説明

空気浄化用重合体組成物及び該重合体組成物を用いたフィルター

【課題】過酸化物(peroxide)または超酸化物(superoxide)及びシリコーン(silicone)、すなわちオルガノポリシロキサン(organopolysiloxane)を含む空気浄化用重合体組成物、及びこれを用いたフィルターを提供する。
【解決手段】本発明で使用するシリコーン(silicone)は、非常に高いガス透過度を持つ物質であり、空気浄化剤として用いられる過酸化物または超酸化物と共に使用されると、有害ガスを吸収する速度が非常に速く、かつ、水に触れても安定するため、非常に優れた特性を示す高分子空気浄化剤組成物を構成する。特に、本発明による安定化剤を含有する空気浄化用重合体組成物は、非常に安定しているため、高温でも自然発火を起こすことがなく、したがって、通常のコゴム加工工程を通じて多種多様な形状のフィルターを製造可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化用組成物に関し、さらに詳細には、有害ガスを除去し、酸素を発生させる過酸化物(peroxide)または超酸化物(superoxide)及びシリコーン樹脂を含む空気浄化用重合体組成物、及び該重合体組成物を用いて製造されたフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気清浄系に使用されるフィルターは、空気で運ばれるホコリ粒子を除去するために用いられる。この目的のために、現在、高効率粒子状空気(high efficiency particulate air:HEPA)フィルターとして知られるフィルターが用いられる。HEPAフィルターはホコリ粒子の除去に非常に有効である。特に、家ダニ(house dust mites)、ウイルス、かび、0.3μm以上のサイズの粒子などについて99%以上の除去効率を有するHEPAフィルターが空気清浄系における使用に適している。
【0003】
また、HEPAフィルターの他にも、臭気除去用の活性炭フィルター、陰イオン発生用のフィルター、光触媒コーティングフィルター、坑菌フィルターなどの多種多様な機能性フィルターも、現在、空気清浄系に使用されている。
【0004】
しかしながら、HEPAヘパフィルターを含むこれらの機能性フィルターは、主としてホコリ粒子と臭気を生じる有機物質の除去には有効であるが、空気汚染物である酸性有害ガス、すなわち硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、及び二酸化炭素(CO2)の除去には適していない。
【0005】
この種の有害ガスを除去する最も一般的な方法は、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、ソーダライム(sodalime)などから選ばれる強アルカリ性物質を活性成分として含む空気浄化剤の充填されたカラムに汚染空気を通過させるものである。しかし、このカラム法は非常に複雑な機械装置と広い設置空間が必要とするため、空気清浄系用フィルターに適用するのは難しく、したがって潜水艦のような特殊な状況に限って使用される。
【0006】
使用上の便宜から、上記の強アルカリ性空気浄化剤を重合体樹脂と混合するいくつかの試みがなされてきた。
【0007】
米国特許第5165399号には、水酸化リチウム(LiOH)をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と混合して製造されたシート形態の二酸化炭素吸収剤、およびこの二酸化炭素吸収剤を加工することにより製造される空気清浄系用のフィルターを開示している。この技術の欠点は、二酸化炭素吸収剤の構造を維持させるために、織物または織物地のような別の支持物質を使用しなければならないということである。特に、厚さの薄いフィルムや直径の小さい繊維またはフィラメントへの形態が極めて難しい。
【0008】
また、米国特許第5964221号では、水酸化リチウムまたは水酸化カルシウムのようなアルカリ性空気浄化剤、超高分子量のポリエチレン(UHMWPE)及び鉱油(mineral oil)と混合して、これらの混合物を溶融押出して製造されたシートを開示している。この技術は単一の構造を有するシートを許容するため、米国特許第5165399号の技術と違い、構造を維持させるための別途支持体の織物または織物地を使用する必要がない。
【0009】
しかしながら、押出時に潤滑剤として鉱油を使用すると、この鉱油を次に有機溶媒を使って洗浄する面倒な工程が必要になる。特に、これらの鉱油および有機溶媒は非常に発火しやすいため、超酸化カリウムや過酸化ナトリウムのような酸化性の強い空気浄化剤にこの技術を適用することができない。
【0010】
超酸化カリウムや過酸化ナトリウムは、空気再生物質(air revitalization material)または空気浄化剤(air purifier)として用いられている。これは、これら物質が下記の反応1及び反応2に表わされるように、空気中の二酸化炭素を固定し、酸素を発生させることができるためである。
【式1】
【0011】

【式2】
【0012】

【0013】
これらの物質の他にも、過酸化カリウム(potassium peroxide、K2O2)、過酸化カルシウム(calcium peroxide、CaO2)、過酸化リチウム(lithium peroxide、Li2O2)、および超酸化ナトリウム(sodium superoxide、NaO2)は空気中に含まれた二酸化炭素を吸収し酸素を発生させるため、空気浄化剤として用いることができる。
【0014】
上記の過酸化物と超酸化物はペレットの形態に製造され、例えばカラムのような空気浄化システム用の容器に充填される。ペレットの機械的特性を改善し、ペレット間の融合(fusion)を防止するために、少量のバインダーが一般的に添加される。
【0015】
例えば、国際公開特許第WO03/009899A1号は、アルカリ金属またはアルカリ土金属の超酸化物や過酸化物に、最大3.0wt%のバインダーを混合した空気浄化用の組成物を開示している。前記バインダーは、例えば、ケイ酸ナトリウム(sodium silicate、Na2SiO3)及びケイ酸カリウム(potassium silicate、K2SiO3)のような無機バインダー、および例えば、ポリビニルテトラゾールナトリウム、カルボキシルセルロースナトリウム、酢酸ポリビニル、ニトロセルロース、およびエポキシ樹脂のような有機バインダーから選択される。
【0016】
超酸化カリウムの融合問題を解決し、さらに酸素発生性能を改善する検討において、米国特許第4113646号は、無水硫酸カルシウム(calcium sulfate、CaSO4)、二酸化ケイ素(silicon dioxide、SiO2)、一酸化リチウム(lithium monoxide、Li2O)、メタほう酸リチウム(lithium metaborate、LiBO2)などを添加することを開示している。
