移植可能金属グラフトおよびその製造方法
布状の性質をグラフトに付与するかまたはグラフトの幾何学的変形を可能にするパターンでフィルムを貫通する複数の微小孔を有する生体適合性材料の金属フィルムまたは擬似金属フィルムから製造される移植可能医療用グラフトである。移植可能グラフトは、金属材料および/または擬似金属材料を真空堆積させて単一層または多層の構造体にすることによって製造され、堆積したフィルムの一部の選択的除去により堆積中または堆積後のいずれかに複数の微小孔を形成することが好ましい。移植可能医療用グラフトは、管腔内グラフとまたは外科用グラフトとして用いるのに適しており、血管グラフト、ステントグラフト、皮膚グラフト、シャント、骨グラフト、外科用パッチ、非血管用導管、弁リーフレット、フィルタ、閉鎖膜、人工括約筋、腱、および靭帯として用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、移植可能金属製医療装置に関する。より具体的には、本発明は、例えば、外科用グラフトおよび管腔内血管グラフト、ステントグラフト、カバードステント、皮膚グラフト、シャント、ボーングラフト、外科用パッチ、非血管用導管、弁リーフレット、フィルタ、閉鎖膜、括約筋、人工腱、および靭帯を含む移植可能医療装置に関する。より具体的には、本発明は、生体適合性材料の金属フィルムまたは擬似金属フィルムから製造され、該フィルム内に複数のプリーツまたはコルゲーションを有する移植可能医療用グラフトに関する。グラフトが概ね管状のものである場合は、プリーツまたはコルゲーションは、グラフトの長軸に沿って円周方向および軸線方向に配置されることが好ましい。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の医療用グラフトは、フィルムを貫通する複数の微小孔(microperforations)を有するものとすることができる。複数の微小孔は、例えば、フィルムの幾何学的変形を可能にし、布状の性質をフィルムに付与し、可撓性をフィルムに付与し、組織の内部への成長を可能にし、癒合を促進することを含む多くの目的を果たすことができる。この「布状の」という用語は、天然または合成の織物に見られるような、柔軟性および/または応従性を有する性質を意味することを意図している。本発明の医療用グラフトは、グラフトの表面領域の少なくとも一部に沿って有孔領域および無孔領域の両方を有するものとすることができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の移植可能グラフトは、その全体が、生体適合性の金属または擬似金属から作られた自立性の凝集フィルムから製造される。従来、移植可能医療装置の分野においては、完全に自立性の凝集金属材料または擬似金属材料から製造される、ステントグラフトまたはカバードステントなどのグラフトを、少なくともその要素の1つとして含む移植可能医療装置を製造することは知られていない。ここで用いられるときには、「グラフト」という用語は、2つの表面によって境界が定められる材料を実質的に含み、その表面間の距離がグラフトの厚さであり、生体内で拡大した直径を維持するステントまたは他の構造強化材などの補助的な支持構造体を必要とせずに生体内での使用が可能となるように自立する一体的な寸法強度を呈する、いずれかのタイプの装置または装置の一部を示すことを意図している。本発明のグラフトは、グラフトが無孔領域と微小孔領域とを持つようにグラフトの厚さの領域を貫通する微小孔を有するか、または、グラフトの壁面全体にわたって微小孔を有するかもしくは完全に無孔とすることができる。本発明のグラフトは、平面シート、トロイド、および特定の用途が保証される他の形状で形成することができる。しかしながら、単なる例示の目的で、本出願は管状グラフトを対象とする。本出願の目的のために、「擬似金属」および「擬似金属の」という用語は、生体適合性金属と実質的に同じ生体反応および材料特性を呈する生体適合性材料を意味するように意図されている。擬似金属材料の例には、例えば、複合材およびセラミックスが含まれる。複合材は、セラミックス、金属、炭素またはポリマーから作られる様々な繊維のいずれかで補強されたマトリクス材料からなる。
【0003】
体内に移植されるときは、金属は、一般に、市販のポリマー・グラフトを製造するのに用いられるポリマーによって示されるものより優れた生体適合性を有すると考えられる。プロテーゼ材料を移植すると、細胞表面のインテグリン受容体がプロテーゼ表面と相互作用することが見出された。インテグリン受容体は、生体内の特定のリガンドに対して特異的である。特定のタンパク質がプロテーゼ表面に吸着され、リガンドが露出された場合には、インテグリン−リガンドのドッキングによって、プロテーゼ表面への細胞結合が生じる場合がある。タンパク質は、ポリマーに結合するよりもより永続的に金属に結合し、これによってより安定した接着表面がもたらされることも観察された。大部分の医療用金属および合金の表面に結合されるタンパク質のコンフォメーションは、より多くのリガンドを露出させ、表面インテグリン・クラスターを有する内皮細胞を白血球に比べて優先的に金属または合金の表面に引き付けるものと思われる。最終的に、金属および金属合金は、ポリマーと比べて金属劣化に対してより大きな耐性を示し、これによって、より長期にわたる構造的な完全性と安定的な界面状態とがもたらされる。
【0004】
金属は、その比較的大きな接着表面形状のため、短期の血小板活性および/または血栓形成の影響も受けやすい。これらの有害な特性は、今日常用される薬理学的に活性な抗血栓薬の投与によって相殺することができる。表面の血栓形成は、通常は、最初の暴露から1〜3週間で消滅する。冠動脈ステントの場合は、この期間中に、抗血栓の有効範囲が定期的に提供される。筋骨格および歯などの非血管用途においては、同様の分子的考察により、金属は、ポリマーより大きな組織適合性も有する。すべてのポリマーが金属より劣るという事実を示す最適な論文は、非特許文献1である。
【0005】
通常、内皮細胞(EC)は、合流が達成されるまで、移動して増殖し、露出領域を覆う。増殖と比べて量的により重要な移動は、通常の血流下において、概ね、25μm/hrの速さ、すなわち名目上10μmであるECの直径の2.5倍の速さで進行する。ECは、細胞膜インテグリン受容体のクラスター、具体的には焦点接触点(focal contact points)に付着した細胞内フィラメントの複雑なシステムにより調整される、細胞膜の回転運動によって移動する。焦点接触部位内のインテグリンは、複雑なシグナル伝達機構に従って発現し、最終的には、基質接着分子内の特定のアミノ酸配列に結合する。ECは、インテグリンのクラスターによって表されるその細胞表面の概ね16〜22%を有する。非特許文献2および非特許文献3を参照されたい。これは、30分以内に50%より大きい再造形を示す動的プロセスである。焦点接着接触点(focal adhesion contacts)は、サイズおよび分布が様々であるが、それらの80%は6μm2より小さく、その大部分は約1μm2であり、流れの方向に伸び、細胞の前縁(leading edges)に集中する傾向がある。付着部位に対する特異的な付着受容体応答を決定する認識およびシグナル伝達のプロセスは、完全には理解されていないが、付着部位の有効性が、付着および移動に好ましい影響を与える可能性がある。ポリマーなどの医療用グラフトとして一般的に用いられる材料は、ECで覆われることはなく、したがって、それらが動脈内に配置された後で癒合しないことが知られている。したがって、本発明の目的は、ポリマー・グラフトを、ECによって覆われる可能性があり、かつ、完全に癒合することができる金属グラフトに置き換えることである。さらに、真空堆積技術を用いて本発明のグラフトを作る材料を形成することによって、血流と接触する材料の不均質性を制御することができる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,897,911号明細書
【特許文献2】米国特許第5,725,573号明細書
【特許文献3】米国特許第5,955,588号明細書
【特許文献4】米国特許第5,649,951号明細書
【特許文献5】米国特許第5,387,247号明細書
【特許文献6】米国特許第5,607,463号明細書
【特許文献7】米国特許第5,690,670号明細書
【特許文献8】米国特許第5,891,507号明細書
【特許文献9】米国特許第5,782,908号明細書
【特許文献10】米国特許第5,932,299号明細書
【非特許文献1】van der Giessen, WJ. et al. Marked inflammatory sequelae to implantation of biodegradable and non−biodegradable polymers in porcine coronary arteries, Circulation, 1996:94 (7): 1690−7
【非特許文献2】Davies, P.F., Robotewskyi A., Griem M. L., Endothelial cell adhesion in real time. J. Clin. Invest. 1993; 91:2640−2652
【非特許文献3】Davies, P.F., Robotewski, A., Griem, M. L., Qualitiative studies of endothelial cell adhesion, J. Clin. Invest. 1994; 93: 2031−2038
【非特許文献4】H. Holleck, V. Schier: Multilayer PVD coatings for wear protection, Surface and Coatings Technology, Vol. 76−77 (1995) pp. 328−336
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ステントなどの移植される医療用装置の内皮化を増進させる多くの試みが存在しており、これには、ポリマー材料でステントを覆うこと(特許文献1)、ダイヤモンド状炭素コーティングをステントに付与すること(特許文献2)、疎水性部分をヘパリン分子に共有結合させること(特許文献3)、青色から黒色の酸化ジルコニウムまたは窒化ジルコニウムの層でステントをコーティングすること(特許文献4)、乱層構造炭素(turbostratic carbon)の層でステントをコーティングすること(特許文献5)、ステントの組織接触面をグループVB金属の薄層でコーティングすること(特許文献6)、チタンまたはTi−Nb−Zr合金などのチタン合金の多孔質コーティングをステントの表面に付与すること(特許文献7)、ヘパリン、内皮由来成長因子、血管成長因子、シリコン、ポリウレタン、またはポリテトラフルオロエチレンなどの、合成のまたは生物学的な活性剤または不活性剤を用いて、超音波条件下でステントをコーティングすること(特許文献8)、ビニル官能基を持つシラン化合物でステントをコーティングし、次いでシラン化合物のビニル基で重合することによってグラフト・ポリマーを形成すること(特許文献9)、赤外放射、マイクロ波放射、または高電圧重合を用いてステントの表面にモノマー、オリゴマー、またはポリマーをグラフト化し、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの特性をステントに付与すること(特許文献10)が含まれる。しかしながら、これらの手法は、臨床的に許容可能なポリマー・グラフトの内皮化の不足を改善することはできない。
【0008】
したがって、本発明のグラフトは、全体が金属材料および/または擬似金属材料から製造されることが望ましく、該グラフトの壁面の少なくとも一部は、従来のポリマー・グラフトの内皮化能力より大きな内皮化能力を呈する自立性の独立型グラフトを提供するために、複数のプリーツまたは起伏(undulations)を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属装置は、スパッタリングまたは物理蒸着プロセスなどの薄膜真空堆積技術によって製造されることが好ましい。本発明によれば、真空堆積によって本発明の移植可能な装置を製造することが好ましい。真空堆積は、結果として形成される装置の多くの材料特質および特性に関して、より優れた制御を可能にする。例えば、真空堆積は、粒径、粒子相、粒子材料組成、バルク材料組成、表面トポロジー、形状記憶合金の場合の遷移温度などの機械的特性に関する制御を可能にする。さらに、真空堆積プロセスは、移植される装置の材料特性、機械的特性、または生物学的特性に悪影響を与える大量の汚染物質を導入することなく、より高い材料純度を有する装置の作成を可能にする。真空堆積技術は、従来の冷間加工技術によって製造可能なものより複雑な装置の製造にも適する。例えば、多層構造、複雑な幾何学形状、厚さまたは表面均一性などといった材料公差の極めて精細な制御はすべて、真空堆積処理の利点である。
【0010】
真空堆積技術においては、材料は、例えば平面、管状などの所望の幾何学的形状で直接形成され、金属または擬似金属が基材の形態と一致して堆積する堆積基材の表面形態に基づく所定の表面形態を有する。真空堆積プロセスの一般的な原理は、原料物質として知られる、ペレットまたは厚いホイルのような最小限に加工された形態の材料を使用して、それらを原子化することである。原子化は、例えば、物理蒸着の場合のように熱を用いるか、またはスパッタ堆積の場合のように衝突プロセスの効果を用いて、実施することができる。幾つかの堆積形態においては、典型的には1つまたは複数の原子からなる微粒子を生成するレーザ・アブレーションなどのプロセスを原子化に代えることができ、1粒子当たりの原子数を数千個以上とすることができる。次いで、原料物質の原子または粒子を基材またはマンドレル上に堆積させて、所望の物体を直接形成する。他の堆積法においては、真空チャンバ内に導入された雰囲気ガスすなわちガス・ソースと、堆積した原子および/または粒子との間の化学反応が、堆積プロセスの一部である。堆積した材料は、化学蒸着の場合のような、固体ソースとガス・ソースとの反応によって形成される化合物種を含む。次いで、ほとんどの場合においては、堆積した材料を部分的にまたは完全に基材から除去して、所望の製品を形成する。
【0011】
真空堆積プロセスの第1の利点は、金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムの真空堆積によって、厳密なプロセス制御が可能になり、流体接触面に沿って規則的で均質な原子および分子の分布パターンを有するフィルムを堆積させられることである。これは、表面組成の著しい変化を回避して、予測可能な酸化および有機吸着パターンを作り出し、水、電解質、タンパク質、および細胞との予測可能な相互作用を有する。特に、自然細胞または移植細胞の付着部位として機能する結合ドメインの均質な分布によってEC移動が補助され、スムーズな移動および付着が促進されるようになる。
