説明

積層体

【課題】 外観、耐摩耗性、耐擦傷性、基材密着性、耐熱性、耐湿熱性及び耐候性に優れ、クラックの発生や剥れの発生の無い、硬化層を有する積層体を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂からなる基材と硬化層とを有し、該基材と該硬化層との間に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群より選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂を含有する樹脂層を有する積層体において、該樹脂層の、該基材に対する吸水率の比Qが4未満であり、且つ該樹脂層のガラス転移温度(Tg)が60℃以上である
ことを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観、耐摩耗性、耐擦傷性、基材に対する密着性及び耐候性に優れた硬化層を有する積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックは、軽量性、易加工性、耐衝撃性などに優れているので種々の用途に使用されている。例えば、ポリカーボネート、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、酢酸セルロース、ポリプロピレン等が知られている。
特に近年、光記録媒体、光磁気記録媒体、レンズ、光学フィルター、ディスプレイの表示部などの光を透過する特性を利用する製品に、ガラスの代替として、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂、酢酸セルロース、シクロオレフィンポリマー等の透明性樹脂の利用要求がある。なかでも、例えば、ポリカーボネート樹脂では、透明性、耐衝撃性、加工性に優れるため、自動車用窓ガラスとして使用され自動車の軽量化による燃費向上に貢献している。
【0003】
しかしながら、これらプラスチックの成形品は、表面硬度が低いために傷がつきやすかったり、屋外にて長時間使用した場合には劣化しやすく、物性、外観が損なわれたりする場合があることから、耐傷性や耐摩耗性を付与するために、基材上に表面硬度を高める硬化層を形成した積層体を構成する技術が知られている。
このような硬化層は、プラスチック表面に高硬度の被膜を形成する事ができるが、種々の理由によりクラックが発生しやすいという欠点を有していた。そこで、これらの欠点を解決する方法として、基材表面に官能基を有するアクリル樹脂およびシリカよりなる被膜を形成し、その上にアルコキシシラン加水分解縮合物およびシリカよりなるハードコート層を形成した積層体が、提案されている(特許文献1)。また、基材保護面に反応性シリル基を有するプライマー層、その上にシリコーン系ハードコート層を形成した積層体が提案されている(特許文献2)。そして、透明プラスチック基材表面に、第1層として水酸基含有アクリル樹脂とイソシアネートを含む樹脂層、第2層としてアルコキシシラン加水分解物とシリカよりなるハードコート層を有する積層体が提案されている(特許文献3)。更に、最外層に接する内層に、活性エネルギー線硬化性樹脂を使用して、最外層にハードコート層を形成する積層体が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−284930号公報
【特許文献2】特開平11−217519号公報
【特許文献3】特開2003−342403号公報
【特許文献4】特開平11−221873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、官能基を有するアクリル樹脂よりなる皮膜の上にハードコート層を形成した積層体では、皮膜やハードコート層が、白化したりクラックが発生したりするという欠点を有していた。また、硬化層の架橋反応が経時で進行するために被膜に歪が生じやすく、ハードコート層にクラックが発生したり、ハードコート層が剥離したりしやすいという欠点を有しており、長期間の耐候性の維持には不十分であった。また、積層体内層の樹脂の硬度が高すぎるために、最外層との密着力が不足し剥離が起こりやすいという問題が
生じることもあった。
【0006】
本発明は上記諸問題に鑑みなされたものであって、外観、耐摩耗性、耐擦傷性、基材密
着性、耐熱性、耐湿熱性及び耐候性に優れ、クラックの発生や剥れの発生の無い、硬化
層を有する積層体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、係る問題点を解決すべく鋭意検討を行ったところ、基材と硬化層の間に、特定構造のモノマー化合物を重合してなる樹脂を含有し、しかも基材に対して特定の物性を有する樹脂層を有することにより、非常に優れた性能を有する積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の要旨は、熱可塑性樹脂からなる基材と硬化層とを有し、該基材と硬化層との間に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群より選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂を含有する樹脂層を有する積層体であって、該樹脂層の、該基材に対する吸水率の比Qが4未満であり、且つ該樹脂層のガラス転移温度(Tg)が60℃以上であることを特徴とする積層体に存し(請求項1)、当該樹脂層の膜厚が2μm以上20μm以下であって、且つ300nmの光透過率が5%以下であることが好ましい(請求項2)。
【0008】
また、本発明の第二の要旨は、前記樹脂層が、下記式(1)で表される不飽和単量体(a−1)5〜40重量%、
【0009】
CH=C(R)COOR (1)
(Rは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Rは炭素数8以上30以下の分岐を有していてもよいアルキル基を表す)
紫外線吸収性基を有する不飽和単量体(a−2)1〜70重量%、及び(a−1)並びに(a−2)で表される群より選ばれる少なくともひとつの単量体と共重合可能な不飽和単量体(a−3)1〜94重量%とを共重合して得られる、数平均分子量が1000以上1000000以下である共重合体(A)を含有することを特徴とする積層体にある(請求項3)。
【0010】
さらに本発明の第三の要旨は、前記硬化層が不飽和基を2個以上有する不飽和化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、及び光重合開始剤(D)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線により硬化させてなる積層体にあり(請求項4)、好ましくは該硬化層が、体積平均粒子径が1nm以上200nm以下のコロイダルシリカ(E)を含有するものであって(請求項5)、好ましくは該硬化層が、下記式(2)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物(F)を含有することを特徴とする、積層体に存する(請求項5)。
【0011】
Si(OR4−r−s (2)
式(2)中のR、Rはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、メタクリロイル基、アミノ基、グリシドキシ基、および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる郡から選ばれる1種以上の官能基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、r、sはそれぞれ0〜3の整数であり、r+sは0〜3の整数である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材密着性に優れた硬化層を有して、外観、密着性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐候性に優れた積層体を提供することが可能となる。また、本発明の積層体は外観、耐摩耗性、耐擦傷性、耐候性が優れていることから、車両などの、ヘッドランプカバー、風防材、窓材、屋根材に好適に使用できるほかに、建築物用窓ガラス、建築物用外壁材、道路用防音壁、ディスプレイ用面板及び携帯電話用部材等にも有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」との記載は「アクリロイルおよびメタクリロイルからなる群より選ばれる少なくとも1つ」を意味し、「(メタ)アクリレート」との記載は「アクリレートおよびメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一つ」を意味する。
【0014】
本発明の積層体は、基材と硬化層を有するものであって、基材と硬化層の間に樹脂層を有し、当該樹脂層の基材に対する吸水率の比Qが、4未満となるものである。ここで、Qは硬化層の吸水率を基材の吸水率で除した値である。
