説明

空気孔を備えた回路基板

【解決手段】回路基板が、第1及び第2のグラウンド層、ならびにグラウンド層間に延在するが、それらに電気的に接触しない、複数の信号ビアを含む。第1及び第2のグラウンド層に結合されるグラウンドビアは、信号ビアに隣接して配置することができ、隣接するグラウンドビア間に延在するグラウンドトレースを含み得る。空気孔は、回路基板の電気性能を改善するために信号ビア及び/または隣接する信号ビア間に配置することができる。グラウンドウイングは、コモンモード及び/または差動モードインピーダンスの調整を補助するため使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年11月18日に出願された米国特許仮出願番号第61/262,147号の優先権を主張し、その全体が参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高速データ通信が可能なコネクタの分野に関し、より詳細には、高速データ通信が可能なコネクタの使用に適したプリント回路基板の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
高速データ通信でのデータの伝達に適したコネクタは、しばしばプリント回路基板上に搭載される。回路基板上にコネクタを搭載する1つの一般的な方法は、多くの場合、圧入または孔を介したはんだづけにより(または場合によっては、はんだ圧入により)、回路基板のビアで固定された端子の使用による。データ通信速度が上昇するにつれ、通信システムは、スプリアス信号への抵抗がより高い傾向があるため、次第に、差動信号カップリングを使用し始める。
【0004】
差動カップリングされた信号線の使用に起因する1つの問題は、相対的に高密度なコネクタ(平方インチ毎に多数の端子を有するコネクタ)の必要性である。これら高密度なコネクタは、12Gbps 以上のような高速データ通信を提供するため、入念な設計を必要とする。これは、特定の構成において信号端子およびグラウンド端子をコネクタ内に配置する設計となる傾向がある。コネクタ内の端子の構成を制御することが可能である一方、端子が回路基板に結合されているため、この制御を維持することは、より困難となる。これは、一つには回路基板が差動誘電率を有する傾向があるためと、一つには密にめっきされた貫通孔が互いに配置される方法の限界に因り、コネクタに存在する端子間隔が、コネクタ/回路基板インターフェースで維持されることが物理的に不可能であり得るといった理由による。従って、データ通信速度が上昇するにつれ、コネクタと対応する回路基板間のインターフェースは、所望の方法にて制御することがより難しくなる。そのため、ある個人は改善された回路基板設計を高く評価するであろう。
【発明の概要】
【0005】
第1及び第2グラウンド基面を備えた回路基板を提供する。第1及び第2グラウンド基面に間隙が具備され、ビアをめっきした第1及び第2信号を間隙に配置する。第1及び第2ビアは、差動信号ペアとして作動するように構成され得る。信号ビアは、共有ビア設計を提供するように、回路基板を介して、延在し得る。複数のグラウンドビアは、第1及び第2ビアに隣接して配置され、グラウンドビアは、第1及び第2グラウンド基面に互いにカップリングする。2つ以上のグラウンドビアは、グラウンドトレースと互いにカップリングされ得る。1つまたは複数のグラウンドビアは、グラウンドウイングを有し得る。所望であれば、第1のめっきされていない空気孔が第1及び第2ビアに隣接して、回路基板に具備され、一実施形態において、実質的に第1及び第2ビアの間に配置され得る。さらなる空気孔が、信号ビアと1つまたは複数のグラウンドビアとの間に具備され得る。第1空気孔は、第1及び第2ビア間のカップリングを調整するように構成される。さらなる空気孔は、使用される場合、1つまたは両方の信号ビアと1つまたは複数のグラウンドビア間のカップリングを調整するように構成され得る。
【0006】
実施例を用いて本発明を図解するが、同様の構成要素を同じ参照番号で示した添付図面に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】回路基板の実施形態を図解する斜視図である。
【図2】図1に描く回路基板を、絶縁部を除去して図解する斜視図である。
【図3】図2に描く実施形態の線3−3に沿った断面を図解する斜視図である。
【図4】ビア様式の実施形態を図解する平面図である。
【図5】ビア様式の別の実施形態を図解する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、詳細な説明は、例示的な実施形態を記載するが、明確に開示される組み合わせに限定することを目的としない。従って、特に断りのない限り、簡略にするために示されていないさらなる組み合わせを形成するために、本明細書に開示される特徴を互いに組み合わせてもよい。
【0009】
