稀薄分布のエレメントアレイを有するアンテナ
アンテナ(80、90)は1次元または多次元のエレメントアレイ(20、40)を有し、このアレイの少なくとも一部分の連続するエレメント間の間隔は非周期的であり、且つ、一連の単位間隔の倍数に対応し、この倍数はフィボナッチ数列に従う。2次元アレイをフィボナッチグリッドまたはフィボナッチ正方形タイルとして配置することができる。信号が、一個の一意の方向にピークを有し、そしてビームを形成するように、信号を送信し受信することを依然として可能とする間に、エレメントの数を、与えられた分解能の大きさに対して減少させることができる。さらに、密接に群がった幾つかのエレメントと充分に間隔を置いた少量のエレメントが存在するため、これは、規則的に間隔を置いたアレイよりも車両(30)に対してより適している。これは、サブミリ波レーダーシステムのための送信アンテナまたは受信アンテナとして使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイアンテナ、このアンテナを備えるレーダーシステム、このアンテナのためのエレメントのレイアウトを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダー(SAR)技術は、大きなアレイの利用を伴う。個々のアレイエレメントは、位相及び振幅において個々に制御することができる。この目的によって、一連の、例えば、位相遅延が全てのアンテナエレメント中にプログラムされ、且つ、その結果として生じる測定値が更なる処理のために記憶される。SAR法の強さは、位相セットが充分であったと仮定して、全ての種類のビーム形状がその後合成されることができること、即ち、特定のビームパターンを有する特定のタイプのアンテナを用いて測定されたデータを再構成することができる、と言う事実にある。SARは、レーダーシステムが、何らの機械的移動部分を有さずにターゲットを追跡し、且つ、同時に数個のターゲットを追跡することができるように、発明された。一般的なSARアプリケーションに必要なアンテナエレメントの数は、2D映像装置に対して、100〜1000個の範囲である。マイクロ波周波数を使用すると、1個のSARエレメントはそれ程費用がかからず、マイクロ波信号の生成、輸送及び配布(及び収集)は安価であり、全ての種類の配列とトポロジーに対して多くの低損失ソリューションが存在する。この状況は、サブミリ波レーダーにおいて完全に異なっている。サブミリ波レーダーに対して、信号パワーを生成するための安価で効率的な方法は存在せず、数百の波長に渡ってパワーを効率的に輸送する何らの方法も存在しない(これらの周波数のための導波管は製造に費用がかかり、曲げは難しく、ケーブルは役立たず、マイクロストリップ/ストリップライン/共通平面導波管技術は、良いがおよび/または高い損失を有するアンテナのみを生じさせるが、しかし、これら全ては100GHz以上で優れた送信ラインではない)。
【0003】
EP807990B1(ボーイングCy)は、規則的なアレイに固有の格子ローブ問題に対処する方法を提供するために、この技術分野において、不規則アレイが知られていると記載しており、その理由として、不規則アレイはエレメント位置における周期性を取り除くと述べている。ランダムアレイは、最悪ケースのサイドローブを期待通りに制御する能力において限られている。アレイエレメント位置を制御できる場合、最悪ケースのサイドローブをさらに期待通りに制御することが可能なエレメント配置を決定するために、あるアルゴリズムを使用することができる。従来技術は不規則に間隔をおいた線形アレイの多くの事例を含んでおり、この線形アレイの多くは非冗長的、即ち、全ての所定エレメントペア間に間隔が無いことが、繰り返されている。非冗長性は、格子ローブを制御することに関して、アレイ設計に最適化の度合いを提供する。
【0004】
EP807990B1はさらに、不規則平面アレイの設計のための従来技術は、大きくアドーホックであると述べている。非冗長性平面アレイの単純な事例は従来技術において殆ど存在しない。このアレイでは、比較的少ないエレメント数しか存在しないか、または、円の周辺のような単純化されたエレメント分布であるような、非冗長性平面アレイの単純な事例が、従来技術においてほんの少し存在する。非冗長性および円対称を確実とするための制限下で、任意数のエレメントをアレイ開口を通して分散して配置する(周辺のみとは異なって)ための、非冗長性平面アレイ設計技術に、従来技術は無関心であるように見える。
【0005】
周波数の広い範囲に亘って格子ローブが実質的に存在しない平面アレイ設計を提案し続けるが、この場合、利用可能なエレメント数は、ソースマップまたは投射ビームにおける格子ローブ汚染を排除するために通常必要とされる半波長基準に合致するエレメント間間隔を有する規則的(即ち、等間隔エレメント)アレイを形成するために必要な数よりも、実質的に少ない。これは、同一の対数スパイラルセットに沿って種々のアーク長と半径上に間隔を置いた、検知または送信エレメントの平面アレイを提供することによって達成され、ここで、スパイラルセットの一部は、始点の周りに等角度に間隔を置いており、均一に分散されたエレメントを有するアレイまたはランダムアレイよりも、下側の最悪のサイドローブと周波数の広い範囲にわたってのより良い格子ローブ削減を有している。このアレイは環状対称であり、奇数のスパイラルがある場合、このアレイは非冗長的である。好ましいスパイラル仕様の実施例は、等面積アニュラスの幾何学的半径方向中心を形成する同心円上のアレイエレメントの位置を、使用される最も高い周波数に対するアレイの効率を強調するように独立して選択された半径を有する最も内側の同心円上の位置に結合する。このアレイは、フェーズド電磁アンテナアレイに対して使用することができる。
【0006】
US2007075889は、より少ないアンテナによって動作するように構成され、それによってコストを大幅に低減した、ミリ波ホログラム映像装置を示している。これは、電磁波を用いる合成映像を含んでおり、この電磁波は、周波数200MHzと1THz間の電磁波を送信するように構成された送信器のリニアアレイと、この送信器からの反射信号を受信するように構成された受信器のリニアアレイとを利用する。少なくとも1個の受信器は、3個またはそれ以上の送信器からの反射信号を受信するように構成されており、少なくとも1個の送信器はオブジェクトに信号を送信するように構成されており、その反射は少なくとも3個の受信器によって受信される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規なアレイアンテナ、このアンテナを有するレーダーシステム、このアンテナに対するエレメントのレイアウトを形成する方法、およびこの方法を実行するための対応のコンピュータプログラムを提供することである。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、1次元または多次元のエレメントアレイを有するアンテナであって、このアレイの少なくとも一部分において、連続するエレメントまたはエレメントグループ間の間隔が非周期的であり、且つ、単位間隔の倍数の数列に対応し、少なくとも4または5のエレメントまたはエレメントグループの前記倍数はフィボナッチ数列に従う、アンテナを提供する。
【0009】
この間隔構成は、送信され或いは受信される信号が単一の固有の方向においてピークを有し従ってビームを形成する一方で、所定の解像度に対して多くのエレメントを削減することを可能とする。このようにして、サイドローブにおいて浪費されるパワーを、かなりのビーム形成能力を有する放射エレメントを使用することにより、低く抑えることが可能で、且つ、エレメント数に依存するコストを低く抑えることができる。更なる効果として、所定の解像度に対して、且つ、所定レベルのサイドローブ削減に対して、開口をより効率的に充填することができる。原理的に、フィボナッチ数列に対応する多くの連続した非周期的間隔を有することは、その他の間隔配置に比べて、所定数のエレメントに対して、異なる2個のエレメント間距離の数を増加させる。さらに多くの異なる距離があれば、よりサイドローブが削減される。さらに、原理的に、フィボナッチ数列に対応する多くの連続する非周期的間隔を有することは、所定の数のエレメントに対して、アンテナベースラインの長さを増加させる。ベースラインが長くなれば成る程、ターゲット上の可能な解像度は良くなる。その結果、必要な数のエレメントを、所定のベースライン長に対して且つ所定レベルのサイドローブに対して減少させることが可能となる。特に、それぞれのエレメントが高価である場合、ノイズを低下させより狭いビーム形状を得るために多数のエレメントを有する従来のアプローチを使用することよりもむしろ、エレメント数を減少させそれぞれのエレメントを最適化するために、この方法は有用である。
【0010】
放射エレメント数を減少させることは、さらに複雑な放射エレメントの使用を可能とする。さらに、かたまって近接した幾つかのエレメントがあり且つ少しのエレメントが充分に離れているので、スペースが限られているアプリケーション(例えば、荷物スペース、乗客スペースまたは窓を妨害することはできない車両)において、同程度のサイズのより規則的な間隔のアレイの場合よりも、エレメントに適した位置を見つけるのが容易となる。
【0011】
本発明の他の観点は、送信または受信のためにこのようなアンテナを有する対応するレーダーシステム、および、このようなアンテナエレメントに対するレイアウトを形成することを含むこのアンテナの対応する製造方法を含む。本発明の実施例は、他の追加の構成を有することができ、このような追加の構成の幾つかは従属項に述べられており、以下により詳細に説明される。全ての追加の構成は共に組み合わせることができ、さらに、全ての観点と組み合わせることができる。当業者、特に他の従来技術の当業者にとって、その他の効果は明らかである。本発明の請求の範囲を逸脱することなく、多くの変更および修正が可能である。従って、本発明の形態は説明のためのみであり、本発明の範囲を限定するものでないことを明確に理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一次元アレイのアンテナエレメントを有する実施例を示す図。
【図2】アンテナ応答を示すグラフ。
【図3】アンテナ応答を示すグラフ。
【図4】アンテナ応答を示すグラフ。
【図5】アンテナ応答を示すグラフ。
【図6】アンテナ応答を示すグラフ。
【図7】一次元アレイのアンテナエレメント数に対するフィボナッチ実施例の稀薄度を示すグラフ。
【図8】二次元フィボナッチ格子を示す図。
【図9】フィボナッチ正方形タイルを導出する段階の概略図。
【図10】フィボナッチ正方形タイルを導出する段階の概略図。
【図11】稀薄度対アレイサイズを示すグラフ。
【図12】レーダーシステムの一実施例。
【図13】クラスタに分割されたアンテナアレイを有する車両とこの車両の衛星位置の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、ある実施例に関して、且つ、ある図面を参照して説明するが、しかし、本発明はこれらに限定されるものでは無く、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は概略的で限定的なものではない。図面において、エレメントの幾つかのサイズは、説明目的のために誇張されており、寸法どおりではない。本明細書と特許請求の範囲において“備える”との用語が使用されているが、これは、その他の部材または段階を排除するものではない。単数名詞として記載された限定または非限定項目が使用された場合、特別に指定されている場合以外はその名詞の複数のものを含む。
【0014】
特許請求の範囲で使用された用語“備える”は、それ以降で列挙された手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、その他の部材または段階を排除しない。従って、表現“手段AおよびBを備える装置”は、部品AおよびBのみからなる装置に限定されるべきではない。これは、本願発明に関して、その装置に関連する部品はAおよびBであることを意味している。
【0015】
さらに、明細書および特許請求の範囲における用語、第1、第2、第3等は、類似の部材間を区別するために使用され、必ずしも順序または時間順を記載するものではない。このように使用された用語は適正な環境下で相互に交換可能であり、ここに記載した発明の実施例は、ここに記載し或いは図示したものとは別の順序で動作可能であることを、理解すべきである。
【0016】
