説明

積層板、回路基板、および半導体パッケージ

【課題】反りが低減され、薄型回路基板として適した積層板を提供する。
【解決手段】本発明の積層板100は、上部に配線層が形成されるか、またはビルドアップ層が形成される積層板である。そして、積層板100の厚み方向においては、第一繊維基材層101を含有する第一絶縁層205と、無機充填材を含み繊維基材層を含まない第二絶縁層206と、第二繊維基材層102を含有する第三絶縁層207と、がこの順で積層され、第一絶縁層205および第三絶縁層207がそれぞれ第一プリプレグ201および第二プリプレグ203の硬化体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板、回路基板、および半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化および軽薄短小化の要求にともなって、回路基板はますます薄型化される傾向にある。
【0003】
一般的な回路基板は、繊維基材層と樹脂層を備える複数のプリプレグが積層された積層板で主に構成される。現行の積層板は、例えばCPU(中央演算処理装置)で用いられるFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)用で厚みが0.8mm程度のものが主流である。
近年、軽薄短小化の要求、部材コスト、加工コストなどの削減による基板コスト低減、電気的特性の向上などの理由から積層板の薄型化が進んでいる。最近では、積層板の厚みが0.4mm程度、さらには0.2mm以下のものも開発されている。
【0004】
しかしながら、積層板の厚みを薄くした場合に、積層板の強度の低下や熱膨張係数の増加により、積層板の反りが増大する。その結果、半導体パッケージの反りの変動量が大きくなり、実装歩留まりが低下する場合があった。
【0005】
このような問題を解決する手段として、例えば、以下の文献に記載の手段がある。
【0006】
特許文献1(特開昭62−292428)には、ガラス不織布の引張り強度の縦および横の比を一定の範囲とすることにより、プリプレグの反りおよびねじれが低減することが開示されている。
【0007】
特許文献2(特開平4−259543)は、反りやねじれが少なく、寸法安定性に優れた印刷回路用積層板の製造方法に関するものである。特許文献2に記載の方法においては、表面層に使用するガラス織布の縦、横方向の打ち込み本数の差、および中間層に使用するガラス不織布の縦、横の引っ張り強度比を制御することにより、縦、横の両方向のバランスを図っている。
【0008】
特許文献3(特開2008−258335)には、厚さ方向に対して繊維基材が偏在しているビルドアップ層を使用することにより、半導体パッケージの反りを効果的に防止できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−292428号公報
【特許文献2】特開平4−259543号公報
【特許文献3】特開2008−258335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、回路基板のさらなる薄型化が進むにつれて、積層板の反りがより顕著なものとなってきた。また、積層板の反りの増大に伴って、回路基板の反りの増大およびそれに起因する半導体パッケージの反りの増大もより顕著なものとなってきた。
特許文献1、2および3の技術は、積層板の反りを解決する上で効果的であったが、回路基板のさらなる薄型化に伴い、さらに反りが低減された積層板の開発が望まれていた。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、反りが低減され、薄型回路基板として適した積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
上部に配線層が形成されるか、またはビルドアップ層が形成される積層板であって、
当該積層板の厚み方向において、
第一繊維基材層を含有する第一絶縁層と、
無機充填材を含有し、繊維基材層を含まない第二絶縁層と、
第二繊維基材層を含有する第三絶縁層と、
がこの順で積層され、
前記第一絶縁層および前記第三絶縁層がプリプレグの硬化体からなる、積層板が提供される。
【0013】
さらに、本発明によれば、上記本発明における積層板を含む、回路基板が提供される。
【0014】
さらに、本発明によれば、上記本発明における回路基板に半導体素子が搭載された、半導体パッケージが提供される。
【0015】
本発明の積層板は、第一繊維基材層を含有する第一絶縁層と、無機充填材を含有し繊維基材層を含まない第二絶縁層と、第二繊維基材層を含有する第三絶縁層と、がこの順で積層されている。よって、繊維基材層が積層板の外側に配置され、膨張応力が積層板の中心に移動する。そのため、反りが低減され、薄型回路基板に適した積層板を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、繊維基材層が積層板の外側に配置されることによって、膨張応力が積層板の中心に移動するため、反りが低減され、薄型回路基板に適した積層板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における積層板の構成およびその製造方法を示す断面図である。
【図2】本実施形態におけるプリプレグの製造方法を示す断面図である。
【図3】本実施形態における金属箔付き積層板の構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態におけるビルドアップ層付き積層板の構成を示す断面図である。
【図5】本実施形態におけるビルドアップ層の構成を示す断面図である。
【図6】本実施形態における回路基板の構成を示す断面図である。
【図7】本実施形態におけるソルダーレジスト層付き回路基板の構成を示す断面図である。
【図8】本実施形態におけるソルダーレジスト層の構成を示す断面図である。
【図9】本実施形態における半導体パッケージの構成を示す断面図である。
【図10】本実施形態における積層板の構成およびその製造方法を示す断面図である。
【図11】本実施形態におけるプリプレグの製造方法を示す断面図である。
【図12】本実施形態におけるプリプレグの製造方法を示す断面図である。
【図13】本実施形態におけるプリプレグの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
(積層板)
はじめに、本実施形態における積層板の構成について説明する。図1は、本実施形態における積層板の構成および製造方法を示す断面図である。積層板100は、上部に配線層が形成されるか、またはビルドアップ層が形成される積層板である。そして、積層板100の厚み方向においては、第一繊維基材層101を含有する第一絶縁層205と、無機充填材を含み繊維機材層を含まない第二絶縁層206と、第二繊維基材層102を含有する第三絶縁層207と、がこの順で積層され、第一絶縁層205および第三絶縁層207がそれぞれ第一プリプレグ201および第二プリプレグ203の硬化体であり、第二絶縁層206が樹脂層202の硬化体である。
【0020】
また、積層板100の反りの防止効果をより効果的に得るためには、第一繊維基材層101の中心線A1と第二繊維基材層102の中心線A2との距離をD1とし、積層板100の厚さをD2としたとき、D2/2<D1の条件を満たすことが好ましい。
こうすれば、膨張応力を積層板100の中心に移動でき、積層板の単体反りをより一層低減できる。
【0021】
また、積層板100の反りの防止効果をより効果的に得るためには、第一繊維基材層101および第二繊維基材層102が、積層板の中心線B1に対してそれぞれ対称に配置されることが好ましい。
【0022】
本実施形態における積層板の厚さは、好ましくは、0.025mm以上0.6mm以下である。さらに好ましくは0.04mm以上0.4mm以下、さらに好ましくは0.06mm以上0.3mm以下、さらに好ましくは0.08mm以上0.2mm以下である。積層板の厚さが上記範囲内であると、機械的強度および生産性のバランスがとくに優れ、薄型回路基板に適した積層板を得ることができる。
【0023】
50℃から150℃の範囲における積層板100の面方向の線膨張係数は、1ppm/℃以上20ppm/℃以下であり、好ましくは2ppm/℃以上15ppm/℃以下である。線膨張係数が上記範囲内であると、配線パターンを形成した回路基板、半導体素子を搭載した半導体パッケージの反り抑制や温度サイクル信頼性の向上がより一層効果的に得られ、さらに半導体パッケージを二次実装した場合のマザーボードとの温度サイクル信頼性の向上がより一層効果的に得られる。
線膨張係数は、例えば、積層板の銅箔をエッチングし、4mm×40mmのテストピースを切り出し、TMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて、5℃/分の引っ張り条件で、20℃から300℃の範囲における線熱膨張係数を測定して求めることができる。また、α1はガラス転移温度以下の線膨張係数、α2はガラス転移温度以上での線膨張係数であり、ここでは50℃から150℃の範囲を線膨張係数(α1)とする。
【0024】
(積層板の製造方法)
つぎに、積層板100の製造方法について説明する。
はじめに、第一繊維基材層101を含有する第一プリプレグ201、無機充填材を含み繊維機材層を含まない樹脂層202および第二繊維基材層102を含有する第二プリプレグ203をそれぞれ準備する。
【0025】
つぎに、図1(a)に示したように、樹脂層の積層方向において、第一プリプレグ201、樹脂層202および第二プリプレグ203の順番で重ね合わせる。
このとき、積層板100の反りの防止効果をより効果的に得るためには、得られる積層板100がD2/2<D1の条件を満たすように、それぞれ重ね合わせることが好ましい。第一プリプレグ201および第二プリプレグ203に含まれる第一繊維基材層101および第二繊維基材層102の積層方向におけるそれぞれの位置や、各層の厚さを調整することによって、上記条件を満たす積層板を作製することができる。
【0026】
なお、積層方法としては、とくに限定されないが、例えばバッチ式であってもよいし、各層を連続的に供給して、真空ラミネート装置、真空ベクレル装置などを用いて連続的に積層してもよい。
【0027】
最後に、上記のように重ね合わせた第一プリプレグ201、樹脂層202および第二プリプレグ203を加熱、加圧して成形することにより、図1(b)に示すような本実施形態における積層板100が得られる。
【0028】
上記加熱処理する方法としては、とくに限定されないが、例えば、熱風乾燥装置、赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置などを用いて実施することができる。熱風乾燥装置または赤外線加熱装置を用いた場合は、上記接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施することができる。また、加熱ロール装置または平板状の熱盤プレス装置を用いた場合は、上記接合したものに所定の圧力を作用させることで実施することができる。
【0029】
加熱処理する際の温度は、とくに限定されないが、用いる樹脂が溶融し、かつ樹脂の硬化反応が急速に進行しないような温度域とすることが好ましい。樹脂が溶融する温度としては好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上である。また、樹脂の硬化反応が急速に進行しない温度としては好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
また、加熱処理する時間は用いる樹脂の種類などにより異なるため、とくに限定されないが、例えば、30分間以上180分間以下処理することにより実施することができる。
また、加圧する圧力は、とくに限定されないが、例えば、0.2MPa以上5MPa以下が好ましく、2MPa以上4MPa以下がより好ましい。
【0030】
つづいて、積層板100を構成する材料について説明する。
(プリプレグ)
積層板100に含まれる第一プリプレグ201および第二プリプレグ203は、繊維基材に一または二以上の樹脂組成物を含浸させ、その後、半硬化させて得られる繊維基材層と樹脂層を備えるシート状の材料であり、一般的にプリプレグと呼ばれている。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性などの各種特性に優れ、回路基板用の積層板の製造に適しており、好ましい。
【0031】
本実施形態で用いられる樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、とくに限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法、支持基材付き樹脂層をラミネートする方法などが挙げられる。これらの中でも、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、繊維基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。なお、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0032】
とくに、繊維基材の厚さが0.1mm以下の場合、繊維基材の両面からフィルム状の樹脂層でラミネートする方法が好ましい。これにより、繊維基材に対する樹脂組成物の含浸量を自在に調節でき、プリプレグの成形性をさらに向上できる。なお、フィルム状の樹脂層をラミネートする場合、真空のラミネート装置などを用いることがより好ましい。
【0033】
具体的に、プリプレグを製造する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
図2は、プリプレグの製造方法を示す断面図である。ここでは、あらかじめキャリア材料5a、5bを製造し、このキャリア材料5a、5bを繊維基材11にラミネートした後、キャリアフィルムを剥離する方法について、具体的に説明する。
【0034】
