説明

空気吹出融雪・乾燥システム

【課題】 路面上に降る雪を平均的に融かし、その融雪水を速やかに路面から排水処理することにより融雪効果を高め、簡素な構成でありながら住宅や地下鉄等で生じる都市型排熱や未利用熱を再利用してイニシャルコストだけでなくランニングコストも安価に抑えることができ、しかも省エネルギー効率の向上、二酸化炭素の排出量の抑制による環境負荷の低減を図ることができる空気吹出融雪・乾燥システムを提供する。
【解決手段】 路面下に埋設される中空部21を備えた中空構造体2と、この中空構造体2の上部に設けられて路面を構成し、前記中空部21から路面上に至るまでに曲がりくねり、かつ、分岐を繰り返して連通された分岐状空隙網31が形成された蓄熱路面材3と、前記中空構造体2の中空部21内に0℃以上の空気を圧入する空気圧入手段4とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面上の雪を融雪したり、路面を乾燥させる技術に関し、特に、空気を路面から直接吹き出させて融雪や雨等の乾燥を行う空気吹出融雪・乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅の周辺や道路上に降り積もる雪を融かすための技術としては以下の方法が存在する。
1.路盤中に温水パイプや電熱ヒータを敷設して路盤を暖め熱伝導により融雪する。
2.路面に散水したり、上から空気を吹きかけて融雪する。
3.融雪剤を散布して融雪する。
【0003】
ロードヒーティング設備は、大別すると灯油式と電気式とに分けられ、灯油式では、路面の下に温水パイプを張り巡らせ、この温水パイプ内に灯油ボイラによって暖めた温水や不凍液をポンプで循環させるようになっている。また、電気式では、路面の下に電熱ヒータを配線し、この電熱ヒータに通電して発熱させるようになっている。そして、これらのロードヒーティング設備によれば、路面下で発生させられた熱が路面上まで熱伝導して路面温度を上昇させるため、積もった雪を融かすようになっている。
【0004】
しかしながら、上述した従来のロードヒーティング設備については、温水パイプや電熱ヒータを埋設する工事にかかるイニシャルコストや、設備を駆動するための灯油代や電気代等のランニングコストが高いという問題がある。また、燃料の灯油を燃焼する場合や発電所における発電を行う場合には二酸化炭素が発生してしまうので世界的な問題となっている地球温暖化を抑制する観点からも好ましくない。
【0005】
また、路面を走行する大型トラック等の重量に耐えかねて温水パイプや電熱ヒータの一部が断線したり破損してしまうと、一連の温水パイプや電熱ヒータをすべて交換しなければならず、修理作業および修理コストの負担が大きい。また、温水パイプや電熱ヒータに使用する配線や配管は、一度撤去してしまうと再使用することができないという問題もある。さらに、散水する融雪方法については、地下水を汲み上げることが多いが水位の低下に伴う地盤沈下が懸念されるため、自粛を求められている状況にある。また、散水した水が適切に排水されないことがあり、路面が氷結する恐れもあり、効果的とはいえない。さらに、融雪剤による融雪方法は、散布作業が煩わしい上、天気が悪いと融雪効果はあまり期待できない。
【0006】
一方、特開2005−36426号公報には、空気を熱媒体として融雪する無水融雪装置が提案されている(特許文献1)。この無水融雪装置は、路面を構成する敷設体の裏面に凹条が形成されており、この凹条が、温風もしくは熱風が導入される通路に設定されている。これにより、凹条に導入された温風もしくは熱風の熱が敷設体に伝達されるため、路面の融雪ができるとされている。
【0007】
また、特開平11−286904号公報には、道路等を構成する不透水基層の表面に、多孔空隙部を有する透水表層を積層し、この透水表層の下部に多数の送風パイプを敷設し、この送風パイプから前記多孔空隙部に向けて加圧流体(温風・温水)を噴射することで路面の雪を融かし、融雪水を側溝に排水する方法が提案されている(特許文献2)。
【0008】
さらに、特開平1−295904号公報には、道路の下部に埋設される融排雪槽と、この融排雪槽の上部に設けられ、通気性および透水性を確保するため融排雪槽内と外部とを直線状に形成された通孔で連通している透過体と、融排雪槽に熱風を供給する熱風給気装置とを備えた融排雪装置が提案されている(特許文献3)。これにより、透過板上に降る雪は通孔から吹き出す熱風により融雪され、その融排雪水は透過体を通して融雪槽内に透過し、排水されるとしている。
【0009】
【特許文献1】特開2005−36426号公報
【特許文献2】特開平11−286904号公報