添付図面に描かれる様々な特徴を説明する前に、全ての特徴が全ての回路基板構造構成に望ましいとは限らないことに注意すべきである。例えば、回路基板設計の1つの目標は、回路基板における電気性能を、コネクタにおける電気性能と適合させることを補助することである。理解され得るように、回路基板と対応するコネクタ間の電気性能(例えば、コモンモードインピーダンス)における適合を改善することは、挿入損失の最小化に役立つ。さらに、図面に描かれるある特徴は、差動カップリングされるビア間の遮蔽を改善することを可能にする(すなわち、回路基板の差動ビアペア間のクロストークが実質的に減少することを可能にする)。加えて、グラウンドウイング(後述)の使用は、差動ビアペア間の差動カップリングを調節することを補助することができる(従って、差動モードインピーダンスとコモンモードインピーダンスの調整を可能にする)。補助となる特定の特徴の選択は、主に、所望のシステム性能に基づくであろう。
【0010】
本明細書で説明する特徴は、信号周波数が高く、ピンフィールドの密度も高い場での利用に最も適していることに注意すべきである。特に、信号周波数が約6GHzであり、密度が40信号ペア/リニアインチより高い(ビア単体で見た場合)のは、描写した構造及び設計がより有益であると決定されている場である。加えて、描写した構造により提供される改善は、低い信号周波数の時と同等には有効でないであろう。
【0011】
図1〜図5は、第1グラウンド層10、第2グラウンド層11、及び絶縁部12を含む回路基板の様々な実施形態で使用することができる特徴を図解する。理解され得るように、2つのグラウンド基面と絶縁部は、回路基板に第1及び第2側面を具備する。作動中、絶縁部は、2つのグラウンド基面間に延在する絶縁部を効果的に提供する、いくつかの層として提供され得る。さらに、2つのグラウンド基面が示されているが、さらなるグラウンド基面も提供され得(各グラウンド基面を、対応する絶縁部によって、別のグラウンド基面から隔たれ)、さらなる複合回路基板を提供する。一般的に、各さらなるグラウンド基面は、グラウンド基面10、11を添付の図面で描写した方法と同様の方法で、構成し得る。
【0012】
2つのグラウンド基面10、11を電気的に結合するのは、複数のグラウンドビア32である。理解され得るように、グラウンドビア32は、信号ビア22、24の周囲に所望の様式で配置でき、2つのグラウンド基面10、11間に延在する。いくつかのグラウンドビア32は、他のグラウンドビアから絶縁し、2つのグラウンド基面10、11間に延在し得る。また、絶縁層12内の所定の位置に配置され得る1つまたは複数のグラウンドトレース35を介して、2つ以上のグラウンドビア32を互いにカップリングすることもできる。グラウンドトレース35は、頻繁に配置される場合、柵のような遮蔽を具備し得、グラウンドトレース35により形成される柵の反対側に配置される信号端子間のクロストークの減少を補助することができる。または、別の言い方をすれば、2つのグラウンドビア間に具備されるグラウンドトレースを、2つのグラウンドビアの第1側面と2つのグラウンドビアの第2側面間の効果的な遮蔽を提供するように構成することができる。理解され得るように、グラウンドビア間のグラウンドトレースの周期的な使用は、孤立した2つのグラウンドビアで可能なものより、大きな遮蔽を可能にする。例えば、図1〜3に示すように、3つのグラウンドビアを第1差動信号ペア及び第2差動信号ペア間の領域に配置し、3つのグラウンドビア間に複数のグラウンドトレースが延在する。理解され得るように、特定の利用には、グラウンドビア間に延在するグラウンドトレースを用いて、2つのグラウンドビアだけを使用することが適している。
【0013】
信号ビア22、24が信号を回路基板の2つの側面間で伝達することを可能にするために、信号ビア22、24の周囲のグラウンド基面10、11に間隙14がある。従来、信号ビア22、24間の領域は、絶縁部で満たされていた。図5から理解され得るように、一実施形態において、グラウンド基面は、グラウンド基面が線39(第1ビア22と第2ビア24間に延在する領域のエッジを画定する)を超えて延在できるように、グラウンドウイング37を含み、このようにして、ビア間に延在する領域をグラウンド基面がない状態から防ぐ。これが、コモンモードインピーダンスと差動モードインピーダンス間のよりよい割合の確保に役立つことは有益であり、さらなる遮蔽の提供にも役立つことが分かっている。グラウンドビア間に延在するグラウンドトレース35のように、複数のグラウンドウイングが第1及び第2グラウンド基面間に配置できることに注意すべきである。
【0014】
描写のように、第1空気孔44’は、第1及び第2信号ビア22、24間に配置され、それが第1及び第2信号ビア22、24間の差動カップリングを改善するため、作動する。空気孔44’の大きさは、第1及び第2信号ビア間の所望のカップリングを提供するため、必要性に応じて構成され得る。理解され得るように、空気孔は、めっきされておらず、めっきビアに関連する比率限界が適用されないため、通常のめっきビアよりも小さく作成できる。一実施形態において、空気孔は、直径約0.4〜0.6mmの大きさであるが、空気孔の大きさは、当然に、第1及び第2信号ビア間ならびに/または信号ビア及び1つもしくは複数のグラウンドビア間の所望のカップリングを提供するように変化し得る。
