説明

空圧昇降シリンダ

【課題】応答性がよく、操作性がよい空圧昇降シリンダを得る。
【解決手段】被搬送体1を昇降させるシリンダ2の作用室8に接続した給排流路10の圧力を、被搬送体1の重量に拮抗する圧力に調圧する圧力調整弁89を備え、昇降可能に支持された可動体4にシリンダ8を一体的に昇降可能に取り付ける。また、圧縮空気の導入により可動体4を上昇方向に付勢する付勢室54を設けると共に、圧縮空気の導入により可動体4を下降方向に押圧する制御室48を設け、付勢室54の付勢力を被搬送体1の重量及び制御室48の押圧力に釣り合わせ、かつ、作用室8と制御室48とを接続すると共に、可動体4の昇降に応じて圧力調整弁89のスプール78を移動し、圧力調整弁89は可動体4の下降により作用室8と制御室48とから圧縮空気を排出し、可動体4の上昇により作用室8と制御室48とへ圧縮空気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送体の荷重とシリンダへの供給圧力とを拮抗させて、被搬送体を吊下げる空圧昇降シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空圧昇降シリンダでは、図5に示すように、被搬送体150を昇降させるシリンダ152の作用室154への圧縮空気の給排により、シリンダ152の作用力と被搬送体150の重量とを釣り合わせている。その際、被搬送体150の昇降による作用室154の体積変化による圧力変化により、圧力調整弁156のスプール158を移動させて、圧力調整弁156を操作して、圧縮空気の給排を調整するようにしている。
【0003】
しかし、被搬送体150を昇降させる際に、シリンダ152のパッキン類の摺動抵抗に打ち勝ってピストン160を摺動させて、作用室154の体積を増減させなければ圧力調整弁156の開閉が行われず、昇降操作が重く、操作し難いという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1にある装置が提案されている。この装置では、図6に示すように、支点ピン200に支持した梃子部材202に被搬送体204を吊下げたシリンダ206を取り付ける。また、梃子部材202に被搬送体204の荷重と同方向の作用力を付与する復元力機構208を設けると共に、被搬送体204の荷重と復元力機構208の作用力とに対して釣り合う作用力を梃子部材202に付与する付勢力機構210を設ける。
【0005】
そして、シリンダ206の作用室212に給排流路214を介して圧力調整弁216を接続すると共に、作用室212を復元力機構208の制御室218に給排流路214を介して接続する。被搬送体204を吊下げた状態で、支点ピン200の廻りのトルクが釣合うように、付勢力機構210の付勢室205に供給される空気圧が減圧弁222で調整される。
【0006】
被搬送体204を上昇させる際には、被搬送体204、シリンダ206等を持ち上げる。これにより、梃子部材202が支点ピン200の廻りに揺動し、ロッド224を介してスプール225が移動されて、圧力源226と給排流路214とが接続され、作用室212に圧縮空気が供給される。よって、被搬送体204が上昇する。
【0007】
一方、被搬送体204を下降させると、梃子部材202が支点ピン200の廻りに揺動し、ロッド224を介してスプール225が移動される。よって、大気中と給排流路214とが連通されて、作用室212の圧力が低下し、被搬送体204が下降する。これにより、被搬送体204を軽く昇降させることができる。
【特許文献1】WO2002/030806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、こうした従来のものでは、梃子比(a/b倍)による拡大で、圧力調整弁216の不感帯(応差)が大きくなってしまい、応答性が害されるという問題があった。また、スプール225の移動量が大きい高速移動時には、付勢室205の体積変化が大きく、圧力変動が大きくなって、高速移動では操作力が重くなるという問題があった。
【0009】
空圧昇降シリンダは、被搬送体を昇降させる際に軽く動作できると共に、組立作業時に使用する際に図5に示すように被搬送体150をわずかな隙間を有するスペース162に挿入するために微妙な動作が要望される。即ち、被搬送体150をわずかな隙間のスペース162へ挿入する際、上下の不感帯(応差)が多いと作業が非常にやり難く、昇降を繰り返すことがあり、また、昇降の高速化も必要である。本発明の課題は、応答性がよく、操作性がよい空圧昇降シリンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
