説明

積層構造体及び包装容器

【課題】合成樹脂を主材料とする積層構造体を利用し、簡便な方法で検出可能な、模倣品に係る判別機能を有する積層構造体を提供する。
【解決手段】積層構造体において、偏光機能を有する基材層12を有し、この基材層の表面側に透明な配向材料により所定の平面形状に標識層13を積層し、この標識層を透明な合成樹脂製の被覆層14で被覆する構成とする。標識層13を文字、記号、模様から選ばれる形状に積層したものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層構造体、特に模倣品に係る判別機能が発揮されるように構成された積層構造体及びこの積層構造体を装着した包装容器に関する。

【背景技術】
【0002】
近年においては流通の国際化も相俟って、ブランド品の高度な偽物も出回り、その対策が重要となってきており、たとえばICタグの物品への装着による方法が有力な方法の一つである。
また、医薬品や化粧品の分野でも模倣品が多く出回り、中でも模倣品の薬による健康被害も報告されており、医薬品メーカーは模倣品を防止する対策として包装容器に蛍光印刷などによる隠し文字や図柄などを配設し(特許文献1参照)、商品の真偽を判別できるようにしている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−318290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、合成樹脂を主材料とする積層構造体を利用した、第三者には分り難いあるいは模倣し難い方法の隠し文字や図柄による、模倣品に係る判別機能を創出することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決する手段に係る本発明の主たる構成は、積層構造体において、偏光機能を有する基材層を有し、この基材層の表面側に透明な配向材料により所定の平面形状に標識層を積層し、この標識層を透明な合成樹脂製の被覆層で被覆する構成とする、と云うものである。
【0006】
上記構成の積層構造体によれば、標識層が積層された領域からは偏光機能を有する基材層と透明な配向材料から成り光学的な異方性を有する標識層の協働的な光学的作用により、周辺の標識層が積層されていない領域、すなわち被服層だけの領域部分とは異なる、基材層と標識層の組み合せに特有な状態に偏光した光が現出する。
そして、このように特有な状態に偏光した光は、光学機器を使用して検出する、あるいは偏光板を通して色合い等の変化により直接、眼で視認することができ、模倣品に係る判別機能を積層構造体そのもの、あるいはこの積層構造体を表面に積層した製品に付与することができる。
【0007】
ここで、上記構成では標識層を透明な配向材料で形成し、この標識層を透明な合成樹脂製の被覆層で被覆することにより、これら標識層と被覆層をいずれも無色透明あるいは同色透明とすることにより、外観上では標識層が積層されていることが判らないようにすることができる。
もちろん、被覆層をたとえば有色透明状として通常の場合も被覆層が見える構成とすることもできる。このような場合にも偏光板の向きにより明るさが大きく変化するので、判別機能が発揮される。
【0008】
また、偏光機能を有する基材層としては、合成樹脂製の偏光フィルムや液晶性の二色性色素等の偏光剤を含有する塗料等を使用することができる。
また、標識層は、透明な合成樹脂製延伸フィルムを積層する、透明な配向性インクを印刷する、透明な配向性塗料を塗布する等の方法で積層することができる。
【0009】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、標識層を文字、記号、図案、模様から選ばれる形状とする、と云うものである。
【0010】
標識層を、光学機器を使用して検出する方法も含めて考えれば、標識層の形状は特に限定されるものではないが、上記構成により、標識層を文字、記号、図柄、模様から選ばれる、予め決められた所定の形状とすることにより、標識層の存在を、偏光板を通して容易に直接、眼で視認することができる。
また、標識層をたとえば有色透明状として通常の場合も被覆層が見える構成とし、文字、記号、図柄、模様により加飾機能を発揮させることもできる。
【0011】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、積層構造体をラベルあるいはフィルムとすると云うものであり、模倣品に係る判別機能を有する積層構造体であるラベルを製品に貼付したり、フィルムにより製品を外装したりすることにより、容易に当該商品に模倣品に係る判別機能を付与することができる。
【0012】
本発明のさらに他の構成は、包装用容器に係るものであり、上記構成のラベル若しくはフィルムを外層した包装用容器、と云うものである。
【0013】
上記構成の包装用容器では、貼着したラベルあるいは外装したフィルムにより容易に当該商品の模倣品に係る判別機能を付与することができ、医薬品や化粧品を初め、包装用容器を使用した様々な商品について模倣品を効果的に防止することができる。

