説明

空気酸化型染毛剤

【課題】染色力に優れ、更には白髪隠蔽性、保存安定性にも優れた5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体を使用した空気酸化型染毛剤の提供。
【解決手段】次の成分(A)〜(E)を含有し、25℃におけるpHが10以上11以下である空気酸化型染毛剤組成物。
(A)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はそれらの塩
(B)アルカノールアミン
(C)アスコルビン酸又はその塩
(D)亜硫酸塩
(E)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色力に優れる空気酸化型染毛剤に関する。また、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メラニン前駆体である5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体を使用した空気酸化型染毛剤(特許文献1〜3)が知られている。しかしながら、これらの染毛剤は、毛髪に対する5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体の染色力を十分に引き出したものではなく、より染色力の高い空気酸化型染毛剤が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開昭63-258403号公報
【特許文献2】特開平2-74680号公報
【特許文献3】特表2002-518424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、染色力に優れ、更には白髪隠蔽性、保存安定性にも優れた5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体を使用した空気酸化型染毛剤を提供することを目的とする。また、空気酸化型染毛剤を製造する際における5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体の失活を抑制する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体と共に、アルカノールアミン、アスコルビン酸及び亜硫酸塩を併用すると共に、pHをごく狭い特定の範囲に調整することにより、染色力、白髪隠蔽性及び保存安定性の全てに優れた空気酸化型染毛剤組成物が得られることを見出した。また、空気酸化型染毛剤の製造の際、5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体を含有する水溶液を容器に充填する前に、アスコルビン酸又は亜硫酸塩を含有する水溶液を該容器に充填しておくことにより、5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体の失活を抑制できることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)〜(E)を含有し、25℃におけるpHが10以上11以下である空気酸化型染毛剤組成物を提供するものである。
【0007】
(A)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はそれらの塩
(B)アルカノールアミン
(C)アスコルビン酸又はその塩
(D)亜硫酸塩
(E)水
【0008】
更に本発明は、上記の空気酸化型染毛剤組成物及び噴射剤を耐圧容器内に充填したエアゾール式空気酸化型染毛剤を提供するものである。
【0009】
更に本発明は、上記のエアゾール式空気酸化型染毛剤組成物の製造方法であって、成分(A)を含有する水溶液を容器に充填する前に、成分(C)又は成分(D)を含有する水溶液を該容器に充填する製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はそれらの塩を含有する空気酸化型染毛剤の染色力を大きく改善でき、そのうえ白髪隠蔽性、保存安定性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、「空気酸化型染毛剤」とは、空気中の酸素により、メラニン前駆体である5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はそれらの塩が酸化重合し、色素を生成することを利用する染毛剤を指す。
【0012】
成分(A)の5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はそれらの塩はメラニン前駆体であり、これらが酸化重合することによりメラニン色素が生成し、毛髪を染めることができる。これらの塩としては、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。5,6-ジヒドロキシインドール又はその塩、及び5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はその塩を併用すると、毛髪をより自然な濃色に染めること、例えば、東洋人のように濃い髪色を有する人の白髪混じりの髪を、白髪の目立ちを抑え自然な色に染めることができ、好ましい。このとき、5,6-ジヒドロキシインドール又はその塩と5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はその塩とのモル比は、999:1〜1:1、更には99:1〜4:1であることが好ましい。なお、モル比は、各々の逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相HPLC)による定量値から算出される。
