説明

空気入りタイヤ及びその製造方法

【課題】吸音材とタイヤとの間に発生するせん断変形の心配なしに、タイヤの内部で共鳴の原因となる騒音エネルギーを分散させるか、発生周波数を変更させることにより、タイヤ内部の騒音を低減できる空気入りタイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による空気入りタイヤは、インナーライナの内側面にシーラント層により貼り付けられた多孔質吸音材を含み、シーラント層は、ブチルゴム100重量部に対してポリイソブチレン100〜400重量部、無機添加剤10〜100重量部、及び加硫剤1〜15重量部を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及びその製造方法に関するものであって、より詳細には、騒音低減用吸音材とタイヤとの間に発生するせん断変形の心配なしに、タイヤの内部で共鳴の原因となる騒音エネルギーを分散させるか、発生周波数を変更させることにより、タイヤ内部の騒音を低減できる空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ内部の共鳴音はタイヤ内部で発生する騒音であって、最近、車両及びタイヤメーカーにとってこの騒音に対する関心が高まっている。このような騒音は、空気を注入したタイヤにおいて、荒い路面の走行時に不規則な路面形状によりタイヤ内部の圧力が変化することが一要因となって車両の経路により伝えられ、車の室内で鋭いピークを有する音を発生するから、運転者に不快感を与えて乗り心地を悪化させる。車両に装着されるタイヤの規格が低扁平化及びインチアップ化されることにより、このようなタイヤ内部の共鳴騒音はさらに主要問題として浮び上がっている。
【0003】
このようなタイヤ内部の共鳴騒音を低減するために、従来、様々な騒音低減用タイヤが提案されてきた。具体的に、特許文献1はタイヤの内部面に吸音性能を有する特殊スポンジを装着する方法を開示しており、特許文献2はタイヤ内部やホイールのリムに環状体を設置して内部空間を変形させるか、またはホイールの表面に毛皮などを付着してタイヤ内部の共鳴による騒音を低減させる技術を開示している。
【0004】
他の方式として、特許文献3はタイヤ内部に40〜100mmの球形吸音材を固定しないまま内蔵することにより、タイヤの共鳴騒音を低減する技術を開示している。前記方法は、乗用車用タイヤ規格に有効であり、発熱防止のために接着を行わないが、タイヤ内部に固定しないまま回転する場合、球形体の形状変形やアンバランス問題などが発生する虞がある。
【0005】
さらに特許文献4は、タイヤの円周方向長さの1/4または1/8のサイズを有する吸音材をタイヤの内部インナーライナの外面に貼り付けてタイヤの騒音を低減する方法を開示している。この場合、吸音材を2回以上貼り付けなければならないという煩わしさがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開第2006−125502号(2006年12月6日)
【特許文献2】韓国特許公開第2005−102110号(2005年10月25日)
【特許文献3】日本特許公開第2002−240507号(2002年8月28日)
【特許文献4】韓国特許公開第2009−18418号(2009年2月20日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、騒音低減用吸音材とタイヤとの間に発生するせん断変形の心配なしに、タイヤ内部で共鳴の原因となる騒音エネルギーを分散させるか、発生周波数を変更させてタイヤ内部の騒音を低減できる空気入りタイヤを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記空気入りタイヤを簡単な工程で製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例による空気入りタイヤは、インナーライナの内側面にシーラント層により貼り付けられた多孔質吸音材を含み、前記シーラント層は、ブチルゴム100重量部に対してポリイソブチレン100〜400重量部、カーボンブラック10〜100重量部、及び加硫剤1〜15重量部を含む。
【0010】
前記ポリイソブチレンは、1000〜3000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0011】
前記無機添加剤は、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、及びこれらの混合物からなる群から選択されることができる。
【0012】
前記シーラント層は1〜5mmの厚さを有することができる。
【0013】
前記シーラント層と多孔質吸音材の厚さ比は1:1〜1:3であり得る。
【0014】
前記多孔質吸音材は、スポンジ、ポリエステル系不織布、及びこれらの積層体からなる群から選択されることができる。
【0015】
本発明の他の一実施例によるタイヤの製造方法は、多孔質吸音材、シーラント層、及び離型紙が順次積層された騒音低減用吸音部材を製造する段階と、前記騒音低減用吸音部材から離型紙を除去した後、タイヤのインナーライナの内側面に対してシーラント層が対面するようにして吸音部材をインナーライナの内側面に貼り付ける段階と、を含み、前記シーラント層はブチルゴム100重量部に対してポリイソブチレン100〜400重量部、無機添加剤10〜100重量部、及び加硫剤1〜15重量部を含む。
