説明

空調システムを制御するための制御システム

本発明は、例えば乗り物のキャビンのような筐体にある空気を処理するように構成される空調システムを制御するための制御システムに関する。前記制御システムは、第1の検出ユニット、第2の検出ユニット及び制御器を有する。前記第1の検出ユニットは、前記空調システムに含まれる空気清浄ユニットの上流側で、ある大気汚染物質の濃度の測定に基づく第1の出力信号を生成するように構成される。前記第2の検出ユニットは、前記空気清浄ユニットの下流側で、ある大気汚染物質の濃度の測定に基づく第2の出力信号を生成するように構成される。前記第1の出力信号及び前記第2の出力信号は、制御器により行われる意思決定プロセスにおいて特定の目的に用いられる。前記制御器は、前記第1の出力信号が既定のしきい値を超過するとき、前記空調システムを再循環モードに切り換えるように構成される。さらに、前記制御器は、例えば前記空調システムが前記外気取入モードで動作するとき、前記空調システムを通過する全ての空気流における筐体の外から入る空気と前記筐体から再循環する空気との混合比のような、前記空調システムの設定を微調整するように構成される。本発明による制御システムは、機能をさらに増大させ、様々な環境の下で密閉空間の内部に許容できる空気の品質を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムを制御するための制御システムに関する。この空調システムは、上流側及び下流側を持つ空気清浄ユニットを有し、この空気清浄ユニットは、ユニットの下流側に置かれた筐体内に空気流を送るように構成されている。この空調システムは、再循環モード又は外気取入モードで動作するように構成され、前記制御システムは、第1の検出ユニット及び制御器を有し、前記第1の検出ユニットは、前記空気清浄ユニットの上流側で行われる空気の第1の測定に基づく第1の出力信号を生成するように構成され、前記制御器は、前記第1の出力信号が既定のしきい値を超過するとき、前記空調システムを再循環モードに切り換えるように構成される。
【0002】
本発明は、キャビン(cabin)を有する乗り物及び制御システムにも関し、ここで前記筐体はキャビンである。
【背景技術】
【0003】
人間の健康を守るために、健康を害する大気汚染物質が吸い込まれないようにすることが重要である。健康を害する大気汚染物質の第1の実施例は、例えば一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NxOy)、揮発性有機化合物、二酸化硫黄(SO)及びオゾン(O)のような有害ガスである。健康を害する大気汚染物質の第2の実施例は、吸入可能な粒子状物質である。このような吸入可能な粒子状物質は、微粒子(約2.5μmから10μmの間の相当径(equivalent diameter)を持つ粒子)及び超微粒子(10nmから2.5μmの間の相当径を持つ粒子)を有する。超微粒子は、肺組織に沈積し、最終的に肺組織に封入する傾向があるので、特に健康に害がある。
【0004】
健康を害する大気汚染物質は特に、燃焼発生源から発生する。産業上の燃料発生源及び他の定置燃焼発生源の地域を除けば、燃焼に関連する健康を害する大気汚染物質の濃度は、自動車の交通が存在する場所又はその近くでは高い。非常に高い局所的な濃度は特に、トンネル内、交差点又はその近く及び/又は限られた換気及び/又は限られた風速の条件下での交通待ちの列又はその近くで生じる。高濃度の健康を害する大気汚染物質は、ビル若しくは家の一室のような密閉空間内、又は乗り物のキャビン内にも発生する。特に自動車の運転手及び同乗者は、排気ガス及び/又は粒子により汚染された外気が自動車のキャビンに入るとき、高濃度の健康を害する大気汚染物質に簡単に曝されてしまう。これは、自動車の空調システムが外気取入モードで動作するときに起こり、このモードでは、乗り物の外から空気がキャビンに入ることが可能である。従って、自動車の外の空気に関係する状態に応じて、外気取入モードから再循環モードに前記空調システムを自動的に切り換えることが望ましい。再循環モードでは、外気の吸入は停止され、キャビンの空気だけが前記空調システムを介し再循環される。
【0005】
