説明

空気の浄化装置

【課題】油煙浄化性能が向上しており、装置内の汚れの洗浄を行うメンテナンスの手間を軽減でき、また、月単位のメンテナンス回数を軽減できる油煙浄化装置を提供すること。
【解決手段】油煙含有空気の浄化装置を、油煙を含む空気を洗浄水と接触させる気液接触室と、貯留槽からの水を電気分解処理して電解水を得る電気分解槽と、電気分解槽で生じた電解水の内少なくともカソード水を洗浄水として気液接触室に供給する電解水供給手段と、と少なくとも用いて構成し、気液接触室と貯留槽とが、気液接触室からの洗浄水を貯留槽に導入可能に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気、特に油分や煙を含む空気を浄化するための浄化装置に関する。本発明の浄化装置は、油煙を含む空気、あるいは油煙及び臭気を含む空気が発生する業務用の厨房及び食品加工場、並びに家庭の台所における空気の浄化に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
種々の状況において空気中にはいろいろな成分が混入し、浄化する必要が生じる場合がある。油分、煙、臭気を含む空気は環境汚染の原因となり得る。特に、油煙は、加熱した油で食品などを処理した際に発生し、油分を多く含み、更に、処理した食品などに応じた臭気を伴っている場合が多い。フライヤーなどの加熱油を用いた調理器具を利用する業務用の厨房や食品加工場では、油煙による汚染に対する対策が必要であり、また、住宅地、特にマンションなどの集合住宅においても油煙対策が必要とされる場合が多い。
【0003】
油煙処理装置としては、湿式や乾式、これらの両方を併用する方式のものが多く提案されている。
【0004】
特開平6−170152号公報には、着臭した空気や油煙などを導く通気路の下流に、空気や油煙などを浄化するシャワー室と、浄化後の空気を放出する送風ファンを設けた脱臭装置が開示されている。この脱臭装置のシャワー室には洗浄水が供給され、供給された洗浄水は空気や油煙などと接触し、シャワー室下部に設けられた貯水槽に滞留し、更に、循環ポンプによりシャワー室に再度供給される。
【0005】
一方、平成20年8月27日〜29日の空調調和・衛生工学会大会における空調調和・衛生工学会大会学術講演論文集(平成20年8月8日発行)には、電解水を利用した家庭用導入外気浄化システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−170152号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】空調調和・衛生工学会大会学術講演論文集(平成20年8月8日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
油分を含む空気を洗浄水と接触させて浄化を行う浄化装置の場合、油煙に含まれる油分(油滴成分)は水に溶解しないため、浄化性能に限界がある。さらに、空気に含まれる油分が多いと、洗浄水との接触を行う気液接触室内、ならびに気液接触室内から装置外への排気を行う経路を構成する配管や各種装置内での油分の付着による油汚れが発生し、洗浄を含むメンテナンスを定期的に行う必要があった。また、煙についても燃焼した物質に応じて種々の組成を有し、油分を含む場合には同様の問題が生じる。特に、油煙からの油汚れは強固であり、メンテナンス時における洗浄には手間がかかる場合が多い。また、油汚れが強固とならないうちにメンテナンスをかけるには、メンテナンス間の期間を短くする必要があり、装置の維持の手間やコストの上昇を招く。
【0009】
本発明の目的は、空気、特に油分を含む空気の浄化性能が向上しており、装置内の汚れの洗浄を行うメンテナンスの手間やコストを軽減でき、また、月単位などの定期的なメンテナンス回数を軽減できる浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる浄化装置の第一態様は、
空気の取入れ口と、
空気を洗浄水と接触させる気液接触室と、
前記気液接触室からの空気を排出する排気出口と、
水を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の水を電気分解処理して電解水としてのカソード水を得る電気分解槽と、
前記電気分解槽で生じたカソード水をアノード水と分離して洗浄水として前記気液接触室に供給する電解水供給手段と、
を有し、
前記気液接触室と前記貯留槽とが、前記気液接触室からの洗浄水を前記貯留槽に導入可能に接続されている
ことを特徴とする空気を浄化するための浄化装置である。
【0011】
本発明にかかる浄化装置の第二態様は、
空気の取入れ口と、
空気を洗浄水と接触させる気液接触室と、
前記気液接触室からの空気を排出する排気出口と、
水を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の水を電気分解処理して電解水を得る電気分解槽と、
前記電気分解槽で生じた電解水を洗浄水として前記気液接触室に供給する電解水供給手段と、を有し、
前記気液接触室と前記貯留槽とが、前記気液接触室からの洗浄水を前記貯留槽に導入可能に接続されている空気を浄化するための浄化装置であって、
前記気液接触室が多段式であり、前記電解水のうちのカソード水が供給される段を少なくとも1段有することを特徴とする空気を浄化するための浄化装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気、特に油分を含む空気の浄化性能が向上しており、装置内の汚れの洗浄を行うメンテナンスの手間やコストを軽減でき、また、定期的なメンテナンス回数を軽減できる空気の浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)〜(E)はそれぞれ本発明にかかる浄化装置で利用し得る気液接触方式の一例を示す図である。
【図2】(A)及び(B)のそれぞれは本発明にかかる浄化装置の一例の構成を示す図である。
【図3】本発明にかかる浄化装置の一例の構成を示す図である。