【特許文献3】特開平1−295904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明については、ボイラーやヒートポンプ等の熱源を使用して空気を加熱するため、上記のように、ランニングコストや地球温暖化の観点からも好ましくない。さらに、上記特許文献1に記載された発明を含め、従来の融雪技術においては、路面下の熱を路面材を通して路面まで熱伝導させるため、熱損失が大きく、効率が悪いという問題もある。
【0011】
また、上記特許文献2に記載された発明についても欠点が存在する。大きな欠点は融雪水の排水処理方法にある。つまり、特許文献2では、融雪水は不透水基層の傾斜表面を伝って側溝へと排水する仕組みなので、不透水基層の傾斜表面に融雪水が溜まって途中で氷結してしまうおそれがある。また、当該融雪水は排水の途中で送風パイプに沿って流れるため、加圧温風の熱エネルギーが直接的に奪われて融雪効率が悪くなり、しかも送風パイプを劣化させるという問題がある。さらに、排水処理の悪さから透水表層が目詰まりしやすいという問題もある。
【0012】
さらに、上記特許文献3に記載された発明については、通孔が直線状であるため熱風が抜け易く、融排雪槽内に内圧がかかり難い。このため、通孔と熱風給気装置の送風口との位置関係により、熱風の吹き出す部分が1箇所に集中し融雪ムラを生じさせてしまうという問題がある。また、内圧の低い箇所では、外気が融排雪槽内に逆流してしまう恐れもある。さらに、通孔は所定間隔を隔てて設けられているため、通孔の周囲だけが融雪され各通孔の中間部に融け残りが生じるおそれもある。仮に通孔の数を増やしても、多くの送風量が必要となり、ランニングコストが増えるため好ましくない。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、路面上に降る雪を平均的に融かし、その融雪水を速やかに路面から排水処理することにより融雪効果を高め、簡素な構成でありながら住宅や地下鉄等で生じる都市型排熱や未利用熱を再利用してイニシャルコストだけでなくランニングコストも安価に抑えることができ、しかも省エネルギー効率の向上、二酸化炭素の排出量の抑制による環境負荷の低減を図ることができる空気吹出融雪・乾燥システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの特徴は、路面下に埋設される中空部を備えた中空構造体と、この中空構造体の上部に設けられて路面を構成し、前記中空部から路面上に至るまでに曲がりくねり、かつ、分岐を繰り返して連通された分岐状空隙網が形成された蓄熱路面材と、前記中空構造体の中空部内に0℃以上の空気を圧入する空気圧入手段とを有している点にある。
【0015】
また、本発明において、前記分岐状空隙網は、路面上の融雪水を浸透させつつ、中空部内に圧入された空気を路面上へ継続的に吹き出させうる空隙率に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、路面から吹き出す空気とこの空気の通過による路面材の保温効果によって路面上の雪を平均的に融かし、その融雪水を速やかに路面から排水処理することにより融雪効果を高め、簡素な構成でありながら住宅や地下鉄等で生じる都市型排熱や未利用熱を再利用してイニシャルコストだけでなくランニングコストも安価に抑えることができ、しかも省エネルギー効率の向上、二酸化炭素の排出量の抑制による環境負荷の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は本第1実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Aの構造体を示す斜視図、図2は本第1実施形態の平面図、図3は図2の3X−3X線断面図、図4は図2の4X−4X線断面図である。
【0018】
図1ないし4に示すように、本第1実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Aは、主に、中空部21を備えた中空構造体2と、この中空構造体2の上部に設けられた蓄熱路面材3と、前記中空構造体2の中空部21内に空気を圧入する空気圧入手段4と、中空部21内に設けられる空気拡散部材5とを有している。そして、建物や地下鉄等からの都市型排熱や地熱等の未利用熱を熱源として温められた空気を空気圧入手段4により中空部21内に圧入し、その圧力によって空気を蓄熱路面材3の上方へ吹き出させるようになっている。
【0019】
以下、各構成部についてより詳細に説明する。中空構造体2は、ポリプロピレンをはじめとする強化樹脂や鋼製等の強化材から形成されており、網目状の天板22および底板23と、これら天板22および底板23を所定の間隔を隔てて略平行状態に支持する複数本の支柱24とから構成されている。このような構成を備えた中空構造体2の天板22および底板23の間には、空気が自在に流動可能な中空部21が形成されている。また、天板22および底板23は、その網目を通して空気や融雪水等を流通しうるようになっている。なお、本第1実施形態では、鋼製や強化樹脂から構成される中空構造体2を使用しているが、用途に応じた荷重に耐え得る構造であれば他の材料を使用してもよい。