被搬送体を昇降させるシリンダの作用室に接続した給排流路の圧力を、前記被搬送体の重量に拮抗する圧力に調圧する圧力調整弁を備え、前記シリンダの作用力と前記被搬送体の重量とを釣り合わせる空圧昇降シリンダにおいて、
昇降可能に支持された可動体に前記シリンダを該可動体と一体的に昇降可能に取り付け、
圧縮空気の導入により前記可動体を上昇方向に付勢する付勢室を設けると共に、圧縮空気の導入により前記可動体を下降方向に押圧する制御室を設け、前記付勢室の付勢力を前記被搬送体の重量及び前記制御室の押圧力に釣り合わせ、
かつ、前記作用室と前記制御室とを接続すると共に、前記可動体の昇降に応じて前記圧力調整弁の弁体を移動し、前記圧力調整弁は前記可動体の下降により前記作用室と前記制御室とから圧縮空気を排出し、前記可動体の上昇により前記作用室と前記制御室とへ圧縮空気を供給することを特徴とする空圧昇降シリンダがそれである。
【0011】
その際、前記可動体に前記シリンダを一体的に形成してもよい。また、パイロット圧の導入により、圧力源と前記作用室とを可変絞り弁を介して連通する上昇弁と、パイロット圧の導入により、大気中と前記作用室とを可変絞り弁を介して連通する下降弁とを備えた構成としてもよい。更に、前記付勢室と前記制御室とは、前記可動体に設けたダイヤフラムにより仕切られている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空圧昇降シリンダは、昇降可能に支持された可動体にシリンダを可動体と一体的に昇降可能に取り付け、可動体を上昇方向に付勢する付勢室と可動体を下降方向に押圧する制御室とを設け、付勢室の付勢力を被搬送体の重量及び制御室の押圧力に釣り合わせて、可動体の昇降に応じて圧力調整弁の弁体を移動するので、応答性がよく、操作性がよいという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、1は被搬送体で、シリンダ2に吊下げ支持されている。シリンダ2は可動体4内に形成されており、シリンダ2は可動体4内に形成された摺動孔5を備え、摺動孔5にピストン6が摺動可能に挿入されている。
【0014】
摺動孔5とピストン6とにより形成された作用室8に圧縮空気が供給されると、ピストン6(受圧面積A)を上昇させる作用力が働くように構成されている。また、ピストン6と一体のロッド6aが可動体4の下端から下方に突出され、ロッド6aの下端に被搬送体1を吊り下げている。
【0015】
作用室8には、給排流路10の一端が接続されており、給排流路10の他端は、切換弁12に接続されている。切換弁12は、パイロット操作式のもので、給排流路10とパイロット流路14とを連通する昇降駆動位置12aと、給排流路10と制御流路16とを連通する釣合位置12bとを備えている。
【0016】
給排流路10には、圧力源20と連通した高圧流路22が接続されると共に、大気中に開放された低圧流路24が接続されている。高圧流路22には、上昇弁26と可変絞り弁28とが介装されている。上昇弁26は、上昇用パイロット流路27を介してパイロット圧が導入されたときに高圧流路22を連通する開位置26aと、パイロット圧の導入がなく排気のときに高圧流路22を遮断する閉位置26bとを備えている。
【0017】
低圧流路24には、下降弁30と可変絞り弁32とが介装されている。下降弁30は、下降用パイロット流路31を介してパイロット圧が導入されたときに低圧流路24を連通する開位置30aと、パイロット圧の導入がなく排気のときに低圧流路24を遮断する閉位置30bとを備えている。尚、本実施形態では、上昇弁26、可変絞り弁28、下降弁30、可変絞り弁32により昇降弁機構を構成している。切換弁12、上昇弁26、下降弁30にパイロット式弁を用いたが、これに限らず、これらに電磁切換弁を用いてもよい。
【0018】
上昇用パイロット流路27と下降用パイロット流路31とは、シャトル弁34を介して、駆動用パイロット流路36に接続されている。駆動用パイロット流路36は、切換弁12を昇降駆動位置12aに切り換えるように、切換弁12にパイロット圧を導入するように接続されている。また、切換弁12には、切換弁12を釣合位置12bに切り換えるパイロット圧を導入する釣合用パイロット流路37も接続されている。
【0019】
一方、前述した可動体4は、本体40に形成された収納孔42に移動可能に収納されており、可動体4の下方端は本体40から下方に突出されて、下方端側からロッド6aが下方に突出されている。
【0020】
