説明

積層セラミックコンデンサ

【課題】誘電体セラミック層をより一層薄層化・多層化した場合であっても、誘電特性、絶縁性、温度特性、高温負荷特性等の諸特性が良好で、かつ耐熱衝撃性が良好な積層セラミックコンデンサを実現する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサは、一般式ABOで表されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする誘電体セラミック層6a〜6gと、Niを主成分とする内部電極2a〜2hとが交互に積層されている。そして、少なくともMg及びLiを含有した結晶性酸化物が、内部電極2a〜2h及び誘電体セラミック層6a〜6gのうちの少なくともいずれか一方に存在している。前記結晶性酸化物は、大部分が内部電極2a〜2h中のNiに接しているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関し、より詳しくは誘電体セラミック層がチタン酸バリウム系化合物を主成分とし、内部電極がNiを主成分とした積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサでは、従来より、セラミック材料としては高誘電率を有するチタン酸バリウム系化合物が広く使用され、内部電極材料としては安価で良好な導電性を有するNiが広く使用されている。
【0003】
そして、近年におけるエレクトロニクス技術の発展に伴い、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化が急速に進行している。
【0004】
この種の積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層と内部電極とを交互に積層し、焼成処理して得られたセラミック焼結体の両端部に外部電極を形成している。上記誘電体セラミック層を薄層化して多数積層することにより積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化を図ることができる。
【0005】
そして、特許文献1には、誘電体セラミック層は、断面研磨面における欠陥部の発生面積率が1%以下であり、誘電体セラミック層と内部電極との間に、誘電体セラミック層の成分と内部電極の成分とを含有する界面層が形成された積層セラミックコンデンサが提案されている。
【0006】
また、特許文献1には、誘電体セラミック層が少なくともBa、Ti、Si及びMgを含み、内部電極は、少なくともSiを含み、界面層は、Ba−Ti−Si−Mgの酸化物を主成分とする積層セラミックコンデンサが開示されている。
【0007】
特許文献1では、誘電体セラミック層の断面研磨面における欠陥部の発生面積率が1%以下とすることにより誘電体セラミック層を緻密な構造とし、また界面層を形成することにより、誘電体セラミック層と内部電極との間でより強い接合状態を得ている。そして、誘電体セラミック層、内部電極、及び界面層が上記成分元素を含有することにより、誘電体セラミック層の厚みが3μm、積層数が150程度の積層セラミックコンデンサで、良好な耐熱衝撃性、耐湿負荷特性及び誘電特性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−270458号公報(請求項1、段落番号〔0031〕、〔0033〕、〔0056〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、積層セラミックコンデンサでは、更なる小型大容量の製品が求められており、誘電体セラミック層の厚みを1μm以下に薄層化し、積層数を400以上に多層化した場合であっても各種特性の良好な積層セラミックコンデンサが要求されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1では、誘電体セラミック層の厚みが3μm、積層数150程度であれば、耐熱衝撃性、耐湿負荷特性及び誘電特性を満足し得るものの、上述のように誘電体セラミック層の厚みを1μm以下に薄層化し、積層数を400以上に多層化した場合は、耐熱衝撃性が劣化し、実装時に急激な温度変化が生じると、クラック等の欠陥が生じるおそれがあった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、誘電体セラミック層をより一層薄層化・多層化した場合であっても、誘電特性、絶縁性、温度特性、高温負荷特性等の諸特性が良好で、かつ耐熱衝撃性が良好な積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、セラミック材料にチタン酸バリウム系化合物を使用し、内部電極材料にNiを使用した積層セラミックコンデンサについて、鋭意研究を行ったところ、誘電体セラミック層及び内部電極のうちのいずれか一方に少なくともMg−Liを含む結晶性酸化物を含有させることにより、誘電特性、絶縁性、静電容量の温度特性、高温負荷特性等の諸特性を確保しつつ耐熱衝撃性を向上させることができるという知見を得た。