【図4】(A)及び(B)のそれぞれは本発明にかかる浄化装置の一例の構成を示す図である。
【図5】(A)及び(B)のそれぞれは気液接触室の洗浄のための取入れ口接続形態の一例を示す図である。
【図6】自動給排水制御システムの構成の一例を示す図である。
【図7】本発明にかかる浄化装置の一例の構成を示す図である。
【図8】(A)及び(B)のそれぞれは本発明にかかる浄化装置の一例の構成を示す図である。
【図9】本発明にかかる浄化装置の一例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる空気浄化装置は、電解水のうちの少なくともカソード水を洗浄水として用いるものであり、カソード水による洗浄効果が得られる物質が混入した空気の浄化に利用される。中でも、油煙を含む空気の浄化用として特に好適な構造を有する。本発明にかかる浄化装置は、気液接触室と、浄化すべき空気の取入れ口と、浄化された空気の排気出口と、水を貯留する貯留槽と、水を電気分解処理して電解水を得る電気分解槽と、電解水を洗浄水として液接触室に供給する電解水供給手段と、を有して構成される。
【0015】
気液接触室は、洗浄水と浄化すべき空気(被処理空気)の供給が可能であり、これらの接触により被処理空気中から少なくともカソード水による洗浄によって油煙や臭気などの成分を除去可能な構造を有する。
【0016】
気液接触室での気液接触方式は、目的とする浄化装置の機能に応じて選択することができる。気液接触方式としては、洗浄液の流れ方向に対向する方向に被処理空気を流す向流型、洗浄液の流れ方向と交差する方向に被処理空気を流す交差流型、及び洗浄液の流れ方向と同じ方向に被処理空気を流す並流型等を挙げることができる。また、気液接触室を、向流により気液接触が行われる領域と、交差流によって気液接触が行われる領域との両方を有する構成としてもよい。なお、「流れ方向」とは、上流側から下流側への流体全体としての流れ方向を意味し、この「流れ方向」において逆流や停滞流が生じていてもよい。
【0017】
気液接触室への洗浄水の供給は、気液接触室に洗浄水を放出し得る位置に洗浄水放出手段を設けることにより行うことができる。すなわち、採用する気液接触方式に応じて、気液接触室の上部、底部、側面及びこれらの2以上の部分から選択した場所から洗浄水を供給できる位置に洗浄水供給手段を設けることができる。洗浄水放出手段としては、水を放出し得る構造のノズルや孔の必要数を配管の所定部に設けたもの、あるいはラッパ状のシャワーノズルなど各種の散水または噴霧用の構造を利用することができる。洗浄水放出手段から放出される水の形態は、シャワー流、雨滴流、噴霧流、これらの2以上の混合状態など、種々の形態から選択することができる。
【0018】
図1(A)〜(E)に、洗浄液の流れの方向(気液接触室の洗浄水の供給における入口から出口への方向)と、被処理空気の流れの方向(気液接触室の被処理空気の供給における入口から出口への方向)との関係における各種の気液接触方式を例示する。
【0019】
図1(A)に示す気液接触方式は、気液接触室2の上方に洗浄水放出手段10を設け、洗浄水は下方に放出されて落下し、これに対向する方向に被処理空気の流れを形成させてこれらを接触させる向流型である。
【0020】
図1(B)に示す気液接触方式は、気液接触室2の上方に洗浄水放出手段10を設け、洗浄水は下方に放出され落下し、これに交差する水平方向に被処理空気の流れを形成させてこれらを接触させる交差流型である。
【0021】
図1(C)に示す気液接触方式は、気液接触室2の下方に洗浄水放出手段10を設け、洗浄水は上方に放出され、上方への洗浄水の流れと落下してくる洗浄水の流れに交差する水平方向に被処理空気の流れを形成させてこれらを接触させる交差流型である。
【0022】
図1(D)に示す気液接触方式は、気液接触室2の側方に洗浄水放出手段10を設け、洗浄水は水平方向に放出され、洗浄水の放出方向に対して交差する方向に被処理空気の流れを形成させてこれらを接触させる方式であり、洗浄水の放出直後は交差流による気液接触が行われ、洗浄水が下方へ落下する際に向流による気液接触が行われる。すなわち、交差流による気液接触部分と、向流による気液接触部分とが混在する方式である。
【0023】
図1(E)に示す気液接触方式は、気液接触室2の前方(側面)に洗浄水放出手段10を設け、洗浄水は水平方向に放出され、洗浄水の放出方向に被処理空気の流れを形成させてこれらを接触させる方式であり、洗浄水の放出直後は並流による気液接触が行われ、その後洗浄水が下方へ落下する際に交差流による気液接触が行われる。すなわち、並流による気液接触部分と、交差流による気液接触部分とが混在する方式である。
【0024】
更に、上記(A)〜(E)の構成の組合せ可能な2以上を選択して気液接触室を構成することもできる。
【0025】
気液接触室への被処理空気の導入は取入れ口から行われ、気液接触室で処理された空気は排気口を経由して浄化装置の外へ排出される。
【0026】
取入れ口から気液接触室を通して排気口に至る気流は、装置の用途や設置する場所などに応じて設けられた気流形成手段によって生じさせることができる。気流形成手段は、浄化装置内に設けてもよいし、別途装置外に設けてもよい。あるいは、被処理空気の発生場所から被処理空気を排出するために設けられているファンなどの送風機を、気流形成手段として利用してもよい。
【0027】
気液接触室は、気液接触領域を単独で設けた構成や、各段における洗浄水の供給制御を可能とした多段式の構成とすることができる。
【0028】
気流形成手段としては、吸気や送風によって気流を発生し得るファンなどの気流発生装置を挙げることができる。浄化装置内に気流形成手段を設ける場合は、目的用途に応じて気流路内あるいは気流路と接続可能な気流路外に配置することができる。
【0029】