収納孔42の上下両側にはそれぞれ大径孔44,46が形成されており、上側の大径孔44には可動体4と本体40とに張り渡された上下一対のダイヤフラム50,52により仕切られた制御室48が形成されている。制御室48に導入される圧縮空気が可動体4の受圧部4b(受圧面積B)に可動体4を下降させる方向の押圧力が作用するように構成されている。
【0021】
下側の大径孔46には可動体4と本体40とに張り渡された上下一対のダイヤフラム56,58により仕切られた付勢室54が形成されており、付勢室54に導入される圧縮空気が可動体4の受圧部4c(受圧面積C)に可動体4を上昇させる方向の付勢力が作用するように構成されている。
【0022】
付勢室54には定圧流路60が接続されており、定圧流路60はエアパイロット形ブリードタイプの減圧弁62に接続されている。また、減圧弁62には、圧力源20がチェック弁64、絞り66を介して接続されると共に、切換弁12に接続されたパイロット流路14が接続されている。
【0023】
減圧弁62は、弁本体68内に摺動可能に支持されたスプール70を備え、スプール70の気密摺動により圧力源20及び大気中と定圧流路60との連通・遮断を制御するように構成されている。
【0024】
弁本体68にはダイヤフラム72により仕切られた一次室74と二次室76とが設けられており、一次室74にはパイロット流路14が接続され、二次室76には定圧流路60が接続されている。一次室74に導入される空気圧と二次室76に導入される空気圧との作用により、スプール70が摺動され、一次室74側の空気圧と二次室76側の空気圧とがほぼ同じになるようにスプール70が摺動される。
【0025】
また、可動体4の上端側には、可動体4の摺動方向に突出されたスプール78が一体的に設けられている。スプール78は、本体40に形成された小径孔80に摺動可能に挿入されている。
【0026】
小径孔80のほぼ中央に環状溝82が形成され、環状溝82には制御流路16が接続されると共に、制御流路16は制御室48に接続されている。環状溝82の上下両側のスプール78には、一対の環状溝84,86が形成されており、一方の環状溝84は大気中に連通され、他方の環状溝86はチェック弁88を介して圧力源20に接続されている。
【0027】
可動体4が上昇した際には、制御流路16が環状溝82、環状溝86、チェック弁88を介して圧力源20に連通され、可動体4が下降した際には、制御流路16が環状溝82、環状溝84を介して大気中と連通されるように構成されている。可動体4の昇降と共に移動するスプール78により、制御流路16と圧力源20あるいは大気中との連通が切り換えられるが、スプール78の移動による切り換えには、図1に示すように、不感帯がある。本実施形態では、本体40と弁体としてのスプール78とにより圧力調整弁89が構成されている。
【0028】
可動体4は、本体40内に収納されたばね90により、上昇方向に付勢され、この付勢力βは可動体4の重量αとほぼ同じに設定されている。尚、前述したエアパイロット形ブリードタイプの減圧弁62や圧力調整弁89は、弁体がスプールタイプであるが、これに限らず、弁体がポペットタイプであってもよい。ポペットタイプの場合は、クランキング圧(弁の開き始め圧力)とレシート圧(弁の閉じ始め圧力)との差があり、この差により、スプールタイプと同様に不感帯が生じる。減圧弁62はブリードのない3方弁タイプのものを使用してもよい。
【0029】
次に、前述した本実施形態の空圧昇降シリンダの作動について説明する。
まず、図1に示すように、ロッド6aに被搬送体1を吊下げる。そして、昇降駆動時には、上昇用パイロット流路27にパイロット圧を供給する。よって、上昇弁26は開位置26aに切り換えられ、圧力源20から圧縮空気が可変絞り弁28、上昇弁26、高圧流路22、給排流路10を介して、作用室8に供給される。作用室8に供給される圧縮空気圧の作用により、ピストン6、ロッド6aを介して被搬送体1が上昇する。その際、可変絞り弁28の設定に応じた速度で、被搬送体1が上昇する。
【0030】
被搬送体1を所定の高さにまで上昇させた後、上昇用パイロット流路27へのパイロット流体の供給を停止し排気にすると、上昇弁26は閉位置26bに切り換えられる。よって、高圧流路22は遮断され、作用室8内の圧力pによる作用力は、被搬送体1の荷重Wと釣合う(W=A×p)。尚、Aはピストン6の受圧面積である。
【0031】
また、上昇用パイロット流路27へのパイロット流体の供給で、シャトル弁34、駆動用パイロット流路36を介して、切換弁12にパイロット圧が導入されて、切換弁12が昇降駆動位置12aに切り換えられる。よって、給排流路10、切換弁12、パイロット流路14を介して減圧弁62の一次室74に圧縮空気が供給される。
