説明

空気清浄機用フィルターユニット

【課題】
本発明の課題は、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド等の臭気をはじめ、ハウスダスト、花粉等の空中に浮遊する微粒子物質や、さらに、有機溶剤等のVOC系ガスのような不純物を同時に除去することができる優れた空気浄化能力と耐久性のあるフィルターを、安価に提供することにある。
【解決手段】
消臭機能を持つプレフィルターと、集塵プリーツフィルターと、光触媒を担持したフィルターと、金属フタロシアニン錯体と弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルターを作成し、これらを組み合わすことによって、各種悪臭ガスを効率よく分解浄化でき、さらに粉塵、花粉などの粒子状物質やVOC系ガスのような不純物を除去することができるフィルターを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用または業務用の空気清浄機に使われる空気清浄機用フィルターユニットに関する技術である。本発明では、空気清浄機に使用する各種フィルターを組み合わせたものをフィルターユニットと称している。
【背景技術】
【0002】
近年住宅の高気密化が進み、室内空気の自然換気回数が極端に減少したことから、室内で発生するいやな臭いや、塵埃、アレルゲン、菌等がいつまでも室内に滞留することから、これらの不純物を除去し快適な居住空間を得る空気清浄機の必要性が増している。また、VOC系ガスのような不純物もわずかな量で人体に影響するといわれ、これらの極微量の不純物も相当な除去率で除去する空気清浄機が求められている。
【0003】
特許文献1においては、空気取り入れ口から順に、プレフィルターによって粗い塵、ゴミを取り除き、次に高効率粒子除去フィルターによってさらに細かい塵、埃、ゴミが除去される。つぎに酸化チタンと無機多孔質材料とアパタイトを担持し、紫外線発光体で照射されたハニカムフィルターで消臭除菌をおこなう空気清浄機に関する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2においては、被処理空気を抗菌フィルター、超微細集塵フィルター及び消臭フィルターよりなる積層フィルターを用いると共に、さらに光触媒フィルターによって消臭することから、確実な除塵と消臭をおこない、ダイオキシンをも除去する空気清浄機に関する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−245998号公報
【特許文献2】特開2000−217900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来技術は、いずれも消臭や除塵を目的に複数のフィルターを組み合わせることにより、室内の悪臭や塵埃等を効率よく吸着分解除去するもので、空気清浄機用フィルターとして有用な方法である。しかしながら、これら従来技術では空気浄化能力や耐久性にまだ満足のいくものではなく、さらに安価で、各種ガスに除去効果の大きい空気清浄機用フィルターが求められている。
本発明の課題は、上述の事情に鑑み、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド等の臭気をはじめ、ハウスダスト、花粉等の空中に浮遊する微粒子物質や、さらに、有機溶剤等のVOC系ガスのような不純物を同時に除去することができる優れた空気浄化能力と耐久性のあるフィルターユニットを、安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、室内の空気中に存在する可能性のあるアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド等の臭気をはじめ、ハウスダスト、花粉等の微粒子物質や、さらに、有機溶剤等のVOC系ガスのような不純物を同時に除去することができるフィルターを提供すべく検討を行なった結果、消臭機能を持つプレフィルターと、集塵プリーツフィルターと、光触媒を担持したフィルターと、金属フタロシアニン錯体と弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルターを作成し、これらを組み合わすことによって、各種悪臭ガスを効率よく分解浄化でき、さらに粉塵、花粉などの粒子状物質やVOC系ガスのような不純物を除去することができるフィルターユニットを、安価に提供できることを見出し、本発明に至ったものである。前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]消臭機能を持つプレフィルター(第一フィルター)と、集塵プリーツフィルター(第二フィルター)と、光触媒フィルター(第三フィルター)と、金属フタロシアニン錯体と弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルター(第四フィルター)と、からなることに特徴のある空気清浄機用フィルターユニット。
【0009】
[2]前記消臭機能を持つプレフィルター(第一フィルター)が、ヒドラジン誘導体と無機多孔質物質をバインダー樹脂で繊維に担持させた不織布からなることに特徴のある前項1に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【0010】