本発明の積層体の物性は、上記の物性を備えていれば他に制限は無く本発明の積層体の用途等に応じて任意である。ただし、以下に示すような物性を更に有していることが望ましい。
【0015】
[1.積層体]
[1−1.積層体の物性]
・機械的強度
本発明の積層体に要求される機械的強度について、特に制限は無いが、積層体の用途に応じて必要とされる強度を有することが好ましい。積層体の各層の接着性や、その耐久性、耐候性などの性質については、後述する。
【0016】
[1−2.積層体の構成]
本発明の積層体は、基材の吸水率と樹脂層の吸水率とが、特定の関係を有するものであり、通常、基材に接するように基材上に樹脂層が形成されるが、基材と樹脂層とは必ずしも接するように形成されていなくても構わず、基材と樹脂層との間に別種の層が形成されていても構わない。
【0017】
基材と樹脂層が接していなくても、本発明に特定の優れた効果が発現する理由は定かではないが、基材や樹脂層の弾性変形率や、温湿度変化による各々の層の膨張や収縮による形状変化の影響が、別種の層を経たとしても及ぶことによるものと考えられる。但し、本発明の効果は、基材に接するように基材上に樹脂層を形成した場合に特に顕著なものとなるので、本発明の積層体では基材に接するように樹脂層を形成することが好ましい。
【0018】
[2.基材]
[2−1.基材の物性]
・含水率
本発明の積層体に係る基材の吸水率は、以下の方法で測定した。
1辺が50mmの正方形で、厚みが1mmの試験片を金型温度280℃にてプレス成形し、50℃の恒温層内で24時間乾燥し、乾燥剤としてシリカゲルを入れたデシケータ内で放冷した。
【0019】
当該サンプルを50℃の純水中に24時間浸漬させた後に取り出し、試験片の純水浸漬前の重量と、浸漬後の重量とを比較し、純水浸漬前の重量に対する浸漬後の重量の増加分の比として吸水率を求めた。
本発明においては、上記のように規定した樹脂層の基材に対する吸水率の比Qが、4未満であれば、樹脂層の吸水率の値に特に制限は無いが、好ましくは2.0重量%以下であ
って、より好ましくは1.0重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【0020】
[2−2.基材の構成]
本発明の積層体に係る基材は、樹脂層の基材に対する吸水率の比が、本発明規定の範囲であれば特に制限は無く、通常広く一般に用いられている樹脂材料を用いることができる。
中でも加工の容易性から熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、本発明に係る樹脂層との接着性の観点から、カルボニル基を有する重合体がより好ましい。また、前記基材の物性を好ましく満たすという観点から、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、酢酸セルロースが好ましく、特にはポリカーボネートが好ましい。
【0021】
基材に好適な、カルボニル基を有する重合体を構成するモノマーユニットとしては、通常知られる如何なるものも使用することができるが、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂のモノマーユニットとして通常用いられる二価アルコールを用いることが好ましい。
具体的には、ハイドロキノン、レゾルシノール、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等の2官能性フェノール化合物;
4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ(t−ブチル)−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ(t−ブチル)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル等のビフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基を有しないビスフェノール化合物;
ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族環上に置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4
−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−(sec−ブチル)フェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基としてアルキル基を有するビスフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(フェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(ジフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(ジベンジル)メタン等の芳香族環を連結する2価基が置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等の芳香族環をエーテル結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族環をスルホン結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族環をスルフィド結合で連結したビスフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、フェノールフタルレイン、などがあげられる。
【0022】
[2−3.基材の形態]
本発明に係る基材の形態について特に制限はなく、シート状、フィルム状、成形体等いずれの形態であっても構わない。
[3.樹脂層]
[3−1.樹脂層の物性]
・吸水率
本発明に係る樹脂層の吸水率は、基材の吸水率と同様の方法により測定することができる。本発明においては、樹脂層の基材に対する吸水率の比Qが、4未満であれば、樹脂層の吸水率の値に特に制限は無いが、好ましくは2重量%以下であって、より好ましくは1.0%重量以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
・樹脂層の厚み
本発明の積層体に用いる樹脂層の厚みは、積層体の耐候性を向上させるために、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であって、樹脂層を、溶媒を用いた塗布液を塗布乾燥して形成する際の乾燥性に優れるという理由から、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
・光透過率
本発明に係る樹脂層の波長300nmの光透過率は、分光光度計により測定されるものであって、耐候性を向上させる観点から、樹脂層の厚みによらず、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。
・ヘーズ
本発明に係る樹脂層のヘーズに特に制限は無いが、本発明の積層体を、例えばガラス代替用途に使用する場合には、樹脂層のヘーズは低いことが好ましい。具体的にはJIS K7136:2000に準拠した試験方法によって測定されるヘーズが15%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下であって、特に好ましくは2%以下である。
【0023】
[3−2.樹脂層の構成]
本発明に係る樹脂層は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂を含有するものであるが、これは化合物端の炭素−炭素間の二重結合を利用して重合が行われるためであり、その技術的理由から、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群には、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するか、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有するものであれば、如何なる化合物も含まれる。
【0024】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂は、樹脂層の物性を調整するために、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選ばれる複数種の化合物による共重合体であることが好ましい。この場合に用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物の種類、および共重合比率に特に制限は無いが、本発明の効果を得るために、後述するような、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の特性に係る技術思想に基づいて、適宜選択される。
【0025】
