説明

移送装置

【課題】保存箱からキャップシール装着装置へのスタック体の移送を自動化でき得る移送装置を提供する。
【解決手段】移送装置は、スタック体100を吸引保持する吸引ヘッド14や、吸引ヘッド14を移動させる移動機構、保存箱内のスタック体100の位置を検出するレーザセンサ40、移動機構等を制御する制御部などを備えている。吸引ヘッド14の先端には、スタック体100の長軸方向に並んだ複数の吸引ノズル30と、レーザセンサ40が取り付けられている。制御部は、レーザセンサ40での検出結果に基づいて、吸引ノズルが保存箱内のスタック体100に接触する位置まで吸引ヘッド14を移動させた後、吸引ノズル30でスタック体100を吸引保持させる。その後、吸引ヘッド14を移動させることで、スタック体100を移送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略円筒形で可撓性を有したキャップシールを複数積層したスタック体を移送する移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャップシールは、熱収縮性フィルムのような可撓性材料からなる天板付の略円筒形部材で、ビア樽や牛乳瓶などの口部にシュリンク方式で装着される部材である。このキャップシールの容器口部への装着は、公知のキャップシール装着装置(例えば下記特許文献1など)を用いて自動的に行われる。
【0003】
ところで、通常、キャップシールの製造場所(キャップシール製造装置の設置場所)と、キャップシールの装着場所(キャップシール装着装置の設置場所)と、は離れていることが多い。そのため、任意の製造場所で製造されたキャップシールは、ダンボール箱などの保存箱に収容され、装着場所まで搬送(輸送)されるようになっている。このとき、収容効率の向上などを目的として、キャップシールは、複数積層したスタック体として保存箱に収容される。装着場所にいる作業者は、キャップシール装着装置による装着処理の進行状況に応じて、保存箱からスタック体を取り出し、当該スタック体をキャップシール装着装置にセットする。キャップシール装着装置は、スタック体から一つずつキャップシールを抜き取り、容器の口部に装着する。
【0004】
【特許文献1】特許第3559103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、既述したとおり、従来、保存箱からのスタック体の取り出しは、作業者の手作業により行われていた。この取り出し作業は、キャップシール装着装置での処理進行状況に応じて行う必要があり、作業者は、装着処理実行中ずっと、キャップシール装着装置の様子を監視していなければならない。換言すれば、従来の技術では、スタック体の取り出し作業のため、作業者は長時間拘束されることになる。これは、作業者にとって大きな負担であった。また、取り出し作業のために少なくとも1人の作業者が必要となりコスト増加も招いていた。
【0006】
そこで、本発明では、保存箱からキャップシール装着装置へのスタック体の移送を自動化でき得る移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移送装置は、略円筒形で可撓性を有したキャップシールを複数積層したスタック体を移送する移送装置であって、先端に設けられた吸引ノズルにより前記スタック体を吸引保持する吸引ヘッドと、前記吸引ヘッドを、前記スタック体が収容されている保存箱からキャップシール装着装置へと移動させることで、前記スタック体を移送させる移動機構と、前記保存箱内に収容されているスタック体の位置を検出する位置検出手段と、前記吸引ヘッドおよび移動機構の駆動を制御する制御手段であって、位置検出手段での検出結果に基づいて、前記吸引ヘッドによる前記スタック体の吸引保持開始時に、前記吸引ノズルが前記スタック体の表面に接触し、かつ、前記スタック体を押し潰さない位置に前記吸引ヘッドを移動させるべく移動機構を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記吸引ヘッドは、前記吸引ノズルを複数有しており、前記複数の吸引ノズルは、前記スタック体の分離を防止可能な間隔で前記キャップシールの積層方向に配設されている。
【0009】
この場合、各吸引ノズルごとに設けられ、対応する吸引ノズルの内圧に応じてON/OFF切替する圧力スイッチを備え、前記制御手段は、前記圧力スイッチのON/OFF状態に基づいて、前記吸引ヘッドによる前記スタック体の吸引保持の良否を判定することが望ましい。さらに、より望ましくは、前記制御手段は、前記圧力スイッチの結果に基づいて前記複数の吸引ノズル全ての内圧が前記スタック体の吸引が可能な内圧であると判定できた場合にのみ、前記吸引ヘッドによるスタック体の吸引が成功していると判定する。
【0010】