【0017】
米国特許第4238464号は、ジルコニウム、チタン、ホウ素から選択される少なくとも1種の塩、および超酸化カリウムを含む超酸化カリウムの融合を減少させるための組成物を開示している。
【0018】
特に、超酸化カリウムの充填されたベッド(bed)の内での激しい融合により、このベッドを通過する空気の相当の圧力降下が生じる。米国特許第4490272号は、熱融合による圧力降下の問題を著しく改善させるために、CaOのようなアルカリ土金属の酸化物を2〜30wt%添加することを開示している。
【0019】
【特許文献1】米国特許第5165399号公報
【特許文献2】米国特許第5964221号公報
【特許文献3】国際公開特許第WO03/009899A1号公報
【特許文献4】米国特許第4113646号公報
【特許文献5】米国特許第4238464号公報
【特許文献6】米国特許第4490272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本願発明の発明者らは、今まで報告された技術からみると、過酸化物や超酸化物に添加される物質は前記混合物から製造されたペレットの幾何学的な形状を維持するためのバインダー類として把握されることを見出し、本知見に基づき本発明をなすに至った。
【0021】
すなわち、本発明の第1の課題は、過酸化物または超酸化物及びシリコーン(silicone)を含有する空気浄化用重合体組成物を提供することにある。
【0022】
シリコーン(silicone)は他の如何なる重合体樹脂よりも気体透過度が非常に高いため、有害ガスは高速で容易にシリコーンを透過することができる。特に、シリコーンは撥水性が高いため、過酸化物または超酸化物との混合物は、水に直接触れても容易には反応しない。
【0023】
超酸化物と過酸化物は強い酸化力を有するため、溶融された重合体とブレンドされると自然発火する可能性がある。これに反して、シリコーンは常温で硬化するため、超酸化物または過酸化物との混合物はほとんど又は全く自然発火する危険性がない。
【0024】
したがって、本発明の第1の目的によるシリコーン樹脂および過酸化物または超酸化物を含む組成物は、従来から使用されてきたペレット形態の空気浄化用組成物の上述の問題を克服するために役立つ。
【0025】
本発明の第2の課題は、過酸化物または超酸化物、および過酸化物または超酸化物の強い酸化力を安定化させる成分、例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、および水酸化カリウム(KOH)のような水酸化物から選択される安定化剤、および難燃剤を含む、難燃性の改善された空気浄化用の重合体組成物を提供することにある。
【0026】
本発明の第3の課題は、上記の安定化剤と過酸化物または超酸化物とを含むシリコーン(silicone)組成物を、シート(sheet)、フィルム(film)、ストリップ(strip)、フィラメント(filament)、繊維(fiber)、または中空糸(hollow fiber)のような特定の形態に加工することにより製造され、例えば硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素(CO2)などの酸性ガスを吸収し、酸素を発生させるフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上記課題を解決するために、次の構成を有する。
[1]
(A)オルガノポリシロキサンと、
(B)硬化剤と、
(C)空気浄化剤と、
を含むことを特徴とする空気浄化用重合体組成物。
[2]
前記空気浄化剤は、過酸化ナトリウム(sodium peroxide、Na2O2)、過酸化カリウム(potassium peroxide、K2O2)、過酸化カルシウム(calcium peroxide、CaO2)、過酸化リチウム(lithium peroxide、Li2O2)、超酸化ナトリウム(sodium superoxide、NaO2)及び超酸化カリウム(potassium superoxide、KO2)からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上の物質が、オルガノポリシロキサン(A)1重量部に対して0.05ないし20重量部使用されることを特徴とする[1]に記載の空気浄化用重合体組成物。
[3]
前記空気浄化剤は、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カルシウム(calcium hydroxide、Ca(OH)2)及び水酸化カリウム(KOH)からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上の物質が、オルガノポリシロキサン(A)1重量部に対して0.05ないし20重量部使用されることを特徴とする[1]に記載の空気浄化用重合体組成物。
[4]
空気浄化剤の酸化力を安定化させるための安定化剤(D)をさらに含むことを特徴とする[1]に記載の空気浄化用重合体組成物。
[5]
前記安定化剤(D)は、水酸化物、重合体加工に使用される充填剤、及び重合体加工に使用される難燃剤の中から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする[4]に記載の空気浄化用重合体組成物。
[6]
前記水酸化物は、空気浄化剤1重量部に対して0.05重量部ないし20重量部の範囲で使用されることを特徴とする[5]に記載の空気浄化用重合体組成物。
[7]
前記重合体加工に使用される充填剤は、空気浄化剤1重量部に対して0.05重量部ないし20重量部の範囲で使用されることを特徴とする[5]に記載の空気浄化用重合体組成物。
[8]
前記重合体加工に使用される難燃剤は、空気浄化剤1重量部に対して0.01重量部ないし10重量部の範囲で使用されることを特徴とする[5]に記載の空気浄化用重合体組成物。
【発明の効果】
【0028】
本発明の空気浄化用重合体組成物は下記のような長所を提供する。
【0029】
第一に、本発明の空気浄化用重合体組成物は、水に接触した時でも非常に安定である。これに反して、通常の過酸化物または超酸化物は水と激しく反応する。
【0030】
第二に、本発明で用いられるシリコーン(silicone)は非常に高いガス透過度を有するため、シリコーンマトリクス内に存在する過酸化物または超酸化物が空気中の有害ガスを素早く吸収し、本発明の重合体組成物は優れた空気浄化性能を示す。
【0031】
第三に、本発明の重合体組成物は安定化剤を含有するため、非常に安定していて高温でも自然発火起こさない。したがって、通常のゴム加工により多様な形状のフィルターを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明による空気浄化用重合体組成物は、(A)オルガノポリシロキサンと、(B)硬化剤と、(C)空気浄化剤と、を含むことを特徴とする。