但し、当該化合物の分子量が大きすぎると、重合体の製造が困難になるため、当該化合物の炭素数は50以下が好ましく、より好ましくは40以下、特に好ましくは35以下である。
本発明において(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、典型的には下記式(1)で表される化合物が用いられる。
【0026】
CH=C(R)COOR (1)
式(1)において、R,Rは有機置換基を表す。
本発明の積層体に係る樹脂層の特性を、本発明に規定するものとするために、以下に記載の特性を勘案して、RおよびRは適宜調整される。好ましくは、R,Rは置換基を有していてもよいアルキル基であって、該アルキル基は分岐や環状構造を有していても構わない。更に、Rは炭素数5以下のアルキル基であることがより好ましく、更には炭素数5以下の直鎖アルキル基であることがより好ましい。
【0027】
樹脂層の機械的強度、接着性、吸水性の調整を容易にするためには、R,Rは直鎖のアルキル基であることが好ましい。特に、Rは、樹脂層の含有する樹脂の特性に大き
く影響し、樹脂層の機械的強度、接着性、吸水性を調整する場合、その炭素数は30以
下であることが好ましい。更に同様の理由から、Rは炭素数5以下の直鎖アルキル基が好ましく、特には水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0028】
積層体において、樹脂層と他の層との接着性を高める観点においては、Rで表されるアルキル基の炭素数は3以下であることが好ましく、特にはメチル基が好ましい。
一方で、樹脂層の吸水率を調整するためには、Rは炭素数8以上のアルキル基であることが好ましく、該アルキル基の炭素数は、より好ましくは炭素数10以上、更に好ましくは12以上、特に好ましくは炭素数16以上であって、好ましくは炭素数30以下、より好ましくは炭素数25以下である。なかでも、前記式(1)において、Rが水素原子、メチル基またはエチル基であって、Rが炭素数8以上30以下の分岐を有していてもよいアルキル基であることを特徴とする(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、不飽和単量体(a−1)ということがある)が好ましい。
【0029】
本発明において不飽和単量体(a−1)としては、より具体的には例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、等を挙げることができる。
【0030】
また、先に樹脂層の物性について記載したとおり、積層体の耐候性を向上させる観点から、樹脂層の厚みによらず樹脂層全体として、300nmの光の光透過率が一定以下であることが好ましいが、300nmの光の光透過率を調整するためには、Rで表される置換基が300nm近傍の光を吸収または遮断する基であることが好ましく、より具体的には、通常紫外線吸収剤として用いられている化合物に由来する、いわゆる紫外線吸収性基を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、不飽和単量体(a−2)ということがある)が好ましい。
【0031】
樹脂層の300nmの光の光透過率を調整するために、Rで表される有機置換基に用いられる紫外線吸収性基としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン骨格を有する基、トリアジン骨格を有する基、2−(5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール骨格を有する基、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート骨格を有する基、フェニルサリシレート等のサリシレート骨格を有する基、ジエチル−p−メトキシベンジリデンマロネート等のベンジリデンマロネート骨格を有する基が、好ましく用いられる。なかでも、ベンゾフェノン骨格を有する基、トリアジン骨格を有する基およびベンゾトリアゾール骨格を有する基が好ましく、特にはベンゾトリアゾール骨格を有する基が好ましく用いられる。
【0032】
より具体的に、樹脂層の300nmの光の光透過率を調整するために用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、式(3)に代表されるようなベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、式(4)に代表されるようなベンゾフェノン骨格を有する化合物、及び式(5)に代表されるようなトリアジン骨格を有する化合物を挙げることができる。
【0033】
【化1】

【0034】
式(3)中、Xは水素原子または塩素原子を表し、Rは水素原子、メチル基、または炭素数4〜8の第3級アルキル基を表す。Rは直鎖状または分岐鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。nは0又は1を表す。
式(4)中Rは式(3)のRと同じ意味を表し、Rは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。R10は水素原子または水酸基を表し、R11は水素原子、水酸基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
【0035】
式(5)中Rは式(3)のRと同じ意味を表し、R12は直接結合、−CHCHO−または−CHCH(OH)−CHO−を表し、mは1〜5の整数を表す。R13は各々孤立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基を表し、oは、0〜4の整数を表し、p,qは、各々独立に0〜5の整数を表す。
本発明に係る樹脂層は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂を含有するものであるが、当該樹脂は、複数種の(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選ばれる化合物を用いた共重合体であっても構わない。
【0036】
なかでも、不飽和単量体(a−1)が5〜40重量%であって、不飽和単量体(a−2)が5〜70重量%であって、(a−1)並びに(a−2)で表される群より選ばれる少なくともひとつの不飽和単量体と、共重合することが可能であることを特徴とする不飽和単量体(a−3)が1〜94重量%の範囲で共重合して得られる樹脂(A)が好ましい。

(a−1)並びに(a−2)で表される群より選ばれる少なくともひとつの不飽和単量体と、共重合することが可能であることを特徴とする不飽和単量体(a−3)としては例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、スチレンまたはこれらの誘導体を挙げることができる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルプロピルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0038】
また、(メタ)アクリロニトリルの具体例としては、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、シアノ化ビニリデンが挙げられる。
また、(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0039】
アルキルビニルエーテルの具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、等を挙げることができる。
アルキルビニルエステルの具体例としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等を挙げることができる。
スチレン誘導体の具体例としては、スチレン、P−スチリルトリメトキシシラン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン等を挙げることができる。
【0040】
さらに、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有さない他の繰り返し単位との共重合体であっても構わない。この場合、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、他の繰り返し単位との共重合比率に特に制限は無いが、本発明の効果を充分に得るために、他の繰り返し単位の比率は、50mol%以下であることが好ましく、より好ましくは30mol%以下であって、更には20mol%以下が好ましく、特には10mol%以下が好ましい。
・溶剤
本発明に係る樹脂層には、樹脂を合成する際の利便性や、樹脂層を形成する際に塗布形成法を採用する場合の塗工性を向上する目的で、溶剤を含有することができる。
【0041】
