説明

空模様判定システム及び空模様判定方法

【課題】安易且つ平易に空模様を判定すること。
【解決手段】空を撮影する撮像装置と前記撮像装置で撮影された撮像画像から空模様を判定する空模様判定装置とを備えた空模様判定システムにおいて、前記空模様判定装置は、前記撮像画像を入力して画像記憶手段に記憶する画像入力手段と、前記撮像画像を前記画像記憶手段から読み出して、前記撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算する特徴量計算手段と、計算された前記彩度及び前記明度に基づいて前記撮像画像の空模様を判定する空模様判定手段と、を有することを特徴とする空模様判定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ撮影された空の撮像画像から空模様を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
天気を知る一般的手段としては、気象庁等が発表する天気予報や、それに関わる気象情報(例えば、アメダスや気象レーダ画像等)が挙げられる。しかし、利用可能な情報の即時性や、時間的・空間的(地理的)な分解能の問題(例えば、10km四方以上)から、特定地点の局所的な天候状況を把握するのには必ずしも十分とは言えなかった。
【0003】
その他、温湿度、風力、風向、照度、雨量計等を備えた簡易な気象計測装置を活用する方法も挙げられる。しかし、そのような計測装置の価格は比較的高価であって、設備導入迄に工事を伴うことや操作方法の複雑性等から、局所的な天気を平易に知る手段としては適切とは言えなかった。
【0004】
このような現状課題に対して、民間気象情報会社の中には、局所的且つ即時性のある情報として、会員より携帯電話でその場の空模様を撮影した画像を送信してもらうことにより、ゲリラ豪雨判定に活用する仕組みが導入されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】星 良孝、「ゲリラ豪雨予測、100万人で豪雨を見張る」、技術フロンティア、日経ビジネス、2008年10月6日号、p.96-98
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に、晴れた空は青色、曇りは白色又はグレー色と分類できそうであるが、色特性の異なる雲と空とが混在する場合があるため、画像内の色のみに基づいて空模様を一意に分類することは難しいという問題があった。
【0007】
また、薄い雲の背景に青色が見える場合にはカメラ特性によって白色の雲が青色を帯びることや、夕焼けにより空が青色以外の色を帯びることがあるため、空模様を評価して判定するための定義が難しく、最終的には人手の判定に頼るところが多かった。
【0008】
また、通信ネットワーク技術が発達し、ライブカメラが広く普及して、遠隔地の画像の取得が容易となる中、画像を自動収集して分析し、局所的且つ即時性のある気象情報を抽出するシステムが望まれていた。
【0009】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、安易且つ平易に空模様を判定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の空模様判定システムは、空を撮影する撮像装置と前記撮像装置で撮影された撮像画像から空模様を判定する空模様判定装置とを備えた空模様判定システムにおいて、前記空模様判定装置は、前記撮像画像を入力して画像記憶手段に記憶する画像入力手段と、前記撮像画像を前記画像記憶手段から読み出して、前記撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算する特徴量計算手段と、計算された前記彩度及び前記明度に基づいて前記撮像画像の空模様を判定する空模様判定手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算し、計算された彩度及び明度に基づいて撮像画像の空模様を判定するため、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0012】
請求項2に記載の空模様判定システムは、請求項1に記載の空模様判定システムにおいて、前記特徴量計算手段は、各画素の画像データを用いて前記撮像画像の平均彩度と彩度の散らばり量と平均明度とをそれぞれ計算し、前記空模様判定手段は、雲は無彩色に近いことを前提に前記平均彩度に基づいて前記撮像画像での雲量を評価し、前記彩度の散らばり量に基づいて前記撮像画像での雲の分散度を評価し、雷雲は暗いことを前提に前記平均明度に基づいて前記撮像画像での雲の状態を評価して、各評価結果に基づいて前記撮像画像の空模様を判定することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、各画素の画像データを用いて撮像画像の平均彩度と彩度の散らばり量と平均明度とをそれぞれ計算し、雲は無彩色に近いことを前提に平均彩度に基づいて撮像画像での雲量を評価し、彩度の散らばり量に基づいて撮像画像での雲の分散度を評価し、雷雲は暗いことを前提に平均明度に基づいて撮像画像での雲の状態を評価して、各評価結果に基づいて撮像画像の空模様を判定するため、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0014】