他の好適な態様では、前記位置検出手段は、前記吸引ヘッドに設けられ、所定の検出範囲内に位置する物体表面の位置を非接触で検出する非接触位置センサであり、前記制御手段は、予め設定されたスタック体および保存箱の種類に基づいて、当該保存箱に収容された複数のスタック体それぞれの概略位置を算出し、前記吸引保持開始時には、前記概略位置に基づいて前記吸引ヘッドを保存箱内のスタック体近傍まで移動させた後、前記位置検出手段でスタック体の位置を検出させ、当該検出結果に基づいて前記吸引ノズルが前記スタック体に接触する位置に吸引ヘッドを移動させる。
【0011】
この場合、前記位置検出手段は、所定の検出範囲内に位置する物体表面の形状も検出し、前記制御手段は、前記吸引保持開始時には、前記位置検出手段での検出結果に基づいて、前記吸引ノズルが前記スタック体表面のうち最も高い点に接触する位置に前記吸引ヘッドを移動させることが望ましい。
【0012】
他の好適な態様では、前記保存箱には、複数のスタック体が長軸方向視で各スタック体が段ごとに交互に略半径分だけズレた千鳥状に積み重ねられており、前記制御手段は、前記保存箱に収容されたスタック体のうち下から二段目のスタック体の移送を行う場合、当該下から二段目のスタック体のうち保存箱の側壁に接触するスタック体を最後に移送するべく、移動機構を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位置検出手段によりスタック体の位置が検出され、その検出結果に基づいて吸引ヘッドが移動されるため、スタック体を確実に吸引保持できる。そして、その結果、保存箱からキャップシール装着装置へのスタック体の移送を自動化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態である移送機構について図面を参照して説明する。はじめに、本実施形態において移送対象となるスタック体100について説明する。図1は、スタック体100の概略斜視図である。スタック体100は、複数のキャップシール102、および、単一のシールキーパ104を積層して構成される。キャップシール102は、公知のキャップシール装着装置により、ビア樽などの容器の口部にシュリンク装着される部材であり、熱収縮性フィルムからなる。シュリンク装着される前のキャップシール102は、略円筒形に予備成形されており、その天面は厚さ約100〜300μmm程度の天板で閉塞されている。また、キャップシール102の側面には、テーパまたは段差(図示例ではテーパ)が設けられており、上端径に比して下端径が大きくなっている。キャップシール102を積層する際には、この上端と下端の径差を利用して、各キャップシール102の後側に他のキャップシール102を順次、嵌め込んでいく。
【0015】
シールキーパ104は、キャップシール102の型崩れ等を防止する目的で、スタック体100の最も後端に嵌め込まれる部材である。シールキーパ104は、厚さ約500μmm〜1mm程度のプラスチックのようにある程度の保形性を有した材料からなり、天面が閉塞された略円筒形に成形されている。このシールキーパ104の側面にもテーパまたは段差が形成されており、上端径に比して下端径が大きくなっている。そして、この上端と下端との径差により、シールキーパ104のキャップシールへの挿嵌が可能となっている。
【0016】
複数のキャップシール102およびシールキーパ104を積層したスタック体100は、ダンボール箱などの保存箱110に収容され、輸送される。このとき、スタック体100は、図2に図示するように、その長軸方向が互いに平行になるように、複数段に積み重ねられて保存箱110に収容される。また、各スタック体100は、長軸方向視で各スタック体100が略千鳥状に並ぶように、換言すれば、N段目(N=1,2,・・・,n)のスタック体とN+1段目のスタック体とが互いに隣接方向に略半径分だけズレるように、積み重ねられている。
【0017】
かかるスタック体100は、保存箱110から取り出されると、その積層状態を維持したまま(スタック体100の状態のまま)、キャップシール装着装置にセットされる。キャップシール装着装置は、スタック体100からキャップシール102を一つずつ抜き取り、抜き取ったキャップシール102を容器口部に取り付ける。そして、キャップシール102を容器口部に取り付けたまま加熱収縮させることで、容器口部にキャップシール102を密着(シュリンク装着)させる。
【0018】
