説明

移送システム

【課題】ワークの移送手段の占めるスペースを最小とし、システム構築コストを低減可能な移送システムを実現する。
【解決手段】X軸方向にスライダを移動する一対のX軸リニアモータを平行配置し、前記一対のX軸リニアモータのスライダ間に橋渡ししたブリッジ部材にY軸リニアモータを設け、前記Y軸リニアモータのスライダに搭載したツールを用いてワーク2、2’、2’’に対して所定の処理をする位置決めステージ101、102、103を備え、前記位置決めステージを複数個連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X軸方向にスライダを移動する一対のX軸リニアモータを平行配置し、一対のX軸リニアモータのスライダ間に橋渡ししたブリッジ部材にY軸リニアモータを設け、Y軸リニアモータのスライダに搭載したツールを用いて加工対象となるワークに対して所定の処理をする位置決めステージを用いたワークの移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、一対のX軸リニアモータを所定距離を隔てて平行に配置し、各X軸リニアモータのスライダ間をブリッジ部材で橋渡しし、このブリッジ部材上にY軸リニアモータを設けた位置決めステージの外観斜視図である。
【0003】
1は位置決めステージの筐体であり、上面のX軸方向の両端部にX軸方向に平行配置した突出部1a及び1bが形成されて断面が凹状とされ、この凹部1c上面に加工対象となるワーク2が所定位置にセットされる。
【0004】
31は突出部1aの上面にステータが設置されたX1軸リニアモータ、32は突出部1bの上面にステータが設置されたX2軸リニアモータである。41及び42はこれらリニアモータのステータ上をX軸方向に走行するスライダである。
【0005】
5はブリッジ部材であり、スライダ41及び42間に橋渡しし、X軸に直交するY軸方向に平行に配置される。6はブリッジ部材の上面にステータが配置されたY軸リニアモータであり、7はこのステータ6上をY軸方向に走行するスライダである。
【0006】
Y軸リニアモータのスライダ7にワーク2に対して所定の処理(液晶、半導体、電子部品等の製作、検査)を実行するためのツール(図示せず)が搭載され、この位置決めステージはこのツールのワーク2に対するXY位置決め制御を行う。
【0007】
図8は、位置決めのためのXYサーボ系の概要を説明する機能ブロック図である。81及び82は、X1位置検出手段及びX2位置検出手段であり、スライダ41及び42のX
軸方向の位置検出信号Pfx1及びPfx2を出力する。9はY位置検出手段であり、スライダ7のY軸方向の位置検出信号Pfyを出力する。
【0008】
10は中点位置検出手段であり、スライダ41及び42のX軸方向の位置検出信号Pfx1及びPfx2を加算して平均演算することで、X1軸リニアモータ31とX2軸リニアモータ32の中間点の位置検出信号Pfxを算出して出力する。
【0009】
11は上位装置であり、目標位置信号Px及びPyを位置制御手段12に与える。位置制御手段12は、これら目標位置信号Px及びPyと位置検出信号をPfx及びPfyとのとの偏差を演算してXYドライバ13にX軸及びY軸の推力指令Fx及びFyを出力する。
【0010】
XYドライバ13は、X軸推力指令Fxに基づいてX1軸リニアモータ31及びX2軸リニアモータ32のモータ部(図示せず)に共通の駆動電流Ixを与える。同様に、Y軸推力指令Fyに基づいてY軸リニアモータ6のモータ部(図示せず)に駆動電流Iyを与える。
【0011】
以上説明した位置決めステージで加工されるワーク2に対する処理工程が複数ステップにわたる場合には、複数の位置決めステージをカスケードに配置し、上流側の位置決めステージより上流側の位置決めステージに加工対象のワーク2を順次移送する。
【0012】
図9は、複数の位置決めステージ間を渡るワークの移送経路を示す模式図である。上流側のステージAにセットされたワーク2を、下流のステージBのワーク2´として移送するためには、ステージAに形成されたアンローダを介して搬送装置にワークを渡し、この搬送装置がステージBのローダにワークを渡す手順をとる。
【0013】
従来の位置決めステージでは、1機能が各ステージ1台で固定されていて、工程内プロセス、検査等の装置は夫々の機能に特化されていた。従って、複数の位置決めステージを用いてワークを連続的に移送させて加工するためには、ステージ間をつなぐ搬送装置、ワークをステージ内外に搬入搬出するローダ及びアンローダが必要であり、これらは位置決めステージとは別体の専用装置となっていた。
【0014】
リニアモータに関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0015】
【特許文献1】特開昭63−213490号公報
【0016】
【特許文献2】特開2000−65970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の移送システムでは次のような問題点がある。