【0020】
蓄熱路面材3は、その内部に中空部21から路面上に至るまでに曲がりくねり、かつ、分岐を繰り返して連通されている分岐状空隙網31を張り巡らせるように形成されている。分岐状空隙網31を構成する手段は特に限定されないが、例えば、所定の粒度を有する粗骨材34を型に入れてブロック状に接着固定することにより形成される。本第1実施形態では、ポーラスコンクリートブロックを使用している。
【0021】
分岐状空隙網31は、中空部21に導入された空気を適度に分岐させることによって空気の流通に抵抗を与え、流通経路を一カ所に集中させないようにし、路面の全体から空気が漏れ出るように吹き出させるものである。また、分岐状空隙網31は、路面上で溶けた融雪水を網目状の空隙内に浸透させることで速やかに路面から融雪水を除去する役割をも果たすものである。さらに、分岐状空隙網31は、空隙が網目状、多孔質状に形成されているため、建物や地下鉄等からの都市型排熱や地熱等の未利用熱を熱源として温められた空気を多量に貯留することができ、蓄熱路面材3を0℃以上に保持する役割をも果たす。
【0022】
分岐状空隙網31の構造は、図5に示すように、曲がりくねった多数の流通路32,32と、これら流通路32,32同士を連接して空気や融雪水の流動を分岐させる分岐部33とから構成されている。流通路32,32を曲がりくねらせることにより距離を長く確保できるため、温められた空気を保持する空間を十分に確保できるとともに、空気と流通路32,32内側面との摩擦による流動抵抗を大きく,長くとることができる。また、分岐部33は、空気および融雪水が蓄熱路面材3を流通する際の選択経路を増やすようにするため、複数の流通路32,32が連接されている。これにより、上方に排出される空気と下方に侵入する融雪水とのぶつかり合いを極力避けることができ、両作用を同時に機能させることが可能となる。また、分岐状空隙網31に浸透した融雪水は、直ちに中空部21まで落下するのではなく、分岐状空隙網31内にしばらく止まるため、下方から吹き上げられる空気によって乾燥させることも可能である。
【0023】
また、分岐状空隙網31による流動抵抗は、空気圧入手段4により中空部21に圧入された空気が、中空部21内で所定の内圧に達したときに路面上に吹き出るように流通路32,32の数や分岐数、曲折の程度が調整されている。そして、前記分岐状空隙網31の空隙率は、路面上の融雪水を浸透させつつ、中空部21内に圧入された空気を路面上へ継続的に吹き出させうる程度に設けられている。
【0024】
なお、流通路32,32は融雪水が浸透可能な断面形状に形成されていればよい。本第1実施形態では、流通路32,32の断面形状が流通方向に対して狭くなったり,広くなったり不均一であるが、均一形状にしてもよい。ただし、不均一な場合はそれを原因とする流動抵抗が発生するため、流通路32,32内に浸水可能な範囲で形成する必要がある。
【0025】
また、粗骨材34は、用途に応じた適切な分岐状空隙網31を形成できればよく、コンクリートや砂利、砕石、ゴム、ポリプロピレン等の各種の素材を使用することが可能であり、建築廃材を使用してもよい。また、蓄熱路面材3は、粗骨材34を使用せずに、樹脂材料などを使用して内部に分岐状空隙網31を形成するようにしてもよい。
【0026】
空気圧入手段4は、中空構造体2の中空部21内に空気を圧入して若干内圧をかけるためのものであり、中空部21に連結される送風管41Aと、中空部21内の圧力を高める送風機42とから構成されている。本第1実施形態において、送風管41Aは地中に埋設されており、図2から図4に示すように、その排気口43は中空構造体2の略中心位置で上方に突出されている。また、送風管41Aは、建物や地下鉄、地下街等から排出される空気、地熱により熱交換された空気、あるいは下水道管渠内の空気等を導入するように配管されている。
【0027】
送風機42は、モータ等を駆動源とする送風ファン(図示せず)を有しており、送風管41Aの経路中に配置されている。本第1実施形態において、送風機42は、そのモータの回転量を制御可能に構成されており、この回転量を増減することにより中空部21内に圧入する空気の空気量を調整しうるようになっている。
【0028】
なお、各種の排熱温度を測定したところ、建物からの排気は約20℃前後の温度を保持しており、地下鉄や地下街、下水道管渠からの排気は約15℃前後の温度を保持している。したがって、空気圧入手段4によって中空部21内に圧入される空気は、都市型排熱や未利用熱を熱源としていながらも、分岐状空隙網31から吹き出された時点で0℃以上を保持するようになっている。