【0013】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、一般式ABOで表されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする誘電体セラミック層と、Niを主成分とする内部電極とが交互に積層されてなる積層セラミックコンデンサにおいて、少なくともMg及びLiを含有した結晶性酸化物が、前記誘電体セラミック層及び内部電極のうちの少なくともいずれか一方に存在することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の積層セラミックコンデンサは、前記結晶性酸化物は、70%以上が前記内部電極中のNiと接していることを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明の積層セラミックコンデンサは、前記チタン酸バリウム系化合物は、Aサイトが、Baを78〜100モル%、Srを0〜2モル%、Caを0〜20モル%の範囲で含有し、Bサイトが、Tiを96〜100モル%、Zrを0〜2モル%、Hfを0〜2モル%の範囲で含有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明者らの更なる鋭意研究の結果、La、Ce等の特定の希土類元素RやMn、Ni等の特定の金属元素Mを誘電体セラミック層中に所定量含有させることにより、誘電特性、絶縁性、温度特性、耐熱衝撃性等、各種諸特性を良好に維持しつつ高温負荷特性をより一層向上させることができ、更なる信頼性向上を図ることができることが分かった。
【0017】
すなわち、本発明の積層セラミックコンデンサは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYの中から選択された少なくとも1種の元素R、及びMn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Li、Al、Mo、W及びVの中から選択された少なくとも1種の元素Mのうちの少なくとも一方を含有し、前記元素Rの含有量は、前記主成分100モル部に対し0.1〜3.0モル部であり、前記元素Mの含有量は、前記主成分100モル部に対し0.2〜5モル部であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
上記積層セラミックコンデンサによれば、少なくともMg及びLiを含有した結晶性酸化物が、前記誘電体セラミック層及び内部電極のうちの少なくともいずれか一方に存在するので、前記結晶性酸化物を内部電極中のNiと接することが可能となって強度が向上し、これにより熱衝撃を緩和させることができる。そして、その結果、誘電特性、絶縁性、温度特性、高温負荷特性等の諸特性を確保しつつ耐熱衝撃性を向上させることができる。すなわち、上述した諸特性が良好で、かつ実装時に急激な温度変化が生じてもクラック等の欠陥が生じることのない積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0019】
また、特定の希土類元素R、特定の金属元素Mのうちの少なくとも一方を含有し、前記元素Rの含有量は、前記主成分100モル部に対し0.1〜3.0モル部であり、前記元素Mの含有量は、前記主成分100モル部に対し0.2〜5モル部であるので、より一層の良好な高温負荷特性を有し、長寿命で信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0022】
図1は本発明に係る積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
【0023】
該積層セラミックコンデンサは、Niを主成分とする内部電極2a〜2fがセラミック焼結体1に埋設されると共に、該セラミック焼結体1の両端部には外部電極3a、3bが形成され、さらに該外部電極3a、3bの表面には第1のめっき皮膜4a、4b及び第2のめっき皮膜5a、5bが形成されている。
【0024】
すなわち、セラミック焼結体1は、誘電体セラミック層6a〜6gと内部電極層2a〜2fとが交互に積層されて焼成されてなり、内部電極層2a、2c、2eは外部電極3aと電気的に接続され、内部電極層2b、2d、2fは外部電極3bと電気的に接続されている。そして、内部電極層2a、2c、2eと内部電極層2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を形成している。
【0025】
前記誘電体セラミック層6a〜6gは、チタン酸バリウム系化合物を主成分としている。
【0026】
このチタン酸バリウム系化合物は、一般式ABOで表わされるペロブスカイト型構造を有しており、具体的な形態としては、AサイトがBa、BサイトがTiで形成されたBaTiO、Baの一部がCa及びSrのうちの少なくとも1種の元素で置換された(Ba,Ca)TiO、(Ba,Sr)TiO、又は(Ba,Ca,Sr)TiO、Tiの一部がZr、Hfのうちの少なくとも1種の元素で置換されたBa(Ti,Zr)O、Ba(Ti,Hf)O、又はBa(Ti,Zr,Hf)O、或いはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
ただし、Baの一部をSr及びCaのうちの少なくともいずれか一方で置換する場合は、Srは2モル%以下、Caは20モル%以下が好ましい。すなわち、Aサイトは、Baが78〜100モル%、Srが0〜2モル%、Caが0〜20モル%の範囲で含有されるのが好ましい。
