説明

移動間仕切装置

【課題】間仕切パネルがレールの吊支点を中心として揺動しても直ぐに治めることができ、作業者が間仕切パネルをスムーズに移動させることができる移動間仕切装置を提供すること。
【解決手段】天井3に架設されたレール4に吊支され、かつレール4によって形成された移動経路に沿って移動する複数枚の間仕切パネル2により室内を仕切るようにした移動間仕切装置1において、各間仕切パネル2におけるパネル本体5を、このパネル本体5の上端と天井3との間の間隙αよりもこのパネル本体5の下端と床8との間の間隙βが広くなるようにレール4に吊支し、間仕切パネル2を固定するときには、上部塞ぎ部材6を上方向に進出させることにより天井3との間隙αを閉塞するとともに、下部塞ぎ部材7を下方向に進出させることにより床8との間隙βを閉塞するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宴会場や多目的ホール等の空間を仕切る移動間仕切装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動間仕切装置には、複数の間仕切パネルにおけるパネル本体を、天井に架設されたレールに吊支するとともに、パネル本体の上下端より上下方向に進出することにより、パネル本体の上下端と天井及び床との間隙を閉塞する上下部塞ぎ部材を設けるようにしたものがあり、このような移動間仕切装置では、上下部塞ぎ部材をパネル本体に支持させるために同一構成の支持手段を用いているため、パネル本体の上端と天井との間の間隙と、パネル本体の下端と床との間の間隙と、をほぼ等距離に構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−155676号公報(第3頁、第1〜6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の移動間仕切装置にあっては、間仕切パネルを天井のレールに沿って移動させる際に、間仕切パネルを移動させる作業者の爪先などがパネル本体の下端に当たり、間仕切パネルがレールの吊支点を中心として前後方向に揺動する場合があり、間仕切パネルが揺動し始めると、一旦、間仕切パネルの移動を中止して揺動を治める必要があり、作業者が間仕切パネルをスムーズに移動できなくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、間仕切パネルがレールの吊支点を中心として揺動しても直ぐに治めることができ、作業者が間仕切パネルをスムーズに移動させることができる移動間仕切装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の移動間仕切装置は、
天井に架設されたレールに吊支され、かつ前記レールによって形成された移動経路に沿って移動する複数枚の間仕切パネルにより室内を仕切るようにした移動間仕切装置において、
前記各間仕切パネルにおけるパネル本体を、該パネル本体の上端と天井との間の間隙よりも該パネル本体の下端と床との間の間隙が広くなるように前記レールに吊支し、前記間仕切パネルを固定するときには、上部塞ぎ部材を上方向に進出させることにより前記天井との間隙を閉塞するとともに、下部塞ぎ部材を下方向に進出させることにより前記床との間隙を閉塞するようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、パネル本体の下端と床との間隙が広くなるため、間仕切パネルを移動させる際に、パネル本体の下端が作業者の爪先や床に配置される障害物等に当たり難くなるばかりか、間仕切パネルの重量の大部分を占めるパネル本体の重心位置を上方にずらして配置でき、間仕切パネルの重心位置が高くなれば、間仕切パネルがレールの吊支点を中心として揺動し始めても、その揺動を直ぐに治められるようになり、作業者が間仕切パネルをスムーズに移動させることができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の移動間仕切装置は、請求項1に記載の移動間仕切装置であって、
前記間仕切パネルが移動可能な吊支状態で、前記下部塞ぎ部材の下端が前記パネル本体の下端より下方に突出していることを特徴としている。
この特徴によれば、作業者の爪先や床に配置される障害物等が間仕切パネルに当たるような場合では、爪先や障害物等が最初に下部塞ぎ部材に当たるようになり、下部塞ぎ部材によってパネル本体が保護されてパネル本体に疵が付き難くなる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の移動間仕切装置は、請求項1または2に記載の移動間仕切装置であって、