あらかじめ第一の樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布したキャリア材料5aと、第二の樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布したキャリア材料5bとを製造する。つぎに、真空ラミネート装置60を用いて、減圧下で繊維基材の両面からキャリア材料5aおよび5bを重ね合わせて、必要により樹脂組成物が溶融する温度以上に加熱したラミネートロール61で接合し、キャリアフィルム上に塗布した樹脂組成物を繊維基材11に含浸させる。減圧下で接合することにより、繊維基材11の内部またはキャリア材料5a、5bの樹脂層と繊維基材11との接合部位に非充填部分が存在しても、これを減圧ボイドあるいは実質的な真空ボイドとすることができる。
【0035】
このような減圧下で繊維基材11とキャリア材料5a、5bとを接合する他の装置としては、例えば真空ボックス装置、真空ベクレル装置などを用いることができる。
【0036】
つぎに、繊維基材11とキャリア材料5a、5bとを接合した後、熱風乾燥装置62でキャリア材料に塗布された樹脂の溶融温度以上の温度で加熱処理する。これにより、減圧下での接合工程で発生していた減圧ボイドなどをほぼ消し去ることができる。加熱処理する他の方法としては、例えば赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置などを用いて実施することができる。
【0037】
キャリア材料5a、5bを繊維基材11にラミネートした後、キャリアフィルムを剥離する。この方法により、繊維基材11に樹脂組成物が担持され、繊維基材11を内蔵するプリプレグ21ができる。
【0038】
また、上記の方法を用いれば、キャリア材料5aおよび5bの樹脂層の厚みを調節することによって、厚さ方向において繊維基材層が偏在したプリプレグを作製することができる。
【0039】
上記の方法以外には、参考文献1(特開2010−275337号公報)の段落0022〜0041に記載された方法などが挙げられる。以下に、図11を参照しながら、具体的に説明する。
【0040】
2つのダイコーターである第1塗工装置1aと第2塗工装置1bとを備えた塗布機に、繊維基材3がこの2つのダイコーターの間を通るように搬送されて、その両面に片面ずつそれぞれ樹脂ワニス4が塗工される。第1塗工装置1aと第2塗工装置1bは、同一のダイコーターを用いても、異なるものを用いてもよい。また、図12に示すように、第1塗工装置1aと第2塗工装置1bはロールコーターを用いてもよい。また、塗工間距離Lおよび先端重複距離Dは、図11および図12の示すように一定の距離を有するのが好ましいが、図13に示すように、一定の距離を有さなくてもよい。
【0041】
第1塗工装置1aおよび第2塗工装置1bはそれぞれ塗工先端部2を有しており、それぞれの塗工先端部2は、繊維基材3の幅方向に細長く形成されている。そして、第1塗工装置1aの塗工先端部である第1塗工先端部2aは繊維基材3の一方の面に向けて突出し、第2塗工装置1bの塗工先端部である第2塗工先端部2bは繊維基材3の他方の面に向けて突出している。それにより、樹脂ワニス4の塗工の際には、第1塗工先端部2aは繊維基材3の一方の面に樹脂ワニス4を介して接触し、第2塗工先端部2bは繊維基材3の他方の面と樹脂ワニス4を介して接触することとなる。
【0042】
第1塗工装置1aと第2塗工装置1bとから吐出される樹脂ワニス4の単位時間当たりの吐出量は、同じであってもよく、異なっていてもよい。樹脂ワニスの単位時間当たりの吐出量を異ならせることにより、塗工する樹脂ワニス4の厚みを繊維基材3の一方の面と他方の面とで個別に制御することができ、樹脂層の層厚の調整を容易に行うことができる。
乾燥機で所定の温度で加熱して、塗布された樹脂ワニス4の溶剤を揮発させると共に樹脂組成物を半硬化させてプリプレグを製造する。
【0043】
また、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、樹脂ワニスに用いられる溶剤は、樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが好ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系などが挙げられる。
【0044】
非対称プリプレグを構成する一方の樹脂層Aの厚みC1は、通常2.3μm以上100μm以下、他方の樹脂層Bの厚みC2は通常1μm以上15μm以下が好ましい。
ここで言う樹脂層の厚みとは、繊維基材層と樹脂層の界面から当該樹脂層の反対側界面までの距離であり、繊維基材層に含浸している樹脂を含まない。なお、樹脂層の厚みは、例えばプリプレグの硬化後の断面を光学顕微鏡で観察することにより測定できる。
また、非対称プリプレグの樹脂層Bの厚みC2と樹脂層Aの厚みC1との比(C2/C1)が0.1<C2/C1<0.9の範囲であることが、反りの制御を容易にする観点から好ましい。なお、本実施形態では、非対称プリプレグを構成する樹脂層の中で、相対的に厚い樹脂層を樹脂層A、相対的に薄い樹脂層を樹脂層Bと呼ぶ。なお、このように繊維基材を挟む2つの樹脂層の厚みが異なるプリプレグを非対称プリプレグと呼ぶ。
【0045】
樹脂ワニスの固形分は、とくに限定されないが、40重量%以上80重量%以下が好ましく、とくに50重量%以上65重量%以下が好ましい。これにより、樹脂ワニスの繊維基材への含浸性をさらに向上させることができる。繊維基材に樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80℃以上200℃以下などで乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
【0046】
(繊維基材層)
第一繊維基材層101および第二繊維基材層102に使用される繊維基材としては、とくに限定されないが、ガラスクロスなどのガラス繊維基材、ポリベンゾオキサゾール樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維などのポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維などのポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維などを主成分として構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙などを主成分とする紙基材などの有機繊維基材などが挙げられる。これらの中でも、強度、吸水率の点からガラスクロスがとくに好ましい。また、ガラスクロスを用いることにより、樹脂層の熱膨張係数をさらに小さくすることができる。
【0047】
本実施形態で用いるガラス繊維基材としては、坪量(1mあたりの繊維基材の重量)が4g/m以上150g/m以下のものであることが好ましく、より好ましくは8g/m以上110g/m以下、さらに好ましくは12g/m以上60g/m以下、さらに好ましくは12g/m以上30g/m以下、さらに好ましくは12g/m以上24g/m以下である。
【0048】
坪量が上記上限値を超える場合は、繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が低下し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の恐れが生じ、また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成が困難になる恐れがある。また、坪量が上記下限値を下回る場合は、ガラスクロスやプリプレグの強度が下がり、ハンドリングの低下や、プリプレグの作製が困難となる恐れや、基板の反りの低減効果が低下する恐れがある。
【0049】
上記ガラス繊維基材の中でも、とくに、線膨張係数が6ppm/℃以下のガラス繊維基材であることが好ましく、3.5ppm/℃以下のガラス繊維基材であることがより好ましい。このような線膨張係数を有するガラス繊維基材を用いることにより、本実施形態の積層板の反りをさらに抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態で用いる繊維基材は、ヤング率が60GPa以上100GPa以下であることが好ましく、より好ましくは65GPa以上92GPa以下、さらに好ましくは86GPa以上92GPa以下である。このようなヤング率を有するガラス繊維基材を用いることにより、例えば半導体実装時のリフロー熱による配線板の変形を効果的に抑制することができるので、電子部品の接続信頼性がさらに向上する。
【0051】
また、本実施形態で用いるガラス繊維基材は、1MHzでの誘電率が3.8以上7.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.8以上6.8以下、さらに好ましくは3.8以上5.5以下である。このような誘電率を有するガラス繊維基材を用いることにより、積層板の誘電率をさらに低減でき、高速信号を用いた半導体パッケージに好適である。
上記のような線膨張係数、ヤング率および誘電率を有するガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Tガラス、UNガラスなどが好適に用いられる。
【0052】
積層板100における第一繊維基材層101および第二繊維基材層102は、上記の繊維基材に樹脂組成物がそれぞれ含浸されてなる層であるが、通常、繊維基材層の厚みは、繊維基材の厚みと考えることができる。
繊維基材層の厚みは、とくに限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上60μm以下、さらに好ましくは12μm以上35μm以下である。このような厚みを有するガラス繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上し、とくに反り低減効果が顕著である。
【0053】
繊維基材層の厚みが上記上限値を超える場合は、繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が低下し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の恐れが生じ、また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成が困難になる恐れがある。また、ガラス繊維基材層の厚みが上記下限値を下回る場合は、ガラスクロスやプリプレグの強度が下がり、ハンドリングの低下や、プリプレグの作製が困難となる恐れや、基板の反りの低減効果が低下する恐れがある。
【0054】
また、繊維基材の使用枚数は、一枚に限らず、薄い繊維基材を複数枚重ねて使用することも可能である。なお、繊維基材を複数枚重ねて使用する場合は、その合計の厚みが上記の範囲を満たせばよい。
【0055】
また、積層板100における第一繊維基材層101および第二繊維基材層102は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
積層板100は、ガラス繊維基材などの繊維基材に樹脂組成物を含浸させてなる繊維基材層を有することにより、低線膨張率、高弾性率に優れ、薄型の多層配線板、該多層配線板に半導体チップを搭載した半導体パッケージにおいて、反りが少なく、耐熱性、熱衝撃性の信頼性に優れるものが得られる。中でも、ガラス繊維基材に樹脂組成物を含浸させてなる繊維基材層を有することにより、高強度、低吸水、低熱膨張を達成することができる。
【0057】
(樹脂組成物)
また、繊維基材に含浸させる樹脂組成物としては、とくに限定されないが、低線膨張率および高弾性率を有し、熱衝撃性の信頼性に優れたものであることが好ましい。
また、樹脂組成物のガラス転移温度は、好ましくは160℃以上270℃以下であり、さらに好ましくは180℃以上240℃以下である。このようなガラス転移温度を有する樹脂組成物を用いることにより、鉛フリー半田リフロー耐熱性がさらに向上するという効果が得られる。
【0058】
具体的な熱硬化性樹脂として、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などが挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用してもよい。
【0059】
これらの中でも、とくにシアネート樹脂(シアネート樹脂のプレポリマーを含む)が好ましい。シアネート樹脂を用いることにより、樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができる。さらに、シアネート樹脂は、電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機械強度などにも優れる。
【0060】
シアネート樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させたものや、必要に応じて加熱などの方法でプレポリマー化したものなどを用いることができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂、ビフェニルアルキル型シアネート樹脂などを挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。ノボラック型シアネート樹脂を用いることにより、架橋密度が増加し、耐熱性が向上する。したがって、樹脂組成物などの難燃性を向上させることができる。
この理由としては、ノボラック型シアネート樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成することが挙げられる。さらに、ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。さらに、プリプレグなどからなる樹脂層を厚さ0.6mm以下にした場合であっても、ノボラック型シアネート樹脂を硬化させて作製した樹脂層を含む積層板は優れた剛性を有する。とくに、このような積層板は加熱時における剛性に優れるので、半導体素子実装時の信頼性にも優れる。
【0061】
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
【0062】
【化1】