貯留槽は、水を貯留でき、かつ電気分解槽への水の供給と、気液接触室での処理に使用された洗浄水の受取りが可能な構造を有する。気液接触室と貯留槽は気液接触室からの洗浄水を貯留槽に導入可能に接続される。かかる接続は、配管での接続、透水可能な隔壁を介した接続、直接接続など浄化装置の設計に応じて適宜選択できる。浄化装置をコンパクト化し、浄化装置のメンテナンスを簡易化する上では、気液接触室と貯留槽とを、透水可能な隔壁を介して接続する構成や、直接接続した構成が好ましい。電気分解槽と貯留槽の接続も配管での接続、透水可能な隔壁を介した接続、直接接続など浄化装置の設計に応じて適宜選択できる。
【0030】
電気分解槽との接続に用いる貯留槽側の接続口は、貯留槽中の水相中に油相が形成される場合や、貯留槽底部に固形分が沈殿する場合などに対応してこれらの混入を防止できる位置に設けることが好ましい。例えば、貯留槽の底部(最大深さ)よりも上方で、かつ貯留槽の水を貯留する部分の最大深さの半分以上の深さの部分までの部分から接続口の位置を選択することができる。このような位置に接続口を設けることで、水よりも軽く、液面方向へ上昇する油相と、水よりも重い沈殿物の電気分解槽への送水中への混入を防止できる。なお、接続口から電気分解槽までの流路中のいずれかの箇所に固形物を除去するフィルターなどの除去手段を必要に応じて設けることもできる。
【0031】
電気分解槽としては、水を電気分解して電解水としてのアノード水及びカソード水を生じさせ、少なくともカソード水を分離して取り出すことができる構造を有するものが特に制限なく利用できる。
【0032】
カソード水はアルカリ性であり、カソード水を用いることにより、油滴などに含まれる油分をケン化による溶解作用により被処理空気から効果的な除去を行うことができる。従って、気液接触室における浄化処理には、少なくともカソード水が利用される。
【0033】
アノード水は酸性であり、油成分のケン化による溶解作用はないものの、油滴、塵等の粒子、アノード水で除去可能な成分の被処理空気からの除去に利用できる。
【0034】
電気分解槽に初期投入する水としては、目的とする機能を有するカソード水及アノード水を生成することができるイオンなどの成分を含む水であればよい。浄化装置の汎用性などを考慮した場合、上水(水道水や井戸水)などが電気分解槽に初期投入する水として好適である。上水以外の水であっても本発明の目的効果を達成できる水であれば利用可能である。また、電解水形成用の水には、カソード水を油煙溶解に好適なアルカリ水とすることを容易とするために食塩などの塩類を、好ましくは10質量%までの範囲で添加することができる。電解水形成用の水はフィルターなどのゴミ除去機構を介して貯留槽中に導入してもよい。
【0035】
電気分解槽で生成された電解水は気液接触室へ供給され、被処理空気と接触することによって油煙成分や臭気成分が空気から分離される。
【0036】
気液接触室に設けられた洗浄水放出手段と電気分解槽を配管などにより接続し、ポンプなどの液流発生装置を設けて電解水供給手段を構成し、所定の電解水を電気分解槽から気液接触室に供給する。電解水の気液接触室への供給量の制御は、洗浄水放出手段に設けたノズルや放出口の開口径、バルブの開度、ポンプ出力の制御、流量調節機の設置などによって行うことができる。
【0037】
気液接触室が一段のみでの処理を行う構成である場合において、アノード水が貯留槽に供給されて循環系を形成することが好ましい。
【0038】
気液接触室が多段式である場合は、各段に、電解水以外の洗浄水(例えば水道水、井戸水など洗浄水として利用できる水)、カソード水またはアノード水を供給できるように電解水供給手段を設け、かつ、カソード水が供給される段を少なくとも1段設ける。
【0039】
多段式における各段へ供給する電解水を、水、アノード水及びカソード水のいずれかとするかの選択は、目的とする多段式による浄化機能に応じて行うことができる。例えば、被処理空気の流れおける上流側に、電解水以外の洗浄水(例えば水道水、井戸水など洗浄水として利用できる水)またはアノード水が供給される段を配置し、その下流側にカソード水が供給される段を配置する接続構成を有することが好ましい。このような多段接続形式とすることによって、前段において油滴やその他の成分の被処理空気からの粗分離をして後段での浄化処理の負担を軽減し、かつ後段でのカソード水による油成分のケン化による溶解作用を利用して更に効果的な浄化処理が可能となる。また、前段で用いる非電解水またはアノード水とともに被処理空気から貯留槽に分離された油成分は水と分離した油相を形成しているので、貯留槽中の水相の表面に容易に油層を形成し、油水分離が容易となる。一方、後段においては前段の処理により浄化処理の負担が軽減されているのでカソード水の高い利用効率でのケン化による油成分の溶解除去効果が得られる。
【0040】
浄化装置内の気流方向における気液接触室の下流側(排気口との間)には、空気から液体を分離するエリミネータを設けることができる。更に、エリミネータの下流側には、空気を調湿する調湿機を更に設けることもできる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
(実施例1)
図2(A)は本発明の浄化装置の一例を示す図である。この浄化装置は、浄化装置の本体を構成する筒状の筺体1の内部を下から貯留槽3を配置した底部と、向流型の気液接触室2を配置した中央部と、送風機11を配置した上部の領域に区分した構成を有する。
【0042】
筺体1の断面における中空部の平面形状は装置の設計に応じて適宜選択可能であり、例えば、円形、楕円形及び矩形、ならびにこれらの複合形状等から選択することができる。
【0043】
筺体1の側面には取入れ口9が、貯留槽3の液面上の空間と連通して形成されており、取入れ口9からの被処理空気は気液接触室2の底部に導入される。
【0044】