前記上部及び下部塞ぎ部材が、同形の部材を用いて形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、共通部品を使用して上部及び下部塞ぎ部材を低コストで製作できるとともに、上部及び下部塞ぎ部材の上下幅寸法が同一となり間仕切パネルの製作を容易に行える。
【0009】
本発明の請求項4に記載の移動間仕切装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の移動間仕切装置であって、
前記パネル本体には、前記間仕切パネルが移動可能な吊支状態のときに、前記下部塞ぎ部材を上昇可能に収納する収納許容部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、間仕切パネルの移動時において、作業者の爪先や床に配置される障害物等に下部塞ぎ部材が当たっても、下部塞ぎ部材が上昇されて障害物を乗り越えられるばかりか、下部塞ぎ部材に障害物が当たったときの衝撃力が収納許容部によって緩衝されるようになり、衝撃力が加わることで生じる間仕切パネルの揺動が防止される。
【0010】
本発明の請求項5に記載の移動間仕切装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の移動間仕切装置であって、
前記移動間仕切装置の前記パネル本体の下端と前記床との間隙寸法と、該移動間仕切装置と近接する壁面パネルの下部框の上下幅寸法と、を同一寸法として形成することを特徴としている。
この特徴によれば、下部塞ぎ部材によって床との間隙を閉塞したときに、移動間仕切装置の下部塞ぎ部材の露出部位が、壁面パネルの下部框と一体的に見栄え良く配置されるようになる。
【0011】
本発明の請求項6に記載の移動間仕切装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載の移動間仕切装置であって、
少なくとも前記下部塞ぎ部材には、遮音性を有する遮音部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、パネル本体の下端と床との間の間隙が広くても、その間隙が下部塞ぎ部材によって遮音されるようになり、間仕切パネルによって仕切られた室内空間同士が互いに音漏れし難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る移動間仕切装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、実施例1における移動間仕切装置の全体像を示す正面図であり、図2は、間仕切パネルを示す横断平面図であり、図3は、間仕切パネルを示す縦断側面図であり、図4は、吊支状態の間仕切パネルを示す正面図であり、図5は、固定状態の間仕切パネルを示す正面図であり、図6(a)は、上部塞ぎ部材の支持手段を示す拡大部分正面図であり、図6(b)は、下部塞ぎ部材の支持手段を示す拡大部分正面図であり、図7は、間仕切パネル及び壁面パネルを示す斜視図である。以下、図2の紙面下方側を間仕切パネルの正面側(前方側)とし、図3の紙面左方側を間仕切パネルの正面側(前方側)として説明する。
【0014】
図1の符号1は、本発明の適用された移動間仕切装置である。この移動間仕切装置1は、宴会場や多目的ホール等の室内空間を複数枚の移動式の間仕切パネル2を用いて仕切ることができる。間仕切パネル2は、室内空間の天井3に架設されたレール4に吊支されており、レール4によって形成されて移動経路に沿って、順次間仕切位置に移動させられることにより、室内が仕切られる。尚、間仕切パネル2の移動は作業者が手作業にて行うようになっている。
【0015】
図1に示すように、それぞれの間仕切パネル2には、パネル本体5の上端と天井3との間の間隙αを塞ぐ上部塞ぎ部材6が設けられるとともに、パネル本体5の下端と床8との間の間隙βを塞ぐ下部塞ぎ部材7が設けられている。これら上部及び下部塞ぎ部材6,7の端部は、間仕切パネル2が移動可能な吊支状態では、間仕切位置への進行方向に向かって突出されている。
【0016】
上部及び下部塞ぎ部材6,7の端部は、壁面パネル9または先行する間仕切パネル2の側端面に当接して、パネル本体5内に押し込まれることにより、上昇または降下させられて、パネル本体5と天井3及び床8との間の間隙α,βを閉塞するようになっている。
【0017】