ところで、従来、保存箱110からのスタック体100の取り出し、および、キャップシール装着装置へのスタック体100のセットは、全て、作業者による手作業で行われていた。このスタック体100の取り出し・セット作業は、キャップシール装着装置での装着処理の進行状況に応じて行う必要があった。そのため、従来、作業者は、長時間、キャップシール装着装置の近傍で待機し、その処理進行状況を監視していなければならなかった。かかる長時間の監視は、作業者にとって負担であるばかりでなく、人的コストの増加も招いていた。また、スタック体100を構成する複数のキャップシール102等は、嵌め込み時に生じる摩擦力で連結されているに過ぎず、取り出し・セット作業時に付加される力のバランスが適切でないと、連結が解除され、分離してしまう。したがって、スタック体100を迅速、かつ、適切に取り扱うには、ある程度の経験を要するという問題もあった。
【0019】
本実施形態の移送装置は、かかる問題を解決するための装置である。すなわち、本実施形態の移送装置は、自動的に、保存箱110からスタック体100を取り出して、キャップシール装着装置まで移送し、セットする。以下、この移送装置について詳説する。
【0020】
図3、図4は、本実施形態の移送装置10の正面図および側面図である。また、図5は、吸引ヘッド14周辺の拡大図である。
【0021】
この移送装置10は、保存箱110を搬送するコンベア機構12、スタック体100を吸引保持する吸引ヘッド14、吸引ヘッド14を移動させる移動機構16、これらを制御する制御部(図示せず)、および、作業者からの操作指示を受け付ける操作盤(図示せず)などを備えている。
【0022】
コンベア機構12は、水平設置された水平コンベア18と、傾斜設置された傾斜コンベア20と、に大別される。水平コンベア18は、吸引ヘッド14のほぼ真下位置を通過する搬送路を有しており、この搬送路上には、複数の駆動ローラ22が配設されている。複数の駆動ローラ22は、ローラ用モータ23の駆動に伴って回転駆動することで、搬送路上に載置された保存箱110を上流側から下流側(図3において左側から右側)へと搬送する。なお、このとき、保存箱110は、その内部に収容しているスタック体100の長軸が、後述する吸引ノズル30の配設方向と平行になるような向きで搬送路上に載置される。
【0023】
搬送路のうち吸引ヘッドのほぼ真下位置は、保存箱110を一時停止する停止位置Qとなる。この停止位置Qには、保存箱110の到達を検知する光学センサ24が設けられている。光学センサ24は、搬送路を挟んで対向設置された投光器24aおよび受光器24bから構成される。投光器24aは、受光器24bに向かって検出光を照射し、受光器24bは、当該検出光を受光できるか否かで、保存箱の到達を検知する。保存箱110が停止位置Qに到達したことを検知すれば、制御部は、ローラ用モータ23の駆動を停止し、保存箱110を停止位置Qで一時停止させる。吸引ヘッド14は、この一時停止している保存箱110の中からスタック体100を順次取り出し、キャップシール装着装置に設けられた供給トレイ120へと移送していく。保存箱内の全てのスタック体100が取り出されれば、制御部は、再び、ローラ用モータ23を駆動させ、保存箱110の搬送を再開させる。これにより、新たな保存箱110が停止位置Qに搬送されるとともに、空になった保存箱(空箱110a)が傾斜コンベア20へと送りだされる。
【0024】
傾斜コンベア20は、水平コンベア18の下流端近傍から延び、下流側に近づくにつれ低くなる傾斜した搬送路を備えている。この搬送路上には、回転自在のローラ26が複数配設されており、空箱110aの滑落が助長されるようになっている。また、搬送路の下流端にはストッパ28が立設されており、空箱110aの傾斜コンベア20からの落下が防止されている。この傾斜コンベア20に送りだされた空箱110aは、傾斜した搬送路に沿って滑落していく。滑落していった空箱110aは、ストッパ28または先行の空箱110aに当接した時点で停止し、傾斜コンベア20に貯留されていく。作業者は、一定数(図示例では三つ)の空箱110aが傾斜コンベア20に貯留されれば、空箱110aを回収する。
【0025】
吸引ヘッド14は、水平コンベア18の上側に設けられており、負圧によりスタック体100を吸引保持しつつ移動することで、スタック体100を移送する。この吸引ヘッド14には、図5に図示するように複数(本実施形態では8本)の吸引ノズル30が設けられている。複数の吸引ノズル30は、断面略L字状に折り曲げられたL字フレーム38で保持されており、スタック体100の長軸方向に一列に並べられている。
【0026】
各吸引ノズル30の先端には、ゴムなどの弾性体からなる弾性パッドが設けられている。この弾性パッドは、スタック体100の表面形状に追従して変形可能であり、スタック体100を吸引保持した際にスタック体100の表面に密着することで負圧の漏れを防止する。また、各吸引ノズル30の後端には、連結チューブ34が接続されている。各吸引ノズル30は、この連結チューブ34を介して対応する吸引機構36(図3参照)に接続されている。スタック体100を吸引保持する際、吸引機構36は、対応する吸引ノズル30に負圧を供給する。この負圧により、スタック体100は、吸引ノズル30に吸引され、保持される。
