説明

穀粒乾燥装置

【課題】 穀粒の張り込み時に塵埃が遠赤外線放射体の表面に堆積するのを防止できる穀粒乾燥装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 乾燥機本体1の上段に穀粒貯留槽、中段に通風乾燥部3、下段に穀粒取出槽4をそれぞれ設ける。穀粒取出槽4内に、通風乾燥部3から流下する穀粒に遠赤外線放射体14を設ける。穀粒貯留槽に貯留した穀粒を通風乾燥部3、穀粒取出槽4、穀粒貯留槽の経路で循環流動させながら通風乾燥と遠赤外線の照射により乾燥する。通風乾燥部3に外気を吸引流通させる吸引風路には遠赤外線放射体14の排気側と遠赤外線放射体14を設けた穀粒取出槽4とを連通させる。穀粒の張り込み時および排出時には遠赤外線放射体14の排気側と遠赤外線放射体14を設けた穀粒取出槽4との連通部を吸引送風機側13に直に連通させる切替ダンパ22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線の照射による加温と加温風の通風により穀粒を乾燥する穀粒乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾燥機本体の上段に穀粒貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀粒取出室をそれぞれ設け、穀粒貯留槽に貯留した穀粒を通風乾燥部、穀粒取出室、穀粒貯留槽の経路で循環流動させながら通風乾燥部で通風乾燥するともに、穀粒取出室内で通風乾燥部から流下する穀粒に遠赤外線を照射して遠赤外線乾燥する穀粒乾燥装置は、特開平9−61055号公報、特開平10−82586号公報および特開2001−41655公報に記載されており、これらの穀粒乾燥機にあっては、通風乾燥部の乾燥通路を流下する穀粒に遠赤外線を照射しながら、通風による乾燥に遠赤外線による乾燥を併用している。
【0003】
そして、穀粒投入時の送風機を低速運転させて除塵する穀物乾燥機は特開平8−42967号公報に記載され、装置の使用電力を許容電力を超過しないように送風機の出力を制御する装置は特開平9−310833号公報に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−61055号公報
【特許文献2】特開平10−82586号公報
【特許文献3】特開2001−41655公報
【特許文献4】特開平8−42967号公報
【特許文献5】特開平9−310833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の穀粒乾燥装置においては、穀粒の張込時および排出時に穀粒を循環流動させないが、特に穀粒の張込中には穀粒に混在している塵埃が張込時の衝撃により飛散するので、吸引送風機を稼働させて塵埃を吸引排除しながら行うが、張込にともなって通風乾燥部には穀粒が静止状態で堆積していくところから、吸引送風機による負圧作用により穀粒の一部が吸い出され、機外に散逸するという不都合が生じている。
【0006】
また、穀粒乾燥装置に穀粒を張込む場合には、通常張込み装置を使用して穀粒乾燥装置の張込みホッパーに穀粒の供給を行うので、穀粒乾燥装置と張込み装置の二つの機械の電力を一つの電源から取る必要がある。さらに穀粒乾燥装置から後工程の籾摺り装置に穀粒を供給する場合には、穀粒乾燥装置と籾摺り装置を同時に運転する必要が生じる。以上のように穀粒の張込みまたは排出においては、穀粒乾燥装置の使用電力とそれ以外の装置の消費電力が加算されるため、契約の許容電力量を超過する場合が発生する。
【0007】
このため、従来からこの種の穀粒乾燥装置においては、穀粒の機外飛散の防止や使用電力を許容電力内とするために、やむを得ず吸引送風機を止めて穀粒の張込および排出を行っているが、塵埃の飛散による作業環境の悪化はもはや放置することができないのが実情である。そこで特許文献4のように穀粒投入時(張込時)に送風機を低速運転させて使用電力は少ないものの、作業場所に穀粒乾燥装置からの塵埃の飛散を防止して、作業環境を良好にすることが行われている。
【0008】
しかしながら、遠赤外線放射体を備えた穀粒乾燥装置にあっては、穀粒の張込時および排出時に、吸引送風機の低速運転を行うことで穀粒取出室内の通風量が減少するので穀粒取出室内で飛散する塵埃が遠赤外線放射体の表面に堆積し、乾燥の開始または最乾燥開始時に遠赤外線放射体の表面に堆積した塵埃の焦げた煙が機内に充満して乾燥中の穀粒に悪臭が付着して品位の低下につながる原因ともなっている。
【0009】