またさらに、明細書および特許請求の範囲における用語、上部、下部、上方、下方等は説明目的のために使用され、必ずしも相互の位置を記載するものではない。このように使用された用語は、適正な環境下で相互に交換可能である、ここに記載した発明の実施例は、ここに記載し或いは図示したものとは別の配置で動作可能であることを、理解すべきである。
【0017】
この明細書を通して、“一実施例”或いは“ある実施例”との言及は、実施例に関連して記載されるある特徴、構造または特性が、本発明の少なくともひとつの実施例に含まれていることを意味する。従って、この明細書全体の種々の場所における語句、“一実施例において”或いは“ある実施例において”の出現は、必ずしも全てが同じ実施例に言及するものでなくても、或いは、そうであっても良い。さらに、ある特徴、構造または特性は、1またはそれ以上の実施例において、当業者にとってこの開示から明らかであるように、全ての適切な方法で組み合わせることができる。
【0018】
同様に、本発明の典型的な実施例の記載において、本発明の種々の特徴は、しばしば1つの実施例、図面またはその説明において、開示を合理化するために、且つ、一またはそれ以上の種々の発明的観点の理解を助けるために、共にグループ化される。この開示の方法は、しかしながら、特許請求の範囲に記載した発明が各請求項に明示的に記載したものより多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明的観点は、上述の一個の開示された実施例の全ての特徴よりも少ないものに存在している。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、各請求項をそれ自身でこの発明の別の実施例として、ここに置いて明示的にこの詳細な説明に組み込まれる。
【0019】
さらに、ここに記載した幾つかの実施例は、他の実施例に含まれる幾つかであるがその他ではない特徴を含む一方で、異なる実施例の特徴の組合せは本発明の範囲内であると意図され、且つ、当業者によって理解されるように、異なる実施例を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求された全ての実施例は、全ての組合せにおいて使用が可能である。
【0020】
ここに提示された記載において、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明の実施例はこれらの具体的な詳細が無くても実施することができることを、理解すべきである。他の事例において、周知の方法、構造および技術は、この記載の理解を妨げないように、詳細には示されていない。
【0021】
レーダーへの言及は、パッシブ型またはアクティブ型のシステムを含むことができ、此処でアクティブとは、環境を照射するために放射光を放射し、環境から反射された放射を検出する全てのレーダーシステムを意味する。受信が放射器に対して位相ロックされていると、放射器は、放射を検出することによって、原理的に受信部分に対して独立している。
【0022】
“サブミリレーダー”は、一般的に、約100GHz以上の周波数を使用する全てのレーダーを含むものと意図され、そしてその事例は、300GHz以上で3THz以下の狭い範囲内で説明され、テラヘルツレーダーとしても知られている。このようなレーダーは、例えば、車両のためのシステム、および例えば周知のように、建築物におけるセキュリティまたは監視システムに応用することができる。
【0023】
エレメント間の間隔(スペース)への言及は、物理的エレメント間の間隔、および規則的または他の物理的間隔に基づいて数学的に合成されたエレメント間の間隔、あるいはこのような物理的および合成エレメントの混合を含むものと意図される。
【0024】
車両への言及は、広く解釈されるべきであり、全てのロボット、ロボット車両、自動誘導車両、路上走行車、船舶、飛行機等に言及することができる。
【0025】
幾つかの実施例によって対処される幾つかの問題の紹介
合成開口の基本的アプローチは、以前に測定されたデータに基づいて“事後的な”解像度を向上させる能力を持って、ターゲットからデータを収集する最も効率的な方法であるため、重要な問題は以下の通りである。
どの程度少ないアンテナエレメントで、全ての形状のSARを達成することができるか。
どのようなタイプのアンテナエレメントが最も適しているか。
これらのアンテナを何処に設置するか。
【0026】
一般に、アレイアンテナは、格子ローブを防止するために、半波長よりも幾分小さいアレイエレメント間の距離を必要とする。このような格子ローブは次のことを発生させる。即ち、このようなアンテナを用いて放射された信号はビームが主に伝搬する方向を複数個有し、且つ、信号がこのようなアンテナによって回収された場合、分離することができない複数の方向がある。従って、ターゲット上で所定の空間解像度を有するアンテナに対して、アンテナローブのサイズは、ターゲット上で解像できる大きさでなくてはならない。このことは、アンテナが一定の開口(アパーチャ)サイズを有する必要があることを暗示しており、このサイズは、アンテナベースラインの長さとしても言及される。
【0027】
次に、アンテナローブの角度幅は単純な図式で与えられる。アンテナの開口サイズに等しい距離に、点状ソースを仮定する。2つのソースは同期して放射する。主ローブの方向から見て(両ソース間のラインに直交する)、2つのソース信号は主ローブの方向に重なる。空間内でアンテナローブが最初にゼロとなる角度は、観測ポイントとポイントソース間の距離の差が半波長に等しくなる角度によって、決定される。
【0028】
開口全体をアンテナエレメントによってカバーしなければならないので、この二つの要求は共に、膨大な量のアンテナエレメントを生じさせる。
【0029】
しかしながら、以下に詳細に説明するように、後者は実際には正しくない。この問題に対する一般的な解決方法を以下に要約する。
【0030】
この問題を解決する最初として、一次元の場合を考察する。差し当たり、水平解像度が重要である。受信アンテナアレイからある距離に配置された信号ソースを仮定する。人は、このソースが何処かをどのようにして一意的に決定することができるのか?フルサイズの開口で測定を行うと、2個の到来信号間の位相が読み上げられる。2Pi(360度)によって整数除算した後の余りのみを測定していることに、留意すべきである。そのため、この一個の位相情報は、ソースが位置しうる方向の一組を与える。それぞれの方向は、測定アンテナエレメント間で全波の整数が欠けていると推定することによって、得られる。もし、この測定結果を、異なる分離距離にある他の2個のアンテナエレメントから得られた結果と結合すると、新しいアンテナペア間の距離が第1の距離と異なるように選択されている場合、殆どの方向を効果的に排除することができる。従って、全ての可能な距離に配置されたアンテナペアを使用して位相距離を測定することが可能なシステムを有することによって、全ての倍数方向の可能性を排除することができる。
【0031】
2個のアンテナエレメント(その1つは、半波長オーダーである)間で最小の距離を選択することによって、アンテナエレメントを直線に沿って不規則な形状に配置することができる。ここで、測定に対して対応可能な最小距離の全ての整数倍に等しい距離を有するアンテナエレメントペアが、常に存在する。従って、このことは、全ての可能な距離を、その上に印刷された測定メモリの最小値で測定することが可能な測定スティックを作り出すという、数学的問題の解決と等価である。
【0032】
図1、実施例の構成への紹介
この問題に対して、フィボナッチシリーズによって与えられたソルーションがある。その欠点は、通常のスティックとは反対に、測定可能な最大距離がスティックの長さによって与えられ、且つ、フィボナッチスティックは通常のスティックよりも長い、と言うことである。
【0033】
フィボナッチシリーズのエレメントは単純なルールによって与えられる。即ち、シリーズの次のエレメントは、以前の2個のエレメントの合計によって与えられる。出発点はシリーズ{1,1}である。第1のエレメントは、始点に配置され、シリーズのもう一つのエレメントが、単位スペースによって与えられるスペース距離で配置される。開始ケースに対して、これは距離1の3個のアンテナエレメントを意味する。次のエレメントは{1,1,2}であり、これは距離2の第4のものが追加された以前の3組のアンテナに至る。4個のエレメントのシリーズは{1,1,2,3}であり、5個のエレメントのシリーズは{1,1,2,3,5}である。最後の1つは、9の例外を除いて、1と12間の全ての距離における既存の測定を可能とする。これらの間隔の事例は、1次元アレイに対して図1に示されている。単一の且つ分離されたギャップは大した問題ではなく、サイドローブノイズの増加に貢献する。一方、サイズ12のアレイをカバーするのに、たった6個のエレメントしか必要としない。6番目のエレメントは、{1,1,2,3,5,8}を与え、追加の値[13,16,18,19,20](9,14,15,17ではない)の測定を可能とする。
【0034】
原則的に、フィボナッチスキームを、連続するエレメントに厳密に適用する必要性はないが、このような純粋なフィボナッチスキームは最も少ないエレメントで最も良い分解能を提供する。従って、例えば、{1,1,2,1,3,1,5,1,8,1,13・・・}のようにフィボナッチ間隔のそれぞれが1個おきの間隔に適用される場合のように、フィボナッチシリーズが中断され厳密に“連続する”エレメントではない代替的な実施例が存在する。これは、グループが単位間隔を有するエレメント対である場合、連続するエレメントグループに適用されるフィボナッチ間隔の一例であると見做すことができる。ここで、原則的にグループ内で、より大きな或いは他の規則的或いは不規則な間隔を有することができる。
【0035】
最善ではない他の代替的な事例では、例えば、{8,3,1,1,2,5,13・・・}のように、フィボナッチ間隔の幾つかを、最初の単位間隔の他の側に移動させたものを含むことができる。エレメント間の距離セットにおいて幾らかの冗長度が導入されるために、その間隔の幾つかをどこかに有することは、放射エレメントの数において計算された分解能を減少させる傾向があり、オブジェクトにおいて分解能がより小さくなる傾向がある。フィボナッチ間隔への言及は、さらに、他のフィボナッチの様な間隔を包含することができる。この他のフィボナッチ様の間隔は、規則的な間隔と比較して2個のエレメント間の異なる距離の数を増加させる点において幾つかの利点を想起させ、且つ、形成することができる。これらの事例の他の例または組合せを想起することができ、且つ、それらを、以下に説明する二次元グリッド或いはアレイの二つの次元の1つに、或いはその両方に適用することができる。
【0036】
フィボナッチシリーズは二つの開始パラメータを必要とし(最も単純な場合、1と1)、従って、第3のエレメント、2、においてのみ意味があり、そのため、これが、均一に間隔を置いたアレイおよび不規則に間隔を置いたアレイ間で差異を与えるエレメントの最小数となる。フィボナッチシリーズは4番目のエレメント3によってより理解されるようになる。
【0037】
幾つかの最適でない事例において、フィボナッチ間隔は、エレメントの少なくとも50%またはエレメントの少なくとも70%に対して提供することができる。高い信号効率が重要ではない場合、SARアプリケーションに対する必要性が殆どない場合、または放射エレメントのそれぞれに対して充分なスペースを持つことが望まれる場合、または放射エレメントを100個または1000個設けるためのコストが余りに高額である場合、アンテナのベースラインは放射エレメントによって稀薄に充填されることのみが必要である。
【0038】
個々のエレメントはより低いノイズとより良い事前アンテナパターンを得るように最適化され得るので、実施例では、可能な限り少ないエレメントによる、可能な限り多くの直交データの測定を可能とする。これは、ノイズ削減のために複数(例えば>100)の位相結合エレメントを使用することが可能ではない、或いは実際的でない場合のアプリケーションに対して、有用である。
【0039】
本発明の幾つかの実施例は、2個の主軸を有する二次元アレイを有し、且つ数列に対応する間隔は少なくともその主軸の一個に沿って現れる。数列に対応する間隔は、フィボナッチ格子を形成するために、主軸の両方に沿って現れても良い。単位間隔は、半波長の2倍の平方根として選択することが可能である。これによって、最も稀薄に分布した方向が少なくとも半波長の間隔を有することを可能とし、それによって、単位間隔を減少させ過ぎることなく、格子ローブを回避することを可能とする。
【0040】
