説明

積層光学部品の製造装置

【課題】成形した複数の光学素子を、人手を介さずに組立てて積層光学部品を得る。
【解決手段】積層光学部品の製造装置10は、対向する下型ステージ19及び上型ステージ29を有し、上型ステージ29が下型ステージ19に対してプレス方向に相対的に接近離反可能であり、対向する下型ステージ19及び上型ステージ29に対向して保持された2対の下型20及び上型30と、下型ステージ19に配置されプレス方向に対して直交する面内で移動自在又は旋回自在なX軸テーブル16及びY軸テーブル17と、下型ステージ19に対して移動自在に配置された樹脂供給装置36と、上型ステージ29に対して移動自在に配置された接着剤塗布装置38と、下型ステージ19及び上型ステージ29に配置されたUV照射装置21,31とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学部品が積層された積層光学部品を製造する積層光学部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光学素子から構成されるレンズモジュールを製造する場合、例えば、複数の上型と複数の下型とを接離自在に対向配置したレンズ成形装置により、1枚のレンズシートにレンズ単体を一挙に複数成形していた。そして、成形した複数のレンズを人手により組み立てて調整を行っていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−25118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、成形された複数のレンズの組み立て調整を人手により行っていたため、多くの製造工数を要し、製造コストが増大する。
また、完成されたレンズモジュールの光軸偏芯精度、光学面間精度等は人手の熟練に左右されていたため、組立て精度にバラツキが生じていた。
【0005】
本発明は斯かる課題を解決するためになされたもので、成形した複数の光学素子を、人手を介さずに組立てて積層光学部品を得ることのできる積層光学部品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、
対向する型ステージを有し、一方の型ステージが他方の型ステージに対してプレス方向に相対的に接近離反可能な積層光学部品の製造装置であって、
前記対向する型ステージに対向して保持された複数対の成形型と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に配置され、前記プレス方向に対して直交する面内で移動自在又は旋回自在な移動機構と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に対して移動自在に配置された樹脂供給装置と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に対して移動自在に配置された接着剤塗布装置と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に配置された樹脂硬化装置と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、
前記樹脂硬化装置は、熱源を有する装置であることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、
前記樹脂硬化装置は、前記対向する型ステージの少なくとも一方から紫外線を照射できる装置であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、
前記樹脂硬化装置と前記成形型との間に、紫外線又は熱を遮蔽するマスクが配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、
前記樹脂供給装置及び前記接着剤塗布装置は、共通の駆動手段を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形した複数の光学素子を、人手を介さずに組立てて積層光学部品を得ることのできる積層光学部品の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】積層光学部品の製造装置の全体正面図である。
【図2】第1のキャビティに第1の樹脂を供給する工程を示す図である。
【図3】同上のIII部拡大を示す図である。
【図4】第1の樹脂を成形する工程を示す図である。
【図5】第1の光学部品から下型のみを離型した状態を示す図である。
【図6】第2のキャビティに第2の樹脂を供給する工程を示す図である。
【図7】同上のVII部拡大を示す図である。
【図8】第2の樹脂を成形する工程を示す図である。
