説明

積層ブロー壜体

【課題】 本発明は、外層の内側にバリア層を積層した積層ブロー壜体における、金型のピンチオフ部による喰切り性に係る問題を層構成の点から効果的に防止することを課題とする。
【解決手段】 押出成形した筒状の多層パリソンのブロー成形により成形され、口筒部と肩部と胴部とパリソンのピンチオフによるシール部が形成された底部を有し、外殻を形成する外層の内側に所定の機能を発揮するバリア層を積層して構成される積層ブロー壜体において、底部のシール部に至りこのシール部に向けてバリア層の層厚がグラデーション状に減少するバリア層の層厚に係るグラデーション領域を配設する、と云うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層の内側にバリア機能を発揮するバリア層を有する多層パリソンをダイレクトブロー成形方法により成形した合成樹脂製の積層ブロー壜体に関する。

【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、合成樹脂製のブロー壜体についての発明が記載されている。外殻を形成し、成形性や強度や剛性等の壜体としての基本的な性能を担う外層の内側に、酸素等の気体、薬剤や化粧料の成分、水分、香料成分等の成分に対してバリア機能やこれら成分の吸着を防止する機能を発揮するバリア層を積層した、積層ブロー壜体とすることにより、単層では実現できない基本的な性能と高度なバリア機能を併せて発揮させることができる。
【0003】
また、特許文献2には上記のような積層ブロー壜体の前駆体である多層パリソンを共押出成形により成形するための多層ブロー成形用ダイスに係る発明が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO00/69627号公報
【特許文献2】特開平10−128836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、バリア機能を有する壜体の一例として、たとえばポリエチレン(PE)樹脂製の外層にナイロン樹脂製あるいはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂製のバリア層を積層し、高いガスバリア機能を有する積層ブロー壜体が使用されているが、この種の壜体をダイレクトブロー成形する際、共押出成形した多層パリソンの下端部を、金型のピンチオフ部で喰切って底部のシール部を形成するが、バリア層を形成するナイロン樹脂やEVOH樹脂は比較的粘弾性が低く、このために、ピンチオフ部による喰切り性が不良となり生産性が低下する、またそのためバリが発生して外観が損なわれる等の問題がある。
【0006】
本発明は、外層の内側にバリア層を積層した積層ブロー壜体における、金型のピンチオフ部による喰切り性に係る問題を層構成の点から効果的に防止することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
押出成形した筒状の多層パリソンのブロー成形により成形され、口筒部と肩部と胴部とパリソンのピンチオフによるシール部が形成された底部を有し、外殻を形成する外層の内側に所定のバリア機能を発揮するバリア層を積層して構成される積層ブロー壜体において、
底部のシール部に至りこのシール部に向けてバリア層の層厚がグラデーション状に減少するバリア層の層厚に係るグラデーション領域を配設する、と云うものである。
【0008】
上記構成において、どの程度の範囲でグラデーション領域を配設するか、あるいはどの程度まで層厚を減少させるか等のグラデーション領域に係る構成は、バリア層により達成されるバリア機能、グラデーション領域の成形性、そしてグラデーション領域の作用効果、すなわちパリソンの喰切り性係る改良効果を考慮して決めることができる。
【0009】
積層ブロー壜体のバリア層の層厚に係るグラデーション領域は、その前駆体である筒状の多層パリソンの壜体のグラデーション領域に相当する部分にバリア層の層厚に係るグラデーション領域を配設しておくことにより形成することができる。
また、多層ブロー成形用のダイスを用いて共押出成形により多層パリソンを成形する際、所定のタイミングでバリア層を形成するバリア層用樹脂の流路におけるバリア層用樹脂の流量を変化させる、あるいは流動を開始あるいは停止することにより、多層パリソンにバリア層の層厚に係るグラデーション領域を配設することができる。
【0010】
ここで、バリア層用樹脂の流動量の調整、あるいは流動の開始、遮断は、たとえばバリア層用樹脂の流路への溶融樹脂を供給する供給流路に付設したボールバルブ、スプルーバルブ等のバルブ機構やシャッター機構の制御、あるいは押出機、アキュムレータ等による吐出圧力の調整等により実施することができる。
溶融樹脂は粘弾性的な性質を有するため、曳糸効果もあり、所定のタイミングでバリア層用樹脂の流動を開始あるいは停止しても、結果として、バリア層の層厚をグラデーション状に変化させることができる。
【0011】
そして上記主たる構成よれば、
底部のシール部に至るグラデーション領域を配設することにより、シール部近傍でバリア層の層厚を薄くして、バリア層の影響を小さくし、パリソンのピンチオフ時における喰切り性を良好に保持することができ、生産性の低下や、バリのために外観が損なわれる等の問題を解消することができる。
【0012】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、シール部に至るグラデーション領域の端部であるシール部を、バリア層が積層されていない非バリア領域とする、と云うものである。
【0013】
上記構成は、グラデーション領域の端部におけるバリア層の層厚の減少をさらに進行させて、バリア層が積層していない領域としたものであり、このような構成は多層ブロー成形用ダイスを用いて共押出成形により多層パリソンを成形する際、所定のタイミングでバリア層を形成するバリア層用樹脂の流路において前述したようなバルブ機構やシャッター機構等の適宜の手段でバリア層用樹脂の流動を開始あるいは停止することにより可能となる。
【0014】
そして、上記構成によりシール部をバリア層が積層されていない非バリア領域とすることにより、バリア層の積層に起因する口筒部や底部のピンチオフ時における喰切り性に係る問題をより確実に解消することができる。