【0013】
成分(A)の空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、染色性、安定性、また経済性の点から0.01〜3質量%、更には0.02〜0.8質量%、特に0.05〜0.5質量%であることが好ましい。
【0014】
成分(B)のアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等が挙げられ、染色性の点からモノエタノールアミンが好ましい。
【0015】
成分(B)は、1種又は2種以上を使用することができ、その空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、染色性、安定性の点から0.01〜20質量%、更には0.1〜10質量%、そのうえ0.5〜5質量%、特に1〜3質量%であることが好ましい。
【0016】
成分(C)のアスコルビン酸又はその塩、及び成分(D)の亜硫酸塩は、酸化防止剤であり、これらを併用することで、pHが10以上11以下である本発明の空気酸化型染毛剤組成物の保存安定性を大きく向上することができるとともに、赤みを抑えた自然な濃色に毛髪を染めること、例えば、東洋人のように濃い髪色を有する人の白髪混じりの髪を、白髪の目立ちを抑え自然な色に染め、白髪隠蔽性を高めることができる。
【0017】
成分(C)又は成分(D)の塩としては、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。成分(C)としては、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムが好ましく、成分(D)の亜硫酸塩としては亜硫酸ナトリウムが好ましい。
【0018】
成分(C)は、1種又は2種以上を使用することができ、その空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、染色性、安定性の点から0.01〜5質量%、更には0.03〜2質量%、そのうえ0.05〜1質量%、特に0.1〜0.5質量%であることが好ましい。
【0019】
成分(D)は、1種又は2種以上を使用することができ、その空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、染色性、安定性の点から0.01〜5質量%、更には0.03〜2質量%、そのうえ0.05〜1質量%、特に0.1〜0.5質量%であることが好ましい。
【0020】
成分(C)と成分(D)とのモル比は、安定性と染色性の点から99:1〜1:99、更には4:1〜1:4であることが好ましい。
【0021】
成分(E)の水は、成分(A)〜(D)の溶媒として、また空気酸化型染毛剤組成物の担体として含有される。
【0022】
成分(E)の空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、30〜99.9質量%、更には50〜99質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物のpHは、25℃で10以上11以下の範囲に調整される。pHの調整方法としては、成分(B)を適量含有させることによる方法、又は他のpH調整剤を使用する方法が挙げられる。成分(B)以外のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、ブチルアミン等の無機又は有機塩基、塩酸、リン酸、クエン酸、乳酸等の無機又は有機酸、アルギニン等のアミノ酸、並びにそれらの塩が挙げられる。
【0024】
成分(A)〜(E)を含有し、pHをこの範囲内に調整することにより、染色性が高く、安定性も良好な空気酸化型染毛剤組成物を得ることができる。更に好ましいpHは、染毛性の点から10.0〜10.5である。
【0025】
pHの測定は、25℃においてpH計を用いて行う。エアゾール式染毛剤の場合でも、噴出液を測定すればよい。
【0026】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物は、更に成分(F)の水溶性ないし水分散性の合成ポリマーを含有することが好ましい。成分(F)により、毛髪への付着性が向上し、染毛性が向上する。更には、毛髪への塗布性が良好となり、剤の垂れ落ちを防止できる。
【0027】
成分(F)としては、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/アクリル酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体等の非イオン性合成ポリマー;ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-11等のカチオン性合成ポリマー;アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-39等の両性合成ポリマー;ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体、(低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸/デカジエン)クロスポリマー等のアニオン性合成ポリマーが挙げられる。中でも安定性、毛髪への塗布性、付着性、の点からアニオン性合成ポリマー、特にアクリル酸系のアニオン性合成ポリマーが好ましく、特に(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー(カーボポールETD2020、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2/以上ノベオン社)が好ましい。