【図9】第2の光学部品から上型のみを離型した状態を示す図である。
【図10】第1の光学部品に接着剤を塗布する工程を示す図である。
【図11】第1の光学部品と第2の光学部品とが接触するように対向配置した状態を示す図である。
【図12】第1の光学部品と第2の光学部品とを接合して積層光学部品を得る状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、積層光学部品の製造装置の全体正面図である。
積層光学部品の製造装置10は、ベース11を備えており、このベース11上に正面視略L字状の支持枠12が取り付けられている。この支持枠12は、上下方向(鉛直方向)に延びる支柱13と、その上端部で水平方向(鉛直方向と直交方向)に延びる上部フレーム14とを有している。
【0013】
上部フレーム14とベース11との間には、上下方向に平行な複数(本実施の形態では2本)のガイドロッド15が連結されている。支柱13の側面には、このガイドロッド15と平行なリニアガイド24が取り付けられている。
【0014】
ベース11の上面には、図1のX軸方向に移動可能な移動機構としてのX軸テーブル16、Y軸方向に移動可能な移動機構としてのY軸テーブル17、Z軸に平行な軸の回りに旋回可能な移動機構としてのC軸テーブル18が配置されている。X軸とY軸で形成される平面が、後述するプレス方向に対して直交する平面を形成している。
【0015】
X軸テーブル16上には、複数(本実施の形態では2つ)の成形型としての下型20,20を保持可能な下型ステージ19が設けられている。これら複数の下型20は、例えばマトリクス状や同心状に配置される。この下型20は、真空吸着又は機械的チャック手段等により下型ステージ19に保持することができる。さらに、下型ステージ19には、樹脂硬化装置としてのUV照射装置(紫外線照射装置)21が内蔵されている。
【0016】
また、ガイドロッド15、15には、夫々ボールブッシュ23、23を介して上下動可能に案内される可動体22が配置されている。この可動体22の一端には、スライダ25が一体的に固定されている。このスライダ25は、リニアガイド24に沿って上下方向に案内される。
【0017】
一方、上部フレーム14には、サーボモータ27が取り付けられている。このサーボモータ27にはボールネジ26が連結されている。このボールネジ26は、上部フレーム14に螺合され、その下端には可動体22が取り付けられている。こうして、可動体22はボールネジ26の回転により上下動可能となっている。
【0018】
可動体22の下面には、前述した下型ステージ19に対向するように、上型ステージ29が配設されている。この上型ステージ29には、樹脂硬化装置としてのUV照射装置(紫外線照射装置)31が内蔵されている。
【0019】
この上型ステージ29には、複数(本実施の形態では2つ)の成形型としての上型30,30を取り付けることが可能となっている。これらの上型30,30は、前述した各下型20,20に所定間隔を隔てて対向配置されている。この上型30も、真空吸着又は機械的チャック手段等により上型ステージ29に保持することができる。そして、上型30と下型20,及び上型30と下型20は、夫々の型中心軸(O−O)が一致するように高精度に位置決めされている。
【0020】
また、ベース11の上面には、支柱13の側方にコラム33が立設されている。このコラム33の上端部には、下型ステージ19及び上型ステージ29に対してX軸方向に進退自在および位置決め可能な駆動手段としてのエアシリンダ34が配設されている。このエアシリンダ34の先端には、樹脂供給装置36及び接着剤塗布装置38が取り付けられている。
【0021】
これら樹脂供給装置36及び接着剤塗布装置38は、共通のエアシリンダ34によって駆動されるようになっている。このエアシリンダ34は、その作動ロッド34a、34bが、2位置で停止可能な構成を有している。なお、符号40は装置全体を制御する制御部である。
【0022】
なお、樹脂供給装置36及び接着剤塗布装置38は、エアシリンダでなく、モータにより駆動されてもよい。
次に、図1を参照しながら、図2〜図12に基づき積層光学部品(レンズモジュール)の製造工程を説明する。
【0023】
まず、一方の上型30及び下型20を用いて、次の(1A)から(4A)までの工程を行う。
【0024】
(1A)樹脂滴下工程
図2は、第1のキャビティ43に第1の樹脂44を供給する工程を示す図である。
すなわち、対向配置された一対の成形型としての上型30及び下型20の間に形成された第1のキャビティ43に、第1の樹脂44を供給する。なお、本実施の形態では吐出される第1の樹脂44として、例えば常温で流動性に富むUV硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂)を用いた場合について説明するが、これに限らない。例えば、熱可塑性樹脂等を用いてもよい。さらに、樹脂に限らず、例えばガラス等の光学材料であってもよい。