【0032】
その際、一次室74は、パイロット流路14、切換弁12、給排流路10を介して作用室8に連通されるので、一次室74と作用室8との圧力pは同一になる。そして、一次室74の圧力が二次室76より大きいと、スプール70を移動して、圧力源20からの圧縮空気をチェック弁64、絞り66、定圧流路60を介して付勢室54及び二次室76に供給する。一次室74の圧力が二次室76より小さいと、スプール70を移動して、定圧流路60を大気中に連通して排気する。二次室76の圧力が一次室74と同一になると、スプール70が移動して、圧力源20から絞り66を介しての流入と大気へのスプール70の位置による排気ブリード量とが一致して、付勢室54の圧力を作用室8と同じ圧力pとする。
【0033】
一方、昇降駆動時に、下降用パイロット流路31にパイロット圧を供給すると、下降弁30が開位置30aに切り換えられる。よって、作用室8内の圧縮空気が給排流路10、下降弁30、可変絞り弁32、低圧流路24を介して大気中に放出され、被搬送体1が下降する。その際、可変絞り弁32の設定に応じた速度で、被搬送体1が下降する。
【0034】
被搬送体1を所定の高さまで下降させた後、下降用パイロット流路31へのパイロット流体の供給を停止し排気にすると、下降弁30は閉位置30bに切り換えられる。よって、低圧流路24は遮断され、作用室8内の圧力pによる作用力は、被搬送体1の荷重と釣合う(W=A×p)。
【0035】
また、下降用パイロット流路31へのパイロット流体の供給で、シャトル弁34、駆動用パイロット流路36を介して、切換弁12にパイロット圧が導入されて、切換弁12が昇降駆動位置12aに切り換えられる。よって、よって、給排流路10、切換弁12、パイロット流路14を介して減圧弁62の一次室74と作用室8とが連通される。
【0036】
そして、前述したと同様に、減圧弁62は一次室74の圧力と二次室76の圧力が同一になるようにスプール70を移動して、定圧流路60と圧力源20あるいは大気中との連通・遮断を行って、付勢室54の圧力を作用室8と同じ圧力pとする。
【0037】
付勢室54の圧力が増加して、可動体4が上昇すると、スプール78の移動により、圧力源20と制御室48とが、チェック弁88、環状溝86、小径孔80、環状溝82、制御流路16を介して連通し、制御室48に圧縮空気が供給される。これにより、制御室48の圧力が上昇し、可動体4の下方への押圧力が増加する。
【0038】
また、付勢室54の圧力が減少して、可動体4が下降すると、スプール78の移動により、制御室48が制御流路16、環状溝82、小径孔80、環状溝84を介して大気中に連通し、制御室48の圧縮空気が大気中に排出される。これにより、制御室48の圧力が減少し、可動体4の下方への押圧力が減少する。
【0039】
これにより、可動体4は、付勢室54の圧縮空気圧の付勢作用と、制御室48の圧縮空気圧の押圧作用とにより、図1に示すように、中に浮いた状態に支持される。その際、作用室8の受圧面積A、制御室48の受圧面積B、付勢室54の受圧面積C、減圧弁62の一次室74の受圧面積D、減圧弁62の二次室76の受圧面積E、圧縮空気の圧力p、被搬送体1の移動総重量Wの関係は、下記式の関係にある。
【0040】
A+B=C
D=E
W=A×p
B×p>可動体4の摺動抵抗力
A×p+B×p+α=C×p+β
ここで、αは可動体4やピストン6やロッド6aの総重量、βはばね90の付勢力である。
【0041】
被搬送体1を圧縮空気圧を利用して昇降させるのではなく、作業者が被搬送体1等を直接持ち上げたり、あるいは降ろしたりする釣合時には、切換弁12に釣合用パイロット流路37を介してパイロット圧を供給する。よって、切換弁12は釣合位置12bに切り換えられ、制御流路16と給排流路10とが連通される。
【0042】
この釣合時に、被搬送体1を上昇させる際には、被搬送体1等を持ち上げる。付勢室54や制御室48はダイヤフラム50,52,56,58により仕切られているので、可動体4の摺動抵抗は小さく、小さな力で上下動する。被搬送体1等が持ち上げられると、可動体4も上昇し、これに伴って、スプール78が移動して、圧力源20と作用室8とが、チェック弁88、環状溝86、小径孔80、環状溝82、制御流路16、切換弁12、給排流路10を介して連通され、圧縮空気が作用室8に供給される。これにより、作用室8の圧力が上昇し、被搬送体1が上昇する。
【0043】