【0063】
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが小さすぎると、ノボラック型シアネート樹脂は耐熱性が低下し、加熱時に低量体が脱離、揮発する場合がある。また、nの上限は、とくに限定されないが、10以下が好ましく、とくに7以下が好ましい。nが大きすぎると溶融粘度が高くなりすぎ、樹脂層の成形性が低下する場合がある。
【0064】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(II)で表わされるナフトール型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(II)で表わされるナフトール型シアネート樹脂は、α−ナフトールあるいはβ−ナフトールなどのナフトール類とp−キシリレングリコール、α,α'−ジメトキシ−p−キシレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンなどとの反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものである。一般式(II)のnは1以上10以下であることが好ましい。nが10以下の場合、樹脂粘度が高くならず、基材への含浸性が良好で、積層板としての性能を低下させない傾向がある。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる傾向がある。
【0065】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0066】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(III)で表わされるジシクロペンタジエン型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(III)で表わされジシクロペンタジエン型シアネート樹脂は、下記一般式(III)のnが0以上8以下であることが好ましい。nが8以下の場合、樹脂粘度が高くならず、基材への含浸性が良好で、積層板としての性能の低下を防止できる。また、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂を用いることで、低吸湿性、および耐薬品に優れる。
【0067】
【化3】

(nは0以上8以下の整数を示す。)
【0068】
シアネート樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、とくに限定されないが、Mw500以上が好ましく、とくにMw600以上が好ましい。Mwが小さすぎると樹脂層を作製した場合にタック性が生じ、樹脂層同士が接触したとき互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、Mwの上限は、とくに限定されないが、Mw4,500以下が好ましく、とくにMw3,000以下が好ましい。また、Mwが大きすぎると反応が速くなりすぎ、回路基板とした場合に、成形不良が生じたり、層間ピール強度が低下したりする場合がある。
シアネート樹脂などのMwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0069】
また、とくに限定されないが、シアネート樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、異なるMwを有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0070】
樹脂組成物中に含まれる熱硬化性樹脂の含有量は、その目的に応じて適宜調整されれば良くとくに限定されないが、樹脂組成物全体に基づいて5重量%以上90重量%以下が好ましく、さらに10重量%以上80重量%以下が好ましく、とくに20重量%以上50重量%以下が好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が小さすぎるとプリプレグのハンドリング性が低下したり、樹脂層を形成するのが困難となる場合があり、含有量が大きすぎると樹脂層の強度や難燃性が低下したり、樹脂層の線膨張係数が増加し積層板の反りの低減効果が低下する場合がある。
【0071】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)を用いる以外に、エポキシ樹脂(実質的にハロゲン原子を含まない)を用いてもよいし、併用してもよい。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂 ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
これらエポキシ樹脂の中でもとくにアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性をさらに向上させることができる。
【0072】
アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(IV)で示すことができる。
【0073】
【化4】

【0074】
上記一般式(IV)で示されるビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが小さすぎると、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が結晶化しやすくなり、汎用溶媒に対する溶解性が比較的低下するため、取り扱いが困難となる場合がある。nの上限は、とくに限定されないが、10以下が好ましく、とくに5以下が好ましい。nが大きすぎると樹脂の流動性が低下し、成形不良などの原因となる場合がある。
【0075】
上記以外のエポキシ樹脂としては縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。
【0076】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、およびテトラフェン、その他の縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂である。縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、複数の芳香環が規則的に配列することができるため低熱膨張性に優れる。また、ガラス転移温度も高いため耐熱性に優れる。さらに、繰返し構造の分子量が大きいため従来のノボラック型エポキシに比べ難燃性に優れ、シアネート樹脂と組合せることでシアネート樹脂の弱点の脆弱性を改善することができる。したがって、シアネート樹脂と併用して用いることで、さらにガラス転移温度が高くなるため鉛フリー対応の実装信頼性に優れる。
【0077】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、フェノール類化合物とホルムアルデヒド類化合物、および縮合環芳香族炭化水素化合物から合成された、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したものである。
【0078】
フェノール類化合物は、とくに限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール類、2,3,5トリメチルフェノールなどのトリメチルフェノール類、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノールなどのエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどのナフタレンジオール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フルオログルシンなどの多価フェノール類、アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノンなどのアルキル多価フェノール類が挙げられる。これらのうち、コスト面および分解反応に与える効果から、フェノールが好ましい。
【0079】
アルデヒド類化合物は、とくに限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシアルデヒドパラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0080】
縮合環芳香族炭化水素化合物は、とくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン、ブトキシナフタレンなどのナフタレン誘導体、メトキシアントラセンなどのアントラセン誘導体、メトキシフェナントレンなどのフェナントレン誘導体、その他テトラセン誘導体、クリセン誘導体、ピレン誘導体、誘導体トリフェニレン、およびテトラフェン誘導体などが挙げられる。
【0081】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、とくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン変性オルトクレゾールノボラックエポキシ、ブトキシナフタレン変性メタ(パラ)クレゾールノボラックエポキシ、およびメトキシナフタレン変性ノボラックエポキシなどが挙げられる。これらの中でも、下記式(V)で表される縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0082】
【化5】

【0083】
(式中、Arは縮合環芳香族炭化水素基であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基で、n、p、およびqは1以上の整数であり、またp、qの値は、繰り返し単位毎に同一でも、異なっていてもよい。)
【0084】
【化6】

【0085】
(式(V)中のArは、式(VI)中の(Ar1)〜(Ar4)で表される構造であり、式(VI)中のRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基である。)
【0086】
さらに上記以外のエポキシ樹脂としてはナフトール型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。ナフトール型エポキシ樹脂としては、例えば下記一般式(VII)で示すことができる。
【0087】
【化7】

(nは平均1以上6以下の数を示し、Rはグリシジル基または炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。)
【0088】
エポキシ樹脂の含有量の下限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において1重量%以上が好ましく、とくに2重量%以上が好ましい。含有量が小さすぎるとシアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したりする場合がある。エポキシ樹脂の含有量の上限は、とくに限定されないが、55重量%以下が好ましく、とくに40重量%以下が好ましい。含有量が大きすぎると耐熱性が低下する場合がある。
【0089】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、とくに限定されないが、Mw500以上が好ましく、とくにMw800以上が好ましい。Mwが小さすぎると樹脂層にタック性が生じる場合がある。Mwの上限は、とくに限定されないが、Mw20,000以下が好ましく、とくにMw15,000以下が好ましい。Mwが大きすぎると樹脂層作製時、繊維基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られない場合がある。エポキシ樹脂のMwは、例えばGPCで測定することができる。
【0090】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)やエポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、とくにビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂)を用いる場合、さらにフェノール樹脂を用いることが好ましい。フェノール樹脂としては、例えばノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂などが挙げられる。フェノール樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。これらの中でも、とくにアリールアルキレン型フェノール樹脂が好ましい。これにより、さらに吸湿半田耐熱性を向上させることができる。
【0091】
アリールアルキレン型フェノール樹脂としては、例えばキシリレン型フェノール樹脂、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂などが挙げられる。ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂は、例えば、下記一般式(VIII)で示すことができる。
【0092】
【化8】