[3]前記集塵プリーツフィルター(第二フィルター)が、ULPAまたはHEPAの高効率粒子除去プリーツフィルターであることに特徴のある前項1又は2に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【0011】
[4]前記光触媒フィルターが酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化銅またはそれらの組み合わせからなる光触媒粒子と、吸着剤として銅ゼオライト、銀ゼオライト、亜鉛ゼオライト、白金ゼオライトの群から選択される1種または複数の金属ゼオライトを、繊維へ担持させた不織布からなることに特徴のある前項1乃至3のいずれか1項に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【0012】
[5]前記金属フタロシアニン錯体がコバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン、マンガンフタロシアニンの群から選択される1種または複数の金属フタロシアニン錯体で、弱アルカリ性金属塩が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウムの群から選択される1種または複数の弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルター(第四フィルター)であることに特徴のある前項1乃至4のいずれか1項に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【0013】
[6]前記金属フタロシアニン錯体を活性炭混抄紙1g当たり200〜20000μg担持させ、弱アルカリ性金属塩を活性炭混抄紙1g当たり5〜50mg担持させてなる前項5に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【0014】
[7]前記活性炭混抄紙は、活性炭を40〜80重量%担持させてなる活性炭混抄紙である前項6に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、消臭機能を持つプレフィルター(第一フィルター)と、集塵プリーツフィルター(第二フィルター)と、光触媒フィルター(第三フィルター)と、金属フタロシアニン錯体と弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルター(第四フィルター)と、からなるのでフィルターのそれぞれが室内空気にふくまれる各種不純物に応じて吸着分解除去するので室内空気を効率的に浄化することができる。消臭機能を持つプレフィルター(第一フィルター)では、大粒径の塵埃やゴミ等の除去と生活臭等の臭気の多くを除去する。集塵プリーツフィルター(第二フィルター)では、プレフィルターを通過した、塵埃やゴミ、花粉等の除去をすることができる。光触媒フィルター(第三フィルター)では、プレフィルターを通過した臭気や、VOC系ガス、細菌を分解除去することができる。金属フタロシアニン錯体と弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルター(第四フィルター)では、それまでのフィルター群で除去しきれなかったアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド等の臭気を効率よく確実に消臭除去することができる。
【0016】
第2の発明では、前記消臭機能を持つプレフィルター(第一フィルター)が、ヒドラジン誘導体と無機多孔質物質をバインダー樹脂で繊維に担持させた不織布からなるので、大粒径の塵埃やゴミ等の除去とアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド等の臭気の多くを除去することができ、特にタバコ臭に有効である。
【0017】
第3の発明では、前記集塵プリーツフィルター(第二フィルター)が、ULPAまたはHEPAの高効率粒子除去プリーツフィルターであるので、タバコの煙のような0.3ミクロン程度の極微粒径の粉塵や塵埃等を除去することができる。
【0018】
第4の発明では、前記光触媒フィルター(第三フィルター)が酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化銅またはそれらの組み合わせからなる光触媒粒子と、吸着剤として銅ゼオライト、銀ゼオライト、亜鉛ゼオライト、白金ゼオライトの群から選択される1種または複数の金属ゼオライトを、繊維へ担持させた不織布からなるので、紫外線を照射することにより吸着剤に吸着したNOx、SOx等の酸化ガスや、トルエン、ホルムアルデヒド等のVOC系ガス、細菌を高効率に分解除去することができる。
【0019】
第5の発明では、前記金属フタロシアニン錯体がコバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン、マンガンフタロシアニンの群から選択される1種または複数の金属フタロシアニン錯体であるので、NOx、SOx等の酸化ガス、硫化水素やメチルメルカプタン等の硫黄系ガスの各種極微量ガスを同時に効率よく分解浄化することができる。また前記弱アルカリ性金属塩が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウムの群から選択される1種または複数の弱アルカリ性金属塩であるので、NOx、SOx等の酸化ガスの各種極微量ガスを効率よく活性炭混抄紙に吸着し分解することができ、硫化水素が金属フタロシアニン錯体によって分解されるときに発生する副生成物である亜硫酸イオンや硫酸イオンを効率よく捕捉することができる。また、ハニカムまたはコルゲートフィルターからなるので、圧力損失を極力抑えることができる。