【0025】
上型30には、下型20との対向面側に形成された非球面状の凹部301aと、その周囲に形成された平坦面301bとを有している。これら凹部301a及び平坦面301bは、上型30の成形面(転写面)を形成している。また、ここでは凹部301aの中心は型中心軸O−Oと一致するように形成されている。
【0026】
下型20には、上型30との対向面側に形成された細長矩形状の溝部201a,201aと、その周囲に形成された平坦面201bとを有している。これら溝部201a,201a及び平坦面201bは、下型20の成形面(転写面)を形成している。また、溝部201a,201aは、型中心軸O−Oを中心として左右対称な位置に形成されている。
【0027】
さらに、上型30の凹部301aの中心と、下型20の2つの溝部201a,201aの中心とは、一致するように位置決めされている。
ここで、図2のIII部拡大を示す図3に示すように、上型30の平坦面301bには、離型性を低下させる処理(例えば微細凹凸部301b’)が施されている。この微細凹凸部301b’は、上型30に対して第1の樹脂44の離型性を低下させる機能を有する。なお、上型30の凹部301aは光学素子の光学面を形成する面であるため、その表面には微細凹凸部301b’を形成しない。
【0028】
また、下型20の平坦面201bには、図示しないが離型性を向上させる処理が施されている。なお、下型20の溝部201aにも、離型性を向上させる処理を施してもよい。この離型性を向上させる処理として、例えばプラズマ処理等の表面改質処理が採用される。この表面改質処理は、下型20に対して第1の樹脂44の離型性を向上させる機能を有する。
【0029】
なお、本実施の形態では、上型30の平坦面301bに離型性を低下させる処理を施し、かつ、下型20の平坦面201bに離型性を向上させる処理を施したが、これに限らない。例えば、上型30のみに離型性を低下させる処理を施すか、又は、下型20のみに離型性を向上させる処理を施してもよい。
【0030】
こうして、上型30及び下型20間に形成される成形空間としての第1のキャビティ43に、樹脂供給装置36により第1の樹脂44が吐出されて供給される。
また、上型30及び下型20は、不図示の位置決め機構により夫々の型中心軸O−Oが高精度に一致するように位置決めされている。
【0031】
(2A)プレス工程
図4は、第1の樹脂44を成形する工程を示す図である。
すなわち、下型20に対し上型30を接近移動させて、第1の樹脂44をプレスして所望形状に成形する。なお、上型30に対して下型20を接近移動させてもかまわない。このプレス工程で、第1の樹脂44が押圧されて変形し、第1の中間成形品47’が成形される。この第1の中間成形品47’の中心肉厚は、上型30及び下型20間の距離で決定される。この距離は、制御部40によって高精度に制御されるようになっている。
【0032】
(3A)UV照射工程
図4のプレス工程で成形された第1の中間成形品47’に対し、UV照射装置21及びUV照射装置31により紫外線を照射する。本実施の形態では、UV照射装置21及びUV照射装置31として夫々紫外線ランプ21a、31aを用いている。なお、いずれか一方のUV照射装置21又はUV照射装置31を用いてもよい。こうして、第1の中間成形品47’を固化させる。
【0033】
なお、第1の樹脂44として、例えば熱可塑性樹脂を用いた場合は、UV照射装置(紫外線照射装置)21の代わりに熱源を有する装置(ヒータ等)が用いられる。そして、この熱源を有する装置により、成形前に第1の樹脂44を軟化させ、成形後は冷却して固化させる。
【0034】
(4A)離型工程
図5は、第1の光学部品47から下型20のみを離型した状態を示す図である。
すなわち、図4で第1の中間成形品47’を紫外線照射により硬化させた後、成形された第1の光学部品47から下型20のみを離型する。この場合、前述したように、上型30の平坦面301bには離型性を低下させる微細凹凸部301b’が形成され、また、下型20の平坦面201bには離型性を向上させる処理が施されている。このため、第1の光学部品47は容易に下型20から離型されて確実に上型30に残る。
【0035】
この第1の光学部品47は、下型20との対向面側に突出する2つの突出片471a,471aと、平面部471bと、下型20との反対向面側に突出する半球部471cと、を有している。ただし、第1の光学部品47の形状としては、これに限るものではない。後述する第2の光学部品47との接合面側に、突出片471aに相当する突出部分があればよい。