気液接触室2の上部には、洗浄水放出手段10が設けられている。この洗浄水放出手段10は、配管の下方側面に多数のノズルを配置したものであり、上方から下方、すなわち、矢印で示される気流の方向に対して向流として洗浄水を放出する構造を有する。ノズルから放出される洗浄水は気液接触室2の上方の洗浄水の入口から下方の出口への流れを形成する。洗浄水の気液接触室2への供給形態は、気液接触室2への充填材の使用の有無、被処理空気の導入量やその流速などに応じて設定できる。例えば、気液接触室2に充填材を充填しない場合で被処理空気の流速が低い場合は、洗浄水の液滴を微小化して噴霧し、これらを接触させる方法を採用することができる。また、気液接触室2に充填材を充填しない場合で被処理空気の流速が高い場合は、液滴を大きくして雨滴状としたり、シャワー状として洗浄液を供給する方法を採用することができる。気液接触室2に充填材を配置した場合は、充填材の形状や大きさ、あるいは配置密度に応じて、雨滴状、噴霧状またはシャワー状とし、液流の太さ、液滴の大きさ、流量などの洗浄液の供給形態を選択することができる。気液接触室2からの洗浄水は貯留槽3内に直接落下して、貯留槽中の水と混合される。
【0045】
被処理空気は取入れ口9から気液接触室2に導入されて処理される。処理済の空気は気液接触室2の上方にある空間領域を経て排気口12から装置の外へ排出される。この気流の流れ方向は、送風機11により形成される。図2(A)の装置では、取入れ口9及び排気口12の位置を含む筺体1の内部構造と送風機11によって気流形成手段が構成されている。
【0046】
貯留槽3には水が貯留されており、貯留槽3と電気分解槽4は貯留槽3から電気分解槽4への送液が可能となるように接続されている。先に述べたとおり、貯留槽3内には塩を添加してもよい。
【0047】
電気分解槽4は水から電解水を生成する構造を有し、この電気分解槽としては隔膜式(2槽式あるいは3槽式など)の電解水形成装置が利用できる。図2(A)に示した例では、電気分解槽4はアノード水生成用の領域とカソード水生成用の領域を有しており、これらの領域のそれぞれが貯留槽3と接続されている。貯留槽3から電気分解槽4への送水はポンプ5により行われ、各領域への送水量はバルブ6−1、6−2によって個別に制御可能となっている。なお、バルブ6−1及び6−2は必要に応じて設けることができる。これらのポンプ、バルブ及び配管を有して電解水供給手段が構成されている。電解水供給手段の構成は図示したものに限定されず、目的とする浄化装置の機能に応じて種々の構成を選択できる。
【0048】
配管7は洗浄水放出手段10と接続されており、配管7を通して電気分解槽4からのカソード水が洗浄水放出手段10に供給される。配管8は貯留槽3に接続され、配管8によりアノード水が貯留槽3に戻される。
【0049】
洗浄水放出手段10の下部に設けられた気液接触室2では、取入れ口9から導入された被処理空気がその下部から上部方向へ流され、これに対向する方向に供給された洗浄水と接触する。気液接触室2内には、固体の充填材を配置することができる。充填材を配置することにより、気液接触室2内での洗浄水と被処理空気の接触面積や液滴表面の更新機会の拡大、並びに接触時間の延長の少なくとも一方を行って、これらの接触機会を多くすることができる。
【0050】
充填材としては、樹脂などの有機材料、金属材料、ガラスなどの無機材料、これらの材料の複合材料などから形成されたものが利用できる。充填材の大きさ、形状、気液接触室2内への充填率は、被処理空気の油成分や臭気成分の種類、含有量、処理量などに応じて選択できる。充填材の形状は、球形、円柱形、多角柱形など種々の形状とすることができる。また、充填材は洗浄水や被処理空気が通過可能な中空部や多孔形を有するものでもよい。また、洗浄水や被処理空気の気液接触室2での気液接触面積及び気液接触時間の少なくとも一方を制御する上で、平滑な平面や曲面を持つ簡単な形状の充填材と、これよりも接触面積や液滴表面の更新機会の拡大、並びに接触時間の延長の少なくとも一方が可能となる、表面に凹凸や突起を有するなどの複雑な形状の充填材を使い分けることができる。
【0051】
充填材を気液接触室2に配置する場合は、充填材を気液接触室2内に保持するための通気通液性の仕切り、例えば、網状プレート、多数の貫通孔を設けたプレートなどにより気液接触室2の底部を構成する。
【0052】
気液接触室2から放出される処理済空気は、送風機11により排気口12に送られる。図2(A)の構成では送風機11は筺体1の上部空間に配置されている。送風機11の配置はこれに限定されない。例えば、必要に応じて配管を利用して、目的とする気流を筺体1内で生じさせる筺体1外部の位置に送風機を設けてもよい。図2(A)に示す送風機11の筺体1内への設置は、浄化装置全体をコンパクト化する上で好ましい。
【0053】
気液接触室2と送風機11との間には図4(A)及び(B)に示す気液分離を行うエリミネータ(17)及び、デシカントローターなどを搭載する調湿機構(16)の少なくとも一方を更に設けることができる。この点は他の各実施例においても同様である。
【0054】
更に、貯留槽3の内部あるいは外部に紫外線ランプを配置して、貯留槽3内の油分、水溶性成分等の分解及び殺菌を行うようにすることもできる。この点は他の各実施例においても同様である。
【0055】
次に、図2(A)に示す浄化装置における被処理空気の浄化処理について説明する。
【0056】
まず、貯留槽3に水道水等の電解水形成用の水を充填し、電気分解槽4に送液する。電気分解槽4を作動させ、アノード水とカソード水を生成させる。油煙成分の溶解除去に効果的なアルカリ性カソード水、好ましくはpH8〜13、より好ましくはpH9〜12のカソード水が生成した段階で、ポンプ5により配管7を介して洗浄水放出手段10にカソード水を供給する。
【0057】
洗浄水放出手段10のノズルからカソード水を洗浄液として放出させるとともに、送風機11を作動させて、取入れ口9から被処理空気、例えば、0.01〜10mg/m3の油煙成分を含む空気を気液接触室2に導入して、これらを接触させる。カソード水はアルカリ性であるので、空気中に分散する油煙成分がカソード水中にケン化作用により溶解して取り込まれ、空気から分離される。更に、カソード水がアルカリ性であることにより、気液接触室2及びその下流部における洗浄及び防菌効果を得ることができる。
【0058】
気液接触室2への被処理空気供給量と洗浄水供給量の比や気液接触時間は、目的とする処理効率が得られるように設定することができる。例えば、気液接触室2に導入される被処理空気量に対して、0.1〜50倍(重量基準)の洗浄水を供給する。また、気液接触時間は0.01〜2.0sの範囲とすることができる。