【0029】
また、本第1実施形態の送風管41Aは、その排気口43が上方に突出されているため、蓄熱路面材3および天板22を透過した融雪水や雨水が送風管41A内に浸入し、送風量を低減させたり、送風管41Aを錆び付かせてしまうおそれがある。そこで、本第1実施形態では、図3および図4に示すように、排気口43に傘状の浸水防止用傘部材6が設けられている。この浸水防止用傘部材6は、排気口43を被覆しうる大きさに形成されており透過水の侵入を防止するとともに、排気口43との間に隙間を形成して空気が噴出できるように設けられている。
【0030】
空気拡散部材5は、中空部21内に圧入された空気の流れを変えて拡散させる役割を果たすものである。具体的には、空気拡散部材5は、略円柱状に形成されており、図3および図4に示すように、中空部21内の所定位置に複数本立設されている。本第1実施形態において、空気拡散部材5は、送風管41Aの排気口43の位置に関して対称位置となるように配設されており、中空部21内に圧入された空気をより均一かつ満遍なく拡散させ、中空部21内に温度ムラなどができるのを抑制している。
【0031】
なお、本第1実施形態では、図2および図3に示すように、中空構造体2の下方に排水管7が設けられており、蓄熱路面材3を浸透し、中空部21まで滴下した融雪水や雨水を回収して図示しない排水路に排出、または地下浸透しうるようになっている。なお、排水管7にはU字管71を設けられており、排水管7から空気が漏れることによる中空部21内の圧力低下を抑えている。
【0032】
以上の構成において、本第1実施形態では、蓄熱路面材3の表面全体にわたってほぼ均等に融雪可能な量の空気を吹き出させると同時に、この吹き出した空気によって融解された融雪水を分岐状空隙網31に浸透させられるように、蓄熱路面材3の空隙率と、空気圧入手段4によって中空部21内に圧入される空気量とを適宜調整している。融雪するために吹き出させる空気量と、速やかに下方へ滴下させる融雪水の量とは、最も効果的に融雪処理ができる割合が好ましく、その割合は7:3程度が好ましい。
【0033】
例えば、空隙率の大きい蓄熱路面材3を使用する場合、圧入する空気量が少ないと、中空部21内全体に行き渡る前に、排気口43近傍の分岐状空隙網31から空気が抜けきってしまい、空気がほとんど吹き出ないデッドスペースが形成される。また、空隙率が大きいほど蓄熱路面材3の強度が低下するため、トラック等の大型車輌が通過する道路等には不向きであり、使用可能な場所が制限されてしまう。
【0034】
一方、空隙率が小さいほど蓄熱路面材3の強度は向上するが、空気を漏れ出させる範囲が限定されてしまうため、融雪や路面を乾燥させるのに十分な吹き出し量を確保できない。また、空隙率が小さいほど融雪水が浸透しにくく、中空部21へ排出されるまでの時間が長くなるため、吹き出す空気の熱エネルギーが奪われやすい。したがって、本第1実施形態では、導入する場所に必要な強度を考慮しつつ速やかに漏れ吹き出す空気の量を確保し、かつ、融雪水を浸透させる程度の空隙率を決定し、当該空隙率に対して、融雪・乾燥に必要な空気量の空気を略均等に吹き出させるように送風機42の回転量を制御している。
【0035】
つぎに、本第1実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Aによる作用について説明する。
【0036】
本第1実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Aによって、蓄熱路面材3上の雪を溶かす場合、あるいは濡れた路面を乾燥させる場合、そのような融雪・乾燥処理をさせたいエリアに中空構造体2および蓄熱路面材3を設置するとともに、空気圧入手段4としての送風管41Aを埋設する。したがって、融雪・乾燥処理をさせたいエリア全面に温水パイプや電熱ヒータを埋設しなければならない従来のロードヒーティング設備等と比較して、イニシャルコストが安価であるし、地下工事等により、空気吹出融雪・乾燥システム1Aを一旦撤去したとしても、再度設置してすぐに使用できるというメリットがある。
【0037】
そして、空気吹出融雪・乾燥システム1Aを設置した後、空気圧入手段4によって空気を中空構造体2の中空部21内へと圧入する。具体的には、送風機42を所定の回転数によって駆動することにより、建物等から排出された空気を送風管41A内に誘導し、排気口43から空気流として排出させる。
【0038】
ここで、本第1実施形態では、建物から排出される空気を直接取り込んでいるが、これに限られるものではなく、都市型排熱や未利用熱を熱源として暖められた空気であれば、地下鉄や地下街からの排気あるいは下水道管渠内の空気でもよく、地熱を利用して熱交換した空気を取り入れるようにしてもよい。これにより、ランニングコストは送風機42の電気代だけで済むし、このシステムを稼働させるために、新たな二酸化炭素を排出することがない。
