説明

移載装置

【課題】簡単な構造で一回の取出操作で移動する金属部品の数を増やして作業効率を向上させることができる移載装置を提供する。
【解決手段】磁性体である金属部品を収容する容器の近傍に設けられた移動機構と、移動機構に連結され任意の方向に移動するアーム部材を有する。アーム部材の先端部に取り付けられた電磁石36と、電磁石36に対して移動自在に取り付けられた磁性体の金属板38を備える。金属板38は、周縁部に凹部42と凸部44を備え、凹部42と凸部44が電磁石36の外側へ突出している。金属板38は、その中心を通過して一方向に長い長孔40を有し、電磁石36は、金属板38の長孔40に差し込まれて金属板38を摺動及び回転可能に係止する係止フランジ部46を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁性体である金属部品等を、ベルトコンベアやその他の搬送装置等へ移し変える移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベアリングのリテナー等の磁性体である金属部品は、所定量ずつ籠等の容器内に収容され、容器内から移載装置により取り出されてベルトコンベア等に移され、次の組立工程等へ搬送されている。このような移載装置は、磁力による吸着を利用して移載するもので、床面等に固定された移動機構と、移動機構に取り付けられ任意の方向に移動するアーム部材と、アーム部材の先端に取り付けられた電磁石が設けられている。容器から金属部品を取り出す動作は、移動機構でアーム部材を移動して電磁石を容器内に入れて、電磁石に電力を供給して金属部品を吸着させ、再び移動機構を作動して金属部品が吸着した電磁石をベルトコンベア等の上方に移動させ、電磁石への電力供給を停止して金属部品を放して載置するものである。
【0003】
その他、移載装置としては、いろいろな構造のものが提供されている。例えば、特許文献1に開示されている金属部品取出装置は、金属部品が収容される容器を回転させる回転基台と、この容器内に電磁石を上下に移動させて入れる上下移動機構と、この電磁石を水平に移動させる水平移動機構が設けられている。そして、金属部品を取り出すときは、回転基台を回転させて容器を回し、電磁石を容器の内壁近傍で上下運動させて、金属部品のブリッジの発生を防止して吸着し、また容器内の金属部品が残り少なくなっても遠心力により容器の内壁に寄せて電磁石で吸着し確実に取り出すことができる。
【0004】
特許文献2に開示されている部品の取出し装置は、容器の近傍に水平方向に移動可能な第1のアクチュエータと、垂直方向に移動可能な第2のアクチュエータと、第2アクチュエータに取り付けられた支持部材が設けられている。支持部材には2個の電磁石が設けられ、一方の電磁石で金属部品のブリッジの山を崩し、他方の電磁石で金属部品を吸着して移動させるものである。
【特許文献1】特開2007−91392号公報
【特許文献2】特開平6−64753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術の場合、容器内の金属部品のブリッジの発生を防止して金属部品を円滑に取り出す工夫がされているものであり、一回の取り出し操作で取り出される金属部品の数を増やして移載効率を上げることは考えられていなかった。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で一回の取出操作で移動する金属部品の数を増やして作業効率を向上させることができる移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、磁性体である金属部品を収容する容器の近傍に設けられた移動機構と、前記移動機構に連結され任意の方向に移動するアーム部材と、前記アーム部材の先端部に取り付けられた電磁石と、前記電磁石に対して移動自在に取り付けられた磁性体の金属板が設けられ、前記金属板の一部が前記電磁石の外側へ突出している移載装置である。
【0008】
また、前記金属板には、周縁部に凹部と凸部が形成され、前記凹部と前記凸部が前記電磁石の外側へ突出している。
【0009】
また、前記金属板は、前記電磁石に対して回転自在に取り付けられ、前記金属板の中心を通過して一方向に長い長孔が貫通して設けられ、前記電磁石には、前記金属板の前記長孔に差し込まれて前記金属板を摺動及び回転可能に係止する係止フランジ部が設けられ、前記金属板の周縁部の前記凹部と前記凸部は、前記長孔を中心線として線対称に形成され、前記長孔の中心を通過する直角な中心線に対して線対称に形成されている。
【0010】
また、前記金属板には、前記長孔に交差する一対の側縁部の中心に、金属板の中央へ向かってコの字形にくぼむ前記凹部が形成され、前記凹部の両側部分は外側に突出する前記凸部となり、H字形に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移載装置は、簡単な構造で一回の操作で吸着される金属部品の数を増やすことができる。電磁石に取り付けられた金属板に磁気が帯びて金属部品を吸着する表面積が広くなり、多くの金属部品に接触させて吸着することができる。さらに、一回の取出操作で多くの金属部品を移動することができ、製品の製造効率が良好となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の移載装置10は、床等に基台12が固定されて設けられ、基台12の上に移動機構14が設けられている。移動機構14は、基台12に対して図示しないモータにより旋回可能に設けられ、水平方向に延出するアーム部材15、及びアーム部材15の先端から下方に延出するアーム部材16が設けられている。