【0020】
第6の発明では、前記金属フタロシアニン錯体を活性炭混抄紙1g当たり200〜20000μg担持させ、弱アルカリ性金属塩を活性炭混抄紙1g当たり5〜50mg担持させてあるので、NOx、SOx等の酸化ガス、硫化水素やメチルメルカプタン等の硫黄系ガスの各種極微量ガスに対し、十分な分解効果が得られる。
【0021】
第7の発明では、前記活性炭混抄紙は活性炭を40〜80重量%担持させてあるので、NOx、SOx等の酸化ガス、硫化水素やメチルメルカプタン等の硫黄系ガスの各種極微量ガスに十分な吸着効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の空気清浄機用フィルターユニットについて、図面を参照して説明する。図1は本発明の空気清浄機用フィルターユニットの一実施形態を示す概略図である。同図において、1は空気取り入れ口、2はプレフィルター(第一フィルター)、3は集塵プリーツフィルター(第二フィルター)、4は送風機、5は紫外線発光体、6は光触媒フィルター(第三フィルター)、7はハニカム(コルゲート)フィルター(第四フィルター)、8は空気吹き出し口である。空気取り入れ口1から入った空気は、プレフィルター2から順に各フィルターを通過し、ゴミ、粉塵、各種ガスが効率的に除去分解される。
【0023】
プレフィルター(第一フィルター)2は、5ミクロン程度以上の疎塵や花粉等の除去と生活臭、特にアセトアルデヒドガスの消臭を目的に、空気取り入れ口から取り入れられたガスを最初に浄化するものである。プレフィルター2は不織布に消臭剤を担持したもので、不織布を構成する繊維は特に限定しないが、5.0〜20デシテックスのポリエステル繊維からなり、目付け20〜80g/mが好ましい。また、消臭剤としてヒドラジン誘導体と無機多孔質物質をバインダー樹脂で不織布の繊維に担持させたものが好ましい。
【0024】
ヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン系化合物と長鎖の脂肪族系化合物とを反応させたもの、あるいはヒドラジン系化合物と芳香族系化合物とを反応させたもの等が挙げられる。中でも、ヒドラジン及びセミカルバジドからなる群より選ばれる1種または2種の化合物と、炭素数8〜16のモノカルボン酸、ジカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物との反応生成物や、ヒドラジン及びセミカルバジドからなる群より選ばれる1種または2種の化合物と炭素数8〜16のモノグリシジル誘導体及びジグリシジル誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物との反応生成物が好適である。このようなヒドラジン誘導体を用いることにより優れた悪臭除去性能を確保することができる。前記反応生成物としては、具体的には、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等を挙げられるが、特にこれら例示の化合物に限定されるものではない。
【0025】
前記無機多孔質物質は、表面積が大きく、悪臭の吸着能力の優れたものとなる。例えばこのような無機多孔質物質としては、活性炭、ゼオライト等が挙げられる。中でも、酢酸、アンモニア等に対して優れた吸着能力を有するゼオライトを用いるのが好ましい。
【0026】
前記消臭剤(ヒドラジン誘導体と無機多孔質物質の混合組成物)の塗布量は2〜15g/m(乾燥重量)とするのが好ましい。2g/m未満では十分な除去性能が得られなくなるので好ましくない。また、15g/mを超えても大きな消臭性能の向上はなく、徒にコストを増大することになり好ましくない。
【0027】
前記バインダー樹脂としては、どのような樹脂でも使用することができる。例えば、自己架橋型アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、グリオキザ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−スチレン−アクリレ−トメタアクリレ−ト共重合体樹脂などが挙げられる。これらの樹脂を2種類以上混合してバインダ−樹脂としても良い。
【0028】
前記消臭剤の塗布方法は、まず前記消臭剤とバインダ−樹脂を水に分散させ水分散液からなる処理剤を調合する。この時、これらの消臭剤、バインダ−樹脂を可能な限り分散させることが好ましく、バインダ−樹脂については、水との間でエマルジョン状態を形成することがより好ましい。また、調合の際予め先に消臭剤を水に分散させておいてから、バインダ−樹脂を分散するのが、消臭剤とバインダ−樹脂をより均一に分散させるのに好ましい。
【0029】
こうして得られる処理剤を不織布に固着させる。この固着する手段としては、特に限定されるものではないが、例えばスプレ−法、浸漬法、コ−ティング法、パディング法等で固着し、加熱乾燥すればよい。
【0030】