【0027】
ここで、吸引ノズル30を複数本設けるのは、移送時におけるスタック体100の分離を防止するためである。すなわち、スタック体100は、各キャップシール102を他のキャップシール102に嵌め込んで積層した積層体である。別の見方をすれば、スタック体100を構成する複数のキャップシール102は、嵌め込みにより生じる摩擦力だけで連結されている。したがって、キャップシール102同士の連結は、比較的、小さい力で解除可能となっている。
【0028】
もちろん、各キャップシール102を他のキャップシール102の奥深くまで嵌め込むことで、摩擦力の増加、ひいては、キャップシール102同士の連結力を増加させることは可能である。しかし、キャップシール102同士の連結力が過度に大きいと、キャップシール装着装置において、スタック体100からキャップシール102を一つずつ抜き取ることができず、結果として、キャップシール102の装着処理の効率を低下させてしまう。つまり、キャップシール102の装着処理を正常に行うためには、スタック体100を構成するキャップシール102同士の連結力を過度に大きくすることはできない。
【0029】
かかるスタック体を、図6に図示するように、一本の吸引ノズル30だけで吸引保持して持ち上げる場合を考える。この場合、スタック体100は、その自重により吸引箇所を中心として撓むことになる。そして、この撓みにより、吸引箇所から離れた位置にあるキャップシール102fは、傾斜角度が大きくなり、連結状態を維持できず、落下することになる。つまり、吸引ノズル30一本だけで、積層状態を維持したままスタック体100を移送することは困難であるといえる。
【0030】
一方、本実施形態では、吸引ノズル30を複数設け、スタック体100を複数箇所で吸引保持している。そのため、持ち上げた際のスタック体100の撓みが防止され、キャップシール102の離脱、ひいては、スタック体100の分離が防止される。その結果、積層状態を維持したままスタック体100を移送することができる。なお、吸引ノズル30が複数であっても、その配置間隔が過度に大きい場合には、一本の場合と同様に、スタック体100の撓み、ひいては、キャップシール102の落下といった問題を招く。そのため、吸引ノズル30の配置間隔は、隣接するキャップシール同士の間に生じる摩擦力を考慮して、吸引保持時にスタック体100の分離を防止可能な間隔以下とすることが必要である。ここで、スタック体の分離を防止可能な間隔は、各キャップシールの形状や材質、嵌め込み量などに基づいて決定される。
【0031】
各吸引ノズル30には、当該吸引ノズル30内の圧力変化を検出する圧力スイッチ(図示せず)が設けられている。この圧力スイッチは、吸引ノズル内圧力が所定基準値以下であればONとなり、所定基準を超えればOFFとなる。ON/OFFの閾値である所定基準値は、スタック体100を吸引保持可能な圧力値に設定される。制御部は、この圧力スイッチの検出結果に基づいて、吸引ノズルによるスタック体吸引の良否を判断する。具体的には、制御部は、スタック体100の吸引保持を指示したにも関わらず、圧力スイッチがOFFの場合には、吸引ノズル30から負圧が漏れている、換言すれば、吸引ノズル30がスタック体100に密着しておらず、吸引不良が生じていると判断する。
【0032】
なお、圧力センサは、各吸引ノズル30ごとに一つずつ設けられており、各吸引ノズル30ごとに独立して吸引の良否を検知できるようになっている。これは、スタック体100の撓み、ひいては、キャップシール102の落下をより確実に防止するためである。すなわち、複数の吸引ノズル30のうち一本だけでも吸引不良が生じると、実質的に、吸引箇所の間隔が増加することになる。吸引箇所の間隔増加は、既述したようなスタック体100の撓み、ひいては、キャップシール102の落下を招くことになる。そこで、本実施形態では、各吸引ノズル30に一つずつ圧力センサを設け、各吸引ノズル30ごとに独立して吸引の良否を検知できるようにしている。また、かかる構成とすることで、たとえ、スタック体100の移送途中に一部のキャップシール102が落下しても即座に検知することができる。その結果、キャップシール装着装置に、分離された不完全なスタック体100が供給されることを確実に防止できる。
【0033】
各吸引ノズル30は、連結チューブ34を介して、吸引機構36(図3、図4参照)に連結されている。吸引機構36は、制御部からの指示に応じて、吸引ノズル30に負圧を供給する機構である。この吸引機構36は、一つの吸引ノズル30に対して一つずつ設けられており、各吸引ノズル30ごとに独立して負圧供給できるようになっている。
【0034】