【0059】
また、被処理空気は通常温度が高い状態を維持して気液接触室2内に導入される。効果的な浄化処理を行う上は、装置内の温度が40〜70℃の範囲となるように、時間当たりの洗浄水の供給量や気流の流速を調整することが好ましい。あるいは、気液接触室2の上流において、被処理空気の温度を調節する熱交換処理系を設けても良い。
【0060】
気液接触室2内で油煙成分を溶解により取り込んだ洗浄水は、気液接触室2の下部(底部)から貯留槽3の気相内を通って洗浄液中に落下し、更に、電気分解槽に供給されて循環系を形成する。
【0061】
一方、電気分解槽4で生成するアノード水は配管8を介して貯留槽3に戻されることで循環系を形成する。カソード水からなる洗浄液とアノード水は、貯留槽3において混合されることになる。その結果、カソード水中に取り込まれた油分が水相と分離して、貯留槽内の液相中で未溶解油分となる。未溶解油分がある程度の量に達すると、水相上に油層14を形成する。この油層14は、必要に応じて設けた油相抜き出しライン13によって貯留槽3から容易に分離することができる。
【0062】
この油層14の形成は2種の電解水の混合によるものと考えられる。すなわち、気液接触室2によって油煙成分を取り込んだアルカリ性のカソード水中では油煙成分はミセルとして溶解しており、この油煙成分を含んだカソード水が貯留槽3中で酸性のアノード水と混合されることにより中和され、その結果、油煙成分のミセルが解消し、油相が生じることによるものと考えられる。
【0063】
カソード水とアノード水の送水の比率を1:1(質量基準)とすることにより、このような中和による油層形成作用を得ることができる。しかしながら、カソード水とアノード水の送水の比率を変更して貯留槽内のpHを目的とする浄化装置の機能に応じて調節してもよい。この点は他の各実施例においても同様である。
【0064】
以上の電気分解槽4で生成したカソード水とアノード水を循環水として連続的に循環させることで被処理空気の浄化処理が行われ、気液接触室2で処理された空気は排気口12から浄化装置外へ、例えば室内や室外へ放出される。
【0065】
貯留槽3内の洗浄水は、油煙含有空気の累積処理量に応じて新しい水道水と入れ替えを行うことが好ましい。この入れ替えは、以下のタイミングで、浄化装置が休止状態にある時に、あるいは作動中であれば休止操作後に行うことができる。
(1)タイマーによる自動交換(給排水)もしくは定期的な交換
予め洗浄水の交換時期をタイマーにより設定し、交換時期において洗浄水の交換を行う。あるいは、交換までの期間を設定して定期的に洗浄水を交換する。
(2)密度計を用いた計測による交換
洗浄水中に油層として分離できない油分が含まれると密度の低下が生じるので、貯留槽3内の洗浄水の密度を密度計により測定し、交換基準以下に洗浄水の密度が低下した時を交換時期として、洗浄水の交換を行う。この交換基準は、例えば0.90〜0.97g/mlの範囲から選択することができる。密度計は常時貯留槽内の洗浄水の計測が可能となるように設置しておいてもよい。
(3)TOC計(全有機体炭素計)を用いた計測による交換
貯留槽3内の洗浄水の全有機体炭素量をTOC計により測定し、交換基準を超えた時を交換時期として、洗浄水の交換を行う。この交換基準は、例えば10〜1000ppmの範囲から選択することができる。TOC計も常時貯留槽内の洗浄水の計測が可能となるように設置しておいてもよい。
【0066】
洗浄水の交換は、後述の実施例4及び5における図4(A)及び(B)で示す構成にあるよう貯留槽3を給排水ライン18、19と接続し、自動給排水システムを利用して行ってもよい。
【0067】
この場合、上記の(1)〜(3)の各計器からの信号を受けて、浄化装置の休止状態を送風機の作動状態や配管内での液流やモータの作動状態などから確認して、自動給排水システムに給排水を指示するマイクロコンピュータなどを用いた自動給排水指示手段を設けて自動給排水制御システムとしてもよい。その一例のブロック図を図6に示す。図6に示した自動給排水制御システムは、浄化装置の貯留槽20、計測機器またはタイマー21、自動給排水指示手段22、給排水ライン、バルブ、ポンプ等の作動の制御系等を有する自動給排水システム23を有して構成されている。浄化装置の貯留槽20についての上記(1)〜(3)の少なくとも1つに従って計測機器またはタイマー21により水交換時期が設定された段階で、その情報が信号として自動給排水指示手段22に送られ、自動給排水指示手段22において浄化装置の休止状態が確認されてから、あるいは浄化装置が作動中である場合は休止動作を行ってから、自動給排水システム23に指示が出される。指示を受けた自動給排水システム23が作動し、浄化装置の貯留槽20に対して自動給排水が行われる。
【0068】
以上の貯留槽3内の洗浄水の交換にかかる構成は、後述する各実施例において利用することができる。
【0069】
(実施例2)
図2(B)に示す浄化装置は、洗浄水放出手段10の洗浄水の放出方向を、被処理空気の流れ方向と並流方向(同方向)とした構成を有する。その他の構成は図2(A)で示した装置と同様である。このように洗浄水の放出方向を変えることにより、油滴のこびりつきや被処理空気中に含まれる固形物などによるノズルの閉塞を防止することができ、浄化装置のメンテナンスのインターバルを延長することができる。この洗浄水の放出方向を気流に対して並流方向(同方向)とした構成を有する洗浄水放出手段は、以下の各実施例にかかる浄化装置にも適用することができる。なお、図2(B)に示す装置における気液接触室2は、洗浄水の流れ方向と被処理空気の流れ方向とが対向する向流型である。
【0070】
(実施例3)
図3に示す浄化装置は、貯留槽3内に油分離機構としての傾斜板15を設けた構成を有する。傾斜板15は複数設置することが好ましい。傾斜板15の大きさ、傾斜角度、板の間隔、傾斜方向は、所望とする未溶解油分の分離効果が得られるように設定する。傾斜板15を設けることにより、貯留槽3内の洗浄水(循環水)中に分散している油滴(未溶解分)を、循環水から効率よく分離することができる。貯留槽3の液相上に油層14が形成された際には、油層抜き出しライン13によって貯留槽3からこれを分離する。