【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち本発明の主たる構成を有する積層ブロー壜体にあっては、
底部のシール部に至るグラデーション領域を配設することにより、シール部におけるバリア層の層厚を薄くして、バリア層の影響を小さくし、ピンチオフ時における喰切り性を良好に保持することができ、生産性の低下や、バリのために外観が損なわれる等のバリア層を積層したことに起因する問題を解消することができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の壜体の第1実施例を一部縦断して示す側面図である。
【図2】図1の壜体の底面図である。
【図3】本発明の壜体の第2実施例を一部縦断して示す側面図である。
【図4】多層パリソンの成形状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を実施例により図面を参照しながら説明する。
図1、2は本発明の積層ブロー壜体の第1実施例を示すものであり、図1は一部縦断して示す側面図、図2は底面図である。この壜体1は円筒状の口筒部2、肩部3、上部から中央高さ位置にかけてテーパー状に拡径する筒状の胴部4、そして底部5を有し、底部5にはパリソンのピンチオフ時に形成されるシール部6が径方向に位置している。
【0018】
この壜体1は全高さ範囲に亘って、外殻を形成する外層11の内側にバリア層12を、接着層13を介して積層したものであり(図中の胴部4の拡大図参照)、外層11は高密度PE樹脂製、接着層13はポリオレフィン系接着樹脂製、バリア層12は高いガスバリア性を有するEVOH樹脂製である。
【0019】
底部5のシール部6に至る部分には、図中、シール部6近傍の拡大図にも示されるように、このシール部6に向けてバリア層12の層厚がグラデーション状に減少するグラデーション領域G1が配設されている。
【0020】
そして、上記のようにシール部6に至るグラデーション領域G1を配設することにより、シール部6近傍でEVOH樹脂製のバリア層12の層厚を、極く薄くして、バリア層の影響を小さくし、パリソンのピンチオフ時における喰切り性を良好に保持することができ、生産性の低下や、バリのために外観が損なわれる等の問題を解消することができた。
【0021】
次に、図4は多層パリソンの成形状態を示す概略説明図で、特に図1に示される壜体1のグラデーション領域G1を形成するための方法を概略的に説明するためのものであり、開状態にあるブロー成形のための割金型31の間に多層押出し成形用のダイス32から円筒状の多層パリソン20を押し出した状態を示す。
【0022】
この多層パリソン20は、高密度PE樹脂製の外層21に接着層(図示省略)を介してEVOH樹脂製のバリア層22を積層して形成されている。
下端部の壜体1のグラデーション領域G1に相当する位置にはバリア層22の層厚に係るグラデーション領域Gp1が配設されている。
そして、パリソン20のグラデーション領域Gp1を割金型31のピンチオフ部34に対向する高さ近傍に位置させた状態で、型閉めし、上端開口部からエアをブローすることにより、図1に示されるようなグラデーション領域G1を配設した壜体1を成形することができる。
【0023】
ここで、この多層パリソン20は、内側からバリア層流路、接着層流路、外層流路の順に配設された少なくとも3ケの円環状層形成流路と、この層形成流路の下流に合流点を介して位置する合流路を配設した多層押出し成形用のダイスを用いて押出成形されるが、所定のタイミングでバルブ機構やシャッター機構の開度を調整する、あるいはアキュムレータ等による吐出圧力を調整することにより、バリア層用樹脂の流動量を調整して上記したように、パリソン20のグラデーション領域Gp1を形成することができる。
【0024】
次に、図3は本発明の積層ブロー壜体の第2実施例を一部縦断して示す側面図であり、この壜体1は図1に示される第1実施例の壜体1のバリエーションの一つで、図1の壜体と比較して、シール部6に至るグラデーション領域G1は、シール部6の直近部分からシール部6にかけての狭い領域をバリア層12の積層がない非バリア領域Sとしているのが特徴的である。
【0025】
前述した、多層パリソン20の成形方法において、バリア層用樹脂の流動を調整するバルブ機構やシャッター機構を所定のタイミングで閉の状態からの開の状態にすることによりこのような、層構成を達成することができる。
そして、このようにシール部6の直近部分からシール部6にかけての狭い領域を限定的に非バリア領域Sとすることにより、バリア性を大きく損なうことなく、パリソンのピンチオフ時における喰切り性を、十分、良好に保持することができる。
【0026】
以上、実施例に沿って本発明の実施の形態を説明したが、本発明の作用効果はこれら実施例に限定されものではない。
たとえば、外層に使用する樹脂とバリア層に使用する樹脂の組合せは、使用目的に応じ、バリア層に発揮せしめる機能、多層パリソンの成形性、ブロー成形性等を考慮してさまざまな態様で選択することができる。
【0027】
また、どの程度の範囲でグラデーション領域を配設するか、あるいは端部を非バリア領域とすることも含めてどの程度までバリア層の層厚を減少させるか等のグラデーション領域に係る構成は、バリア層により達成されるバリア性や遮光性等の機能、グラデーション領域の成形性、そしてグラデーション領域の作用効果の程度、すなわちパリソンの喰切り性係る改良効果の程度を考慮して決めることができる。
【0028】
また、バリア層は上記実施例で説明したガスバリア機能に限定されるものではなく、使用目的に応じて薬剤や化粧料の成分、水分、香料成分等の成分に対してバリア機能やこれら成分の吸着を防止する機能を発揮するバリア機能を発揮するバリア層を選択することができる。
また、必要に応じて他の機能を有する層を積層することもできる。