【0028】
成分(F)は、1種又は2種以上を使用することができ、その空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、組成物の粘度を毛髪への塗布性、付着性に優れたものに調整する点から0.01〜5質量%、更には0.05〜3質量%、特に0.1〜1質量%であることが好ましい。
【0029】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物の粘度は、毛髪への塗布性、付着性の点から100〜8000mPa・s、更には300〜5000mPa・s、特に1000〜2000mPa・sであることが好ましい。なお、ここでの粘度は、25℃、B型回転粘度計で計測した値である。
【0030】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物は、染色性の向上及びコンディショニング効果の向上のため、更に成分(G)のシリコーンを含有することが好ましい。成分(G)としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリシリコーン-9、環状シリコーン等が挙げられる。これらの中でも染色性、コンディショニング効果の点からアミノ変性シリコーンが好ましい。
【0031】
成分(G)は、1種又は2種以上を使用することができ、その空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、0.01〜10質量%、更には0.1〜6質量%、特に0.3〜3質量%であることが好ましい。
【0032】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物は、染色性向上のため、更に成分(H)の水溶性多価アルコールを含有することが好ましい。成分(H)としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられ、中でも、1,3-ブチレングリコールとプロピレングリコールが好ましい。
【0033】
成分(H)は、1種又は2種以上を使用することができ、その空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、0.1〜20質量%、更には0.3〜10質量%、特に0.5〜8質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物は、噴射剤と共に耐圧容器内に充填し、エアゾール式空気酸化型染毛剤とすることが好ましい。エアゾール式とすることで、空気酸化型染毛剤組成物は密閉容器内に充填されるため、保存安定性が向上する。また、泡状に噴射される態様とすることで、空気との接触面積を大きくすることができ、染色性を向上することができる。
【0035】
このとき、良好な泡質を得るために、本発明の空気酸化型染毛剤組成物は、更に成分(I)界面活性剤を含有することが好ましい。成分(I)としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩系、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩系、アルキル又はアルケニル硫酸塩系、オレフィンスルホン酸塩系、アルカンスルホン酸塩系、飽和又は不飽和脂肪酸塩系、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩系、α-スルホン脂肪酸塩系、N-アシルアミノ酸系、リン酸モノ又はジエステル系、スルホコハク酸エステル系等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩系としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系等のアニオン界面活性剤;モノ又はジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩系等のカチオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル系、高級脂肪酸ショ糖エステル系、ポリグリセリン脂肪酸エステル系、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド系、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル系、アルキルサッカライド系、アルキルアミンオキサイド系、アルキルアミドアミンオキサイド系等の非イオン界面活性剤;イミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系等の両性界面活性剤が挙げられる。中でも、安定性、発泡性、感触向上の点から、非イオン界面活性剤、特にポリオキシアルキレンアルキルエーテル系非イオン界面活性剤が好ましい。
【0036】