【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有する積層構造体にあっては、
偏光機能を有する基材層と透明な配向材料から成り光学的な異方性を有する標識層の協働的な光学的作用により、標識層を積層した領域から現出する基材層と標識層の組み合せに特有な状態に偏光した光を、光学機器を使用して検出する、あるいは偏光板を通して色合い等の変化により直接、眼で視認することができ、模倣品に係る判別機能を積層構造体そのもの、あるいはこの積層構造体を表面に積層した製品に付与することができる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の積層構造体の一例であるラベルを利用した例を示す説明図である。
【図2】(a)は図1のラベルの層構成を示す断面図であり、(b)は(a)中の基材層の層構成をさらに詳細にみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の積層構造体の一例であるラベルを利用した例を示す説明図であり、ラベル11を合成樹脂成形品であるブロー成形による壜体1の胴部2に貼付した例である。また図2は図1のラベル11の(壜体1の胴部2の周壁2wを含む)層構成を示す断面図である。
【0017】
本実施例のラベル11は、図2(a)に示されるように、偏光機能を有する基材層12の表面側に透明な配向材料により所定の平面形状に標識層13を積層し、さらに標識層13の上から透明な合成樹脂製の被膜層14を積層し、また基材層12の裏面側に接着層15を積層したものである。
ここで、本実施例では標識層13の平面形状は図1に見られるA、B、Cの文字を図案化した形状である。
【0018】
また、本実施例では、基材層12としては、図2(b)に示されるように、ポリビニールアルコール系フィルムをヨウ素や2色性色素で染色し一軸延伸したフィルム12pを透明なアクリル系樹脂等の合成樹脂製の保護層12cで上下を被覆した偏光フィルムを使用している。
また、標識層13は透明な配向材料であるセルロース系樹脂のフィルム(所謂、セロファンフィルム)をA、B、Cの文字を図案化した形状にして積層したものとし、この標識層13の上からアクリル樹脂系の透明な塗膜で被覆するようにしている。
また、接着層15はポリプロピレン樹脂系のヒートシール材を使用した。
勿論、接着層15としては、他にもエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としたホットメルトタイプのもの等様々な合成樹脂材料を使用することができる。
【0019】
このようなラベル11では、A、B、Cの文字を図案化した無色透明な標識層13は図2に見られるように、同様に無色透明な被覆層14中に埋め込まれた状態で位置しているので、通常、標識層13によるA、B、Cの文字は外から見ることができないが、
図1に見られるように偏光板PLを通して見ると、標識層13が積層した領域からは偏光機能を有する基材層12と透明な配向材料から成り光学的な異方性を有する標識層13の協働的な光学的作用により、被服層14だけの領域とは異なる、基材層12と標識層13の組み合せに特有な状態に偏光した光が現出するため、この標識層13が積層した領域は周辺の領域とは異なる色合いで現出し、たとえば図中、AとBの一部を実線で示したように、偏光板PLを重ねた領域では、標識層13による文字を明確に眼で視認することができ、容易に模倣品を判別することができる。
【0020】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果を説明したが、本発明の積層構造体は上記実施例に限定されるものではない。
たとえば、上記実施例では本発明の積層構造体の例としてラベルについて説明したが、本発明の積層構造体はフィルム状とすることもでき、製品を外装することにより製品に模倣品に係る判別機能を付与することができる。
また、積層構造体をホットスタンプフィルムとし、ホットスタンプ法により合成樹脂製容器等の成形品に模倣品に係る判別機能を付与することができる。
また、たとえば合成樹脂製容器の外表面に、成分として偏光剤を有する塗料を塗布して基材層とし、さらに標識層と被覆層を積層して合成樹脂製容器自体を積層構造体とすることもできる。
【0021】
また、標識層13と被覆層14を共に無色透明として通常は標識層13を視認できない構成とすることができるが、一方、たとえば標識層13を着色透明とし通常でも視認できる構成とし、この標識層13により加飾効果を発揮させることもでき、このような場合にも偏光板PLの向きにより明るさが大きく変化するので、判別機能が発揮される。
また、直接眼で判別する方法に限らず、判別用の光学器械を使用することもできるので、標識層13は目で視認が可能な文字、記号、図案、模様に限定されるものではなく、光学機器で判定可能な任意の形状、大きさとすることができる。

【産業上の利用可能性】
【0022】
以上説明したように本発明の積層構造体は、偏光を利用した第三者には分り難いあるいは模倣し難い方法の隠し文字や図柄による、模倣品に係る判別機能を有するものであり、模倣品対策として幅広い利用展開が期待される。

【符号の説明】
【0023】
1 ;壜体
2 ;胴部
2w;周壁
11;ラベル
12;基材層
12p;(染色し一軸延伸した)フィルム
12c;保護層
13;標識層
14;被服層
15;接着層
PL;偏光版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光機能を有する基材層(12)を有し、該基材層(12)の表面側に透明な配向材料により所定の平面形状に標識層(13)を積層し、該標識層(13)を透明な合成樹脂製の被覆層(14)で被覆する構成とした積層構造体。
【請求項2】
標識層(13)を文字、記号、図柄、模様から選ばれる形状に積層した請求項1記載の積層構造体。
【請求項3】
積層構造体をラベル(11)とした請求項1または2記載の積層構造体。
【請求項4】
積層構造体をフィルムとした請求項1または2記載の積層構造体。
【請求項5】
請求項3記載のラベル(11)若しくは請求項4記載のフィルムを外装した包装用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−110908(P2011−110908A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271770(P2009−271770)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】