説明

積層フィルムの製造方法

【課題】透明基材フィルムと機能層との間の密着を確保しかつ、製品性能の安定性を向上させる積層フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】透明フィルム基材16上に機能層を設ける積層フィルムの製造方法において、該透明基材フィルム16上に少なくとも一種の有機溶剤を含む固形分濃度1重量%未満の下引き塗液を第1塗工部11から塗工する工程と、該下引き塗液の塗工面に該機能層を形成するための塗布液を第2塗工部12から塗工する工程とを有し、前記第1塗工部11と第2塗工部12との距離が、下記式で算出されるy[m]以上であることを特徴とする積層フィルムの製造方法。距離y[m]=(10×b×v/a)0.623 a:下引き塗液の有機溶剤の相対蒸発速度、b:下引き塗液の湿潤膜厚[μm]、v:塗工速度[m/s]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基材フィルムと機能層との間の密着性を向上させる積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに代表される各種ディスプレイの表面には、透明基材フィルム上に液晶内部を保護するためのハードコート層、又は外光の反射によるコントラストの低下や像の映り込みを防止するための防眩層や反射防止層等の機能層を形成した光学フィルムが設けられている。これらの機能層は最表面に存在するために透明基材フィルムと機能層との間の密着性は製品の重要な指標になっている。
【0003】
この密着性を確実に出すためには特許文献1に記載のように大気圧プラズマ処理や大気圧紫外線処理を基材に施した後に機能層を付与することが提案されている。このような方法は基材や機能層の種類を選ばずに効果が発揮されるため有用ではあるが、処理能力の観点から必ずしも効率のよい手段とはいえない。他にもドライ処理の一種としてコロナ処理、UVオゾン処理、エキシマレーザー光照射処理なども知られているが、同様の理由でコストの面で優れているとは言えない。
【0004】
一方で特許文献2に記載のように元々基材を膨潤あるいは溶解する溶剤を含んだ塗液を使って機能層として塗工することも提案されている。この場合は塗工直後から乾燥までの間に塗液に含まれている溶剤が基材を溶解して層を形成するために密着性という点では優れており、機能層の塗工そのもので目的を達成することが出来るためにコストの面では優れている。
【0005】
しかしながら、特に液晶ディスプレイ用の光学フィルムに使われるトリアセチルセルロースフィルム(TAC)は膨潤あるいは溶解する溶剤に触れると平面性が悪化したり、白化したりするために慎重に溶剤は選定されなければならないため、製品性能の安定性の面から問題がある。
【特許文献1】特開2007−245454号公報
【特許文献2】特開2003−205563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、透明基材フィルムと機能層との間の密着を確保しかつ、製品性能の安定性を向上させる積層フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、透明フィルム基材上に機能層を設ける積層フィルムの製造方法において、
該透明基材フィルム上に少なくとも一種の有機溶剤を含む固形分濃度1重量%未満の下引き塗液を第1塗工部から塗工する工程と、
該下引き塗液の塗工面に該機能層を形成するための塗布液を第2塗工部から塗工する工程とを有し、
前記第1塗工部と第2塗工部との距離が、下記式で算出されるy[m]以上であることを特徴とする積層フィルムの製造方法である。
距離y[m]=(10×b×v/a)0.623
a:下引き塗液の有機溶剤の相対蒸発速度、b:下引き塗液の湿潤膜厚[μm]、v:塗工速度[m/s]。
請求項2に記載の発明は、該下引き塗液の湿潤膜厚が0.1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムの製造方法である。
請求項3に記載の発明は、該下引き塗液に含まれる少なくとも一種類以上の有機溶剤が、該透明フィルム基材を溶解あるいは膨潤させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法である。
請求項4に記載の発明は、該第1塗工部における塗工面が重力方向下向きになっており、該第2塗工部までは該下引き塗液の塗工面がロールに接触しないまま搬送されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法である。
請求項5に記載の発明は、該第1塗工部から第2塗工部までの全体にわたり、その全体の雰囲気温度が、該第2塗工部の雰囲気温度に対し、±5℃以内に保たれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法である。