アンテナの幾つかの実施例は、二次元アレイを有することが可能で、この場合、数列に対応する間隔はらせんを形成するラインに沿って現れる。これは、他のものよりもさらに稀薄に分布したアレイを横断する方向を有することの回避を、支援する。最終的には、二次元フィボナッチ正方形タイルとして配置されたアレイを有する実施例が、希薄さと、最少数のエレメントを有しながら、異なる方向における希薄さの不均一性を回避することとの間で、最適なトレードオフを提供することができる。
【0041】
他の実施例では、数列に対応する間隔がアレイに沿って現れる、一次元アレイを有することができる。幾つかの実施例は、サブミリ波信号の使用に適するように構成されている。幾つかは、120mmから1200mmの範囲の開口を有し、その効果は200mmから800mmの範囲内でより大きくなり、且つ、幾つかのアプリケーションは400mmプラスまたはマイナス50mmの範囲が適切である。幾つかの実施例は、送信アンテナまたは受信アンテナとして、上記の何れかの実施例のアンテナを有する、サブミリ波レーダーシステムを含む。このレーダーシステムは車両に組み込むことができる。
【0042】
幾つかの実施例は、アンテナを製造する方法を含み、この方法は、所望の波長に基づいて単位スペースを決定すること、および、アレイの少なくとも一部分の連続するエレメント間の間隔を非周期的に、且つ、フィボナッチ数列に続く複数の単位間隔のシリーズに対応するように決定することによって、エレメントの一次元または多次元アレイを形成するために、アンテナエレメントの間隔を決定する、準備段階を有する。
【0043】
フィボナッチアレイの欠点は、信号から受信するパワーの総量が、充填アレイに比べて、充填因子に等しい因子(ファクタ)だけ低い、と言う事実である。一方、これらの僅かな受信エレメントを最適値まで改善することによって、リソースをより知的に使用することができる。エレメントの規則的な間隔を有する通常のSARレーダーに対して、アンテナエレメントは、非常に広いエレメント放射ローブによって非常にシンプルに維持されている。受信アンテナに対する本発明の実施例において、照明信号をより効率的に捕獲するために、適度に狭いローブを持ったエレメントを代わりに用いることができる。何故なら、照明信号は非常に少ないアンテナエレメントのみによって検出される必要があるため。
【0044】
図2〜6:アンテナ応答パターン
4分の1波長の規則的間隔で配置された例えば400のアンテナエレメントを有する伝統的なレーダーシステムを設定することによって、図2に示すような、10000波長の距離におけるアンテナ応答パターンが、結果として得られる。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上で、アンテナあたりの信号強度を示している。
【0045】
フィボナッチ距離に4分の1波長の単位間隔を掛け合わせた場所に配置された、14個のエレメント(400の代わりに)を有するフィボナッチ間隔レーダーシステムによって、同じ分解能を達成することができる。10000波長の距離におけるその結果のアンテナ応答パターンを、図3に示す。フィボナッチレーダーと伝統的なレーダーの物理的(開口)サイズは同じである。アンテナパターンの3dBピーク幅は、その二つのケースについて同じである。
【0046】
0.5波長の単位間隔における配置に対して、類似の図を得ることができる。これは、サイドローブを回避するために、伝統的アレイ配置に対して絶対的な最大値である(図4および5参照)。図6は、比較のためにフィボナッチケースと同じアンテナエレメント数を使用した、伝統的な等距離レーダーに対する結果を示している。
【0047】
図4は、0.25波長距離における等距離間隔レーダーアンテナエレメントに対する、アンテナ応答パターンを示す。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上での、アンテナあたりの信号強度を示している。状況が異なっているのでこのグラフは図2とは異なっており、プロットは、全信号強度ではなく、使用された放射エレメント当たりの信号強度を表している。
【0048】
図5は、16個のアンテナエレメントを使用する、0.25波長のベース距離を有するレーダーシステムに対する、フィボナッチシリーズベースのアンテナ配置に対する、アンテナ応答パターンを示している。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上の、エレメント当たりの信号強度を示している。このグラフは、センターラインに1個のピークを示す。
【0049】
図6は、フィボナッチシステムと同じ数のアンテナエレメントを使用する、等距離レーダーアンテナに対するアンテナ応答パターンを示す。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上の、アンテナ当たりの信号強度を示す。
【0050】
上記を要約すると、ほんの少しの数のアンテナエレメントのみで、伝統的なSARレーダーと同じ分解能を達成することが可能である。欠点は、勿論、このようなレーダーシステムのサンプリング領域が使用したアンテナエレメントの数に比例するということである。ソースと受信器が不足し且つビーム分割によって異なるアンテナエレメントを生成しなければならないシステムを使用すると、フィボナッチシステムの効率は伝統的な場合よりも高くなる。LOパワーの使用量は、かなり改善される。しかしながら、指摘したように、信号レベルは低い。
【0051】
図7.必要なアンテナエレメントの割合
原理的に、いくつのアンテナエレメントが節約できるか?
Binetの式から、フィボナッチシリーズのエレメントは、閉形式表現によって得ることができる。
【数1】
【0052】
長さFnの充填アレイに対して、Fnアンテナエレメントが必要である。対応するフィボナッチアレイに対して、n個のアンテナエレメントのみが必要である。従って、アレイ長の関数として必要なアンテナエレメントの割合(充填ケースに対するアンテナエレメント数において)は、図7に示されている。これは、フル実装アレイと比較して、1次元フィボナッチアンテナに対するアレイ希薄性のグラフを示す。
【0053】
図7において、且つ、100アンテナエレメントの充填アレイを仮定すると、0.1よりも僅かに小さい希薄性に到達し、これは、フィボナッチアレイにおいて10アンテナエレメントよりも少ない使用量を暗示している。2次元ケースを検討すると、以下に説明するように、格子とタイルの2つのソリューションがある。
【0054】
図8:2Dフィボナッチ格子
これは、フィボナッチシリーズのシリーズエレメントが軸上にマークされている、2次元平面を仮定することによって、得られる。これは、一次元ケースに対応する。ところで、全ての点は、xおよびy座標の両者の値がフィボナッチシリーズのシリーズエレメントである。これは、所定の領域が、最も大きなフィボナッチ数の積で適合された、構造を生じる。このようなアレイ構造は、幾らかの分散を受ける:座標軸に平行でない直線に沿って、すぐ傍のアンテナ位置の距離は一般に、座標軸上の場合よりも一般に大きい。アンテナエレメントを座標軸に沿って最大の距離に配置することによって、より波なれて追加された全ての距離に沿って、格子ローブが存在する。フィボナッチ格子は、アンテナエレメント間の間隔が半波長の0.707(2の平方根)に選択された場合、非常に良いソリューションである。従って、最も希薄に装着された方向(45度)であっても、格子ローブを示さない。
【0055】
このようなアレイを図8に示す。座標軸に沿ったアンテナの場所はグレイに影がつけられており、より黒い場所は、アンテナエレメントを配置すべき追加の点を示している。
【0056】
一方の側に沿ったFnアンテナエレメントの伝統的な充填2Dアレイは、(Fn+1)2のアンテナを必要とするが、一方、フィボナッチ2Dアレイは単純に(n+1)2アンテナエレメントを必要とする。とにかくフル(正方形)アレイにおいて必要とされるアンテナエレメントの数の関数として、アンテナエレメント数の節約が、図11の上部ドットラインに示されている。
【0057】
それにも関わらず、アンテナエレメントを、より経済的であることに加えて分散効果を示さない、2次元ケースに配置するより良い方法が存在する。
【0058】
図9および10:2Dフィボナッチ正方形タイル
図9は、異なるサイズの正方形を追加することによって生成された、連続するパターンに関する、誘導図を示している。図10は、正方形のコーナーにおけるアンテナエレメント位置を示す、類似の連続図を示し、この場合、各正方形がエレメントグループの一例を形成する。両ケースにおいて、正方形の中心を結ぶラインはらせん軌道をたどる。フィボナッチ1Dアレイの場合のように、誘導は、フィボナッチシリーズの第1エレメント(即ち、1)から開始される。さて、エレメントグループは、正方形タイルの開始点において、単位辺長を伴う正方形に配置される。次のステップとして、エレメントの第2のグループが、フィボナッチシリーズの第2の数(再度、1)に対応する間隔で配置される。このことは、この単位辺長を有する正方形を第1の正方形の傍らに配置することを意味する。2×1のサイズの長方形が形成される。次に、第3のシリーズエレメントによって与えられた辺長を有する正方形が、長方形の長辺に沿って配置される。この長辺は以前の2個のフィボナッチエレメントの追加された長さからなっているので、追加すべきエレメントは、この場所に常に適合する。このアレイは常に長方形である(n番目のステップに対して、FnおよびFn-1の辺長を有する)。
【0059】
一辺に沿ったFn×Fn-1アンテナエレメントの伝統的充填2D長方形アレイは、以前のケースと同様に、(Fn+1)(Fn-1+1)2アンテナエレメントを必要とする。フィボナッチ正方形タイルは、第1のステップに対して4個のアンテナエレメントを必要とし、その後、繰り返し毎にさらに2個を必要とし、その結果、2+2nとなる。その一方、フィボナッチ2Dアレイは、依然として(n+1)2アンテナエレメントを必要とする。フル(正方形)アレイにおいて必要とされるアンテナエレメント数の関数として、フィボナッチタイルに対するアンテナエレメントの数における節約は、図11における下方のドットラインとして示されている。これは、同じサイズの充填長方形アレイにおけるアンテナエレメント数の割合として装着される、アンテナエレメントの数を示している。
【0060】
オブジェクト上でのある程度の分解能要求に対して、回折によって、放射または受信エレメントによってカバーされるべき開口サイズの下限が設定される。単一の方向における分解能を確保するために、格子ローブを回避すべきである。アンテナエレメント間の距離が半波長を越えた場合に、常に格子ローブが発生する。従って、伝統的なレーダーシステムは、開口表面を完全に充填するために、非常に多くのアンテナエレメントで構成されている。
【0061】
自動車用アプリケーションに対して、オブジェクト上の分解能は、400mmの範囲の開口サイズを暗に示している。300GHzを超える周波数を使用することによって、その波長は1mmとなる。従って、伝統的なSARレーダーは、全ての要求に答えるために、400×400以上のアンテナエレメント使用しなければならない。このようなシステムは、余りにも高価で且つ重いため、車両上では実現することができない。フィボナッチタイルを使用することによって、42アンテナエレメントを用いてオブジェクト上に同じ分解能を達成することができる。
【0062】
伝統的なシステムでは、間隔要求(距離0.5mm)が、旧式のアンテナエレメントのみを使用可能であることを暗示している。これらのアンテナは非常に低いアンテナ利得を有している(<10dB)。フィボナッチタイルを使用すると、アンテナエレメント間により大きな間隔が存在し、そのため、アンテナ利得が30dBを超えるより大きなアンテナエレメントを前向きに使用することができる。SARエレメントよりも大きい利得35dBを持ったアンテナエレメントを使用することで、収集された信号強度は伝統的な充填アレイSARレーダーと同じになる。
【0063】
フィボナッチの1Dアレイと2Dタイルは、開口上に全ての独立した情報を収集するための最適な方法である。フィボナッチの1Dアレイまたはフィボナッチの2Dタイルよりも少ないアンテナエレメントを使用して、位相および振幅情報を完全にカバーする方法は存在しない。アレイエレメントが半波長の距離に配置された場合に、フィボナッチの2Dタイルが、分散(即ち、ある方向における格子ローブ)を持たない唯一の2Dアレイである。
【0064】