【0028】
また、Tiの一部をZr及びHfのうちの少なくともいずれか一方で置換する場合は、Zrは2モル%以下、Hfは2モル%以下が好ましい。すなわち、Bサイトは、Tiが96〜100モル%、Zrが0〜2モル%、Hfが0〜2モル%の範囲で含有されるのが好ましい。
【0029】
また、AサイトとBサイトとの配合モル比は、化学量論的には1.000であるが、各種特性や焼結性等に影響を与えない程度に、必要に応じてAサイト過剰、又はBサイト過剰となるように配合される。
【0030】
そして、本実施の形態では、誘電体セラミック層6a〜6g及び内部電極2a〜2hのうちの少なくとも一方に、少なくともMg及びLiを含有したMg−Li−O系結晶性酸化物が含有されている。
【0031】
そして、これにより誘電体セラミック層を1μm以下に薄層化し、400層以上に多層化した場合であっても、誘電特性、絶縁性、温度特性、高温負荷特性等の諸特性を確保しつつ、耐熱衝撃性を向上させることができ、実装時に急激な温度変化が生じても積層セラミックコンデンサにクラック等の欠陥が生じるのを回避している。
【0032】
すなわち、例えば、内部電極2a〜2hにMg−Li−O系結晶性酸化物を含有させた場合は、Mg−Li−O系結晶性酸化物のうち、70%以上の個数割合で内部電極2a〜2h中のNiと接して存在し、その結果、実装時の急激な温度変化に対する耐性が増し、耐熱衝撃性を向上させることが可能となる。
【0033】
また、誘電体セラミック層6a〜6g中にMg−Li−O系結晶性酸化物を含有させた場合は、誘電体セラミック層6a〜6gを1μm以下に薄層化すると、Mg−Li−O系結晶性酸化物が内部電極2a〜2hの界面に存在して内部電極2a〜2hのNiと接する。したがって、この場合もMg−Li−O系結晶性酸化物が内部電極2a〜2h中のNiと接して存在し、その結果、実装時の急激な温度変化に対する耐性が増し、耐熱衝撃性を向上させることが可能となる。
【0034】
尚、上述したようにMg−Li−O系結晶性酸化物は、誘電体セラミック層6a〜6g及び内部電極2a〜2hのうちの少なくとも一方に含有していればよいが、内部電極2a〜2hに含有している方が、70%以上のMg−Li−O系結晶性酸化物がNiと接して存在することからより好ましい。
【0035】
また、Mg−Li−O系結晶性酸化物の積層セラミックコンデンサ中の含有量は、誘電特性、静電容量の温度特性、高温負荷特性等、他の諸特性に影響を与えない範囲であれば特に限定されるものではなく、例えば誘電体セラミック層とMg−Li−O系結晶性酸化物が、重量比率で99.7〜99.9:0.3〜0.1となるように配合される。
【0036】
また、Mg−Li−O系結晶性酸化物についても、少なくともMg、Liが含まれていればよく、例えばNi、Ba、Mn等他の酸化物成分が含まれていても所期の作用効果を奏することが可能である。
【0037】
さらに、本積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック6a〜6g中に特定の希土類元素酸化物RO3/2、及び/又は特定の金属酸化物MO(vは金属元素Mの価数によって一義的に決まる正の数)を添加するのも好ましい。
【0038】
ここで、特定希土類元素Rとしては、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYを挙げることができ、特定金属元素Mとしては、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Li、Al、Mo、W及びVを挙げることができる。
【0039】
このような特定希土類元素R及び特定金属元素Mを添加することにより、高温負荷特性を高めることができ、より優れた信頼性を得ることができる。
【0040】
ただし、特定希土類元素Rを添加する場合は、主成分であるチタン酸バリウム系化合物100モル部に対し0.1〜3モル部が好ましい。これは前記主成分100モル部に対し0.1モル部未満の場合は、未添加の場合と比較して信頼性向上の効果が生じず、一方3モル部を超えて添加すると誘電特性が低下するおそれがあるからである。
【0041】
また、特定金属元素Mを添加する場合は、前記主成分100モル部に対し0.1〜5モル部が好ましい。これは主成分100モル部に対し0.1モル部未満の場合は、未添加の場合と比較して信頼性向上の効果が生じず、一方5モル部を超えて添加すると誘電特性が低下するおそれがあるからである。
【0042】
次に、Mg−Li−O系結晶性酸化物を内部電極中に含有する場合について、上記積層セラミックコンデンサの製造方法を詳述する。
【0043】
まず、セラミック素原料として、Ba化合物、Ti化合物を用意し、必要に応じてCa化合物、Sr化合物、Zr化合物、Hf化合物等を用意する。そしてこれらセラミック素原料を所定量秤量し、その秤量物をPSZ(Partially Stabilized Zirconia:部分安定化ジルコニア)ボール等の粉砕媒体及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、900〜120℃の温度で所定時間、熱処理を行い、これにより平均粒径0.1〜0.2μmのチタン酸バリウム系化合物からなる主成分粉末を作製する。