【0012】
第2に、これ以降は層と呼ぶ単一の金属または金属合金から作られる材料および装置に加えて、本発明のグラフトは、生体適合性材料の層か、または、相互に形成されて自立多層構造になる生体適合性材料の複数の層で構成することができる。多層構造は、シート材料の機械的強度を高めること、または、超弾性、形状記憶、放射線不透過性、耐食性などの特殊な特性を有する層を含むことによって特殊な性質を与えることが、一般に知られている。真空堆積技術の特殊な利点は、層状材料を堆積させることが可能で、したがって優れた性質を持つフィルムを作成できることである(非特許文献4を参照)。上部構造または多層などの層状材料は、一般に、材料の何らかの化学的特性、電子的特性、または光学的特性を利用するためにコーティングとして堆積させるものであり、一般的な例は、光学レンズの反射防止コーティングである。多層はまた、薄膜製造の分野において、薄膜の機械的特性、特に高度および強靱性を高めるのに用いられる。
【0013】
第3に、本発明のグラフトの可能な形態および用途についての設計可能性は、真空堆積技術を利用することによって大幅に高められる。具体的には、真空堆積は、従来の鍛造技術を利用することでは費用効率良く達成できないか、または場合によっては全く達成できない、複雑な3次元の幾何学的形状および構造を有する場合がある実質的に均一な薄い材料の製造に適した付加的な技術である。通常の鍛造金属の製造技術は、精錬、熱間加工、冷間加工、熱処理、高温アニーリング、析出アニーリング(precipitation annealing)、研磨、アブレーション、ウェット・エッチング、ドライ・エッチング、切断、および溶接を伴うものとすることができる。これらの処理ステップはいずれも、汚染、材料特性の劣化、最終的に達成可能な形態、寸法および公差、生体適合性、ならびに費用を含む欠点を有する。例えば、従来の鍛造プロセスは、約20mmより大きい直径を有するチューブを製造するのには適さず、サブミクロンの公差で約5μmまでの壁厚を有する材料を製造するのにも適さない。
【0014】
本発明の自立性の金属グラフトまたは擬似金属グラフトは、従来から製造されている鍛造材料から製造することができるが、本発明について考えられる最良の形態によれば、本発明のグラフトは、真空堆積技術によって製造されることが好ましい。金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムを本発明のグラフトの前駆物質として真空堆積させることによって、結果として得られるフィルム材料の材料特性、生体適合性、および機械的特性を、従来から製造されているグラフト形成材料で可能なものより厳密に制御することができる。本発明の自立グラフトは、単独で用いる、すなわち移植可能な装置全体を単一のグラフトから作るか、または、グラフトを他のグラフトと共に、もしくは、足場(scaffolds)、ステント、および他の装置などの他の構造要素と共に用いられる構造体の一部とすることができる。この「共に」という用語は、溶接、融解、または他の接合方法によって作られるもの、ならびに、材料片のある領域をグラフトに形成し、材料片の他の領域を装置の別の部材または部分に形成することによって同一の材料片から作られているもののような、実際の接続を意味する場合がある。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、壁面に複数のプリーツまたはコルゲーションを有し、グラフトの壁厚を貫通する複数の微小孔を有する自立グラフト部材が提供される。本発明のグラフト部材は、シート、チューブ、またはリングを含む事実上いかなる幾何学的構成をとることもできるが、グラフト部材についての好ましい幾何学的形状は、概ね平面及び概ね管状である。存在する場合は、複数の微小孔は、幾何学的応従性をグラフトに付与し、幾何学的拡張性をグラフトに付与し、および/または、通常の生理的条件下でグラフトの壁を通る流体流れを防止しながら経壁的内皮化を促進するように、グラフトを通る体液または生体物質の通過を制限または可能にするのに役立つ。複数の微小孔は、血管グラフトの場合に長軸方向の可撓性について必要とされるような、柔軟性および/または弾性応従性、塑性応従性、もしくは超弾性応従性をグラフトに付与することによって、布状の性質をグラフトに付与することもできる。
【0016】
第1の実施形態においては、グラフトは、塑性変形可能な材料から作ることができ、その結果、力が加えられたときに、微小孔が幾何学的に変形して、例えば外科用パッチ・グラフトなどの平面グラフトの場合の長さ、または例えば血管グラフトなどの管状グラフトの場合の直径といった、グラフトの1つまたは複数の軸を永続的に拡大させる。第2の実施形態においては、グラフトは、弾性材料または超弾性材料から製造することができる。弾性材料および/または超弾性材料は、グラフトの1つまたは複数の軸における回復可能な変化を可能にするように、加えられる力の下で微小孔が幾何学的に変形することを可能にする。
【0017】
本発明の第1および第2の実施形態の各々においては、グラフトは、フィルムの厚さ、材料特性、および複数の微小孔の幾何学的形状を制御することによって、布状の性質を持つように製造することができる。さらに、血管グラフトの管腔内送達のように低侵襲性送達が必要な場合には、第1および第2の実施形態は、それぞれバルーン拡張および自己拡張、または両方の組み合わせを用いて、送達を可能にする。低侵襲性送達はまた、血管形成バルーンがひだを付けられて縦溝を付けるかまたは折り畳まれるように、送達のためにグラフトを折り畳むことによって、達成することもできる。グラフトは、バルーンを用いることなどによる補助か、あるいは、グラフト材料の塑性特性、弾性特性、若しくは超弾性特性またはそれらの組み合わせのいずれかにより、生体内で装置を広げることによって送達することができる。送達後に、半径方向に拡張させる正圧などの弾性変形または塑性変形によって、グラフト部材の付加的な寸法拡大を可能にするように、複数の微小孔をパターン形成することができる。
【0018】
本発明の金属グラフトまたは擬似金属グラフトは、例えば外科手術によってアクセスすることが必要な、グラフトを既存の解剖学的構造に縫合するバイパス移植術用途などについて、外科的に移植されるグラフトとして利用することができる。本発明のグラフトは、十分に縫合可能であり、発泡ポリテトラフルオロエチレンまたは発泡ポリエステルから製造されるグラフトなどの従来の合成ポリマー・グラフトと同程度の縫合保持強度を呈する。
【0019】
幾つかの用途については、複数の微小孔の各々の大きさは、流体が各々の開口を通って流れることはできないが、細胞が各々の開口を通って移動することができるようなものであることが好ましい。このようにして、例えば、血液が変形状態または非変形状態の複数の微小孔を通って流れることはできないが、種々の細胞またはタンパク質は、複数の微小孔を自由に通過して生体内におけるグラフトの癒合を促進することができる。他の用途については、複数の変形した微小孔または変形していない微小孔を通る適度な量の流体流れを許容することができる。例えば、経壁的内皮化を可能にすると同時に、血栓などの生物学的残渣物がグラフトの壁厚を通過しないようにし、有害物質が循環することを効果的に排除するという二重の機能を果たす微小孔を持つ管腔内伏在静脈グラフトを製造することができる。この例においては、変形状態または非変形状態の複数の微小孔の各々は、数百ミクロンより大きいものとすることができる。
【0020】
当業者であれば、移植可能グラフトの孔の大きさと、全体の拡張比または変形率との間に、直接的な関係が存在することが分かるであろう。したがって、一般に、グラフトの拡張または変形の効果的で達成可能な程度を高めるために、孔の大きさを大きくしなければならないことが理解される。
【0021】
本発明のグラフトの実施形態の別の態様によれば、大きな変形および小さな孔径の両方が必要な用途については、管状構造の直径方向に同心のグラフトのような2つまたはそれ以上のグラフト部材を利用することが考えられる。2つまたはそれ以上のグラフト部材は、同心円状に係合した第1および第2のグラフト部材の壁を通る蛇行した細胞移動経路と、より小さい有効孔径とを形成するように、パターン形成された複数の微小孔を互いに対して位相をずらして配置した状態で、該部材を貫通する複数の微小孔のパターンを有する。生体内において第1および第2のグラフト部材を通る細胞移動およびその癒合を容易にするために、該第1および第2のグラフト部材における複数の微小孔の間で連通する付加的な細胞移動経路を設けることが好ましい場合がある。これらの付加的な細胞移動経路は、必要に応じて、1)第2のグラフトの管腔側表面(luminal surfwase)若しくは第1のグラフトの反管腔側表面(abluminal surfwase)またはその両方に形成される複数の突起物であって、スペーサとして機能し、第1および第2のグラフト部材における複数の微小孔の間で細胞移動および細胞連通を可能にする該第1および第2のグラフト部材の間の環状開口部を維持するように働く、複数の突起部として、2)第1および第2のグラフト部材の長軸に対して不規則、半径方向、螺旋状、または長軸方向とすることができる複数の微小溝であって、溝に沿った細胞移動および伝搬を可能にするのに十分な大きさであり、第1および第2のグラフト部材における複数の微小孔の間の細胞移動導管として機能する、複数の微小溝として、または、3)変形時にグラフト材料の面外運動を与えるように微小孔を設計し、それにより、本来はグラフトの対向面を定める平面間に明確な空間を維持する場所として、与えることができる。
【0022】
グラフト部材は、単層フィルムとして形成するか、または相互に重なり合って形成される複数のフィルム層から形成することができる。生体適合性の金属および/または擬似金属の各々の層を形成するのに用いられる特定の材料は、その生体適合性、耐腐食疲労性、および機械的特性、すなわち引張強度、降伏強度について選択される。金属には、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびに、ジルコニウム−チタン−タンタル合金、ニチノール、およびステンレス鋼などといったこれらの合金が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、グラフトを形成するのに用いられる材料の各々の層は、タンタル、金、または放射性同位元素を添加することによって放射線不透過性または放射活性などの材料特性を改善する目的で、別の材料を添加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上述のことを背景として、ここで、本発明の好ましい実施形態および添付図面を参照しながら本発明の説明に移る。上述のように、本発明の微孔質の移植可能金属装置は、例えば、平面シート、チューブ、またはトロイドを含む多数の幾何学的構造をとることができる。しかしながら、参照を容易にするために、添付図面および以下の本発明の説明は、管状の移植可能グラフト部材を対象とする。しかしながら、当業者であれば、これは、単なる例示的な幾何学的構造であり、本発明の範囲を管状部材に限定するかまたはグラフト部材への適用に限定することを意図するものではないことが分かるであろう。
【0024】
図1を特に参照すると、本発明の移植可能医療用装置がグラフト10として示されている。グラフト10は、一般に、第1の表面14および第2の表面16、ならびに、該第1の表面14と該第2の表面16と間の厚さ18を有する本体部材12からなる。複数の微小孔20が形成され、これらは、隣接する微小孔20の間に孔間領域22を有する本体部材12の厚さ18を貫通する。複数の微小孔20の各々は、幾何学的変化を受けやすい幾何学的構造を有することが好ましく、その結果、各々の微小孔20の開口表面積は、外部から加えられた負荷を受けて変化することができる。非変形状態の複数の微小孔20の各々は、約2mm2未満の開口表面積を有し、非変形状態のグラフトの全開口表面積は0.001%から99%までの間であることが好ましい。複数の微小孔の開口表面積およびグラフトの開口表面積は、複数の微小孔20の変形によって大きく変化させることができる。変形状態および非変形状態の微小孔20の大きさと、変形状態および非変形状態のグラフト12の全開口面積との両方は、グラフト用途に基づく以下の非排他的要因、すなわち、1)グラフト10の所望の応従性、2)グラフト10の所望の強度、3)グラフト10の所望の剛性、4)変形による微小孔20の幾何学的拡大の所望の程度、ならびに、5)血管グラフトのような幾つかの場合においては所望の送達時のプロファイルおよび送達後のプロファイル、を考慮して選択することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の微小孔20は、本体部材12の変形領域を定めるようにパターン形成される。厚さ18は、0.1μmから75μmまでの間、好ましくは1μmから50μmまでの間、最も好ましくは約2μmから25μmまでの間である。これらの厚さの範囲内で製造されたときは、グラフト10は、従来の移植可能非金属グラフトの壁厚および従来の金属管腔内ステントの壁厚より薄い厚さ18を有する。
【0026】
複数の微小孔は、本体部材12の長軸および円周方向軸の両方において微小孔20の規則的なアレイを形成する規則的アレイにパターン形成される。参照目的で、微小孔20のパターンは、これ以降、管状部材においては該管状部材の長軸または円周方向軸に対応する平面のX−Y軸を基準にして説明される。当業者であれば、管状部材に適用したときのX軸とY軸との関係は、「X軸」という用語が管状部材の長軸または円周方向のいずれかに対応し、「Y軸」という用語が管状部材の対応する円周方向または長軸を指すように用いられる場合があることが分かるであろう。
【0027】