【0093】
上記一般式(VIII)で示されるビフェニルジメチレン型フェノール樹脂の繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが小さすぎると耐熱性が低下する場合がある。また、繰り返し単位nの上限は、とくに限定されないが、12以下が好ましく、とくに8以下が好ましい。また、nが大きすぎると他の樹脂との相溶性が低下し、作業性が低下する場合がある。
前述のシアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)やエポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、とくにビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂)とアリールアルキレン型フェノール樹脂との組合せにより、架橋密度をコントロールし、反応性を容易に制御できる。
【0094】
フェノール樹脂の含有量の下限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において1重量%以上が好ましく、とくに5重量%以上が好ましい。フェノール樹脂の含有量が小さすぎると耐熱性が低下する場合がある。また、フェノール樹脂の含有量の上限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において55重量%以下が好ましく、とくに40重量%以下が好ましい。フェノール樹脂の含有量が大きすぎると低熱膨張の特性が損なわれる場合がある。
【0095】
フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、とくに限定されないが、Mw400以上が好ましく、とくにMw500以上が好ましい。Mwが小さすぎると樹脂層にタック性が生じる場合が有る。また、フェノール樹脂のMwの上限は、とくに限定されないが、Mw18,000以下が好ましく、とくにMw15,000以下が好ましい。Mwが大きすぎると樹脂層の作製時、繊維基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られない場合がある。フェノール樹脂のMwは、例えばGPCで測定することができる。
【0096】
さらに、シアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)とフェノール樹脂(アリールアルキレン型フェノール樹脂、とくにビフェニルジメチレン型フェノール樹脂)とエポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、とくにビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂)との組合せを用いて基板(とくに回路基板)を作製した場合、とくに優れた寸法安定性を得ることができる。
【0097】
また、樹脂組成物は無機充填材を含むことが好ましい。これにより、積層板を薄型化しても、より一層優れた機械的強度を付与することができる。さらに、積層板の低熱膨張化をより一層向上させることができる。
【0098】
無機充填材としては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。
【0099】
無機充填材として、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、とくにシリカが好ましく、溶融シリカ(とくに球状溶融シリカ)が低熱膨張性に優れる点で好ましい。溶融シリカの形状には破砕状および球状がある。繊維基材への含浸性を確保するためには、樹脂組成物の溶融粘度を下げるため球状シリカを使うなど、その目的にあわせた使用方法を採用することができる。
【0100】
無機充填材の平均粒子径の下限は、とくに限定されないが、0.01μm以上が好ましく、とくに0.1μm以上が好ましい。無機充填材の粒径が小さすぎるとワニスの粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、平均粒子径の上限は、とくに限定されないが、5.0μm以下が好ましく、とくに2.0μm以下が好ましい。無機充填材の粒径が大きすぎると、ワニス中で無機充填剤の沈降などの現象が起こり、均一な樹脂層を得ることが困難になる場合がある。また、内層基板の導体回路がL/Sが20μm/20μmを下回る際には、配線間の絶縁性に影響する場合がある。
無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とする。
【0101】
また無機充填材は、とくに限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
【0102】
さらに無機充填材は、平均粒子径5.0μm以下の球状シリカ(とくに球状溶融シリカ)が好ましく、とくに平均粒子径0.01μm以上2.0μm以下の球状溶融シリカが好ましい。これにより、無機充填剤の充填性をさらに向上させることができる。
【0103】
無機充填材の含有量は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において20重量%以上80重量%以下が好ましく、とくに30重量%以上75重量%以下が好ましい。含有量が範囲内であると、とくに低熱膨張、低吸水とすることができる。
【0104】
また、本実施の形態に用いる樹脂組成物は、ゴム成分も配合することができ、例えば、ゴム粒子を用いることができる。ゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。
【0105】
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成社製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン社製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR社製)などが挙げられる。
【0106】
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR社製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン社製)などが挙げられる。
【0107】
シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であればとくに限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、および二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子などが挙げられる。シリコーンゴム微粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学社製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング社製)などの市販品を用いることができる。
【0108】
ゴム粒子の含有量は、とくに限定されないが、上記の無機充填材を合わせて、樹脂組成物全体に基づいて20重量%以上80重量%以下が好ましく、とくに30重量%以上75重量%以下が好ましい。含有量が範囲内であると、とくに低吸水とすることができる。
【0109】
このほか、必要に応じて、樹脂組成物にはカップリング剤、硬化促進剤、硬化剤、熱可塑性樹脂、有機充填材などの添加剤を適宜配合することができる。本発明で用いられる樹脂組成物は、上記成分を有機溶剤などにより溶解および/または分散させた液状形態で好適に用いることができる。
【0110】
カップリング剤の使用により、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の濡れ性が向上し、繊維基材に対して樹脂組成物を均一に定着させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、耐熱性、とくに吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
カップリング剤としては、カップリング剤として通常用いられるものであれば使用できるが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、無期充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることができる。
【0111】
カップリング剤の添加量の下限は、無機充填材の比表面積に依存するのでとくに限定されないが、無機充填材100重量部に対して0.05重量部以上、とくに0.1重量部以上が好ましい。カップリング剤の含有量が少なすぎると無機充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合がある。また、添加量の上限は、とくに限定されないが、3重量部以下が好ましく、とくに0.1以上2重量部以下が好ましい。含有量が多すぎると反応に影響を与え、曲げ強度などが低下する場合がある。
【0112】
硬化促進剤としては公知のものを用いることができる。例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)などの有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどのフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸など、オニウム塩化合物など、またはこの混合物が挙げられる。硬化促進剤として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いてもよいし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用してもよい。
オニウム塩化合物は、とくに限定されないが、例えば、下記一般式(IX)で表されるオニウム塩化合物を用いることができる。
【0113】
【化9】

【0114】
(式中、Pはリン原子、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Aは分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す。)
【0115】
硬化促進剤の含有量の下限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体の0.01重量%以上が好ましく、とくに0.1重量%以上が好ましい。含有量が少なすぎると硬化を促進する効果が現れない場合がある。含有量上限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体の5重量%以下が好ましく、とくに2重量%以下が好ましい。含有量が多すぎると樹脂層の保存性が低下する場合がある。
【0116】
樹脂組成物では、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマ−、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエンなどのジエン系エラストマーを併用してもよい。
【0117】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0118】
これらの中でも、フェノキシ樹脂には、ビフェニル骨格およびビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのが好ましい。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性により、フェノキシ樹脂のガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格の存在により、フェノキシ樹脂と金属との密着性を向上させることができる。その結果、積層板の耐熱性の向上を図ることができるとともに、回路基板を製造する際に、積層板に対する配線層の密着性を向上させることができる。また、フェノキシ樹脂には、ビスフェノールA骨格およびビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。これにより、回路基板の製造時に、配線層の積層板への密着性をさらに向上させることができる。
また、下記一般式(X)で表されるビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。
【0119】
【化10】