前記集塵プリーツフィルター(第二フィルター)は、主に空気中の細かな粉塵を除去するもので、ULPAまたはHEPAといわれる高効率粒子除去プリーツフィルターであるのが好ましい。例えばHEPAとしては、目付け20〜150g/m、平均繊度20〜50dtexのポリプロピレン繊維製不織布を骨材層にし、その上にポリエステル繊維に銅ゼオライトをバインダー樹脂によって担持した吸着層を重ね、さらに、その上に静電処理した平均繊度0.5〜15dtexのポリエステル繊維製不織布を重ね合わせ、熱エンボス等の熱処理を施して一体化した後、厚さ0.5〜1.5mmのシートをプリーツ加工機にてひだ折りして得ることができる。ULPAはさらにポリエステル繊維の繊度を細くしたもので、さらに細かな粉塵等を捕らえることができる。
【0031】
前記集塵プリーツフィルター(第二フィルター)は、静電処理されたポリエステル繊維製不織布の面から、ポリプロピレン繊維製不織布の骨材層に空気が通過するように配置するのが好ましい。ポリエステル繊維製不織布は静電処理されているので、大気中の粉塵を捕らえ、銅ゼオライトの表面が粉塵で覆われるのを防ぐことができる。また、前記銅ゼオライトを担持する吸着層の繊維は、バインダー樹脂で銅ゼオライトを担持できるのであればどのような繊維でも用いることができるが、ポリエステル繊維が好ましい。銅ゼオライトには、大気中の有機溶剤等のVOC系ガスが強力に吸着される。また、前記ポリプロピレン繊維製不織布の骨材層は、シートがプリーツ加工されるための強度と硬さを付与し、静電環境を整えるものである。こうして得られた集塵プリーツフィルター(第二フィルター)は、タバコの煙のような0.3ミクロン程度の極微粒径の粉塵や塵埃等を捕らえ、除去することができる。
【0032】
前記光触媒フィルター(第三フィルター)は、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化銅またはそれらの組み合わせからなる光触媒粒子と、吸着剤として銅ゼオライト、銀ゼオライト、亜鉛ゼオライト、白金ゼオライトの群から選択される1種または複数の金属ゼオライトを、繊維へ担持させた不織布からなることが好ましい。光触媒は、紫外線照射により活性酸素やOHラジカルを発現し、各種有機物を分解し、抗菌、防黴等の働きが得られる。また吸着剤として金属ゼオライトを使用することにより、大気中の有機溶剤等のVOC系ガスが強力に吸着され、光触媒によって分解される。前記光触媒と吸着剤を、不織布を構成する繊維に担持させる方法は、バインダー樹脂により担持させればよいが、光触媒反応によりバインダー樹脂が分解されることから、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等の比較的光触媒の影響を受けにくい樹脂から選択してバインダー樹脂とするのがよい。
【0033】
次に本発明のハニカムあるいはコルゲートフィルター(第四フィルター)を構成する活性炭混抄紙は、通常の湿式抄紙法により製造できる。例えば活性炭と天然パルプを水に添加し、水スラリーを作成する。そのスラリーを攪拌しながら所定の固形分濃度に調整し、その後カチオン系ポリマー又はアニオン系ポリマーを添加し、得られた凝集体水分散液から、抄紙機を使い湿式抄紙法によりシート化し、乾燥処理を行ない活性炭混抄紙を得る。この活性炭混抄紙を、コルゲート加工機を用いハニカム形状やコルゲート形状に加工しフィルターの形状にする。フィルターの形状をハニカム形状やコルゲート形状にすることにより、反応面積が大きくなり、圧力損失を少なくすることができるので、効率的なフィルターとすることができる。
【0034】
この活性炭混抄紙によるハニカムあるいはコルゲートフィルターは活性炭の強い吸着力によって各種極微量ガスの吸着体の役割をなすものである。本発明に使用する活性炭としては、椰子殻活性炭、石油ピッチ系球状活性炭、活性炭素繊維、木質系活性炭等の活性炭系炭素多孔質体が、吸着比表面積が非常に高いことから好ましく用いられる。中でも、椰子殻活性炭が好ましい。また、この活性炭混抄紙に使用する繊維は天然パルプ、ポリオレフィン及びアクリル繊維などのフィブリル化繊維を用いればよいが、金属フタロシアニン錯体の担持のし易さからも天然パルプが好ましい。
【0035】
活性炭の抄紙への担持する量は、抄紙の40〜80重量%担持させることが好ましい。40重量%を下回る担持量では十分な吸着力を得ることができず、80重量%を上回る担持量では活性炭の脱落が発生し好ましくない。より好ましい活性炭の担持量は、60〜75重量%である。
【0036】
次に前記活性炭混抄紙に担持させる金属フタロシアニン錯体は、特に限定されるものではないが、例えば鉄フタロシアニン錯体、コバルトフタロシアニン錯体、マンガンフタロシアニン錯体が挙げられる。これらの中でもコバルトフタロシアニン錯体を用いるのが好ましく、この場合には、特にメチルメルカプタンやNOx、SOx等の酸化ガスに対する除去性能をさらに向上させることができる利点がある。前記コバルトフタロシアニン錯体としては、特に限定されるものではないが、例えばコバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム、コバルトフタロシアニンオクタカルボン酸、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0037】
金属フタロシアニン錯体を活性炭混抄紙に担持する前に、活性炭混抄紙をカチオン化処理することが望ましい。これは、金属フタロシアニン錯体の担持量を増大するための処理で、カチオン化処理は活性炭混抄紙の化学構造中にカチオン基を導入付与し得るものであればどのような処理であっても良いが、中でも4級アンモニウム塩によりカチオン化処理が行われるのが好ましい。この場合には、金属フタロシアニン錯体の担持量をより増大させることができる利点がある。前記4級アンモニウム塩としては、例えば3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの縮合ポリマー等が挙げられる。