【0039】
つづいて、排気口43から排出された空気は、浸水防止用傘部材6に当接しながら中空部21内へと拡散される。このとき、蓄熱路面材3は、分岐状空隙網31の流通抵抗によって適度に空気を抜けにくくするため、排気口43近傍だけで空気を排出させてしまうことがなく、中空部21全体に空気が行き渡る。また、供給された空気は、空気拡散部材5によって分散され、流れの方向を変えながら中空部21内で均一かつ満遍なく拡散され温度ムラの発生を抑えている。
【0040】
そして、中空部21内の圧力が所定の圧力以上になると、圧入された空気は、分岐状空隙網31内を中空部21から路面上に至るまでの間に繰り返し分岐されながら路面上へ漏れる出すようにして排出される。なお、融雪水の浸透等により一つの流通路32,32が塞がれても、その空気は分岐状空隙網31の他の経路を通ることにより路面上に吹き出ることができる。このため、蓄熱路面材3上では、全面で均等に融雪されやすくよって融雪ムラが発生しにくい。なお、吹き出す空気が強くできれば、詰まったごみ等を吹き飛ばして目詰まりを解消することも可能である。
【0041】
また、空気が保有する熱は、蓄熱路面材3中を熱伝導し、主として、分岐状空隙網31内を通って直接路面まで運ばれるため熱損失が小さい。また、蓄熱路面材3は、分岐状空隙網31に空気を貯留して蓄熱しうるため、路面近傍をよりよく融雪しやすい状況を作り出している。しかも中空部21に対して外気の影響を受けにくくし、路面が凍り付くのを抑えている。さらに、蓄熱路面材3は、分岐状空隙網31によって中空部21内の圧力を均一に保つため、空気が外部から中空部21内に流れ込むような逆流も起きにくい。なお、本第1実施形態では、約20℃前後で排出される建物からの排気を使用しているため、分岐状空隙網31から吹き出される空気は、0℃以上を保持している。
【0042】
したがって、0℃以上の空気は、蓄熱路面材3上に降り積もった雪や、降下してくる雪に直接接触し、融雪を促進する。また、発生した融雪水や雨水は、蓄熱路面材3の分岐状空隙網31を速やかに浸透して蓄熱路面材3内あるいは中空部21内へと回収されるため、路面上に長時間滞留せずに空気の吹き出しを妨害することを回避しうる。また、融雪水や雨水は、蓄熱路面材3内で乾燥除去されたり、中空部21を経て排水管7から排出されたり、底板23の隙間から地下に浸透されるため、融雪水が路面近傍で滞留することなく、残留水による融雪効率の低下が防止できる。もちろん吹き出し空気の熱エネルギーを奪ってしまうことも防止できる。仮に、分岐状空隙網31の流通路32,32の一部で浸水した融雪水により空気の流れが妨げられたとしても、分岐部33から他の経路に移行して流れていくため、空気の吹き出しを停止してしまうことがなく、融雪水を浸水させつつ空気の吹き出しを継続させて効果的に融雪可能である。さらに、空気が路面上に空気流を発生させるため濡れた路面を乾燥させる作用もある。また、本第1実施形態では、浸水防止用傘部材6が、蓄熱路面材3を浸透した融雪水や雨水をブロックし、送風管41A内に浸入するのを防止するようになっている。
【0043】
以上のような本第1実施形態によれば、
1.蓄熱路面材3の全面から空気が漏れ出るようにして均等に吹き出すため、路面上の雪が全体的に融けて、融雪ムラを抑制することができる。
2.都市型排熱や未利用熱を有効に再利用するため、環境に優しく、低コストで設置および運転することができる。
3.下方から直接、空気を雪に吹き付けて接触させるため、雪が融けやすく、接地前に溶けるものも存在し除排雪労働を軽減することができる。
4.融雪水を分岐状空隙網31内へ速やかに浸透させて路上に滞留させないため、融雪効率を格段に向上させられる。
5.分岐状空隙網31内や中空部21に0℃以上の空気が保持されるため、蓄熱効果が高まり、より融雪し易い。
6.融雪水を速やかに分岐状空隙網31内に浸透させて、かつ、継続的に空気を吹き出させることができる。
7.吹き出し空気によってゴミ等を吹き飛ばすことも可能であるため目詰まりがしにくい。
8.濡れた路面の凍結を防ぎ、かつ、効果的に乾燥させることができ、スリップ事故や滑り転倒事故を防止することができる等の効果を奏する。
【0044】
つぎに、本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第2実施形態について図面を用いて説明する。
【0045】