【0033】
また、本発明による空気浄化用重合体組成物は、安定化剤(D)をさらに含むことを特徴とする。
【0034】
本発明で使用されるオルガノポリシロキサン(A)は、本発明による組成物の主成分であり、主鎖(backbone)の反復単位(repeating unit)としてシリコーン−酸素(Si-O)結合を含む化合物のことを言う。オルガノポリシロキサンは平均組成式[RmSiO(4-m)/2]で表され、液体樹脂または弾性体の形態を有し、直鎖状(linear)、分岐状(branched)、一部分岐を有する直鎖状(partially branched linear)、樹枝状(dendritic)の分子構造でもよい。
【0035】
上記式中、置換基Rは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びオクチルなどのアルキル基;フェニル及びトリル(tolyl)などのアリール基;ベンジル及びフェネチル(phenetyl)などのアラルキル(aralkyl)基;シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、へキセニル及びヘプテニルなどのアルケニル基;そして、3,3,3-トリフルオロプロピル及びクロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基(halogenated alkyl groups)から選択することができる。これらの中でも、好ましくは、アルキル、アルケニルおよびアリール基であり、より好ましくは、メチル、ビニルおよびフェニル基である。また、mは1.8ないし2.3の値を有する正数を表す。
【0036】
上記のオルガノポリシロキサンの化学的・物理的性質及び種類に関する資料は、例えば、"Encyclopedia of polymer science and engineering", volume 15, pp 204-308, Wiley-Interscience社(1989)などの文献に開示されている。
【0037】
前記オルガノポリシロキサンは、硬化剤の作用により架橋結合、つまり硬化を遂行することができる。前記オルガノポリシロキサンは、その化学的構造によってハイドロシリレーション反応(hydrosilylation reaction)、縮合反応(condensation reaction)、またはフリーラジカル反応(free radical reaction)により硬化する。
【0038】
ハイドロシールレーション反応で硬化するオルガノポリシロキサンとしては、ケイ素(Si)に結合しているアルケニル基が、分子当たり平均0.1個以上、好ましくは分子当たり平均0.5個以上、特に好ましくは、分子当たり平均0.8個以上であるアルケニル基を持つオルガノポリシロキサンが含まれる。
【0039】
ケイ素分子に結合しているアルケニル基の分子当たりの平均個数が前述した範囲の下限以下の場合には、生成された組成物が完全に硬化されないことがある。ケイ素分子に結合しているアルケニル基には、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル及びへキセニルが含まれ、中でもビニルが好ましい。
【0040】
前記ハイドロシリレーションに好適に用いられるオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサン、分子鎖の両末端がメチルフェニルビニルシロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサン、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基で保護されたメチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基で保護されたメチルビニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基で保護されたメチルビニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基で保護されたメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖の両末端がシラノール基で保護されたメチルビニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖の両末端がシラノール基で保護されたメチルフェニルシロキサン−メチルビニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、式(CH3)3SiO1/2、(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2、CH3SiO3/2及び(CH3)2SiO2/2でそれぞれ表されるシロキサン単位からなる有機シロキサン共重合体及びこれらのの混合物が含まれる。
【0041】
前記オルガノポリシロキサンがハイドロシリレーション反応で硬化される場合、上記硬化剤の使用量は、主成分のオルガノポリシロキサン(A)1重量部当たり、好ましくは0.0001ないし0.5重量部、特に好ましくは、0.001ないし0.4重量部である。
【0042】
前記オルガノポリシロキサンが縮合反応によって硬化される場合に、オルガノポリシロキサンは、分子当たり2個以上のシラノール基、またはケイ素に結合している加水分解性基を有する。
【0043】
この加水分解性基の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びその他アルコキシ基;ビニルオキシ及びその他アルケノキシ基;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、メトキシプロポキシ及びその他アルコキシアルコキシ基;アセトキシ、オクタノイルオキシ及びその他アシルオキシ基;ジメチルケトキシム、メチルエチルケトキシム及びその他ケトキシム基;イソプロペニルオキシ、1-エチル-2-メチルビニルオキシ及びその他アルケニルオキシ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ及びその他アミノ基;ジメチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ及びその他アミノキシ基;及び、N-メチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド及びその他アミド基が含まれる。
【0044】