乗り物における換気システム制御するためのセンサシステムは、米国特許番号5725425号により知られている。この換気システムは、再循環モード又は空気流入モードで動作するように構成される。前記センサシステムは、ガスセンサ素子及び評価ユニットを有する。このガスセンサ素子は、乗り物の外の空気におけるある特定の有害ガスの濃度に基づく出力信号を生成するように構成される。前記評価ユニットは、前記ガスセンサ素子の出力信号の変化率が既定の限界を超えたらすぐに、前記換気システムを再循環モードに切り換えるための信号を生成するように構成される。言い換えると、既知のセンサシステムにガスセンサ素子があることは、乗り物の外の空気に関係する状態に応じて、前記換気システムが空気流入モードから再循環モードに切り換えられることを可能にし、これにより健康を害するガス状の大気汚染物質が前記換気システムを介して外から乗り物のキャビンに入らないようにする。
【0006】
しかしながら、再循環モードでは、前記空調システムを介して外から空気が乗り物のキャビンに入ることはできないので、このキャビン内部の空気の質及び快適度は、例えば、湿気、二酸化炭素及び/又は同乗者のタバコの煙の生成、又はこのキャビン内部の材料による臭気の放出によってすぐに悪化する。安全且つ快適なキャビンの空気の状態を維持する間、このキャビン内部の汚染レベルを最低限にするために、前記空調システムを再循環モードから、少なくともある程度、外から空気がキャビンに入ることが可能である外気取入モードに即時ではないとしても、とても早く自動的に切り換えることができることも従って望ましい。上記外気取入モードでは、前記空調システムを介して前記キャビンに入る空気は、一部は再循環する空気及び一部は外気から調節可能な混合比で構成される。この文脈において、最適化した混合比は、前記キャビンから例えば余分な湿気、二酸化炭素、臭気、タバコの煙等を素早く除去するために外気を用いた十分なキャビンの換気と、空調システムを介して外から前記キャビンに入る大気汚染物質の最小化との間における適切な妥協の結果である。
【0007】
既知のセンサシステムにおいて、前記換気システムを再循環モードと外気取入モードとの間を切り換える決定は、ガスセンサ素子の出力信号に基づくと共に、電子神経回路網又は電子ファジー論理ユニットにより支えられている。
【0008】
換気システムを介してキャビンに入る空気流において、再循環する空気と外気との間の混合比を最適化することはできないため、既知のセンサシステムは限られた機能を持つ。従って、前記既知のセンサシステムは、様々な環境の下で密閉空間の内部に許容できる空気の品質を維持することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、向上した機能を持つ冒頭の段落に述べた種類の制御システムを提供することである。
【0010】
本発明によれば、本目的は、前記制御システムはさらに、空気清浄ユニットの下流側で行われる空気の第2の測定に基づく第2の出力信号を生成するように構成される第2の検出ユニットと、この第2の出力信号に基づいて空調システムの設定を微調整するように構成される制御器とを有することで達成される。
【0011】
既知のセンサシステムの前記限られた機能は、この既知のセンサシステムに含まれる支援手段の限られた機能から大部分は生じていることが本発明により認識されている。さらに、この既知のセンサシステムは、空調ユニットに入る外気の測定が唯一できるが、キャビンの空気又は空調ユニットを介して前記キャビンに入る空気の測定はできない。前記機能を向上させるために、前記制御システムに第2の検出ユニットが追加される。さらに、これら第1及び第2の検出ユニットは、空気清浄ユニットの上流側及び下流側において夫々空気を測定するように構成される一方、各検出ユニットの出力信号は、ある特定の目的だけに使用される。本発明の制御システムにおいて、第1の検出ユニットの出力信号(すなわち第1の出力信号)は、外気取入モードから再循環モードへ空調ユニットを切り換えることに関する決定に用いられ、ここで前記切り換えは好ましくは、空気清浄ユニットの上流側における健康を害する大気汚染レベルの発生にできるだけ早く従う。第2の検出ユニットの出力信号(すなわち第2の出力信号)は、空調システムの設定、特に空調システムを介して前記筐体に入る空気流の体積を制御する設定、並びに空調システムが外気取入モードで動作するとき、前記空気流における再循環する空気と外気との間の混合比を微調整するのに用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
空調システムの設定を微調整する目的は、2つに分けられる。1つめは、必要とされる全ての空気流を外へ換気する最大の空気量を持つ前記筐体が供給されるべきである。2つめは、外から筐体内への汚染物質の侵入が最小限にされるべきである。これは一般的に、空調システムを介して筐体に入ることが可能である外気の量に上限を課す。空調システムの最適化した設定は、上述した要望の間における適切な妥協点により生じる。
【0013】