【0120】
(式中、R1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素から選ばれる基であり、R2は、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素から選ばれる基であり、R3 は、水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、mは0以上5以下の整数である。)
【0121】
ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂は、嵩高い構造を持っているため、溶剤溶解性や、配合する熱硬化性樹脂成分との相溶性に優れる。また、低粗度で均一な粗面を形成することができるため微細配線形成性に優れる。
【0122】
ビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を触媒で高分子量化させる方法などの公知の方法で合成することができる。
【0123】
ビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂は、一般式(X)のビスフェノールアセトフェノン構造以外の構造が含まれていても良く、その構造は特に限定されないが、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の構造などが挙げられる。中でも、ビフェニル型の構造を含むものが、ガラス転移温度が高く好ましい。
【0124】
ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂中の一般式(X)のビスフェノールアセトフェノン構造の含有量はとくに限定されないが、5モル%以上95モル%以下が好ましく、より好ましくは10モル%以上85モル%以下であり、さらに好ましくは15モル%以上75モル%以下である。含有量が下限値に満たないと、耐熱性、耐湿信頼性を向上させる効果が得られない可能性がある。また、含有量が上限値を超えると、溶剤溶解性が悪くなるため、好ましくない。
【0125】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、とくに限定されないが、Mw5,000以上100,000以下が好ましく、10,000以上70,000以下がさらに好ましく20,000以上50,000以下が最も好ましい。Mwが上限値を超えると、他の樹脂との相溶性や溶剤への溶解性が極めて悪くなるため好ましくなく、下限値未満であると、製膜性が悪くなり、回路基板の製造に用いる場合に、不具合を生じるため好ましくない。
【0126】
フェノキシ樹脂の含有量は、とくに限定されないが、充填材を除く樹脂組成物の5重量%以上40重量%以下が好ましく、とくに10重量%以上20重量%以下が好ましい。含有量が上記下限値未満であると絶縁樹脂層の機械強度が低下したり、導体回路とのメッキ密着性が低下したりする場合があり、上記上限値を超えると絶縁樹脂層の熱膨張率が高くなり、耐熱性が低下したりする場合がある。
【0127】
さらに、樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤などの上記成分以外の添加物を添加してもよい。
【0128】
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青などの無機顔料、フタロシアニンなどの多環顔料、アゾ顔料などが挙げられる。
【0129】
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン 、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン 、アントラキノン、インジゴイド 、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン 、フタロシアニン、アゾメチンなどが挙げられる。
【0130】
(無機充填材を含み繊維機材層を含まない樹脂層)
つぎに、積層板100を構成する無機充填材を含み繊維機材層を含まない樹脂層202について、上述の第一プリプレグ201および第二プリプレグ203と異なる点を中心に説明する。
樹脂層202を構成する樹脂材料および添加剤は、とくに限定されないが、本実施形態における第一プリプレグ201および第二プリプレグ203に使われる樹脂組成物を適宜使用してもよいし、別の材料を使用してもよい。
【0131】
樹脂層202を構成する無機充填材は、とくに限定されないが、本実施形態における第一プリプレグ201および第二プリプレグ203に使われる無機充填材を適宜使用してもよいし、別の材料を使用してもよい。
【0132】
無機充填材としては、とくにシリカが好ましく、溶融シリカ(とくに球状溶融シリカ)が低熱膨張性に優れる点で好ましい。溶融シリカの形状には破砕状および球状がある。繊維基材への含浸性を確保するためには、樹脂組成物の溶融粘度を下げるため球状シリカを使うなど、その目的にあわせた使用方法を採用することができる。
【0133】
さらに無機充填材は、平均粒子径5.0μm以下の球状シリカ(とくに球状溶融シリカ)が好ましく、とくに平均粒子径0.01μm以上2.0μm以下の球状溶融シリカが好ましい。これにより、無機充填剤の充填性をさらに向上させることができる。
平均粒子径は、例えばレーザー回折散乱法により測定することができる。無機充填材を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。具体的には、無機充填材の平均粒子径はD50で規定される。
【0134】
樹脂層202における無機充填材の含有量の下限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において40重量%以上が好ましく、とくに50重量%以上が好ましい。
含有量が小さすぎると積層板の熱膨張係数が大きくなる場合がある。また、含有量の上限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において80重量%以下が好ましく、とくに75重量%以下が好ましい。含有量が多すぎると樹脂ワニスを基材上に塗工して作製したBステージ状態の樹脂層において、樹脂の粉落ちによってハンドリング性が低下する場合がある。
樹脂層202は繊維基材層を含まないため、積層板の機械的強度の観点から繊維基材層を含む第一プリプレグ201および第二プリプレグ203に比べて、無機充填材の含有量を多くすることができる。
【0135】
樹脂層202の製造方法は、とくに限定されないが、例えば、無機充填材を配合させた樹脂組成物を溶剤などに溶解・分散させて樹脂ワニスを調製し、各種コーター装置を用いて樹脂ワニスを基材上に塗工・乾燥する方法や、スプレー装置を用いて樹脂ワニスを基材上に噴霧塗工・乾燥する方法などが挙げられる。これらの中でも、コンマコーター、ダイコーターなどの各種コーター装置を用いて、樹脂ワニスを基材上に塗工した後、これを乾燥する方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な樹脂層の厚みを有する樹脂層を効率よく製造することができる。
【0136】
積層板100を構成する樹脂層の組み合わせとしては、例えば、シアネート樹脂、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂を含む樹脂組成物をガラスクロスに含浸して得られる第一プリプレグ201と、シアネート樹脂、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂を含む樹脂組成物にシリカを配合して得られる樹脂層202と、シアネート樹脂、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂を含む樹脂組成物をガラスクロスに含浸して得られる第二プリプレグ203とすることができる。
上記の第一プリプレグ、樹脂層、第二プリプレグをこの順に積層して成形すると、膨張応力を積層板100の中心にさらに効率的に移動でき、積層板100の単体反りをとくに低減することができる。
【0137】
(金属箔付き積層板)
つづいて、本実施形態における金属箔付き積層板200について説明する。
本実施形態における積層板100は、図3に示すような、少なくとも一方の面110に金属箔210が形成された、金属箔付き積層板200としてもよい。
金属箔210の厚みは、好ましくは1μm以上18μm以下である。さらに好ましくは2μm以上12μm以下である。金属箔210の厚みが上記範囲内であると、微細パターンが形成可能であり、目ずれ度を制御することで反りをより低減できる。
【0138】
金属箔210を構成する金属としては、例えば銅および銅系合金、アルミおよびアルミ系合金、銀および銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金、鉄および鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバーまたはスーパーインバーなどのFe−Ni系の合金、WまたはMoなどが挙げられる。また、キャリア付電解銅箔なども使用することができる。
【0139】
また、金属箔210の代わりに、本実施形態における積層板100の少なくとも一方の面110にフィルムを積層してもよい。フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、フッ素系樹脂などを挙げることができる。
【0140】
金属箔付き積層板200の製造方法としては、例えば以下の通りである。積層した第一プリプレグ201および第二プリプレグ203の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合したり、あるいはそのまま第一プリプレグ201および第二プリプレグ203の外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。つぎに、樹脂層と金属箔などとを重ねたものを真空プレス機で加熱、加圧するかあるいは乾燥機で加熱することで金属箔付き積層板200を得ることができる。
【0141】
(ビルドアップ層付き積層板)
つづいて、本実施形態におけるビルドアップ層付き積層板300について説明する。
積層板100は、図4に示すように、当該積層板の少なくとも一方の面110の上部に、第三繊維基材層301と樹脂層を備えるビルドアップ層303がさらに形成されていてもよい。ここで、第三繊維基材層301は含まなくても構わないが、第三繊維基材層301を含むとビルドアップ層付き積層板300の反りの防止効果が高まる。
また、このとき、ビルドアップ層付き積層板300の反りの防止効果をより効果的に得るためには、図5に示すように、積層方向において、一方の面110と第三繊維基材層301の中心線A3との距離をD3とし、ビルドアップ層の表面310と第三繊維基材層301の中心線A3との距離をD4としたとき、D3>D4の条件を満たすようにビルドアップ層303が積層されるのが好ましい。
ビルドアップ層303の積層方法としては、とくに限定されないが、積層板100の積層方法と同様の方法であってもよいし、別の方法であってもよい。
ビルドアップ層303に使用される材料は、とくに限定されないが、積層板100に使われる材料を適宜使用してもよいし、別の材料を使用してもよい。
また、ビルドアップ層303の製造方法は、とくに限定されないが、本実施形態における第一プリプレグ201、樹脂層または第二プリプレグ203と同様の製造方法であってもよいし、別の製造方法であってもよい。
【0142】
(回路基板)
つづいて、本実施形態における回路基板400について説明する。
積層板100は、図6に示すような回路基板400に用いることができる。回路基板400の製造方法としては、例えば、以下のような方法がある。
上記の方法で形成した金属箔付き積層板200に層間接続用のスルーホール405を形成し、サブトラクティブ工法、セミアディティブ工法などにより配線層401を作製する。その後、任意のビルドアップ層303を積層して、アディティブ工法により層間接続および回路形成する工程を繰り返し、回路基板400を製造する。ここで、一部あるいは全てのビルドアップ層は繊維基材層を含んでも構わないし、含まなくても構わない。
【0143】
(ソルダーレジスト層付き回路基板)
つづいて、本実施形態におけるソルダーレジスト層付き回路基板500について説明する。
回路基板400は、図7に示すように、当該回路基板の少なくとも一方の面110(ビルドアップ層が形成される場合はビルドアップ層の表面310)に、第四繊維基材層501と樹脂層を備えるソルダーレジスト層503がさらに形成されていてもよい。ここで、第四繊維基材層501は含まなくても構わないが、第四繊維基材層501を含むとソルダーレジスト層付き回路基板500の反りの防止効果が高まる。
また、このとき、ソルダーレジスト層付き回路基板500の反りの防止効果をより効果的に得るためには、図8に示すように、積層方向において、一方の面110(ビルドアップ層が形成される場合はビルドアップ層の表面310)と第四繊維基材層501の中心線A4との距離をD5とし、ソルダーレジスト層の表面510と第四繊維基材層501の中心線A4との距離をD6としたとき、D5>D6の条件を満たすようにソルダーレジスト層503が積層されるのが好ましい。
ソルダーレジスト層503の積層方法としては、とくに限定されないが、本実施形態における積層板100またはビルドアップ層303の積層方法と同様の方法であってもよいし、別の方法であってもよい。
ソルダーレジスト層503に使用される材料は、とくに限定されないが、本実施形態における積層板100またはビルドアップ層303に使われる材料を適宜使用してもよいし、別の材料を使用してもよい。
また、ソルダーレジスト層503の作製方法は、とくに限定されないが、本実施形態における第一プリプレグ201、樹脂層202、第二プリプレグ203、またはビルドアップ層303と同様の作製方法であってもよいし、別の作製方法であってもよい。
【0144】
さらに、本実施形態における回路基板500に、半導体素子601を搭載することにより、図9に示すような半導体パッケージ600を製造することができる。本実施形態における半導体パッケージ600は、とくに限定されないが、例えば、回路加工された金属箔付き積層板100、ビルドアップ層303、ソルダーレジスト層503、および半導体素子601を有するものである。
半導体素子601の製造方法としては、とくに限定されないが、例えば、以下のような方法がある。半導体素子601を、ソルダーレジスト層503を有する回路加工された積層板100の上部に搭載する。この際、半導体素子601と配線層401とをビア孔403においてバンプ603にて接合する。その後、アンダーフィル605によって、アンダーフィリングする。このようにして、半導体パッケージを得ることができる。
【0145】
以上に説明したように、本実施形態によれば、反りの低減された積層板100が提供される。とくに、厚みが薄い積層板とした場合でも、反りの発生を効果的に抑制することができる。そして、積層板100を用いた回路基板は、反り、寸法安定性などの機械的特性、成形性に優れたものである。したがって、積層板100は、高密度化、高多層化が要求されるプリント配線板など、信頼性が要求される用途に好適に用いることができる。
積層板100は、上述の回路加工およびそれ以後の各プロセスにおいても反りの発生が低減される。したがって、本実施形態における半導体パッケージ600は、反りおよびクラックが発生しにくく、薄型化が可能である。
【0146】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば、図10(a)のように第一プリプレグ201および第二プリプレグ203の外側に、それぞれ、繊維基材層を含有する樹脂層204をさらに積層して得られる図10(b)のような積層板700でもよい。
【実施例】
【0147】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例では、部はとくに特定しない限り重量部を表す。また、層の厚みは平均膜厚で表わされている。
【0148】
実施例および比較例では、以下の原料を用いた。
エポキシ樹脂A:ビフェニルアラルキル型ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)
エポキシ樹脂B:ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−7320)
エポキシ樹脂C:ナフタレンジオールジグリシジルエーテル(DIC社製、エピクロンHP−4032D)
【0149】
シアネート樹脂A:ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)
シアネート樹脂B:ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットBA230)
シアネート樹脂C:一般式(II)で表わされるp−キシレン変性ナフトールアラルキル型シアネート樹脂(ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(東都化成社製、「SN−485」)と塩化シアンの反応物)
【0150】