ここで、シラノール基及びケイ素に結合している加水分解性基の他に前記オルガノポリシロキサンに存在する基には、メチル、エチル、プロピル及びその他アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル及びその他シクロアルキル基;ビニル、アリル及びその他アルケニル基;フェニル、ナフチル及びその他アリール基;及び、2-フェニルエチル及びその他アラルキル基が含まれる。
【0045】
前記オルガノポリシロキサンがフリーラジカル反応で硬化される場合、このオルガノポリシロキサンはケイ素に結合しているアルケニル基を分子当たり1個以上有するのが好ましい。このオルガノポリシロキサンにおけるケイ素に結合しているアルケニル基の具体例には、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル及びへキセニル基が含まれる。中でも、ビニル基が特に好ましい。
【0046】
これらのアルケニル基の他にも、オルガノポリシロキサンにおけるケイ素に結合している基の具体例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びその他アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル及びその他シクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル及びその他アリール基;ベンジル、フェネチル及びその他アラルキル基;及び3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル及びその他ハロゲン化アルキル基が含まれる。これらの基の中でも、アルキル及びアリール基が好ましく、メチル及びフェニル基が特に好ましい。
【0047】
前記オルガノポリシロキサン(A)がハイドロシリレーション反応で硬化される場合に、硬化剤(B)は、白金触媒及びケイ素に結合している水素原子を分子当たり平均2個以上有するオルガノポリシロキサンからなる。
【0048】
ここで、前記オルガノポリシロキサンに含まれるケイ素に結合している基の具体例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びその他アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル及びその他シクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル及びその他アリール基;ベンジル、フェネチル及びその他アラルキル基;及び3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル及びその他ハロゲン化アルキル基が含まれる。これらの基の中でも、アルキル及びアリール基が好ましく、メチル及びフェニルが特に好ましい。
【0049】
前記白金触媒は、本発明の組成物の硬化を促進するために用いられる。クロロ白金酸、クロロ白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、及び白金のカルボニル錯体などがこれらの具体例として挙げられる。
【0050】
本発明で、白金触媒の含有量は、主成分のオルガノポリシロキサン(A)の重量に対する白金金属が0.2ppmないし200ppm、好ましくは0.1ppmないし500ppmの範囲となる量である。白金金属の含有量が、上記範囲の下限より低くなる場合には、生成された空気浄化用組成物が完全に硬化されず、一方、上記範囲の上限を超えた量を添加しても生成された空気浄化用組成物の硬化速度は向上しない。
【0051】
前記オルガノポリシロキサン(A)が縮合反応によって硬化される場合に、硬化剤(B)は、分子当たり3個以上のケイ素結合基加水分解可能な基、これらの加水分解物、及び必要によって縮合反応触媒を有する。
【0052】
ここで、ケイ素に結合している加水分解性基の具体例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びその他アルコキシ基;ビニルオキシ及びその他アルケノキシ基;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、メトキシプロポキシ及びその他アルコキシアルコキシ基;アセトキシ、オクタノイルオキシ及びその他アシルオキシ基;ジメチルケトキシム、メチルエチルケトキシム及びその他ケトキシム基;イソプロペニルオキシ、1-エチル-2-メチルビニルオキシ及びその他アルケニルオキシ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ及びその他アミノ基;ジメチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ及びその他アミノキシ基;N-メチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド及びその他アミド基が含まれる。
【0053】
さらに、炭化水素基が前記シランに結合することができる。そのような炭化水素基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、オクタデシル及びその他アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル及びその他シクロアルキル基;ビニル、アリル及びその他アルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル及びその他アリール基;ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル及びその他アラルキル基;3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル及びその他ハロゲン化アルキル基が含まれる。
【0054】
メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン及びエチルオルトシリケートが、上記シランまたはこれらの部分加水分解物として挙げることができる。
【0055】
本発明の組成物において、シランまたはこの部分加水分解物の含量は、主成分のオルガノポリシロキサン(A)1重量部当たり、好ましくは0.0001ないし0.5重量部、特に好ましくは0.001ないし0.4重量部である。シランまたはこの部分加水分解物の含有量が上記範囲の下限より低い場合、生成された組成物の貯蔵安全性が悪化し、その接着特性が低下する傾向がある。一方、上記範囲の上限を超える場合、生成された組成物の硬化速度がかなり低下傾向がある。
【0056】