【0044】
次いで、上記主成分原料粉末に必要に応じてBaCOや焼結助剤(例えば、SiO)、特定希土類元素酸化物RO3/2、特定金属酸化物MO等の添加物を添加し、十分に混合してセラミック原料粉末を作製する。次いで、このセラミック原料粉末を有機バインダや有機溶剤、粉砕媒体と共にボールミルに投入して湿式混合し、セラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法等によりセラミックスラリーに成形加工を行い、焼成後の厚みが1μm以下となるようにセラミックグリーンシートを作製する。
【0045】
一方、Mg化合物、Li化合物、及び必要に応じてNi化合物、Ti化合物、Ba化合物、Mn化合物等を用意し、これらを所定量秤量した後、粉砕媒体と共にボールミルに投入して湿式混合する。そして、この混合物を乾燥させた後、900〜1000℃で所定時間熱処理を行い、Mg−Li−O系結晶性酸化物を作製する。
【0046】
次いで、導電性材料としてのNi粉末、有機ビヒクル及び有機溶剤を含有した調合物を用意し、これら調合物にMg−Li−O系結晶性酸化物を所定量添加し、これにより内部電極用導電性ペーストを作製する。
【0047】
そして、この内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施し、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成する。
【0048】
次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定方向に複数枚積層した後、これを導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製する。そしてこの後、温度300〜500℃で脱バインダ処理を行ない、さらに、酸素分圧が10-9〜10-12MPaに制御されたH−N−HOガスからなる還元性雰囲気下、温度1100〜1300℃で約2時間焼成処理を行なう。これにより導電膜とセラミックグリーンシートとが共焼結され、セラミック層6a〜6gと内部電極2a〜2fとが交互に積層されたセラミック焼結体1が得られる。
【0049】
次に、セラミック焼結体1の両端面に外部電極用導電性ペーストを塗布し、600〜800℃の温度で焼付処理を行い、外部電極3a、3bを形成する。
【0050】
尚、外部電極用導電性ペーストに含有される導電性材料についても、特に限定されるものではないが、低コスト化の観点から、AgやCu、或いはこれらの合金を主成分とした材料を使用するのが好ましい。
【0051】
また、外部電極3a、3bの形成方法としては、セラミック積層体の両端面に外部電極用導電性ペーストを塗布した後、セラミック積層体と同時に焼成処理を施すようにしてもよい。
【0052】
そして、最後に、電解めっきを施して外部電極3a、3bの表面にNi、Cu、Ni−Cu合金等からなる第1のめっき皮膜4a、4bを形成し、さらに該第1のめっき皮膜4a、4bの表面にはんだやスズ等からなる第2のめっき皮膜5a、5bを形成し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0053】
このように本実施の形態では、内部電極2a〜2hにMg−Li−O系結晶性酸化物を含有させることにより、該Mg−Li−O系結晶性酸化物のうち、70%以上の個数割合でNiと接して存在させることができ、これにより誘電特性、絶縁性、静電容量の温度特性、高温負荷特性を確保しつつ耐熱衝撃性を向上させることができる。そしてその結果、実装時に急激な温度変化が生じてもクラック等の生じることもなく、諸特性の良好な信頼性の優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0054】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、Mg−Li−O系結晶性酸化物を内部電極2a〜2h中に含有された場合について説明したが、Mg−Li−O系結晶性酸化物を誘電体セラミック層6a〜6gに含有させる場合は、セラミック原料粉末の作製工程中にMg−Li−O系結晶性酸化物を添加すればよい。
【0055】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0056】
〔試料の作製〕
(試料番号1)
セラミック素原料として、BaCO、TiOを所定量秤量し、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、1150℃の温度で約2時間、熱処理を行い、これにより平均粒径0.15μmのBa1.03TiOからなる主成分粉末を作製した。
【0057】
次に、SiO及びBaCOを用意した。そして、Ba1.03TiO100モル部に対し、SiO1.5モル部、BaCO1モル部となるように、これらBa1.03TiO、SiO、及びBaCOを秤量し、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させてセラミック原料粉末を得た。
【0058】
次いで、上記セラミック原料粉末をエタノールやポリビニルブチラール系バインダ、及びPSZボールと共にボールミルに投入して湿式混合し、これによりセラミックスラリーを作製し、さらにドクターブレード法によりセラミックスラリーを成形し、焼成後の厚みが0.8μmとなるようにセラミックグリーンシートを作製した。