フェノール樹脂A:ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(日本化薬社製、GPH−103)
ビスマレイミド樹脂A(ケイアイ化成工業社製、BMI−70)
【0151】
フェノキシ樹脂A:ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂
(合成例)
容量1Lの反応容器に、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「YX−4000」、エポキシ当量185g/eq)100g、ビスフェノールアセトフェノン80g、およびシクロヘキサノン70gを入れ撹拌して溶解させた。つぎに、50wt%テトラメチルアンモニウムクロライド溶液0.4gを滴下し、窒素雰囲気下、180℃で5時間反応させた。反応終了後、析出物をろ過し、真空乾燥機にて、95℃で8時間真空乾燥し、上記一般式(X)で表される重量平均分子量38,000、ガラス転移温度130℃のビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂を得た。
【0152】
充填材A:球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)
充填材B:球状溶融シリカ(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径75nm)
充填材C:水酸化アルミニウム(昭和電工社製、HP−360)
充填材D:シリコーン粒子(信越化学工業社製、KMP600、平均粒径5μm)
【0153】
カップリング剤A:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)
カップリング剤B:エポキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403E)
硬化触媒A:上記一般式(IX)に該当するオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、C05−MB)
硬化触媒B:ジシアンジアミド
着色剤A:フタロシアニンブルー/ベンゾイミダゾロン/メチルエチルケトン(=1/1/8)混合物:(山陽色素社製)
【0154】
(実施例)
以下の手順を用いて、本発明における積層板を作製した。
まず、プリプレグの製造について説明する。使用した樹脂ワニスの組成を表1に示し、得られたプリプレグ1〜15が有する各層の厚みを表2に示す。なお、表2〜4に記載のP1〜P15とはプリプレグ1〜プリプレグ15を意味し、表2に記載のユニチカとはユニチカグラスファイバー株式会社、日東紡とは日東紡株式会社を意味する。なお、プリプレグ1〜8は非対称プリプレグ、プリプレグ9〜15は対称プリプレグとなる。
【0155】
(プリプレグ1)
1.樹脂組成物のワニスAの調製
エポキシ樹脂Aとしてビフェニルアラルキル型ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)11.0重量部、フェノール樹脂Aとしてビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(日本化薬社製、GPH−103)8.8重量部、シアネート樹脂Aとしてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)16.0重量部、シアネート樹脂BとしてビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットBA230)4.0重量部、をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Aとして球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)60.0重量部とカップリング剤Aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)0.2重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニスA(樹脂ワニスA)を調製した。
【0156】
2.キャリア材料の製造
樹脂ワニスAをPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム社製ピューレックスフィルム、厚さ36μm)上に、ダイコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚さが13μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で5分間乾燥して、第一樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シートA(キャリア材料A)を得た。
【0157】
また、上記樹脂ワニスAをPETフィルム上に同様に塗工し、乾燥後の樹脂層の厚さが7μmになるように、160℃の乾燥機で5分間乾燥して、第二樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シートB(キャリア材料B)を得た。
【0158】
3.プリプレグの製造
第一樹脂層用のキャリア材料A、および第二樹脂層用のキャリア材料Bをガラス繊維基材(厚さ15μm、ユニチカグラスファイバー社製Eガラス織布、E02Z 04 53SK、IPC規格1015、線膨張係数:5.5ppm/℃)の両面に樹脂層が繊維基材と向き合うように配し、図2に示す真空ラミネート装置および熱風乾燥装置により樹脂組成物を含浸させ、PETフィルムが積層されたプリプレグを得た。
【0159】
具体的には、ガラス繊維基材の両面にキャリア材料Aおよびキャリア材料Bがガラス繊維基材の幅方向の中心に位置するように、それぞれ重ね合わせ、常圧より9.999×10Pa(約750Torr)以上減圧した条件下で、80℃のラミネートロールを用いて接合した。
【0160】
ここで、ガラス繊維基材の幅方向寸法の内側領域においては、キャリア材料Aおよびキャリア材料Bの樹脂層をガラス繊維基材の両面側にそれぞれ接合するとともに、ガラス繊維基材の幅方向寸法の外側領域においては、キャリア材料Aおよびキャリア材料Bの樹脂層同士を接合した。
【0161】
つぎに、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理してプリプレグ1(P1)を得た。
このとき、第一樹脂層の厚み(C1)が9μm、ガラス繊維基材層の厚みが15μm、第二樹脂層の厚み(C2)が3μmで、総厚27μmであり、C2/C1が0.33であった。なお、樹脂層の厚みは、プリプレグの断面を切り出し、光学顕微鏡で観察することにより測定した。
【0162】
(プリプレグ2、4、5)
プリプレグ2、4、5は、第一樹脂層の厚み(C1)、第二樹脂層の厚み(C2)、および用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ1と同様にして製造した。
【0163】
(プリプレグ3)
1.樹脂組成物のワニスCの調製
エポキシ樹脂Bとしてナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−7320)12.0重量部、シアネート樹脂Aとしてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)12.0重量部、フェノキシ樹脂Aとして上記で作製したビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂5.6重量部、硬化触媒Aとして上記一般式(IX)に該当するオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、C05−MB)0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Aとして球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)65.0重量部、充填材Bとして球状溶融シリカ(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径75nm)5.0重量部、とカップリング剤Aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)0.2重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニスC(樹脂ワニスC)を調製した。
【0164】
2.プリプレグの製造
プリプレグ3は、上記で得られた樹脂ワニスCを用い、第一樹脂層の厚み(C1)、第二樹脂層の厚み(C2)、および用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ1と同様にして製造した。
【0165】
(プリプレグ6)
プリプレグ6は、第一樹脂層の厚み(C1)、第二樹脂層の厚み(C2)を表2のように変え、用いたガラス繊維基材を厚さ28μm、日東紡株式会社製Tガラス織布、WTX1035−53−X133、IPC規格1035、線膨張係数:2.8ppm/℃のものに変えたこと以外は、プリプレグ1と同様にして製造した。
【0166】
(プリプレグ7)
1.樹脂組成物のワニスDの調製
エポキシ樹脂Aとしてビフェニルアラルキル型ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)8.0重量部、エポキシ樹脂Bとしてナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−7320)3.0重量部、ビスマレイミド樹脂Aとしてビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製、BMI−70)20.0重量部、硬化触媒Bとしてジシアンジアミド3.5重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Cとして水酸化アルミニウム(昭和電工社製、HP−360)65.0重量部とカップリング剤Bとしてエポキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403E)0.5重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニスD(樹脂ワニスD)を調製した。
【0167】
2.プリプレグの製造
プリプレグ7は、上記で得られた樹脂ワニスDを用い、第一樹脂層の厚み(C1)、第二樹脂層の厚み(C2)、および用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ1と同様にして製造した。
【0168】
(プリプレグ8)
1.樹脂組成物のワニスEの調製
エポキシ樹脂Aとしてビフェニルアラルキル型ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)15.0重量部、エポキシ樹脂Bとしてナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−7320)2.0重量部、エポキシ樹脂Cとしてナフタレンジオールジグリシジルエーテル(DIC社製、エピクロンHP−4032D)6.0重量部、シアネート樹脂Cとして一般式(II)で表わされるp−キシレン変性ナフトールアラルキル型シアネート樹脂(ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(東都化成社製、「SN−485」)と塩化シアンの反応物)16.0重量部、ビスマレイミド樹脂Aとしてビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製、BMI−70)6.5重量部、硬化触媒Aとして上記一般式(IX)に該当するオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、C05−MB)0.1重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Aとして球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)40.0重量部、充填材Bとして球状溶融シリカ(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径75nm)7.0重量部、充填材Dとしてシリコーン粒子(信越化学工業社製、KMP600、平均粒径5μm)7.0重量部とカップリング剤Bとしてエポキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403E)0.4重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニスE(樹脂ワニスE)を調製した。
【0169】
2.プリプレグの製造
プリプレグ8は、上記で得られた樹脂ワニスEを用い、第一樹脂層の厚み(C1)、第二樹脂層の厚み(C2)、および用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ1と同様にして製造した。
【0170】
(プリプレグ9)
上記で得られた樹脂ワニスAをガラス繊維基材(厚さ15μm、ユニチカグラスファイバー社製Eガラス織布、E02Z 04 53SK、IPC規格1015、線膨張係数:5.5ppm/℃)に含浸し、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグを得た。このとき、ガラス繊維基材層の厚みが15μmであり、当該ガラス繊維基材層の両面には同じ厚さ(6μm)の樹脂層が設けられ、総厚は27μmであった。
【0171】
(プリプレグ10、12)
プリプレグ10、12は、樹脂層の厚みおよび用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ9と同様にして製造した。
【0172】
(プリプレグ11)
プリプレグ11は、上記で得られた樹脂ワニスCを用い、樹脂層の厚みおよび用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ9と同様にして製造した。
【0173】
(プリプレグ13)
プリプレグ13は、樹脂層の厚みを表2のように変え、用いたガラス繊維基材を厚さ28μm、日東紡社製Tガラス織布、WTX1035−53−X133、IPC規格1035、線膨張係数:2.8ppm/℃のものに変えたこと以外は、プリプレグ9と同様にして製造した。
【0174】
(プリプレグ14)
プリプレグ14は、上記で得られた樹脂ワニスDを用い、樹脂層の厚みおよび用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ9と同様にして製造した。
【0175】
(プリプレグ15)
プリプレグ15は、上記で得られた樹脂ワニスEを用い、樹脂層の厚みおよび用いたガラス繊維基材を表2のように変えたこと以外は、プリプレグ9と同様にして製造した。
【0176】
(無機充填材を含み繊維基材を含まない樹脂層)
次に無機充填材を含み繊維基材を含まない樹脂層の製造について説明する。使用した樹脂ワニスの組成を表1に示し、得られた繊維基材を含まない第二樹脂層1〜3が有する各層の厚みを表2に示す。なお、表2〜4に記載のR1〜R3とは繊維基材を含まない樹脂層1〜3を意味する。
1.樹脂組成物のワニスBの調製
エポキシ樹脂Aとしてビフェニルアラルキル型ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)15.8重量部、シアネート樹脂Aとしてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)6.8重量部、フェノキシ樹脂Aとして上記で作製したビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂5.0重量部、硬化触媒Aとして上記一般式(IX)に該当するオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、C05−MB)0.1重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Aとして球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)72.0重量部とカップリング剤Aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)0.3重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニスB(樹脂ワニスB)を調製した。
【0177】
2.無機充填材を含み繊維基材を含まない樹脂層の製造
樹脂ワニスBをPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム社製ピューレックスフィルム、厚さ36μm)上に、ダイコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚さが20μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で5分間乾燥して、PETフィルム付き樹脂層1(R1)を得た。