充填アレイにおいて、アンテナエレメントのサイズは、約半波長であるアンテナ間隔を越えてはならない。従って、低い効率を有する小さなアンテナエレメントのみが使用できる。フィボナッチのアプローチでは、非常に少ないアンテナエレメントが必要とされる。従って、アレイは非常に希薄に存在し、高効率のアンテナエレメントを使用する空間を提供する。ここで、1個のアンテナエレメントはそのサイズにおいて数波長分となる。
【0065】
フィボナッチのアプローチを使用した場合、アンテナエレメント数の節約分は非常に大きくなる。これらのアレイは、完全に充填されたアレイと同じ空間分解能を有していることに、注意すべきである。SARアレイに比べて小さい、信号の収集領域(即ち、全アンテナエレメントの収集サイズの合計)は、まさにアンテナ節約因子である。しかし、非常に限られた数のアンテナエレメントのみが必要なので、非常に大きな収集領域とより高い効率とを有するアンテナエレメントを使用することができる。このことは、サブミリ波アプリケーションに対して特に有用である。何故なら、受信器用の電子回路は非常に高価であるため、このような電子回路を必要するコピーの数が、主なコスト推進要因であるから。従って、非常に高いビーム効率を有するより精巧なアンテナエレメントを使用し、充填アレイの物理的サイズよりも大きなネットの収集領域を形成すべきである。
【0066】
サブミリ波の波長においてビーム形成能力を有するエレメントに対して適切な形状は、例えば、ホーンアンテナ、波形ホーンアンテナ、微小反射体アンテナまたは、ホーンと誘電体レンズの組合せである。これらのアンテナ形状を使用して、非常に希薄なアレイにおける各エレメントのサイズはもはや半波長に限定されないことを考慮し、与えられたエレメントサイズに対して利用可能な、最適なビーム形状に到達することができる。この概念は、電波天文学におけるVLBIアプローチ(very long base line interferometry、非常に長いベースラインを有する干渉分光法)に似ている。ここでは、参加天文台の位置を選ぶことができず、実現し得る最高のアンテナを用いて取ったまとまったデータから“一番いいもの”を得る必要がある。参照文献:THzホーンアンテナに対して、例えば、http://www.virginiadiodes.com/ +ISSTTプロシーディングス(1997年より、毎年)参照。VLBIに対しては、例えば、http://www.evlbi.org/参照。
【0067】
図12、13:システム図
図12は、ローカル発振器100によって供給される送信器ドライバ85によって駆動される、送信アンテナ80を有するレーダーシステムの一例を示す。送信によってオブジェクト(物体)70を照射し、受信アンテナ90によってその反射を受信する。この受信信号は、受信器回路95に供給され、次に、復調器110に供給される。これによって、送信器に対して使用された発振器に関係する、或いは独立した、ローカル発振器信号の利用が可能となる。これらの部分85および95は、一般的な回路を使用して、位相および振幅を扱い、そして、これらの部品を変調しまたは復調するために処理し、使用された特定のアンテナエレメント間隔に適合させる。
【0068】
タイルのアンテナエレメントの位置は車両全体に広がっていても良い。この車両は、例えば、図13に一例を示す自動車である。図13は、自動車30、密集したエレメントのクラスタ40、および、複数のより間隔を置いてはなれたエレメント20を示している。フィボナッチタイルのアンテナエレメントは、上記で議論したタイル正方形のコーナーに沿って配置されている。ベース長(ここでは、例えば、0.4mm)の規模に依存して、且つ、アンテナ製造技術に依存して、アンテナエレメントは2個かそれ以上のカテゴリー、例えば、図13に示すように、クラスタ部分および1個またはそれ以上の衛星部分、に分けることができる。
【0069】
クラスタ部分は、フィボナッチ反復が開始される点の周辺である。ここで、互いに非常に密接して配置されたアンテナエレメントが存在する。最初の8から20アンテナエレメントは、全てのアンテナエレメントに対して共通のレンズを使用する1個の基板上に結合させることができる。
【0070】
残りのアンテナエレメントは衛星部分を構成する。これらの部分は、クラスタユニットから同等に離れており、且つ、これらの個々のアンテナエレメントは車両上に任意に配置されている。衛星との相互作用およびデータ転送は、例えばオプティカルファイバを用いて行われる。これは、TIIz信号を、このような遠くまで大量の損失を伴わず電気ドメインによって輸送することができないためである。
【0071】
アンテナの実際のタイプと周波数に依存して、アンテナエレメントのより小さい或いはより大きい部分が、クラスタの部分であり得る。クラスタからの距離はフィボナッチ数が増加するにつれて増加するので、開口領域の大きな割合が実質的に空である。このことは、アンテナエレメントを車両上へ配置することを促進する。なお、車両上では、多くの領域をアンテナエレメント位置として使用することができない。
【0072】
同じアンテナエレメントが使用される限りにおいて、信号対ノイズ比は、フィボナッチアレイの方が充填ケースに比べてかなり悪い。伝統的な充填アレイにおけるアンテナタイプの選択は、低コストによって且つ非常に小さな外側アンテナ寸法によって決定される。フィボナッチアレイは希薄であり、そのためより効率的なアンテナエレメントが使用される。これらを使用することによって、莫大なコスト削減を伴って、信号対ノイズ比を充填ケースと同レベルとなし得る。
【0073】
オブジェクト上の空間分解能は影響されない。得られた映像のコントラストを減少させる充填ビームに比べて、フィボナッチビームの高いショルダーによって引起される、僅かに有害な効果が存在する。
【0074】
ビームのショルダーはより大きいので、雪および雨による減衰の積分は、雨および雪の減衰の影響を効果的に減少させる、より大きな領域を含んでいる。結局、上記のコントラスト損失は、雨および雪に対する能力の増加によって、相殺される。
【0075】
(所定のベースエレメント距離の)2Dアレイは、任意の入射方向に対して投影された場合、全てのフィボナッチ数に特性長を掛けたものに対応する、全ての距離を含んでいることに注意しなければならない。その結果、投影された特性長は、入射方向に対する特性長ベクトルの投影のより長いものによって与えられる(2Dアレイ上の第1シード正方形によって与えられる、両座標方向において)。従って、2Dアレイは、全ての入射方向に対して、1Dアレイと同じ復元特性を有している。
【0076】
このことから、多くの特性がもたらされる。
a):上記で述べたように、所定の到来方向下で投影された場合、全ての2Dアレイは1Dアレイとして見えるため、1Dアレイに言及することは一般性の喪失に関係しない。
b):方向ベクトルを解くことを可能とする全ての必要な位相差測定を我々は得ているので、1Dアレイのベースラインを含む面に位置するターゲット方向を抽出するためのツールとして、1Dアレイは役立つ。到来ベクトルの方向に対して1Dアレイベース正方形サイズの投影が半波長よりも小さい場合、且つ、その時に限り、このソリューションは一意的である。
c):その結果、ターゲット方向の抽出が3Dにおける任意の方向に対して要求される場合、2Dアレイは単に1Dアレイの延長であり、その結果、到来ベクトルの方向に対して1Dアレイベース正方形サイズの投影が半波長よりも小さい場合、且つ、その時に限り、このソリューションは一意的である。
【0077】
さらに、以下も特筆すべきである。
1:周期的アレイに比べて顕著な結果を与えることを確実にするために、2Dアレイは少なくとも7個のアンテナまたはアンテナグループを有するべきであるが、その一方で、1Dアレイは少なくとも4アンテナまたはアンテナグループを有することができる。
2:所定の周波数(従って波長)に対して、シード正方形(2Dアレイ)[シードライン(1Dアレイ)]のベース長が半波長よりも小さい場合にのみ、方向検索は一意のソリューションを与える。これは、アレイにおいて格子ローブを回避するための既知の規則である。
【0078】
他の変形も、特許請求の範囲内で想定可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイアンテナ、このアンテナを備えるレーダーシステム、このアンテナのためのエレメントのレイアウトを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダー(SAR)技術は、大きなアレイの利用を伴う。個々のアレイエレメントは、位相及び振幅において個々に制御することができる。この目的によって、一連の、例えば、位相遅延が全てのアンテナエレメント中にプログラムされ、且つ、その結果として生じる測定値が更なる処理のために記憶される。SAR法の強さは、位相セットが充分であったと仮定して、全ての種類のビーム形状がその後合成されることができること、即ち、特定のビームパターンを有する特定のタイプのアンテナを用いて測定されたデータを再構成することができる、と言う事実にある。SARは、レーダーシステムが、何らの機械的移動部分を有さずにターゲットを追跡し、且つ、同時に数個のターゲットを追跡することができるように、発明された。一般的なSARアプリケーションに必要なアンテナエレメントの数は、2D映像装置に対して、100〜1000個の範囲である。マイクロ波周波数を使用すると、1個のSARエレメントはそれ程費用がかからず、マイクロ波信号の生成、輸送及び配布(及び収集)は安価であり、全ての種類の配列とトポロジーに対して多くの低損失ソリューションが存在する。この状況は、サブミリ波レーダーにおいて完全に異なっている。サブミリ波レーダーに対して、信号パワーを生成するための安価で効率的な方法は存在せず、数百の波長に渡ってパワーを効率的に輸送する何らの方法も存在しない(これらの周波数のための導波管は製造に費用がかかり、曲げは難しく、ケーブルは役立たず、マイクロストリップ/ストリップライン/共通平面導波管技術は、良いがおよび/または高い損失を有するアンテナのみを生じさせるが、しかし、これら全ては100GHz以上で優れた送信ラインではない)。
【0003】
EP807990B1(ボーイングCy)は、規則的なアレイに固有の格子ローブ問題に対処する方法を提供するために、この技術分野において、不規則アレイが知られていると記載しており、その理由として、不規則アレイはエレメント位置における周期性を取り除くと述べている。ランダムアレイは、最悪ケースのサイドローブを期待通りに制御する能力において限られている。アレイエレメント位置を制御できる場合、最悪ケースのサイドローブをさらに期待通りに制御することが可能なエレメント配置を決定するために、あるアルゴリズムを使用することができる。従来技術は不規則に間隔をおいた線形アレイの多くの事例を含んでおり、この線形アレイの多くは非冗長的、即ち、全ての所定エレメントペア間に間隔が無いことが、繰り返されている。非冗長性は、格子ローブを制御することに関して、アレイ設計に最適化の度合いを提供する。
【0004】
EP807990B1はさらに、不規則平面アレイの設計のための従来技術は、大きくアドーホックであると述べている。非冗長性平面アレイの単純な事例は従来技術において殆ど存在しない。このアレイでは、比較的少ないエレメント数しか存在しないか、または、円の周辺のような単純化されたエレメント分布であるような、非冗長性平面アレイの単純な事例が、従来技術においてほんの少し存在する。非冗長性および円対称を確実とするための制限下で、任意数のエレメントをアレイ開口を通して分散して配置する(周辺のみとは異なって)ための、非冗長性平面アレイ設計技術に、従来技術は無関心であるように見える。
【0005】
周波数の広い範囲に亘って格子ローブが実質的に存在しない平面アレイ設計を提案し続けるが、この場合、利用可能なエレメント数は、ソースマップまたは投射ビームにおける格子ローブ汚染を排除するために通常必要とされる半波長基準に合致するエレメント間間隔を有する規則的(即ち、等間隔エレメント)アレイを形成するために必要な数よりも、実質的に少ない。これは、同一の対数スパイラルセットに沿って種々のアーク長と半径上に間隔を置いた、検知または送信エレメントの平面アレイを提供することによって達成され、ここで、スパイラルセットの一部は、始点の周りに等角度に間隔を置いており、均一に分散されたエレメントを有するアレイまたはランダムアレイよりも、下側の最悪のサイドローブと周波数の広い範囲にわたってのより良い格子ローブ削減を有している。このアレイは環状対称であり、奇数のスパイラルがある場合、このアレイは非冗長的である。好ましいスパイラル仕様の実施例は、等面積アニュラスの幾何学的半径方向中心を形成する同心円上のアレイエレメントの位置を、使用される最も高い周波数に対するアレイの効率を強調するように独立して選択された半径を有する最も内側の同心円上の位置に結合する。このアレイは、フェーズド電磁アンテナアレイに対して使用することができる。