上記検出ユニットの配列及びタスクの特定の割り当ては、空調システムをある動作モードに切り換える決定に関し、前記制御システムの機能を向上させる。従って、本発明による制御システムは、様々な環境の下で密閉空間の内部に許容できる空気の品質を維持することができる。
【0014】
本発明の制御システムの実施例は、請求項2に定義される。本実施例において、前記第2の検出ユニットは、空調システム内で第2の測定を行うように構成される。本実施例は、前記制御システムの信頼性を高める。第1の出力信号及び第2の出力信号をこれらの相互整合性及び相互互換性に関し検査を行うことにより、早期の故障診断が得られ、第1の出力信号及び/又は第2の出力信号に基づく制御器により行われる行動の信頼性を高めることになる。
【0015】
本発明の制御システムの実施例は、請求項3に定義される。本実施例において、空気清浄ユニットは、前記第2の検出ユニットがそれに敏感である汚染物質を前記空気流から少なくとも一部除去するように構成される。従って、前記第2の出力信号は、空気清浄ユニットの性能の影響を受ける。前記第1の出力信号に対し前記第2の出力信号を監視することにより、前記空調システムの空気清浄性能が検査され、これにより制御システムのさらに高い信頼性を得る。
【0016】
本発明の制御システムの実施例は、請求項4に定義される。本実施例において、前記第2の検出ユニットは、前記筐体内で第2の測定を行うように構成される。本実施例は、外からであるが空調システム自身を介さずに(例えば開いている窓を介して)前記筐体に入った又は筐体内の汚染源(例えばタバコを吸っている人間)から発生するかのどちらか一方である大気汚染物質が前記筐体内に存在することに、前記空調システムが反応することを可能にすることで前記機能をさらに向上させる。筐体内にいる人々が実際に吸い込むと共に、彼らの健康及び幸福に影響を及ぼし得る筐体内の空気であるために、筐体内の大気汚染物質を直接測定することが望ましい。
【0017】
本発明の制御システムの実施例は、請求項5に定義される。本実施例において、第1の検出ユニットはガスセンサを有する。本実施例は、このガスセンサが非常に短い応答時間を持ち、それにより外気における高濃度の健康を害するガス状の大気汚染物質が空調システムの吸気口に達するとき、直ちに前記空調システムが再循環モードに切り換えることを可能にし、それにより前記健康を害するガス状の大気汚染物質が殆ど筐体に入らせないので、前記機能をさらに向上させる。
【0018】
本発明の制御システムの実施例は、請求項6に定義される。本実施例において、第2の検出ユニットは、粒子センサを有する。本実施例は、前記空調システムを通過する空気流及び/又は筐体内の空気における浮遊粒子の絶対濃度を決めることができるので、前記機能をさらに増大させる。
【0019】
本発明の制御システムの実施例は、請求項7に定義される。本実施例において、空気清浄ユニットは、粒子フィルタを有し、前記粒子センサは超微粒子センサである。本実施例は、前記粒子フィルタ及び超微粒子センサの組み合わせは、特に健康を害する浮遊する超微粒子への暴露から、筐体内を高度に保護することを提供するので、前記機能をさらに増大させる。
【0020】
本発明による制御システム及び乗り物のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施例から明らかであると共に、これら実施例を参照して説明される。
【0021】
本発明による制御システム及び乗り物の実施例は、付随する図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による制御システムの概略図。
【図2A】第1の検出ユニットの概略図。
【図2B】第2の検出ユニットの概略図。
【図3】前記第1の測定位置の説明図。
【図4A】第1の実施例における前記第2の検出ユニットの測定位置の説明図。
【図4B】第2の実施例における前記第2の検出ユニットの測定位置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1の制御システム1は、第1の検出ユニット11、第2の検出ユニット12及び制御器13を有する。この第1の検出ユニット11は、空気の第1の測定に基づく第1の出力信号4を生成する。第2の検出ユニット12は、空気の第2の測定に基づく第2の出力信号5を生成する。第1の出力信号4及び第2の出力信号5は、制御器13により意思決定プロセスにおいて使用され、空調システム2の動作及び設定を制御するのに用いられる制御信号6を生成する。
【0024】