当業者であれば、個々の異なる幾何学的パターンは、特定の装置の使用目的、機能、または機械的要件と関連させることができることを認識するであろう。したがって、移植可能部材12の特定の使用目的は、複数の微小孔20について特定の幾何学的パターンを選択する際の考慮事項である。例えば、移植可能部材12が独立型の移植可能管腔内血管グラフトとしての使用目的を有する場合は、円周方向拡張率および長軸方向可撓性が大きいことが望ましいであろう。したがって、これらの特性をもたらす複数の微小孔20の特定の幾何学的形状が選択されることになる。複数の微小孔20は、移植可能部材10の材料特性にも影響を与える。例えば、各々の微小孔20が応力・歪み解放能力を呈するように、または微小孔20の幾何学的変形が塑性変形、弾性変形、もしくは超弾性変形であるかどうかを該微小孔20が制御できるように、各々の微小孔20の幾何学的形状を変えることができる。このように、個々の微小孔20の幾何学的形状と、移植可能部材10のX−Y軸に対する微小孔20の向きと、微小孔20のパターンとはいずれも、移植可能部材10の機械的特性および材料特性を直接付与するか、それらに影響を与えるか、またはそれらを制御するように、選択することができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態に係る複数の微小孔20についての異なる幾何学的パターンを、図2A〜図2Cに示す。図2Aは、複数の微小孔の各々についての第1の幾何学的形状30を示す。この第1の幾何学的形状によれば、複数の微小孔30の各々は、概ね細長いスロット32a、32bからなる。概ね細長いスロット32a、32bの各々は、各々の細長いスロット32a、32bの対向端に末端フィレット(terminal fillets)34を含むことが好ましい。末端フィレット34は、隣接するスロット32間の孔間領域22を介する歪み分布に役立つ歪み解放機能を果たす。図2Aはさらに、複数の微小孔32a、32bについての第1の幾何学的パターンを示し、複数の微小孔32aの第1列には、共通軸に沿って端部同士を接するように配列された隣接する微小孔32aが設けられ、複数の微小孔32bの第2列には、相互に共通な軸および微小孔32aと共通な軸に沿って端部同士を接するように配列された隣接する微小孔32bが設けられる。微小孔32aの第1列および微小孔32bの第2列は、微小孔32aの端部が微小孔32bの中間部分で横方向に隣接し、微小孔32bの端部が微小孔32aの中間部分で横方向に隣接した状態で、相互にずらして、すなわち互い違いに配置される。
【0029】
図2Aに示される複数の微小孔32a、32bの第1の幾何学的形状30は、スロットの長軸に垂直な軸に沿った大きな変形を可能にする。したがって、スロット32a、32bの長軸が移植可能部材10の長軸と同軸である場合は、該スロット32a、32bの変形は、移植可能部材10の円周方向の応従および/または拡張を可能にするであろう。あるいは、スロット32a、32bの長軸が移植可能部材10の円周方向軸に平行な場合は、該スロット32a、32bは、移植可能部材10の長軸方向の応従、可撓、および拡張を可能にする。
【0030】
図2Bは、複数の微小孔20についての第2の幾何学的形状40を示し、この場合も同様に第1の幾何学的形状30のような概ね細長いスロット状の構造を有する複数の微小孔42a、44bからなる。この第2の幾何学的形状40によれば、個々の微小孔42aおよび44bは、互いに対して直角に配向される。具体的には、第1の微小孔42aは、移植可能部材10のX軸に平行に配向され、一方第1の微小孔44bは、X軸に沿った第1の微小孔44aに隣接して配置されるが、該第1の微小孔44bは、移植可能部材10のX軸に垂直で且つ移植可能部材10のY軸に平行に、配向される。第1の幾何学的形状と同様に、複数の微小孔42a、44bの各々は、歪み解放機能を果たし、隣接する微小孔の間の孔間領域22に歪みを伝達するために、各々の微小孔のスロットの対向端に末端フィレット44を含むことができる。この第2の幾何学的形状40は、移植可能装置12のX軸およびY軸の両方において、応従性および拡張性の程度の両方に関するバランスを与える。
【0031】
図2Aおよび2Bの各々においては、微小孔32a、32b、42a、44bの各々は、概ね長軸方向のスロット構造を有する。概ね長軸方向のスロットの各々は、概ね直線状のスロットまたは曲線状のスロットとして構成することができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、概ね直線状のスロットを利用することが好ましい。
【0032】
図2Cは、複数の微小孔についての第3の好ましい幾何学的形状50を示す。この第3の幾何学的形状50によれば、複数の微小孔52の各々は、隣接する微小孔52の対の間に孔間グラフト領域56が存在する概ね台形またはダイヤモンド状の形状を有する。第3の幾何学的形状50は、第1の幾何学的形状30を複数の微小孔32a、32bの長軸に垂直な軸に沿って幾何学的に変形させることによって達成できることが分かるであろう。同様に、第1の幾何学的形状30は、第3の幾何学的形状50の微小孔52を移植可能部材10のX軸またはY軸のいずれかに沿って変形させることによって達成することができる。
【0033】
図3Aおよび図3Bは、図2Aに示した第1の幾何学的形状に係る概ね長軸方向のスロット32a、32bとして形成された複数の微小孔を有する本発明の移植可能装置12を示す顕微鏡写真である。複数の微小孔の各々は、移植可能装置12の長軸に平行な向きに形成した。移植可能装置12は、5μmの壁厚を有する内径6mmのNiTi形状記憶管状グラフト部材からなる。図3Aは、非変形状態の複数の微小孔32a、32bを示し、一方図3Bは、移植可能グラフト12の長軸に垂直に加えられた歪みの影響によって幾何学的に変形した状態の複数の微小孔32a、32bを示す。複数の微小孔32a、32bの幾何学的変形が本発明のグラフトの円周方向の拡張を可能にしたことが明確に理解できる。図3Aおよび図3Bに示される変形状態における複数の微小孔の各々の寸法は、長さが430μm、幅が50μmであり、末端フィレットが50μmの直径を有するものであった。
【0034】
図2Dおよび図4に示される複数の微小孔20の第4の幾何学的形状によれば、複数の微小孔20の各々は、概ね3脚構造又はY字形構造を有する。複数の微小孔20の各々のY字形構造は、放射状に突出する同一平面上の3つの脚31a、31b、31cを有し、その各々は、約120度の角度だけ互いにずれ、それによって概ねY字形を形成する。放射状に突出する同一平面上の3つの脚31a、31b、31cは、互いに対して対称または非対称とすることができる。しかしながら、グラフト本体部材12全体にわたる均一な幾何学的変形を達成するために、複数の微小孔20の各々が幾何学的対称性を有することが好ましい。当業者であれば、ここで説明した特定の2つのパターンの他に、本特許明細書に記載した本発明のグラフトの概念から大きく逸脱することなく、任意の数の異なるパターンを用いることができることが分かるであろう。
【0035】
当業者であれば、微小孔20の各々は、十分な力を加えることによって変形を受けることができることが分かるであろう。管状の幾何学的形状においては、グラフト12は、円周方向および長軸方向の両方に変形することができる。図3Aに示されるように、複数の細長いスロットの各々は、概ね菱形の形状をとる開いた微小孔に変形することができる。同様に、図4に示されるY字形の微小孔20は、概ね円形または楕円形の開いた微小孔21に変形することができる。隣接する微小孔20の間の変形領域22は、複数の微小孔20の各々の開口に応じて変形することによって、該複数の微小孔20の各々の変形を容易にする。
【0036】
図5に示されるように、本発明のグラフト12は、管腔内送達のために、より直径の小さいプロファイルをとるように折り畳むことができる。折り畳みを容易にするために、複数の微小孔20のパターンを、グラフト12の相対的に弱い領域を構成する複数の折り畳み領域23を作成するように作り、その折り畳み領域23に沿って該グラフト12を折り畳むことを可能にする。
【0037】
図6は、管腔内ステント5の円周方向に取り付けられた本発明の微孔質グラフト12の写真図である。微孔質グラフト12は、長軸方向の高可撓性と、半径方向および円周方向の両方の応従性といった機械的特性を呈することが容易に分かるであろう。
【0038】
図7は、マンドレルに取り付けられ、その長軸に沿って約180度曲げられた本発明の微孔質グラフト12の写真図である。長軸方向に曲げると、本発明のグラフト12は、布状の性質の特徴である円周方向の複数の折り目7を持つ高度の折り畳みを受ける。
【0039】
図8Aおよび図8Bは、本発明の微孔質グラフト12における円周方向の高い応従性を示す写真図である。5μmの壁厚を有する6mmの微孔質グラフトを、編み組み擬似ステント上に同軸に取り付けた。擬似ステントを半径方向に拡張させ、円周方向の拡張力を本発明のグラフト12に作用させる軸力を、編み組み擬似ステントの長軸に沿って加えた。図8Aおよび図8Bに明確に示されるように、本発明のグラフト12における複数の微小孔が幾何学的に変形し、それにより該グラフト12の円周方向の拡張を可能にする。
【0040】
このように、本発明の一実施形態は、生体適合性があり、折り畳んで広げるかまたは塑性変形力、弾性変形力、もしくは超弾性変形力を加えるかのいずれかによって幾何学的に可変であり、適切な小さい送達プロファイルによって管腔内送達が可能な、新しい金属製および/または擬似金属製の移植可能グラフトを提供する。本発明のグラフトを製造するのに適した金属材料は、その生体適合性と、機械的特性すなわち引張強度、降伏強度と、製造の容易さとについて選択される。本発明のグラフト材料の応従性を利用して、適切な設計のマンドレルまたは固定具上で本発明のグラフトを変形させることによって、グラフトを複雑な形状に形成することができる。塑性変形および形状設定熱処理を利用して、本発明の移植可能部材10が所望の立体構造を保持することを確実にすることができる。
【0041】
本発明のグラフトを作る第1の好ましい方法によれば、グラフトは、真空堆積した金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムから製造される。図9を特に参照すると、本発明の製造方法100が示される。ステップ102において、従来から製造される生体適合性金属材料または擬似金属材料の前駆体素材を利用することができる。代替的に、ステップ104において、真空堆積させた金属フィルムまたは擬似金属フィルムの前駆体素材を利用することができる。次いで、ステップ108において、ステップ102またはステップ104のいずれかによって得られた前駆体材料素材を、複数の微小孔を定める領域のみを露出させたままにした状態でマスクすることが好ましい。次いで、ステップ108による露出領域は、ステップ110において、前駆体素材の材料に基づいて選択されるエッチャントを用いるウェットまたはドライ化学エッチング処理などのエッチングか、または、ステップ112において、レーザ・アブレーションまたはEDMなどの機械加工のいずれかによって、除去される。代替的には、真空堆積ステップ104を利用するときは、ステップ106において、複数の微小孔に対応するパターン・マスクをターゲットとソースとの間に置き、該パターン・マスクを通して金属または擬似金属を堆積させて、パターン形成された微小孔を形成することができる。さらに、真空堆積ステップ104を利用するときは、複数の微小孔を形成する前かまたはそれと同時に、複数のフィルム層を堆積させて、該フィルムの多層フィルム構造を形成することができる。
【0042】
したがって、本発明は、生体適応性があり、応従性を有し、折り畳んで広げるかまたは塑性変形力、弾性変形力、もしくは超弾性変形力を加えるかのいずれかによって幾何学的に可変であり、幾つかの場合においては、適切な小さい送達プロファイル及び送達後の適切な低プロファイルによって管腔内送達が可能な、新しい金属製および/または擬似金属製の移植可能グラフトを提供する。本発明のグラフトを製造するのに適した金属材料は、その生体適合性と、機械的特性すなわち引張強度、降伏強度と、真空堆積が利用される場合にはその堆積の容易さとについて選択され、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびに、ジルコニウム−チタン−タンタル合金、ニチオール、およびステンレス鋼などのそれらの合金を含むが、これらに限定されるものではない。本発明に関して有用である可能性がある擬似金属材料の例には、例えば、複合材料およびセラミクスが含まれる。
【0043】
本発明はまた、グラフト形成金属または擬似金属の真空堆積と、堆積した材料の一部を、エッチング、EDM、アブレーション、もしくは他の同様の方法などにより除去するか、または堆積処理の間に微小孔に対応するパターン・マスクをターゲットとソースとの間に置くかのいずれかによる微小孔の形成とによって、本発明の拡張可能な金属グラフトを作る方法を提供する。代替的には、鍛造ハイポチューブまたは鍛造シートといった、従来の非真空堆積法によって製造される既存の金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムを取得し、エッチング、EDM、アブレーション、または他の同様の方法などによってその既存の金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムの一部を除去することにより、そのフィルムに微小孔を形成することができる。多層フィルム構造体を利用して本発明のグラフトを形成する利点は、異なる機能を別個の層に付与できることである。例えば、タンタルなどの放射線不透過性材料が、構造体の1つの層を形成することができると同時に、他の層は、所望の機械的特性および構造的特性をグラフトに与えるように選択される。
【0044】
真空堆積させたニチノール・チューブから製造される、本発明の微孔質金属製の移植可能装置を製造する好ましい実施形態によれば、円筒形の脱酸素銅基材を準備する。基材は、その上への金属堆積に対応させるために、実質的に均一な表面形態を与えるように機械研磨および/または電解研磨する。カソードが外側にあり、基材が該カソードの長軸に沿って配置された、円筒形中空カソード・マグネトロン・スパッタ堆積装置を利用した。約50−50%のニッケル対チタン原子比率を有し、ニッケル若しくはチタンのワイヤをターゲットにスポット溶接することによって調節することができるニッケル−チタン合金か、ニッケル・シリンダの内表面にスポット溶接された複数のチタン・ストリップを有するニッケル・シリンダか、または、チタン・シリンダの内表面にスポット溶接された複数のニッケル・ストリップを有するチタン・シリンダのいずれかからなる円筒形ターゲットが提供される。スパッタ堆積技術においては、ターゲットとカソード内の冷却ジャケットとの間に熱的接触を維持することによって、堆積チャンバ内のターゲットを冷却することが知られている。本発明によれば、ターゲットをカソード内の冷却ジャケットから断熱すると同時に依然として該冷却ジャケットに電気的に接触させることによって、熱冷却を低減することが有用であることが分った。ターゲットを冷却ジャケットから断熱することによって、該ターゲットが反応チャンバ内で高温になるようにすることができる。円筒形のターゲットをカソードの冷却ジャケットから断熱する2つの方法を利用した。1つ目は、直径0.0381mmの複数のワイヤをターゲットの外周にスポット溶接し、該ターゲットとカソードの冷却ジャケットとの間に均等な間隔を与えるものであった。2つ目は、管状のセラミック製絶縁スリーブを、ターゲットの外周とカソードの冷却ジャケットとの間に置くものであった。さらに、Ni−Tiスパッタ收率はターゲットの温度によって決まることになるので、ターゲットが均一に高温になることを可能にする方法が好ましい。
【0045】