【0006】
US2007075889は、より少ないアンテナによって動作するように構成され、それによってコストを大幅に低減した、ミリ波ホログラム映像装置を示している。これは、電磁波を用いる合成映像を含んでおり、この電磁波は、周波数200MHzと1THz間の電磁波を送信するように構成された送信器のリニアアレイと、この送信器からの反射信号を受信するように構成された受信器のリニアアレイとを利用する。少なくとも1個の受信器は、3個またはそれ以上の送信器からの反射信号を受信するように構成されており、少なくとも1個の送信器はオブジェクトに信号を送信するように構成されており、その反射は少なくとも3個の受信器によって受信される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規なアレイアンテナ、このアンテナを有するレーダーシステム、このアンテナに対するエレメントのレイアウトを形成する方法、およびこの方法を実行するための対応のコンピュータプログラムを提供することである。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、1次元または多次元のエレメントアレイを有するアンテナであって、このアレイの少なくとも一部分において、連続するエレメントまたはエレメントグループ間の間隔が非周期的であり、且つ、単位間隔の倍数の数列に対応し、少なくとも4または5のエレメントまたはエレメントグループの前記倍数はフィボナッチ数列に従う、アンテナを提供する。
【0009】
この間隔構成は、送信され或いは受信される信号が単一の固有の方向においてピークを有し従ってビームを形成する一方で、所定の解像度に対して多くのエレメントを削減することを可能とする。このようにして、サイドローブにおいて浪費されるパワーを、かなりのビーム形成能力を有する放射エレメントを使用することにより、低く抑えることが可能で、且つ、エレメント数に依存するコストを低く抑えることができる。更なる効果として、所定の解像度に対して、且つ、所定レベルのサイドローブ削減に対して、開口をより効率的に充填することができる。原理的に、フィボナッチ数列に対応する多くの連続した非周期的間隔を有することは、その他の間隔配置に比べて、所定数のエレメントに対して、異なる2個のエレメント間距離の数を増加させる。さらに多くの異なる距離があれば、よりサイドローブが削減される。さらに、原理的に、フィボナッチ数列に対応する多くの連続する非周期的間隔を有することは、所定の数のエレメントに対して、アンテナベースラインの長さを増加させる。ベースラインが長くなれば成る程、ターゲット上の可能な解像度は良くなる。その結果、必要な数のエレメントを、所定のベースライン長に対して且つ所定レベルのサイドローブに対して減少させることが可能となる。特に、それぞれのエレメントが高価である場合、ノイズを低下させより狭いビーム形状を得るために多数のエレメントを有する従来のアプローチを使用することよりもむしろ、エレメント数を減少させそれぞれのエレメントを最適化するために、この方法は有用である。
【0010】
放射エレメント数を減少させることは、さらに複雑な放射エレメントの使用を可能とする。さらに、かたまって近接した幾つかのエレメントがあり且つ少しのエレメントが充分に離れているので、スペースが限られているアプリケーション(例えば、荷物スペース、乗客スペースまたは窓を妨害することはできない車両)において、同程度のサイズのより規則的な間隔のアレイの場合よりも、エレメントに適した位置を見つけるのが容易となる。
【0011】
本発明の他の観点は、送信または受信のためにこのようなアンテナを有する対応するレーダーシステム、および、このようなアンテナエレメントに対するレイアウトを形成することを含むこのアンテナの対応する製造方法を含む。本発明の実施例は、他の追加の構成を有することができ、このような追加の構成の幾つかは従属項に述べられており、以下により詳細に説明される。全ての追加の構成は共に組み合わせることができ、さらに、全ての観点と組み合わせることができる。当業者、特に他の従来技術の当業者にとって、その他の効果は明らかである。本発明の請求の範囲を逸脱することなく、多くの変更および修正が可能である。従って、本発明の形態は説明のためのみであり、本発明の範囲を限定するものでないことを明確に理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一次元アレイのアンテナエレメントを有する実施例を示す図。
【図2】アンテナ応答を示すグラフ。
【図3】アンテナ応答を示すグラフ。
【図4】アンテナ応答を示すグラフ。
【図5】アンテナ応答を示すグラフ。
【図6】アンテナ応答を示すグラフ。
【図7】一次元アレイのアンテナエレメント数に対するフィボナッチ実施例の稀薄度を示すグラフ。
【図8】二次元フィボナッチ格子を示す図。
【図9】フィボナッチ正方形タイルを導出する段階の概略図。
【図10】フィボナッチ正方形タイルを導出する段階の概略図。
【図11】稀薄度対アレイサイズを示すグラフ。
【図12】レーダーシステムの一実施例。
【図13】クラスタに分割されたアンテナアレイを有する車両とこの車両の衛星位置の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、ある実施例に関して、且つ、ある図面を参照して説明するが、しかし、本発明はこれらに限定されるものでは無く、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は概略的で限定的なものではない。図面において、エレメントの幾つかのサイズは、説明目的のために誇張されており、寸法どおりではない。本明細書と特許請求の範囲において“備える”との用語が使用されているが、これは、その他の部材または段階を排除するものではない。単数名詞として記載された限定または非限定項目が使用された場合、特別に指定されている場合以外はその名詞の複数のものを含む。
【0014】
特許請求の範囲で使用された用語“備える”は、それ以降で列挙された手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、その他の部材または段階を排除しない。従って、表現“手段AおよびBを備える装置”は、部品AおよびBのみからなる装置に限定されるべきではない。これは、本願発明に関して、その装置に関連する部品はAおよびBであることを意味している。
【0015】
さらに、明細書および特許請求の範囲における用語、第1、第2、第3等は、類似の部材間を区別するために使用され、必ずしも順序または時間順を記載するものではない。このように使用された用語は適正な環境下で相互に交換可能であり、ここに記載した発明の実施例は、ここに記載し或いは図示したものとは別の順序で動作可能であることを、理解すべきである。
【0016】
またさらに、明細書および特許請求の範囲における用語、上部、下部、上方、下方等は説明目的のために使用され、必ずしも相互の位置を記載するものではない。このように使用された用語は、適正な環境下で相互に交換可能である、ここに記載した発明の実施例は、ここに記載し或いは図示したものとは別の配置で動作可能であることを、理解すべきである。
【0017】
この明細書を通して、“一実施例”或いは“ある実施例”との言及は、実施例に関連して記載されるある特徴、構造または特性が、本発明の少なくともひとつの実施例に含まれていることを意味する。従って、この明細書全体の種々の場所における語句、“一実施例において”或いは“ある実施例において”の出現は、必ずしも全てが同じ実施例に言及するものでなくても、或いは、そうであっても良い。さらに、ある特徴、構造または特性は、1またはそれ以上の実施例において、当業者にとってこの開示から明らかであるように、全ての適切な方法で組み合わせることができる。
【0018】
同様に、本発明の典型的な実施例の記載において、本発明の種々の特徴は、しばしば1つの実施例、図面またはその説明において、開示を合理化するために、且つ、一またはそれ以上の種々の発明的観点の理解を助けるために、共にグループ化される。この開示の方法は、しかしながら、特許請求の範囲に記載した発明が各請求項に明示的に記載したものより多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明的観点は、上述の一個の開示された実施例の全ての特徴よりも少ないものに存在している。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、各請求項をそれ自身でこの発明の別の実施例として、ここに置いて明示的にこの詳細な説明に組み込まれる。
【0019】
さらに、ここに記載した幾つかの実施例は、他の実施例に含まれる幾つかであるがその他ではない特徴を含む一方で、異なる実施例の特徴の組合せは本発明の範囲内であると意図され、且つ、当業者によって理解されるように、異なる実施例を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求された全ての実施例は、全ての組合せにおいて使用が可能である。
【0020】
ここに提示された記載において、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明の実施例はこれらの具体的な詳細が無くても実施することができることを、理解すべきである。他の事例において、周知の方法、構造および技術は、この記載の理解を妨げないように、詳細には示されていない。
【0021】
レーダーへの言及は、パッシブ型またはアクティブ型のシステムを含むことができ、此処でアクティブとは、環境を照射するために放射光を放射し、環境から反射された放射を検出する全てのレーダーシステムを意味する。受信が放射器に対して位相ロックされていると、放射器は、放射を検出することによって、原理的に受信部分に対して独立している。
【0022】
“サブミリレーダー”は、一般的に、約100GHz以上の周波数を使用する全てのレーダーを含むものと意図され、そしてその事例は、300GHz以上で3THz以下の狭い範囲内で説明され、テラヘルツレーダーとしても知られている。このようなレーダーは、例えば、車両のためのシステム、および例えば周知のように、建築物におけるセキュリティまたは監視システムに応用することができる。
【0023】
エレメント間の間隔(スペース)への言及は、物理的エレメント間の間隔、および規則的または他の物理的間隔に基づいて数学的に合成されたエレメント間の間隔、あるいはこのような物理的および合成エレメントの混合を含むものと意図される。
【0024】
車両への言及は、広く解釈されるべきであり、全てのロボット、ロボット車両、自動誘導車両、路上走行車、船舶、飛行機等に言及することができる。
【0025】
幾つかの実施例によって対処される幾つかの問題の紹介
合成開口の基本的アプローチは、以前に測定されたデータに基づいて“事後的な”解像度を向上させる能力を持って、ターゲットからデータを収集する最も効率的な方法であるため、重要な問題は以下の通りである。
どの程度少ないアンテナエレメントで、全ての形状のSARを達成することができるか。
どのようなタイプのアンテナエレメントが最も適しているか。
これらのアンテナを何処に設置するか。
【0026】
一般に、アレイアンテナは、格子ローブを防止するために、半波長よりも幾分小さいアレイエレメント間の距離を必要とする。このような格子ローブは次のことを発生させる。即ち、このようなアンテナを用いて放射された信号はビームが主に伝搬する方向を複数個有し、且つ、信号がこのようなアンテナによって回収された場合、分離することができない複数の方向がある。従って、ターゲット上で所定の空間解像度を有するアンテナに対して、アンテナローブのサイズは、ターゲット上で解像できる大きさでなくてはならない。このことは、アンテナが一定の開口(アパーチャ)サイズを有する必要があることを暗示しており、このサイズは、アンテナベースラインの長さとしても言及される。
【0027】
次に、アンテナローブの角度幅は単純な図式で与えられる。アンテナの開口サイズに等しい距離に、点状ソースを仮定する。2つのソースは同期して放射する。主ローブの方向から見て(両ソース間のラインに直交する)、2つのソース信号は主ローブの方向に重なる。空間内でアンテナローブが最初にゼロとなる角度は、観測ポイントとポイントソース間の距離の差が半波長に等しくなる角度によって、決定される。