本発明の組成物に用いることができる縮合反応触媒の具体例には、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びその他有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(アセチルアセタート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタート)チタン及びその他有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)及びその他有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート及びその他有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ブチルスズ-2-エチルヘキソエート及びその他有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛及びその他の有機カルボキシル酸金属塩;ヘキシルアミン、ドデシルアミンホスフェート及びその他アミン化合物及びこれらの塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート及びその他4級アンモニウム塩;硝酸リチウム及び酢酸カリウムのようなアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン及びその他ジアルキルヒドロキシルアミン;及びグアニジル基を含有する有機ケイ素化合物などが含まれる。
【0057】
本発明で用いられる縮合反応触媒の含有量は、主成分のオルガノポリシロキサン(A)1重量部当たり、好ましくは0.0001ないし0.2重量部、より好ましくは0.001ないし0.1重量部の範囲である。この触媒が必須成分である場合に、触媒含有量が上記範囲の下限より低ければ、生成された組成物が度々完全に硬化しないことになる。一方、上記範囲の上限を超える場合、生成された組成物の貯蔵安全性が悪化する傾向になる。
【0058】
さらに、前記硬化反応がフリーラジカル反応である場合、前記硬化剤(B)は有機ペルオキシドである。このような有機ペルオキシドの具体例には、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチルビス(2,5-tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ブチルペルオキシド及びtert-ブチルパーベンゾエートが含まれる。有機ペルオキシドの添加量は、オルガノポリシロキサン(A)1重量部当たり0.001ないし0.05重量部の範囲である。
【0059】
以上のオルガノポリシロキサン(A)、硬化剤(B)、及び硬化触媒の種類は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第6380301号、米国特許第6387971号、大韓民国公開特許特2003−0097869号に開示されている。
【0060】
本発明の空気浄化用重合体組成物を構成する空気浄化剤(C)は、例えば、過酸化ナトリウム(sodium peroxide、Na2O2)、過酸化カリウム(potassium peroxide、K2O2)、過酸化カルシウム(calcium peroxide、CaO2)、過酸化リチウム(lithium peroxide、Li2O2)、超酸化ナトリウム(sodium superoxide、NaO2)、および超酸化カリウム(potassium superoxide、KO2)などの過酸化物または超酸化物から選ばれる1種以上の物質が用いられる。これらの物質は、例えば、SOx、NOx、CO2などの酸性有害ガスを吸収し、酸素を発生させるため、空気再生物質(air revitalization material)として用いられる。
【0061】
上記の過酸化物または超酸化物の他にも、例えば、に属するものとして、過塩素酸リチウム(lithium perchlorate、LiClO4)、塩素酸リチウム(lithium chlorate、LiClO3)、過塩素酸ナトリウム(sodium perchlorate、NaClO4)、塩素酸ナトリウム(sodium chlorate、NaClO3)、過塩素酸カリウム(potassium perchlorate、KClO4)、塩素酸カリウム(potassium chlorate、KClO3)を含むアルカリ金属(alkali metal)の塩素酸塩(chlorates)と過塩素酸塩(perchlorates)などの多くの酸素を発生させる物質がある。しかし、これらの塩素酸塩および過塩素酸塩は、電気的な方法や化学的な方法で熱した際にその分解産物として酸素を発生させるものであるため、上記の過酸化物および超酸化物に比べて有害ガスを吸収する能力で劣っている。
【0062】
一方、空気中に含まれた二酸化炭素を除去することができる代表的な空気浄化剤は、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)及び水酸化ナトリウムの混合物であるソーダライム(sodalime)、および例えば、水酸化リチウム(lithium hydroxide)などの強アルカリ性物質である。しかし、これらの空気浄化剤は酸性ガスを除去しても酸素を発生させることはできないため、過酸化ナトリウムや超酸化カリウムに比べて空気浄化効率の点で劣る。
【0063】
したがって、独立型呼吸装置(self-contained breathing apparatus)では、酸素発生能力を有する物質を有する過酸化ナトリウムや超酸化カリウムを使用した方が、二酸化炭素吸収剤を使用することに比べて有利である。
【0064】
上記のアルカリ金属またはアルカリ土金属の過酸化物または超酸化物は、上記のオルガノポリシロキサン(A)1重量部当たり、好ましくは0.01ないし98重量部の範囲で使用され、より好ましくは0.05ないし20重量部の範囲で使用される。超酸化物または過酸化物の含量が上述した下限量よりも少ないと、超酸化物または過酸化物の空気浄化効率が無意味になる。一方、超酸化物または過酸化物の含量が上述した上限量を超えると、上記組成物の構成成分がシリコーン重合体のマトリクスに均一(homogeneous)に分布する傾向がなくなるためである。
【0065】
アルカリ金属またはアルカリ土金属の過酸化物または超酸化物は、オルガノポリシロキサン(A)と混合できるため粉末形態を有することが最も好ましい。
【0066】
前記安定化剤(D)は、空気浄化用重合体組成物における過酸化物または超酸化物の強い酸化力を抑えるために用いられる。これは、オルガノポリシロキサンと過酸化物または超酸化物(C)との混合物が、強い燃焼性であるためである。前記安定化剤(D)の使用により組成物が極めて引火しやすくなることが防止される。
【0067】
本発明で使用することができる安定化剤の具体例には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などの水酸化物が含まれる。
【0068】