【0059】
一方で、MgCO及びLiCOを用意し、配合比率がモル比で1:1となるように、これらMgCO及びLiCOを所定量秤量した。そして、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、900℃の温度で約2時間、熱処理を行い、これにより平均粒径0.08μmのMg−Li−O結晶性酸化物を作製した。尚、Mg−Li−Oの酸化物が結晶性を有することは、X線回折装置(XRD)で確認した。
【0060】
次いで、Ni粉末、有機ビヒクル及び有機溶剤を含有した調合物を用意した。そして、セラミック原料粉末とMg−Li−O結晶性酸化物とが重量比で99.8:0.2となるように、Mg−Li−O系結晶性酸化物を前記調合物に添加し、これにより内部電極用導電性ペーストを得た。
【0061】
次に、前記内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施し、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成した。
【0062】
次いで、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを所定枚数積層し、導電膜の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し、圧着し、所定寸法に切断してセラミック積層体を作製した。そしてこの後、窒素雰囲気下、300℃の温度で脱バインダ処理を行ない、さらに、酸素分圧が10-10MPaに制御されたH−N−HOガスからなる還元性雰囲気下、温度1120℃で約2時間焼成処理を行ない、これにより導電膜とセラミック材とが共焼結され、内部電極が埋設されたセラミック焼結体を作製した。
【0063】
次に、Cu粉末及びB−LiO−SiO−BaO系のガラスフリットを含有した外部電極用導電性ペーストを用意した。そして、外部電極用導電性ペーストをセラミック焼結体の両端面に塗布し、窒素雰囲気下、800℃の温度で焼付処理を行い、外部電極を形成し、実施例1の試料を作製した。
【0064】
得られた試料の誘電体セラミック層の厚みは0.8μmであり、外形寸法は、長さ:1.6mm、幅:0.8mm、厚み:0.8mm、誘電体セラミック層一層あたりの対向電極面積は0.9mm、有効積層数は400層であった。
【0065】
尚、試料番号1について、破断面を研磨した後、FE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡)で観察し、WDX(波長分散型X線マイクロアナライザ)で組成をマッピング分析したところ、Mg−Li−O結晶性酸化物が生成されていることが確認された。
【0066】
(試料番号2)
試料番号1と同様の方法・手順で、Ba1.03TiOからなる主成分粉末及びMg−Li−O系結晶性酸化物を作製した。
【0067】
次いで、SiO及びBaCOを用意した。そして、Ba1.03TiO100モル部に対し、SiO1.5モル部、BaCO1モル部となるように、これらBa1.03TiO、SiO、及びBaCOを秤量し、セラミック原料粉末を作製した。次いで、セラミック原料粉末とMg−Li−O系結晶性酸化物とが重量比率で99.8:0.2となるようにMg−Li−O系結晶性酸化物を秤量した。そして、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させてセラミック原料粉末を得た。
【0068】
次に、上記セラミック原料粉末をエタノールやポリビニルブチラール系バインダ、及びPSZボールと共にボールミルに投入して湿式混合し、これによりセラミックスラリーを作製し、さらにドクターブレード法によりセラミックスラリーを成形し、焼成後の厚みが0.8μmとなるようにセラミックグリーンシートを作製した。
【0069】
次いで、Ni粉末、有機ビヒクル及び有機溶剤を含有した内部電極用導電性ペーストを用意し、この内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を施し、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成した。
【0070】
そしてその後は、試料番号1と同様の方法・手順で試料番号2の試料を作製した。
【0071】
また、この試料番号2について、破断面を研磨した後、FE−SEMで観察し、WDXで組成をマッピング分析したところ、Mg−Li−O結晶性酸化物が生成されていることが確認された。
【0072】
(試料番号3)
試料番号1と同様の方法・手順で、Ba1.03TiOを作製した。
【0073】
次いで、SiO、BaCO、MgCO及びLiCOを用意した。そして、Ba1.03TiO100モル部に対し、SiO1.5モル部、BaCO1モル部となるように、これらBa1.03TiO、SiO、及びBaCOを秤量し、さらにセラミック原料粉末中で0.2重量%となるようにMgCO及びLiCOを秤量した。尚、MgCOとLiCOとの混合比率はモル比で1:1となるようにした。そして、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させてセラミック原料粉末を得た。