一方、被搬送体1等を下降させると、可動体4も下降し、これに伴って、スプール78が移動して、作用室8内の圧縮空気が、給排流路10、切換弁12、制御流路16、環状溝82、小径孔80、環状溝84を介して、大気中に放出され、被搬送体1が下降する。
【0044】
被搬送体1等の持ち上げや下降を止めると、前述したと同様に、下記式の状態となって釣り合い、被搬送体1の昇降が停止する。
A×p+B×p+α=C×p+β
このように、被搬送体1を持ち上げたり、下降させたりする際に、可動体4が軽い力で上下動するので、操作性がよく、また、可動体4の移動がそのままスプール78の移動になり、応答性よく圧力調整弁89を切り換えることができる。
【0045】
即ち、スプール78の移動が直接的で、不感帯の幅が増幅されることがなく、ヒステリシス現象が少なく、敏感に動作して微妙な動作を行うことができる。また、付勢室54の体積変化が少なく、更に、定圧装置として、ブリードタイプの減圧弁62としたため、二次室76の体積変化に対する圧力変動は更に小さいので、昇降速度を急に上げても、操作力の増加は少ない。
【0046】
次に、前述した実施形態と異なる第2実施形態について、図2によって説明する。尚、前述した実施形態と同じ部材については、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
本第2実施形態では、切換弁12を用いることなく、給排流路10と制御流路16とを直接接続している。そして、定圧流路60にブリードタイプ形の減圧弁62aを接続し、減圧弁62aの一次室74aに図示しない定圧装置から予め設定された空気圧を導入するように接続する。
【0047】
この減圧弁62aも前述した減圧弁62と同様に、一次室74aの圧力が付勢室54に連通した二次室76aの圧力よりも高くなると、付勢室54を圧力源20に連通し、一次室74aの圧力が二次室76aの圧力よりも低いと、付勢室54を大気に連通する。これにより、絞り弁75による大気への排気量とスプール位置による圧力源20の流入とが一致して付勢室54の圧力が予め設定された圧力となるように制御される。
【0048】
この第2実施形態の場合でも、被搬送体1等を作業者が持ち上げたり、下降させたりする際に、軽い力で被搬送体1を昇降させることができるので、操作性がよく、また、可動体4の移動がそのままスプール78の移動になり、応答性よく圧力調整弁89を切り換えることができる。
【0049】
また、減圧弁62aは、図示しない定圧装置から予め設定された空気圧を導入する場合に限らず、図3に示すように、ばね91の付勢力により、スプール70を付勢するようにしても同様に実施可能である。
【0050】
前述した図5に示す従来1の場合、図6に示す従来2の場合、本願の図2に示す空圧昇降シリンダの場合について、抵抗を比較する。例えば、シリンダ2の内径を80mmとし、重さが1000Nの被搬送体1を吊り下げ、低速50mm/sから、0.5秒かかって、高速250mm/sの動作をしたとする。その際、供給される圧縮空気の圧力は0.4MPaGとする。従来1,2の場合に比べ、本願の空圧昇降シリンダによると、下記表1に示すように、軽い力で操作することができる。
【0051】
【表1】

次に、第3実施形態について図4によって説明する。
【0052】
本第3実施形態では、スプール78aを可動体4と別体に形成して、本体40内に収納したばね92により、スプール78aを可動体4に付勢している。これにより、スプール78aは可動体4と一体的に移動する。
【0053】
また、制御室48は制御流路16に絞り93を介して接続されると共に、制御室48にはタンク94が接続されている。絞り93あるいはタンク94を設けることにより、制御室48の急激な圧力変動によるチャタリングを防止することができる。
【0054】
更に、ブリードタイプの減圧弁に代えて、付勢室54と切換弁12とを接続するパイロット流路14にタンク95を接続する。この簡便な機構により、付勢室54の圧力を定圧に保つことができる。
【0055】
圧力源20を減圧弁96、チェック弁97を介してパイロット流路14に接続する。昇降させていない無負荷時に、釣り合うように減圧弁96の圧力を設定する。パイロット流路14にパイロット操作チェック弁98を介装して、切換弁12からの漏れを防止するようにしてもよい。パイロット操作チェック弁98は前述した各実施形態でも同様に設けてもよい。
【0056】
また、可動体4の下端に、ブレーキ機構100を取り付ける。ブレーキ機構100は内蔵するばね等の付勢力により、ロッド6aを把持してロッド6aを制動し、導入される圧縮空気により制動を解除する周知の構成(特許第1894135号等)のものである。