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の積層ブロー壜体は上記説明したようなもので、バリア層の層厚に係るグラデーション領域を配設することにより、パリソンのピンチオフ時における喰切り性に係る問題を効果的に解消することができるものであり、バリア性を要求される壜体として幅広い用途展開が期待される。

【符号の説明】
【0030】
1、100;壜体
2、102;口筒部
3、103;肩部
4、104;胴部
5、105;底部
6、106;シール部
11、111;外層
12、112;バリア層
13;接着層
20;パリソン
21;外層
22;バリア層
31;割金型
32;ダイス
33;口部
34;ピンチオフ部
G1;グラデーション領域
S;非バリア領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形した筒状の多層パリソンのブロー成形により成形され、口筒部(2)と肩部(3)と胴部(4)とパリソンのピンチオフによるシール部(6)が形成された底部(5)を有し、外殻を形成する外層(11)の内側に所定のバリア機能を発揮するバリア層(12)を積層して構成される積層ブロー壜体であって、前記底部(5)のシール部(6)に至り該シール部(6) に向けてバリア層(12)の層厚がグラデーション状に減少するバリア層(12)の層厚に係るグラデーション領域(G1)を配設したことを特徴とする合成樹脂製の積層ブロー壜体。
【請求項2】
シール部(6)に至るグラデーション領域(G1)の端部であるシール部(6)を、バリア層(12)が積層されていない非バリア領域(S)とした請求項1記載の積層ブロー壜体

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213373(P2011−213373A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82143(P2010−82143)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】