圧力が約2〜5×10−7Torr以下になるように堆積チャンバを排気し、真空下で基材の前洗浄を実施する。堆積中は、基材温度は、摂氏300度から700度までの範囲内に維持されることが好ましい。基材には、0から−1000ボルトまで、好ましくは−50ボルトから−150ボルトまでの間の負のバイアス電圧を印加することが好ましく、これは、エネルギー種を該基材の表面に到達させるのに十分な電圧である。堆積中は、ガス圧は、0.1mTorrから40mTorrまでの間に維持されるが、1mTorrから20mTorrまでの間に維持されることが好ましい。スパッタリングは、アルゴン雰囲気の存在下で行われることが好ましい。アルゴン・ガスは高純度のものでなければならず、特殊なポンプを利用して酸素分圧を減少させることができる。堆積時間は、堆積した管状フィルムの所望の厚さに応じて変えることになる。堆積後は、化学エッチングなどのエッチング、または、エキシマ・レーザもしくは放電加工(EDM)などによるアブレーションなどによって、堆積したフィルムの領域を除去することにより、複数の微小孔がチューブに形成される。複数の微小孔が形成された後に、銅基材を溶解除去するのに十分な時間、該基材と形成された微孔質フィルムとを硝酸浴に曝すことによって、該フィルムが該基材から除去される。
【実施例】
【0046】
長軸方向に互い違いに配向された平行な直線状スロットからなる微小孔パターンを有し、各々のスロットが、長さ430μm、幅25μmであり、各直線状スロットの各々の端部に直径50μmのフィレットを有する、厚さ5μmのNiTiグラフトを、6mmのNiTiステント上に取り付け、ブタの左頚動脈に管腔内送達した。28日後、ブタを安楽死させ、左頚動脈からグラフトを外植(explanted)した。標準的なヘマトキシリンおよびエオシン染色法を用いてサンプルを準備し、顕微鏡用スライドを作成した。図10Aに示されるように、外植したサンプルの組織構造は、グラフト12周囲の完全な内皮化、すなわち、内部弾性層に損傷のない極僅かな新生内膜の増殖を示した。図10Bは、小さな毛細血管の経壁形成を伴う、動脈の表層と深層との間のクロストークを示すサンプルである。
【0047】
本発明のグラフトの代替的な実施形態は、図11から図13まで、および図16から図17までに示され、代替的な実施形態を作るための形成基材は、図14から図15までに示される。図11から図13までを特に参照すると、長軸方向の中央管腔61を持つ概ね管状の構造を有するグラフト60が示される。グラフト60は、一般に、上述の本発明のグラフト材料を参照して上で説明したように、真空堆積した少なくとも1つの金属材料または擬似金属材料から全体が形成されることが好ましいグラフト本体部材62からなる。グラフト本体部材62は、該グラフト本体部材の管腔側表面および反管腔側表面を形成する第1および第2の壁面と、該グラフト本体部材62の壁面に山65および谷67の起伏パターンを形成する複数のコルゲーションまたはプリーツ64とを有する。
【0048】
図13に示されるように、グラフト60は、グラフト本体部材62の壁面を貫通し、該グラフト60の反管腔側壁面と管腔側壁面との間を連通する複数の微小孔66を有することが好ましい。本発明のグラフトの上述の実施形態のように、本発明のグラフト60における複数の微小孔66は、幾何学的応従性をグラフトに付与し、幾何学的拡張性をグラフトに付与し、および/または、通常の生理的状況下でグラフトの壁を通る流体流れを防止しながら経壁的内皮化を容易にするようにグラフトを通る体液または生体物質の通過を制限するかまたは許容するために、各種の幾何学的形状および寸法で形成することができる。複数の微小孔は、血管グラフトの場合に長軸方向の可撓性のために必要であるような、柔軟性および/または弾性応従性、塑性応従性、もしくは超弾性応従性をグラフトに付与することによって、布状の性質をグラフトに付与することもできる。
【0049】
複数の微小孔66は、グラフト本体部材62の長軸方向の長さ全体に沿って、該グラフト本体部材62の全円周方向軸の周囲に存在するようにすることができる。代替的に、複数の微小孔66は、グラフト本体部材62の長軸方向の長さ全体か、またはその円周方向軸のいずれかに沿った選択領域内のみに存在するようにすることができる。複数の微小孔62の位置は、グラフト使用の適応、グラフトの解剖学的配置、および、グラフトを外科的に移植して縫合することが必要かどうかまたは縫合することなくグラフトを管腔内に用いるかどうかを含む種々の基準に基づいて、選択することができる。
【0050】
図16および図17に移ると、本発明のグラフト70の第2の代替的な実施形態が示される。図11から図13までに示されるグラフト60と同様に、グラフト70は、管腔側表面および反管腔側表面を形成する第1および第2の壁面と、その壁面に山75および谷77の起伏パターンを形成する複数の円周方向のコルゲーションまたはプリーツ74とを有する概ね管状のグラフト本体部材72からなる。複数のコルゲーションまたはプリーツ74は、グラフト70の近位端および遠位端を形成し、コルゲーションまたはプリーツ74のない対向する端部領域71、73を持つ、該グラフト70の中間領域76に沿って配置されることが好ましい。代替的に、グラフト70の近位端および遠位端は、円周方向のコルゲーションまたはプリーツ74を持つ長軸方向領域と、円周方向のコルゲーションまたはプリーツ74を持たない他の長軸方向領域とを有し、該グラフト70の対向する端部71、73にコルゲート領域および非コルゲート領域の交互配列を有するようにすることができる。
【0051】
本発明のグラフト70の一態様においては、グラフト本体部材72の対向する端部領域71、73は、中間領域76のz軸厚さより厚いかまたは薄いかのいずれかのz軸厚さを有することができる。さらに、グラフト70を生体内の解剖学的構造体に固定するために、複数の縫合孔78を設け、好ましくはグラフト70の対向する端部71、73を貫通させて、縫合糸79を該縫合孔78を通すことができるようにすることが好ましい。
【0052】
上述の実施形態の各々のように、グラフト60および70は、全体が生体適合性の金属材料および/または擬似金属材料から製造されることが好ましい。本発明のグラフト60、70の全体を生体適合性の金属材料および/または擬似金属材料で作ることによって、該グラフト60、70は、ポリエチレンまたはDACRONグラフトの場合のような前凝固の必要のないより優れた内皮化能力を呈し、多くの金属ステントと同様に再内皮化に極めて適した表面を提供する。
【0053】
当業者であれば、円周方向のコルゲーションまたはプリーツ64、74をグラフト60、70に与えることによって、該グラフト60、70に高い長軸方向可撓性が付与され、該グラフトをその長軸に関して180度を越えて曲げることが可能になることが分かるであろう。全体が金属または擬似金属のグラフトにおけるこの高い長軸方向可撓性によって、管腔内グラフトまたは外科的移植グラフトのいずれかとして用いられるときには、グラフトが大きく湾曲した送達経路を通り、移植後には、患者の歩行運動中の通常の屈曲および伸展に適応するような高応従性および可撓性であることが可能になる。
【0054】
上述のように、本発明のグラフト60、70を製造するための好ましい方法は、犠牲基材またはマンドレル上への金属材料または擬似金属材料の物理的蒸着によるものである。本発明のグラフト60、70を製造するのに適した犠牲基材またはマンドレルが、図14および図15に示される。真空堆積のために、概ね円筒形の基材69が準備される。概ね円筒形の基材は、真空堆積中に上に堆積した金属グラフトに対して異なる劣化を受けやすい金属材料66の固体素材または管状素材のいずれかとすることができる。本発明のグラフト60、70を形成するために、複数の山66および谷68を定める複数の円周方向の起伏を持つ概ね円筒形の基材69が形成される。円筒形基材69の複数の山66および谷68は、グラフト60、70を形成するコンフォーマルな堆積層に形成される山および谷の位置に対応するように配置される。上述の残りのプロセス・パラメータに従って、グラフト60、70に複数の微小孔を形成することができる。
【0055】
本発明を、その好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者であれば、材料、寸法、幾何学的形状、および製造方法の変形は、当該技術分野において知られているかまたは知られるようになることがあるが、それでも依然として特許請求の範囲のみによって制限される本発明の範囲内にあることが分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のグラフトの斜視図である。
【図2A】本発明において有用な第1のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図2B】本発明において有用な第2のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図2C】本発明において有用な第3のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図2D】本発明において有用な第4のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図3A】幾何学的に非変形状態の図2Aに示される第1のパターンの微小孔を有する本発明のグラフトを示す顕微鏡写真である。
【図3B】幾何学的に変形状態の微小孔を示す図3Aに示される本発明のグラフトの顕微鏡写真である。
【図4】図2Dにおける第4のパターンの微小孔の幾何学的変形を示す図である。
【図5】管腔内送達に適した折り畳み状態をとる本発明のグラフトを示す断面図である。
【図6】ステント・カバーとして用いられる本発明のグラフトの写真図である。
【図7】長軸に沿って約180度変形した、グラフトの布状性質を示す本発明のグラフトの写真図である。
【図8A】編み組み拡張部材を円周方向に覆い、該編み組み拡張部材の長軸に沿って圧縮力を作用させる拡張ジグに取り付けて、該編み組み拡張部材を半径方向に拡張した、本発明のグラフトの写真図である。
【図8B】半径方向の拡張力を受けて半径応従性を半径方向に呈する本発明のグラフトの写真図である。
【図9】本発明のグラフトを作る代替的な実施形態を示すフロー図である。
【図10A】移植された本発明のグラフトを有する28日目の外植されたブタの頚動脈からの、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された組織構造のスライドである。
【図10B】移植された本発明のグラフトを有する28日目の外植されたブタの頚動脈からの、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された組織構造のスライドである。
【図11】本発明のグラフトの代替的な実施形態の斜視図である。
【図12】図11の線12−12に沿って切断した断面図である。
【図13】図12の領域13の拡大図である。
【図14】本発明のグラフトの代替的な実施形態を作るための成形マンドレルの斜視図である。
【図15】図14の線15−15に沿って切断した断面図である。
【図16】本発明のグラフトの第2の代替的な実施形態の斜視図である。
【図17】図16の線17−17に沿って切断した断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、移植可能金属製医療装置に関する。より具体的には、本発明は、例えば、外科用グラフトおよび管腔内血管グラフト、ステントグラフト、カバードステント、皮膚グラフト、シャント、ボーングラフト、外科用パッチ、非血管用導管、弁リーフレット、フィルタ、閉鎖膜、括約筋、人工腱、および靭帯を含む移植可能医療装置に関する。より具体的には、本発明は、生体適合性材料の金属フィルムまたは擬似金属フィルムから製造され、該フィルム内に複数のプリーツまたはコルゲーションを有する移植可能医療用グラフトに関する。グラフトが概ね管状のものである場合は、プリーツまたはコルゲーションは、グラフトの長軸に沿って円周方向および軸線方向に配置されることが好ましい。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の医療用グラフトは、フィルムを貫通する複数の微小孔(microperforations)を有するものとすることができる。複数の微小孔は、例えば、フィルムの幾何学的変形を可能にし、布状の性質をフィルムに付与し、可撓性をフィルムに付与し、組織の内部への成長を可能にし、癒合を促進することを含む多くの目的を果たすことができる。この「布状の」という用語は、天然または合成の織物に見られるような、柔軟性および/または応従性を有する性質を意味することを意図している。本発明の医療用グラフトは、グラフトの表面領域の少なくとも一部に沿って有孔領域および無孔領域の両方を有するものとすることができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の移植可能グラフトは、その全体が、生体適合性の金属または擬似金属から作られた自立性の凝集フィルムから製造される。従来、移植可能医療装置の分野においては、完全に自立性の凝集金属材料または擬似金属材料から製造される、ステントグラフトまたはカバードステントなどのグラフトを、少なくともその要素の1つとして含む移植可能医療装置を製造することは知られていない。ここで用いられるときには、「グラフト」という用語は、2つの表面によって境界が定められる材料を実質的に含み、その表面間の距離がグラフトの厚さであり、生体内で拡大した直径を維持するステントまたは他の構造強化材などの補助的な支持構造体を必要とせずに生体内での使用が可能となるように自立する一体的な寸法強度を呈する、いずれかのタイプの装置または装置の一部を示すことを意図している。本発明のグラフトは、グラフトが無孔領域と微小孔領域とを持つようにグラフトの厚さの領域を貫通する微小孔を有するか、または、グラフトの壁面全体にわたって微小孔を有するかもしくは完全に無孔とすることができる。本発明のグラフトは、平面シート、トロイド、および特定の用途が保証される他の形状で形成することができる。しかしながら、単なる例示の目的で、本出願は管状グラフトを対象とする。本出願の目的のために、「擬似金属」および「擬似金属の」という用語は、生体適合性金属と実質的に同じ生体反応および材料特性を呈する生体適合性材料を意味するように意図されている。擬似金属材料の例には、例えば、複合材およびセラミックスが含まれる。複合材は、セラミックス、金属、炭素またはポリマーから作られる様々な繊維のいずれかで補強されたマトリクス材料からなる。
【0003】
体内に移植されるときは、金属は、一般に、市販のポリマー・グラフトを製造するのに用いられるポリマーによって示されるものより優れた生体適合性を有すると考えられる。プロテーゼ材料を移植すると、細胞表面のインテグリン受容体がプロテーゼ表面と相互作用することが見出された。インテグリン受容体は、生体内の特定のリガンドに対して特異的である。特定のタンパク質がプロテーゼ表面に吸着され、リガンドが露出された場合には、インテグリン−リガンドのドッキングによって、プロテーゼ表面への細胞結合が生じる場合がある。タンパク質は、ポリマーに結合するよりもより永続的に金属に結合し、これによってより安定した接着表面がもたらされることも観察された。大部分の医療用金属および合金の表面に結合されるタンパク質のコンフォメーションは、より多くのリガンドを露出させ、表面インテグリン・クラスターを有する内皮細胞を白血球に比べて優先的に金属または合金の表面に引き付けるものと思われる。最終的に、金属および金属合金は、ポリマーと比べて金属劣化に対してより大きな耐性を示し、これによって、より長期にわたる構造的な完全性と安定的な界面状態とがもたらされる。