請求項6に記載の発明は、該透明フィルム基材が、トリアセチルセルロースであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明を実施することで、機能層を付与した積層フィルムを、透明基材フィルムと機能層との間の密着を確保しつつ、製品性能の安定性を向上させ製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は本発明における製造装置の一例である。透明基材フィルム16は巻きだし部10より機能層を形成するための塗布液を塗工する第2塗工部12に向けて搬送されるが、まず下引き塗液を塗工する第1塗工部11に到達し、下引き塗液を塗工される。塗工方法はグラビアコーティング法、ロールコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法、ナイフコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。図ではグラビアコーティング法を図示しているが、所望の湿潤膜厚の下引き塗液を機能層塗工面側に塗工できればその方法は問わない。
【0010】
第1塗工部11における塗工面は、重力方向下向きになっているのが好ましい。その理由は、塗工後乾燥していく場合に蒸発した有機溶剤が空気よりも一般的に比重が重いため、塗工面に再び接触することなく自由落下し、塗工ムラを防ぐなど製品性能が向上するからである。
【0011】
第1塗工部11から塗工する下引き塗液は、少なくとも一種の有機溶剤を含む固形分濃度1重量%未満の塗液である。固形分濃度が1重量%以上であると、有機溶剤の透明基材フィルムに対する膨潤あるいは溶解挙動に影響を与え、膜質が変化してしまうため好ましくない。
【0012】
下引き塗液の湿潤膜厚は0.1μm以上50μm以下が望ましく、0.1μm以上10μm以下が最も望ましい。膜厚が薄い場合は下引き塗液がうまく塗工面全面にいきわたらず未塗工部を発生させてしまう。その場合はその部分だけ密着性が弱くなるため好ましくない。また厚い場合はそれだけ透明基材フィルム16の溶解あるいは膨潤が進むため、平面性維持の観点や白化などの故障につながる危険性があり、好ましい塗工厚みは決まってくる。
【0013】
またこのときに塗工される有機溶剤は、透明フィルム基材16を溶解あるいは膨潤させる少なくとも一種が含まれていればよく、それ以外に同じく透明フィルム基材16を溶解あるいは膨潤させるものが入っていてもよい。但し透明フィルム基材16を溶解あるいは膨潤させない有機溶剤が入っていると、単に下引き塗液の乾燥が遅れていくだけで生産性を落とすため望ましくない。
【0014】
透明基材フィルム16を溶解あるいは膨潤させる有機溶剤としては、ポリエチレンテレフタレートを基材に用いた場合は、有機溶剤に対して比較的安定であるが、フェノール、ニトロベンゼン、クロロフェノール、クロロベンゼン、ヘキサフルオロイソプロパノール等が、また基材がトリアセチルセルロースの場合には、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、1,3−ジオキソラン等の有機溶剤が適している。
【0015】
下引き塗液を塗工する第1塗工部11を通過した後、透明基材フィルム16は、下引き塗液の塗工面に機能層を形成するための塗布液を塗工する第2塗工部12に到達する。この間は塗工した下引き塗液に含まれている有機溶剤が乾燥していくが、未乾燥の状態で搬送ロールに接触するとロールと塗膜面両面を汚染してしまうために好ましくない。よって第1塗工部11と第2塗工部12との距離であるパス長(透明基材フィルム16に沿った長さ)の最小値は有機溶剤の種類とその蒸発速度によって規定される。本発明者は種々の有機溶剤によって検討した結果、下記の数式に表される関係を使うことによってその最小値を求めることが出来ることを見出した。
【0016】
y[m]=(10×b×v/a)0.623
a:下引き塗液の有機溶剤の相対蒸発速度(酢酸nブチルを1としたときの値)。有機溶剤の相対蒸発速度は一例として「コンバーティング・テクノロジー便覧(加工技術研究会 編、2006年発刊)」のP−43の表9に示されている。もちろん酢酸nブチルを1として実験で実測しても良い。
b[μm]:下引き塗液の湿潤膜厚
v[m/s]:塗工速度
【0017】
更に下引き塗液が複数の有機溶剤を含む場合は次の数式でy[m]は計算される。各々の有機溶剤の体積分率をcとしたとき、
=b×c
とあらわせられる。そして、下記式によって各有機溶剤の最小値ynが求められる。
=(10×b×v/a0.623
ここで、求められる各有機溶剤のyのうち、最大のyが距離の最小値y[m]となる。
【0018】
y[m]が(10×b×v/a)0.623を下回る場合にあっては、下引き塗液の有機溶剤が透明フィルム基材16上に残った状態で機能層を形成するための塗布液が第2塗工部12によって塗布されることになり、形成される機能層と透明基材フィルム16との密着性が低下する。また、形成される機能層のムラが発生し、面性が低下する。
【0019】
塗工速度はとくに制限されないが、一般的には5m/minから100m/minである。
【0020】
また第1塗工部11と第2塗工部12との間は、有機溶剤の乾燥を行なうものであるので、その場の温度は重要であることは言うまでもない。温度が高すぎると蒸発が加速されるためムラを発生しやすく、温度が低すぎると蒸発が遅くなり乾かないまま第2塗工部12に到達することになる。また第1塗工部11から第2塗工部12にかけての空間と、第2塗工部12の周囲とで温度差が生じると機能層の塗工に悪影響を与える。よって第1塗工部11から第2塗工部12までの全体にわたり、その全体の雰囲気温度が、第2塗工部12の雰囲気温度に対し、±5℃以内に保たれていることが望ましい。
【0021】
