説明

種々異なる距離範囲内の物標を監視するためのレーダシステム

種々異なる距離範囲内の目標を監視するためのレーダシステムで、種々異なる距離乃至距離範囲内で、相互に区別すべき2つの対象間の伝搬時間に相応する長さよりも大きな長さのレーダパルスが送出される。受信側で、レーダ送信パルス成形器(3)に供給される高周波パルスとレーダ受信信号が混合器(6)に供給される。混合器(6)の出力信号は、少なくとも1つの走査器(7,8)を介して信号評価部(9)に供給され、該走査器(7,8)の、レーダ送信パルスの上昇側縁に対する遅延調整により、監視すべき距離範囲の到達距離の境界が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々異なる距離範囲内の物標を監視するためのレーダシステムに関する。
【0002】
レーダベースの昨今の侵入者アラーム装置は、ほぼ、単一のCW(連続波)レーダから構成されている。このレーダ方式では、運動する対象によって生じるドップラ信号が評価され、アラーム用の評価基準として利用される。監視すべき距離範囲は、CWレーダの到達範囲によって決められ、あまり正確には調整乃至調節することができない。と言うのは、システムの到達範囲は、ほぼ送信出力によって制限され、従って、システムの到達範囲をさほど正確には特定することはできない。殊に、異なったレーダ後方散乱を行う横断面を有する物標は、異なった到達範囲も有している。距離を調整及び/又は測定することができるためには、別のレーダ変調方式を用いる必要がある。パルスレーダを用いて距離を測定することができることが一般に知られている。この際、CW搬送波信号は、パルス状に振幅変調され、アンテナを介して送出される。この搬送波パルスは、物標で反射され、パルスの送信と、反射ビームの入射との間の時間から、物標までの距離を測定することができ、ドップラ効果を利用して、物標の相対速度を測定することができる。
【0003】
この方式をベースとするシステムは、変形した形式で米国特許第6239736号明細書に記載されている。この際、バーストオシレータが用いられており、つまり、バーストオシレータは、短い列のパルスを送出し、このパルスは、それ自体又は後続して形成されたパルスと混合されて、距離範囲についての物標の情報を得ることができる。この方式をベースとする、ドイツ連邦共和国特許公開第19963006号公報による別の方式では、距離測定及び/又は速度測定を同時に行う際に、センサまでの所定の距離乃至特定の長さで可変の仮想のバリアが形成される。ヨーロッパ特許公開第19963006号公報では、同様に、受信パルスを、当該受信パルスとは異なって調整可能なパルス期間を有する基準パルスと混合することが提案されている。
【0004】
発明の利点
請求項1記載の各手段を用いると、つまり、
種々異なる距離乃至距離範囲内で、相互に区別すべき2つの対象間の伝搬時間に相応する長さよりも大きな長さのレーダパルスを送出する手段と、
受信側で、レーダ送信パルス成形器に供給される高周波信号とレーダ受信信号を混合器に供給する手段と、
混合器の出力信号を、少なくとも1つの走査器を介して供給し、該走査器の、レーダ送信パルスの上昇側縁に対する遅延調整により、監視すべき距離範囲の到達距離の境界を設定する手段を有する手段を用いると、
考慮している帯域幅で、サイドローブ/側波帯が強く乃至迅速に低下する。これは、従来技術とは異なって比較的長いレーダパルスで生じる。ハードウェアコストは小さい。と言うのは、単一のCWレーダの変形は僅かしか必要としないからである。有利なスペクトル信号分布(サイドローブの境界)によって、あまりコストを掛けずに、許可された周波数領域用の許可規則を遵守することができる。CWレーダとパルスレーダの混合形式用に、簡単且つ低いコストで、到達距離を境界付けることができる。物標の分類/区別のために、異なった到達距離の境界に区分する手段を設けてもよい。実際の測定範囲は、外部から知ることはできず、このことは、殊に、侵入者アラーム装置にとっては有利である。
【0005】
到達距離の境界が調整されている監視領域内で、物標が動くと、レーダセンサに対して放射方向の、物標の運動方向を用いて、ドップラ信号を測定することができる。
【0006】
図面
次に、本発明のレーダシステムの図示の実施例を用いて説明する。その際:
図1は、本発明のレーダシステムのブロック接続図を示し、
図2は、レーダ送信パルスと受信側の走査の時間ダイアグラムを示す。
【0007】
実施例の説明
本発明のレーダシステムの構成は、図1に図示されている。オシレータ1は、高周波信号、例えば、GHz領域の高周波信号を形成し、この高周波信号は、方向性結合器2とHFスイッチ3(レーダ送信パルス成形器)を介して送信アンテナ4に供給され、この送信アンテナ4から放射される。オシレータ1の送信出力の一部分は、方向性結合器2で出力結合され、受信混合器6に供給される。物標10によって反射された電磁波は、受信アンテナ5を介して受信混合器6に供給される。移動する物標10の場合、受信混合器6の出力側に、低周波のドップラ信号を生じ、この低周波のドップラ信号の周波数は、レーダセンサと物標との間の相対速度に比例する。混合器の出力信号は、走査器として作用し、且つ、サンプル・アンド・ホールド段8の一方の部分であるNFスイッチ7を介して供給される。信号評価部9には、信号評価のために複数の受信チャネルが統合されている。付加的に、混合器6の出力信号を、直接(スイッチ7及びサンプル・アンド・ホールド段なしに)信号評価部9に供給してもよい。
【0008】