【0004】
金属は、その比較的大きな接着表面形状のため、短期の血小板活性および/または血栓形成の影響も受けやすい。これらの有害な特性は、今日常用される薬理学的に活性な抗血栓薬の投与によって相殺することができる。表面の血栓形成は、通常は、最初の暴露から1〜3週間で消滅する。冠動脈ステントの場合は、この期間中に、抗血栓の有効範囲が定期的に提供される。筋骨格および歯などの非血管用途においては、同様の分子的考察により、金属は、ポリマーより大きな組織適合性も有する。すべてのポリマーが金属より劣るという事実を示す最適な論文は、非特許文献1である。
【0005】
通常、内皮細胞(EC)は、合流が達成されるまで、移動して増殖し、露出領域を覆う。増殖と比べて量的により重要な移動は、通常の血流下において、概ね、25μm/hrの速さ、すなわち名目上10μmであるECの直径の2.5倍の速さで進行する。ECは、細胞膜インテグリン受容体のクラスター、具体的には焦点接触点(focal contact points)に付着した細胞内フィラメントの複雑なシステムにより調整される、細胞膜の回転運動によって移動する。焦点接触部位内のインテグリンは、複雑なシグナル伝達機構に従って発現し、最終的には、基質接着分子内の特定のアミノ酸配列に結合する。ECは、インテグリンのクラスターによって表されるその細胞表面の概ね16〜22%を有する。非特許文献2および非特許文献3を参照されたい。これは、30分以内に50%より大きい再造形を示す動的プロセスである。焦点接着接触点(focal adhesion contacts)は、サイズおよび分布が様々であるが、それらの80%は6μm2より小さく、その大部分は約1μm2であり、流れの方向に伸び、細胞の前縁(leading edges)に集中する傾向がある。付着部位に対する特異的な付着受容体応答を決定する認識およびシグナル伝達のプロセスは、完全には理解されていないが、付着部位の有効性が、付着および移動に好ましい影響を与える可能性がある。ポリマーなどの医療用グラフトとして一般的に用いられる材料は、ECで覆われることはなく、したがって、それらが動脈内に配置された後で癒合しないことが知られている。したがって、本発明の目的は、ポリマー・グラフトを、ECによって覆われる可能性があり、かつ、完全に癒合することができる金属グラフトに置き換えることである。さらに、真空堆積技術を用いて本発明のグラフトを作る材料を形成することによって、血流と接触する材料の不均質性を制御することができる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,897,911号明細書
【特許文献2】米国特許第5,725,573号明細書
【特許文献3】米国特許第5,955,588号明細書
【特許文献4】米国特許第5,649,951号明細書
【特許文献5】米国特許第5,387,247号明細書
【特許文献6】米国特許第5,607,463号明細書
【特許文献7】米国特許第5,690,670号明細書
【特許文献8】米国特許第5,891,507号明細書
【特許文献9】米国特許第5,782,908号明細書
【特許文献10】米国特許第5,932,299号明細書
【非特許文献1】van der Giessen, WJ. et al. Marked inflammatory sequelae to implantation of biodegradable and non−biodegradable polymers in porcine coronary arteries, Circulation, 1996:94 (7): 1690−7
【非特許文献2】Davies, P.F., Robotewskyi A., Griem M. L., Endothelial cell adhesion in real time. J. Clin. Invest. 1993; 91:2640−2652
【非特許文献3】Davies, P.F., Robotewski, A., Griem, M. L., Qualitiative studies of endothelial cell adhesion, J. Clin. Invest. 1994; 93: 2031−2038
【非特許文献4】H. Holleck, V. Schier: Multilayer PVD coatings for wear protection, Surface and Coatings Technology, Vol. 76−77 (1995) pp. 328−336
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ステントなどの移植される医療用装置の内皮化を増進させる多くの試みが存在しており、これには、ポリマー材料でステントを覆うこと(特許文献1)、ダイヤモンド状炭素コーティングをステントに付与すること(特許文献2)、疎水性部分をヘパリン分子に共有結合させること(特許文献3)、青色から黒色の酸化ジルコニウムまたは窒化ジルコニウムの層でステントをコーティングすること(特許文献4)、乱層構造炭素(turbostratic carbon)の層でステントをコーティングすること(特許文献5)、ステントの組織接触面をグループVB金属の薄層でコーティングすること(特許文献6)、チタンまたはTi−Nb−Zr合金などのチタン合金の多孔質コーティングをステントの表面に付与すること(特許文献7)、ヘパリン、内皮由来成長因子、血管成長因子、シリコン、ポリウレタン、またはポリテトラフルオロエチレンなどの、合成のまたは生物学的な活性剤または不活性剤を用いて、超音波条件下でステントをコーティングすること(特許文献8)、ビニル官能基を持つシラン化合物でステントをコーティングし、次いでシラン化合物のビニル基で重合することによってグラフト・ポリマーを形成すること(特許文献9)、赤外放射、マイクロ波放射、または高電圧重合を用いてステントの表面にモノマー、オリゴマー、またはポリマーをグラフト化し、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの特性をステントに付与すること(特許文献10)が含まれる。しかしながら、これらの手法は、臨床的に許容可能なポリマー・グラフトの内皮化の不足を改善することはできない。
【0008】
したがって、本発明のグラフトは、全体が金属材料および/または擬似金属材料から製造されることが望ましく、該グラフトの壁面の少なくとも一部は、従来のポリマー・グラフトの内皮化能力より大きな内皮化能力を呈する自立性の独立型グラフトを提供するために、複数のプリーツまたは起伏(undulations)を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属装置は、スパッタリングまたは物理蒸着プロセスなどの薄膜真空堆積技術によって製造されることが好ましい。本発明によれば、真空堆積によって本発明の移植可能な装置を製造することが好ましい。真空堆積は、結果として形成される装置の多くの材料特質および特性に関して、より優れた制御を可能にする。例えば、真空堆積は、粒径、粒子相、粒子材料組成、バルク材料組成、表面トポロジー、形状記憶合金の場合の遷移温度などの機械的特性に関する制御を可能にする。さらに、真空堆積プロセスは、移植される装置の材料特性、機械的特性、または生物学的特性に悪影響を与える大量の汚染物質を導入することなく、より高い材料純度を有する装置の作成を可能にする。真空堆積技術は、従来の冷間加工技術によって製造可能なものより複雑な装置の製造にも適する。例えば、多層構造、複雑な幾何学形状、厚さまたは表面均一性などといった材料公差の極めて精細な制御はすべて、真空堆積処理の利点である。
【0010】
真空堆積技術においては、材料は、例えば平面、管状などの所望の幾何学的形状で直接形成され、金属または擬似金属が基材の形態と一致して堆積する堆積基材の表面形態に基づく所定の表面形態を有する。真空堆積プロセスの一般的な原理は、原料物質として知られる、ペレットまたは厚いホイルのような最小限に加工された形態の材料を使用して、それらを原子化することである。原子化は、例えば、物理蒸着の場合のように熱を用いるか、またはスパッタ堆積の場合のように衝突プロセスの効果を用いて、実施することができる。幾つかの堆積形態においては、典型的には1つまたは複数の原子からなる微粒子を生成するレーザ・アブレーションなどのプロセスを原子化に代えることができ、1粒子当たりの原子数を数千個以上とすることができる。次いで、原料物質の原子または粒子を基材またはマンドレル上に堆積させて、所望の物体を直接形成する。他の堆積法においては、真空チャンバ内に導入された雰囲気ガスすなわちガス・ソースと、堆積した原子および/または粒子との間の化学反応が、堆積プロセスの一部である。堆積した材料は、化学蒸着の場合のような、固体ソースとガス・ソースとの反応によって形成される化合物種を含む。次いで、ほとんどの場合においては、堆積した材料を部分的にまたは完全に基材から除去して、所望の製品を形成する。
【0011】
真空堆積プロセスの第1の利点は、金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムの真空堆積によって、厳密なプロセス制御が可能になり、流体接触面に沿って規則的で均質な原子および分子の分布パターンを有するフィルムを堆積させられることである。これは、表面組成の著しい変化を回避して、予測可能な酸化および有機吸着パターンを作り出し、水、電解質、タンパク質、および細胞との予測可能な相互作用を有する。特に、自然細胞または移植細胞の付着部位として機能する結合ドメインの均質な分布によってEC移動が補助され、スムーズな移動および付着が促進されるようになる。
【0012】
第2に、これ以降は層と呼ぶ単一の金属または金属合金から作られる材料および装置に加えて、本発明のグラフトは、生体適合性材料の層か、または、相互に形成されて自立多層構造になる生体適合性材料の複数の層で構成することができる。多層構造は、シート材料の機械的強度を高めること、または、超弾性、形状記憶、放射線不透過性、耐食性などの特殊な特性を有する層を含むことによって特殊な性質を与えることが、一般に知られている。真空堆積技術の特殊な利点は、層状材料を堆積させることが可能で、したがって優れた性質を持つフィルムを作成できることである(非特許文献4を参照)。上部構造または多層などの層状材料は、一般に、材料の何らかの化学的特性、電子的特性、または光学的特性を利用するためにコーティングとして堆積させるものであり、一般的な例は、光学レンズの反射防止コーティングである。多層はまた、薄膜製造の分野において、薄膜の機械的特性、特に高度および強靱性を高めるのに用いられる。
【0013】
第3に、本発明のグラフトの可能な形態および用途についての設計可能性は、真空堆積技術を利用することによって大幅に高められる。具体的には、真空堆積は、従来の鍛造技術を利用することでは費用効率良く達成できないか、または場合によっては全く達成できない、複雑な3次元の幾何学的形状および構造を有する場合がある実質的に均一な薄い材料の製造に適した付加的な技術である。通常の鍛造金属の製造技術は、精錬、熱間加工、冷間加工、熱処理、高温アニーリング、析出アニーリング(precipitation annealing)、研磨、アブレーション、ウェット・エッチング、ドライ・エッチング、切断、および溶接を伴うものとすることができる。これらの処理ステップはいずれも、汚染、材料特性の劣化、最終的に達成可能な形態、寸法および公差、生体適合性、ならびに費用を含む欠点を有する。例えば、従来の鍛造プロセスは、約20mmより大きい直径を有するチューブを製造するのには適さず、サブミクロンの公差で約5μmまでの壁厚を有する材料を製造するのにも適さない。
【0014】
本発明の自立性の金属グラフトまたは擬似金属グラフトは、従来から製造されている鍛造材料から製造することができるが、本発明について考えられる最良の形態によれば、本発明のグラフトは、真空堆積技術によって製造されることが好ましい。金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムを本発明のグラフトの前駆物質として真空堆積させることによって、結果として得られるフィルム材料の材料特性、生体適合性、および機械的特性を、従来から製造されているグラフト形成材料で可能なものより厳密に制御することができる。本発明の自立グラフトは、単独で用いる、すなわち移植可能な装置全体を単一のグラフトから作るか、または、グラフトを他のグラフトと共に、もしくは、足場(scaffolds)、ステント、および他の装置などの他の構造要素と共に用いられる構造体の一部とすることができる。この「共に」という用語は、溶接、融解、または他の接合方法によって作られるもの、ならびに、材料片のある領域をグラフトに形成し、材料片の他の領域を装置の別の部材または部分に形成することによって同一の材料片から作られているもののような、実際の接続を意味する場合がある。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、壁面に複数のプリーツまたはコルゲーションを有し、グラフトの壁厚を貫通する複数の微小孔を有する自立グラフト部材が提供される。本発明のグラフト部材は、シート、チューブ、またはリングを含む事実上いかなる幾何学的構成をとることもできるが、グラフト部材についての好ましい幾何学的形状は、概ね平面及び概ね管状である。存在する場合は、複数の微小孔は、幾何学的応従性をグラフトに付与し、幾何学的拡張性をグラフトに付与し、および/または、通常の生理的条件下でグラフトの壁を通る流体流れを防止しながら経壁的内皮化を促進するように、グラフトを通る体液または生体物質の通過を制限または可能にするのに役立つ。複数の微小孔は、血管グラフトの場合に長軸方向の可撓性について必要とされるような、柔軟性および/または弾性応従性、塑性応従性、もしくは超弾性応従性をグラフトに付与することによって、布状の性質をグラフトに付与することもできる。
【0016】
第1の実施形態においては、グラフトは、塑性変形可能な材料から作ることができ、その結果、力が加えられたときに、微小孔が幾何学的に変形して、例えば外科用パッチ・グラフトなどの平面グラフトの場合の長さ、または例えば血管グラフトなどの管状グラフトの場合の直径といった、グラフトの1つまたは複数の軸を永続的に拡大させる。第2の実施形態においては、グラフトは、弾性材料または超弾性材料から製造することができる。弾性材料および/または超弾性材料は、グラフトの1つまたは複数の軸における回復可能な変化を可能にするように、加えられる力の下で微小孔が幾何学的に変形することを可能にする。