繊維基材を含まない樹脂層2は、樹脂ワニスCに変えたこと以外は、繊維基材を含まない樹脂層1と同様にして製造した。
繊維基材を含まない樹脂層3は、乾燥後の樹脂層の厚さを50μmに変えたこと以外は、繊維基材を含まない樹脂層1と同様にして製造した。
【0178】
実施例1〜8および比較例1〜7では、上記プリプレグ1〜15(表中では、単にP1〜15と記載)および樹脂層1〜3(表中では、単にR1〜3と記載)を用いて、積層板を製造し、当該積層板を用いて、回路基板および半導体パッケージを製造した。
【0179】
(実施例1)
1.積層板の製造
プリプレグ1、樹脂層1、プリプレグ1の順で、プリプレグ1のそれぞれ両面と樹脂層1のPETフィルムを剥離し、プリプレグ1の第一樹脂層がそれぞれ第二樹脂層1側に接するように、合計3枚の樹脂層を積層し、得られた積層体の両面に、12μmの銅箔(三井金属鉱業社製3EC−VLP箔)を重ね合わせ、220℃、3MPaで2時間加熱加圧成形することにより、金属箔付き積層板を得た。得られた金属箔付き積層板のコア層(積層板からなる部分)の厚みは、0.074mmであった。なお、本実施例・比較例で使用したプリプレグや樹脂層は硬化前後で厚みがほとんど変化しなかった。そのため、コア層(積層板からなる部分)の厚みはプリプレグや樹脂層の厚みの合計となっている。また、硬化後のプリプレグの樹脂層の厚みは、コア層の断面を切り出し、光学顕微鏡で観察することにより測定した。
【0180】
2.ビルドアップ層の製造
シアネート樹脂Aとしてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)25重量部、エポキシ樹脂Aとしてビフェニルアラルキル型ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)25重量部、フェノキシ樹脂Aとして上記で作製したビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂10重量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物(四国化成工業社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)0.4重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに充填材Aとして球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)を39.4重量部とカップリング剤Aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)0.2重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニスF(樹脂ワニスF)を調整した。
【0181】
樹脂ワニスFをPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム社製ピューレックスフィルム、厚さ36μm)上に、ダイコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚さが22.0μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で5分間乾燥して、第一樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シートC(キャリア材料C)を得た。
【0182】
また、樹脂ワニスFをPETフィルム上に同様に塗工し、乾燥後の樹脂層の厚さが11.0μmになるように、160℃の乾燥機で5分間乾燥して、第二樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シートD(キャリア材料D)を得た。
【0183】
第一樹脂層用のキャリア材料C、および第二樹脂層用のキャリア材料Dをガラス繊維基材(厚さ15μm、ユニチカグラスファイバー社製Eガラス織布、E02Z 04 53SK、IPC規格1015、線膨張係数:5.5ppm/℃)の両面に樹脂層が繊維基材と向き合うように配し、図2に示す真空ラミネート装置および熱風乾燥装置により樹脂組成物を含浸させ、PETフィルムが積層されたビルドアップ層Aを得た。
【0184】
具体的には、ガラス繊維基材の両面にキャリア材料Cおよびキャリア材料Dがガラス繊維基材の幅方向の中心に位置するように、それぞれ重ね合わせ、常圧より9.999×10Pa(約750Torr)以上減圧した条件下で、80℃のラミネートロールを用いて接合した。
【0185】
ここで、ガラス繊維基材の幅方向寸法の内側領域においては、キャリア材料Cおよびキャリア材料Dの樹脂層をガラス繊維基材の両面側にそれぞれ接合するとともに、ガラス繊維基材の幅方向寸法の外側領域においては、キャリア材料Cおよびキャリア材料Dの樹脂層同士を接合した。
【0186】
つぎに、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理してビルドアップ層Aを得た。
【0187】
このとき、第一樹脂層の厚み(C1)が18μm、ガラス繊維基材層の厚みが15μm、第二樹脂層の厚み(C2)が7μmで、総厚40μmであり、C2/C1が0.39であった。
【0188】
3.ソルダーレジスト層の製造
シアネート樹脂Aとしてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)25重量部、エポキシ樹脂Aとしてビフェニルアラルキル型ノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)25重量部、フェノキシ樹脂Aとして上記で作製したビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂10重量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物(四国化成工業社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)0.4重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに充填材Aとして球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)を39重量部、カップリング剤Aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)0.2重量部、着色剤Aとしてフタロシアニンブルー/ベンゾイミダゾロン/メチルエチルケトン(=1/1/8)混合物:(山陽色素社製)固形分で0.4重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニスG(樹脂ワニスG)を調整した。
【0189】
樹脂ワニスGをPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム社製ピューレックスフィルム、厚さ36μm)上に、ダイコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚さが14.0μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で5分間乾燥して、第一樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シートE(キャリア材料E)を得た。
【0190】
また、樹脂ワニスGをPETフィルム上に同様に塗工し、乾燥後の樹脂層の厚さが9.0μmになるように、160℃の乾燥機で5分間乾燥して、第二樹脂層用のPETフィルム付き樹脂シートF(キャリア材料F)を得た。
【0191】
第一樹脂層用のキャリア材料E、および第二樹脂層用のキャリア材料Fをガラス繊維基材(厚さ15μm、ユニチカグラスファイバー社製Eガラス織布、E02Z 04 53SK、IPC規格1015、線膨張係数:5.5ppm/℃)の両面に樹脂層が繊維基材と向き合うように配し、図2に示す真空ラミネート装置および熱風乾燥装置により樹脂組成物を含浸させ、PETフィルムが積層されたソルダーレジスト層Aを得た。
【0192】
具体的には、ガラス繊維基材の両面にキャリア材料Eおよびキャリア材料Fがガラス繊維基材の幅方向の中心に位置するように、それぞれ重ね合わせ、常圧より9.999×10Pa(約750Torr)以上減圧した条件下で、80℃のラミネートロールを用いて接合した。
【0193】
ここで、ガラス繊維基材の幅方向寸法の内側領域においては、キャリア材料Eおよびキャリア材料Fの樹脂層をガラス繊維基材の両面側にそれぞれ接合するとともに、ガラス繊維基材の幅方向寸法の外側領域においては、キャリア材料Eおよびキャリア材料Fの樹脂層同士を接合した。
【0194】
つぎに、上記接合したものを、120℃に設定した横搬送型の熱風乾燥装置内を2分間通すことによって、圧力を作用させることなく加熱処理してソルダーレジスト層Aを得た。
このとき、第一樹脂層の厚み(C1)が10μm、ガラス繊維基材層の厚みが15μm、第二樹脂層の厚み(C2)が5μmで、総厚30μmであり、C2/C1が0.5であった。
【0195】
4.回路基板の製造
上記で得られた金属箔付き積層板をコア基板として用い、その両面に回路パターン形成(残銅率70%、L/S=50/50μm)した内層回路基板の表裏に、上記で得られたビルドアップ層Aの第一樹脂層側のPETフィルムを剥離して第一樹脂層を重ね合わせた。これに真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度150℃、圧力1MPa、時間120秒で真空加熱加圧成形した。その後、熱風乾燥装置にて220℃で60分間加熱硬化をおこない、第二樹脂層側のPETフィルムを剥離した。次いで炭酸レーザーによりブラインドビアホール(非貫通孔)を形成した。つぎにビア内および、樹脂層表面を、60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に10分浸漬後、中和して粗化処理をおこなった。
【0196】
これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき皮膜を約0.5μm形成し、めっきレジストを形成し、無電解銅めっき皮膜を給電層としてパターン電気めっき銅10μm形成させ、L/S=50/50μmの微細回路加工を施した。つぎに、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチングで給電層を除去した。
【0197】
つぎに、上記で得られたソルダーレジスト層Aの第一樹脂層側のPETフィルムを剥離して第一樹脂層を重ね合わせ、これに真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度150℃、圧力1MPa、時間120秒で真空加熱加圧成形した。その後、熱風乾燥装置にて220℃で60分間加熱硬化をおこない、第二樹脂層側のPETフィルムを剥離した。次いで半導体素子搭載パッドなどが露出するように炭酸レーザーによりブラインドビアホール(非貫通孔)を形成した。
【0198】
最後に、ソルダーレジスト層Aから露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成し、得られた基板を50mm×50mmサイズに切断し、半導体パッケージ用の回路基板を得た。
【0199】
5.半導体パッケージの製造
半導体パッケージ用の回路基板上に、半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ20mm×20mm、厚み725μm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載した。つぎに、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−X4800B)を充填し、当該液状封止樹脂を硬化させることで半導体パッケージを得た。なお、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。また、前記半導体素子の半田バンプは、Sn/Ag/Cu組成の鉛フリー半田で形成されたものを用いた。
【0200】
(実施例2)
実施例2では、プリプレグ2と第二樹脂層2を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属箔付き積層板、回路基板、半導体パッケージを製造した。
【0201】
(実施例3〜7)
実施例3〜7では、それぞれプリプレグ3、5〜8を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属箔付き積層板、回路基板、半導体パッケージを製造した。
【0202】
(実施例8)
実施例8では、プリプレグ4、第二樹脂層3、第二樹脂層3、プリプレグ4の順で、プリプレグ4のそれぞれ両面と第二樹脂層3のPETフィルムを剥離し、プリプレグ4の第一樹脂層がプリプレグ4のそれぞれ接する第二樹脂層3側に接するように、合計4枚の樹脂層を積層した以外は、実施例1と同様にして、金属箔付き積層板、回路基板、半導パッケージを製造した。
【0203】
(比較例1〜7)
比較例1〜7では、それぞれプリプレグ9〜15の各2枚を用い、プリプレグ、プリプレグの順で、プリプレグのそれぞれ両面を剥離し、プリプレグの第一樹脂層がそれぞれ接するように、合計2枚の樹脂層を積層した以外は、実施例1と同様にして、金属箔付き積層板、回路基板、半導パッケージを製造した。
【0204】
各実施例および比較例により得られた金属箔付き積層板、回路基板、半導体パッケージについて、つぎの各評価を行った。各評価を、評価方法と共に以下に示す。得られた結果を表3、4に示す。また、実施例と比較例とでの基板反りの変化量((比較例での基板反り量)−(実施例での基板反り量))を表5に示す。
【0205】
(1)基板反り量
実施例および比較例で作製した金属箔付き積層板を中心付近の270mm×350mmサイズで切断し、エッチング液で金属箔を剥離後、30mm間隔で50mm×50mmサイズに切断し、合計12ピースの基板反り用サンプルを得た。得られたサンプルの基板反りは、温度可変レーザー三次元測定機(LS200−MT100MT50:ティーテック社製)を用いて、常温(25℃)における基板の反りの測定をおこなった。
【0206】
測定範囲は、48mm×48mmの範囲で、基板の一方の面にレーザーを当てて測定を行い、レーザーヘッドからの距離が、最遠点と最近点の差を各ピースの反り量とし、各ピースの反り量の平均を基板反り量とした。
【0207】
(2)導通試験
実施例および比較例で作製した半導体パッケージ3個をフライングチェッカー(1116X−YC ハイテスタ:日置電機社製)を用い、半田バンプを介して半導体素子と回路基板間を通る回路端子の導通の測定をおこない、初期値とした。つぎに、60℃、60%の吸湿条件下で40時間処理後、IRリフロー炉(ピーク温度:260℃)で3回処理し、同様に導通を測定して初期値より抵抗値が5%以上上昇したものを実装時の断線と判定した。ここで、初期値で断線が生じていた場合は、回路作製上の不具合と判断しカウントしていない。なお、半導体パッケージ1個につき測定箇所は61箇所、計183箇所を測定した。
各符号は、以下の通りである。
◎:断線箇所が無かった。
○:断線箇所が1〜10%であった。
△:断線箇所が11〜50%であった。
×:断線箇所が51%以上であった。
【0208】
(3)温度サイクル(TC)試験
実施例および比較例で作製した半導体パッケージ4個を60℃、60%の条件下で40時間処理後、IRリフロー炉(ピーク温度:260℃)で3回処理し、大気中で、−55℃(15分)、125℃(15分)で500サイクル処理した。つぎに、超音波映像装置(日立建機ファインテック社製、FS300)を用いて、半導体素子、半田バンプに異常がないか観察した。
◎:半導体素子、半田バンプともに異常なし。
○:半導体素子および/または半田バンプの一部にクラックが見られるが実用上問題なし。
△:半導体素子および/または半田バンプの一部にクラックが見られ実用上問題あり。
×:半導体素子、半田バンプともにクラックが見られ使用できない。
【0209】
本発明の積層板を用いた効果を確認するために、表5に、ガラス繊維基材層の厚み(種類)と枚数が等しい実施例と比較例を比べた基板反りの変化量を示した。ガラス繊維基材層の厚みと枚数が異なると基板反りの曲率半径が異なり結果として基板反り量が異なり、実施例と比較例を比較する際はこれらを統一しておく必要がある。
表5からわかるように、実施例1〜8は、対照した比較例よりも基板反り量が減少していた。
これにより、実施例1〜7の積層板は、比較例1〜7の積層板に比べて、基板反りが軽減されることが明らかとなった。
【0210】
また、表4からわかるように、比較例1〜7で得られた半導体パッケージは、コア層の厚みが小さくなるほど、導通試験での断線箇所が多くなり、また、温度サイクル試験での半導体素子や半田バンプにクラックの発生が増加し、接続信頼性に劣っていた。一方、表3からわかるように、実施例1〜8で得られた半導体パッケージは、導通試験での断線箇所がないまたは少なく、さらに、温度サイクル試験での半導体素子や半田バンプにクラックの発生がないまたは少なく、接続信頼性に優れていた。
【0211】
【表1】