【0016】
前記騒音低減用吸音部材は、ブチルゴム、ポリイソブチレン、無機添加剤、及び加硫剤を混合してシーラント形成用組成物を製造する段階と、前記シーラント形成用組成物を多孔質吸音材の一面に塗布してシーラント層を形成する段階と、前記シーラント層上に離型紙をラミネートする段階と、を含む製造方法により製造されることができる。
【0017】
前記シーラント層は、シーラント形成用組成物を140〜180℃の温度で架橋反応させて製造されることができる。
【0018】
前記離型紙は、ポリエチレンやシリコン離型剤がコーティングされた紙またはポリエステルフィルムであり得る。
【0019】
その他、本発明の実施例の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の空気入りタイヤは、インナーライナの内側面にシーラント層により貼り付けられた多孔質吸音材を含むことにより、車両用タイヤ内部の共鳴及び振動による騒音を効果的に低減させることができる。
【0021】
また、本発明の空気入りタイヤは、ブチルゴムをベースとした組成に加硫して架橋されたシーラントを含むことにより、高温でも粘度の変化があまり発生せず、タイヤの回転時に発生する遠心力によるシーラントの偏りや広がりが発生しない。また、タイヤの走行を十分に耐えるように強い接着性及び温度安定性を有する。
【0022】
また、本発明の空気入りタイヤは、最適化された厚さのシーラント層を含むことにより、タイヤと吸音材との間のせん断変形に対する緩衝作用に優れ、クギまたは突起などの外部刺激によるパンクに対して自己縫合が行われる。
【0023】
また、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、騒音低減多孔質吸音材、シーラント層、及び離型紙が順次積層されて形成された騒音低減用吸音部材を用いることにより、多孔質吸音材を備えた空気入りタイヤを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例による空気入りタイヤの側断面図である。
【図2】本発明の他の一実施例による空気入りタイヤの製造時に用いられる騒音低減用吸音部材の構造を概略的に示す構造図である。
【図3】試験例1で、実施例により製造されたタイヤの共鳴騒音防止効果を観察した結果を示すグラフである。
【図4a】試験例2で、実施例により製造されたタイヤに対する突起物通過(Cleat impact)試験時のタイヤ内の垂直力を観察した結果を示すグラフである。
【図4b】試験例2で、実施例により製造されたタイヤに対する突起物通過試験時のタイヤ内の接線力(tangential force)を観察した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例に対して添付した図面を参考として詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例及び図面に限定されることはない。
【0026】
通常、タイヤ内部に騒音低減用吸音材を装着する場合、過酸化物系の接着剤、揮発性接着剤などを用いて接着及び固定している。しかし、前記過酸化物系の接着剤または揮発性接着剤は、タイヤの走行時に発生する接着部位の屈伸または発生熱により容易に脱着される場合が頻繁に発生した。
【0027】
これに対して本発明者らは、トレッド部、サイドウォール部、ビード部、及びインナーライナなどからなる空気入りタイヤにおいて、タイヤのインナーライナの内側面に接着性が非常に強いシーラントを用いて騒音低減用吸音材を貼り付けることにより、車両用タイヤ内部の共鳴及び振動による騒音を効果的に低減させると共に騒音低減用吸音材とタイヤとの間に発生するせん断変形などを緩衝できることを見出して本発明を完成した。
【0028】
図1は、本発明の一実施例による空気入りタイヤの側断面図である。図1を参照すると、本発明による空気入りタイヤ1は、インナーライナの内側面にシーラント層2により貼り付けられた多孔質吸音材3を含む。
【0029】
前記多孔質吸音材3は、タイヤの内部空間で発生する共鳴騒音を低減するためのもので、多孔性部材からなり、接着性が非常に強いシーラント層2により強固に接着されている。
【0030】
前記多孔質吸音材3は、吸音材として用いられる通常の多孔性部材を使用してもよい。具体的には、スポンジ、ポリエステル系不織布、ポリスチレン系不織布、及びこれらの積層体からなる群から選択される何れか1つを使用することができる。
【0031】
前記吸音材は、1〜15mmの厚さを有し、タイヤトレッド部の幅に対して100〜120%の幅を有することが好ましい。
【0032】
前記シーラント層2は、ブチルゴム、ポリイソブチレン、無機添加剤、及び加硫剤を含み、選択的にその他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0033】
前記ポリイソブチレンは、1000〜3000g/molの重量平均分子量を有することがよい。
【0034】
また、前記ポリイソブチレンは、ブチルゴム100重量部に対して100〜400重量部含むことができる。ポリイソブチレンの含量が100重量部未満であれば、温度安定性が低下する問題があり、400重量部を超えると、シーラントの接着及び緩衝効果が低下する問題がある。具体的には、シーラントの接着及び緩衝効果を高めるためには、ブチルゴム100重量部に対して前記ポリイソブチレンを100〜400重量部使用することが好ましく、温度安定性を共に高めるためには、前記ポリイソブチレンを200〜300重量部使用することが好ましい。