用いられる溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−メトキシプロピルアセテート、2−ブトキシエチルアセタート等のエーテルエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられ、更にこれらの溶剤の任意の比率での混合物であっても構わない。
【0042】
[3−2−2.その他の成分]
本発明に係る樹脂層は安定剤(例えば、ヒンダードアミン系安定剤)、酸化防止剤(例えば、フェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤)、ブロッキング防止剤、レベリング剤、シランカップリング剤等のこの種の組成物に配合される種々の添加剤を、被膜形成成分の重量に対し、それぞれ0.01〜10重量部を配合することができる。
【0043】
・光安定剤
光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)
ジフェニルメタン−p,p’−ジカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル
−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3−ジスルホネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)フェニルホスファイト等のヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニルサルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体があげられる。これらの剤は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0044】
・シランカップリング剤
シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)
−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、また上記シランカップリング剤の部分加水分解縮合物も使用できる。かかる剤を添加することにより、ポリカーボネート基材と第一層および第一層と第二層の密着力が長期にわたり持続される。これらの剤は単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0045】
[3−3.樹脂層の形成方法]
樹脂層は、従前知られる如何なる方法によって形成されても構わないが、大量生産が容易であるという利点から、通常、樹脂層形成用の組成物を塗布形成することにより行う。
塗布形成するための塗布方法についても特に制限されず、ディップコート法、フローコート法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、カーテンコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等、従前知られるいずれの塗工方法によっても塗布することができる。
【0046】
また、この際、最終的に形成された樹脂層の厚みが所望の厚みになるのであれば、塗布された樹脂層形成用の組成物層の厚みに制限は無いが、通常10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは120μm以下となるように塗布する。また、塗布は1回の工程で行なっても、2回以上に分けて行なってもよいが、通常は、1回で行なう方が経済的に有利であり、好ましい。
【0047】
本発明に係る樹脂層に、所望により溶剤を用いた場合、樹脂層形成用の組成物層を塗布形成した後、乾燥して溶剤を除去する。乾燥条件は溶剤の沸点、基材の材質、塗布量等によって、好ましい範囲が異なるが、一般的には、30〜150℃で1〜60分間行い、好ましくは80〜120℃で1〜10分間行う。
[4.硬化層]
[4−1.硬化性化合物]
本発明に係る硬化層は、ポリイソシアネート化合物やトリアルコキシシラン加水分解物に代表される架橋材により、架橋硬化された樹脂からなる層であり、架橋硬化された樹脂からなる層であればどのような硬化層であってもかまわない。また、当該硬化層を架橋硬化させる方法としては、熱による硬化、活性エネルギー線の照射による硬化など、従前知られた如何なる架橋硬化方法を用いても構わない。ただし、基材に熱可塑性樹脂を採用しているため、基材の劣化や、軟化による変形などを起こす虞があることから、熱により硬化させる方法よりも、活性エネルギー線の照射により硬化することが好ましい。
【0048】
硬化層に用いられる硬化性化合物としてより具体的には、(メタ)アクリレート基、環状エーテル基及びビニルエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するモノマー及び/又はオリゴマーを用いることができる。
(メタ)アクリレート基を有するモノマー及びオリゴマーは、活性エネルギー線の照射によりラジカル重合が可能である。したがって、樹脂層用組成物が(メタ)アクリレート基を有するモノマー又はオリゴマーを含有している場合には、樹脂層用組成物に活性エネルギー線を照射すればラジカル重合により硬化させることが可能である。
【0049】
本発明に係る硬化層は、好ましくは、不飽和基を2個以上有する不飽和化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、及び光重合開始剤(D)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線により硬化させることにより形成される。
更に好ましくは、硬化層が、体積平均粒子径が1nm以上200nm以下のコロイダル
シリカ(E)を含有するものが用いられ、特には硬化層が、下記式(2)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物(F)を含有することが好ましい。
【0050】
Si(OR4−r−s (2)
式(2)中のR、Rはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、メタクリロイル基、アミノ基、グリシドキシ基、および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる郡から選ばれる1種以上の官能基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、r、sはそれぞれ0〜3の整数であり、r+sは0〜3の整数である。
【0051】
・不飽和基を2個以上有する不飽和化合物(B)
本発明に係る硬化層に使用される、不飽和基を2個以上有する不飽和化合物(B)としては、硬化層に通常用いられる不飽和化合物であれば特に制限は無いが、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アウリレート、イソシアヌル酸エトキシ変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エトキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレートと、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキシド)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクロン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート;上記3官能以上の(メタ)アクリレートと、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの付加物とのコロイダルシリカおよび/またはシリケートの加水分解縮合物;グリセリンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有アクリレートとイソシアネートプロピルトリエトキシシランの付加物とのコロイダルシリカおよび/またはシリケートの加水分解縮合物;イソホロンジイソシアネートや水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環骨格イソシアネート化合物に、(ポリ)ブタジエンジオール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)エステルジオール、(ポリ)カプロラクトン変性ジオール、(ポリ)カーボネートジオール、(ポリ)スピログリコール等の1種又は2種以上の化合物の水酸基を付加させた後、残ったイソシアネート基に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の水酸基を持つ(メタ)アクリレートを反応させたウレタンポリ(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂類;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、2,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製、脂環式エポキシ樹脂)等を、(メタ)アクリル酸で変性したエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら不飽和基を2個以上有する不飽和化合物は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