【0074】
次に、上記セラミック原料粉末をエタノールやポリビニルブチラール系バインダ、及びPSZボールと共にボールミルに投入して湿式混合し、これによりセラミックスラリーを作製し、さらにドクターブレード法によりセラミックスラリーを成形し、焼成後の厚みが0.8μmとなるようにセラミックグリーンシートを作製した。
【0075】
次いで、Ni粉末、有機ビヒクル及び有機溶剤を含有した内部電極用導電性ペーストを用意し、この内部電極用導電性ペーストを使用してセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷を行い、前記セラミックグリーンシートの表面に所定パターンの導電膜を形成した。
【0076】
そしてその後は、試料番号1と同様の方法・手順で試料番号3の試料を作製した。
【0077】
また、この試料番号3について、破断面を研磨した後、FE−SEMで観察し、WDXで組成をマッピング分析したところ、Mg−Li−O結晶性酸化物が生成されていないことが確認された。
【0078】
〔試料の評価〕
試料番号1〜3の各試料について、飛行時間型二次イオン質量分析(time of flight-secondary ion mass spectrometry;以下、「TOF−SIMS」という。)法により任意の研磨断面を分析し、偏析物の成分、及び偏析物の存在位置を確認した。すなわち、イオンビーム(一次イオン)を試料表面に照射し,試料から放出される二次イオンを飛行時間で検出し、各質量における検出量を算出することで物質を同定し、偏析物の成分及び偏析物の存在位置を確認した。
【0079】
その結果、試料番号1は、Mg−Li−Oの偏析物が内部電極に存在し、試料番号2は、Mg−Li−Oの偏析物がセラミック層に存在していることが分かった。そして、これらの偏析物について、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」という。)の電子線回折により調べ、偏析物が結晶性を有することを確認した。
【0080】
また、試料番号1は、70%以上のMg−Li−O系結晶性酸化物がNiと接していることが確認された。
【0081】
これに対し試料番号3は、製造過程で導電性ペースト及びセラミック原料粉末中のいずれにも結晶性酸化物が添加されていないため、内部電極及びセラミック層中のいずれにも結晶性酸化物の偏析物が存在していないことが確認された。
【0082】
次に、試料番号1〜3の各試料について、以下の方法で誘電率、絶縁抵抗、静電容量の温度特性、耐熱衝撃性及び高温負荷特性を評価した。
【0083】
誘電率は、自動ブリッジ式測定器を使用し、周波数1kHz、実効電圧0.5Vrms、温度25℃の条件下で静電容量Cを測定し、この測定値と試料寸法から求めた。
【0084】
絶縁抵抗は、温度25℃下、6.3Vの直流電圧を180秒間印加してlogIRを測定し、静電容量Cと絶縁抵抗Rの積であるCR積で評価した。
【0085】
静電容量の温度特性は、+25℃の静電容量を基準とし、−55℃、+85℃、及び+105℃における静電容量の温度変化率ΔC-55/C25、ΔC+85/C25、ΔC+105/C25を測定し、評価した。尚、静電容量の温度変化率が、−55℃〜+105℃の温度範囲で±22%以内であればEIA規格のX6S特性を満足することとなる。
【0086】
耐熱衝撃性は、各試料50個について耐衝撃性試験を行い評価した。すなわち、各試料50個について、275℃及び325℃に温度設定したはんだ槽にそれぞれ3分間浸漬し、各試料をはんだ槽から引き上げて樹脂で固めた後、研磨し、顕微鏡観察してクラックが1個でも認められた試料を不良品と判定して評価した。
【0087】
高温負荷特性は、各試料100個について高温負荷試験を行い評価した。すなわち、温度105℃で電界強度が10kV/mmとなるように7Vの電圧を印加し、絶縁抵抗の経時変化を測定し、1000時間経過した時点で、絶縁抵抗が200kΩ以下になった試料を不良品と判定して評価した。
【0088】
表1は、試料番号1〜3の誘電率、CR積、静電容量の温度特性、耐熱衝撃性、耐湿負荷特性を示している。
【0089】
【表1】

【0090】
試料番号1〜3は、誘電率、絶縁抵抗、静電容量の温度特性、及び耐湿負荷特性については、いずれも良好な結果を得た。
【0091】
しかしながら、試料番号3は、耐熱衝撃試験で、275℃の温度では50個中1個しか不良品は発生しなかったが、325℃の温度では、50個中7個の不良品が発生し、不良発生率が増加した。
【0092】
これに対し試料番号1、2では、275℃で耐熱衝撃試験を行っても不良品は発生せず、325℃で耐熱衝撃試験を行った場合であっても不良品は0〜1個と耐熱衝撃性が良好であることが分かった。特に、試料番号2は、Mg−Li−O系結晶性酸化物の70%以上が内部電極中のNiと接しているため、不良品の発生は皆無であった。
【実施例2】
【0093】
〔試料の作製〕
セラミック素原料として、BaCO、CaCO、SrCO、TiO、ZrO、HfOを用意した。そしてこれらセラミック素原料を所定量秤量し、PSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、1100〜1200℃の温度で約2時間、熱処理し、これにより平均粒径0.11〜0.17μmの主成分粉末を作製した。