【0035】
前記無機添加剤は、シーラントの発熱量を調節するためのもので、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、及びこれらの混合物からなる群から選択されることができる。この時、前記無機添加剤は、ブチルゴム100重量部に対して10〜100重量部を含むことができ、好ましくは30〜50重量部である。
【0036】
また、前記加硫剤は、シーラントの架橋を助けるもので、ブチルゴム100重量部に対して1〜15重量部を含むことができ、好ましくは5〜10重量部である。
【0037】
前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウムなどの金属酸化物を使用することができる。前記硫黄系加硫剤は、粉末硫黄(S)、不溶性硫黄(S)、沈降硫黄(S)、コロイド(colloid)硫黄などの無機加硫剤を使用することができる。
【0038】
前記シーラント層において、前記ブチルゴム、ポリイソブチレン、無機添加剤、及び加硫剤が前記含量範囲から外れる場合、多孔質吸音材が貼り付けられないか、タイヤの走行時にシーラント層が流れてしまう虞がある。
【0039】
それ以外に、前記シーラント層は、架橋促進剤、加硫促進調剤、接着剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されるその他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0040】
架橋促進のための架橋促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサントゲン酸系、及びこれらの組合せからなる群から選択される何れか1つを使用することができる。この時、前記架橋促進剤は、ブチルゴム100重量部に対して0〜10重量部を含むことができ、好ましくは3〜5重量部である。
【0041】
前記加硫促進調剤は、前記加硫促進剤と併用してその促進効果を助けるために用いられる配合剤であって、酸化亜鉛と共にステアリン酸を使用することができる。前記酸化亜鉛と共に前記ステアリン酸を使用する場合、適切な加硫促進調剤の役割をするために、前記ブチルゴム100重量部に対してそれぞれ1〜5重量部及び0.5〜3重量部を使用することができる。
【0042】
また、シーラントの接着力を向上させるための接着剤には、フェノール系レジン、ロジン(rosin)系樹脂、またはテルペン(terpene)系樹脂のような天然樹脂系と石油樹脂、コールタール(coal
tar)またはアルキルフェノール系樹脂などの合成樹脂系を使用することができる。この時、接着剤はブチルゴム100重量部に対して0〜10重量部を含むことができ、好ましくは3〜5重量部である。
【0043】
前記組成を有するシーラント層2は、ブチルゴムをベースとした組成に加硫して架橋されることにより、高温でも粘度の変化があまり発生せず、タイヤの回転時に発生する遠心力によるシーラントの偏りや広がりが発生することがない。また、タイヤの走行を十分に耐えるように強い接着性及び温度安定性を有する。
【0044】
前記シーラント層2は、1〜5mmの厚さを有し、吸音材の貼り付け特性及びタイヤと吸音材との間のせん断変形に対する緩衝作用に優れ、5mm以下のクギまたは突起によるパンクに対して自己縫合が行われる。
【0045】
また、前記シーラント層2と吸音材3の厚さ比は1:1〜1:3であり得る。前記シーラント層2と吸音材3の厚さ比が前記範囲内であれば、タイヤが苛酷条件で駆動されてもシーラント層2と吸音材3の分離を防止することができる。
【0046】
また、前記シーラント層2の幅は、吸音材3と同じ幅であって、タイヤトレッド部の幅に対して100〜120%であることが好ましい。
【0047】
前記構成を有する本発明による空気入りタイヤは、多孔質吸音材、シーラント層、及び離型紙が順次積層された騒音低減用吸音部材を用いて製造される。
【0048】
すなわち、本発明の他の一実施例による空気入りタイヤの製造方法は、多孔質吸音材、シーラント層、及び離型紙が順次積層された騒音低減用吸音部材を製造する段階と、前記騒音低減用吸音部材から離型紙を除去した後、タイヤのインナーライナの内側面に対してシーラント層が対面するようにして騒音低減用吸音部材をインナーライナの内側面に貼り付ける段階と、を含む。タイヤの製造方法において、吸音部材を貼り付ける前の段階は、従来、タイヤの製造に用いられる方法であれば何れも適用可能であるため、本明細書で詳細な説明は省略する。
【0049】
図2は、本発明の他の一実施例による空気入りタイヤの製造時に用いられる騒音低減用吸音部材の構造を概略的に示す構造図である。図2を参照すると、前記騒音低減用吸音部材は多孔質吸音材3、シーラント層2、及び離型紙4が順次積層されており、ブチルゴム、ポリイソブチレン、無機添加剤、及び加硫剤を混合してシーラント形成用組成物を製造する段階と、前記シーラント形成用組成物を多孔質吸音材の一面に塗布してシーラント層を形成する段階と、前記シーラント層上に離型紙をラミネートする段階と、を含む製造方法により製造される。
【0050】
前記シーラント形成用組成物を構成するブチルゴム、ポリイソブチレン、無機添加剤、及び加硫剤の種類と含量は上述した通りであり、必要に応じてその他の添加剤をさらに含んでもよい。前記その他の添加剤の種類及び含量も上述した通りである。