・紫外線吸収剤(C)
紫外線吸収剤(C)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。これらの具体例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ
−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、
2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2’ヒドロキシ−3’,5’−t−ペンチルベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)]ベンゾトリアゾール、2−(2’ヒドロキシ−3’−s−ブチル−5’−t−ブチルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3−ドデシル−5’−メチルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−1,1,3,3−テトラメチルブチル]−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールの反応物、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2―イル)−5−ヘキシルオキシフェノール等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤の添加量は被覆物の硬度の点から組成物100重量部に対して10重量部以下が好ましい。
【0053】
・重合開始剤(D)
光重合開始剤(D)としては例えば、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、 2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類が挙げられる。
【0054】
更に2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類またはキサントン類、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ1−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のαアミノケトン類、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニルチタニウム、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニルアイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合開始剤の添加量は被覆物の硬度の点から組成物100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。更に好ましくは1〜5重量部である。
【0055】
ラジカル補足剤(D)としては、例えば、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヘキサノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアオイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、セバシン酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、セバシン酸−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)、トリメシン酸−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。これらの光安定剤は単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。光安定剤の添加量は被覆物の硬度の点から組成物100重量部に対して10重量部以下が好ましい。
【0056】
・コロイダルシリカ(E)
本発明の硬化層に好ましく用いられる体積平均粒子系が1nm以上200nm以下のコロイダルシリカ(E)としては、無機ケイ酸の微粒子をコロイド溶液としたものが使用される。また分散媒を含有しない粉末状の微粒子シリカも本発明に使用できる。コロイダルシリカの分散媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコールの誘導体、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルアセトアミド等のアミド類が好ましい。
【0057】
これらのコロイダルシリカは周知の方法で製造され市販されているものから上記粒径のものを選んで用いることができる。例えば、日産化学株式会社から市販されている商品名スノーテックスO、AK、メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、MIB
K−ST、PMA−ST、触媒化成(株)から市販されている商品名Cataloid−SN、OSCAL1432等である。粉末状の微粒子シリカとしては触媒化成(株)から市販されている商品名OSCAP、シーアイ化成から市販されている商品名ナノテック等を挙げることができる。本発明のコロイダルシリカは酸性又は塩基性形態で入手可能であるが、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を製造する方法においては酸性の形態を使用するのが好ましい。
【0058】
・アルコキシシランの加水分解縮合物(F)
本発明の硬化層に好ましく用いられるアルコキシシランの加水分解縮合物(F)は、下記式(2)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物であることが好ましい。
【0059】
Si(OR4−r−s (2)
式(2)中のR、Rはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、メタクリロイル基、アミノ基、グリシドキシ基、および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる郡から選ばれる1種以上の官能基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、r、sはそれぞれ0〜3の整数であり、r+sは0〜3の整数である。
【0060】
より具体的には例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメヒルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメヒルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
[4−2.その他の成分]
その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光吸収剤等の安定剤類;ガラス繊維、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオリン、金属繊維、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料(フィラー類、フラーレン類などを総称して無機充填成分と称する);帯電防止剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤;モノマー及び/又はそのオリゴマーまたは無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類なども挙げられる。
さらに、これらの成分の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常、樹脂層用組成物の20重量%以下だけ用いることが望ましい。
【0062】
[4−3.硬化層の形成方法]
本発明に係る硬化層は、硬化層用組成物を塗布することにより、硬化層用組成物の層を形成し、その層を硬化させることにより形成するが、硬化させる方法としては、活性エネルギー線の照射により硬化させることが好ましい。
【0063】