過酸化物または超酸化物が水酸化物と混合されると、過酸化物または超酸化物の酸化力が任意の利用可能な程度まで弱まり、本発明の組成物の引火が防止される。前記水酸化物の強い塩基性または弱い塩基性は、酸性ガスを吸収することを助ける。このため、通常の重合体充填剤(filler)に比べて有利であり、したがって、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどは、前記安定化剤(D)としてばかりでなく空気浄化剤(C)として用いることができる。前記空気浄化剤として用いられる水酸化物の使用量は、過酸化物または超酸化物の量と同様に、オルガノポリシロキサン(A)1重量部当たり、好ましくは0.01ないし98重量部の範囲であり、より好ましくは0.05ないし20重量部の範囲である。
【0069】
通常、重合体加工に使用される無機充填剤は安定化剤として使用可能であり、そのような無機充填剤の具体例には、粘土(Clay)、炭酸カルシウム(CaCO3)、タルク(Talc)、珪藻土(diatomaceous earth)、カーボンブラック(carbon black)、シリカ、ガラス繊維などが含まれる。
【0070】
重合体加工に使用される難燃剤は、前記安定化剤(D)として使用可能である。このような難燃剤には、三酸化アンチモン(antimony trioxide)、五酸化アンチモン(antimony pentoxide)、アンチモン酸ナトリウム(sodium antimonate)などのアンチモン化合物(antimony compounds)、ほう酸(boric acid)、ボラクス(borax)、ほう酸亜鉛(zinc borate)などのホウ素化合物、モリブデン化合物(molybdenum compound)、チタン化合物、ジルコニウム化合物、スズ酸亜鉛(zinc stannate)などのスズ化合物、赤燐(red phosphorus)、ポリ燐酸アンモニウム(ammonium polyphosphate)などの燐化合物(phosphorus compounds)、スルファミン酸アンモニウム(ammonium sulfamate)、ブロム化アンモニウム(ammonium bromide)などの無機難燃剤が含まれる。
【0071】
さらに、ハロゲン化有機化合物(halogenated organic compounds)も前記安定化剤(D)として使用可能であり、好適なハロゲン化有機化合物の具体例には、テトラブロモビスフェノールA(tetrabromobisphenol A)、デカブロモジフェニルエーテル(decabromodiphenyl ether)、オクタブロモビフェニルエーテル(octabromobiphenyl ether)、テトラブロモビフェニルエーテル(tetrabromobiphenyl ether)、ヘキサブロモシクロドデカン(hexabromocyclododecane)、トリブロモフェノール(tribromophenol)、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン(bis(tribromophenoxy)ethane)、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー(tetrabromobisphenol A polycarbonate oligomers)、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー(tetrabromobisphenol A epoxy oligomers)、塩化パラフィン(chlorinated paraffins)、ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエノ)シクロオクタン(bis(hexachlorocyclopentadieno)cyclooctane)などが含まれる。
【0072】
有機燐化合物(organophosphorus compounds)は前記安定化剤(D)として使用可能であり、好適な有機燐化合物の具体例には、トリアルキルホスフェート(trialkyl phosphates)、トリアリールホスフェート(triaryl phosphates)、アリール−アルキルホスフェート(aryl-alkyl phosphates)、ホスホニウム誘導体(phosphonium derivatives)、燐酸塩(phosphonates)、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(tris(1-chloro-2-propyl)phosphate)、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート(tris(2-chloroethyl)phosphate)、およびトリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(tris(2,3-dibromopropyl)phosphate)が含まれる。
【0073】
これらの安定化剤の他にも、窒素化合物が安定化剤として用いることができる。好適な窒素化合物の具体例には、メラミンシアヌレート(melamine cyanurate)およびメラミンポリホスフェート(melamine polyphosphate)などのメラミンとその塩(melamine and its salts)、およびグアニジン化合物(guanidine compounds)が含まれる。
【0074】
前記安定化剤が無機物である場合、前記安定化剤は過酸化物または超酸化物とまず混合された後に残りの成分と混合されることが好ましい。一方、前記安定化剤が有機物である場合は、前記安定化剤はオルガノポリシロキサンにまず混合され、次に残りの成分と混合されることが好ましい。しかし、これらの成分の混合する順序は特に限定されない。
【0075】
上述した安定化剤は、相乗効果(synergic effect)を奏するために、単独で用いても2種以上の安定化剤の混合物として使用しても良い。
【0076】
これらの安定化剤のうち、水酸化物または重合体加工用充填剤は、過酸化物または超酸化物1重量部に対して、好ましくは0.05重量部ないし20重量部の範囲で使用される。水酸化物または重合体加工用充填剤の量が上述した下限よりも少ないと、酸素発生量が少なくなり、空気浄化効果が低減する。一方、この量が上述した上限を超えると、過酸化物または超酸化物の酸化力の低下を制御することがげ難しくなる。
【0077】
前記重合体加工用難燃剤は、通常の水酸化物および充填剤に比べて、過酸化物または超酸化物を強く安定化する効果を有する。このため、この難燃剤が少ない量で用いられて、引火防止という所期の目的を達成することができる。重合体加工用の難燃剤は、過酸化物または超酸化物1重量部に対して0.01重量部ないし10重量部の範囲で使用されることが好ましい。