成分(I)は、1種又は2種以上を使用することができ、その空気酸化型染毛剤組成物中の含有量は、0.01〜20質量%、更には0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0037】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物は、上記成分以外にパラフェニレンジアミン、1-ナフトール等の酸化染料前駆体、黒色401号等の直接染料、チタンブラック等の顔料、エタノール、ベンジルアルコール等の有機溶剤、セタノール等の高級アルコール、オレイン酸等の高級脂肪酸、流動パラフィン等の炭化水素油、ラノリン等のロウ類、動植物性油脂類、動植物由来のエキス類、タンパク質加水分解物、香料、金属封鎖剤、防腐剤等を適宜含有することができる。
【0038】
また、噴射剤としては、液化石油ガス、ジメチルエーテル、炭酸ガス、窒素ガス等が使用できるが、発泡性の点から液化石油ガス、ジメチルエーテルが好ましい。
【0039】
噴射剤は、1種又は2種以上を使用することができ、適度な噴射速度を得るために、噴射剤と空気酸化型染毛剤組成物との重量比が20:80〜1:99、特に3:97〜15:85であることが好ましい。また、充填後の容器内圧を20℃で0.2〜0.5MPaとすることが好ましい。
【0040】
本発明のエアゾール式空気酸化型染毛剤で使用される耐圧容器は、金属製の缶と内袋を有する二重容器であることが好ましい。該内袋の材質は、耐アルカリ性であることを要し、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン層を有することが好ましく、更に、高密度ポリエチレンとアルミの積層構造を有するものや直鎖低密度ポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂との積層構造を有するもの、特に、メタロセン触媒による均一な直鎖低密度ポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂との積層構造を有するものが好ましい。
【0041】
成分(A)の5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はそれらの塩は、酸素に不安定であるため、本発明の空気酸化型染毛剤組成物の製造及び容器への充填に際し、組成物中及び容器内の酸素を除去することが必要である。
【0042】
空気酸化型染毛剤組成物の容器への充填は、嫌気条件(酸素濃度0.1質量%以下)としたボックス内で行うことが好ましい。ただし、このような設備が無い場合にも、エアゾール用耐圧容器への充填を次のように行うことができる。まず容器内の空気を窒素ガスでパージし、マウンテンカップをクリンチして取り付ける。その後容器内を室温で48kPa以下の圧力とする脱気操作、窒素ガスのパージ操作を行い、容器内の酸素を除去する。また、これらの脱気操作と窒素ガスのパージ操作を繰り返すことがより好ましい。
【0043】
空気酸化型染毛剤組成物の該容器への充填は、成分(A)の失活を抑制するために、次のように行うことが好ましい。成分(A)を成分(E)に溶解した水溶液X(酸素に触れない容器に封入しておく)、酸化防止剤である成分(C)及び/又は成分(D)を成分(E)に溶解した水溶液Y、並びに、成分(B)、任意に成分(C)又は成分(D)、及び他の成分を成分(E)に溶解した水溶液Zを用意する。上記のように酸素を除去した容器に、まず水溶液Yと水溶液Zを充填し、混合する。このとき水溶液Yと水溶液Zの充填順序はどちらが先でも良く、また、予め混合した水溶液Yと水溶液Zとの混合液を充填しても良い。水溶液Y中の酸化防止剤によって、水溶液Z中の溶存酸素を除去することができる。次に、水溶液Xを充填する。その後、噴射剤を充填する。
【0044】
この時、水溶液Xにおける成分(A)の濃度は、0.1〜5質量%、特に0.5〜2質量%であることが好ましく、水溶液Yにおける酸化防止剤の濃度は、1〜20質量%、特に5〜15質量%であることが好ましい。
【0045】
本発明の空気酸化型染毛剤組成物を用いた染毛方法としては、染毛剤組成物を手又はブラシ等に取り、適量を毛髪に適用し、1〜60分間放置後洗い流す。その後任意にシャンプー、リンス等で毛髪を処理して乾燥する。なお、放置中に、ドライヤー等を用いて、熱と酸素を供給することにより、染色力を増大させることもできる。
【実施例】
【0046】
実施例1〜2、比較例1〜2
以下に、実施例1(表1)のエアゾール式空気酸化型染毛剤の製造手順を示す。
【0047】
・エアゾール式空気酸化型染毛剤の製造
1)空気酸化型染毛剤組成物の調製
1-1)水溶液X(組成物全体の25質量%)
特開2006-160670号公報の実施例1と同様の方法で水溶液Xを調製した。成分(A)の濃度は1質量%であり、5,6-ジヒドロキシインドールと5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸とのモル比は9:1であった。この水溶液Xを、保管用のステンレス製加圧容器に入れ、酸素への暴露を防ぐため窒素で0.2MPaに加圧した。
【0048】
1-2)水溶液Z(組成物全体の70質量%)
精製水を624.8gビーカーに取り、これにカーボポールETD2020を3.7g加えた。プロペラを用い150rpmで30分間撹拌して湿潤させた後、モノエタノールアミンを15g加えて中和し、膨潤させ、均一になるまで撹拌した。その後、ソフタノール90を15g、1,3-ブチレングリコール-Pを30g、シリコーンCF2470を10g、ユーカリ抽出液EBLを1g、香料を0.5g加えて、均一になるまで撹拌した。(全量700g)
【0049】
(注)
カーボポールETD2020(薬事成分名:アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、Lubrizol Advanced Materials, Inc.製)