この空調システム2は、筐体3の内部の空気質を制御するよう構成される。この空調システム2は、上流側21a及び下流側21bを持つ空気清浄ユニット21を有する。この空気清浄ユニット21に次いで、前記空調システム2が例えば送風ユニット、調整弁ユニット、暖房ユニット、冷却ユニット、加湿ユニット又はこれらの組み合わせのような(図1には示されていない)追加の構成要素を有してもよい。前記空調ユニット2は、暖房、換気及び空調(HVAC)システムの一部でもよい。
【0025】
前記空気清浄ユニット21は、空気流7から粒子を少なくとも一部除去するためのフィルタを有する。このような浮遊微粒子の例は、ちり粒子、すす粒子及び無機炭化粒子である。上記フィルタは、ひだ付きのミディアムフィルタ、HEPA(high effective particulate air)フィルタ、静電フィルタ又はこれらの組み合わせである。代わりに、前記空気清浄ユニット21は、前記空気流7から汚染物質を除去することが可能である如何なるユニットでもよい。浮遊粒子に次いで、大気汚染物質の他の例は、例えば、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NxOy)、揮発性有機化合物、二酸化硫黄(SO)及びオゾン(O)のような有害ガスである。これらガスは、活性炭フィルタ、ある種類の触媒フィルタ、化学的に含浸した吸収フィルタ又はこれらの組み合わせを用いて空気から除去される。
【0026】
図1において、空気流7は前記空気清浄ユニット21を通り、この空気清浄ユニット21の下流側21bに置かれた筐体3に入る。通常、前記空調システム2は、(図1に示されない)配管を介して前記筐体3に接続されている。この筐体3は、例えば、ビルの一室又は乗り物のキャビンでもよい。筐体3に空気が入ることは、空調システム2を介さず、他の方法で起こすこともできる。例えば、筐体3が部屋又はキャビンである場合、空気は開いている窓を介して筐体3に入ることも可能である。
【0027】
前記空調システム2は、再循環モード又は外気取入モードで動作するように構成される。再循環モードでは、筐体3からの空気は、前記空調システム2を介して再循環され、この空調システム2を介して外気が筐体3に入ることができない。外気取入モードでは、前記空調システム2を介してある程度外気が筐体3に入ることができる。この外気取入モードは通例、外気の供給及び筐体3から空気の再循環の両方を含むため、前記空調システム2の設定により決められる調節可能な混合比を持つ混合モードである。
【0028】
再循環する空気は、前記空気清浄ユニット21を1回以上通るので、再循環する空気における浮遊粒子(さらに他の汚染物質)の量は一般的に、少なくとも空気清浄ユニット21が前記空気流7から浮遊粒子を除去する何らかの機能を持つ場合、且つ粒子汚染源が筐体3の内部に存在していない場合、前記空気清浄ユニット21を1回だけ通過した外気における浮遊粒子の量よりも少ない。それ自体では、筐体3に入る浮遊粒子の量は、空気流7における外気と再循環する空気との間の混合比の関数となり、故に空調システム2の設定によって調整されることができる。前記空気流7において比較的増大した再循環する空気の量は、空気流7における浮遊粒子の濃度、特に筐体3の外で発生する浮遊粒子の濃度を減少させる。同時に、筐体3の内部で発生する大気汚染物質の濃度、例えば二酸化炭素、水蒸気、揮発性有機化合物及び臭気の濃度は、少なくとも空気清浄ユニット21によりこれら汚染物質が前記空気流7から除去されない場合、増大する。希釈によって、前記空気流7において比較的増大した外気の量が筐体3の内部で発生する大気汚染物質の前記空気流7における濃度を減少させる。前記空気流7の全体的な体積、及び前記空気流7の再循環する空気と外気との間の混合比の両方を決める空調システム2の設定の適切な制御は、外から大気汚染物質が筐体3の中へ入ること、及び筐体3の内部で発生する大気汚染物質が増大することの両方を最小限にすることができる一方、筐体3の内部に快適な大気状態を維持する。
【0029】
第1の出力信号4及び第2の出力信号5は、前記制御器13により行われる意思決定プロセスにおいて相補的パラメタとして使用される。前記第2の出力信号5は、外気取入モードで前記空調システムの設定を微調整するのに用いられる。このような設定の例は、空気の再循環と外気の供給との間における比率である。上記設定のもう1つの例は、例えばファンの速度のような、単位時間当り空調システムを介し筐体3に入る前記空気流7の体積を制御する設定である。
【0030】