請求項3に記載の空模様判定システムは、請求項2に記載の空模様判定システムにおいて、前記空模様判定手段は、前記平均彩度が高い場合には晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が多い場合には雲を含む晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が少ない場合には霞であり、前記平均彩度が更に低い場合には曇りであり、前記平均明度が低い場合には雷雲を含むと判定することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、平均彩度が高い場合には晴れであり、平均彩度が低く且つ彩度の散らばり量が多い場合には雲を含む晴れであり、平均彩度が低く且つ彩度の散らばり量が少ない場合には霞であり、平均彩度が更に低い場合には曇りであり、平均明度が低い場合には雷雲を含むと判定するため、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0016】
請求項4に記載の空模様判定システムは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空模様判定システムにおいて、前記特徴量計算手段は、前記撮像画像から指定された所定の指定領域の画像データを用いて前記計算を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、撮像画像から指定された所定の指定領域の画像データを用いて上記計算を行うため、撮像画像に空以外が含まれている場合であっても空のみを指定して上記計算が可能になり、空以外を排除して精度よく空模様を判定することが可能になる。
【0018】
請求項5に記載の空模様判定システムは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空模様判定システムにおいて、前記空模様判定装置は、過去に撮影された複数の撮像画像の空模様判定結果と当該各撮像画像の彩度及び明度とをそれぞれ対応付けて記憶しておく空模様判定結果記憶手段を更に有し、前記空模様判定手段は、現在撮影された撮像画像の彩度及び明度から規定されるベクトル量と前記複数の過去の撮像画像との彩度及び明度から規定されるベクトル量との間の統計的距離を計算し、最も近い統計的距離の過去の撮像画像に対する空模様判定結果を現在の撮像画像の空模様判定結果として判定することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、過去に撮影された複数の撮像画像の空模様判定結果と当該各撮像画像の彩度及び明度とをそれぞれ対応付けて記憶しておき、現在撮影された撮像画像の彩度及び明度から規定されるベクトル量と複数の過去の撮像画像との彩度及び明度から規定されるベクトル量との間の統計的距離を計算し、最も近い統計的距離の過去の撮像画像に対する空模様判定結果を現在の撮像画像の空模様判定結果として判定するため、撮像装置の固有特性や、緯度による本質的な判定基準の違いや大気汚染状況等といった局所的な状態による影響を排除することができる。
【0020】
請求項6に記載の空模様判定システムは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空模様判定システムにおいて、前記撮像装置は、撮影方向及びズーム倍率を制御する調整手段を有し、空を撮影する場合にのみ事前設定された撮影方向及びズーム倍率に調整して撮影することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、空を撮影する場合にのみ事前設定された撮影方向及びズーム倍率に調整して撮影するため、必要なタイミング時にのみ空を撮影することができ、他の目的で設置された既存の監視カメラを流用することができる。
【0022】
請求項7に記載の空模様判定システムは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の空模様判定システムにおいて、前記撮像装置は、北半球に位置する場合には北方向の空を撮影し、南半球に位置する場合には南方向の空を撮影することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、北半球に位置する場合には北方向の空を撮影し、南半球に位置する場合には南方向の空を撮影するため、撮像画像内に太陽が含まれることを確実に防止し、太陽光下で撮影した場合に生じる空気中の乱反射によって撮像画像が真っ白になることを防ぐことができる。