【0015】
描写のように、さらなる空気孔44は、空気孔44’と同一の大きさでもよく、または他の大きさであってもよく、グラウンドビア32と信号ビア22、24間に配置され得る。空気孔44は、信号ビア22、24の1つまたは両方とグラウンドビア32の間のカップリングの制御を補助でき、その結果、2つの側面間の全体の通信経路が適切となり、コネクタ設計に適合する。所望の結果を提供するのに有益な空気孔の位置及び数は、システムの必要性に応じて当然変わり、そのため、ある実施形態においては、1つまたは2つの空気孔で充足し得る。第1及び第2信号ビア22、24間に空気孔44’を含むことは、ある回路基板構成、特にデータ通信速度が12Gbps以上に上昇したものに有利であることが分かっている。
【0016】
本明細書に含まれる本開示は、その好ましい実施形態および例示的な実施形態に関して特徴を記載する。当業者は、本開示を検討すると、添付の特許請求の範囲と精神に含まれる他の多くの実施形態、改良、及び変形を、思い付くことができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1グラウンド基面と、
第2グラウンド基面と、
前記第1及び第2グラウンド基面間に具備される絶縁部と、
前記第1及び第2グラウンド基面間に延在する第1及び第2信号ビアであって、該第1及び第2信号ビアが、差動信号ペアを具備するように構成され、前記第1及び第2信号ビアが、前記第1及び第2グラウンド基面から絶縁され、前記第1及び第2信号ビア間に延在する領域を有する、第1及び第2信号ビアと、
該第1及び第2信号ビア間に延在する前記領域に配置される空気孔と、
を備える、回路基板。
【請求項2】
前記空気孔が第1直径を有し、前記信号ビアが前記第1直径より大きな第2直径を有する、請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記空気孔が、第1空気孔であり、第2空気孔が、前記第1及び第2信号ビア間に延在する前記領域に配置されず、前記第1及び第2信号ビアの1つに隣接して配置される、請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記第1及び第2グラウンド基面間に延在する第1グラウンドビアをさらに含み、
該第1グラウンドビアが前記第1及び第2グラウンド基面と電気的に結合し、
前記第2空気孔が、前記第1グラウンドビアと前記第1及び第2信号ビアの1つとの間に延在する第2領域に少なくとも部分的に配置される、請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
第1グラウンド基面と、
第2グラウンド基面と、
前記第1及び第2グラウンド基面間に具備される絶縁部と、
前記第1及び第2グラウンド基面間に延在する第1及び第2差動ビアペアであって、該第1及び第2差動ビアペアの各々が、差動信号伝達チャネルを提供するように構成され、前記第1及び第2信号ビアが、前記第1及び第2グラウンド基面から絶縁され、前記第1及び第2差動ビアペア間に延在する領域を有する、第1及び第2差動ビアペアと、
前記領域に配置される2つのグラウンドビアであって、該グラウンドビアが、前記第1及び第2グラウンド基面に電気的に結合され、前記2つのグラウンドビア間に延在する複数のグラウンドトレースをさらに含み、該複数のグラウンドトレースが、前記第1及び第2グラウンド間に配置される、2つのグラウンドビアと、
を備える、回路基板。
【請求項6】
第3グラウンドビアが、前記2つのグラウンドビアのうちの1つに隣接して配置され、複数のグラウンドトレースが前記第3グラウンドビアと前記2つのグラウンドビアのうちの対応する1つとの間に延在する、請求項5に記載の回路基板。
【請求項7】
前記3つのグラウンドビアが直線上にある、請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
前記3つのグラウンドビアが、2つの末端グラウンドビア及び1つの中間グラウンドビアを含み、グラウンドウイングが、前記第1差動ビアペアを形成する信号ビア間の領域に延在するように、前記中間グラウンドビアから延在する、請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
前記グラウンドウイングが、第1の方向に延在する第1グラウンドウイングであり、第2グラウンドウイングが、第2の方向に前記中間グラウンドビアから延在する、請求項8に記載の回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−511849(P2013−511849A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540053(P2012−540053)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057205
【国際公開番号】WO2011/063105
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】