第2塗工部12における塗工方法としてはグラビアコーティング法、ロールコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法、ナイフコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。図1ではダイコーティング法が図示されているが、機能層の所望の機能を満たすことが出来れば特に本発明の効果を発現するのに制約を与えないことは言うまでもない。
【0022】
機能層としては例えば防眩性塗膜であれば粒子とバインダーで構成される。またハードコート層であれば、バインダーのみで構成される。粒子としては、平均粒子径0.01〜15μmの無機あるいは有機系粒子が挙げられ、具体的には、シリカ粒子、アクリル粒子、アクリル−スチレン粒子、タルク、各種アルミノケイ酸塩、カオリンクレー、MgAlハイドロタルサイトが挙げられる。これらの粒子を複数組み合わせて使用してもよく、またこれらに限定されるものではない。
【0023】
バインダーとしては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等が挙げられ、特に電離放射線硬化性樹脂等には光重合開始剤が含まれる。
【0024】
電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。熱硬化性樹脂としては、熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。
【0025】
樹脂成分は、通常、有機溶剤で希釈して塗布される。希釈溶媒として用いられるものは、特に限定されないが、組成物の安定性、塗膜に対する揮発性などを考慮して、メタノール・エタノール・イソプロパノール・ブタノール・2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン・メチルエチルケトン・メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル・酢酸エチル・酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール・プロピレングリコール・ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ・ブチルセロソルブ・エチルカルビトール・ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン・ヘプタン・オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン・トルエン・キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの溶媒は1種、又は2種類以上の混合物として用いてよい。但し、樹脂の希釈目的以上の透明フィルム基材を溶解または膨潤させる有機溶剤を使用することは塗工ムラなどの問題を発生しやすくするため好ましくなく、機能層塗液に含まれる全有機溶剤の40重量%未満に抑える必要がある。
【0026】
光重合開始剤としては、活性エネルギー線が照射された際にラジカルを発生するものであればよく、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。光重合開始剤の添加量は、活性エネルギー線硬化単量体10〜80質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましく、1〜5質量部がさらに好ましくい。
【0027】
第2塗工部12によって機能層を塗工した後は、乾燥装置13によって塗膜を乾燥させる必要があるが、その乾燥方法は本発明の効果を制約するものではない。一般的にロールサポートされながらスリットノズルやパンチングメタルから搬送される基材に形成された塗布膜に温度を上昇させた噴流を当てるような方式を導入しても良いし、クイックリターン方式のノズルや基材の搬送方向に平行流を流す方式のノズルから熱風を噴出する方式でも良い。また、片面だけでなく両面から加熱手段を設けても良いし、その場合はロールサポートだけでなく、フローティングユニットのように基材の両面から熱風を当てて乾燥させる方法もある。乾燥させた後は必要に応じて紫外線照射装置、電子線照射装置などの硬化装置14により塗膜を硬化させることもできる。硬化後は、巻き取り部15によって巻き取られる。
【実施例】
【0028】
以下実施例について詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜2および比較例1
透明フィルム基材として厚み80μmトリアセチルセルロース(TAC)を用いて、塗工速度15m/minで図1に示すような塗工機を使用して、まずTACを巻き出し部10から巻き出し、下引き塗液を塗工する第1塗工部11でグラビアコーティング法にて湿潤膜厚2.5μmになるよう酢酸メチル(相対蒸発速度5.1)を塗工した。酢酸メチルはトリアセチルセルロース基材を溶解するものである。その後そのまま塗工面にロールが触れないよう搬送して、次の第2塗工部12で
ペンタエリスリトールトリアクリレート 5重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 5重量部
イルガキュアー184 0.3重量部
トルエン 5重量部