【0017】
本発明の第1および第2の実施形態の各々においては、グラフトは、フィルムの厚さ、材料特性、および複数の微小孔の幾何学的形状を制御することによって、布状の性質を持つように製造することができる。さらに、血管グラフトの管腔内送達のように低侵襲性送達が必要な場合には、第1および第2の実施形態は、それぞれバルーン拡張および自己拡張、または両方の組み合わせを用いて、送達を可能にする。低侵襲性送達はまた、血管形成バルーンがひだを付けられて縦溝を付けるかまたは折り畳まれるように、送達のためにグラフトを折り畳むことによって、達成することもできる。グラフトは、バルーンを用いることなどによる補助か、あるいは、グラフト材料の塑性特性、弾性特性、若しくは超弾性特性またはそれらの組み合わせのいずれかにより、生体内で装置を広げることによって送達することができる。送達後に、半径方向に拡張させる正圧などの弾性変形または塑性変形によって、グラフト部材の付加的な寸法拡大を可能にするように、複数の微小孔をパターン形成することができる。
【0018】
本発明の金属グラフトまたは擬似金属グラフトは、例えば外科手術によってアクセスすることが必要な、グラフトを既存の解剖学的構造に縫合するバイパス移植術用途などについて、外科的に移植されるグラフトとして利用することができる。本発明のグラフトは、十分に縫合可能であり、発泡ポリテトラフルオロエチレンまたは発泡ポリエステルから製造されるグラフトなどの従来の合成ポリマー・グラフトと同程度の縫合保持強度を呈する。
【0019】
幾つかの用途については、複数の微小孔の各々の大きさは、流体が各々の開口を通って流れることはできないが、細胞が各々の開口を通って移動することができるようなものであることが好ましい。このようにして、例えば、血液が変形状態または非変形状態の複数の微小孔を通って流れることはできないが、種々の細胞またはタンパク質は、複数の微小孔を自由に通過して生体内におけるグラフトの癒合を促進することができる。他の用途については、複数の変形した微小孔または変形していない微小孔を通る適度な量の流体流れを許容することができる。例えば、経壁的内皮化を可能にすると同時に、血栓などの生物学的残渣物がグラフトの壁厚を通過しないようにし、有害物質が循環することを効果的に排除するという二重の機能を果たす微小孔を持つ管腔内伏在静脈グラフトを製造することができる。この例においては、変形状態または非変形状態の複数の微小孔の各々は、数百ミクロンより大きいものとすることができる。
【0020】
当業者であれば、移植可能グラフトの孔の大きさと、全体の拡張比または変形率との間に、直接的な関係が存在することが分かるであろう。したがって、一般に、グラフトの拡張または変形の効果的で達成可能な程度を高めるために、孔の大きさを大きくしなければならないことが理解される。
【0021】
本発明のグラフトの実施形態の別の態様によれば、大きな変形および小さな孔径の両方が必要な用途については、管状構造の直径方向に同心のグラフトのような2つまたはそれ以上のグラフト部材を利用することが考えられる。2つまたはそれ以上のグラフト部材は、同心円状に係合した第1および第2のグラフト部材の壁を通る蛇行した細胞移動経路と、より小さい有効孔径とを形成するように、パターン形成された複数の微小孔を互いに対して位相をずらして配置した状態で、該部材を貫通する複数の微小孔のパターンを有する。生体内において第1および第2のグラフト部材を通る細胞移動およびその癒合を容易にするために、該第1および第2のグラフト部材における複数の微小孔の間で連通する付加的な細胞移動経路を設けることが好ましい場合がある。これらの付加的な細胞移動経路は、必要に応じて、1)第2のグラフトの管腔側表面(luminal surfwase)若しくは第1のグラフトの反管腔側表面(abluminal surfwase)またはその両方に形成される複数の突起物であって、スペーサとして機能し、第1および第2のグラフト部材における複数の微小孔の間で細胞移動および細胞連通を可能にする該第1および第2のグラフト部材の間の環状開口部を維持するように働く、複数の突起部として、2)第1および第2のグラフト部材の長軸に対して不規則、半径方向、螺旋状、または長軸方向とすることができる複数の微小溝であって、溝に沿った細胞移動および伝搬を可能にするのに十分な大きさであり、第1および第2のグラフト部材における複数の微小孔の間の細胞移動導管として機能する、複数の微小溝として、または、3)変形時にグラフト材料の面外運動を与えるように微小孔を設計し、それにより、本来はグラフトの対向面を定める平面間に明確な空間を維持する場所として、与えることができる。
【0022】
グラフト部材は、単層フィルムとして形成するか、または相互に重なり合って形成される複数のフィルム層から形成することができる。生体適合性の金属および/または擬似金属の各々の層を形成するのに用いられる特定の材料は、その生体適合性、耐腐食疲労性、および機械的特性、すなわち引張強度、降伏強度について選択される。金属には、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびに、ジルコニウム−チタン−タンタル合金、ニチノール、およびステンレス鋼などといったこれらの合金が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、グラフトを形成するのに用いられる材料の各々の層は、タンタル、金、または放射性同位元素を添加することによって放射線不透過性または放射活性などの材料特性を改善する目的で、別の材料を添加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上述のことを背景として、ここで、本発明の好ましい実施形態および添付図面を参照しながら本発明の説明に移る。上述のように、本発明の微孔質の移植可能金属装置は、例えば、平面シート、チューブ、またはトロイドを含む多数の幾何学的構造をとることができる。しかしながら、参照を容易にするために、添付図面および以下の本発明の説明は、管状の移植可能グラフト部材を対象とする。しかしながら、当業者であれば、これは、単なる例示的な幾何学的構造であり、本発明の範囲を管状部材に限定するかまたはグラフト部材への適用に限定することを意図するものではないことが分かるであろう。
【0024】
図1を特に参照すると、本発明の移植可能医療用装置がグラフト10として示されている。グラフト10は、一般に、第1の表面14および第2の表面16、ならびに、該第1の表面14と該第2の表面16と間の厚さ18を有する本体部材12からなる。複数の微小孔20が形成され、これらは、隣接する微小孔20の間に孔間領域22を有する本体部材12の厚さ18を貫通する。複数の微小孔20の各々は、幾何学的変化を受けやすい幾何学的構造を有することが好ましく、その結果、各々の微小孔20の開口表面積は、外部から加えられた負荷を受けて変化することができる。非変形状態の複数の微小孔20の各々は、約2mm2未満の開口表面積を有し、非変形状態のグラフトの全開口表面積は0.001%から99%までの間であることが好ましい。複数の微小孔の開口表面積およびグラフトの開口表面積は、複数の微小孔20の変形によって大きく変化させることができる。変形状態および非変形状態の微小孔20の大きさと、変形状態および非変形状態のグラフト12の全開口面積との両方は、グラフト用途に基づく以下の非排他的要因、すなわち、1)グラフト10の所望の応従性、2)グラフト10の所望の強度、3)グラフト10の所望の剛性、4)変形による微小孔20の幾何学的拡大の所望の程度、ならびに、5)血管グラフトのような幾つかの場合においては所望の送達時のプロファイルおよび送達後のプロファイル、を考慮して選択することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の微小孔20は、本体部材12の変形領域を定めるようにパターン形成される。厚さ18は、0.1μmから75μmまでの間、好ましくは1μmから50μmまでの間、最も好ましくは約2μmから25μmまでの間である。これらの厚さの範囲内で製造されたときは、グラフト10は、従来の移植可能非金属グラフトの壁厚および従来の金属管腔内ステントの壁厚より薄い厚さ18を有する。
【0026】
複数の微小孔は、本体部材12の長軸および円周方向軸の両方において微小孔20の規則的なアレイを形成する規則的アレイにパターン形成される。参照目的で、微小孔20のパターンは、これ以降、管状部材においては該管状部材の長軸または円周方向軸に対応する平面のX−Y軸を基準にして説明される。当業者であれば、管状部材に適用したときのX軸とY軸との関係は、「X軸」という用語が管状部材の長軸または円周方向のいずれかに対応し、「Y軸」という用語が管状部材の対応する円周方向または長軸を指すように用いられる場合があることが分かるであろう。
【0027】
当業者であれば、個々の異なる幾何学的パターンは、特定の装置の使用目的、機能、または機械的要件と関連させることができることを認識するであろう。したがって、移植可能部材12の特定の使用目的は、複数の微小孔20について特定の幾何学的パターンを選択する際の考慮事項である。例えば、移植可能部材12が独立型の移植可能管腔内血管グラフトとしての使用目的を有する場合は、円周方向拡張率および長軸方向可撓性が大きいことが望ましいであろう。したがって、これらの特性をもたらす複数の微小孔20の特定の幾何学的形状が選択されることになる。複数の微小孔20は、移植可能部材10の材料特性にも影響を与える。例えば、各々の微小孔20が応力・歪み解放能力を呈するように、または微小孔20の幾何学的変形が塑性変形、弾性変形、もしくは超弾性変形であるかどうかを該微小孔20が制御できるように、各々の微小孔20の幾何学的形状を変えることができる。このように、個々の微小孔20の幾何学的形状と、移植可能部材10のX−Y軸に対する微小孔20の向きと、微小孔20のパターンとはいずれも、移植可能部材10の機械的特性および材料特性を直接付与するか、それらに影響を与えるか、またはそれらを制御するように、選択することができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態に係る複数の微小孔20についての異なる幾何学的パターンを、図2A〜図2Cに示す。図2Aは、複数の微小孔の各々についての第1の幾何学的形状30を示す。この第1の幾何学的形状によれば、複数の微小孔30の各々は、概ね細長いスロット32a、32bからなる。概ね細長いスロット32a、32bの各々は、各々の細長いスロット32a、32bの対向端に末端フィレット(terminal fillets)34を含むことが好ましい。末端フィレット34は、隣接するスロット32間の孔間領域22を介する歪み分布に役立つ歪み解放機能を果たす。図2Aはさらに、複数の微小孔32a、32bについての第1の幾何学的パターンを示し、複数の微小孔32aの第1列には、共通軸に沿って端部同士を接するように配列された隣接する微小孔32aが設けられ、複数の微小孔32bの第2列には、相互に共通な軸および微小孔32aと共通な軸に沿って端部同士を接するように配列された隣接する微小孔32bが設けられる。微小孔32aの第1列および微小孔32bの第2列は、微小孔32aの端部が微小孔32bの中間部分で横方向に隣接し、微小孔32bの端部が微小孔32aの中間部分で横方向に隣接した状態で、相互にずらして、すなわち互い違いに配置される。
【0029】
図2Aに示される複数の微小孔32a、32bの第1の幾何学的形状30は、スロットの長軸に垂直な軸に沿った大きな変形を可能にする。したがって、スロット32a、32bの長軸が移植可能部材10の長軸と同軸である場合は、該スロット32a、32bの変形は、移植可能部材10の円周方向の応従および/または拡張を可能にするであろう。あるいは、スロット32a、32bの長軸が移植可能部材10の円周方向軸に平行な場合は、該スロット32a、32bは、移植可能部材10の長軸方向の応従、可撓、および拡張を可能にする。
【0030】
図2Bは、複数の微小孔20についての第2の幾何学的形状40を示し、この場合も同様に第1の幾何学的形状30のような概ね細長いスロット状の構造を有する複数の微小孔42a、44bからなる。この第2の幾何学的形状40によれば、個々の微小孔42aおよび44bは、互いに対して直角に配向される。具体的には、第1の微小孔42aは、移植可能部材10のX軸に平行に配向され、一方第1の微小孔44bは、X軸に沿った第1の微小孔44aに隣接して配置されるが、該第1の微小孔44bは、移植可能部材10のX軸に垂直で且つ移植可能部材10のY軸に平行に、配向される。第1の幾何学的形状と同様に、複数の微小孔42a、44bの各々は、歪み解放機能を果たし、隣接する微小孔の間の孔間領域22に歪みを伝達するために、各々の微小孔のスロットの対向端に末端フィレット44を含むことができる。この第2の幾何学的形状40は、移植可能装置12のX軸およびY軸の両方において、応従性および拡張性の程度の両方に関するバランスを与える。
【0031】
図2Aおよび2Bの各々においては、微小孔32a、32b、42a、44bの各々は、概ね長軸方向のスロット構造を有する。概ね長軸方向のスロットの各々は、概ね直線状のスロットまたは曲線状のスロットとして構成することができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、概ね直線状のスロットを利用することが好ましい。
【0032】
図2Cは、複数の微小孔についての第3の好ましい幾何学的形状50を示す。この第3の幾何学的形状50によれば、複数の微小孔52の各々は、隣接する微小孔52の対の間に孔間グラフト領域56が存在する概ね台形またはダイヤモンド状の形状を有する。第3の幾何学的形状50は、第1の幾何学的形状30を複数の微小孔32a、32bの長軸に垂直な軸に沿って幾何学的に変形させることによって達成できることが分かるであろう。同様に、第1の幾何学的形状30は、第3の幾何学的形状50の微小孔52を移植可能部材10のX軸またはY軸のいずれかに沿って変形させることによって達成することができる。
【0033】
図3Aおよび図3Bは、図2Aに示した第1の幾何学的形状に係る概ね長軸方向のスロット32a、32bとして形成された複数の微小孔を有する本発明の移植可能装置12を示す顕微鏡写真である。複数の微小孔の各々は、移植可能装置12の長軸に平行な向きに形成した。移植可能装置12は、5μmの壁厚を有する内径6mmのNiTi形状記憶管状グラフト部材からなる。図3Aは、非変形状態の複数の微小孔32a、32bを示し、一方図3Bは、移植可能グラフト12の長軸に垂直に加えられた歪みの影響によって幾何学的に変形した状態の複数の微小孔32a、32bを示す。複数の微小孔32a、32bの幾何学的変形が本発明のグラフトの円周方向の拡張を可能にしたことが明確に理解できる。図3Aおよび図3Bに示される変形状態における複数の微小孔の各々の寸法は、長さが430μm、幅が50μmであり、末端フィレットが50μmの直径を有するものであった。