【0071】
油分離機構は傾斜板に限定されず、掻き取り式、吸着式、ろ過式などの種々の形式のものから選択することができる。
【0072】
(実施例4)
図4(A)に気液接触室を2段式とした浄化装置の一例を示す。この浄化装置は、第1気液接触室2−1及び第2気液接触室2−2を被処理空気の流れ方向に直列に配置し、かつ第1気液接触室2−1及び第2気液接触室2−2からの洗浄水を個別に貯留槽の仕切り壁20で仕切られた領域3−1及び3−2に放出する構成を有し、油分の多い油煙を含む被処理空気の浄化に好適に利用できる。
【0073】
貯留槽の2つの領域3−1、3−2は、深さ方向の途中まで伸びた仕切り壁20により分割されており、これらの領域は底部で連通している。第1気液接触室2−1からの洗浄液は領域3−1に直接供給され、第2気液接触室2−2からの洗浄液は貯留槽3の領域3−2に直接供給される。また、貯留槽には更に給水ライン18及び排水ライン19が設けられている。
【0074】
第1気液接触室2−1には、電解分解槽4からアノード水が供給され、油煙中の大部分の油滴がアノード水とともに貯留槽3へ落とされて空気中から除去される。更に、油滴以外のアノード水により分離可能な成分が被処理空気から分離される。アノード水は酸性であるので油分はケン化されず、アノード水とともに貯留槽3に運ばれた油滴は貯留槽3の水相内で容易に油水分離して、油層14を形成することができる。本実施例においては、第1気液接触室2−1は、アノード水の散水や噴霧により油滴を空気から粗分離することを主な目的として設置されるので、かかる目的を達成できる構造とすればよい。従って、第1気液接触室2−1では、充填材を使用しないか、あるいは、気液接触をより良好とするために充填材を使用する場合は、充填材に吸着する油分の洗浄が容易な形状や構造の充填材を用いることが好ましい。このような観点から、第1気液接触室2−1に配置する充填材の比表面積を100m2/m3以下とすることが好ましい。
【0075】
第1気液接触室2−1内の洗浄は、開閉可能なゲートや仕切り弁の設置、あるいは配管の構造などによって取入れ口9からの洗浄水の流出を防止した状態で、貯留槽内の洗浄水の液面を第1の気液接触室2−1の上部まで上昇させて一定時間その状態を維持することにより行うことができる。
【0076】
取入れ口9からの内部洗浄用の洗浄水の逆流を防止する構成としては、例えば、図5(A)に示すように開閉自在なゲート21を設けておき、被処理空気の導入時にはこれを開けておき、内部洗浄時にはこれを閉めることができる構成や、図5(B)に示すように取入れ口9への配管の配置による構造などが利用できる。
【0077】
この洗浄処理は自動化可能であり、浄化装置の運転前や定期的なメンテナンス時に必要に応じて行うことができる。その際、第1の気液接触室2−1に配置する充填材をバッフルプレートや傾斜板等の洗浄が容易な充填材としておくことで、充填材の洗浄処理が容易となる。
【0078】
更に、バルブ6−1及び6−2を制御してカソード水のみを貯留槽内に供給して上述した洗浄処理を行うことで第2気液接触室2−1内に吸着した油分を更に効果的に洗浄除去することが可能となる。この場合、電気分解槽4から貯留槽へカソード水を必要時に直送する分配系を配置してもよい。また、第2気液接触室2−1内を洗浄するための洗浄水を、電気分解槽とは別に洗浄水供給系を設けて、貯留槽内を排水ライン19により空にしてからそこに洗浄水を供給してもよい。
【0079】
第2気液接触室2−1内の洗浄に際しては、気泡発生装置(もしくは気液発生機構)や攪拌装置(もしくは攪拌機構)を貯留槽内に配置して洗浄効果を向上させることもできる。
【0080】
また、別の洗浄のための構成として、カソード水を第1気液接触室2−1用の洗浄水放出手段10から噴霧などにより供給し、第1気液接触室2−1内を洗浄する構成を用いることもできる。この場合、必要に応じてカソード水を第1気液接触室2−1用の洗浄水放出手段10に供給する供給系をさらに設けてもよい。
【0081】
なお、第1気液接触室内の洗浄機構を、実施例1〜3の浄化装置の気液接触室においても必要に応じて設置することができる。
【0082】
第2気液接触室2−2では、アルカリ性のカソード水による被処理空気の処理が行われ残留する油分などの油煙成分が溶解、吸着などの作用によりカソード水へ取り込まれて空気から分離される。第2気液接触室2−2に到達した空気中では、第1気液接触室2−1での処理により残存油分量が低減されているのでアルカリ性のカソード水のケン化作用による油分の溶解除去を更に効果的に行うことができる。
【0083】
第2気液接触室2−2における気液接触を更に良好とする目的で充填材を用いる場合には、アルカリ性のカソード水のケン化作用による油分の洗浄効果が利用できるので、充填材への油分の吸着を少なくすることができる。従って、第2気液接触室2−2に用いる充填材としては、気液接触面積や液滴表面の更新機会の拡大、並びに気液接触時間の延長の少なくとも一方を可能とする表面凹凸構造などの複雑な形状を有する充填材の利用も可能となる。このような充填材としては、テラレット(登録商標:月島環境エンジニアリング株式会社製)、ラシヒリング、ベルルサドルなどを用いることができる。
【0084】
第1気液接触室を前段に設けたことにより第2気液接触室2−2から貯留槽3の領域3−2に供給される洗浄水中の油分濃度を低くして、この領域3−2におけるカソード水との混合により形成される油相を少なくすることができる。更に、仕切り壁20が設けられていることによって、大部分の油成分を油層14として領域3−1内に閉じ込めることができ、貯留槽3から電気分解槽4への送水中への油分の混入をできるだけ少なくすることが可能となる。更に、仕切り壁の位置を調節することにより、油層14が形成される領域を縮小でき、油層14の分離操作における取り扱い性が向上する。
【0085】