周波数スペクトル内でサイドローブ/側波帯が迅速に低下するように、到達距離に境界が設定されたレーダシステムを構成するために、図2に図示されたスイッチ制御が行われる。図2の上側及び真ん中の部分(ズーミングされた)は、送信信号の変調を示す。図2の下側部分には、受信分路内でのスイッチ制御が、同様にズーミングされて示されている。レーダパルスは、例えば、25μsの周期で、10μsの長さである。HFスイッチ3は、制御信号TXにより制御されて、例えば、μs領域内の比較的長いパルス期間τTの、急峻な側縁の送信パルスが送信される。送信信号内の長いパルス期間を形成することによって、側波帯が急峻に低下する所望の送信信号スペクトルを形成することができる。
【0009】
NFスイッチ7を用いて、TXパルスの上昇側縁からRXパルスの下降側縁までの時間Δtを介して、システムの到達距離の境界Rが調整される(調整された遅延時間)。監視領域の調整された到達距離Rは、レーダ技術から公知の式
R=c・Δt/2
を用いて算出され、その際、cは、相応の媒体内での光の速度である。NFスイッチ7のパルス/サンプリング期間τには、
τ≦−τ
が成り立つ。これは、図2に示された例では、値τ<τに制限される。そうすることによって、各々の物標で後方に散乱される信号の受信出力が、監視される距離範囲内でほぼ一定のままであり、到達範囲Rが予め調整されている場合、不可視領域に、できる限り急峻に移行する。こうすることによって、複数の距離ゾーンを同時に並列して監視することができる。しかし、NFスイッチ7のパルス/サンプリング期間τRは、時間Δtに相応するようにしてもよい。それと同時に、到達距離が付加的に制限されておらず、従って、最大到達距離が前述のレーダの式に相応して示される、混合器の出力信号を、直接接続部(11)を介して信号評価部9用に使用してもよい。送信パルスTXに対して遅延されたサンプルパルスRX(τ)は、各遅延調整(Δt−τ)で、0mから調整された到達距離の境界R迄の距離内での全測定範囲を監視する。サンプルパルスRXには、ナノ秒領域内の値が選択される。
【0010】
並列接続された複数の走査器を設けてもよく、当該走査器の遅延時間調整及び当該走査器の走査時間は、レーダパルスの送信中、時間的に段階をつけて重畳せずに駆動可能であるように選択される。そうすることによって、複数の距離範囲(ゾーン)内の物標を監視することができる。
【0011】
システムは、調整された監視領域内で、ほぼCWレーダと同様に作動し、運動する物標のドップラ信号を供給する。複数の距離範囲の比較により、複数対象のシナリオで物標を一層良好に区別することができ、場合によっては、物標を分類することができる。このシステムを用いると、到達距離の境界(R<1m)を短く調整することができるので、これにより、システムの許容できないマスキング及びカバー試行に対してサボタージュ防御(アンチマスク)を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のレーダシステムのブロック接続図
【図2】レーダ送信パルスと受信側の走査の時間ダイアグラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々異なる距離範囲内の物標を監視するためのレーダシステムにおいて、種々異なる距離乃至距離範囲内で、相互に区別すべき2つの対象間の伝搬時間に相応する長さよりも大きな長さのレーダパルスを送出する手段と、受信側で、レーダ送信パルス成形器(3)に供給される高周波信号とレーダ受信信号を混合器(6)に供給する手段と、前記混合器(6)の出力信号を、信号評価部(9)に少なくとも1つの走査器(7,8)を介して供給し、該走査器(7,8)の、レーダ送信パルスの上昇側縁に対する遅延調整により、監視すべき距離範囲の到達距離の境界を設定する手段を有することを特徴とするレーダシステム。
【請求項2】
前記混合器(6)の出力信号は、信号評価部(9)に、並列接続された複数の走査器(7,8)を介して供給され、前記走査器(7,8)は、相応の別の到達距離の境界用の別の遅延調整部を有している請求項1記載のレーダシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの走査器(7,8)に対して並列に、混合器(6)と信号評価部(9)との間に、直接接続部(11)が設けられている請求項1又は2記載のレーダシステム。
【請求項4】
走査器(7,8)は、サンプリングホールド素子(8)が後ろに接続されたスイッチ(7)から構成されている請求項1から3迄の何れか1記載のレーダシステム。
【請求項5】
信号評価部(9)は、少なくとも1つの移動する物標のドップラ信号を評価する請求項1から4迄の何れか1記載のレーダシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの走査器(7,8)の遅延調整並びに走査の持続時間は、レーダパルスの送信中も走査が行われるように選定される請求項1から5迄の何れか1記載のレーダシステム。
【請求項7】
並列接続された複数の走査器(7,8)の遅延調整及び前記走査器(7,8)のサンプリング時間は、レーダパルスの送信中、時間的に段階をつけて重畳せずに駆動可能であるように選択される請求項2から6迄の何れか1記載のレーダシステム。
【請求項8】
複数の距離範囲内での比較によって、複数対象のシナリオで物標を区別し、場合によっては、物標を分類する請求項1から7迄の何れか1記載のレーダシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−525774(P2008−525774A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547469(P2007−547469)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056864
【国際公開番号】WO2006/069924
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】