【0034】
図2Dおよび図4に示される複数の微小孔20の第4の幾何学的形状によれば、複数の微小孔20の各々は、概ね3脚構造又はY字形構造を有する。複数の微小孔20の各々のY字形構造は、放射状に突出する同一平面上の3つの脚31a、31b、31cを有し、その各々は、約120度の角度だけ互いにずれ、それによって概ねY字形を形成する。放射状に突出する同一平面上の3つの脚31a、31b、31cは、互いに対して対称または非対称とすることができる。しかしながら、グラフト本体部材12全体にわたる均一な幾何学的変形を達成するために、複数の微小孔20の各々が幾何学的対称性を有することが好ましい。当業者であれば、ここで説明した特定の2つのパターンの他に、本特許明細書に記載した本発明のグラフトの概念から大きく逸脱することなく、任意の数の異なるパターンを用いることができることが分かるであろう。
【0035】
当業者であれば、微小孔20の各々は、十分な力を加えることによって変形を受けることができることが分かるであろう。管状の幾何学的形状においては、グラフト12は、円周方向および長軸方向の両方に変形することができる。図3Aに示されるように、複数の細長いスロットの各々は、概ね菱形の形状をとる開いた微小孔に変形することができる。同様に、図4に示されるY字形の微小孔20は、概ね円形または楕円形の開いた微小孔21に変形することができる。隣接する微小孔20の間の変形領域22は、複数の微小孔20の各々の開口に応じて変形することによって、該複数の微小孔20の各々の変形を容易にする。
【0036】
図5に示されるように、本発明のグラフト12は、管腔内送達のために、より直径の小さいプロファイルをとるように折り畳むことができる。折り畳みを容易にするために、複数の微小孔20のパターンを、グラフト12の相対的に弱い領域を構成する複数の折り畳み領域23を作成するように作り、その折り畳み領域23に沿って該グラフト12を折り畳むことを可能にする。
【0037】
図6は、管腔内ステント5の円周方向に取り付けられた本発明の微孔質グラフト12の写真図である。微孔質グラフト12は、長軸方向の高可撓性と、半径方向および円周方向の両方の応従性といった機械的特性を呈することが容易に分かるであろう。
【0038】
図7は、マンドレルに取り付けられ、その長軸に沿って約180度曲げられた本発明の微孔質グラフト12の写真図である。長軸方向に曲げると、本発明のグラフト12は、布状の性質の特徴である円周方向の複数の折り目7を持つ高度の折り畳みを受ける。
【0039】
図8Aおよび図8Bは、本発明の微孔質グラフト12における円周方向の高い応従性を示す写真図である。5μmの壁厚を有する6mmの微孔質グラフトを、編み組み擬似ステント上に同軸に取り付けた。擬似ステントを半径方向に拡張させ、円周方向の拡張力を本発明のグラフト12に作用させる軸力を、編み組み擬似ステントの長軸に沿って加えた。図8Aおよび図8Bに明確に示されるように、本発明のグラフト12における複数の微小孔が幾何学的に変形し、それにより該グラフト12の円周方向の拡張を可能にする。
【0040】
このように、本発明の一実施形態は、生体適合性があり、折り畳んで広げるかまたは塑性変形力、弾性変形力、もしくは超弾性変形力を加えるかのいずれかによって幾何学的に可変であり、適切な小さい送達プロファイルによって管腔内送達が可能な、新しい金属製および/または擬似金属製の移植可能グラフトを提供する。本発明のグラフトを製造するのに適した金属材料は、その生体適合性と、機械的特性すなわち引張強度、降伏強度と、製造の容易さとについて選択される。本発明のグラフト材料の応従性を利用して、適切な設計のマンドレルまたは固定具上で本発明のグラフトを変形させることによって、グラフトを複雑な形状に形成することができる。塑性変形および形状設定熱処理を利用して、本発明の移植可能部材10が所望の立体構造を保持することを確実にすることができる。
【0041】
本発明のグラフトを作る第1の好ましい方法によれば、グラフトは、真空堆積した金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムから製造される。図9を特に参照すると、本発明の製造方法100が示される。ステップ102において、従来から製造される生体適合性金属材料または擬似金属材料の前駆体素材を利用することができる。代替的に、ステップ104において、真空堆積させた金属フィルムまたは擬似金属フィルムの前駆体素材を利用することができる。次いで、ステップ108において、ステップ102またはステップ104のいずれかによって得られた前駆体材料素材を、複数の微小孔を定める領域のみを露出させたままにした状態でマスクすることが好ましい。次いで、ステップ108による露出領域は、ステップ110において、前駆体素材の材料に基づいて選択されるエッチャントを用いるウェットまたはドライ化学エッチング処理などのエッチングか、または、ステップ112において、レーザ・アブレーションまたはEDMなどの機械加工のいずれかによって、除去される。代替的には、真空堆積ステップ104を利用するときは、ステップ106において、複数の微小孔に対応するパターン・マスクをターゲットとソースとの間に置き、該パターン・マスクを通して金属または擬似金属を堆積させて、パターン形成された微小孔を形成することができる。さらに、真空堆積ステップ104を利用するときは、複数の微小孔を形成する前かまたはそれと同時に、複数のフィルム層を堆積させて、該フィルムの多層フィルム構造を形成することができる。
【0042】
したがって、本発明は、生体適応性があり、応従性を有し、折り畳んで広げるかまたは塑性変形力、弾性変形力、もしくは超弾性変形力を加えるかのいずれかによって幾何学的に可変であり、幾つかの場合においては、適切な小さい送達プロファイル及び送達後の適切な低プロファイルによって管腔内送達が可能な、新しい金属製および/または擬似金属製の移植可能グラフトを提供する。本発明のグラフトを製造するのに適した金属材料は、その生体適合性と、機械的特性すなわち引張強度、降伏強度と、真空堆積が利用される場合にはその堆積の容易さとについて選択され、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびに、ジルコニウム−チタン−タンタル合金、ニチオール、およびステンレス鋼などのそれらの合金を含むが、これらに限定されるものではない。本発明に関して有用である可能性がある擬似金属材料の例には、例えば、複合材料およびセラミクスが含まれる。
【0043】
本発明はまた、グラフト形成金属または擬似金属の真空堆積と、堆積した材料の一部を、エッチング、EDM、アブレーション、もしくは他の同様の方法などにより除去するか、または堆積処理の間に微小孔に対応するパターン・マスクをターゲットとソースとの間に置くかのいずれかによる微小孔の形成とによって、本発明の拡張可能な金属グラフトを作る方法を提供する。代替的には、鍛造ハイポチューブまたは鍛造シートといった、従来の非真空堆積法によって製造される既存の金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムを取得し、エッチング、EDM、アブレーション、または他の同様の方法などによってその既存の金属フィルムおよび/または擬似金属フィルムの一部を除去することにより、そのフィルムに微小孔を形成することができる。多層フィルム構造体を利用して本発明のグラフトを形成する利点は、異なる機能を別個の層に付与できることである。例えば、タンタルなどの放射線不透過性材料が、構造体の1つの層を形成することができると同時に、他の層は、所望の機械的特性および構造的特性をグラフトに与えるように選択される。
【0044】
真空堆積させたニチノール・チューブから製造される、本発明の微孔質金属製の移植可能装置を製造する好ましい実施形態によれば、円筒形の脱酸素銅基材を準備する。基材は、その上への金属堆積に対応させるために、実質的に均一な表面形態を与えるように機械研磨および/または電解研磨する。カソードが外側にあり、基材が該カソードの長軸に沿って配置された、円筒形中空カソード・マグネトロン・スパッタ堆積装置を利用した。約50−50%のニッケル対チタン原子比率を有し、ニッケル若しくはチタンのワイヤをターゲットにスポット溶接することによって調節することができるニッケル−チタン合金か、ニッケル・シリンダの内表面にスポット溶接された複数のチタン・ストリップを有するニッケル・シリンダか、または、チタン・シリンダの内表面にスポット溶接された複数のニッケル・ストリップを有するチタン・シリンダのいずれかからなる円筒形ターゲットが提供される。スパッタ堆積技術においては、ターゲットとカソード内の冷却ジャケットとの間に熱的接触を維持することによって、堆積チャンバ内のターゲットを冷却することが知られている。本発明によれば、ターゲットをカソード内の冷却ジャケットから断熱すると同時に依然として該冷却ジャケットに電気的に接触させることによって、熱冷却を低減することが有用であることが分った。ターゲットを冷却ジャケットから断熱することによって、該ターゲットが反応チャンバ内で高温になるようにすることができる。円筒形のターゲットをカソードの冷却ジャケットから断熱する2つの方法を利用した。1つ目は、直径0.0381mmの複数のワイヤをターゲットの外周にスポット溶接し、該ターゲットとカソードの冷却ジャケットとの間に均等な間隔を与えるものであった。2つ目は、管状のセラミック製絶縁スリーブを、ターゲットの外周とカソードの冷却ジャケットとの間に置くものであった。さらに、Ni−Tiスパッタ收率はターゲットの温度によって決まることになるので、ターゲットが均一に高温になることを可能にする方法が好ましい。
【0045】
圧力が約2〜5×10−7Torr以下になるように堆積チャンバを排気し、真空下で基材の前洗浄を実施する。堆積中は、基材温度は、摂氏300度から700度までの範囲内に維持されることが好ましい。基材には、0から−1000ボルトまで、好ましくは−50ボルトから−150ボルトまでの間の負のバイアス電圧を印加することが好ましく、これは、エネルギー種を該基材の表面に到達させるのに十分な電圧である。堆積中は、ガス圧は、0.1mTorrから40mTorrまでの間に維持されるが、1mTorrから20mTorrまでの間に維持されることが好ましい。スパッタリングは、アルゴン雰囲気の存在下で行われることが好ましい。アルゴン・ガスは高純度のものでなければならず、特殊なポンプを利用して酸素分圧を減少させることができる。堆積時間は、堆積した管状フィルムの所望の厚さに応じて変えることになる。堆積後は、化学エッチングなどのエッチング、または、エキシマ・レーザもしくは放電加工(EDM)などによるアブレーションなどによって、堆積したフィルムの領域を除去することにより、複数の微小孔がチューブに形成される。複数の微小孔が形成された後に、銅基材を溶解除去するのに十分な時間、該基材と形成された微孔質フィルムとを硝酸浴に曝すことによって、該フィルムが該基材から除去される。
【実施例】
【0046】
長軸方向に互い違いに配向された平行な直線状スロットからなる微小孔パターンを有し、各々のスロットが、長さ430μm、幅25μmであり、各直線状スロットの各々の端部に直径50μmのフィレットを有する、厚さ5μmのNiTiグラフトを、6mmのNiTiステント上に取り付け、ブタの左頚動脈に管腔内送達した。28日後、ブタを安楽死させ、左頚動脈からグラフトを外植(explanted)した。標準的なヘマトキシリンおよびエオシン染色法を用いてサンプルを準備し、顕微鏡用スライドを作成した。図10Aに示されるように、外植したサンプルの組織構造は、グラフト12周囲の完全な内皮化、すなわち、内部弾性層に損傷のない極僅かな新生内膜の増殖を示した。図10Bは、小さな毛細血管の経壁形成を伴う、動脈の表層と深層との間のクロストークを示すサンプルである。
【0047】
本発明のグラフトの代替的な実施形態は、図11から図13まで、および図16から図17までに示され、代替的な実施形態を作るための形成基材は、図14から図15までに示される。図11から図13までを特に参照すると、長軸方向の中央管腔61を持つ概ね管状の構造を有するグラフト60が示される。グラフト60は、一般に、上述の本発明のグラフト材料を参照して上で説明したように、真空堆積した少なくとも1つの金属材料または擬似金属材料から全体が形成されることが好ましいグラフト本体部材62からなる。グラフト本体部材62は、該グラフト本体部材の管腔側表面および反管腔側表面を形成する第1および第2の壁面と、該グラフト本体部材62の壁面に山65および谷67の起伏パターンを形成する複数のコルゲーションまたはプリーツ64とを有する。
【0048】
図13に示されるように、グラフト60は、グラフト本体部材62の壁面を貫通し、該グラフト60の反管腔側壁面と管腔側壁面との間を連通する複数の微小孔66を有することが好ましい。本発明のグラフトの上述の実施形態のように、本発明のグラフト60における複数の微小孔66は、幾何学的応従性をグラフトに付与し、幾何学的拡張性をグラフトに付与し、および/または、通常の生理的状況下でグラフトの壁を通る流体流れを防止しながら経壁的内皮化を容易にするようにグラフトを通る体液または生体物質の通過を制限するかまたは許容するために、各種の幾何学的形状および寸法で形成することができる。複数の微小孔は、血管グラフトの場合に長軸方向の可撓性のために必要であるような、柔軟性および/または弾性応従性、塑性応従性、もしくは超弾性応従性をグラフトに付与することによって、布状の性質をグラフトに付与することもできる。
【0049】
複数の微小孔66は、グラフト本体部材62の長軸方向の長さ全体に沿って、該グラフト本体部材62の全円周方向軸の周囲に存在するようにすることができる。代替的に、複数の微小孔66は、グラフト本体部材62の長軸方向の長さ全体か、またはその円周方向軸のいずれかに沿った選択領域内のみに存在するようにすることができる。複数の微小孔62の位置は、グラフト使用の適応、グラフトの解剖学的配置、および、グラフトを外科的に移植して縫合することが必要かどうかまたは縫合することなくグラフトを管腔内に用いるかどうかを含む種々の基準に基づいて、選択することができる。
【0050】
図16および図17に移ると、本発明のグラフト70の第2の代替的な実施形態が示される。図11から図13までに示されるグラフト60と同様に、グラフト70は、管腔側表面および反管腔側表面を形成する第1および第2の壁面と、その壁面に山75および谷77の起伏パターンを形成する複数の円周方向のコルゲーションまたはプリーツ74とを有する概ね管状のグラフト本体部材72からなる。複数のコルゲーションまたはプリーツ74は、グラフト70の近位端および遠位端を形成し、コルゲーションまたはプリーツ74のない対向する端部領域71、73を持つ、該グラフト70の中間領域76に沿って配置されることが好ましい。代替的に、グラフト70の近位端および遠位端は、円周方向のコルゲーションまたはプリーツ74を持つ長軸方向領域と、円周方向のコルゲーションまたはプリーツ74を持たない他の長軸方向領域とを有し、該グラフト70の対向する端部71、73にコルゲート領域および非コルゲート領域の交互配列を有するようにすることができる。