図6から図8は、それぞれ本第2実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Bを示す平面図、図6の7X−7X線断面図および8X−8X線断面図である。なお、本第2実施形態のうち、前述した第1実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0046】
本第2実施形態の特徴は、第1実施形態と比較して、送風管41Bの配置構成を簡略化した点にある。具体的には、図7に示すように、略水平に埋設した送風管41Bの排気口43を中空構造体2の一端部に接続するように構成されている。
【0047】
ただし、第1実施形態と比較して、排気口43が中空部21内の偏った位置に設けられるため、空気を均一に拡散させられないおそれがある。したがって、例えば、空気拡散部材5の数を増やしたり、蓄熱路面材3について、分岐状空隙網31から空気が吹き出すのに必要な所定の圧力を高くなるように形成してもよい。また、排気口43の近傍の空隙率を低く、排気口43から離隔するほど空隙率を高くなる構成にしてもよい。これにより、蓄熱路面材3の全体からほぼ均等に空気を吹き出させることができる。
【0048】
以上のような本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、構造が簡略化されるとともに、送風管41Bの距離が短縮化されるため、イニシャルコストをより一層低減することができる。
【0049】
つぎに、本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第3実施形態について図面を用いて説明する。
【0050】
図9から図11は、それぞれ本第3実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Cを示す平面図、図9の10X−10X線断面図および11X−11X線断面図である。なお、本第3実施形態のうち、前述した各実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0051】
本第3実施形態の特徴は、中空構造体2として水を浸透可能な浸透層8と、この浸透層8内に有孔管44Cを埋設した構造を採用した点にある。有孔管44Cは、塩化ビニル樹脂やコンクリート等によって円筒状および矩形状に形成されており、その長手方向に沿って複数の貫通孔44aが均等に穿孔されている。そして、図9から図11に示すように、融雪・乾燥処理をさせたいエリアをカバーするように、3本の有孔管44Cを略水平方向に並列配置し、これら各有孔管44Cの略中央部に送風管41Cを接続させている。送風管41Cは、図11に示すように、鉛直上方および斜め上方の3方向に延出され有孔管44Cに接続されている。
【0052】
また、浸透層8は融雪水を速やかに排水する機能を備えており、例えば砂利等から構成されて有孔管44Cを埋設するように層状に敷設されている。そして、この浸透層8の上に蓄熱路面材3を敷設することで融雪・乾燥機能を備えた路面構造が形成されている。なお、本第3実施形態では、浸透層8を砂利から構成しているが、これに限られるものではなく、融雪水を下方に浸透可能であって、その上部に蓄熱路面材3を支持しうるものであればよい。
【0053】
この構成により、浸透層8内部の空間が、上述した第1,2実施形態における中空部21と同様な作用効果を奏するようになっている。このため、送風管41Cから有孔管44Cへと導入された空気は、貫通孔44aから噴出された後、砂利中の隙間に拡散されて浸透層8内に蓄熱し、蓄熱路面材3の分岐状空隙網31から吹き出すようになっている。また、吹き出した空気によって融解された融雪水は、蓄熱路面材3を浸透した後、速やかに浸透層8内へと浸透して排水管7に排水されたり、地下浸透するようになっている。
【0054】
以上のような本第3実施形態によれば、浸透層8が中空部21に相当する役割を果たし、本第1実施形態とほぼ同様の作用効果を奏することができる。また、路面が砂利道でもよい場合には、浸透層8を蓄熱路面材3として兼用することにより、別途、蓄熱路面材3を敷設することなく簡単に本第3実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Cを構築することができる。
【0055】
つぎに、本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第4実施形態について図面を用いて説明する。
【0056】
図12から図14は、それぞれ本第4実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Dを示す平面図、図12の13X−13X線断面図および14X−14X線断面図である。なお、本第4実施形態のうち、前述した各実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0057】