硬化層の塗布方法としては特に制限されず、ディップコート法、フローコート法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、カーテンコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等のいずれの塗工方法によって塗布することもできる。また、この際、塗布された硬化層用組成物の層の厚みに制限は無いが、通常10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは120μm以下とすることが望ましい。また、塗布は1回で行なっても良く、2回以上に分けて行なってもよいが、通常は、1回で行なう方が経済的に有利であり、好ましい。
【0064】
本発明に係る硬化層に、所望により溶剤を用いた場合、樹脂層を基材に供給した後、乾燥して溶剤を除去する。乾燥条件は溶剤の沸点、基材の材質、塗布量等によって、好ましい範囲が異なるが、一般的には、30〜150℃で1〜60分間行い、好ましくは80〜120℃で1〜10分間行う。
硬化層に使用される溶剤としては樹脂層に使用する溶剤と同種のものを使用することができる。
【0065】
[4−4.硬化層用組成物の硬化]
層となった硬化層用組成物を硬化させて、硬化層用組成物の硬化物として樹脂層を形成する際の硬化方法に特に制限は無いが、活性エネルギー線の照射によるのが好ましい。
活性エネルギー線により硬化させる際には、硬化層用組成物に放射線(活性エネルギー線や電子線)を照射して樹脂層用組成物中のモノマーやオリゴマーの重合反応を開始させる(以下、放射線硬化ということがある)。
【0066】
上記放射線とは、必要とする重合反応を開始する重合開始剤に作用して該重合反応を開始する化学種を発生させる働きを有する電磁波(ガンマ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波等)又は粒子線(電子線、α線、中性子線、各種原子線等)である。
例えば、好ましく用いられる放射線の一例としては、エネルギーと汎用光源を使用可能である点とから、紫外線、可視光線及び電子線が好ましく、より好ましくは紫外線及び電子線である。
【0067】
紫外線を用いる場合、通常は、紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤を
重合開始剤とし紫外線を放射線として使用する方法が採用される。この時、必要に応じて上記の光増感剤を併用してもよい。上記紫外線は、上記硬化層用組成物を硬化させることができれば任意の波長の光を用いることができるが、例えば、波長が通常200nm以上、好ましくは250nm以上、また、通常400nm以下の範囲のものを用いることができる。
【0068】
さらに、紫外線を照射する装置としては任意の装置を用いることができ、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波によって紫外線を発生させる構造の紫外線ランプ等、公知の任意の装置を好ましく用いることができる。該装置の出力は通常10〜200W/cmであり、また、該装置は、被照射体に対して5〜80cmの距離に設置するようにすると、被照射体の光劣化や熱劣化、熱変形等が少なく、好ましい。
【0069】
また、硬化層用組成物は、上記のように電子線によっても好ましく硬化することができ、これにより、機械特性、特に引っ張り伸び特性に優れた硬化物を得ることができる。電子線を用いる場合、その光源および照射装置は高価であるものの、開始剤の使用を省略可能であること、及び酸素による重合阻害を受けず、したがって表面硬化度が良好となるため、好ましく用いられる場合がある。電子線照射に用いられる電子線照射装置としては、特にその方式に制限は無く任意の装置を用いることができるが、例えばカーテン型、エリアビーム型、ブロードビーム型、パルスビーム型等が挙げられる。さらに、電子線照射の際の加速電圧は、通常10〜1000kVが好ましい。
【0070】
さらに、放射線硬化時に照射する放射線の強度は、硬化層用組成物を硬化させうる限り任意であるが、通常0.1J/cm2以上、好ましくは0.2J/cm2以上のエネルギーで照射するのが望ましい。また、通常20J/cm2以下、好ましくは10J/cm2以下、より好ましくは5J/cm2以下、さらに好ましくは3J/cm2以下、特に好ましくは2J/cm2以下のエネルギー範囲で照射するのが望ましい。放射線の強度がこの範囲内であれば、硬化層用組成物の種類によって適宜選択可能である。
【0071】
さらに、放射線の照射は、一段階で行なっても良く、あるいは2段階以上に分けて行なってもよい。また、その線源として通常は放射線が全方向に広がる拡散線源を用いる。
【実施例】
【0072】
以下に合成例及び実施例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下の合成例及び実施例に記載される成分、割合、手順等は、本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に記載される具体例に制限されるものではない。なお、合成例及び実施例に記載される「部」及び「%」は、「重量部」及び「重量%」をそれぞれ意味する。
【0073】
(合成例1)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル300g、メチルメタクリレート150g、ステアリルメタクリレート40g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)10g、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え、65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量180000の共重合体(A−1)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0074】
(合成例2)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにメチルメタクリレート140g、ステアリルメタクリレート40g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)20g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量の190000共重合体(A−2)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0075】
(合成例3)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにメチルメタクリレート140g、ラウリルメタクリレート40g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)20g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量180000の共重合体(A−3)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0076】
(合成例4)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにメチルメタクリレート150g、トリデシルメタクリレート40g、
(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)10g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量170000の共重合体(A−4)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0077】
(合成例5)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにメチルメタクリレート14g、ベヘニルメタクリレート40g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)20g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量160000の共重合体(A−5)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0078】
(合成例6)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにメチルメタクリレート148g、ステアリルメタクリレート40g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)10g、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート2g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量150000の共重合体(A−6)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0079】