【0024】
請求項8に記載の空模様判定方法は、空を撮影する撮像装置と前記撮像装置で撮影された撮像画像から空模様を判定する空模様判定装置とを備えた空模様判定システムで処理する空模様判定方法において、前記空模様判定装置により、前記撮像画像を入力して画像記憶手段に記憶する第1のステップと、前記撮像画像を前記画像記憶手段から読み出して、前記撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算する第2のステップと、計算された前記彩度及び前記明度に基づいて前記撮像画像の空模様を判定する第3のステップと、を有することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算し、計算された彩度及び明度に基づいて撮像画像の空模様を判定するため、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0026】
請求項9に記載の空模様判定方法は、請求項8に記載の空模様判定方法において、前記第2のステップは、各画素の画像データを用いて前記撮像画像の平均彩度と彩度の散らばり量と平均明度とをそれぞれ計算し、前記第3のステップは、雲は無彩色に近いことを前提に前記平均彩度に基づいて前記撮像画像での雲量を評価し、前記彩度の散らばり量に基づいて前記撮像画像での雲の分散度を評価し、雷雲は暗いことを前提に前記平均明度に基づいて前記撮像画像での雲の状態を評価して、各評価結果に基づいて前記撮像画像の空模様を判定することを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、各画素の画像データを用いて撮像画像の平均彩度と彩度の散らばり量と平均明度とをそれぞれ計算し、雲は無彩色に近いことを前提に平均彩度に基づいて撮像画像での雲量を評価し、彩度の散らばり量に基づいて撮像画像での雲の分散度を評価し、雷雲は暗いことを前提に平均明度に基づいて撮像画像での雲の状態を評価して、各評価結果に基づいて撮像画像の空模様を判定するため、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0028】
請求項10に記載の空模様判定方法は、請求項9に記載の空模様判定方法において、前記第3のステップは、前記平均彩度が高い場合には晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が多い場合には雲を含む晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が少ない場合には霞であり、前記平均彩度が更に低い場合には曇りであり、前記平均明度が低い場合には雷雲を含むと判定することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、平均彩度が高い場合には晴れであり、平均彩度が低く且つ彩度の散らばり量が多い場合には雲を含む晴れであり、平均彩度が低く且つ彩度の散らばり量が少ない場合には霞であり、平均彩度が更に低い場合には曇りであり、平均明度が低い場合には雷雲を含むと判定するため、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】空模様判定システムの全体構成を示す図である。
【図2】彩度の平均及び彩度の標準偏差と様々な空模様との関係を相対的に示す図である。
【図3】明度の平均及び彩度の平均と曇り模様との関係を相対的に示す図である。
【図4】生活支援ツールとしての活用例を示す図である。
【図5】広域の監視網としての適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0033】
図1は、本実施の形態に係る空模様判定システムの全体構成を示す図である。この空模様判定システム1は、空を撮影する撮像装置10と、撮影された撮像画像から空模様を判定する空模様判定装置30とで構成されている。
【0034】
撮像装置10は、被写体である空を撮影するカメラ部101と、カメラ部101の向きやズーム倍率を制御する調整部102と、撮像画像を空模様判定装置30に出力する出力部103とで構成されている。
【0035】
空模様判定装置30は、撮像装置10から出力された撮像画像の入力を受け付けて画像記憶部302に記憶する画像入力部301と、画像記憶部302から撮像画像を取得し、取得した撮像画像のうち指定領域受付部303で指定された指定領域の画像データを用いて彩度及び明度を計算する特徴量計算部304と、計算された彩度及び明度に基づいて撮像画像の空模様を判定し、その空模様判定結果を彩度及び明度に対応付けて空模様判定結果記憶部306に記憶する空模様判定部305とで構成されている。