図2に示すように、パネル本体5は、その前後両面がスチール製の表面板10により覆われているとともに、その内部には、前後両面側に石膏ボードで形成された裏打材11が配置されている。また、パネル本体5の内部には、左右に金属製の内部フレーム13,14が設けられている。
【0018】
更に、前後両面の裏打材11の間には、グラスウールで形成された遮音充填材12が充填されている。パネル本体5内部に遮音充填材12が充填されていることで、間仕切パネル2によって仕切られた室内空間同士が互いに遮音され、一方の室内空間で発生した音が他方の室内空間に漏れ難いようになっている。
【0019】
パネル本体5の左右端部には、金属製の側部フレーム17,18が設けられている。パネル本体5の進行方向側、すなわち左方側の側部フレーム17には、凸条部21が形成されるとともに、右方側の側部フレーム18には、凹条部22が形成されている。左方側の側部フレーム17の凸条部21は、先行する間仕切パネル2の右方側の側部フレーム18の凹条部22に係合されるとともに、右方側の側部フレーム18の凹条部22は、後行する間仕切パネル2の左方側の側部フレーム17の凹条部22に係合されるようになっている。
【0020】
図3に示すように、パネル本体5の上部には、その左右2箇所にパネル本体5に対して固定された吊支部材23が設けられている。間仕切パネル2は両吊支部材23によって吊支状態にされている。この吊支部材23は、パネル本体5の左右に設けられており(図4参照)、パネル本体5から垂直方向に延びて、その先端部に2つのローラ24が水平方向に回転自在に軸支されている。
【0021】
各ローラ24は、天井3に設けられたレール4内部に設けられた上下2つの通路25内を走行可能となっており、レール4によって形成された移動経路が湾曲していたり直角に曲がっていたりしても、その移動経路に沿ってローラ24が走行し、間仕切パネルを間仕切位置まで移動させることができる。
【0022】
また、吊支部材23は、パネル本体5の内部に設けられた、金属製の内部フレーム15,16のうち、上部側の内部フレーム15に固着されている。パネル本体5の上端から上部側の内部フレーム15の上面まで延設された金属製の上部フレーム19が設けられている。この上部フレーム19内には、上方に開口された略コ字形状をなす上部空間部26が形成されている。更に、パネル本体5の下端から下部側の内部フレーム16の下面まで延設された金属製の下部フレーム20が設けられている。この下部フレーム20内には、下方に開口された略コ字形状をなす下部空間部27が形成されている。
【0023】
本実施例では、パネル本体5の上端と、パネル本体5内の上部側の内部フレーム15の上面と、の間の距離が、パネル本体5の下端と、パネル本体5内の下部側の内部フレーム16の下面と、の間の距離よりも大きく形成されており、上部空間部26の上下幅が下部空間部27の上下幅よりも大きくなっている。また、前述した上部塞ぎ部材6が上部空間部26内に収納されるとともに、下部塞ぎ部材7が下部空間部27内に収納されるようになっている。
【0024】
図4に示すように、間仕切パネル2が移動可能な吊支状態において、上部及び下部塞ぎ部材6,7は、その間仕切位置への進行方向寄りの端部(左端)がパネル本体5の側端(左端)から突き出す状態で、パネル本体5の上部及び下部フレーム19,20に対して支持手段28によって支持されている。
【0025】
図6(a)及び図6(b)に示すように、上部塞ぎ部材6用の支持手段28と、下部塞ぎ部材7の支持手段28とは、上下対称をなす同一構成及び同一寸法(同形の部材)の支持手段28が用いられている。上部及び下部塞ぎ部材6,7には、リンク部材29の一端が前後方向を向く軸30をもって枢着されており、このリンク部材29の他端には、リンク部材29の長手方向を向く長孔31が穿設されている。この長孔31が上部及び下部フレーム19,20に設けた前後方向を向くピン32に遊嵌している。このピン32と、上部及び下部塞ぎ部材6,7における前記軸30から若干離れた部分とには、それらが互いに離れるように付勢する付勢手段としての捻りコイルバネ33の両端末が止着されている。
【0026】
上部及び下部塞ぎ部材6,7の左端が先行する間仕切パネル2と当接していないときは、リンク部材29は、図6に実線で示すように左方に向かって傾斜された位置にあり、上部及び下部塞ぎ部材6,7の左端が先行する間仕切パネル2と当接して、図6に矢印で示すように右方側に移動されると、リンク部材29は、捻りコイルバネ33の付勢力に抗して、回動させられ、上部塞ぎ部材6を押し上げるとともに、下部塞ぎ部材7を押し下げるように作用する。
【0027】