【0028】
開口全体をアンテナエレメントによってカバーしなければならないので、この二つの要求は共に、膨大な量のアンテナエレメントを生じさせる。
【0029】
しかしながら、以下に詳細に説明するように、後者は実際には正しくない。この問題に対する一般的な解決方法を以下に要約する。
【0030】
この問題を解決する最初として、一次元の場合を考察する。差し当たり、水平解像度が重要である。受信アンテナアレイからある距離に配置された信号ソースを仮定する。人は、このソースが何処かをどのようにして一意的に決定することができるのか?フルサイズの開口で測定を行うと、2個の到来信号間の位相が読み上げられる。2Pi(360度)によって整数除算した後の余りのみを測定していることに、留意すべきである。そのため、この一個の位相情報は、ソースが位置しうる方向の一組を与える。それぞれの方向は、測定アンテナエレメント間で全波の整数が欠けていると推定することによって、得られる。もし、この測定結果を、異なる分離距離にある他の2個のアンテナエレメントから得られた結果と結合すると、新しいアンテナペア間の距離が第1の距離と異なるように選択されている場合、殆どの方向を効果的に排除することができる。従って、全ての可能な距離に配置されたアンテナペアを使用して位相距離を測定することが可能なシステムを有することによって、全ての倍数方向の可能性を排除することができる。
【0031】
2個のアンテナエレメント(その1つは、半波長オーダーである)間で最小の距離を選択することによって、アンテナエレメントを直線に沿って不規則な形状に配置することができる。ここで、測定に対して対応可能な最小距離の全ての整数倍に等しい距離を有するアンテナエレメントペアが、常に存在する。従って、このことは、全ての可能な距離を、その上に印刷された測定メモリの最小値で測定することが可能な測定スティックを作り出すという、数学的問題の解決と等価である。
【0032】
図1、実施例の構成への紹介
この問題に対して、フィボナッチシリーズによって与えられたソルーションがある。その欠点は、通常のスティックとは反対に、測定可能な最大距離がスティックの長さによって与えられ、且つ、フィボナッチスティックは通常のスティックよりも長い、と言うことである。
【0033】
フィボナッチシリーズのエレメントは単純なルールによって与えられる。即ち、シリーズの次のエレメントは、以前の2個のエレメントの合計によって与えられる。出発点はシリーズ{1,1}である。第1のエレメントは、始点に配置され、シリーズのもう一つのエレメントが、単位スペースによって与えられるスペース距離で配置される。開始ケースに対して、これは距離1の3個のアンテナエレメントを意味する。次のエレメントは{1,1,2}であり、これは距離2の第4のものが追加された以前の3組のアンテナに至る。4個のエレメントのシリーズは{1,1,2,3}であり、5個のエレメントのシリーズは{1,1,2,3,5}である。最後の1つは、9の例外を除いて、1と12間の全ての距離における既存の測定を可能とする。これらの間隔の事例は、1次元アレイに対して図1に示されている。単一の且つ分離されたギャップは大した問題ではなく、サイドローブノイズの増加に貢献する。一方、サイズ12のアレイをカバーするのに、たった6個のエレメントしか必要としない。6番目のエレメントは、{1,1,2,3,5,8}を与え、追加の値[13,16,18,19,20](9,14,15,17ではない)の測定を可能とする。
【0034】
原則的に、フィボナッチスキームを、連続するエレメントに厳密に適用する必要性はないが、このような純粋なフィボナッチスキームは最も少ないエレメントで最も良い分解能を提供する。従って、例えば、{1,1,2,1,3,1,5,1,8,1,13・・・}のようにフィボナッチ間隔のそれぞれが1個おきの間隔に適用される場合のように、フィボナッチシリーズが中断され厳密に“連続する”エレメントではない代替的な実施例が存在する。これは、グループが単位間隔を有するエレメント対である場合、連続するエレメントグループに適用されるフィボナッチ間隔の一例であると見做すことができる。ここで、原則的にグループ内で、より大きな或いは他の規則的或いは不規則な間隔を有することができる。
【0035】
最善ではない他の代替的な事例では、例えば、{8,3,1,1,2,5,13・・・}のように、フィボナッチ間隔の幾つかを、最初の単位間隔の他の側に移動させたものを含むことができる。エレメント間の距離セットにおいて幾らかの冗長度が導入されるために、その間隔の幾つかをどこかに有することは、放射エレメントの数において計算された分解能を減少させる傾向があり、オブジェクトにおいて分解能がより小さくなる傾向がある。フィボナッチ間隔への言及は、さらに、他のフィボナッチの様な間隔を包含することができる。この他のフィボナッチ様の間隔は、規則的な間隔と比較して2個のエレメント間の異なる距離の数を増加させる点において幾つかの利点を想起させ、且つ、形成することができる。これらの事例の他の例または組合せを想起することができ、且つ、それらを、以下に説明する二次元グリッド或いはアレイの二つの次元の1つに、或いはその両方に適用することができる。
【0036】
フィボナッチシリーズは二つの開始パラメータを必要とし(最も単純な場合、1と1)、従って、第3のエレメント、2、においてのみ意味があり、そのため、これが、均一に間隔を置いたアレイおよび不規則に間隔を置いたアレイ間で差異を与えるエレメントの最小数となる。フィボナッチシリーズは4番目のエレメント3によってより理解されるようになる。
【0037】
幾つかの最適でない事例において、フィボナッチ間隔は、エレメントの少なくとも50%またはエレメントの少なくとも70%に対して提供することができる。高い信号効率が重要ではない場合、SARアプリケーションに対する必要性が殆どない場合、または放射エレメントのそれぞれに対して充分なスペースを持つことが望まれる場合、または放射エレメントを100個または1000個設けるためのコストが余りに高額である場合、アンテナのベースラインは放射エレメントによって稀薄に充填されることのみが必要である。
【0038】
個々のエレメントはより低いノイズとより良い事前アンテナパターンを得るように最適化され得るので、実施例では、可能な限り少ないエレメントによる、可能な限り多くの直交データの測定を可能とする。これは、ノイズ削減のために複数(例えば>100)の位相結合エレメントを使用することが可能ではない、或いは実際的でない場合のアプリケーションに対して、有用である。
【0039】
本発明の幾つかの実施例は、2個の主軸を有する二次元アレイを有し、且つ数列に対応する間隔は少なくともその主軸の一個に沿って現れる。数列に対応する間隔は、フィボナッチ格子を形成するために、主軸の両方に沿って現れても良い。単位間隔は、半波長の2倍の平方根として選択することが可能である。これによって、最も稀薄に分布した方向が少なくとも半波長の間隔を有することを可能とし、それによって、単位間隔を減少させ過ぎることなく、格子ローブを回避することを可能とする。
【0040】
アンテナの幾つかの実施例は、二次元アレイを有することが可能で、この場合、数列に対応する間隔はらせんを形成するラインに沿って現れる。これは、他のものよりもさらに稀薄に分布したアレイを横断する方向を有することの回避を、支援する。最終的には、二次元フィボナッチ正方形タイルとして配置されたアレイを有する実施例が、希薄さと、最少数のエレメントを有しながら、異なる方向における希薄さの不均一性を回避することとの間で、最適なトレードオフを提供することができる。
【0041】
他の実施例では、数列に対応する間隔がアレイに沿って現れる、一次元アレイを有することができる。幾つかの実施例は、サブミリ波信号の使用に適するように構成されている。幾つかは、120mmから1200mmの範囲の開口を有し、その効果は200mmから800mmの範囲内でより大きくなり、且つ、幾つかのアプリケーションは400mmプラスまたはマイナス50mmの範囲が適切である。幾つかの実施例は、送信アンテナまたは受信アンテナとして、上記の何れかの実施例のアンテナを有する、サブミリ波レーダーシステムを含む。このレーダーシステムは車両に組み込むことができる。
【0042】
幾つかの実施例は、アンテナを製造する方法を含み、この方法は、所望の波長に基づいて単位スペースを決定すること、および、アレイの少なくとも一部分の連続するエレメント間の間隔を非周期的に、且つ、フィボナッチ数列に続く複数の単位間隔のシリーズに対応するように決定することによって、エレメントの一次元または多次元アレイを形成するために、アンテナエレメントの間隔を決定する、準備段階を有する。
【0043】
フィボナッチアレイの欠点は、信号から受信するパワーの総量が、充填アレイに比べて、充填因子に等しい因子(ファクタ)だけ低い、と言う事実である。一方、これらの僅かな受信エレメントを最適値まで改善することによって、リソースをより知的に使用することができる。エレメントの規則的な間隔を有する通常のSARレーダーに対して、アンテナエレメントは、非常に広いエレメント放射ローブによって非常にシンプルに維持されている。受信アンテナに対する本発明の実施例において、照明信号をより効率的に捕獲するために、適度に狭いローブを持ったエレメントを代わりに用いることができる。何故なら、照明信号は非常に少ないアンテナエレメントのみによって検出される必要があるため。
【0044】
図2〜6:アンテナ応答パターン
4分の1波長の規則的間隔で配置された例えば400のアンテナエレメントを有する伝統的なレーダーシステムを設定することによって、図2に示すような、10000波長の距離におけるアンテナ応答パターンが、結果として得られる。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上で、アンテナあたりの信号強度を示している。
【0045】
フィボナッチ距離に4分の1波長の単位間隔を掛け合わせた場所に配置された、14個のエレメント(400の代わりに)を有するフィボナッチ間隔レーダーシステムによって、同じ分解能を達成することができる。10000波長の距離におけるその結果のアンテナ応答パターンを、図3に示す。フィボナッチレーダーと伝統的なレーダーの物理的(開口)サイズは同じである。アンテナパターンの3dBピーク幅は、その二つのケースについて同じである。
【0046】
0.5波長の単位間隔における配置に対して、類似の図を得ることができる。これは、サイドローブを回避するために、伝統的アレイ配置に対して絶対的な最大値である(図4および5参照)。図6は、比較のためにフィボナッチケースと同じアンテナエレメント数を使用した、伝統的な等距離レーダーに対する結果を示している。
【0047】
図4は、0.25波長距離における等距離間隔レーダーアンテナエレメントに対する、アンテナ応答パターンを示す。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上での、アンテナあたりの信号強度を示している。状況が異なっているのでこのグラフは図2とは異なっており、プロットは、全信号強度ではなく、使用された放射エレメント当たりの信号強度を表している。
【0048】
図5は、16個のアンテナエレメントを使用する、0.25波長のベース距離を有するレーダーシステムに対する、フィボナッチシリーズベースのアンテナ配置に対する、アンテナ応答パターンを示している。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上の、エレメント当たりの信号強度を示している。このグラフは、センターラインに1個のピークを示す。
【0049】
図6は、フィボナッチシステムと同じ数のアンテナエレメントを使用する、等距離レーダーアンテナに対するアンテナ応答パターンを示す。この図は、10000波長距離に配置されたターゲット上の、アンテナ当たりの信号強度を示す。
【0050】
上記を要約すると、ほんの少しの数のアンテナエレメントのみで、伝統的なSARレーダーと同じ分解能を達成することが可能である。欠点は、勿論、このようなレーダーシステムのサンプリング領域が使用したアンテナエレメントの数に比例するということである。ソースと受信器が不足し且つビーム分割によって異なるアンテナエレメントを生成しなければならないシステムを使用すると、フィボナッチシステムの効率は伝統的な場合よりも高くなる。LOパワーの使用量は、かなり改善される。しかしながら、指摘したように、信号レベルは低い。
【0051】
図7.必要なアンテナエレメントの割合
原理的に、いくつのアンテナエレメントが節約できるか?