【0078】
この安定化剤の使用量は、本発明の空気浄化用の重合体組成物の所望の用途に応じて変動する。すなわち、本発明の空気浄化用重合体組成物が、強力な空気浄化効果が必要とされる閉鎖式再呼吸装置(closed-circuit rebreather device)用いられることが意図される場合、前記安定化剤を可能な限り少なく使用し、またはその使用を避けるべきてある。
【0079】
本発明の空気浄化用重合体組成物には、本発明の目的を損なわない限り、発泡剤、可塑剤、顔料、染料、蛍光染料、および耐熱性添加剤などのその他任意の成分を添加しても良い。
【0080】
さらに、本発明の組成物がハイドロシリレーションで硬化される場合、本組成物の硬化速度を調節して取り扱い性を向上させるために、本組成物に硬化反応抑制剤を添加することができる。好適な硬化反応抑制剤の具体例には、2-メチル-3-ブチン-2-オル、2-フェニル-3-ブチン-2-オルおよび1-エチニル-1-シクロヘキサノールなどのアセチレン系化合物、3-メチル-3-ペンテン-1-インおよび3,5-ジメチル-3-へキセン-1-インなどのエン−イン化合物、ヒドラジン系化合物、およびホスフィン系化合物が含まれる。
【0081】
本発明の空気浄化用重合体組成物の硬化は、その反応メカニズムによって室常温または高温状態で行うことができる。通常、本発明の重合体組成物は、ゴム工業(rubber industry)で普通に使用されるコンパウンダーと成形機器を用いて、シート(sheet)、フィルム(film)、フィラメント(filament)、繊維(fiber)、および中空糸(hollow fiber)のような様々な形状に成形される。
【0082】
このように成形された本発明の重合体組成物は、シリコーンゴムのマトリクス内部に過酸化物または超酸化物が存在するので、水と直接接触するにもかかわらず、水と容易に反応しない。
【0083】
シリコーンゴムは、ビニル系、ポリエステル系、およびポリアミド系樹脂のような普通の重合体に比べて極めて高い気体透過度を有するため、空気中に存在する酸性ガスが高速でシリコーンゴムを容易に通過できる。したがって、前記の成形された本発明の重合体組成物は、有害ガス除去用フィルターに容易に応用可能である。
【0084】
本発明の好ましい態様は具体的な目的のために開示されてきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲に開示された発明の範囲及び精神を逸脱することなく、様々な変更、追加、および置換が可能であることを理解する。
【0085】
図面の簡単な説明
本発明の上述およびその他の目的、特徴およびその他の長所は、添付された図に関連した以下の詳細な説明から、より明確に理解される。
【0086】
[図1] 本発明による空気浄化用重合体組成物(試料N0.1〜4)の二酸化炭素吸収速度力を、純粋な超酸化カリウム及び水酸化ナトリウムのペレットと比較したグラフを示す図である。
【実施例】
【0087】
以下、具体的な実施例を通じて、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
室温で粘度が100mPa・sであり、分子鎖の両末端がヒドロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサン、メチルトリアセトキシシラン、ジブチルスズジラウレート、および超酸化カリウムを、下記の表1に示す各含量にしたがって混合して、空気浄化用重合体組成物を製造した。この重合体組成物は、十分に硬化し、窒素で充填されたデシケータに貯蔵した。
【0088】
【表1】

【0089】
この重合体組成物(試料N0.1〜4)は何れも黄色(yellow)であったが、前記超酸化カリウムが二酸化炭素と完全に反応して酸素を生成した後に、白色に変化した。
【0090】
実施例2
室温で粘度が100mPa・sであり、分子鎖の両末端がヒドロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサン、メチルトリアセトキシシラン、ジブチルスズジラウレート、超酸化カリウム、および水酸化カルシウムを、下記の表2に示す各含量にしたがってで混合して、空気浄化用重合体組成物(試料N0.5〜8)を製造した。この重合体組成物は、十分に硬化し、窒素の充填されたデシケータに貯蔵した。
【0091】
【表2】

【0092】
実施例3
室温で粘度が100mPa・sであり、分子鎖の両末端がヒドロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサン、メチルトリアセトキシシラン、ジブチルスズジラウレート、超酸化カリウム、および水酸化マグネシウムを、下記の表3に示す各含量にしたがって混合し、空気浄化用重合体組成物(試料No.9〜12)を製造した。この重合体組成物は、十分に硬化し、窒素の充填されたデシケータに貯蔵した。
【0093】
【表3】

【0094】
実施例2及び実施例3(各安定化剤を含む)で調製された重合体組成物の色は、実施例1(安定化剤を含まない)で調製された重合体組成物の薄黄色より曇っていた。
【0095】
実施例4
室温で粘度が100mPa・sであり、分子鎖の両末端がヒドロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサン、メチルトリアセトキシシラン、ジブチルスズジラウレート、超酸化カリウム、および焼きシリカ(fumed silica)を、下記の表4に示す各含量にしたがって混合し、空気浄化用重合体組成物(試料No.13〜16)を製造した。この空気浄化用重合体組成物は、十分に硬化し、窒素の充填されたデシケータに貯蔵した。
【0096】
【表4】

【0097】
実施例5
室温で粘度が100mPa・sであり、分子鎖の両末端がヒドロキシ基で保護されたジメチルポリシロキサン、メチルトリアセトキシシラン、ジブチルスズジラウレート、超酸化カリウム、およびメラミンシアヌレートを、下記の表5に示す含量にしたがって混合し、空気浄化用重合体組成物(試料N0.17〜20)を製造した。この重合体組成物は、十分に硬化し、窒素の充填されたデシケータに貯蔵した。
【0098】
【表5】

【0099】
実施例6:二酸化炭素吸収力の比較
図1は、本発明の空気浄化用重合体組成物(試料1乃至4)、純粋な超酸化カリウム、およびNaOHの二酸化炭素吸収速度を比較したグラフである。
【0100】
全ての実験は、内部容積2Lの円筒形容器中で行われたものである。容器内部に純粋な超酸化カリウム粉末、NaOHペレット、そして実施例1で調製した各試料を入れた。注射器を使って二酸化炭素の初期濃度が1,000ppmになるように二酸化炭素を容器に注入した後に、二酸化炭素の濃度変化を記録した。
【0101】