そこで本発明は、穀粒の張込時および排出時には遠赤外線放射体の排気側と遠赤外線放射体を設けた穀粒取出室との連通部を吸引送風機側に直に連通させる切替ダンパを設けたことにより、吸引送風機の風量が減少した場合であっても、穀粒の張込時に穀粒取出室内で飛散する塵埃を吸引送風機による吸引風によって優先的に機外に排除して遠赤外線放射体の表面に堆積するのを防止し、もって、乾燥中の穀粒に悪臭が付着して生じる品位の低下を未然に防止することができる穀粒乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、請求項1、2および3に係る穀粒乾燥装置を提供する。請求項1に係る穀粒乾燥装置は、乾燥機本体の上段に穀粒貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀粒取出室をそれぞれ設け、穀粒貯留槽に貯留した穀粒を通風乾燥部、穀粒取出室、穀粒貯留槽の経路で循環流動させながら乾燥する穀粒乾燥装置において、穀粒取出室内に、通風乾燥部から流下する穀粒に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を設け、この遠赤外線放射体は乾燥の熱源となるバーナを備えており、前記通風乾燥部に外気を吸引流通させる吸引風路には遠赤外線放射体の排気側と遠赤外線放射体を設けた穀粒取出室とを連通させ、穀粒の張込時および排出時には遠赤外線放射体の排気側と遠赤外線放射体を設けた穀粒取出室との連通部を吸引送風機側に直に連通させる切替ダンパを設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に係る穀粒乾燥装置は、請求項1記載の穀粒乾燥装置において、穀粒に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体は、円筒形であってその一端の軸心にバーナの炎熱放射筒を臨ませ、かつ他端の軸心に燃焼熱気の排気筒を接続して、軸心を中心にして回転する構成とし、遠赤外線放射体の一方の回転軸受部から穀粒取出室に外気を導入するように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係わる穀粒乾燥装置は、請求項1または請求項2の穀粒乾燥装置において、吸引送風機の風量を、循環流動させながら乾燥を行う乾燥時の風量より減少させた場合に、切替ダンパによって穀粒取出室との連通部を吸引送風機側に直に連通させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る穀粒乾燥装置によれば、穀粒の張込時および排出時には遠赤外線放射体の排気側と遠赤外線放射体を設けた穀粒取出室との連通部を吸引送風機側に直に連通させる切替ダンパを設けたことにより、吸引送風機の風量を減少させた場合であっても、穀粒の張込時に穀粒取出室内で飛散する塵埃を吸引送風機による吸引風によって優先的に機外に排除して遠赤外線放射体の表面に堆積するのを防止し、乾燥中の穀粒に悪臭が付着して生じる品位の低下を未然に防止することができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る穀粒乾燥装置の平断面図、図2は本発明の実施の形態に係る穀粒乾燥装置の一部を破断して示す斜視図、図3は本発明の実施の形態に係る穀粒乾燥装置の縦断正面図である。
【0015】
図1ないし図3において、1は乾燥機本体であって、乾燥機本体1の上段には穀粒貯留槽2が、中段には通風乾燥部3が、さらに下段には穀粒取出室4がそれぞれ設けられている。穀粒取出室4の下部にはその前後方向全長にわたる穀粒搬出コンベア5が設けられており、穀粒搬出コンベア5と穀粒貯留槽2の上部の上部コンベア6間は昇降機7によって連絡されていて、穀粒搬出コンベア5、昇降機7および上部コンベア6を介して、穀粒貯留槽2、通風乾燥部3、穀粒取出室4、穀粒貯留槽2の経路で穀粒が循環されるように構成されている。
【0016】
上記通風乾燥部3は通気壁により形成された複数の乾燥通路8をなしていて、その乾燥通路8を構成する熱風供給胴9は、外気を吸引流通させて燃焼風と混合し、乾燥に適した熱風に調整する熱風供給室10に連通し、排風胴11は排風室12に連通しており、排風室12には吸引送風機13が備えられている。
【0017】