吸引ヘッド14の先端近傍、より具体的には、四本目の吸引ノズル30と五本目の吸引ノズル30との間には、レーザセンサ40が設けられている(図5参照)。このレーザセンサ40は、複数本の検出用レーザ光を照射した際に得られる反射光の状態に基づいて、当該レーザ光照射方向に位置する物体表面にある複数の検出ポイント(複数の検出用レーザ光が当たった箇所)の位置(距離)を検出し、さらに、この複数の検出ポイントを補間処理することで物体の表面形状を算出するセンサである。
【0035】
本実施形態では、このレーザセンサ40を、そのレーザ光照射方向が下方向になるべく設置して、スタック体100の位置および形状検出に利用している。制御部は、このレーザセンサ40での検知結果に基づいて、吸引ヘッド14の移動位置を微調整したり、吸引ヘッド14からのスタック体100の落下を検知したりするが、これについては後に詳説する。
【0036】
移動機構16は、上述した吸引ノズル30やレーザセンサ40等を備えた吸引ヘッド14を、垂直方向および水平コンベア18の搬送路に直交する方向(図3における紙面垂直方向)の二方向に移動させる機構である。この移動機構16は、周知の様々な構成を採用することができる。例えば、移動機構16は、駆動源であるモータや、当該モータから出力された駆動力を吸引ヘッドに伝達するリードスクリューやカムなどの伝達機構、吸引ヘッド14の移動方向を案内するガイドレールなどで構成される。この移動機構16の駆動は、制御部により制御される。
【0037】
操作盤は、作業者からの操作指示を受け付ける部位である。作業者は、この操作盤を介して、移送の開始・停止指示の他、移送すべきスタック体100またはキャップシール102の総数や、スタック体100や保存箱110の種類などといった移送に必要な情報も入力する。制御部は、操作盤を介して入力された情報に基づいて、保存箱110内における複数のスタック体100の概略的な位置を算出し、一時記憶する。
【0038】
制御部は、上述したコンベア機構12や吸引ヘッド14、移動機構16などの駆動を制御する。また、制御部は、キャップシール装着装置との間で情報の送受が可能であり、当該キャップシール装着装置での処理進行状況を把握することができるようになっている。そして、得られた装着処理の進行状況や、各種センサでの検知結果などに基づいて、上述した移動機構16などの駆動を制御する。
【0039】
次に、この移送装置10での処理の流れについて図7のフローチャートを用いて説明する。この移送装置10を駆動させるに当たって、作業者は、まず、操作盤を操作して、スタック体100の移送に必要な各種情報を入力する(S10)。ここで入力される情報としては、スタック体100および保存箱110の種類や、移送すべきスタック体100またはキャップシール102の総数などである。制御部は、入力された情報に基づいて、保存箱110が停止位置Qで停止した際における、当該保存箱内の各スタック体100の概略位置を算出し、一時記憶する(S12)。
【0040】
続いて、制御部は、吸引ヘッド14に設けられたレーザセンサ40を利用して、キャップシール装着装置に設けられた供給トレイ120の位置を検出する(S14)。これは、供給トレイ120の高さが、キャップシール102が装着される容器の高さに応じて、適宜、変更されるためである。かかる供給トレイ120の高さを検出するために、制御部は、まず、移動機構16を駆動して、吸引ヘッド14を供給トレイ120の上部まで移動させる。そして、吸引ヘッド14に設けられたレーザセンサ40で、供給トレイ120の位置を検出する。制御部は、検出された供給トレイ120の高さを一時記憶しておく。
【0041】
供給トレイ120の高さが検知できれば、次に、制御部は、水平コンベア18を駆動して、水平コンベア18上に載置された保存箱110を吸引ヘッド14のほぼ真下位置、すなわち、停止位置Qまで搬送する(S16)。そして、制御部は、キャップシール装着装置との通信結果に基づいて、スタック体100の移送の要否を判断する(S18)。より具体的には、キャップシール装着装置のうち、スタック体100のセットを受け付ける供給トレイ120にスタック体100を追加供給でき得る空スペースがあるか否かを確認する。確認の結果、供給トレイに空スペースがある場合、制御部は、吸引ヘッド14および移動機構16を駆動して、スタック体100の移送を開始する(S22)。このスタック体100の移送処理の詳細な流れを図8に示す。
【0042】
スタック体100を移送する場合、制御部は、まず、一時時記憶されている各スタック体100の概略位置に基づいて、移動機構16を駆動して吸引ノズル30の先端を移送対象のスタック体100の上側近傍まで移動させる(S24)。
【0043】
続いて、吸引ヘッド14に設けられたレーザセンサ40で、移送対象のスタック体100の正確な位置および形状を検出する(S26)。すなわち、レーザセンサ40は、下方向に複数の検出用レーザ光を照射する。この検出用レーザ光は、吸引ヘッド14の下側に位置するスタック体100に当たり、反射する。レーザセンサ40は、このとき得られる反射光の状態に基づいて、当該スタック体100の正確な位置および形状を検出する。
