける輻輳状況)を把握することができるため、必要に応じて、事前に、かかる着信処理を規制することができる。
【0078】
(変更例1)
図9を参照して、本発明の第1の実施形態の変更例1に係る移動通信システムについて説明する。以下、本発明の変更例1に係る移動通信システムについて、上述の第1の実施形態に係る移動通信システムとの相違点に着目して説明する。
【0079】
図9に示すように、ステップS201乃至S204の動作は、図3に示すステップS101乃至S104の動作と同一である。
【0080】
MMEは、ステップS204において、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続が可能であると判定した場合、ステップS204aにおいて、HSSに対して、上述の応答信号を送信する前に、UEの位置登録エリアを管理するeNodeBに対して、「Paging」を送信する。
【0081】
かかる動作は、所定の問い合わせ信号(例えば、「Insert Subscriber Data Request」)に設定される所定情報により、起動要否を決定してもよい。
【0082】
また、IMS装置が、所定の問い合わせ信号によって、かかるIMSにより提供されるサービス種別を通知することで、MMEは、かかるサービス種別に基づき、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の判定を行ってもよい。
【0083】
ここで、MMEは、上述の応答信号を送信した後に「Paging」を送信してもよいし、上述の応答信号を送信するのと同時に「Paging」を送信してもよいし。
【0084】
ステップS204bにおいて、eNodeBは、UEに対して、「Paging」を送信する。その結果、ステップS204cにおいて、「Service Request処理」が行われる。
【0085】
ステップS205において、MMEは、HSSに対して、かかる判定結果を通知するための応答信号を送信する。
【0086】
ここで、MMEは、かかる応答信号によって、HSSに対して、上述の「Paging」の結果や、UEが接続中のセルの識別情報(セルID等)等を通知してもよい。
【0087】
ステップS206において、HSSは、S-CSCFに対して、かかる応答信号を送信する。
【0088】
ステップS207において、S-CSCFは、受信した応答信号によって通知された判定結果が、上述の着信処理の継続が可能であることを示すことを確認し、P-CSCFに対して、UE宛ての着信信号(INVITE)を転送する。
【0089】
ステップS208において、P-CSCFは、P-GWに対して、UE宛ての着信信号(INVITE)を転送し、P-GWは、S-GWに対して、UE宛ての着信信号(INVITE)を転送する。
【0090】
ステップS208aにおいて、UEが「CONNECTED状態」であるため、MMEに対して、UE宛ての着信信号(INVITE)を転送する。
【0091】
その後、ステップS209において、通常のIMSを用いた着信処理が継続される。
【0092】
以上に述べた本実施形態の特徴は、以下のように表現されていてもよい。
【0093】
本実施形態の第1の特徴は、移動通信方法であって、IMS装置(サービス制御ネットワーク装置)が、通信相手ネットワークから、UE(移動局)宛ての着信信号(INVITE)を受信すると、HSS(加入者管理サーバ装置)に対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程Aと、HSSが、MME(移動管理用ノード)に対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程Bと、MMEが、所定の問い合わせ信号に応じて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定する工程Cと、MMEが、HSSに対して、かかる判定結果を通知するための応答信号を送信する工程Dと、HSSが、IMS装置に対して、かかる応答信号を送信する工程Eと、IMS装置が、かかる応答信号によって通知された判定結果に基づいて、UE宛ての着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定する工程Fとを有することを要旨とする。
【0094】
本実施形態の第1の特徴において、工程Fにおいて、IMS装置は、上述の応答信号によって通知された判定結果が、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続が不可であることを示す場合、通信相手ネットワークに対して、かかる着信処理が失敗したことを示す着信エラー応答信号を送信してもよい。
【0095】
本実施形態の第1の特徴において、工程Cにおいて、MMEは、UE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続が可能であると判定した場合、HSSに対して、上述の応答信号を送信する前に、eNodeB(無線基地局)を介して、UEに対して、「Paging(ページング信号)」を送信してもよい。
【0096】
本実施形態の第2の特徴は、IMS装置であって、通信相手ネットワークから、UE宛ての着信信号を受信すると、HSSに対して、所定の問い合わせ信号を送信するように構成されており、HSSから、所定の問い合わせ信号に対する応答信号を受信した場合、かかる応答信号によって通知された判定結果に基づいて、かかる着信処理を継続するか否かについて判定するように構成されていることを要旨とする。
【0097】
本実施形態の第2の特徴において、上述の応答信号によって通知された判定結果が、上述の着信処理の継続が不可であることを示す場合、通信相手ネットワークに対して、かかる着信処理が失敗したことを示す着信エラー応答信号を送信するように構成されていてもよい。
【0098】
本実施形態の第3の特徴は、MMEであって、HSSから、所定の問い合わせ信号を受信した場合、通信相手ネットワークから受信したUE宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するように構成されており、HSSに対して、かかる判定結果を通知するための応答信号を送信するように構成されていることを要旨とする。
【0099】
本実施形態の第3の特徴において、上述の着信処理の継続が可能であると判定した場合、HSSに対して、上述の応答信号を送信する前に、eNodeBを介して、UEに対して、「Paging」を送信するように構成されていてもよい。
【0100】
本実施形態の第4の特徴は、移動通信方法であって、IMS装置が、通信相手ネットワークから、UE宛ての着信信号を受信すると、HSSに対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程と、HSSが、MMEに対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程と、MMEが、所定の問い合わせ信号に応じて、HSSに対して、上述の着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するために必要な判定情報を送信する工程と、HSSが、かかる判定情報に基づいて、上述の着信処理の継続の可否について判定する工程と、HSSが、IMS装置に対して、かかる判定結果を通知するための応答信号を送信する工程と、IMS装置が、かかる応答信号によって通知された判定結果に基づいて、上述の着信処理を継続するか否かについて判定する工程とを有することを要旨とする。