穀粒取出室4は、その上部両側から穀粒搬出コンベア5の搬送樋にかけて傾斜する流穀板と両側壁とで囲まれて形成されている。穀粒取出室4内には、遠赤外線放射体14が配設されており、この遠赤外線放射体14は、穀粒取出室4の前後方向略全長にわたる円筒形のものである。この遠赤外線放射体14から放射される遠赤外線は、通風乾燥部3の乾燥通路8から繰出ロール15の回転により繰り出されて、流穀板面上を穀粒が散粒状ないし薄層状に流下する穀粒に照射される。遠赤外線放射体14の一端には、ガンタイプのバーナ16の熱放射筒17が軸心に臨ませてあり、遠赤外線放射体14の排気側には排気筒18が軸心に接続されている。
【0018】
遠赤外線放射体14は、両端の回転軸受部19によって回転自在となっており、遠赤外線放射体14はモータ20若しくは繰出ロール15からの回転から動力を得て、低速で連続回転するようになっている。ガンタイプのバーナ16と排気筒18は遠赤外線放射体14の回転を妨げない構造でそれぞれ接続されている。穀粒取出室4の遠赤外線放射体14を配置してある部分は、排気筒18と二重筒となっている吸気ダクト21によって熱風供給室10と排風室12の吸引送風機13に通じる部分の境目に接続されており、遠赤外線放射体14の回転軸受部19またはその周囲には外気が吸引導入されるようにして、その回転軸受部19およびその付近の過熱防止と遠赤外線放射体14の表面に付着する塵埃の除去を図っている。遠赤外線放射体14の排気側に接続した排気筒18と吸気ダクト21は上記熱風供給室10に開口し、熱風供給室10と排風室12の吸引送風機13に通じる部分で開口している。遠赤外線放射体14に設けてあるバーナ16は、乾燥の所要熱源、すなわち遠赤外線の放射と温風を生じさせるための全熱量を満たすものである。
【0019】
熱風供給室10と排風室12の吸引送風機13に通じる部分の境目には、排気筒18と吸気ダクト21を熱風供給室10側に連通させるか、または排風室12の吸引送風機13に通じる部分に連通させるかを切り替える切替ダンパ22が設けられていて、穀粒の張込時および排出時には、切替ダンパ22の切り替えにより遠赤外線放射体14の排気側と遠赤外線放射体12を設けた穀粒取出室4との連通部を吸引送風機13側に直に連通させることができるようになっている。
【0020】
切替ダンパ22が穀粒取出室4と吸引送風機13側を直に連通させる方向に切り替わっていている状態であっても、吸引送風機13の作用によって、熱風供給室10から熱風供給胴9そして乾燥通路8、排風胴11を経て排風室12には外気が流入し、穀粒貯留槽2
や通風乾燥部3で発生する塵埃は吸引送風機13から機外に排出できるようになっている。
【0021】
穀粒乾燥装置に穀物を投入(張込時)または排出作業を行う場合に、投入時にあっては乾燥機本体1のほかに乾燥機本体1内に穀粒を投入する装置や、排出時にあっては籾摺り装置を稼動させながら籾摺り装置に穀粒を乾燥機本体1から排出させる場合では、時として許容電力を消費電力が上回る場合が発生する。この場合に乾燥機本体1の吸引送風機13だけを停止させることによって、消費電力が許容電力を上回らないようにすることが可能であるが、作業場所に塵埃を発生して作業環境を悪化させてしまう。
【0022】
そこで、吸引送風機13を乾燥機本体1内で発生する塵埃の飛散だけを防止する若干の風量を発生させるため吸引送風機13を低速で回転させる。通常、穀粒乾燥装置においてはその使用電力の半分以上を吸引送風機13が使用しているが、乾燥機本体1より塵埃が飛散しない程度の風量で良いため、その使用電力は1/10以下となる場合が多く、張込時、排出時に穀粒乾燥装置以外の装置を稼動させていても許容電力内に使用電力をおさめることが可能となる。
【0023】
通常の乾燥状態においては、吸引送風機13は乾燥に適した通常の風量を発生させるために高回転で動作しているので、熱風供給室10で多くの外気を吸引すると共に、穀粒取出室4の遠赤外線放射体14の回転軸受部19またはその周囲から外気が穀粒取出室4で発生する塵埃を強制的に吸引するので、遠赤外線放射体14の表面には塵埃が付着することがない。しかしながら、張込時排出時に吸引送風機13を低速回転させると当然ながら回転軸受部19またはその周囲から外気の吸引量が減少し、遠赤外線放射体14の表面に塵埃が付着するものである。
【0024】
そこで、熱風供給室10と排風室12の吸引送風機13に通じる部分の境目に設けられた切替ダンパを、排気筒18と吸気ダクト21を熱風供給室10側に連通させる方向から、排風室12の吸引送風機13に通じる部分に連通させる方向に切り替えることによって、吸引送風機13の風量が減少しても、優先的に回転軸受部19またはその周囲から吸引される外気の量を増やして、穀粒取出室4内に発生する塵埃を吸引し、遠赤外線放射体14の表面への塵埃の付着を防止するものである。