(合成例7)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにメチルメタクリレート180g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−
(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUV
A93)20g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量148000の共重合体(A−7)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0080】
(合成例8)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにメチルメタクリレート140g、n−ブチルメタクレート40g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)20g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量180000の共重合体(A−8)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0081】
(合成例9)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチル
エーテル300gにメチルメタクリレート130g、シクロヘキシルメタクレート60g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)10g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量160000の共重合体(A−9)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0082】
(合成例10)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル300gにイソブチルメタクリレート190g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)10g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応し不揮発分40%、数平均分子量130000の共重合体(A−10)を得た。共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算によりもとめた。
【0083】
(物性値の測定方法)
以下の測定方法に従って、合成例1〜合成例10の共重合体(A−1)〜(A−10)の物性を測定した結果を、表1に纏めて示す。
・ガラス転移点(Tg):一辺が50mmの正方形で厚み1mmの試験片をプレスにて成形し、該成形品より50mm×4mmで厚さ1mmの試験片を切り出し、レオメーター(TAインストルメンツRSA−III)を使用し、引っ張りモードにて周波数20Hz、試験片チャック間40mmで25℃から250℃まで毎分2℃で昇温して貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)を測定し、その比よりtanδをもとめ、tanδのピーク値をガラス転移点(Tg)とした。
【0084】
・吸水率:一辺が50mmの正方形で厚み1mmの試験片をプレスにて成形し、50℃の恒温層内で24時間乾燥し、乾燥剤(シリカゲル)を入れたデシケータ内で室温まで放冷した後に、この試験片の重量を測定した(以下、この重量を試験片のもとの重量と呼ぶことがある)。更にこの試験片を50℃の純水中に24時間浸漬した後取り出し、表面付着した水を給水紙(日本製紙クレシア株式会社製:キムワイプ S−200)に完全に吸収させて除去した後、重量を測定した(以下、水浸漬後の重量と呼ぶことがある)。試験片のもとの重量と、水浸漬後の重量との重量増加分の、試験片のもとの重量に対する比から、吸水率を求めた。
【0085】
・透過率:石英板上に厚さ5μmのフィルムを溶剤キャスト法により形成し、分光光度計(日本分光 UV570)をもちいてフィルムを形成していない石英セルとの300nmの光線透過率の差を測定した。
【0086】
【表1】

実施例1
脱脂処理を行ったポリカーボネート板(厚さ3mm、ヘーズ0.1%、吸水率0.414%)にフィルムアプリケータを用いて乾燥後の塗膜が10μmになるように、表2の実施例1に示した樹脂層形成用の組成物を(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)塗布し、120℃で2分間加熱乾燥し、樹脂層を形成した。
【0087】
さらにその上に、表2の実施例1に示した硬化層用組成物(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)を、バーコータを用いて乾燥後の塗膜厚が5μmとなるように塗布し、80℃で2分間加熱乾燥し、次いで、この塗布板に120W/cmの高圧水銀灯を用いて2000mJ/cmの紫外線を照射し硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0088】
実施例2
樹脂層形成用の組成物を表2の実施例2(ただし、各使用成分の量は共重合体、UVAおよびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の実施例2(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0089】
実施例3
樹脂層形成用の組成物を表2の実施例3(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の実施例3(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0090】
実施例4
樹脂層形成用の組成物を表2の実施例4(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の実施例4(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAI
C、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0091】
実施例5
樹脂層形成用の組成物を表2の実施例5(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の実施例5(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0092】
実施例6
樹脂層形成用の組成物を表2の実施例6(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の実施例6(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0093】
実施例7
樹脂層形成用の組成物を表2の実施例7(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の実施例7(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0094】
実施例8
脱脂処理を行ったポリカーボネート板(厚さ3mm、ヘーズ0.1%)に、フィルムアプリケータを用いて乾燥後の塗膜が10μmになるように表2の実施例8に示した樹脂層形成用の組成物(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)を塗布し、120℃で2分間加熱乾燥し、樹脂層を形成した。
【0095】
さらにその上に表2の実施例8(ただし、各使用成分の量はシリコーン樹脂を100重量部とした場合の重量部)に示した硬化層用組成物を、バーコータを用いて乾燥後の塗膜厚が5μmとなるように塗布し、室温にて5分間放置した後、120℃で60分間加熱乾燥し硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
比較例1
樹脂層形成用の組成物を表2の比較例1(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の比較例1(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0096】
比較例2
樹脂層形成用の組成物を表2の比較例2(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の比較例2(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAI
C、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0097】