【0051】
ブチルゴム、ポリイソブチレン、無機添加剤、加硫剤、及び選択的にその他の添加剤を混合してシーラント形成用組成物を製造した後、多孔質吸音材の一面に、最終的に製造されるシーラント層の厚さが1〜5mmとなるようにシーラント形成用組成物を塗布し、140〜180℃の高温で架橋反応を行う。
【0052】
次に、架橋反応により製造されたシーラント層上に離型紙をラミネートする。前記離型紙は、シーラントと接触する面にポリエチレンやシリコンなどの離型剤がコーティングされた紙またはポリエステルフィルムであって、騒音低減用吸音部材をタイヤに貼り付ける直前にシーラントから除去される。
【0053】
このように本発明による製造方法は、前記構造の吸音部材を用いることにより離型紙を剥離して除去すると共に、完成したタイヤの内部に位置するインナーライナの内壁に対してシーラント層を貼り付けることにより騒音低減用多孔質吸音材を備えた空気入りタイヤを容易に製造することができる。
【0054】
本発明による空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、競走用タイヤ、飛行機タイヤ、農機械用タイヤ、オフロード(off−the−road)タイヤ、トラックタイヤまたはバスタイヤなどにすることができ、好ましくは乗用車用タイヤとして使用することができる。また、前記タイヤは、ラジアル(radial)タイヤまたはバイアス(bias)タイヤであり、ラジアルタイヤであることが好ましい。
【0055】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な形態で実現でき、ここで説明する実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0056】
[製造例:騒音低減用吸音部材の製造]
(実施例1から3)
下記表1のような組成で各成分を混合してシーラント形成用組成物を製造した後、厚さ8mmの多孔質吸音材(発泡ウレタン)の一面に塗布し、170℃の高温で架橋反応を実施して厚さ4mmのシーラント層を形成した。形成されたシーラント層に対して前記シーラント層と同一面積の離型紙をラミネートした。
【0057】
前記製造された騒音低減用吸音部材から離型紙を剥離した後、図1に示すように、235/45R17規格タイヤ(ハンコックタイヤ社製)の内部インナーライナの内側面に対してシーラント層が対面するようにして騒音低減用吸音部材を貼り付けてタイヤを製造した。
【0058】
(比較例1)
シーラント形成用組成物及び多孔質吸音材を含んでいない235/45R17規格タイヤを比較例1にした。
【0059】
(比較例2)
ポリブテンとテルペン樹脂を主成分とする粘着性流動液を使用することを除いては実施例1と同様に実施してシーラント層を形成した。
【0060】
(比較例3及び4)
下記表1と同じ組成で前記実施例1と同様に実施してシーラント形成用組成物を製造した。
【0061】
【表1】

【0062】
[試験例1:速度増加による騒音低減有無の評価]
前記実施例により製造されたタイヤを正規のリムに装着し、正規の空気入り条件のテスト装備(シャーシダイナモメータ)を用いて速度増加による騒音低減があるか否かを観察し、その結果を図3に示す。
【0063】
図3を参照すると、本発明による実施例のタイヤは、低速走行から高速走行まで比較例2と同等水準の効果を示した反面、比較例1に比しては約5dB以上の騒音低減の効果があった。
【0064】
[試験例2:速度増加による騒音低減有無の評価]
前記実施例により製造されたタイヤに対して突起物通過(Cleat impact)試験を実施した。前記突起物通過試験は、突起物通過(Cleat
impact)試験装備を用いて測定し、一定間隔で突起物を通過しながらタイヤ内部の共鳴音を測定した。
【0065】
本発明によるタイヤの効果を比較するために、一般タイヤ及びシーラントタイヤを比較例1及び2としてそれぞれ使用し、結果は図4a及び図4bに示す。
【0066】
図4a及び図4bを参照すると、突起物通過(Cleat impact)の試験結果、比較例1及び2のタイヤは、騒音を増幅させるタイヤの1次共鳴周波数帯域(200〜300Hz)で共鳴音ピークが測定された反面、本発明による実施例のタイヤは、共鳴音が消えた。それだけでなく、実施例のタイヤから発生する騒音は、比較例1及び2に比べて騒音周波数が低く、音圧が低かった。この結果から、本発明による実施例のタイヤは騒音が小さく、音圧が低いことが分かる。
【0067】
さらに、走行が完了した後、吸音材の貼り付け状態及びシーラントの貼り付け状態を目視観察した。観察結果、本発明による実施例のタイヤは、吸音材及びシーラントが両方とも良好に貼り付けられていることを確認できた。
【0068】
[試験例3:走行による振動発生有無の評価]
前記実施例1から3及び比較例2のタイヤについて振動発生の有無を評価し、その結果を比較例2の結果を基準として指数化し、下記表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
前記表2を参照すると、実施例1から3では振動が発生しなかったが、比較例2は振動が発生することが分かる。比較例2の場合、シーラント層がタイヤゴム層を含んでいないことによって流動性を有するため、タイヤの高速走行によりシーラントが流動してタイヤ幅方向の中央区域に集中するか、トレッドが接地面側で繰り返し変形されることにより、偏在してタイヤのユニフォミティが悪化した。