【0036】
次に、前述した(1A)から(4A)までの工程と並行して、他方の上型30及び下型20を用いて、以下の(1B)から(4B)までの工程を行う。
【0037】
(1B)樹脂滴下工程
図6は、第2のキャビティ43に第2の樹脂44を供給する工程を示す図である。
すなわち、対向配置された一対の成形型としての上型30及び下型20の間に形成された第2のキャビティ43に、第2の樹脂44を供給する。これらの上型30と下型20は、前述した上型30と下型20にそれぞれ隣接して配置されている。なお、前述と同様に、吐出材料としてUV硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂)を用いた場合について説明するが、特にこれに限定されるものではない。
【0038】
上型30には、下型20との対向面側に形成された非球面状の凹部302aと、その周囲に形成された平坦面302bとを有している。これら凹部302a及び平坦面302bは、上型30の成形面(転写面)を形成している。また、凹部302aの中心は型中心軸O−Oと一致している。
【0039】
下型20には、上型30との対向面側に形成された非球面状の凹部202aと、その周囲に形成された平坦面202bとを有している。これら凹部202a及び平坦面202bは、下型20の成形面(転写面)を形成している。また、凹部202aの中心は型中心軸O−Oと一致している。
【0040】
さらに、上型30の凹部302aの中心と下型20の凹部202aの中心とは、一致するように位置決めされている。
ここで、上型30の平坦面302bには、離型性を向上させる処理が施されている。この離型性を向上させる処理として、例えばプラズマ処理等の表面改質処理が用いられている。なお、上型30の凹部302aにも同様の処理を施してもよい。この表面改質処理は、上型30に対して第2の樹脂44の離型性を向上させる機能を有する。
【0041】
また、図6のVII部拡大を示す図7に示すように、下型20の平坦面202bには離型性を低下させる処理(例えば微細凹凸部202b’)が施されている。この微細凹凸部202b’は、下型20に対して第2の樹脂44の離型性を低下させる機能を有する。なお、下型20の凹部202aは光学素子の光学面を形成する面であるため、その表面には微細凹凸部202b’を形成しない。
【0042】
こうして、上型30及び下型20の間に形成される成形空間としての第2のキャビティ43に、樹脂供給装置36により第2の樹脂44が吐出されて供給される。この第2の樹脂44は第1の樹脂44と同じ材料である場合もあり、また、異なる場合もある。
【0043】
また、上型30及び下型20は、不図示の位置決め機構により夫々の型中心軸O−Oが高精度に一致するように位置決めされている。
【0044】
(2B)プレス工程
図8は、第2の樹脂44を成形する工程を示す図であって、下型20に対し上型30を接近移動させて第2の樹脂44を成形するプレス工程を示している。なお、この場合も上型30に対して下型20を接近移動させてもかまわない。このプレス工程で、第2の樹脂44が押圧されて変形し、第2の中間成形品47’が成形される。この第2の中間成形品47’の中心肉厚は、上型30及び下型20間の距離で決定される。この距離は、制御部40によって高精度に制御されるようになっている。
【0045】
(3B)UV照射工程
図8のプレス工程で成形された第2の中間成形品47’に対し、UV照射装置21及びUV照射装置31により紫外線を照射する。本実施の形態では、UV照射装置21及びUV照射装置31として夫々紫外線ランプ21a、31aを用いている。なお、いずれか一方のUV照射装置21又はUV照射装置31を用いてもよい。こうして、第2の中間成形品47’を固化させる。
【0046】
なお、第2の樹脂44として、例えば熱可塑性樹脂を用いた場合は、UV照射装置(紫外線照射装置)21の代わりに熱源を有する装置(ヒータ等)が用いられる。そして、この熱源を有する装置により、成形前に第2の樹脂44を軟化させ、成形後は冷却して固化させる。
【0047】
(4B)離型工程
図9は、第2の光学部品47から上型30のみを離型した状態を示す図である。
すなわち、図8で紫外線照射により第2の中間成形品47’を硬化させた後、第2の光学部品47から上型30のみを離型する。この場合、前述したように、下型20の平坦面202bには微細凹凸部202b’が形成され、また、上型30の平坦面302bには離型性を向上させるための処理が施されているため、第2の光学部品47は容易に上型30から離型されて確実に下型20に残ることになる。
【0048】
この第2の光学部品47は、中央に突出する球状部472cと周囲の平面部472bとを有している。ただし、第2の光学部品47の形状としては、これに限るものではない。