比較例3
樹脂層形成用の組成物を表2の比較例3(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の比較例3(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0098】
比較例4
樹脂層形成用の組成物を表2の比較例4(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の比較例4(ただし、各使用成分の量はPE3A、TAIC、NPGDA、IPA−ST、およびPGMの和を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0099】
比較例5
樹脂層形成用の組成物を表2の比較例5(ただし、各使用成分の量は共重合体を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、硬化層用組成物を、表2の比較例5(ただし、各使用成分の量はシリコーン系樹脂を100重量部とした場合の重量部)に示したようにした以外は、実施例1と同様にして硬化層を形成した。このサンプルの評価結果を表2に示す。
【0100】
(試験片の評価方法)
・外観:試料の被膜外観を目視にて観察し、均質な被膜が形成されているものを○、均質な被膜が形成されていないものを×とした。
・ヘーズ:JIS K−7105に従い、村上色材社製HM−65Wを用いて、ヘーズ値(%)を評価した。
【0101】
・耐摩耗性:摩耗輪CS−10F、荷重500g、回転数100サイクルの条件にて、テーバー摩耗試験(東洋精機社製Rotary Abrasion Tester)を行いて試験前後のヘーズ値の差ΔH%を測定した。
・密着性:JIS K 5600−5−6−:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)に準じて、試験片に2mm間隔にて100個のます目をつくり、セロハン粘着テープ(ニチバン社製 セロテープ(登録商標) 幅24mm)を圧着させて剥がし、残存した碁盤目を数えた。剥離がないものを○、1つでも剥離を生じたものを×とした。
【0102】
・耐熱性:110℃の熱風乾燥機中に360時間放置し、被膜外観の変化を目視にて観察し、剥離もクラックも見られないものを○、剥離またはクラックが見られるものを×とした。
・耐湿熱性:50℃、95%の恒温恒湿機中に360時間放置後、密着性試験を実施し、密着性試験と同様に評価した。
【0103】
・耐候性:SUV(岩崎電気アイスーパーUVテスター紫外蛍光ランプウェザーメーター)を用いて、紫外線照射時間20時間(ブラックパネル温度63℃)湿潤4時間(雰囲気温度50℃、湿度95%)を1サイクルとして、20サイクル後の被膜外観の変化を目視にて観察し、剥離もクラックも見られないものを○、剥離またはクラックが見られるものを×とした。
【0104】
なお、表2中の各記号は以下の意味で用いた。
PE3A :ペンタエリスリトールトリアクリレート
TAIC :トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
NPGDA :ネオペンチルグリコールジアクリレート
IPA−ST:日産化学社製オルガノシリカゾル(30%溶液)
UVA1 :トリアジン系紫外線吸収剤
チバスペシャルティーケミカルズ社製:TINUVIN400
UVA2 :ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
チバスペシャルティーケミカルズ社製:TINUVIN213
HALS1 :ヒンダードアミン系光安定剤
三共(株)製:サノールLS765
HALS2 :ヒンダードアミン系光安定剤
チバスペシャルティーケミカルズ社製:TINUVIN123
PI1 :チバスペシャルティーケミカルズ社製:イルガキュア184
シリコーン系樹脂:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製
トスガード510(固形分濃度20.5%)
PGM :プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0105】
【表2】

表2の結果から、本発明の樹脂層を有する積層体は耐摩耗性が高いだけでなく、同時に密着性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性も優れたものとなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、基材密着性に優れた硬化層を有して、外観、密着性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐候性に優れた積層体を提供することが可能となる。また、本発明の積層体は外観、耐摩耗性、耐擦傷性、耐候性が優れていることから、車両などの、ヘッドランプカバー、風防材、窓材、屋根材に好適に使用できるほかに、建築物用窓ガラス、建築物用外壁材、道路用防音壁、ディスプレイ用面板及び携帯電話用部材等にも好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材と硬化層とを有し、該基材と該硬化層との間に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群より選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂を含有する樹脂層を有する積層体において、該樹脂層の、該基材に対する吸水率の比Qが4未満であり、且つ該樹脂層のガラス転移温度(Tg)が60℃以上であることを特徴と する積層体
【請求項2】
前記樹脂層の膜厚が2μm以上20μm以下であり、且つ該層の300nmの光透過率が5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体
【請求項3】
熱可塑性樹脂からなる基材と硬化層とを有し、該基材と該硬化層との間に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物群より選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂を含有する樹脂層を有する積層体において、該樹脂層が、下記式(1)で表される不飽和単量体(a−1)5〜40重量%、
CH=C(R)COOR (1)
(Rは水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Rは炭素数8以上30以下の分岐を有していてもよいアルキル基を表す)
紫外線吸収性基を有する不飽和単量体(a−2)1〜70重量%、及び(a−1)並びに(a−2)で表される群より選ばれる少なくともひとつの単量体と共重合可能な不飽和単量体(a−3)1〜94重量%を共重合して得られる、数平均分子量が1000以上1000000以下である共重合体(A)を含有することを特徴とする積層体
【請求項4】
前記硬化層が、不飽和基を2個以上有する不飽和化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、及び光重合開始剤(D)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線により硬化させてなることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層体
【請求項5】
前記硬化層が、体積平均粒子径が1nm以上200nm以下のコロイダルシリカ(E)を含有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層体
【請求項6】
前記硬化層が、下記式(2)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物(F)を含有することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層体
Si(OR4−r−s (2)
(式中R、Rはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、メタクリロイル基、アミノ基、グリシドキシ基、および3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる郡から選ばれる1種以上の官能基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、r、sはそれぞれ0〜3の整数であり、r+sは0〜3の整数である)

【公開番号】特開2010−30275(P2010−30275A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55608(P2009−55608)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】