第1の出力信号4は、それが既定のしきい値を超過するとき、前記意思決定プロセスに用いられ、この場合、この意思決定プロセスの結果は、前記空調システムを直ちに再循環モードに切り換えることである。言い換えると、外気を筐体3に入れる決定は基本的に、内部の汚染レベルに応じて、主に第2の出力信号5に基づいている一方、第1の出力信号4は、突然増大する外気の汚染レベルに応じて、前記空調システム2を再循環モードに切り換えるための切換信号として基本的に利用する。第1の出力信号4及び第2の出力信号5をこのように選択的に使用することにより、制御器13は、例えば筐体3の内部にいる人々が大気汚染物質に曝されることを最小限にするためのような、空調システム2の設定を素早く調節することを可能にする一方、筐体3に少なくとも最小量の外への換気を供給する、並びに筐体3内の温度、湿度及び二酸化炭素レベルのような快適且つ安全な周囲条件を維持する。
【0031】
制御器13は、例えば電子神経回路網及び/又は電子ファジー論理ユニットのような意思決定プロセスを支援するための手段を任意に有する。さらに、制御器13は、他のセンサユニットからも、例えば温度検出ユニット及び/又は湿度検出ユニット及び/又は二酸化炭素検出ユニットからも出力信号を任意に受信する。
【0032】
図2Aの第1の検出ユニット11は、第1のセンサ111及び第1のデータ評価ユニット112を有する。この第1のセンサ111は、空気中のあるガスの濃度の変化率に基づく出力信号4'を生成するように構成されるガスセンサである。代わりに、第1のセンサ111は、ある大気汚染物質の濃度に基づく出力信号を生成するように構成される如何なるセンサでもよい。出力信号4'は、第1のデータ評価ユニット112により処理され、これがこの出力信号4'に基づく第1の出力信号4を生成する。前記ガスセンサは、外気のガス状の汚染レベルの変化に素早く反応するように構成される。従って、制御器13により、空調システム2は、外気の品質の素早い悪化に応じて、直ちに再循環モードに切り換えることができ、これにより外気の汚染物質が殆ど筐体3に入らない。
【0033】
図2Bの第2の検出ユニット12は、第2のセンサ121及び第2のデータ評価ユニット122を有する。この第2のセンサ121は、ある浮遊粒子の絶対濃度に基づく出力信号5'を生成するように構成される粒子センサである。代わりに、第2のセンサ121は、ある大気汚染物質の濃度に基づく出力信号を生成するように構成される如何なるセンサでもよい。出力信号5'は、第2のデータ評価ユニット122により処理され、これがこの出力信号5'に基づく第2の出力信号を生成する。
【0034】
特定の実施例において、前記第2のセンサ121は、超微粒子センサである。超微粒子センサは、空気中の超微粒子の絶対濃度を査定するのに適している。本発明の文脈において、超微粒子は、約10nmから約2.5μmの間の相当径を持つ粒子である。超微粒子センサの実施例は、WO2006/016346 A1及びWO2006/016345 A1に開示されている。
【0035】
図3に示されるように、前記第1のセンサユニット11は、空気清浄ユニット21の上流側21aにおいて空気の第1の測定を行うように構成される。図3において、完全な第1の検出ユニット11が空調システム2の内部にあることが示されていたとしても、前記第1の検出ユニット11により測定される空気が前記空気清浄ユニット21の上流側21aにある限り、この空調システム2の内部にある前記第1のセンサ111だけを持つことも可能である、又は前記空調システム2の外側、例えば空調システム2の外気吸入口内若しくはその近傍に完全な第1の検出ユニット11を持つことも可能である。
【0036】
図4に示されるように、前記第2の検出ユニット12は、空気清浄ユニット21の下流側21bにおいて空気の第2の測定を行うように構成される。図4Aに示される第1の実施例において、前記第2の検出ユニット12は、空調システム2の内部で第2の測定を行うように構成される。図4Aにおいて、完全な第2の検出ユニット12が空調システム2の内部にあることが示されていたとしても、本実施例は、このような構成に制限されない。前記空調システム2の内部にある第2のセンサ121だけを持つことも可能である、又は前記空調システム2の外側に完全な第2の検出ユニット12を持ち、空気清浄ユニット21の下流側21bにおいて前記空調システム2の一部から前記第2の検出ユニット12へ空気をダクトで送る手段を使用することも可能である。本実施例において、第1の出力信号4及び第2の出力信号5は、これらの相互整合性及び相互互換性に関し検査を行い、これにより、早期の故障診断及び意思決定プロセスの高い信頼性を得る。本実施例は、筐体3の内部に大気汚染源が存在していないとき、特に有用である。本実施例は、空気清浄ユニット21が前記第2の検出ユニット12から反応を誘発する空気からこれらの汚染種を少なくとも一部除去することが可能である場合、空気清浄ユニット21の機能を調べるのにも有用である。