【0044】
ここで、レーザセンサ40を用いてスタック体100の正確な位置および形状を検出するのは次の理由による。既述したように、本実施形態では、吸引ノズル30でスタック体100を吸引保持するが、そのためには、まず、当該吸引ノズル30を、スタック体100の表面に接触する位置であって、スタック体100を押しつぶさない位置に移動させる必要がある。
【0045】
すなわち、スタック体100と吸引ノズル30が離間していれば、吸引ノズル30に供給された負圧がスタック体100に作用しないため、スタック体100を吸引することができない。逆に、吸引ノズル30がスタック体100に近づきすぎて、当該吸引ノズル30がスタック体100を押し潰してしまうと、当該スタック体100を構成するキャップシール102が型崩れすることになり、その後のキャップシール装着処理が適切に行えなくなる。したがって、吸引ノズル30でスタック体100を吸引保持するためには、吸引ノズル30をスタック体100に接触する位置に確実に移動させる必要がある。
【0046】
しかしながら、これまでの説明で明らかなとおり、スタック体100は、断面円形で転がりやすい不安定な形状を有している。そのため、保存箱110内で転がりやすく、事前入力されたスタック体100や保存箱110の種類といった情報だけでは、その位置を正確に取得することはできず、ひいては、ノズル30をスタック体100に接触する位置まで移動させることができない。
【0047】
そこで、本実施形態では、事前入力されたスタック体100や保存箱110の種類などから各スタック体100の概略位置を算出した後、レーザセンサ40(吸引ヘッド14)をスタック体100近傍まで移動させ、当該レーザセンサ40でスタック体100の詳細位置(および形状)を検出している。
【0048】
移送対象のスタック体100の位置および形状が検出できれば、制御部は、当該検出結果に基づいて移動機構16を駆動して、吸引ノズル30がスタック体100の表面に接触する位置であって、スタック体100を押しつぶさない位置に吸引ヘッド14を移動させる(S28)。すなわち、制御部は、レーザセンサ40での検出結果に基づいて、スタック体100のうち最も高い点(図5(b)における点P)の位置を算出する。そして、移動機構16を駆動して、吸引ノズル30の先端が、最も高い点位置になるように吸引ヘッド14を移動させる。
【0049】
吸引ノズル30がスタック体100に接触する位置まで移動できれば、続いて、制御部は、吸引機構36に負圧供給を指示し、スタック体100の吸引を開始させる(S30)。この指示を受けた各吸引機構36は、連結チューブ34を介して、対応する吸引ノズル30に負圧を供給する。そして、この負圧により、スタック体100は、吸引ノズル30に吸引され、保持される。
【0050】
制御部は、この吸引保持の良否を、各吸引ノズル30に設けられた圧力スイッチのON/OFF状態に基づいて判断する(S32)。すなわち、複数の圧力スイッチ全てがON状態の場合、制御部は、スタック体100は適切に吸引保持されていると判断する。この場合はステップS34へと進む。一方、複数の圧力スイッチのうち一つでもOFF状態の場合、制御部は、吸引ノズル30がスタック体100に密着しておらず、当該吸引ノズル30によるスタック体100の吸引保持が失敗していると判断する。この場合には、ステップS24へと戻り、ステップS24〜S32を再実行する。
【0051】
全圧力スイッチがON状態であれば、換言すれば、吸引ノズル30によりスタック体100が適切に吸引保持されれば、制御部は、移動機構16を駆動して吸引ノズル30を供給トレイ120の真上位置まで移動させる(S34)。この移動中、制御部は、圧力スイッチのON/OFF状態、および、レーザセンサ40での検出結果に基づいて、スタック体100の吸引ノズル30からの落下の有無を監視する。すなわち、吸引ノズル30により吸引保持されているはずのスタック体100の位置の急変がレーザセンサ40で検知された場合、あるいは、圧力スイッチのON状態からOFF状態への変遷が検知された場合、制御部は、スタック体100の落下が生じたと判断する。この場合、制御部は、移動機構16の駆動を停止させ、アラームを出力する。
【0052】
吸引ノズル30が、スタック体100を落下させることなく、供給トレイ120の真上位置まで移動できれば、制御部は、吸引機構36による負圧供給を停止させ、吸引ノズル30によるスタック体100の吸引を停止させる(S36)。吸引停止により、スタック体100は吸引ノズル30から離脱し、供給トレイ120の上に落下し、載置されることになる。
【0053】