上部塞ぎ部材6が天井3に圧接するとともに、下部塞ぎ部材7が床8に圧接すると、それ以降は、上部塞ぎ部材6の上昇が阻止されるとともに、下部塞ぎ部材7の降下が阻止され、リンク部材29のみが回動し続ける。このときのリンク部材29の回動は、ピン32が長孔31内を相対的に移動することにより許容される。軸30がピン32の直上を通過する、すなわち死点を越えるまでリンク部材29が回動すると、捻りコイルバネ33の付勢力は、パネル本体5を進行方向に向かって押し付けるように作用し、図5に示すように、間仕切パネル2が間仕切位置で固定される固定状態となる。
【0028】
尚、上部塞ぎ部材6の上端及び下部塞ぎ部材7の下端には、ゴムパッキン34が設けられている。このゴムパッキン34によって上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7が、天井3及び床8に圧接された際に、摩擦抵抗が増大されて間仕切パネル2が確実に間仕切位置にて固定されるようになっている。
【0029】
図3に示すように、間仕切パネル2におけるパネル本体は、パネル本体5の上端と天井3との間の間隙αよりも、パネル本体5の下端と床8との間の間隙βが広くなるようにレール4に吊支されている。パネル本体5の高さ配置は、吊支状態及び固定状態のいずれの状態であっても変化しないので、間隙α,βは常に一定の上下幅を有している。
【0030】
間仕切パネル2が移動可能な吊支状態では、下部塞ぎ部材7は、下部塞ぎ部材7の下端がパネル本体5の下端より下方に突出するように下部空間部27に収納される。また、下部空間部27に収納された状態では、下部塞ぎ部材7の上端と下部フレーム20との間に、本実施例における収納許容部としての所定の離間距離Sを設けている。そのため下部塞ぎ部材7は下部空間部27に収納された状態であっても若干上昇できるようになっている。
【0031】
また、上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7の内部において、吊支部材23及び支持手段28が配置された部位以外の部位には、グラスウールで形成された本実施例における遮音部材としての遮音充填材12aが充填されている。上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7の内部に遮音充填材12aが充填されていることで、間仕切パネル2の固定状態において、パネル本体5の上端と天井3との間の間隙α及びパネル本体5の下端と床8との間の間隙βが、上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7によって閉塞されることで遮音され、一方の室内空間で発生した音が他方の室内空間に漏れ難いようになっている。
【0032】
更に、前述したパネル本体5内部の遮音充填材12及び上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7の内部の遮音充填材12aは、振動を抑える防振の効果も有しており、間仕切パネル2が固定状態にあるときに、間仕切パネル2の振動を抑えて、間仕切パネル2の遮音性を高めるようにしている。
【0033】
尚、上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7の内部において、吊支部材23及び支持手段28が配置された部位には、遮音充填材12aが配置されていないが、遮音充填材12aによって上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7が防振されるため、吊支部材23及び支持手段28が配置された部位の遮音性も向上するようになる。
【0034】
更に尚、上部塞ぎ部材6の上端及び下部塞ぎ部材7の下端にゴムパッキン34が設けられていることで、上部塞ぎ部材6及び下部塞ぎ部材7が防振されて遮音性が向上し、尚且つ、ゴムパッキン34により上部塞ぎ部材6と天井3との隙間や下部塞ぎ部材7と床8との隙間がなくなるので、音漏れがし難くなる。
【0035】
図7に示すように、間仕切パネル2が間仕切位置に固定された固定状態では、間仕切パネル2の側縁が壁面パネル9に当接するようになっている。また、間仕切パネル2のパネル本体5の下端と床8との間隙寸法βと、この間仕切パネル2と近接する壁面パネル9の下部框35(巾木)の上下幅寸法γと、を同一寸法として形成することで、下部塞ぎ部材7によって床8との間隙βを閉塞したときに、間仕切パネル2の下部塞ぎ部材7の露出部位βが、壁面パネル9の下部框35と一体的に見栄え良く配置されるようになる。
【0036】