【0036】
上記撮像装置10としては、例えば繁華街や観光地等に設置された通常の監視カメラやWebカメラを利用することができる。撮像装置10は、空模様判定装置30に直接接続されているものでもよく、USB又は通信ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。但し、後者の場合には、撮像画像の画像データを送受可能な通信機能が撮像装置10及び空模様判定装置30にそれぞれ具備されているものとする。
【0037】
また、撮像画像に太陽の直射光が含まれると空気中の水蒸気に対する光の乱反射により画像が白くなるため、北や天頂等の太陽光の直射による影響を受けない方向の空を撮影することが望ましい。すなわち、撮像装置10が北半球に位置する場合には、北方向の空を撮影し、南半球に位置する場合には、南方向の空を撮影することが望ましい。
【0038】
また、シャッタースピード、レンズの絞り値、コントラスト(ホワイトバランス調整)は空模様判定装置30での計算結果に影響を与えるため、全ての撮影で同じ条件で行うことが望ましい。すなわち、例えば、空模様を撮影する目的以外で設置された監視カメラを利用する場合には、予め一意に設定された撮影方向やズーム倍率を監視カメラに保持しておき、空を撮影する場合にのみ、調整部102により、カメラ部101の向きやズーム倍率を該設定値に調整することが望ましい。
【0039】
次に、特徴量計算部304の動作について説明する。特徴量計算部304は、撮像画像の各画素の画像データを用いて、撮像画像における彩度の平均値と彩度の標準偏差と明度の平均値とをそれぞれ計算する。なお、標準偏差は統計値の一例であり、彩度の散らばり量を表すものであれば標準偏差に限られない。また、画像データとしては、例えば各画素の輝度値や濃淡値、テクスチャ等を用いることができる。
【0040】
また、撮像装置10の設置や設定の都合上、空以外の建物等が撮像画面に含まれている場合には、空のみが解析対象となるように撮像画像上の領域を予め指定し、その指定領域に対して上記各計算を行う。指定領域が撮像画像全体である場合には、全体の領域に対して上記各計算を行うことは無論である。
【0041】
次に、空模様判定部305の動作について説明する。図2は、彩度の平均及び彩度の標準偏差と様々な空模様との関係を相対的に示す図である。図3は、明度の平均及び彩度の平均と曇り模様との関係を相対的に示す図である。
【0042】
晴れ(快晴)の場合、空は無彩色の領域がない青色の一面有彩色となるため、撮像画像内の全画素の彩度平均は高く、彩度の標準偏差は低くなる。
【0043】
一方、晴れ(雲混在)の場合には、雲は白色〜グレー色の無彩色であるため、空の中に雲の領域が増加すると彩度は低下し、彩度の低い領域と高い領域との混在により彩度の標準偏差は大きくなる。概ね、空と雲の領域が半々の場合に標準偏差は最大となる。
【0044】
一方、曇りの場合には、雲の領域が更に増加すると撮像画像全体が無彩色になるため、彩度の平均が更に低下するとともに、彩度の標準偏差も小さくなる。
【0045】
なお、彩度の平均及び彩度の標準偏差は、通常の晴れから曇り(又は曇りから晴れ)の場合であれば図2に示した実線の経路で変化するが、霞(かすみ)の場合には、空全体が白っぽくなるため、彩度の標準偏差が殆ど上昇することなく、彩度の平均のみ変化する。
【0046】
また、曇りの場合(晴れ(雲混在)の場合を含む)であっても、雲の状態により空模様は異なる。そこで、図3に示すように、撮像画像の明るさに着目し、通常の雲や雷雲、にわか雨が発生しそうな雲等の雲の状態区別を、明度の平均に基づいて評価する。具体的には、明度の平均が高い場合には、曇り(白い雲)と判定し、明度の平均が低い場合には、曇り(雷雲)と判定する。
【0047】
すなわち、彩度の平均値と彩度の標準偏差と明度の平均値と、空模様との関係が図2及び図3に示す関係にあることを前提とした上で、空模様判定部305は、まず、特徴量計算部304で計算された彩度の平均値に基づいて、撮像画像での雲量を評価(決定)する(S1)。
【0048】
そして、計算された彩度の標準偏差に基づいて、撮像画像での雲の分散度を評価(決定)する(S2)。例えば、撮像画像内に収められた雲が、点在するか又は全体を覆うかを判定する。
【0049】
その後、計算された明度の平均値に基づいて、撮像画像内での雲の状態を評価(決定)する(S3)。例えば、明度の平均値から、撮像画像内に収めされた雲が、通常の雲か又は雷雲かを判定する。
【0050】
S1及びS2により、図2に示された彩度の平均値及び彩度の標準偏差に対する撮像画像の位置が決定するため、空模様の判定が可能となる。具体的には、彩度の平均が高い場合、撮像画像の空模様を晴れ(快晴)と判定する。また、彩度の平均が低く且つ彩度の標準偏差が高い場合には晴れ(雲混在)と判定し、彩度の平均が低く且つ彩度の標準偏差が低い場合には霞と判定する。さらに、彩度の平均が更に低い場合には、曇りと判定する。そして、明度の平均が高い場合には通常の雲と判定し、低い場合には雷雲を含むと判定する。