本第4実施形態の特徴は、第3実施形態と比較して、有孔管44Dおよび送風管41Dの配置構成を簡略化した点にある。具体的には、図12および図13に示すように、融雪・乾燥処理をしたいエリアをカバーするように、3本の有孔管44Dが略水平方向に並列配置されており、各有孔管44Dと連結されるように送風管41Dが三方向に分岐形成されている。
【0058】
以上のような本第4実施形態によれば、第3実施形態の効果に加えて、構造が簡略化されるとともに、送風管41Dの距離が短縮化されるため、イニシャルコストをより一層低減することができる。
【0059】
つぎに、本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの実施例について説明する。
【実施例1】
【0060】
本実施例1では、上述した第2実施形態の空気吹出融雪・乾燥システム1Bを構築し、実際に融雪・乾燥処理を行わせる実験を行った。本実験は、北海道立工業試験場の協力を得て2006年の1月から2月にかけて行われたものである。
【0061】
中空構造体2としては、図15に示すように、複数本の支柱24により天板22と底板23とを所定の間隔を隔てて中空部21を構成した鋼製の中空構造体2を使用した。また、蓄熱路面材3としては、図16に示すように、空隙率約25%のポーラスコンクリート板を複数枚用意した。そして、これら複数のポーラスコンクリート板を図17に示すように、中空構造体2の天板22上に隙間を形成することなく敷き詰め、図18に示す空気吹出融雪・乾燥システム1Bを構築した。
【0062】
そして、ポーラスコンクリート板の空隙から均等に空気を吹き出させるため、送風管41Bおよび送風機42により、230m/hの送風量で中空構造体2の中空部21内に空気を圧入した。このとき、空気が吹き出す様子を可視化するため、空気にスモークを混入させたところ、図19に示すように、敷設された蓄熱路面材3の略全面から空気が一律に吹き出していることが視認された。
【0063】
以上のような空気吹出融雪・乾燥システム1Bを用いて行われた融雪・乾燥実験の状況を図20から図25に示す。なお、本実験中の外気温は最低で−9℃を記録していた。図20に示すように、29日の16時頃に降り始めた雪は、22時頃まで降り続き、図21に示すように、蓄熱路面材3上には約4cmの雪が降り積もった。なお、実際には、約9cmの降雪量があったが、蓄熱路面材3の上方では、降下途中の雪に対しても空気流が接して溶かしてしまうため、実際に溶けずに蓄熱路面材3上に積もる雪は少ない。
【0064】
つぎに、雪が降り止んでから約8時間後の30日6時頃には、図22に示すように、蓄熱路面材3の半分が露出する程度にまで融雪が進んでいた。また、この状態から約5時間後の11時頃には、図23に示すように、蓄熱路面材3の表面積の約8割が露出する程度にまで融雪されていた。そして、さらに約5時間後の16時頃には、図24に示すように、降り積もった雪のほとんどが消失しており、蓄熱路面材3の表面は乾燥状態となっていた。
【0065】
なお、図25は、本実験により溶かされた雪の断面写真である。図25に示すように、蓄熱路面材3から吹き出す空気が直接接触する部分の雪は、シャーベット状に融けており、融雪効果が視認された。また、融雪により発生したはずの融雪水は視認されず、蓄熱路面材3を透過して効果的に路面を乾燥させていることが確認された。
【0066】
以上のように、本実施例1によれば、本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムが融雪・乾燥効果を顕著に奏することが実証された。
【実施例2】
【0067】
本実施例2では、既存のロードヒーティング設備にかかるエネルギー消費量と、本発明の空気吹出融雪・乾燥システムにかかるエネルギー消費量とを実際に算出して比較した。
【0068】
まず既存のロードヒーティング設備のエネルギー消費量について、「2000 空気調和・衛生工学第74巻第9号P15−20」に基づき算出したところ、戸建住宅において1シーズン使用する場合にかかる灯油消費量は、1334L(全体の69%)であり、電気消費量は9232kW(全体の31%)である。したがって、これらを加重平均して原油消費量に換算すると、1134×0.9607×0.69+9232×0.0942×0.31=1.153kL/戸となる。
【0069】
一方、本空気吹出融雪・乾燥システムを運転するのに必要なエネルギーは、送風機42にかかる電気量だけである。したがって、0.3kW/hの送風機42を3ヶ月間(2160時間)使用した場合の消費電力量を原油消費量に換算すると、0.3×2160×0.0942=0.061kL/戸となる。
【0070】
したがって、1戸当たりのエネルギー消費量の差が1.092kL/戸であるから、本空気吹出融雪・乾燥システムによれば、既存のロードヒーティング設備と比較して、エネルギー消費量が約95%も削減されることが示された。