以上、本実施例にける移動間仕切装置1では、各間仕切パネル2におけるパネル本体5を、パネル本体5の上端と天井3との間の間隙αよりもパネル本体5の下端と床8との間の間隙βが広くなるようにレール4に吊支し、間仕切パネル2を固定するときには、上部塞ぎ部材6を上方向に進出させることにより天井3との間隙αを閉塞するとともに、下部塞ぎ部材7を下方向に進出させることにより床8との間隙βを閉塞するようにしたことで、パネル本体5の下端と床8との間隙βが広くなるため、間仕切パネル2を移動させる際に、パネル本体5の下端が作業者の爪先や床8に配置される電気ケーブルなどの障害物等に当たり難くなるばかりか、間仕切パネル2の重量の大部分を占めるパネル本体5の重心位置を上方にずらして配置でき、間仕切パネル2の重心位置が高くなれば、間仕切パネル2がレール4の吊支点、すなわち吊支部材23の上端側を中心として揺動し始めても、その揺動を直ぐに治められるようになり、作業者が間仕切パネル2をスムーズに移動させることができる。
【0037】
尚、大きくて重い間仕切パネル2になるほど数センチの重心位置の移動が間仕切パネル2の移動作業に大きな影響を及ぼすようになる。本実施例のように重心位置を上方にずらせば、間仕切パネル2が揺動しても直ぐに治めることができる。そのため間仕切位置において、先行する間仕切パネル2の右方側の側部フレーム18の凹条部22に、後行する間仕切パネル2を垂直にさせた状態で、該間仕切パネル2の左方側の側部フレーム17の凸条部21を、スムーズに係合させることができる。
【0038】
また、間仕切パネル2が移動可能な吊支状態で、下部塞ぎ部材7の下端がパネル本体5の下端より下方に突出していることで、作業者の爪先や床8に配置される障害物等が間仕切パネル2に当たるような場合では、爪先や障害物等が最初に下部塞ぎ部材7に当たるようになり、下部塞ぎ部材7によってパネル本体5が保護されてパネル本体5に疵が付き難くなる。
【0039】
また、上部及び下部塞ぎ部材6,7が、同形の部材を用いて形成されていることで、共通部品を使用して上部及び下部塞ぎ部材6,7を低コストで製作できるとともに、上部及び下部塞ぎ部材6,7の上下幅寸法が同一となり間仕切パネル2の製作を容易に行える。
【0040】
また、パネル本体5には、間仕切パネル2が移動可能な吊支状態のときに、下部塞ぎ部材7を上昇可能に収納する収納許容部としての所定の離間距離Sが設けられていることで、間仕切パネル2の移動時において、作業者の爪先や床に配置される障害物等に下部塞ぎ部材7が当たっても、下部塞ぎ部材7が上昇されて障害物を乗り越えられるばかりか、下部塞ぎ部材7に障害物が当たったときの衝撃力が収納許容部Sによって緩衝されるようになり、衝撃力が加わることで生じる間仕切パネル2の揺動が防止される。
【0041】
また、少なくとも下部塞ぎ部材7には、遮音性を有する遮音充填材12aが設けられていることで、パネル本体5の下端と床8との間の間隙βが広くても、その間隙βが下部塞ぎ部材7によって遮音されるようになり、間仕切パネル2によって仕切られた室内空間同士が互いに音漏れし難くなる。
【0042】
尚、付勢手段としての捻りコイルバネ33によって下部塞ぎ部材7が支持されているため、下部塞ぎ部材7は、間仕切パネル2の移動時において弾性力を有する状態で、収納許容部Sの範囲内で上下昇降可能となっている。
【実施例2】
【0043】
次に、実施例2に係る移動間仕切装置につき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図8は、実施例2における間仕切パネルを示す縦断側面図である。
【0044】
図8に示すように、実施例2における間仕切パネル2’のパネル本体5の下端と床8との間の間隙β’は、実施例1における間仕切パネル2のパネル本体5の下端と床8との間の間隙βよりも大きくなるように形成されている。
【0045】
実施例2における間仕切パネル2’が移動可能な吊支状態において、下部塞ぎ部材7’は、下部塞ぎ部材7’の下端がパネル本体5の下端より上方になるように下部空間部27’に収納される。尚、実施例2における下部塞ぎ部材7’を上下昇降させる際には、実施例1と同様な支持手段28を用いて上下昇降させてもよいし、従来公知の手動式のロック機構や電動式の昇降装置を設けることで、下部塞ぎ部材7’を上下昇降させるようにしてもよい。
【0046】
パネル本体5の下端と床8との間の間隙β’を大きく形成するとともに、下部塞ぎ部材7’の全ての部位を、下部空間部27’内に収納することで、間仕切パネル2’が移動可能な吊支状態において、間仕切パネル2’の重量の大部分を占めるパネル本体5の重心位置を上方に移動させて配置できる。