【0051】
なお、S1〜S3の各処理の順番を前後させた場合であっても、並列に処理した場合であっても、同様に空模様を判定することができる。
【0052】
以上より、彩度の平均値と彩度の標準偏差と明度の平均値とをパラメータに用いることにより、多様で曖昧な空模様の評価を簡潔に定量的に行うことが可能となる。
【0053】
次に、空模様判定システム1の全体動作について説明する。まず、撮像装置10の調整部102により、太陽の直射光が入らないようにカメラ部101の向きが制御され、カメラ部101のズーム倍率、シャッタースピード、コントラスト等が予め設定された値に調整される(S10)。
【0054】
次いで、出力部103により、カメラ部101で撮影された空の撮像画像が空模様判定装置30に出力される(S11)。
【0055】
次いで、空模様判定装置30の画像入力部301により、撮像装置10から出力された撮像画像が空模様判定装置30の内部へと入力され、画像記憶部302に一時的に読み出し可能に記憶される(S12)。
【0056】
次いで、特徴量計算部304により、画像記憶部302から撮像画像が読み出され、指定領域受付部303で受け付けられた指定領域の撮像画像の画像データを用いて、彩度の平均値と彩度の標準偏差と明度の平均値とがそれぞれ計算される(S13)。
【0057】
次いで、空模様判定部305により、S13で計算された計算結果に基づいて、撮像画像の空模様が判定される(S14)。
【0058】
最後に、空模様判定部305により、S14の空模様判定結果と、S13で計算された計算結果(彩度の平均値、彩度の標準偏差、明度の平均値)とが対応付けて空模様判定結果記憶部306に記憶される(S15)。
【0059】
また、過去に撮影された撮像画像の画像群との単なる類似度に基づいて判別を行うことも可能である。具体的には、撮像画像の空模様(「晴れ」「快晴」「曇り」などの状態)と該撮像画像の計算結果(彩度の平均値、彩度の標準偏差、明度の平均値からなる三次元ベクトル量)とを対応付けて複数蓄積してデータベース化しておき、それら複数の撮像画像に対する各計算結果と現在撮影された撮像画像の計算結果との間の統計的な距離(例えば、マハラノビス距離等)を計算し、最も近い距離の計算結果に対応する空模様を現在の撮像画像に最も類似した状態であるものとして、空模様判定結果とする。また、撮像装置10の受像素子には、色彩や明度等に固有の特性があるが、この撮像装置10の特性の影響を避けるため、判定の基準となる過去の撮像画像と判定対象となる現在の撮像画像は、同一の撮像装置10を用い、同一条件で撮影されることが望ましい。
【0060】
図4は、生活支援ツールとしての活用例を示す図である。本実施の形態に係る空模様判定システムを家庭向けの生活支援ツールとして活用した構成例である。
【0061】
撮像装置10としてWebカメラ10aを用いており、空模様判定装置30は一般的なパソコン30aの内部で機能している。そのパソコン30aは、定期的にWebカメラ10aにアクセスし、Webカメラ10aが撮影した自宅周辺の空模様を取得して解析する。その解析結果が、予め指定した基準よりも雨が降りやすそうな状態であれば、外出先の利用者50にアラームメールを送信するというものである。
【0062】
例えば、夏場は夕立その他のにわか雨が起こりやすいが、これらの天候は広域の一般の気象情報では扱いが困難なものである。しかしながら、本実施の形態で説明した空模様判定システムを活用することにより、気象関連の専門的な装置を用いることなく、局所的・即時性のある気象判断を容易に行うことができる。
【0063】
図5は、広域の監視網としての適用例を示す図である。河川や道路などには、既に数多くの監視カメラ10bが導入されている。監視カメラ10bで撮影された撮像画像を撮影時間情報や撮影位置情報等を付与して通信ネットワーク70を介してセンタ90に送信し、センタ内に構築された空模様判定装置により、各地点での空模様を観測する。天候は24時間常時監視する必要はなく、例えば10分毎の間隔で1フレームだけ空の画像を撮影するような運用でも、相応の効果は期待できる。
【0064】
通常、個々の監視カメラ10bは、個別の設置目的に応じて撮影条件が定められているが、10分毎のわずかな時間の間のみ監視カメラ10bを空の撮影に振り向けるだけで、追加投資することなく、従来の気象観測網を補完する空模様判定システムを実現することが可能となる。
【0065】
以上より、曖昧性の高い空模様の自動判定が可能となる。夕方空が暗くなってからは利用できない、曇と雨・雪の識別はできない等の制約はあるが、空模様の判定は基本的な天候判定手段の一つであり、通信ネットワーク技術等の発達により多地点の画像情報の取得が容易になる現在、アメダスやレーダー画像などの高度な天候情報を補う手段として、あるいは、既存の天候情報では扱えない局所的な天候状態をリアルタイムで簡易に捕捉する手段として効用を発揮するものである。簡単な統計量に基づく判定であるため、高い解像度は必要なく、安価なWebカメラの画像でも対応できるなど、コスト面でのメリットも提供するものである。