【0038】
前述のような方法によって、金属フタロシアニン錯体の活性炭混抄紙へ担持させる量は、活性炭混抄紙1g当たり200〜20000μg担持させるのが好ましい。活性炭混抄紙1g当たり200μgを下回る金属フタロシアニン錯体の活性炭混抄紙への担持量では、十分な除去性能を得ることができなく、活性炭混抄紙1g当たり20000μgを超える金属フタロシアニン錯体の活性炭混抄紙への担持量では、徒にコストがかさむだけで経済的な担持量とはいえない。より好ましい金属フタロシアニン錯体の活性炭混抄紙への担持量は、活性炭混抄紙1g当たり500〜5000μgである。
【0039】
前記カチオン化処理された活性炭混抄紙によるハニカムフィルターを水洗し乾燥したあと、金属フタロシアニン錯体で処理し、乾燥したあとさらに弱アルカリ性金属塩水溶液に含浸させ、水洗し乾燥してフィルターを得る。弱アルカリ性金属塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウムの群から選択される1種または複数の弱アルカリ性金属塩が好適である。弱アルカリ性金属塩の活性炭混抄紙への担持量は、活性炭混抄紙1g当たり5〜50mg担持させるのが好ましい。弱アルカリ性金属塩は助剤の働きをするものであり、大気中に存在する可能性のあるNOx、SOx等の酸性ガス、硫化水素やメチルメルカプタン等の硫黄系ガスの各種極微量ガスを吸着しやすい環境とする働きをするものである。
【0040】
各フィルターを組み立てる際には、図1に示すように各フィルター部材を各枠体に嵌め込み、各枠体と各フィルター部材を接着剤で固定化し、次に枠体に固定した各フィルターを重ねて固定し、空気清浄機の送風機と紫外線発光体の前後にセットしてやればよい。なお、枠体の材質としては、段ボールやプラスチック製のものが好適に使用できる。
【0041】
次ぎに実施例により、本発明を具体的に説明する。なお実施例における各種ガス(アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド)をはじめ、ハウスダスト、花粉等の微粒子物質の除去や、有機溶剤等のVOC系ガスとしてホルムアルデヒド、トルエンの消臭除去性能の測定は次のように行った。
【0042】
次に、本発明のフィルターユニットを空気清浄機(定格風量;5.0m/min、紫外線発光体;三共電気社製GL6型 6w)にセットし、六畳相当の消臭試験室(自然換気数0.5回/日、室温20度、湿度60%)の中央に置いて各種ガスの消臭試験をおこなった。
【0043】
(アンモニア消臭性能)
消臭試験室内において濃度が200ppmとなるようにアンモニアガスを注入し、1時間経過後にアンモニアガスの残存濃度を測定し、この測定値よりアンモニアガスを除去した総量を算出し、これよりアンモニアガスの除去率(%)を算出した。
【0044】
(硫化水素消臭性能)
アンモニアガスに代えて硫化水素ガスを用いて消臭試験室内において濃度が20ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして硫化水素の除去率(%)を算出した。
【0045】
(メチルメルカプタン消臭性能)
アンモニアガスに代えてメチルメルカプタンガスを用いて消臭試験室内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてメチルメルカプタンガスの除去率(%)を算出した。
【0046】
(酢酸消臭性能)
アンモニアガスに代えて酢酸ガスを用いて消臭試験室内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして酢酸ガスの除去率(%)を算出した。
【0047】
(アセトアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてアセトアルデヒドガスを用いて消臭試験室内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてアセトアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0048】
(ホルムアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてホルムアルデヒドガスを注入し、消臭試験室内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてアセトアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0049】
(トルエン消臭性能)
アンモニアガスに代えてトルエンガスを用い、消臭試験室内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてトルエンの除去率(%)を算出した。
【0050】
(二酸化窒素ガス除去性能)
アンモニアガスに代えて二酸化窒素ガスを用い、消臭試験室内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして二酸化窒素ガスの除去率(%)を算出した。
【0051】
(花粉除去性能)