【0025】
なお、張込時排出時では乾燥通路8内に穀粒が滞留して穀層をなしているため、通風抵抗が発生し、乾燥通路8を若干の通風はあるものの、穀粒取出室4内からの吸引が優先的に行われるものである。乾燥通路8では穀層で通風抵抗はあるものの、熱風供給室10からの若干の外気が熱風供給胴9から乾燥通路8を通過し、排風胴11を通って排風室12から吸引送風機13で機外に排出されるので、通風乾燥部3、穀粒貯留部2で発生する塵埃の量を軽減できるものである。
【0026】
本発明に係る穀粒乾燥装置によれば、遠赤外線放射体14により被乾燥穀粒に遠赤外線を照射することにより、穀粒の内部を比較的短時間に加温して水分を表面に移行させ、かつ被乾燥穀粒の表面に対する通風により被乾燥穀粒の表面から水分を速やかに蒸発させて被乾燥穀粒を比較的短時間で効率よく乾燥することができる。
【0027】
そして、本発明に係る穀粒乾燥装置によれば、穀粒の張込時および排出時には切替ダンパ22により、遠赤外線放射体14の排気側と遠赤外線放射体14を設けた穀粒取出室4との連通部を吸引送風機13側に直に連通させることにより、特に穀粒の張込時に穀粒取出室4内で飛散する塵埃を吸引送風機13による吸引風によって機外に排除して遠赤外線放射体14の表面に堆積するのを防止でき、乾燥中の穀粒に悪臭が付着して生じる品位の低下を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る穀粒乾燥装置の平断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る穀粒乾燥装置の一部を破断して示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る穀粒乾燥装置の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 乾燥機本体
2 穀粒貯留槽
3 通風乾燥部
4 穀粒取出室
5 穀粒搬出コンベア
6 上部コンベア
7 昇降機
8 乾燥通路
9 熱風供給胴
10 熱風供給室
11 排風胴
12 排風室
13 吸引送風機
14 遠赤外線放射体
15 繰出ロール
16 バーナ
17 熱放射筒
18 排気筒
19 回転軸受部
20 モータ
21 吸気ダクト
22 切替ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機本体の上段に穀粒貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀粒取出室をそれぞれ設け、穀粒貯留槽に貯留した穀粒を通風乾燥部、穀粒取出室、穀粒貯留槽の経路で循環流動させながら乾燥する穀粒乾燥装置において、
穀粒取出室内には、通風乾燥部から流下する穀粒に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を設け、
この遠赤外線放射体は乾燥の熱源となるバーナを備えており、
前記通風乾燥部に外気を吸引流通させる吸引風路には遠赤外線放射体の排気側と遠赤外線放射体を設けた穀粒取出室とを連通させ、
穀粒の張込時および排出時には遠赤外線放射体の排気側と遠赤外線放射体を設けた穀粒取出室との連通部を吸引送風機側に直に連通させる切替ダンパを設けたこと
を特徴とする穀粒乾燥装置。
【請求項2】
穀粒に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体は、円筒形であってその一端の軸心にバーナの炎熱放射筒を臨ませ、かつ他端の軸心に燃焼熱気の排気筒を接続して、軸心を中心にして回転する構成とし、遠赤外線放射体の一方の回転軸受部から穀粒取出室に外気を導入するように構成したことを特徴とする請求項1記載の穀粒乾燥装置。
【請求項3】
吸引送風機の風量を、循環流動させながら乾燥を行う乾燥時の風量より減少させた場合に、切替ダンパによって穀物取出槽との連通部を吸引送風機側に直に連通させることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の穀粒乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−271169(P2007−271169A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97784(P2006−97784)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】