【0066】
本実施の形態によれば、撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算し、計算された彩度及び明度に基づいて撮像画像の空模様を判定するので、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0067】
本実施の形態によれば、各画素の画像データを用いて撮像画像の平均彩度と彩度の散らばり量と平均明度とをそれぞれ計算し、雲は無彩色に近いことを前提に平均彩度に基づいて撮像画像での雲量を評価し、彩度の散らばり量に基づいて撮像画像での雲の分散度を評価し、雷雲は暗いことを前提に平均明度に基づいて撮像画像での雲の状態を評価して、各評価結果に基づいて撮像画像の空模様を判定するので、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0068】
本実施の形態によれば、平均彩度が高い場合には晴れであり、平均彩度が低く且つ彩度の散らばり量が多い場合には雲を含む晴れであり、平均彩度が低く且つ彩度の散らばり量が少ない場合には霞であり、平均彩度が更に低い場合には曇りであり、平均明度が低い場合には雷雲を含むと判定するので、安易且つ平易に空模様を判定することができる。
【0069】
本実施の形態によれば、撮像画像から指定された所定の指定領域の画像データを用いて上記計算を行うので、撮像画像に空以外が含まれている場合であっても空のみを指定して上記計算が可能になり、空以外を排除して精度よく空模様を判定することが可能になる。
【0070】
本実施の形態によれば、過去に撮影された複数の撮像画像の空模様判定結果と当該各撮像画像の彩度及び明度とをそれぞれ対応付けて記憶しておき、現在撮影された撮像画像の彩度及び明度から規定されるベクトル量と複数の過去の撮像画像との彩度及び明度から規定されるベクトル量との間の統計的距離を計算し、最も近い統計的距離の過去の撮像画像に対する空模様判定結果を現在の撮像画像の空模様判定結果として判定するので、撮像装置の固有特性や、緯度による本質的な判定基準の違いや大気汚染状況等といった局所的な状態による影響を排除することができる。
【0071】
本実施の形態によれば、空を撮影する場合にのみ事前設定された撮影方向及びズーム倍率に調整して撮影するので、必要なタイミング時にのみ空を撮影することができ、他の目的で設置された既存の監視カメラを流用することができる。
【0072】
本実施の形態によれば、北半球に位置する場合には北方向の空を撮影し、南半球に位置する場合には南方向の空を撮影するので、撮像画像内に太陽が含まれることを確実に防止し、太陽光下で撮影した場合に生じる空気中の乱反射によって撮像画像が真っ白になることを防ぐことができる。
【0073】
最後に、本実施の形態で説明した空模様判定装置30は、コンピュータで構成される。すなわち、画像記憶部302と、空模様判定結果記憶部306とは、メモリ等の記憶手段で実現される。また、画像入力部301と、指定領域受付部303と、特徴量計算部304と、空模様判定部305とは、CPU等の演算手段で実現され、プログラムで実行される。
【0074】
また、本実施の形態で説明した空模様判定装置30をプログラムとして光記憶装置や磁気記憶装置等の記録媒体に読出可能に記録し、この記録媒体をコンピュータに組み込んだり、若しくは記録媒体に記録されたプログラムを、任意の通信回線を介してコンピュータにダウンロードしたり、又は記録媒体からインストールし、該プログラムでコンピュータを動作させることにより、上述した各処理動作を空模様判定装置30として機能させることができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1…空模様判定システム
10…撮像装置
10a…Webカメラ
10b…監視カメラ
101…カメラ部
102…調整部
103…出力部
30…空模様判定装置
30a…パソコン
301…画像入力部
302…画像蓄積部
303…指定領域受付部
304…特徴量計算部
305…空模様判定部
306…空模様判定結果記憶部
50…利用者
70…通信ネットワーク
90…センタ
S…ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空を撮影する撮像装置と前記撮像装置で撮影された撮像画像から空模様を判定する空模様判定装置とを備えた空模様判定システムにおいて、
前記空模様判定装置は、
前記撮像画像を入力して画像記憶手段に記憶する画像入力手段と、
前記撮像画像を前記画像記憶手段から読み出して、前記撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算する特徴量計算手段と、