を攪拌、混合した塗布液を、ダイコーティング法により湿潤膜厚7.5μm(乾燥後の乾燥膜厚5μm)になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により1000mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、光学フィルムを作製した。なお両方の塗工部及びその間の空間は23℃で相対湿度55%とした。トルエンはトリアセチルセルロース基材を溶解も膨潤もしない有機溶剤である。
【0030】
このときの下引き塗液を塗布する第1塗工部11と機能層を塗布する第2塗工部12の距離(パス長)を変えて実験した。なお本発明における距離yを算出する式に代入すると、その距離の最小値は1.135[m]となる。そして密着性と面性を評価した。密着性はハードコート層表面を1mm角100点カット後、セロハンテープ[ニチバン(株)製、工業用24mm幅粘着テープ]により密着させ、その後セロハンテープを剥がし、剥離しなかった数を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
比較例2
比較例2として基材として厚み80μmトリアセチルセルロースを用いて、図2に示すような従来の塗工機(下引き塗液を塗布する第1塗工部11を省略してある。その他の条件は実施例1と同じ)で
ペンタエリスリトールトリアクリレート 5重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 5重量部
イルガキュアー184 0.3重量部
酢酸メチル 5重量部
トルエン 5重量部
を攪拌、混合した塗布液を、グラビアコーティング法により湿潤膜厚10μm(乾燥後の乾燥膜厚5μm)になるように15m/minで塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により1000mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、光学フィルムを作製した。上記実施例1と同様に評価し、その評価結果を下記表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
よって本発明のように下引き塗液の塗工を機能層の塗工の所定のパス長前に行なうことにより、密着性や面性に悪影響を与えない機能性の積層フィルムを製造することができることを示した。
【産業上の利用の可能性】
【0035】
本発明は、透明基材フィルムと機能層との間の密着性を向上させる積層フィルムの製造方法に関するもので、反射防止機能などを付与した光学フィルムを始めとする機能性フィルムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に使用される塗工機の一例の説明図である。
【図2】比較例2で用いた、従来使われていた塗工機の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10…巻きだし部
11…第1塗工部
12…第2塗工部
13…乾燥装置
14…硬化装置
15…巻取り部
16…透明フィルム基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材上に機能層を設ける積層フィルムの製造方法において、
該透明基材フィルム上に少なくとも一種の有機溶剤を含む固形分濃度1重量%未満の下引き塗液を第1塗工部から塗工する工程と、
該下引き塗液の塗工面に該機能層を形成するための塗布液を第2塗工部から塗工する工程とを有し、
前記第1塗工部と第2塗工部との距離が、下記式で算出されるy[m]以上であることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
距離y[m]=(10×b×v/a)0.623
a:下引き塗液の有機溶剤の相対蒸発速度、b:下引き塗液の湿潤膜厚[μm]、v:塗工速度[m/s]。
【請求項2】
該下引き塗液の湿潤膜厚が0.1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
該下引き塗液に含まれる少なくとも一種類以上の有機溶剤が、該透明フィルム基材を溶解あるいは膨潤させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
該第1塗工部における塗工面が重力方向下向きになっており、該第2塗工部までは該下引き塗液の塗工面がロールに接触しないまま搬送されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
該第1塗工部から第2塗工部までの全体にわたり、その全体の雰囲気温度が、該第2塗工部の雰囲気温度に対し、±5℃以内に保たれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
該透明フィルム基材が、トリアセチルセルロースであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−189920(P2009−189920A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31576(P2008−31576)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】