Binetの式から、フィボナッチシリーズのエレメントは、閉形式表現によって得ることができる。
【数1】
【0052】
長さFnの充填アレイに対して、Fnアンテナエレメントが必要である。対応するフィボナッチアレイに対して、n個のアンテナエレメントのみが必要である。従って、アレイ長の関数として必要なアンテナエレメントの割合(充填ケースに対するアンテナエレメント数において)は、図7に示されている。これは、フル実装アレイと比較して、1次元フィボナッチアンテナに対するアレイ希薄性のグラフを示す。
【0053】
図7において、且つ、100アンテナエレメントの充填アレイを仮定すると、0.1よりも僅かに小さい希薄性に到達し、これは、フィボナッチアレイにおいて10アンテナエレメントよりも少ない使用量を暗示している。2次元ケースを検討すると、以下に説明するように、格子とタイルの2つのソリューションがある。
【0054】
図8:2Dフィボナッチ格子
これは、フィボナッチシリーズのシリーズエレメントが軸上にマークされている、2次元平面を仮定することによって、得られる。これは、一次元ケースに対応する。ところで、全ての点は、xおよびy座標の両者の値がフィボナッチシリーズのシリーズエレメントである。これは、所定の領域が、最も大きなフィボナッチ数の積で適合された、構造を生じる。このようなアレイ構造は、幾らかの分散を受ける:座標軸に平行でない直線に沿って、すぐ傍のアンテナ位置の距離は一般に、座標軸上の場合よりも一般に大きい。アンテナエレメントを座標軸に沿って最大の距離に配置することによって、より波なれて追加された全ての距離に沿って、格子ローブが存在する。フィボナッチ格子は、アンテナエレメント間の間隔が半波長の0.707(2の平方根)に選択された場合、非常に良いソリューションである。従って、最も希薄に装着された方向(45度)であっても、格子ローブを示さない。
【0055】
このようなアレイを図8に示す。座標軸に沿ったアンテナの場所はグレイに影がつけられており、より黒い場所は、アンテナエレメントを配置すべき追加の点を示している。
【0056】
一方の側に沿ったFnアンテナエレメントの伝統的な充填2Dアレイは、(Fn+1)2のアンテナを必要とするが、一方、フィボナッチ2Dアレイは単純に(n+1)2アンテナエレメントを必要とする。とにかくフル(正方形)アレイにおいて必要とされるアンテナエレメントの数の関数として、アンテナエレメント数の節約が、図11の上部ドットラインに示されている。
【0057】
それにも関わらず、アンテナエレメントを、より経済的であることに加えて分散効果を示さない、2次元ケースに配置するより良い方法が存在する。
【0058】
図9および10:2Dフィボナッチ正方形タイル
図9は、異なるサイズの正方形を追加することによって生成された、連続するパターンに関する、誘導図を示している。図10は、正方形のコーナーにおけるアンテナエレメント位置を示す、類似の連続図を示し、この場合、各正方形がエレメントグループの一例を形成する。両ケースにおいて、正方形の中心を結ぶラインはらせん軌道をたどる。フィボナッチ1Dアレイの場合のように、誘導は、フィボナッチシリーズの第1エレメント(即ち、1)から開始される。さて、エレメントグループは、正方形タイルの開始点において、単位辺長を伴う正方形に配置される。次のステップとして、エレメントの第2のグループが、フィボナッチシリーズの第2の数(再度、1)に対応する間隔で配置される。このことは、この単位辺長を有する正方形を第1の正方形の傍らに配置することを意味する。2×1のサイズの長方形が形成される。次に、第3のシリーズエレメントによって与えられた辺長を有する正方形が、長方形の長辺に沿って配置される。この長辺は以前の2個のフィボナッチエレメントの追加された長さからなっているので、追加すべきエレメントは、この場所に常に適合する。このアレイは常に長方形である(n番目のステップに対して、FnおよびFn-1の辺長を有する)。
【0059】
一辺に沿ったFn×Fn-1アンテナエレメントの伝統的充填2D長方形アレイは、以前のケースと同様に、(Fn+1)(Fn-1+1)2アンテナエレメントを必要とする。フィボナッチ正方形タイルは、第1のステップに対して4個のアンテナエレメントを必要とし、その後、繰り返し毎にさらに2個を必要とし、その結果、2+2nとなる。その一方、フィボナッチ2Dアレイは、依然として(n+1)2アンテナエレメントを必要とする。フル(正方形)アレイにおいて必要とされるアンテナエレメント数の関数として、フィボナッチタイルに対するアンテナエレメントの数における節約は、図11における下方のドットラインとして示されている。これは、同じサイズの充填長方形アレイにおけるアンテナエレメント数の割合として装着される、アンテナエレメントの数を示している。
【0060】
オブジェクト上でのある程度の分解能要求に対して、回折によって、放射または受信エレメントによってカバーされるべき開口サイズの下限が設定される。単一の方向における分解能を確保するために、格子ローブを回避すべきである。アンテナエレメント間の距離が半波長を越えた場合に、常に格子ローブが発生する。従って、伝統的なレーダーシステムは、開口表面を完全に充填するために、非常に多くのアンテナエレメントで構成されている。
【0061】
自動車用アプリケーションに対して、オブジェクト上の分解能は、400mmの範囲の開口サイズを暗に示している。300GHzを超える周波数を使用することによって、その波長は1mmとなる。従って、伝統的なSARレーダーは、全ての要求に答えるために、400×400以上のアンテナエレメント使用しなければならない。このようなシステムは、余りにも高価で且つ重いため、車両上では実現することができない。フィボナッチタイルを使用することによって、42アンテナエレメントを用いてオブジェクト上に同じ分解能を達成することができる。
【0062】
伝統的なシステムでは、間隔要求(距離0.5mm)が、旧式のアンテナエレメントのみを使用可能であることを暗示している。これらのアンテナは非常に低いアンテナ利得を有している(<10dB)。フィボナッチタイルを使用すると、アンテナエレメント間により大きな間隔が存在し、そのため、アンテナ利得が30dBを超えるより大きなアンテナエレメントを前向きに使用することができる。SARエレメントよりも大きい利得35dBを持ったアンテナエレメントを使用することで、収集された信号強度は伝統的な充填アレイSARレーダーと同じになる。
【0063】
フィボナッチの1Dアレイと2Dタイルは、開口上に全ての独立した情報を収集するための最適な方法である。フィボナッチの1Dアレイまたはフィボナッチの2Dタイルよりも少ないアンテナエレメントを使用して、位相および振幅情報を完全にカバーする方法は存在しない。アレイエレメントが半波長の距離に配置された場合に、フィボナッチの2Dタイルが、分散(即ち、ある方向における格子ローブ)を持たない唯一の2Dアレイである。
【0064】
充填アレイにおいて、アンテナエレメントのサイズは、約半波長であるアンテナ間隔を越えてはならない。従って、低い効率を有する小さなアンテナエレメントのみが使用できる。フィボナッチのアプローチでは、非常に少ないアンテナエレメントが必要とされる。従って、アレイは非常に希薄に存在し、高効率のアンテナエレメントを使用する空間を提供する。ここで、1個のアンテナエレメントはそのサイズにおいて数波長分となる。
【0065】
フィボナッチのアプローチを使用した場合、アンテナエレメント数の節約分は非常に大きくなる。これらのアレイは、完全に充填されたアレイと同じ空間分解能を有していることに、注意すべきである。SARアレイに比べて小さい、信号の収集領域(即ち、全アンテナエレメントの収集サイズの合計)は、まさにアンテナ節約因子である。しかし、非常に限られた数のアンテナエレメントのみが必要なので、非常に大きな収集領域とより高い効率とを有するアンテナエレメントを使用することができる。このことは、サブミリ波アプリケーションに対して特に有用である。何故なら、受信器用の電子回路は非常に高価であるため、このような電子回路を必要するコピーの数が、主なコスト推進要因であるから。従って、非常に高いビーム効率を有するより精巧なアンテナエレメントを使用し、充填アレイの物理的サイズよりも大きなネットの収集領域を形成すべきである。
【0066】
サブミリ波の波長においてビーム形成能力を有するエレメントに対して適切な形状は、例えば、ホーンアンテナ、波形ホーンアンテナ、微小反射体アンテナまたは、ホーンと誘電体レンズの組合せである。これらのアンテナ形状を使用して、非常に希薄なアレイにおける各エレメントのサイズはもはや半波長に限定されないことを考慮し、与えられたエレメントサイズに対して利用可能な、最適なビーム形状に到達することができる。この概念は、電波天文学におけるVLBIアプローチ(very long base line interferometry、非常に長いベースラインを有する干渉分光法)に似ている。ここでは、参加天文台の位置を選ぶことができず、実現し得る最高のアンテナを用いて取ったまとまったデータから“一番いいもの”を得る必要がある。参照文献:THzホーンアンテナに対して、例えば、http://www.virginiadiodes.com/ +ISSTTプロシーディングス(1997年より、毎年)参照。VLBIに対しては、例えば、http://www.evlbi.org/参照。
【0067】
図12、13:システム図
図12は、ローカル発振器100によって供給される送信器ドライバ85によって駆動される、送信アンテナ80を有するレーダーシステムの一例を示す。送信によってオブジェクト(物体)70を照射し、受信アンテナ90によってその反射を受信する。この受信信号は、受信器回路95に供給され、次に、復調器110に供給される。これによって、送信器に対して使用された発振器に関係する、或いは独立した、ローカル発振器信号の利用が可能となる。これらの部分85および95は、一般的な回路を使用して、位相および振幅を扱い、そして、これらの部品を変調しまたは復調するために処理し、使用された特定のアンテナエレメント間隔に適合させる。
【0068】
タイルのアンテナエレメントの位置は車両全体に広がっていても良い。この車両は、例えば、図13に一例を示す自動車である。図13は、自動車30、密集したエレメントのクラスタ40、および、複数のより間隔を置いてはなれたエレメント20を示している。フィボナッチタイルのアンテナエレメントは、上記で議論したタイル正方形のコーナーに沿って配置されている。ベース長(ここでは、例えば、0.4mm)の規模に依存して、且つ、アンテナ製造技術に依存して、アンテナエレメントは2個かそれ以上のカテゴリー、例えば、図13に示すように、クラスタ部分および1個またはそれ以上の衛星部分、に分けることができる。
【0069】
クラスタ部分は、フィボナッチ反復が開始される点の周辺である。ここで、互いに非常に密接して配置されたアンテナエレメントが存在する。最初の8から20アンテナエレメントは、全てのアンテナエレメントに対して共通のレンズを使用する1個の基板上に結合させることができる。
【0070】
残りのアンテナエレメントは衛星部分を構成する。これらの部分は、クラスタユニットから同等に離れており、且つ、これらの個々のアンテナエレメントは車両上に任意に配置されている。衛星との相互作用およびデータ転送は、例えばオプティカルファイバを用いて行われる。これは、TIIz信号を、このような遠くまで大量の損失を伴わず電気ドメインによって輸送することができないためである。
【0071】