【0013】
アーム部材16の下端部16aには、アーム部材連結板18が取り付けられている。アーム部材連結板18の形状は、一方向に長く長方形の4隅の角部が矩形に切り欠かかれたものであり、アーム部材16の長手方向にほぼ直角に取り付けられている。アーム部材連結板18の、アーム部材16と反対側の面には、アーム部材連結板18の長手方向の両端部近傍から、一対のロッド20が下方に延出して固定されている。各ロッド20の途中には、一枚の板体である電磁石ホルダ22が設けられている。電磁石ホルダ22は、一方向に長い矩形の板体であり、長手方向の両端部近傍に一対のロッド20が挿通される透孔が形成されている。電磁石ホルダ22の上面22aには、この透孔と同心状に保持筒24が設けられ、保持筒24で透孔の周囲を囲むように取り付けられている。ロッド20は保持筒24に摺動可能に挿通され、電磁石ホルダ22の透孔を通過して電磁石ホルダ22の下面22bに突出している。電磁石ホルダ22から突出するロッド20の先端には、コイルバネ26が電磁石ホルダ22の下面22bとの間に設けられている。
【0014】
アーム部材連結板18の側面には、センサ取付部材28が下方に延出して設けられている。センサ取付部材28は2本の棒部材を連結して設けられ、棒部材の重なり長さを変更して長さを変更することができる。センサ取付部材28の先端には、電磁石ホルダ22の移動を検出する近接センサ30が、電磁石ホルダ22の端面に対向して取り付けられている。
【0015】
電磁石ホルダ22の下面22bの中心には、取付軸32が下方に延出して設けられている。取付軸32の下端部には電磁石36が設けられている。電磁石36は、一方向に長い立方体であり電磁石ホルダ22の長手方向に対して平行な水平方向が一番長く形成されている。電磁石36の上面36aの中心に、取付軸32が直交して連結されている。上面36aと反対側の面は、上面36aと同じ大きさの下面36bであり、上面36aと下面36bの間には、長手方向に平行な一対の側面36c,36dと、長手方向に直交する一対の端面36e,36fが設けられている。
【0016】
電磁石36の側面36cには、鉄板等の磁性体の金属板38が取り付けられている。金属板38は、一定厚みの板体を打ち抜いて作られ、中心に一定幅の長孔40が貫通して設けられている。金属板38は、長孔40に直交する一対の側縁部38aの中心部には、金属板38の中央へ向かってコの字形にくぼむ凹部42が形成されている。互いに対向する側縁部38a間の幅は、長孔40に平行な一対の側縁部38b同士の間隔よりも短く形成されている。そして、側縁部38aの、凹部42の両側部分は外側に突出する凸部44となり、金属板38の外形はH字形に形成されている。H字形の各角部は、適宜面取りされているとよい。
【0017】
電磁石36の側面36cには、各端面36e,36fに近い位置に、係止フランジ部46が一対設けられている。係止フランジ部46には、側面36cから所定高さに突出する軸部と、軸部の先端に形成された円形のフランジが設けられている。係止フランジ部46の軸部は、金属板38の長孔40にゆとりを有して挿通される直径であり、金属板38の厚みよりも少し長く形成されている。係止フランジ部46のフランジは、金属板38の長孔40の幅よりも大きい直径である。さらに、電磁石36の側面36cと平行に位置する側面36dにも、一対の係止フランジ部46が設けられている。
【0018】
各係止フランジ部46には、各々金属板38が1個ずつ取り付けられている。係止フランジ部46が、金属板38の長孔40の内側を自由に摺動と回転をするため、金属板38は、電磁石36に対して長孔40の長さの範囲で自由に移動する。また、係止フランジ部46のフランジは長孔40の幅よりも直径が大きいため、金属板38は抜けることが無く確実に係止されている。金属板38の形状は、前記長孔を中心線として線対称に形成され、また前記長孔の中心を通過する直角な中心線に対しても線対称であり、金属板38が静止するときは常に長孔40が垂直に位置し、長孔40の上端部に係止フランジ部46が当接し、一対の凸部44が下方に突出して係止される。
【0019】
次に、この実施形態の移載装置10の使用方法について説明する。まず、移載装置10の移動機構14によりアーム部材15,16が移動する範囲の内側に、ベアリング用の磁性体のリテナー等の金属部品48を収容した容器50が搬送されて置かれる。容器50は上方に開口している。アーム部材16が移動する範囲の内側で容器50の近傍には、第1ベルトコンベア52が設けられている。ここでは第1ベルトコンベア52は基台12の内側を通過し移動機構14の下方に設けられている。第一ベルトコンベア52の下流側の端部は容器50から離れ、整列装置54の入口に達している。整列装置54の出口には第2ベルトコンベア56が設けられている。
【0020】
金属部品48を容器50から取り出して第1ベルトコンベア52に移動させるときは、移動機構14によりアーム部材16を容器50の上方に平行移動させ、金属部品48に電磁石36が接触可能にする。そして、アーム部材16を下降させると、金属部品48に金属板38が接触し、電磁石36も接触する。これにより、電磁石36の下面が電磁石ホルダ22を押して、ロッド20に対して上昇する。これにより、近接センサ30に対向した電磁石ホルダ22が相対的に近接センサ30から離れる。そして、アーム部材連結板18と電磁石ホルダ22の距離が所定間隔狭くなると、アーム部材連結板18に取り付けられた近接センサ30により、電磁石ホルダ22が近接センサ30から離れたことが検出され、電磁石36が金属部品48に当接した信号が近接センサ30から制御盤へ送られ、電磁石36に電力が供給される。