一立方メートルのアクリルボックス内に20mgのスギ花粉アレルゲン(Cryj1)を分散させその後空気清浄機を30分間運転させた。吸気口をあけ、排気口からアクリルボックス内の空気を100l/minの風量で1分間吸引ブロアで吸引し、前記吸引ブロアの前部に取り付けられたダストサンプラー(直径6cmの円形状にカットしたポリエステル不織布がはさみ込まれている)へ残存するスギ花粉アレルゲンを吸着させた。サンプリングしたスギ花粉アレルゲンをELISA試験によりその不活化率を測定した。
【0052】
そして、除去率が95%以上であるものを「◎」、除去率が90%以上95%未満であるものを「○」、除去率が85%以上90%未満であるものを「△」、除去率が85%未満であるものを「×」と評価し表1のような結果を得た。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
(第一フィルター)
ポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布を、ウレタン樹脂エマルジョン100重量部、セバシン酸ジヒドラジドとゼオライトを一対一に混合した組成物200重量部、界面活性剤1重量部からなる処理液に浸漬しマングルで絞って乾燥することにより、消臭剤を10g/m担持する第一フィルター(厚さ0.3mm)を得た。
(第二フィルター)
目付け40g/m、平均繊度40dtexのポリプロピレン繊維製ニードルパンチ不織布を骨材層にし、その上にポリエステル繊維1g当たりに銅ゼオライトを150mgをアクリル樹脂によって担持した吸着層を重ね、さらに、その上に静電処理した平均繊度4dtexのポリエステル繊維製不織布を重ね合わせ、熱処理を施して一体化し、厚さ0.8mmのシートを作成した。つぎに、プリーツ加工機にて山数92にひだ折り加工してプリーツフィルターの形状にし、厚さ30mmの第二フィルターを得た。
(第三フィルター)
粒径10nmの酸化チタン光触媒1重量部と、平均粒径5μmの銅ゼオライトを1重量部を78重量部の水に加えた後、攪拌機により攪拌を行ない、分散液を得た。この分散液にさらに20重量部のアクリルシリコン系バインダー樹脂(固形分50%)を加え、良く攪拌して均一な分散液(処理液)を得た。この処理液に、ポリエステル製のスパンボンド不織布(10dtex 目付60g/m)
を浸漬した後、取り出してマングルで絞って乾燥させて、第三フィルター(厚さ0.7mm)を得た。酸化チタン光触媒のスパンボンド不織布への付着量は、スパンボンド不織布の1.5重量%、銅ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。
(第四フィルター)
椰子殻活性炭70重量部と天然パルプ30重量部を水200重量部に添加し、水スラリーを作成する。得られた凝集体水分散液より、抄紙機を使い湿式抄紙法によってシート化し、乾燥処理を行ない、活性炭混抄紙を得る。その後得られた活性炭混抄紙を3―クロロ―2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液にてカチオン化処理をし、乾燥した。次に、この活性炭混抄紙をコルゲート加工機によりハニカム形状に加工し、セル密度230セル/(インチ)のフィルター形状にした。次に0.5重量%のコバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム水溶液に含浸させ、水洗し、乾燥し、次に10g/lの炭酸カリウム水溶液に含浸させ、水洗し、乾燥して第四フィルター(厚さ15mm)を得た。コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量は活性炭混抄紙1g当たり400μgで、炭酸カリウムの活性炭混抄紙への担持量は活性炭混抄紙1g当たり10mgであった。こうして得られた各フィルターを枠体(タテ300mmヨコ400mm)に合わせてカットし接着剤で固定して図1のように配置し、空気清浄機とした。
【0054】
<実施例2>
次に、実施例1において、第三フィルターの作成時に、酸化チタン光触媒1重量部と、銅ゼオライトを1重量部に替えて酸化タングステン光触媒1重量部と銀ゼオライト1重量部とした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットを得た。
【0055】
<実施例3>
次に、実施例1において、第四フィルターの作成時に、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム水溶液に替えて鉄フタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液に替えて炭酸水素カリウム水溶液とした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットを得た。
【0056】
<実施例4>
次に、実施例1において、第四フィルターの作成時に、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量を活性炭混抄紙1g当たり900μgとした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットを得た。
【0057】
<実施例5>
次に、実施例1において、第四フィルターの作成時に、椰子殻活性炭40重量部とした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットを得た。
【0058】
<比較例1>