この場合に、本発明の重合体組成物は平均直径が3mmの球形であり、前記純粋な超酸化カリウムは粉末状であり、NaOHは直径0.5mmのペレット状態であり、これらをそれぞれ容器の底に置いた。
【0102】
図1のグラフから明らかなように、純粋な超酸化カリウムに比べ、本発明の重合体組成物はその二酸化炭素吸収速度が比較的遅いことが確認された。これは、本発明の空気浄化用重合体組成物が、二酸化炭素を吸収する超酸化カリウムがマトリクスの内部に存在するために二酸化炭素に対する拡散抵抗をある程度有するからであると考えられる。
【0103】
ガス拡散に対する抵抗性にもかかわらず、本発明の空気浄化用重合体組成物を用いて空気中の有害ガスを除去するのには何ら問題がない。これは、大量の有害ガスを単位時間に除去することができるように、前記重合体組成物が空気との接触面積を増加させるためである。
【0104】
特に、本発明の空気浄化用重合体組成物は、通常の重合体に匹敵する加工性を呈するため、無機物ペレットに比べて広い接触面積を持つ様々な形状に容易に加工される。
【0105】
実施例7:安定化剤の種類及び含有量による自然発火温度の測定
本実施例では、実施例1乃至実施例5で調製製された各試料について、その自然発火温度を測定した。自然発火温度は、セラミック炉に入れた各2gの試料を導入し、電気オーブンで所定の温度に加熱することにより測定した。下記の表6に、その結果を示す。
【0106】
【表6】

【0107】
表6にしめされたデータからわかるように、安定化剤を使用しない試料は、114〜133℃の自然発火温度で容易に発火した。
【0108】
これに反して、水酸化カルシウムなどの安定化剤を含む試料は自然発火をせず、ただし、200℃以上の温度で試料中に含有されたシリコーンが分解され、白色残有物が残された。
【0109】
自然発火が抑止されることから得られるメリットは、シリコーンおよび超酸化カリウムを含む組成物を高い温度で硬化できるという点である。
【0110】
通常のシリコーンゴムの製造方法によれば、シリコーンガム(gum)と硬化剤を高い温度で混成され、押出され、カレンダリングされる。このため、高い温度で自然発火を起こすため、純粋な超酸化カリウムは使用することが困難である。
【0111】
しかしながら、本発明の重合体組成物によると、安定化剤の使用により超酸化カリウムを含有するシリコーンゴム組成物を、例えばフィルム(film)、ストリップ(strip)、フィラメント(filament)、繊維(fiber)、および中空糸(hollow fiber)などの様々な形状に、通常のゴム加工方法によって加工することができる。したがって、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、および二酸化炭素(CO2)などの酸性ガスを含み、酸素を発生させることができるフィルターを簡単な方法で製造することができる。
【産業上の利用性】
【0112】
上述の説明から明らかなように、本発明による重合体組成物は、二酸化炭素、一酸化炭素、SOX、およびNOXを吸収し、酸素に転換する機能を有するため、様々な空気浄化剤として広範に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明による空気浄化用重合体組成物(試料N0.1〜4)の二酸化炭素吸収速度力を、純粋な超酸化カリウム及び水酸化ナトリウムのペレットと比較したグラフを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オルガノポリシロキサンと、
(B)硬化剤と、
(C)空気浄化剤と、
を含むことを特徴とする空気浄化用重合体組成物。
【請求項2】
前記空気浄化剤は、過酸化ナトリウム(sodium peroxide、Na2O2)、過酸化カリウム(potassium peroxide、K2O2)、過酸化カルシウム(calcium peroxide、CaO2)、過酸化リチウム(lithium peroxide、Li2O2)、超酸化ナトリウム(sodium superoxide、NaO2)及び超酸化カリウム(potassium superoxide、KO2)からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上の物質が、オルガノポリシロキサン(A)1重量部に対して0.05ないし20重量部使用されることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化用重合体組成物。
【請求項3】
前記空気浄化剤は、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カルシウム(calcium hydroxide、Ca(OH)2)及び水酸化カリウム(KOH)からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上の物質が、オルガノポリシロキサン(A)1重量部に対して0.05ないし20重量部使用されることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化用重合体組成物。
【請求項4】
空気浄化剤の酸化力を安定化させるための安定化剤(D)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の空気浄化用重合体組成物。
【請求項5】
前記安定化剤(D)は、水酸化物、重合体加工に使用される充填剤、及び重合体加工に使用される難燃剤の中から選ばれるいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の空気浄化用重合体組成物。
【請求項6】
前記水酸化物は、空気浄化剤1重量部に対して0.05重量部ないし20重量部の範囲で使用されることを特徴とする請求項5に記載の空気浄化用重合体組成物。
【請求項7】
前記重合体加工に使用される充填剤は、空気浄化剤1重量部に対して0.05重量部ないし20重量部の範囲で使用されることを特徴とする請求項5に記載の空気浄化用重合体組成物。
【請求項8】
前記重合体加工に使用される難燃剤は、空気浄化剤1重量部に対して0.01重量部ないし10重量部の範囲で使用されることを特徴とする請求項5に記載の空気浄化用重合体組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−519881(P2008−519881A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541091(P2007−541091)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003184
【国際公開番号】WO2006/085708
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507149051)
【Fターム(参考)】