スタック体100が供給トレイ120に載置されれば、ステップS40(図7参照)に進む。すなわち、制御部は、これまで移送したスタック体100の個数が、事前に設定入力された移送すべき目標総数に達したか否かを判断する(S40)。目標総数に達している場合には、処理は全て終了となる。一方、目標総数に達していない場合には、さらに、保存箱110内にスタック体100が残存しているか否かを確認する(S42)。スタック体100が残存している場合には、ステップS18へ、残存していない場合にはステップS16へと戻り、再度、同様の処理を繰り返す。
【0054】
ここで、この繰り返しの際、スタック体100の取り出し順序によっては、保存箱110に残存するスタック体100の転がりが生じる場合がある。これについて図9を用いて説明する。
【0055】
既述したように、保存箱110において、複数のスタック体100は、千鳥状に積み重ねられている。かかるスタック体100のうち、下から二段目のスタック体100を保存箱110から取り出す場合において、図9(b)に図示するように、保存箱110の側壁に接触するスタック体100aを最初に取り出し、その後、その隣に位置する側壁に接触しないスタック体100bを取り出すとする。この場合、吸引ノズル30が当該接触しないスタック体100bに当接した際に生じる衝撃により、一段目のスタック体100cが転がってしまう場合がある。スタック体100が転がると、ステップS12で算出されたスタック体100の概略位置と、実際のスタック体100の位置と、が大幅にズレることになる。そして、その結果、ステップS28において、吸引ノズル30をスタック体100近傍に移動させることができず、レーザセンサ40での正確な位置検出、ひいては、吸引ノズル30による吸引保持ができないという問題を招く。
【0056】
そこで、本実施形態では、二段目のスタック体100を取り出す場合は、図9(a)に図示するように、二段目のスタック体100のうち側壁に接触するスタック体100aを最後に取り出すようにしている。この場合、一段目のスタック体100cは、当該接触するスタック体100a、および、保存箱110の側壁により挟まれた状態となるため、転がることはない。その結果、最後の一本のスタック体100を取り出すまで、スタック体100の転がりを防止でき、スタック体100を適切に吸引保持できる。
【0057】
なお、かかる一段目のスタック体100cの転がりを防止するために、保存箱110を特殊な形態にしてもよい。例えば、図10(a)に図示するように、保存箱110の内側底面が平坦面になるように、フラップ110b,110sの折り曲げ順序を通常と異ならせてもよい。すなわち、ダンボール箱などの保存箱110の底面は、底面全体を覆う一対の大フラップ110bおよび底面の一部を覆う一対の小フラップ110sを折り曲げることで形成される。一般的には、この二種類のフラップ110b,110sは、小フラップ110sが内側に、大フラップ110bが外側になるような順序で折り曲げられる。しかし、この場合、小フラップ110sの端部により形成される段差が、保存箱の内側底面に存在することになる。かかる段差は、一段目のスタック体100cの転がりを誘発する原因になる。そこで、図10(a)に図示するように、小フラップ110sが外側に、大フラップ110bが内側になるような順序でフラップを折り曲げるようにしてもよい。
【0058】
また、保存箱110の内側底面に、一段目のスタック体100cの転がりを防止でき得る部材を設けてもよい。具体的には、図10(b)に図示するように、スタック体100の大きさに応じた断面円弧状の溝が連続して形成された波状板112を、保存箱110の内側底面に設置してもよい。これにより、スタック体100の転がりが、より確実に防止される。
【0059】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態によれば、スタック体100の取り出し・セット処理において、作業者の手作業を不要とすることができる。また、吸引保持に先立って、レーザセンサ40によりスタック体100の正確な位置を検出しているため、スタック体100を確実に吸引保持できる。さらに、スタック体100を複数の吸引ノズル30で吸引保持しているため、スタック体100の分離を防止でき、より確実にスタック体100を移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】移送対象であるスタック体の概略斜視図である。
【図2】保存箱に収容されているスタック体の様子を示す図である。
【図3】本発明の実施形態である移送装置の正面図である。
【図4】移送装置の側面図である。
【図5】吸引ヘッドの先端周辺の拡大図である。
【図6】一本の吸引ノズルでスタック体を吸引保持する様子を示す図である。
【図7】移送装置での処理の流れを示す図である。
【図8】ステップS22の詳細な流れを示す図である。
【図9】スタック体の取り出し順序を説明する図である。