【0057】
ブレーキ機構100と圧力源20とをブレーキ開放3方弁102を介して接続し、圧力源20からの圧縮空気の導入によりブレーキ機構100を開放し、圧縮空気の供給が停止したときにはブレーキ開放3方弁102を切り換えて、ブレーキ機構100により制動するようにして、圧力源20からの圧縮空気の供給が停止したとき、被搬送体1の落下を防止するようにしている。その際、遅延回路104と急速排気弁106とを設けて、ブレーキ開放3方弁102の切り換えを制御し、制動が瞬時に働き、開放は遅らせるようにしている。
【0058】
この第3実施形態でも、被搬送体1等を作業者が持ち上げたり、下降させたりする際に、軽い力で被搬送体1を昇降させることができるので、操作性がよく、また、可動体4の移動がそのままスプール78aの移動になり、応答性よく圧力調整弁89を切り換えることができる。
【0059】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態としての空圧昇降シリンダの概略構成図である。
【図2】第2実施形態としての空圧昇降シリンダの概略構成図である。
【図3】第2実施形態の空圧昇降シリンダでの別の減圧弁の概略構成図である。
【図4】第3実施形態としての空圧昇降シリンダの概略構成図である。
【図5】従来1の空圧昇降シリンダの概略構成図である。
【図6】従来2の空圧昇降シリンダの概略構成図である。
【符号の説明】
【0061】
1,150,204…被搬送体
2,152,206…シリンダ
4…可動体 6,160…ピストン
6a…ロッド 8,154…作用室
10…給排流路 12…切換弁
14…パイロット流路 16…制御流路
20…圧力源 22…高圧流路
24…低圧流路 26…上昇弁
30…下降弁 40…本体
48…制御室 50,52,56,58…ダイヤフラム
54…付勢室 60…定圧流路
62,62a…減圧弁 70…スプール
74,74a…一次室 76,76a…二次室
78,78a…スプール
82,84,86…環状溝
89,156,216…圧力調整弁
94,95…タンク
98…パイロット操作チェック弁
100…ブレーキ機構 104…遅延回路
106…急速排気弁 200…支点ピン
202…梃子部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体を昇降させるシリンダの作用室に接続した給排流路の圧力を、前記被搬送体の重量に拮抗する圧力に調圧する圧力調整弁を備え、前記シリンダの作用力と前記被搬送体の重量とを釣り合わせる空圧昇降シリンダにおいて、
昇降可能に支持された可動体に前記シリンダを該可動体と一体的に昇降可能に取り付け、
圧縮空気の導入により前記可動体を上昇方向に付勢する付勢室を設けると共に、圧縮空気の導入により前記可動体を下降方向に押圧する制御室を設け、前記付勢室の付勢力を前記被搬送体の重量及び前記制御室の押圧力に釣り合わせ、
かつ、前記作用室と前記制御室とを接続すると共に、前記可動体の昇降に応じて前記圧力調整弁の弁体を移動し、前記圧力調整弁は前記可動体の下降により前記作用室と前記制御室とから圧縮空気を排出し、前記可動体の上昇により前記作用室と前記制御室とへ圧縮空気を供給することを特徴とする空圧昇降シリンダ。
【請求項2】
前記可動体に前記シリンダを一体的に形成したことを特徴とする請求項1に記載の空圧昇降シリンダ。
【請求項3】
パイロット圧の導入により、圧力源と前記作用室とを可変絞り弁を介して連通する上昇弁と、パイロット圧の導入により、大気中と前記作用室とを可変絞り弁を介して連通する下降弁とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の空圧昇降シリンダ。
【請求項4】
前記付勢室と前記制御室とは、前記可動体に設けたダイヤフラムにより仕切られていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の空圧昇降シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−65812(P2010−65812A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235034(P2008−235034)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(393030497)有限会社ヒロタカエンジニアリング (3)
【Fターム(参考)】