【0094】
次に、SiO及びBaCOを用意した。そして、主成分100モル部に対し、SiO2モル部、BaCO1モル部となるように、主成分粉末、SiO、及びBaCOを秤量し、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させてセラミック原料粉末を得た。
【0095】
次いで、上記セラミック原料粉末をエタノールやポリビニルブチラール系バインダ、及びPSZボールと共にボールミルに投入して湿式混合し、これによりセラミックスラリーを作製し、さらにドクターブレード法によりセラミックスラリーを成形し、焼成後の厚みが0.8μmとなるようにセラミックグリーンシートを作製した。
【0096】
次に、MgCO、NiO、BaCO、TiO、LiCO、及びMnOを用意した。そして、これらの配合比率がモル比で15:65:15:2:20:1となるように秤量し、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、1000℃の温度で約2時間、熱処理し、これにより平均粒径0.05μmのMg−Ni−Ti−Ba−Li−Mn−O系結晶性酸化物を作製した。尚、この酸化物が結晶性を有することは、実施例1の試料番号1と同様、X線回折装置(XRD)で確認した。
【0097】
次いで、Ni粉末、有機ビヒクル及び有機溶剤を含有した調合物を用意した。そして、セラミック原料粉末とMg−Ni−Ti−Ba−Li−Mn−O系結晶性酸化物とが重量比率で99.7:0.3となるように、前記調合物に添加し、これにより内部電極用導電性ペーストを得た。
【0098】
そしてその後は、実施例1の試料番号1と同様の手順・方法で試料番号11〜16の試料を作製した。
【0099】
〔試料の評価〕
試料番号1〜16の各試料について、〔実施例1〕と同様、TOF−SIMS法により偏析物の成分、及び偏析物の存在位置を確認した。
【0100】
その結果、試料番号1〜16の各試料は、いずれもMg−Ni−Ti−Ba−Li−Mn−Oの偏析物が内部電極に存在し、しかも70%以上の結晶性酸化物がNiと接していることが確認された。また、これらの偏析物について、TEMの電子線回折により調べたところ、結晶性を有することが確認された。
【0101】
次に、試料番号11〜16の各試料について、〔実施例1〕と同様の方法・手順で誘電率、絶縁抵抗、静電容量の温度特性、耐熱衝撃性及び高温負荷特性を評価した。
【0102】
表2は、試料番号11〜16の誘電率、CR積、静電容量の温度特性、耐熱衝撃性、高温負荷特性を示している。
【0103】
【表2】

【0104】
この表2から明らかなように、誘電率、絶縁抵抗、静電容量の温度特性、耐熱衝撃性及び高温負荷特性の諸特性については、いずれも良好な結果を得た。
【0105】
すなわち結晶性酸化物として、少なくともMg及びLiを含んでいれば、Ni、Ti、Ba、Mn等を含んでいても特性に影響を与えないことが確認された。
【実施例3】
【0106】
〔試料の作製〕
セラミック素原料として、BaCO、CaCO、TiO、及びZrOを用意した。そしてこれらセラミック素原料を所定量秤量し、PSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、1150℃の温度で約2時間、熱処理し、これにより平均粒径0.16μmの(Ba0.94Ca0.06)(Ti0.996Zr0.004)Oからなる主成分粉末を作製した。
【0107】
次に、RO3/2(RはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びY)、MO(MはMn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Li、Al、Mo、W及びV)、及びSiOを用意した。そして、主成分100モル部に対し、RO3/2が0〜3.5モル部、MOが0〜6.2モル部、SiOが2モル部となるように、主成分粉末、RO3/2、MO、及びSiOを秤量し、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させてセラミック原料粉末を得た。
【0108】
次いで、上記セラミック原料粉末をエタノールやポリビニルブチラール系バインダ、及びPSZボールと共にボールミルに投入して湿式混合し、これによりセラミックスラリーを作製し、さらにドクターブレード法によりセラミックスラリーを成形し、焼成後の厚みが0.8μmとなるようにセラミックグリーンシートを作製した。
【0109】
次に、MgCO、NiO、及びLiCOを用意した。そして、これらの配合比率がモル比で5:10:1となるように秤量し、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、十分に湿式で混合粉砕し、乾燥させた後、1000℃の温度で約2時間、熱処理し、これにより平均粒径0.06μmのMg−Ni−Li−O系結晶性酸化物を作製した。尚、この酸化物が結晶性を有することは、実施例1の試料番号1と同様、X線回折装置(XRD)で確認した。
【0110】
次いで、Ni粉末、有機ビヒクル及び有機溶剤を含有した調合物を用意した。そして、セラミック原料粉末とMg−Ni−Li−O系結晶性酸化物とが重量比率で99.9:0.1となるように、前記調合物に添加し、これにより内部電極用導電性ペーストを得た。