【0049】
(5)接着剤塗布工程
図10は、第1の光学部品47に接着剤49を塗布する工程を示す図である。
すなわち、上型30に保持された第1の光学部品47の突出片471aの先端面48に、接着剤塗布装置38により接着剤49を塗布する。
この場合、接着剤塗布装置38がX軸方向に進出してきて、第1の光学部品47の一方の突出片471aの先端面48、および他方の突出片471aの先端面48に接着剤を塗布する。
【0050】
ここで、本実施の形態では、接着剤49としてUV硬化型樹脂が用いられる。このUV硬化型樹脂は紫外線(UV光)を照射することにより、瞬時(例えば15sec程度)に硬化する性質を有するためである。なお、両者を接合する場合、接着剤による接着以外にも、例えば超音波溶着や熱溶着等により接合することができる。
【0051】
(6)型移動工程
図11は、第1の光学部品47と第2の光学部品47とが接触するように対向配置した状態を示す図である。
すなわち、第1の光学部品47を保持した上型30と、第2の光学部品47を保持した下型20とを、第1の光学部品47と第2の光学部品47とが対向し、かつその光軸が一致するように移動させる。
【0052】
本実施の形態では、C軸テーブル18を図1のZ軸に平行な軸の回りに180°回転させて、上型30と下型20とを対向配置するようにした。なお、例えば、上型30と下型20とがマトリクス状に配置されている場合は、X軸テーブル16及びY軸テーブル17を移動させて上型30と下型20とを対向配置することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、接着剤塗布工程の次に型移動工程を行う場合について説明したが、順序はこれに限らない。型移動工程の次に接着剤塗布工程を行ってもよい。
【0054】
(7)プレス工程
このプレス工程では、第1の光学部品47と第2の光学部品47とを、接触面で接触した状態で下型20に対し上型30を接近させて、所望の圧力で接触させる。
このために、下型ステージ19に対し上型ステージ29を接近移動させて、第1の光学部品47の突出片471a,471aの先端を第2の光学部品47の平面部472bに当接させる。
【0055】
(8)接着工程
さらに、この当接面に塗布された接着剤49にUV照射装置21から紫外線を照射して硬化させ、第1の光学部品47と第2の光学部品47とを接合する。
この場合、UV照射装置21の上面に紫外線を遮蔽するための不図示のマスク(例えば金属板)を配置するとよい。こうして、すでに硬化した樹脂部分(特に光学機能面)に、再度紫外線を照射しないようにする。樹脂が変色するのを防止するためである。
【0056】
(9)上型ステージ29を上昇させて工程終了
図12は、第1の光学部品47と第2の光学部品47とを接合して積層光学部品を得る状態を示す図である。
すなわち、第1の光学部品47と第2の光学部品47とを接着剤49で接合した後、上型ステージ29を上昇させて上型30と下型20とを離型し、積層光学部品(レンズモジュール)50を得る。
【0057】
得られた積層光学部品50は、第1の光学部品47と第2の光学部品47とが所定間隔で接合された2層構造をなしている。
なお、本実施形態では、第1の光学部品47から下型20のみを離型し、第2の光学部品47から上型30のみを離型して、第1の光学部品47と第2の光学部品47とを接合した場合について説明したが、これに限らない。
【0058】
例えば、第1の光学部品47から上型30のみを離型し、第2の光学部品47から下型20のみを離型して、第1の光学部品47と第2の光学部品47とを接合してもよい。この場合は、離型性を向上又は低下させるための処理は前述した場合と逆になる。
【0059】
さらに、本実施の形態では、2層構造の積層光学部品(レンズモジュール)50を得る場合について説明したが、これに限らない。例えば、3層構造等の多層構造の積層光学部品(レンズモジュール)50を得ることもできる。
【0060】
また、本実施形態において、第1の光学部品47及び第2の光学部品47の少なくとも1つの光学面に反射防止構造を形成するとよい。この反射防止構造は、光学面にコーティング膜を形成したり、光学面の表面を使用する波長より小さい周期を有する微細凹凸構造に加工したりして形成することができる。この反射防止構造により、入射する光の反射を防止してフレアの発生等を抑制することができる。
【0061】