(1)ワークをステージ内外に搬入搬出するローダ及びアンローダ並びに搬送装置が位置決めステージ間に専用装置として別途必要であり、連結される位置決めステージの数が多くなるとこれら専用装置の占めるスペースのために設置可能な位置決めステージの数に制約を生じ、スペース効率が低下する。
【0018】
(2)専用装置の数が増加すると、位置決めステージ以外の付帯コストが増加し、移送システム構築するためのコスト低減の障害要因となる。
【0019】
従って本発明が解決しようとする課題は、ワークの移送手段の占めるスペースを最小とし、システム構築コストを低減可能な移送システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を達成するために、本発明の構成は次の通りである。
(1)X軸方向にスライダを移動する一対のX軸リニアモータを平行配置し、前記一対のX軸リニアモータのスライダ間に橋渡ししたブリッジ部材にY軸リニアモータを設け、前記Y軸リニアモータのスライダに搭載したツールを用いてワークに対して所定の処理をする位置決めステージを備え、
前記位置決めステージを複数個連結したことを特徴とする移送システム。
【0021】
(2)前記各位置決めステージは、前記ワークの受け入れ側と受け渡し側が共通のメカニカルインターフェース構造になっていることを特徴とする(1)に記載の移送システム。
【0022】
(3)前記ワークを位置決めステージ相互間で受け渡すための移送手段を設けたことを特徴とする(1)又は(2)に記載の移送システム。
【0023】
(4)前記移送手段は、前記各位置決めステージの筐体内に装備されることを特徴とする(3)に記載の移送システム。
【0024】
(5)前記各位置決めステージの少なくともいずれかは、複数のY軸リニアモータを備えることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の移送システム。
【0025】
(6)複数のY軸リニアモータを備える前記位置決めステージは、同一ステージ内に複数の移送手段を備えることを特徴とする(5)に記載の移送システム。
【0026】
(7)前記各位置決めステージの少なくともいずれかは、同一のY軸リニアモータに複数のスライダを備えることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の移送システム。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
(1)メカニカルなインターフェース部を共通構造とすることにより、連結した位置決めステージの筐体内部にワークの移送手段を装備することができ、ワークの受けと渡しを直結したステージ間で直接行うことが可能となる。
【0028】
(2)従来システム必要とされるステージ外の搬送装置は、ステージ間のインターフェース部内に構築される移送手段の機能に吸収されるので不要となり、移送システムの省スペース化に貢献できる。
【0029】
(3)ステージ間のインターフェース部内に構築される移送手段を採用することで、専用装置を外付けにする従来システムに比較してシステム構築コストをに大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明を適用した移送システムの一実施形態を示す概観斜視図であり、図7で説明した単体の位置決めステージを複数個連結した構造を特徴としている。
【0031】
101、102、103はX軸方向に3個連結された同一構造の位置決めステージである。位置決めステージ101にセットされたワーク2は、このステージでの加工が終了すると矢印Pで示すようにX軸方向に移送され、位置決めステージ102に2´で示す位置にセットされてこのステージでの加工が実行される。
【0032】
更に、このステージでの加工が終了すると矢印P´で示すようにX軸方向に移送され、位置決めステージ103に2″で示す位置にセットされてこのステージでの加工が実行され、矢印P″方向にアンロードされる。
【0033】
位置決めステージ101と位置決めステージ102とが結合するインターフェース部201及び位置決めステージ102と位置決めステージ103とが結合するインターフェース部202は、位置決めステージ103の凹部103cと同一の凹部形状を有する共通のメカニカルインターフェース構造になっており、任意個数の位置決めステージを共通のインターフェースで連結結合することが可能となっている。
【0034】
図2は、図1におけるインターフェース部201及びインターフェース部202において位置決めステージの筐体内部に形成される移送手段301及び302の配置を示す平面図である。移送手段は、上流側の位置決めステージにセットされたワークにアクセスしてアンロードし、これを下流側の位置決めステージの所定位置にロードするアクチュエータ機能を備えた手段で実現される。
【0035】
図3は、移送手段の構成例を示す斜視図である。平行レール601,602上を走行するスライダ700にアクチュエータ800が搭載され、このアクチュエータで伸縮駆動される操作アーム901,902により、ワーク乗せて移送させる。図4は、操作アーム901,902が伸ばされた状態を示す斜視図である。
【0036】