計算された前記彩度及び前記明度に基づいて前記撮像画像の空模様を判定する空模様判定手段と、
を有することを特徴とする空模様判定システム。
【請求項2】
前記特徴量計算手段は、
各画素の画像データを用いて前記撮像画像の平均彩度と彩度の散らばり量と平均明度とをそれぞれ計算し、
前記空模様判定手段は、
雲は無彩色に近いことを前提に前記平均彩度に基づいて前記撮像画像での雲量を評価し、前記彩度の散らばり量に基づいて前記撮像画像での雲の分散度を評価し、雷雲は暗いことを前提に前記平均明度に基づいて前記撮像画像での雲の状態を評価して、各評価結果に基づいて前記撮像画像の空模様を判定することを特徴とする請求項1に記載の空模様判定システム。
【請求項3】
前記空模様判定手段は、
前記平均彩度が高い場合には晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が多い場合には雲を含む晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が少ない場合には霞であり、前記平均彩度が更に低い場合には曇りであり、前記平均明度が低い場合には雷雲を含むと判定することを特徴とする請求項2に記載の空模様判定システム。
【請求項4】
前記特徴量計算手段は、
前記撮像画像から指定された所定の指定領域の画像データを用いて前記計算を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空模様判定システム。
【請求項5】
前記空模様判定装置は、
過去に撮影された複数の撮像画像の空模様判定結果と当該各撮像画像の彩度及び明度とをそれぞれ対応付けて記憶しておく空模様判定結果記憶手段を更に有し、
前記空模様判定手段は、
現在撮影された撮像画像の彩度及び明度から規定されるベクトル量と前記複数の過去の撮像画像との彩度及び明度から規定されるベクトル量との間の統計的距離を計算し、最も近い統計的距離の過去の撮像画像に対する空模様判定結果を現在の撮像画像の空模様判定結果として判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空模様判定システム。
【請求項6】
前記撮像装置は、
撮影方向及びズーム倍率を制御する調整手段を有し、空を撮影する場合にのみ事前設定された撮影方向及びズーム倍率に調整して撮影することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空模様判定システム。
【請求項7】
前記撮像装置は、
北半球に位置する場合には北方向の空を撮影し、南半球に位置する場合には南方向の空を撮影することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の空模様判定システム。
【請求項8】
空を撮影する撮像装置と前記撮像装置で撮影された撮像画像から空模様を判定する空模様判定装置とを備えた空模様判定システムで処理する空模様判定方法において、
前記空模様判定装置により、
前記撮像画像を入力して画像記憶手段に記憶する第1のステップと、
前記撮像画像を前記画像記憶手段から読み出して、前記撮像画像の画像データを用いて彩度及び明度を計算する第2のステップと、
計算された前記彩度及び前記明度に基づいて前記撮像画像の空模様を判定する第3のステップと、
を有することを特徴とする空模様判定方法。
【請求項9】
前記第2のステップは、
各画素の画像データを用いて前記撮像画像の平均彩度と彩度の散らばり量と平均明度とをそれぞれ計算し、
前記第3のステップは、
雲は無彩色に近いことを前提に前記平均彩度に基づいて前記撮像画像での雲量を評価し、前記彩度の散らばり量に基づいて前記撮像画像での雲の分散度を評価し、雷雲は暗いことを前提に前記平均明度に基づいて前記撮像画像での雲の状態を評価して、各評価結果に基づいて前記撮像画像の空模様を判定することを特徴とする請求項8に記載の空模様判定方法。
【請求項10】
前記第3のステップは、
前記平均彩度が高い場合には晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が多い場合には雲を含む晴れであり、前記平均彩度が低く且つ前記彩度の散らばり量が少ない場合には霞であり、前記平均彩度が更に低い場合には曇りであり、前記平均明度が低い場合には雷雲を含むと判定することを特徴とする請求項9に記載の空模様判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−8097(P2012−8097A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146581(P2010−146581)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】