さらに、例えば、上型30、30又は下型20、20の少なくとも一方の型をガラス、又は、UV光に対して透明な光学材料で構成するとよい。ガラス型等であれば、成形材料としてUV硬化型樹脂を用いた場合に、ガラス型の上方又は下方から容易に紫外線を照射して固化することができるし、磨耗しても簡単に同じ型を多数製造することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、下型ステージ19と上型ステージ29が、夫々対向する2対の上型30、30と下型20、20を備えた場合について説明したが、これに限らない。例えば、4対以上の上型30と下型20を備えることもできる。また、例えば図5で下型20を離型し、図9で上型30を離型した後に、次の生産の準備として、下型20に樹脂を滴下することもできる。こうして、生産効率の向上を図ることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態においては、第1の光学部品47と第2の光学部品47を別々に成形し、第1の光学部品47を保持する上型30と第2の光学部品47を保持する下型20とを、第1の光学部品47と第2の光学部品47とが接触するように対向配置して接着剤49で接合した。このため、人手を介さずに複数の光学部品47,47を組立てて積層光学部品50を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 積層光学部品の製造装置
11 ベース
12 支持枠
13 支柱
14 上部フレーム
15 ガイドロッド
16 X軸テーブル
17 Y軸テーブル
18 C軸テーブル
19 下型ステージ
20 下型
20 下型
20 下型
201a 溝部
201b 平坦面
202a 溝部
202b 平坦面
202b’微細凹凸部
21 UV照射装置
21a 紫外線ランプ
22 可動体
23 ボールブッシュ
24 リニアガイド
25 スライダ
26 ボールネジ
27 サーボモータ
29 上型ステージ
30 上型
30 上型
30 上型
301a 凹部
301b 平坦面
301b’微細凹凸部
302a 凹部
302b 平坦面
31 UV照射装置
31a 紫外線ランプ
33 コラム
34 エアシリンダ
34a 作動ロッド
34b 作動ロッド
36 樹脂供給装置
38 接着剤塗布装置
40 制御部
43 第1のキャビティ
43 第2のキャビティ
44 第1の樹脂
44 第2の樹脂
47 第1の光学部品
47’ 第1の中間成形品
47 第2の光学部品
47’ 第2の中間成形品
471a 突出片
471b 平面部
471c 半球部
472b 平面部
472c 球状部
48 先端面
49 接着剤
50 積層光学部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する型ステージを有し、一方の型ステージが他方の型ステージに対してプレス方向に相対的に接近離反可能な積層光学部品の製造装置であって、
前記対向する型ステージに対向して保持された複数対の成形型と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に配置され、前記プレス方向に対して直交する面内で移動自在又は旋回自在な移動機構と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に対して移動自在に配置された樹脂供給装置と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に対して移動自在に配置された接着剤塗布装置と、
前記対向する型ステージの少なくとも一方に配置された樹脂硬化装置と、
を有することを特徴とする積層光学部品の製造装置。
【請求項2】
前記樹脂硬化装置は、熱源を有する装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の積層光学部品の製造装置。
【請求項3】
前記樹脂硬化装置は、前記対向する型ステージの少なくとも一方から紫外線を照射できる装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の積層光学部品の製造装置。
【請求項4】
前記樹脂硬化装置と前記成形型との間に、紫外線又は熱を遮蔽するマスクが配置されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層光学部品の製造装置。
【請求項5】
前記樹脂供給装置及び前記接着剤塗布装置は、共通の駆動手段を有している
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層光学部品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−62962(P2011−62962A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216869(P2009−216869)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】