図5は、本発明の他の実施例を示す連結した位置決めステージの内の1個の斜視図である。この位置決めステージの特徴は、共通のX1軸,X2軸リニアモータに対して複数(図示の例では2個)のY軸リニアモータを備えた構造にある。
【0037】
5−1及び5−2は第1及び第2のブリッジ部材、6−1及び6−2はこれらブリッジ部材に配置された第1及び第2のY軸リニアモータである。これらY軸リニアモータのスライダは全く独立したXYサーボ系により位置決め制御される。
【0038】
このような構造の位置決めステージの筐体内部にステージ内移送手段を設けることにより、同一ステージでワークを上流側から下流側に移送させ、複数のY軸モータのスライダに搭載されたツールにより、ワークに対して複数工程の加工を同一ステージ内で行うことが可能となり、工程内の時間短縮効果を期待できる。
【0039】
図6は、図5に示した位置決めステージの筐体内部に形成されるステージ内移送手段300の配置を示す平面図である。移送手段は、同一筐体における上流側の位置決めステージ100−1と下流側の位置決めステージ100−2の仮想的なインターフェース部200に配置される。
【0040】
このステージ内移送手段300は、上流側位置決めステージ100−1にセットされたワーク2−1にアクセスしてアンロードし、これを下流側の位置決めステージの所定位置にワーク2−2としてロードするアクチュエータ機能を備えた手段で実現される。具体的な構造は、図3及び図4で説明したものと同一構造を採用することができる。
【0041】
本発明の更に他の実施形態としては、図示していないが、同一のY軸リニアモータに独立して位置制御可能な複数のスライダを持つ位置決めステージを連結する位置決めステージとして採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を適用した移送システムの一実施形態を示す概観斜視図である。
【図2】図1におけるインターフェース部に形成される移送手段の配置を示す平面図である。
【図3】移送手段の構成例を示す斜視図である。
【図4】操作アームを伸ばした場合の移送手段の構成例を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す連結した位置決めステージの1個の斜視図である。
【図6】図5におけるインターフェース部に形成される移送手段の配置を示す平面図である。
【図7】従来における位置決めステージの外観斜視図である。
【図8】図7の位置決めステージにおけるXYサーボ系の概要を説明する機能ブロック図である。
【図9】従来の移送システムにおける複数の位置決めステージ間を渡るワークの移送経路を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
2,2´,2″ ワーク
101,102,103 位置決めステージ
103c 凹部
201,202 インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向にスライダを移動する一対のX軸リニアモータを平行配置し、前記一対のX軸リニアモータのスライダ間に橋渡ししたブリッジ部材にY軸リニアモータを設け、前記Y軸リニアモータのスライダに搭載したツールを用いてワークに対して所定の処理をする位置決めステージを備え、
前記位置決めステージを複数個連結したことを特徴とする移送システム。
【請求項2】
前記各位置決めステージは、前記ワークの受け入れ側と受け渡し側が共通のメカニカルインターフェース構造になっていることを特徴とする請求項1に記載の移送システム。
【請求項3】
前記ワークを位置決めステージ相互間で受け渡すための移送手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の移送システム。
【請求項4】
前記移送手段は、前記各位置決めステージの筐体内に装備されることを特徴とする請求項3に記載の移送システム。
【請求項5】
前記各位置決めステージの少なくともいずれかは、複数のY軸リニアモータを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の移送システム。
【請求項6】
複数のY軸リニアモータを備える前記位置決めステージは、同一ステージ内に複数の移送手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の移送システム。
【請求項7】
前記各位置決めステージの少なくともいずれかは、同一のY軸リニアモータに複数のスライダを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の移送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−82148(P2006−82148A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267137(P2004−267137)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(000140384)株式会社横河ブリッジ (29)
【Fターム(参考)】