【0212】
【表2】

【0213】
【表3】

【0214】
【表4】

【0215】
【表5】

【符号の説明】
【0216】
100 積層板
101 第一繊維基材層
102 第二繊維基材層
110 一方の面
201 第一プリプレグ
202 樹脂層
203 第二プリプレグ
204 樹脂層
205 第一絶縁層
206 第二絶縁層
207 第三絶縁層
5a キャリア材料
5b キャリア材料
11 繊維基材
21 プリプレグ
60 真空ラミネート装置
61 ラミネートロール
62 熱風乾燥装置
200 金属箔付き積層板
210 金属箔
300 ビルドアップ層付き積層板
301 第三繊維基材層
303 ビルドアップ層
310 ビルドアップ層の表面
400 回路基板
401 配線層
403 ビア孔
405 スルーホール
500 ソルダーレジスト層付き回路基板
501 第四繊維基材層
503 ソルダーレジスト層
510 ソルダーレジスト層の表面
600 半導体パッケージ
601 半導体素子
603 バンプ
605 アンダーフィル
700 積層板
1 塗工装置
1a 第1塗工装置
1b 第2塗工装置
2 塗工先端部
2a 第1塗工先端部
2b 第2塗工先端部
3 繊維基材
4 樹脂ワニス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に配線層が形成されるか、またはビルドアップ層が形成される積層板であって、
当該積層板の厚み方向において、
第一繊維基材層を含有する第一絶縁層と、
無機充填材を含有し、繊維基材層を含まない第二絶縁層と、
第二繊維基材層を含有する第三絶縁層と、
がこの順で積層され、
前記第一絶縁層および前記第三絶縁層はプリプレグの硬化体からなる、積層板。
【請求項2】
請求項1に記載の積層板において、
前記第一繊維基材層の中心線と前記第二繊維基材層の中心線との距離をD1とし、
当該積層板の厚さをD2としたとき、
D2/2<D1の条件を満たす、積層板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層板において、
当該積層板の厚み方向においては、
前記第一繊維基材層および前記第二繊維基材層が、
当該積層板の中心線に対して、対称に配置されている、積層板。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の積層板において、
前記無機充填材の含有量が40重量%以上80重量%以下である、積層板。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の積層板において、前記無機充填材がシリカである、積層板。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の積層板において、当該積層板の厚さが、0.6mm以下である、積層板。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の積層板において、当該積層板の面方向の線膨張係数が、1ppm/℃以上20ppm/℃以下である、積層板。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載の積層板において、当該積層板の少なくとも片面に金属箔が形成された、積層板。
【請求項9】
請求項8に記載の積層板において、前記金属箔が銅箔である、積層板。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか一項に記載の積層板において、
前記第一繊維基材層および前記第二繊維基材層の厚さが、5μm以上100μm以下である、積層板。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれか一項に記載の積層板において、
前記第一繊維基材層および前記第二繊維基材層を構成する繊維基材が、いずれもガラスクロスである、積層板。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれか一項に記載の積層板において、
当該積層板の前記上部に、第三繊維基材層を含む前記ビルドアップ層がさらに形成されており、
当該積層板の厚み方向において、
当該積層板の前記一方の面と、前記ビルドアップ層に含まれる前記第三繊維基材層の中心線との距離をD3とし、
前記ビルドアップ層の表面と前記第三繊維基材層の中心線との距離をD4としたとき、D3>D4を満たす、積層板。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれか一項に記載の積層板を含む、回路基板。
【請求項14】
請求項13に記載の回路基板において、
当該回路基板の上部に、第四繊維基材層を含むソルダーレジスト層がさらに形成されており、
当該回路基板の厚み方向において、
前記一方の面または前記ビルドアップ層の表面と、前記第四繊維基材層の中心線との距離をD5とし、
前記ソルダーレジスト層の表面と、前記第四繊維基材層の中心線との距離をD6としたとき、
D5>D6を満たす、回路基板。
【請求項15】
請求項13または14に記載の回路基板に半導体素子が搭載された、半導体パッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−6328(P2013−6328A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139808(P2011−139808)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】