【0051】
本発明のグラフト70の一態様においては、グラフト本体部材72の対向する端部領域71、73は、中間領域76のz軸厚さより厚いかまたは薄いかのいずれかのz軸厚さを有することができる。さらに、グラフト70を生体内の解剖学的構造体に固定するために、複数の縫合孔78を設け、好ましくはグラフト70の対向する端部71、73を貫通させて、縫合糸79を該縫合孔78を通すことができるようにすることが好ましい。
【0052】
上述の実施形態の各々のように、グラフト60および70は、全体が生体適合性の金属材料および/または擬似金属材料から製造されることが好ましい。本発明のグラフト60、70の全体を生体適合性の金属材料および/または擬似金属材料で作ることによって、該グラフト60、70は、ポリエチレンまたはDACRONグラフトの場合のような前凝固の必要のないより優れた内皮化能力を呈し、多くの金属ステントと同様に再内皮化に極めて適した表面を提供する。
【0053】
当業者であれば、円周方向のコルゲーションまたはプリーツ64、74をグラフト60、70に与えることによって、該グラフト60、70に高い長軸方向可撓性が付与され、該グラフトをその長軸に関して180度を越えて曲げることが可能になることが分かるであろう。全体が金属または擬似金属のグラフトにおけるこの高い長軸方向可撓性によって、管腔内グラフトまたは外科的移植グラフトのいずれかとして用いられるときには、グラフトが大きく湾曲した送達経路を通り、移植後には、患者の歩行運動中の通常の屈曲および伸展に適応するような高応従性および可撓性であることが可能になる。
【0054】
上述のように、本発明のグラフト60、70を製造するための好ましい方法は、犠牲基材またはマンドレル上への金属材料または擬似金属材料の物理的蒸着によるものである。本発明のグラフト60、70を製造するのに適した犠牲基材またはマンドレルが、図14および図15に示される。真空堆積のために、概ね円筒形の基材69が準備される。概ね円筒形の基材は、真空堆積中に上に堆積した金属グラフトに対して異なる劣化を受けやすい金属材料66の固体素材または管状素材のいずれかとすることができる。本発明のグラフト60、70を形成するために、複数の山66および谷68を定める複数の円周方向の起伏を持つ概ね円筒形の基材69が形成される。円筒形基材69の複数の山66および谷68は、グラフト60、70を形成するコンフォーマルな堆積層に形成される山および谷の位置に対応するように配置される。上述の残りのプロセス・パラメータに従って、グラフト60、70に複数の微小孔を形成することができる。
【0055】
本発明を、その好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者であれば、材料、寸法、幾何学的形状、および製造方法の変形は、当該技術分野において知られているかまたは知られるようになることがあるが、それでも依然として特許請求の範囲のみによって制限される本発明の範囲内にあることが分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のグラフトの斜視図である。
【図2A】本発明において有用な第1のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図2B】本発明において有用な第2のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図2C】本発明において有用な第3のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図2D】本発明において有用な第4のパターンの微小孔を示す部分平面図である。
【図3A】幾何学的に非変形状態の図2Aに示される第1のパターンの微小孔を有する本発明のグラフトを示す顕微鏡写真である。
【図3B】幾何学的に変形状態の微小孔を示す図3Aに示される本発明のグラフトの顕微鏡写真である。
【図4】図2Dにおける第4のパターンの微小孔の幾何学的変形を示す図である。
【図5】管腔内送達に適した折り畳み状態をとる本発明のグラフトを示す断面図である。
【図6】ステント・カバーとして用いられる本発明のグラフトの写真図である。
【図7】長軸に沿って約180度変形した、グラフトの布状性質を示す本発明のグラフトの写真図である。
【図8A】編み組み拡張部材を円周方向に覆い、該編み組み拡張部材の長軸に沿って圧縮力を作用させる拡張ジグに取り付けて、該編み組み拡張部材を半径方向に拡張した、本発明のグラフトの写真図である。
【図8B】半径方向の拡張力を受けて半径応従性を半径方向に呈する本発明のグラフトの写真図である。
【図9】本発明のグラフトを作る代替的な実施形態を示すフロー図である。
【図10A】移植された本発明のグラフトを有する28日目の外植されたブタの頚動脈からの、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された組織構造のスライドである。
【図10B】移植された本発明のグラフトを有する28日目の外植されたブタの頚動脈からの、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された組織構造のスライドである。
【図11】本発明のグラフトの代替的な実施形態の斜視図である。
【図12】図11の線12−12に沿って切断した断面図である。
【図13】図12の領域13の拡大図である。
【図14】本発明のグラフトの代替的な実施形態を作るための成形マンドレルの斜視図である。
【図15】図14の線15−15に沿って切断した断面図である。
【図16】本発明のグラフトの第2の代替的な実施形態の斜視図である。
【図17】図16の線17−17に沿って切断した断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.金属材料および擬似金属材料からなる群から選択されるフィルムを含み、第1の表面、第2の表面、および前記第1の表面と前記第2の表面との間の厚さを有する、概ね管状の本体部材と、
b.前記本体部材の壁に形成された円周方向の複数の起伏を有する該本体部材の少なくとも一部と、
を備えることを特徴とする移植可能医療用グラフト。
【請求項2】
前記本体部材の前記厚さを貫通し、前記第1の表面と前記第2の表面との間を連通する、複数の微小孔をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項3】
前記フィルムは、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属材料で作られることを特徴とする、請求項1に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項4】
前記本体部材の円周方向の複数の非起伏領域の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項5】
前記本体部材の前記複数の非起伏領域の少なくとも1つの壁厚を貫通する複数の縫合用開口部の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項6】
起伏領域の壁厚は、前記非起伏領域の壁厚より薄いことを特徴とする請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項7】
前記起伏領域の前記壁厚は約3〜7μmの間であり、前記非起伏領域の前記壁厚は約10〜20μmの間であることを特徴とする、請求項6に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項8】
前記非起伏領域の少なくとも一部は、前記壁厚を貫通する複数の縫合用開口部の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項9】
前記複数の縫合用開口部の少なくとも1つは、概ね十字形状のスロット・パターンをさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項10】
前記複数の縫合用開口部の少なくとも1つは、概ねY字形状のスロット・パターンをさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項11】
放射状に突出する複数のひげ状部材の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項12】
前記本体部材の長軸に沿って一体的に延びる複数の縫合部材の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項13】
移植可能医療用グラフトを作る方法であって、
a.長軸の少なくとも一部に沿ってパターン形成された円周方向に延びる複数の起伏を有する概ね円筒形の基材を準備するステップと、
b.グラフト形成材料を前記概ね円筒形の基材上に真空堆積させるステップと、
c.前記堆積したグラフト形成材料を前記基材からはずすステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記グラフト形成材料は、生体適合性の金属および擬似金属からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記堆積したグラフト形成材料の厚さを貫通する複数の微小孔を形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積したグラフト形成材料の少なくとも1つの非起伏領域の壁厚を通る複数の縫合用開口部の少なくとも1つを形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
a.金属材料および擬似金属材料からなる群から選択されるフィルムを含み、第1の表面、第2の表面、および前記第1の表面と前記第2の表面との間の厚さを有する、概ね管状の本体部材と、
b.前記本体部材の壁に形成された円周方向の複数の起伏を有する該本体部材の少なくとも一部と、
を備えることを特徴とする移植可能医療用グラフト。
【請求項2】
前記本体部材の前記厚さを貫通し、前記第1の表面と前記第2の表面との間を連通する、複数の微小孔をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項3】
前記フィルムは、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属材料で作られることを特徴とする、請求項1に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項4】
前記本体部材の円周方向の複数の非起伏領域の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項5】
前記本体部材の前記複数の非起伏領域の少なくとも1つの壁厚を貫通する複数の縫合用開口部の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項6】
起伏領域の壁厚は、前記非起伏領域の壁厚より薄いことを特徴とする請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項7】
前記起伏領域の前記壁厚は約3〜7μmの間であり、前記非起伏領域の前記壁厚は約10〜20μmの間であることを特徴とする、請求項6に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項8】
前記非起伏領域の少なくとも一部は、前記壁厚を貫通する複数の縫合用開口部の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項9】
前記複数の縫合用開口部の少なくとも1つは、概ね十字形状のスロット・パターンをさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項10】
前記複数の縫合用開口部の少なくとも1つは、概ねY字形状のスロット・パターンをさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項11】
放射状に突出する複数のひげ状部材の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項12】
前記本体部材の長軸に沿って一体的に延びる複数の縫合部材の少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の移植可能医療用グラフト。
【請求項13】
移植可能医療用グラフトを作る方法であって、
a.長軸の少なくとも一部に沿ってパターン形成された円周方向に延びる複数の起伏を有する概ね円筒形の基材を準備するステップと、
b.グラフト形成材料を前記概ね円筒形の基材上に真空堆積させるステップと、
c.前記堆積したグラフト形成材料を前記基材からはずすステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記グラフト形成材料は、生体適合性の金属および擬似金属からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記堆積したグラフト形成材料の厚さを貫通する複数の微小孔を形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積したグラフト形成材料の少なくとも1つの非起伏領域の壁厚を通る複数の縫合用開口部の少なくとも1つを形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−503279(P2007−503279A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532813(P2006−532813)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014096
【国際公開番号】WO2004/100827
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504006054)アドヴァンスド バイオ プロスセティック サーフェシーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014096
【国際公開番号】WO2004/100827
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504006054)アドヴァンスド バイオ プロスセティック サーフェシーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
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