【0101】
なお、上述のUEやeNodeBやMMEやS-GWやP-GWやPCRFやHSSやP-CSCFやS-CSCFやI-CSCFやASの動作は、ハードウェアによって実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実施されてもよいし、両者の組み合わせによって実施されてもよい。
【0102】
ソフトウェアモジュールは、RAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリや、ROM(Read Only Memory)や、EPROM(Erasable Programmable ROM)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)や、レジスタや、ハードディスクや、リムーバブルディスクや、CD-ROMといった任意形式の記憶媒体内に設けられていてもよい。
【0103】
かかる記憶媒体は、プロセッサが当該記憶媒体に情報を読み書きできるように、当該プロセッサに接続されている。また、かかる記憶媒体は、プロセッサに集積されていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ASIC内に設けられていてもよい。かかるASICは、UEやeNodeBやMMEやS-GWやP-GWやPCRFやHSSやP-CSCFやS-CSCFやI-CSCFやAS内に設けられていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ディスクリートコンポーネントとしてUEやeNodeBやMMEやS-GWやP-GWやPCRFやHSSやP-CSCFやS-CSCFやI-CSCFやAS内に設けられていてもよい。
【0104】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0105】
UE…移動局
eNodeB…無線基地局
MME…移動管理用ノード
S/P/I-CSCF…セッション制御用ノード
PCRF…ポリシー及び課金制御用ノード
P-GW、S-GW…ゲートウェイ装置
HSS…加入者管理サーバ装置
AS…アプリケーションサーバ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービス制御ネットワーク装置が、通信相手ネットワークから、移動局宛ての着信信号を受信すると、加入者管理サーバ装置に対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程Aと、
前記加入者管理サーバ装置が、移動管理用ノードに対して、前記所定の問い合わせ信号を送信する工程Bと、
前記移動管理用ノードが、前記所定の問い合わせ信号に応じて、前記着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定する工程Cと、
前記移動管理用ノードが、前記加入者管理サーバ装置に対して、前記判定結果を通知するための応答信号を送信する工程Dと、
前記加入者管理サーバ装置が、前記サービス制御ネットワーク装置に対して、前記応答信号を送信する工程Eと、
前記サービス制御ネットワーク装置が、前記応答信号によって通知された前記判定結果に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定する工程Fとを有することを特徴とする移動通信方法。
【請求項2】
前記工程Fにおいて、前記サービス制御ネットワーク装置は、前記応答信号によって通知された前記判定結果が、前記着信信号に基づく着信処理の継続が不可であることを示す場合、前記通信相手ネットワークに対して、前記着信信号に基づく着信処理が失敗したことを示す着信エラー応答信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項3】
前記工程Cにおいて、前記移動管理用ノードは、前記着信信号に基づく着信処理の継続が可能であると判定した場合、前記加入者管理サーバ装置に対して、前記応答信号を送信する前に、無線基地局を介して、前記移動局に対して、ページング信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項4】
通信相手ネットワークから、移動局宛ての着信信号を受信すると、加入者管理サーバ装置に対して、所定の問い合わせ信号を送信するように構成されており、
前記加入者管理サーバ装置から、前記所定の問い合わせ信号に対する応答信号を受信した場合、該応答信号によって通知された判定結果に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定するように構成されていることを特徴とするサービス制御ネットワーク装置。
【請求項5】
前記応答信号によって通知された前記判定結果が、前記着信信号に基づく着信処理の継続が不可であることを示す場合、前記通信相手ネットワークに対して、前記着信信号に基づく着信処理が失敗したことを示す着信エラー応答信号を送信するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のサービス制御ネットワーク装置。
【請求項6】
加入者管理サーバ装置から、所定の問い合わせ信号を受信した場合、通信相手ネットワークから受信した移動局宛ての着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するように構成されており、
前記加入者管理サーバ装置に対して、前記判定結果を通知するための応答信号を送信するように構成されていることを特徴とする移動管理用ノード。
【請求項7】
前記着信信号に基づく着信処理の継続が可能であると判定した場合、前記加入者管理サーバ装置に対して、前記応答信号を送信する前に、無線基地局を介して、前記移動局に対して、ページング信号を送信するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の移動管理用ノード。
【請求項8】
サービス制御ネットワーク装置が、通信相手ネットワークから、移動局宛ての着信信号を受信すると、加入者管理サーバ装置に対して、所定の問い合わせ信号を送信する工程と、
前記加入者管理サーバ装置が、移動管理用ノードに対して、前記所定の問い合わせ信号を送信する工程と、
前記移動管理用ノードが、前記所定の問い合わせ信号に応じて、前記加入者管理サーバ装置に対して、前記着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定するために必要な判定情報を送信する工程と、
前記加入者管理サーバ装置が、前記判定情報に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理の継続の可否について判定する工程と、
前記加入者管理サーバ装置が、前記サービス制御ネットワーク装置に対して、前記判定結果を通知するための応答信号を送信する工程と、
前記サービス制御ネットワーク装置が、前記応答信号によって通知された前記判定結果に基づいて、前記着信信号に基づく着信処理を継続するか否かについて判定する工程とを有することを特徴とする移動通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217105(P2012−217105A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82204(P2011−82204)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】