【0037】
図4Bに示される第2の実施例において、前記第2の検出ユニット12は、筐体3の内部で第2の測定を行うように構成される。本実施例は、大気汚染源がこの筐体3の内部に存在しないとき、特に有用である。この場合、前記第2の出力信号5は、前記第1の出力信号4と必ずしも相関している必要はなく、空調システム2は、前記第2の検出ユニット12が前記空調システム2を介し筐体3に入らなかった高濃度のある大気汚染物質の存在を知らせるとき、外気取入モードに切り換えることができる。
【0038】
本発明が図面及び上記記載において詳細に説明及び開示されたのに対し、このような説明及び開示は、実施例又は模範例と考えられるべきであり、限定していると考えるべきではない。つまり、本発明はこれら開示された実施例に制限されない。これら開示された実施例に対する変形例は、請求される本発明を実施する際、当業者により、図面、明細書及び特許請求の範囲の研究から理解及びもたらされることができる。請求項において、"有する"という用語は、他の要素を排除するものではなく、複数で表現していないことは、それらが複数あることを排除するものではない。ある方法が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これら方法の組み合わせが有利には用いられないことを示しているのではない。請求項における如何なる参照符号も請求の範囲を制限すると考えるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側及び下流側を持つ空気清浄ユニットの前記下流側に置かれた筐体内に空気流を送るように構成される前記空気清浄ユニットを有すると共に、再循環モード又は外気取入モードで動作するように構成される空調システムを制御する制御システムであり、前記空気清浄ユニットの前記上流側で行われる空気の第1の測定に基づく第1の出力信号を生成するように構成される第1の検出ユニットと、前記第1の出力信号が既定のしきい値を超過するとき、前記空調システムを再循環モードに切り換えるように構成される制御器とを有する制御システムにおいて、前記制御システムはさらに、前記空気清浄ユニットの前記下流側で行われる空気の第2の測定に基づく第2の出力信号を生成するように構成される第2の検出ユニットと、前記第2の出力信号に基づいて前記空調システムの設定を微調整するように構成される制御器とを有することを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記第2の検出ユニットは、前記空調システム内で前記第2の測定を行うように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記空気清浄ユニットは、前記第2の検出ユニットがそれに敏感である汚染物質を前記空気流から少なくとも一部除去するように構成される請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第2の検出ユニットは、前記筐体内で前記第2の測定を行うように構成される請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1の検出ユニットは、ガスセンサを有する請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記第2の検出ユニットは、粒子センサを有する請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記空気清浄ユニットは、粒子フィルタを有し、前記粒子センサは、超微粒子センサである請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記筐体はキャビンである、前記キャビン及び請求項1に記載の制御システムを有する乗り物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2010−515622(P2010−515622A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545261(P2009−545261)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050037
【国際公開番号】WO2008/084432
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】