アンテナの実際のタイプと周波数に依存して、アンテナエレメントのより小さい或いはより大きい部分が、クラスタの部分であり得る。クラスタからの距離はフィボナッチ数が増加するにつれて増加するので、開口領域の大きな割合が実質的に空である。このことは、アンテナエレメントを車両上へ配置することを促進する。なお、車両上では、多くの領域をアンテナエレメント位置として使用することができない。
【0072】
同じアンテナエレメントが使用される限りにおいて、信号対ノイズ比は、フィボナッチアレイの方が充填ケースに比べてかなり悪い。伝統的な充填アレイにおけるアンテナタイプの選択は、低コストによって且つ非常に小さな外側アンテナ寸法によって決定される。フィボナッチアレイは希薄であり、そのためより効率的なアンテナエレメントが使用される。これらを使用することによって、莫大なコスト削減を伴って、信号対ノイズ比を充填ケースと同レベルとなし得る。
【0073】
オブジェクト上の空間分解能は影響されない。得られた映像のコントラストを減少させる充填ビームに比べて、フィボナッチビームの高いショルダーによって引起される、僅かに有害な効果が存在する。
【0074】
ビームのショルダーはより大きいので、雪および雨による減衰の積分は、雨および雪の減衰の影響を効果的に減少させる、より大きな領域を含んでいる。結局、上記のコントラスト損失は、雨および雪に対する能力の増加によって、相殺される。
【0075】
(所定のベースエレメント距離の)2Dアレイは、任意の入射方向に対して投影された場合、全てのフィボナッチ数に特性長を掛けたものに対応する、全ての距離を含んでいることに注意しなければならない。その結果、投影された特性長は、入射方向に対する特性長ベクトルの投影のより長いものによって与えられる(2Dアレイ上の第1シード正方形によって与えられる、両座標方向において)。従って、2Dアレイは、全ての入射方向に対して、1Dアレイと同じ復元特性を有している。
【0076】
このことから、多くの特性がもたらされる。
a):上記で述べたように、所定の到来方向下で投影された場合、全ての2Dアレイは1Dアレイとして見えるため、1Dアレイに言及することは一般性の喪失に関係しない。
b):方向ベクトルを解くことを可能とする全ての必要な位相差測定を我々は得ているので、1Dアレイのベースラインを含む面に位置するターゲット方向を抽出するためのツールとして、1Dアレイは役立つ。到来ベクトルの方向に対して1Dアレイベース正方形サイズの投影が半波長よりも小さい場合、且つ、その時に限り、このソリューションは一意的である。
c):その結果、ターゲット方向の抽出が3Dにおける任意の方向に対して要求される場合、2Dアレイは単に1Dアレイの延長であり、その結果、到来ベクトルの方向に対して1Dアレイベース正方形サイズの投影が半波長よりも小さい場合、且つ、その時に限り、このソリューションは一意的である。
【0077】
さらに、以下も特筆すべきである。
1:周期的アレイに比べて顕著な結果を与えることを確実にするために、2Dアレイは少なくとも7個のアンテナまたはアンテナグループを有するべきであるが、その一方で、1Dアレイは少なくとも4アンテナまたはアンテナグループを有することができる。
2:所定の周波数(従って波長)に対して、シード正方形(2Dアレイ)[シードライン(1Dアレイ)]のベース長が半波長よりも小さい場合にのみ、方向検索は一意のソリューションを与える。これは、アレイにおいて格子ローブを回避するための既知の規則である。
【0078】
他の変形も、特許請求の範囲内で想定可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレメントの1次元または多次元アレイ(20、40)を有するアンテナ(80、90)において、
アレイの少なくとも1部分において連続するエレメントまたはエレメントグループ間の間隔が非周期的であり、且つ、単位間隔の倍数列に対応し、ここで、少なくとも5個の連続するエレメントまたはエレメントグループの倍数がフィボナッチ数列に従う、アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナにおいて、少なくとも幾つかのエレメントは、サブミリメートルの波長においてビーム形成能力を有する、アンテナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナにおいて、少なくとも幾つかのエレメントは単位間隔よりも大きな寸法を有する、アンテナ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のアンテナにおいて、2個の主軸を有する2次元アレイを有し、且つ、前記数列に対応する間隔が前記主軸の少なくとも1個に沿って発生する、アンテナ。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナにおいて、前記数列に対応する間隔が、前記主軸の両方に沿って起こる、アンテナ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のアンテナにおいて、前記単位間隔は(1/√2)×2分の1波長となるように選択される、アンテナ。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のアンテナにおいて、2次元アレイを有し、且つ、前記数列に対応する間隔は、らせんを形成するラインに沿って発生する、アンテナ。
【請求項8】
請求項7に記載のアンテナにおいて、2次元のフィボナッチ正方形タイルとして配置されている、アンテナ。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のアンテナにおいて、1次元アレイを有し、且つ、数列に対応する間隔は前記アレイに沿って発生する、アンテナ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のアンテナにおいて、サブミリメートル波長信号の使用に適するように構成されている、アンテナ。
【請求項11】
請求項10に記載のアンテナにおいて、200mmから800mmの範囲内の開口を有するように構成された、アンテナ。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のアンテナを送信アンテナまたは受信アンテナとして有する、サブミリ波レーダーシステム(20)。
【請求項13】
請求項12に記載のレーダーシステムを有する、車両(30)。
【請求項14】
アンテナを製造するための方法において、前記方法は、
所望の波長に従って単位間隔を決定することにより、且つ、少なくともアレイの一部における連続するエレメントまたはエレメントグループ間の間隔を非周期的で且つ単位間隔の倍数の数列に対応するように決定することによって、エレメントの1次元または多次元アレイを形成するために、アンテナのエレメント(10)の間隔を決定する準備段階を備え、少なくとも5個の前記連続するエレメントまたはエレメントグループの前記倍数は、フィボナッチ数列に従う、方法。
【請求項1】
エレメントの1次元または多次元アレイ(20、40)を有するアンテナ(80、90)において、
アレイの少なくとも1部分において連続するエレメントまたはエレメントグループ間の間隔が非周期的であり、且つ、単位間隔の倍数列に対応し、ここで、少なくとも5個の連続するエレメントまたはエレメントグループの倍数がフィボナッチ数列に従う、アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナにおいて、少なくとも幾つかのエレメントは、サブミリメートルの波長においてビーム形成能力を有する、アンテナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナにおいて、少なくとも幾つかのエレメントは単位間隔よりも大きな寸法を有する、アンテナ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のアンテナにおいて、2個の主軸を有する2次元アレイを有し、且つ、前記数列に対応する間隔が前記主軸の少なくとも1個に沿って発生する、アンテナ。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナにおいて、前記数列に対応する間隔が、前記主軸の両方に沿って起こる、アンテナ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のアンテナにおいて、前記単位間隔は(1/√2)×2分の1波長となるように選択される、アンテナ。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のアンテナにおいて、2次元アレイを有し、且つ、前記数列に対応する間隔は、らせんを形成するラインに沿って発生する、アンテナ。
【請求項8】
請求項7に記載のアンテナにおいて、2次元のフィボナッチ正方形タイルとして配置されている、アンテナ。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のアンテナにおいて、1次元アレイを有し、且つ、数列に対応する間隔は前記アレイに沿って発生する、アンテナ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のアンテナにおいて、サブミリメートル波長信号の使用に適するように構成されている、アンテナ。
【請求項11】
請求項10に記載のアンテナにおいて、200mmから800mmの範囲内の開口を有するように構成された、アンテナ。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のアンテナを送信アンテナまたは受信アンテナとして有する、サブミリ波レーダーシステム(20)。
【請求項13】
請求項12に記載のレーダーシステムを有する、車両(30)。
【請求項14】
アンテナを製造するための方法において、前記方法は、
所望の波長に従って単位間隔を決定することにより、且つ、少なくともアレイの一部における連続するエレメントまたはエレメントグループ間の間隔を非周期的で且つ単位間隔の倍数の数列に対応するように決定することによって、エレメントの1次元または多次元アレイを形成するために、アンテナのエレメント(10)の間隔を決定する準備段階を備え、少なくとも5個の前記連続するエレメントまたはエレメントグループの前記倍数は、フィボナッチ数列に従う、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−509066(P2013−509066A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534707(P2012−534707)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065906
【国際公開番号】WO2011/048195
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512066783)トヨタ モーター ヨーロッパ ナームロゼ フェンノートシャップ/ソシエテ アノニム (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065906
【国際公開番号】WO2011/048195
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512066783)トヨタ モーター ヨーロッパ ナームロゼ フェンノートシャップ/ソシエテ アノニム (3)
【Fターム(参考)】
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