【図10】他の保存箱の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10 移送装置、12 コンベア機構、14 吸引ヘッド、16 移動機構、18 水平コンベア、20 傾斜コンベア、24 光学センサ、28 ストッパ、30 吸引ノズル、34 連結チューブ、36 吸引機構、40 レーザセンサ(位置検出手段)、100 スタック体、102 キャップシール、110 保存箱、120 供給トレイ(キャップシール装着装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形で可撓性を有したキャップシールを複数積層したスタック体を移送する移送装置であって、
先端に設けられた吸引ノズルにより前記スタック体を吸引保持する吸引ヘッドと、
前記吸引ヘッドを、前記スタック体が収容されている保存箱からキャップシール装着装置へと移動させることで、前記スタック体を移送させる移動機構と、
前記保存箱内に収容されているスタック体の位置を検出する位置検出手段と、
前記吸引ヘッドおよび移動機構の駆動を制御する制御手段であって、位置検出手段での検出結果に基づいて、前記吸引ヘッドによる前記スタック体の吸引保持開始時に、前記吸引ノズルが前記スタック体の表面に接触し、かつ、前記スタック体を押し潰さない位置に前記吸引ヘッドを移動させるべく移動機構を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする移送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移送装置であって、
前記吸引ヘッドは、前記吸引ノズルを複数有しており、
前記複数の吸引ノズルは、前記スタック体の分離を防止可能な間隔で前記キャップシールの積層方向に配設されている
ことを特徴とする移送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移送装置であって、さらに、
各吸引ノズルごとに設けられ、対応する吸引ノズルの内圧に応じてON/OFF切替する圧力スイッチを備え、
前記制御手段は、前記圧力スイッチのON/OFF状態に基づいて、前記吸引ヘッドによる前記スタック体の吸引保持の良否を判定する
ことを特徴とする移送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の移送装置であって、
前記制御手段は、前記圧力スイッチの結果に基づいて前記複数の吸引ノズル全ての内圧が前記スタック体の吸引が可能な内圧であると判定できた場合にのみ、前記吸引ヘッドによるスタック体の吸引が成功していると判定することを特徴とする移送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の移送装置であって、
前記位置検出手段は、前記吸引ヘッドに設けられ、所定の検出範囲内に位置する物体表面の位置を非接触で検出する非接触位置センサであり、
前記制御手段は、
予め設定されたスタック体および保存箱の種類に基づいて、当該保存箱に収容された複数のスタック体それぞれの概略位置を算出し、
前記吸引保持開始時には、前記概略位置に基づいて前記吸引ヘッドを保存箱内のスタック体近傍まで移動させた後、前記位置検出手段でスタック体の位置を検出させ、当該検出結果に基づいて前記吸引ノズルが前記スタック体に接触する位置に吸引ヘッドを移動させる
ことを特徴とする移送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の移送装置であって、
前記位置検出手段は、所定の検出範囲内に位置する物体表面の形状も検出し、
前記制御手段は、前記吸引保持開始時には、前記位置検出手段での検出結果に基づいて、前記吸引ノズルが前記スタック体表面のうち最も高い点に接触する位置に前記吸引ヘッドを移動させることを特徴とする移送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の移送装置であって、
前記保存箱には、複数のスタック体が長軸方向視で各スタック体が段ごとに交互に略半径分だけズレた千鳥状に積み重ねられており、
前記制御手段は、前記保存箱に収容されたスタック体のうち下から二段目のスタック体の移送を行う場合、当該下から二段目のスタック体のうち保存箱の側壁に接触するスタック体を最後に移送するべく、移動機構を制御することを特徴とする移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−102058(P2009−102058A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278080(P2007−278080)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】