モノエタノールアミン(薬事成分名:モノエタノールアミン、三井化学株式会社製)
ソフタノール90(薬事成分名:ポリオキシエチレントリデシルエーテル、株式会社日本触媒製)
1,3-ブチレングリコール-P(薬事成分名:1,3-ブチレングリコール、協和発酵ケミカル株式会社製)
シリコーンCF2470(薬事成分名:ジメチコン/アミノ変性シリコン・PEG共重合体混合エマルション、東レ・ダウコーニング株式会社製)
ユーカリ抽出液EBL(薬事成分名:ユーカリエキス、天津力生製薬有限公司製)
【0050】
1-3)水溶液Y(組成物全体の5質量%)
アスコルビン酸及び亜硫酸ナトリウムは空気中では水溶液系で速やかに酸化されやすいため、水溶液Yは用時調製した。
精製水を45gビーカーに取り、これにアスコルビン酸を3g加えて溶解するまで撹拌した。その後、亜硫酸ソーダを2g加えて溶解するまで撹拌した(全量50g)。
【0051】
(注)
アスコルビン酸(薬事成分名:アスコルビン酸、DSM Nutritional Products Ltd.製)
亜硫酸ソーダ(薬事成分名:無水亜硫酸ナトリウム、大東化学株式会社製)
【0052】
2)エアゾール容器への充填
エアゾール容器は、二重容器であるHiCR缶(外缶はエポキシフェノール系樹脂で内面コートしたアルミニウム缶、内袋は材質がメタロセン触媒による均一な直鎖低密度ポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂との積層構造を有する内袋)を用いた。HiCR缶にマウンテンカップをクリンチして取り付けた後、窒素ガスのパージ操作と脱気操作を交互に4回繰り返して、容器内部の酸素を濃度0.1%以下とした。
次いで、このHiCR缶に70gの水溶液Z及び5gの水溶液Yを充填し、缶を振とうして水溶液を混合し、溶存酸素を除去した。次いで、25gの水溶液Xを充填することで、空気酸化型染毛剤組成物を調製した。その後、更に10gの液化石油ガス(0.44MPa(20℃))を充填し、エアゾール式空気酸化型染毛剤(全量110g)とした。
【0053】
同様に、実施例2及び比較例1〜2のエアゾール式空気酸化型染毛剤を製造した。
さらに、これらの染色力、白髪隠蔽性及び保存安定性を下記の基準で評価し、その結果を表1に示す。
【0054】
・染色力
乾燥した中国人女性白髪1gの毛束に、実施例1〜2、比較例1〜8の空気酸化型染毛剤組成物1gを塗布し、30℃恒温槽中で5分間放置後、水洗、シャンプー後、室温にて自然乾燥した。この操作を3回繰り返した。色彩色差計(CR-300/コニカミノルタ社)で、処理前と処理後の毛束の色差ΔEを測定した。
【0055】
・白髪隠蔽性
乾燥した中国人女性の黒髪と白髪が7:3で混じった1gの毛束に、実施例1〜2、比較例1〜2の空気酸化型染毛剤組成物1gを塗布し、30℃恒温槽中で5分間放置後、水洗、シャンプー後、室温にて自然乾燥した。この操作を3回繰り返した。白髪隠蔽性を専門パネラーの目視で評価した。
【0056】
・保存安定性
乾燥した中国人女性白髪1gの毛束に、40℃恒温槽中に6ヶ月間静置後の実施例1〜2、比較例1〜2の空気酸化型染毛剤組成物1gを塗布し、30℃恒温槽中で5分間放置後、水洗、シャンプー後、室温にて自然乾燥した。この操作を3回繰り返した。色彩色差計(CR-300/コニカミノルタ社)で、処理前と処理後の毛束の色差ΔEを測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
以上のように、本発明の空気酸化型染毛剤組成物によれば、従来の5,6-ジヒドロキシインドール又はその誘導体を使用した空気酸化型染毛剤に比べ、その染色力、白髪隠蔽性、保存安定性を大きく改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E)を含有し、25℃におけるpHが10以上11以下である空気酸化型染毛剤組成物。
(A)5,6-ジヒドロキシインドール、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸又はそれらの塩
(B)アルカノールアミン
(C)アスコルビン酸又はその塩
(D)亜硫酸塩
(E)水
【請求項2】
更に、成分(F)水溶性ないし水分散性の合成ポリマーを含有する請求項1に記載の空気酸化型染毛剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気酸化型染毛剤組成物及び噴射剤を耐圧容器内に充填したエアゾール式空気酸化型染毛剤。
【請求項4】
耐圧容器が、金属製の缶と内袋を有する二重容器であり、該内袋の材質が直鎖低密度ポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂との積層構造を有する請求項3に記載のエアゾール式空気酸化型染毛剤。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のエアゾール式空気酸化型染毛剤の製造方法であって、成分(A)を含有する水溶液を容器に充填する前に、成分(C)又は成分(D)を含有する水溶液を該容器に充填する製造方法。

【公開番号】特開2009−137877(P2009−137877A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315366(P2007−315366)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】