【0071】
[試験例4:シーラント層の接着及び緩衝効果の測定]
実施例1から3と比較例3及び4のタイヤに対して接着性能及び緩衝効果を測定し、その結果を比較例3を基準として指数化し、下記表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
前記表3を参照すると、実施例1から3が比較例3及び4よりも接着性能及び緩衝性能に優れたことが分かる。比較例3及び4の場合、多孔質吸音材がシーラント層から剥離されたことが確認でき、これはポリイソブチレンの含量がブチルゴム100重量部に対して100〜400重量部の範囲から外れたからである。
【0074】
[試験例5:苛酷条件でのシーラント層の接着及び緩衝効果の測定]
一方、シーラント形成用組成物をそれぞれ厚さ2mm、4mm、12mm、及び16mmの多孔質吸音材の一面に塗布し、厚さ4mmのシーラント層を形成したことを除いては、実施例1と同様に実施して実施例4から7のタイヤを製造した。
【0075】
前記実施例1及び実施例4から7のタイヤを苛酷条件でシーラント層の接着性能を測定し、その結果を実施例4を基準として指数化し、下記表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
前記表4を参照すると、実施例1、5及び6は、苛酷条件でも接着性能が低下しなかったが、実施例4及び7は苛酷条件では接着性能が低下することを確認した。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施例に対して詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されることはなく、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0079】
1 タイヤ
2 シーラント層
3 吸音材層
4 離型紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナの内側面にシーラント層により貼り付けられた多孔質吸音材を含み、
前記シーラント層は、ブチルゴム100重量部に対してポリイソブチレン100〜400重量部、無機添加剤10〜100重量部、及び加硫剤1〜15重量部を含むことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ポリイソブチレンは、1000〜3000g/molの重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記無機添加剤は、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記シーラント層は1〜5mmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記シーラント層と多孔質吸音材の厚さ比は1:1〜1:3であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記多孔質吸音材は、スポンジ、ポリエステル不織布、及びこれらの積層体からなる群から選択される何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
多孔質吸音材、シーラント層、及び離型紙が順次積層された騒音低減用吸音部材を製造する段階と、
前記騒音低減用吸音部材から離型紙を除去した後、タイヤのインナーライナの内側面に対してシーラント層が対面するようにして吸音部材をインナーライナの内側面に貼り付ける段階と、を含み、
前記シーラント層はブチルゴム100重量部に対してポリイソブチレン100〜400重量部、無機添加剤10〜100重量部、及び加硫剤1〜15重量部を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記騒音低減用吸音部材は、
ブチルゴム、ポリイソブチレン、無機添加剤、及び加硫剤を混合してシーラント形成用組成物を製造する段階と、
前記シーラント形成用組成物を多孔質吸音材の一面に塗布してシーラント層を形成する段階と、
前記シーラント層上に離型紙をラミネートする段階と、を含む製造方法により製造されることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記シーラント層は、シーラント形成用組成物を140〜180℃の温度で架橋反応させて製造されることを特徴とする請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記離型紙は、ポリエチレンやシリコン離型剤がコーティングされた紙またはポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項8に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2013−43643(P2013−43643A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185475(P2012−185475)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(502365519)ハンコック タイヤ カンパニー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】