【0021】
これにより、電磁石36は磁界を発生させ、容器50内部の金属部品48を吸着する。このとき、電磁石36に接触している4枚の金属板38も磁気を帯びて、金属部品48を吸着する。このとき、金属板38の凸部44が、容器50内の金属部品48同士の隙間に差し込まれ、接触面積が広くなり、多くの金属部品48を吸着する。金属板38は、金属部品48に当接して簡単に移動と回転をするため、金属部品48の向きに沿って当接して効率よく吸着する。金属部品48は2個の凸部44が下方に突出して設けられているため、金属部品48同士の小さい隙間や、金属部品48の内側の中空部分に凸部44が差し込まれ、確実に吸着する。また、金属板38は、180°回転しても反対側にも2個の凸部44が形成されているので、表面積が小さくなることが無く、同様に金属部品48を吸着する。
【0022】
次に、アーム部材16を上昇させ平行移動させ、電磁石36を第1ベルトコンベア52の上方に対向させる。その後、電磁石36への電力供給を停止させ、吸着していた金属部品48を放して第1ベルトコンベア52の上に載置する。そして、金属部品48は第1ベルトコンベア52により搬送されて整列装置54に入り、第2ベルトコンベア56の上に整列されて送り出され、次の工程に搬送される。
【0023】
この実施形態の移載装置10によれば、簡単な構造で一回の取出操作により吸着される金属部品48の数を増やすことができ、多くの金属部品48を移動することができるので、製造効率等を高めることが出来る。
【0024】
即ち、電磁石36に取り付けられた金属板38により、金属部品48を吸着する表面積が広くなり、多くの金属部品48に当接して効率よく吸着することができる。金属板38の凸部44が金属部品48同士の小さい隙間や金属部品48の内側の中空部分に差し込まれ、確実に吸着することができる。金属板38は、金属部品48に当接して簡単に移動と回転をするため、様々な状態の金属部品48の側面に当接して効率よく吸着する。金属部品48は2個の凸部44が下方に突出して設けられているため、金属部品48同士の隙間や、金属部品48の内側の中空部分に凸部44が差し込まれ、確実に金属部品48を吸着することができる。また、金属板38は、係止フランジ部46の軸部を中心に180°回転しても反対側の2個の凸部44が下方に突出して静止するため、同様に機能するため表面積が小さくなることが無いものである。
【0025】
なお、この実施形態の移載装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、金属板の形状は、H字形以外でも良く、電磁石に取り付ける数も自由に変更可能である。また、金属部品はベアリングのリテナー以外の部品でも良い。移動機構やベルトコンベア等の配置や構造も適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態の移載装置の電磁石付近の斜視図である。
【図2】この実施形態の移載装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
10 移載装置
14 移動機構
15,16 アーム部材
18 アーム部材連結板
20 ロッド
22 電磁石ホルダ
30 センサ
36 電磁石
38 金属板
40 長孔
42 凹部
44 凸部
46 係止フランジ部
50 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体である金属部品を収容する容器の近傍に設けられた移動機構と、前記移動機構に連結され任意の方向に移動するアーム部材と、前記アーム部材の先端部に取り付けられた電磁石と、前記電磁石に対して移動自在に取り付けられた磁性体の金属板が設けられ、前記金属板の一部が前記電磁石の外側へ突出していることを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記金属板は、前記電磁石に対して回転自在に取り付けられ、周縁部に凹部と凸部が形成され、前記凹部と前記凸部が前記電磁石の外側へ突出していることを特徴とする請求項1記載の移載装置。
【請求項3】
前記金属板には、前記金属板の中心を通過して一方向に長い長孔が貫通して設けられ、前記電磁石には、前記金属板の前記長孔に差し込まれて前記金属板を摺動及び回転可能に係止する係止フランジ部が設けられ、前記金属板の周縁部の前記凹部と前記凸部は、前記長孔を中心線として線対称に形成され、前記長孔の中心を通過する直角な中心線に対して線対称に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の移載装置。
【請求項4】
前記金属板には、前記長孔に交差する一対の側縁部の中心に、金属板の中央へ向かってコの字形にくぼむ前記凹部が形成され、前記凹部の両側部分は外側に突出する前記凸部となり、H字形に形成されていることを特徴とする請求項2記載の移載装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−120716(P2010−120716A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293999(P2008−293999)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(397015603)株式会社EMテクノ (4)
【Fターム(参考)】