実施例1において、第一フィルターをフィルターユニットから省き、第二フィルターと第三フィルターと第四フィルターとからなるフィルターユニットとした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットとした。
【0059】
<比較例2>
実施例1において、第二フィルターをフィルターユニットから省き、第一フィルターと第三フィルターと第四フィルターとからなるフィルターユニットとした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットとした。
【0060】
<比較例3>
実施例1において、第三フィルターをフィルターユニットから省き、第一フィルターと第二フィルターと第四フィルターとからなるフィルターユニットとした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットとした。
【0061】
<比較例4>
実施例1において、第四フィルターをフィルターユニットから省き、第一フィルターと第二フィルターと第三フィルターとからなるフィルターユニットとした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットとした。
【0062】
<比較例5>
実施例1において、第四フィルターの作成時に、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムの活性炭混抄紙への担持量を活性炭混抄紙1g当たり100μgとした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットを得た。
【0063】
<比較例6>
実施例1において、第四フィルターの作成時に、椰子殻活性炭20重量部とした以外は実施例1と同様にして、フィルターユニットを得た。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】空気清浄機用フィルターユニットの概略構成図
【符号の説明】
【0065】
1 空気取り入れ口
2 プレフィルター(第一フィルター)
3 集塵プリーツフィルター(第二フィルター)
4 送風機
5 紫外線発光体
6 光触媒フィルター(第三フィルター)
7 ハニカム(コルゲート)フィルター(第四フィルター)
8 空気吹き出し口
9 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消臭機能を持つプレフィルター(第一フィルター)と、集塵プリーツフィルター(第二フィルター)と、光触媒フィルター(第三フィルター)と、金属フタロシアニン錯体と弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルター(第四フィルター)と、からなることに特徴のある空気清浄機用フィルターユニット。
【請求項2】
前記消臭機能を持つプレフィルター(第一フィルター)が、ヒドラジン誘導体と無機多孔質物質をバインダー樹脂で繊維に担持させた不織布からなることに特徴のある請求項1に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【請求項3】
前記集塵プリーツフィルター(第二フィルター)が、ULPAまたはHEPAの高効率粒子除去プリーツフィルターであることに特徴のある請求項1又は2に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【請求項4】
前記光触媒フィルター(第三フィルター)が酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化銅またはそれらの組み合わせからなる光触媒粒子と、吸着剤として銅ゼオライト、銀ゼオライト、亜鉛ゼオライト、白金ゼオライトの群から選択される1種または複数の金属ゼオライトを、繊維へ担持させた不織布からなることに特徴のある請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【請求項5】
前記金属フタロシアニン錯体がコバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン、マンガンフタロシアニンの群から選択される1種または複数の金属フタロシアニン錯体で、弱アルカリ性金属塩が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウムの群から選択される1種または複数の弱アルカリ性金属塩とを活性炭混抄紙に担持させたハニカムあるいはコルゲートフィルター(第四フィルター)であることに特徴のある請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【請求項6】
前記金属フタロシアニン錯体を活性炭混抄紙1g当たり200〜20000μg担持させ、弱アルカリ性金属塩を活性炭混抄紙1g当たり5〜50mg担持させてなる請求項5に記載の空気清浄機用フィルターユニット。
【請求項7】
前記活性炭混抄紙は、活性炭を40〜80重量%担持させてなる活性炭混抄紙である請求項6に記載の空気清浄機用フィルターユニット。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−260603(P2007−260603A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91136(P2006−91136)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】