なお、目的とする浄化装置の機能によっては仕切り壁20を設けなくてもよく、その場合、気液接触後のアノード水からなる洗浄水とカソード水からなる洗浄水は貯留槽3内で混合され、図2(A)で示した装置と同様の油層14の形成を行うことができる。この点は後述する仕切り壁を用いた浄化装置においても同様である。
【0086】
上述のとおり気液接触室を2段設けた構造の浄化装置では、貯留槽3−1中での油水分離が容易となり、更に、浄化装置のメンテナンス時における気液接触室に配置した充填材の洗浄も容易に行うことができるようになる。
【0087】
第1気液接触室2−1にはカソード水に代えて、上水(水道水や井戸水)などの電解水以外の水を洗浄水として供給してもよい。その際、アノード水は図2及び図3に示す装置と同様に、貯留槽内に戻す構成とすることができる。
(実施例5)
図4(B)に気液接触室を2段式とした浄化装置の他の例を示す。この浄化装置は、アノード水を供給する第1気液接触室2−1と、カソード水を供給する第2気液接触室2−2を被処理空気の流れ方向に直列に配置し、かつ第2気液接触室2−2からの洗浄水を第1気液接触室2−1に供給して、第1気液接触室2−1からの洗浄水とともに領域3−1に放出する構成を有する。この構成によって、カソード水のケン化作用による油分洗浄効果を第1気液接触室2−1及び第2気液接触室2−2の両方において利用可能となり、第1気液接触室2−1のメンテナンスにおける洗浄処理の簡便化を図る際に好適に利用できる。
【0088】
この浄化装置における第1気液接触室2−1では、以下の作用が複合的に生じていると考えられる。
(I)実施例4の浄化装置と同様の第1気液接触室2−1におけるアノード水による油滴等の被処理空気からの分離。
(II)第2気液接触室2−2からのカソード水による第1気液接触室2−1での油滴などの油煙成分の溶解による被処理空気からの分離。
(III)第1気液接触室2−1での第2気液接触室2−2からのカソード水とアノード水との混合液での油滴等の被処理空気からの分離。
(IV)第2気液接触室2−2からのカソード水による第1気液接触室2−1での壁面や、必要に応じて配置された充填材の洗浄。
【0089】
本実施例にかかる浄化装置では、第2気液接触室2−2で油滴溶解に使用されなかった分のカソード水や、油分が溶解していても油滴溶解機能を維持しているカソード水を第1気液接触室2−1における油滴溶解にも利用でき、カソード水の利用効率を高めることができる。また、第1気液接触室2−1と第2気液接触室2−2の両方からの油分を含む洗浄水は貯留槽の第1の領域3−1内に統合されて流入し油層14を形成する。この油層14は連続除去可能であり、貯留槽からの油分の除去効率を高くして浄化処理を行うことができる。更に、第2気液接触室からのカソード水のケン化作用による第1気液接触室2−1の壁面や、必要に応じて配置される充填材の洗浄効果も期待でき、メンテナンス時における装置内壁面や充填材の洗浄が容易となる。
【0090】
本実施例における第1気液接触室2−1の洗浄には、実施例4におけるように貯留槽中の洗浄水の水位を上昇させる方法が利用できる。また、第1気液接触室2−1内の汚れの状況によっては、第1気液接触室2−1にアノード水を供給せずに、第2気液接触室を経由して電気分解槽4からカソード水を供給する洗浄方法を採用することもできる。
【0091】
この浄化装置においても、実施例4の浄化装置と同様に、第1気液接触室2−1では、充填材を用いないか、あるいは比較的単純な構造(洗浄しやすい)の充填材を充填することが好ましい。更に、第2気液接触室2−2でも、気液接触を良好とする形状、例えば表面凹凸構造などの複雑な形状を有する充填材を用いることができ、更に、油分の充填材への吸着量も少ないので、メンテナンス時における充填材の洗浄も容易となる。
【0092】
本実施例においても第1気液接触室2−1にはカソード水に代えて、上水(水道水や井戸水)などの電解水以外の水を洗浄水として供給してもよい。その際、アノード水は図2及び図3に示す装置と同様に、貯留槽内に戻す構成とすることができる。
(実施例6)
図7に、図1(B)に示す交差接触型の気液接触室を設けた構成を有する浄化装置の一例を示す。この浄化装置における気液接触室2以外の構成は図2(A)で示した浄化装置と同じである。
(実施例7)
図8(A)及び(B)に、図1(B)に示す交差接触型の気液接触室を利用した多段式の浄化装置の一例を示す。この浄化装置における気液接触室以外の構成は図4(A)及び(B)で示した浄化装置と同じである。
(実施例8)
図9に、図1(E)に示す並流型の気液接触室を利用した多段式の浄化装置の一例を示す。この浄化装置における気液接触室以外の構成は図4(A)及び(B)で示した浄化装置と同じである。
【符号の説明】
【0093】
1 筺体
2 気液接触室
2−1 第1気液接触室
2−2 第2気液接触室
3 貯留槽
3−1 第一領域
3−2 第二領域
4 電気分解槽
5 ポンプ
6−1、6−2 バルブ
7、8 配管
9 取入れ口
10 洗浄水放出手段
11 送風機
12 排気口
13 油相抜き出しライン
14 油層
15 傾斜板
16 調湿機構
17 エリミネータ
18 給水ライン
19 排水ライン
20 仕切り壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の取入れ口と、
空気を洗浄水と接触させる気液接触室と、
前記気液接触室からの空気を排出する排気出口と、
水を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の水を電気分解処理して電解水としてのカソード水を得る電気分解槽と、
前記電気分解槽で生じたカソード水をアノード水と分離して洗浄水として前記気液接触室に供給する電解水供給手段と、
を有し、
前記気液接触室と前記貯留槽とが、前記気液接触室からの洗浄水を前記貯留槽に導入可能に接続されている
ことを特徴とする空気を浄化するための浄化装置。
【請求項2】