【0111】
そしてその後は、実施例1の試料番号1と同様の手順・方法で試料番号21〜39の試料を作製した。
【0112】
〔試料の評価〕
試料番号21〜39の各試料について、〔実施例1〕と同様、TOF−SIMS法により偏析物の成分、及び偏析物の存在位置を確認した。
【0113】
その結果、試料番号21〜39の各試料は、いずれもMg−Ni−Li−Oの偏析物が内部電極に存在し、しかも70%以上の結晶性酸化物がNiと接していることが確認された。また、これらの偏析物について、TEMの電子線回折により調べたところ、結晶性を有することが確認された。
【0114】
次に、試料番号21〜39の各試料について、〔実施例1〕と同様の方法・手順で誘電率、絶縁抵抗、静電容量の温度特性、耐熱衝撃性及び高温負荷特性を評価した。尚、高温負荷試験は、1000時間のみならず2000時間経過時の絶縁抵抗をも測定し、高温負荷特性を評価した。
【0115】
表3は、試料番号21〜39の組成、表4は、その誘電率、CR積、静電容量の温度特性、耐熱衝撃性、高温負荷特性を示している。
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
この表3及び表4から明らかなように、絶縁抵抗、静電容量の温度特性、及び高温負荷特性の諸特性については、いずれも良好な結果を得た。
【0119】
しかしながら、試料番号21は、元素Rが添加されていないため、高温負荷特性が1000時間経過後では不良品は生じなかったが、2000時間経過後には100個中、2個の不良品が発生した。
【0120】
また、試料番号26は、元素Mが添加されていないため、高温負荷特性が1000時間経過後では不良品は生じなかったが、2000時間経過後には100個中、4個の不良品が発生した。
【0121】
一方、試料番号25は、元素Mが主成分100モル部に対し3.5モル部と過剰であるため誘電率の低下を招いた。
【0122】
また、試料番号35は、元素Mが主成分100モル部に対し6.2モル部と過剰であるため誘電率の低下を招いた。
【0123】
これに対し試料番号22〜24、27〜31、及び33〜39は、元素Rを主成分100モル部に対し0.1〜3.0モル部、元素Mを主成分100モル部に対し0.2〜5.0モル部含有されているので、誘電率が良好であり、かつ高温負荷試験も2000時間経過しても不良品が発生せず、良好な高温負荷特性を得ることができた。
【0124】
以上より元素Rを主成分100モル部に対し0.1〜3.0モル部、元素Mを主成分100モル部に対し0.2〜5.0モル部含有させることにより、誘電特性を損なうことなく高温負荷特性を向上させることができ、信頼性のより一層の向上を図ることができることが分った。
【産業上の利用可能性】
【0125】
誘電体セラミック層が1μm以下に薄層化され、積層数が400層以上に多層化された場合であっても、誘電性、絶縁性、温度特性、高温負荷特性等の諸特性を損なうことなく耐熱衝撃性を向上させる。
【符号の説明】
【0126】
2a〜2f 内部電極
6a〜6g 誘電体セラミック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式ABOで表されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする誘電体セラミック層と、Niを主成分とする内部電極とが交互に積層されてなる積層セラミックコンデンサにおいて、
少なくともMg及びLiを含有した結晶性酸化物が、前記内部電極及び前記誘電体セラミック層のうちの少なくともいずれか一方に存在することを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記結晶性酸化物は、70%以上が前記内部電極中のNiに接していることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記チタン酸バリウム系化合物は、Aサイトが、Baを78〜100モル%、Srを0〜2モル%、Caを0〜20モル%の範囲で含有し、Bサイトが、Tiを96〜100モル%、Zrを0〜2モル%、Hfを0〜2モル%の範囲で含有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYの中から選択された少なくとも1種の元素R、及びMn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Li、Al、Mo、W及びVの中から選択された少なくとも1種の元素Mのうちの少なくとも一方を含有し、
前記元素Rの含有量は、前記主成分100モル部に対し0.1〜3.0モル部であり、前記元素Mの含有量は、前記主成分100モル部に対し0.2〜5モル部であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−187560(P2011−187560A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49458(P2010−49458)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】