【0071】
なお、本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0072】
例えば、上述した第1,2実施形態では、中空構造体2と蓄熱路面材3とを別体のものとしているが、これに限られるものではなく、中空部21を有し、上部に分岐状空隙網31を備えているものであれば一体に形成されていてもよい。
【0073】
また、上述した第3,4実施形態では、3本の有孔管44C,44Dを使用しているが、これに限られるものではなく、適宜本数を増やすことにより、蓄熱路面材3から吹き出す空気をより均等に吹き出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第1実施形態における構造体を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第1実施形態を示す平面図である。
【図3】図2の3X−3X線断面図である。
【図4】図2の4X−4X線断面図である。
【図5】第1実施形態における蓄熱路面材の断面図である。
【図6】本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第2実施形態を示す平面図である。
【図7】図6の7X−7X線断面図である。
【図8】図6の8X−8X線断面図である。
【図9】本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第3実施形態を示す平面図である。
【図10】図9の10X−10X線断面図である。
【図11】図9の11X−11X線断面図である。
【図12】本発明に係る空気吹出融雪・乾燥システムの第4実施形態を示す平面図である。
【図13】図14の13X−13X線断面図である。
【図14】図14の14X−14X線断面図である。
【図15】本実施例において使用した中空構造体を側面から撮影したデジタル写真画像である。
【図16】本実施例において使用した有孔表面材の表面を近接撮影したデジタル写真画像である。
【図17】本実施例において、中空構造体上に有孔表面材を敷設する様子を撮影したデジタル写真画像である。
【図18】本実施例における空気吹出融雪・乾燥システムの外観を撮影したデジタル写真画像である。
【図19】本実施例において、空気が吹き出す様子を可視化した状態を示すデジタル写真画像である。
【図20】本実施例における融雪・乾燥実験の状況を示すデジタル写真画像である。
【図21】本実施例における融雪・乾燥実験の状況を示すデジタル写真画像である。
【図22】本実施例における融雪・乾燥実験の状況を示すデジタル写真画像である。
【図23】本実施例における融雪・乾燥実験の状況を示すデジタル写真画像である。
【図24】本実施例における融雪・乾燥実験の状況を示すデジタル写真画像である。
【図25】本実施例において、融雪された雪の断面を示すデジタル写真画像である。
【符号の説明】
【0075】
1A,1B,1C,1D 空気吹出融雪・乾燥システム
2 中空構造体
3 蓄熱路面材
4 空気圧入手段
5 空気拡散部材
6 浸水防止用傘部材
7 排水管
8 浸透層
21 中空部
22 天板
23 底板
24 支柱
31 分岐状空隙網
32 流通路
33 分岐部
34 粗骨材
41A,41B,41C,41D 送風管
42 送風機
43 排気口
44C,44D 有孔管
44a 貫通孔
71 U字管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面下に埋設される中空部を備えた中空構造体と、
この中空構造体の上部に設けられて路面を構成し、前記中空部から路面上に至るまでに曲がりくねり、かつ、分岐を繰り返して連通された分岐状空隙網が形成された蓄熱路面材と、
前記中空構造体の中空部内に0℃以上の空気を圧入する空気圧入手段と
を有していることを特徴とする空気吹出融雪・乾燥システム。
【請求項2】
請求項1において、前記分岐状空隙網は、路面上の融雪水を浸透させつつ、中空部内に圧入された空気を路面上へ継続的に吹き出させうる空隙率に形成されていることを特徴とする空気吹出融雪・乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−57317(P2008−57317A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202422(P2007−202422)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(501094971)株式会社ホクスイ設計コンサル (5)
【Fターム(参考)】