前記電解水供給手段が、前記気液接触室中の空気の流れ方向に対して洗浄液の流れ方向を向流とする洗浄水放出手段を有する請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記電解水供給手段が、前記気液接触室中の空気の流れ方向に対して洗浄液の流れ方向を交差流とする洗浄水放出手段を有する請求項1に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記電解水供給手段が、前記気液接触室中の空気の流れ方向に対して洗浄液の流れ方向を並流とする洗浄水放出手段を有する請求項1に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記洗浄水の放出手段が、洗浄水を上方へ放出する放出口を有する請求項2〜4のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項6】
前記貯留槽の上方に前記気液接触室を設け、前記気液接触室からの洗浄水を前記貯留槽内に落下可能とした請求項1から5のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項7】
前記電気分解槽がアノード水も供給可能な構成を有し、アノード水を前記貯留槽に戻す循環系を更に有する請求項1から6のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項8】
前記吸気口から前記気液接触室を経て前記排気口へ達する気流を形成する気流形成手段をさらに有する請求項1から7のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項9】
空気の取入れ口と、
空気を洗浄水と接触させる気液接触室と、
前記気液接触室からの空気を排出する排気出口と、
水を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の水を電気分解処理して電解水を得る電気分解槽と、
前記電気分解槽で生じた電解水を洗浄水として前記気液接触室に供給する電解水供給手段と、を有し、
前記気液接触室と前記貯留槽とが、前記気液接触室からの洗浄水を前記貯留槽に導入可能に接続されている空気を浄化するための浄化装置であって、
前記気液接触室が多段式であり、前記電解水のうちのカソード水が供給される段を少なくとも1段有することを特徴とする空気を浄化するための浄化装置。
【請求項10】
電解水以外の洗浄水またはアノード水が供給される段を有する請求項9に記載の浄化装置。
【請求項11】
空気の流れの方向において、電解水以外の洗浄水またはアノード水が供給される段とカソード水が供給される段がこの順に直列配置された構成を有する請求項10に記載の浄化装置。
【請求項12】
前記多段式の気液接触室が二段式である請求項9から11のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項13】
前記電解水供給手段が、前記気液接触室の少なくとも1段において、空気の流れ方向に対して洗浄液の流れ方向を向流とする洗浄水放出手段を有する請求項9から12のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項14】
前記電解水供給手段が、前記気液接触室の少なくとも1段において、空気の流れ方向に対して洗浄液の流れ方向を並流とする洗浄水放出手段を有する請求項9から13のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項15】
前記電解水供給手段が、前記気液接触室の少なくとも1段において、空気の流れ方向に対して洗浄液の流れ方向を交差流とする洗浄水放出手段を有する請求項9から14のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項16】
前記洗浄水の放出手段が、洗浄水を上方へ放出する放出口を有する請求項13〜15のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項17】
前記気液接触室の少なくとも一段を前記貯留槽の上方に設け、該少なくとも一段からの洗浄水を前記貯留槽内に落下可能とした請求項9から16のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項18】
前記吸気口から前記気液接触室を経て前記排気口へ達する気流を形成する気流形成手段をさらに有する請求項9〜17のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項19】
前記気液接触室から排出される空気から液体を分離するエリミネータを更に有する請求項1から18のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項20】
前記エリミネータを通過した空気を調湿する調室機を更に有する請求項19に記載の浄化装置。
【請求項21】
前記貯留槽に紫外線照射を行う紫外線照射手段を有する請求項1から20のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項22】
油煙を含む空気の浄化用である請求項1から21のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項23】
前記貯留槽に洗浄水の表面に油層が形成された場合に該油層を排出するための油層排出系が設けられている請求項22のいずれかに記載の浄化装置。
【請求項24】
前記貯留槽に油分離手段が設けられている請求項23に記載の浄化装置。
【請求項25】
前記油分離手段が傾斜板である請求項24に記載の浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−104531(P2011−104531A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263025(P2009−263025)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】