【0047】
また、実施例2におけるパネル本体5の内部には、パネル本体5の上下方向の中間部よりも上方側に金属製の重りフレーム36が設けられている。この重りフレーム36が配置されることによって、間仕切パネル2’が移動可能な吊支状態において、間仕切パネル2’の重心位置を更に上方に移動させて配置できる。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例では、本発明を作業者が手動にて間仕切パネル2を移動させる手動式の移動間仕切装置1に適用させているが、電気モータ等を用いて電動により間仕切パネル2を移動させる電動式の移動間仕切装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1における移動間仕切装置の全体像を示す正面図である。
【図2】間仕切パネルを示す横断平面図である。
【図3】間仕切パネルを示す縦断側面図である。
【図4】吊支状態の間仕切パネルを示す正面図である。
【図5】固定状態の間仕切パネルを示す正面図である。
【図6】(a)は、上部塞ぎ部材の支持手段を示す拡大部分正面図であり、(b)は、下部塞ぎ部材の支持手段を示す拡大部分正面図である。
【図7】間仕切パネル及び壁面パネルを示す斜視図である。
【図8】実施例2における間仕切パネルを示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 移動間仕切装置
2,2’ 間仕切パネル
3 天井
4 レール
5 パネル本体
6 上部塞ぎ部材
7,7’ 下部塞ぎ部材
8 床
12,12a 遮音充填材(遮音部材)
23 吊支部材
28 支持手段
33 捻りコイルバネ
35 下部框(巾木)
36 重りフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に架設されたレールに吊支され、かつ前記レールによって形成された移動経路に沿って移動する複数枚の間仕切パネルにより室内を仕切るようにした移動間仕切装置において、
前記各間仕切パネルにおけるパネル本体を、該パネル本体の上端と天井との間の間隙よりも該パネル本体の下端と床との間の間隙が広くなるように前記レールに吊支し、前記間仕切パネルを固定するときには、上部塞ぎ部材を上方向に進出させることにより前記天井との間隙を閉塞するとともに、下部塞ぎ部材を下方向に進出させることにより前記床との間隙を閉塞するようにしたことを特徴とする移動間仕切装置。
【請求項2】
前記間仕切パネルが移動可能な吊支状態で、前記下部塞ぎ部材の下端が前記パネル本体の下端より下方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の移動間仕切装置。
【請求項3】
前記上部及び下部塞ぎ部材が、同形の部材を用いて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の移動間仕切装置。
【請求項4】
前記パネル本体には、前記間仕切パネルが移動可能な吊支状態のときに、前記下部塞ぎ部材を上昇可能に収納する収納許容部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の移動間仕切装置。
【請求項5】
前記移動間仕切装置の前記パネル本体の下端と前記床との間隙寸法と、該移動間仕切装置と近接する壁面パネルの下部框の上下幅寸法と、を同一寸法として形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の移動間仕切装置。
【請求項6】
少なくとも前記下部塞ぎ部材には、遮音性を有する遮音部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の移動間仕切装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−108662(P2009−108662A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284891(P2007−284891)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年10月5日 株式会社 岡村製作所発行の「safewall spread & move Active Partition & Sliding wall System スプレッド アンド ムーヴ」に発表
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】