説明

空調ダクトとその組付け方法

【課題】
解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるダクトは、その吹出し口部(雌端部)の外面の形状は成形金型によって規制することができるが内面の形状はまったく規制することができず、気温、湿度、風速等の成形環境や、パリソン肉厚、樹脂温等の成形条件によって内面寸法が大きく変わるので相手部品(雄端部)の外面とのクリアランスが一定せず、組付けガタを完全になくすことはできないという点である。
【解決手段】
吹出し口部に圧縮変形受容部を設け、該圧縮変形受容部付き吹出し口部の押し広げられた反発力で相手部品が空調ダクトにしっかりと締め付けられるようにすることにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される自動車用空調ダクトとその組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調ダクトの組付け方法に関する従来技術としては特許文献1の請求項1に開示されている「雄端部を有する一方のダクトと雌端部を有する他方のダクトとを備え、上記雄端部の端縁に沿って環状に設けた弾性シール部材を介在させて、上記雌端部を雄端部の外周に嵌合させて上記一方のダクトと他方のダクトを接続してなる車両用空調ダクトの接続構造において、上記雄端部の外周面に、該雄端部の端縁に近接する位置からダクトの軸方向と平行に延び、上記雌端部の内周面に密接する複数の凸状ビードを形成したことを特徴とする車両用空調ダクトの接続構造」のようなものがある。
【0003】
しかし上記雌端部を有する他方のダクトは通常、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるため、その雌端部の外面の形状は成形金型によって規制することができるが内面の形状はまったく規制することができず、気温、湿度、風速等の成形環境や、パリソン肉厚、樹脂温等の成形条件によって内面寸法が大きく変わるので上記雄端部の外面とのクリアランスが一定せず、組付けガタを完全になくすことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−335227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるダクトは、その雌端部の外面の形状は成形金型によって規制することができるが内面の形状はまったく規制することができず、気温、湿度、風速等の成形環境や、パリソン肉厚、樹脂温等の成形条件によって内面寸法が大きく変わるので雄端部の外面とのクリアランスが一定せず、組付けガタを完全になくすことはできないという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を果たすため本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される空調ダクトであって、吹出し口部に少なくとも3箇所の圧縮変形受容部が設けられていることを最も主要な特徴とする。
【0007】
又、上記吹出し口部が吹出しの向きに径が減少して円錐台形を形成していることを第2の主要な特徴とする。
【0008】
又、上記圧縮変形受容部がベローズ谷部であることを第3の主要な特徴とする。
【0009】
又、上記圧縮変形受容部が開口スリットであることを第4の主要な特徴とする。
【0010】
また、上記空調ダクトの組付け方法であって、吹出し口部の内部奥側への押し込み前の外面に相手部品を押し付け、該吹出し口部を該吹出し口部の内部奥側に押し込みながら該相手部品を該空調ダクトに嵌合させることを第5の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧縮変形受容部付き吹出し口部(雌端部)の押し広げられた反発力で相手部品(雄端部)が空調ダクトにしっかりと締め付けられるので、該空調ダクトと該相手部品との組付けガタは全く生じることがないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る自動車用空調ダクトの斜視図
【図2】図1のA−A断面相当の部分断面図。
【図3】図1のA−A断面相当の部分断面図。
【図4】図1のA−A断面相当の部分断面図。
【図5】図1のA−A断面相当の部分断面図。
【図6】図1のA−A断面相当の部分断面図。
【図7】図1のA−A断面相当の部分断面図。
【図8】図2のC矢視図。
【図9】図5のC矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される空調ダクトの吹出し口部に相手部品をガタなく組付けるという目的を、圧縮変形受容部付き吹出し口部の外面に相手部品を押し付け、該吹出し口部を該吹出し口部の内部奥側に押し込みながら該相手部品を該空調ダクトに嵌合させることによって、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0014】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1は、本発明の1実施例を示す熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成された自動車用空調ダクト1の斜視図である。2は吸込み口部、3,3’は吹出し口部を示す。
【0015】
図2ないし図7は図1のA−A断面相当の部分断面図であり、図8は図2のC矢視図、図9は図5のC矢視図である。
【0016】
図2及び図7において、該吹出し口部3は矢印Bが示す吹出しの向きに径が減少しており、該径が減少している領域の周囲にはベローズ谷部5が等間隔で4箇所形成されており、該吹出し口部3の末端において捨袋(図示せず)としてカットされている。
【0017】
次に該空調ダクト1の製造方法を説明する。該空調ダクト1用の分割金型(図示せず)内に半溶融状態にあるポリエチレン等の熱可塑性樹脂のパリソン(図示せず)を垂下させ該分割金型を型締めする。
【0018】
尚、該パリソンに適用される熱可塑性樹脂としてはポリエチレンに限らず、ポリプロピレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0019】
その後該パリソン内に圧縮空気を吹き込んでブローアップし、離型の後、捨袋をカットして該空調ダクト1のブロー成形を完了させる。
【0020】
次いで、作業者の手作業等により該ベローズ谷部5を該吹出し口部3の内部奥側に押し込むが、このとき該ベローズ谷部5が柔軟に収縮するためスムーズに押し込みが完了する。この状態を図3に示す。尚、図中の10は該吹出し口部3に嵌合すべき相手部品を表す。
【0021】
該相手部品10を該吹出し口部3に押し付け、該ベローズ谷部5を押し広げながら該吹出し口部3の内部奥側に更に押し込んだ状態を図4に示す。
【0022】
この状態では、該ベローズ谷部5の押し広げられた反発力で該相手部品10が該空調ダクト1にしっかりと締め付けられるので、該空調ダクト1と該相手部品10との組付けガタは全く生じることがない。
【実施例2】
【0023】
次に他の実施例を説明する。図5及び図7において、吹出し口部3は矢印Bが示す吹出しの向きに径が減少して円錐台形を形成しており、該径が減少している領域の周囲には開口スリット15が等間隔で4箇所形成され、該吹出し口部3の末端において捨袋(図示せず)がカットされている。
【0024】
尚、該開口スリット15は該空調ダクト1の成形完了後、二次加工にて形成すればよい。また、スリットの幅dは広くても狭くてもよく、スリットの幅がゼロ、即ちd=0の単なる切れ目状態であってもよい。
【0025】
該吹出し口部3の内部奥側への押し込み前の外面に相手部品10を押し付けた状態を図6に示す。
【0026】
次いで、該相手部品10を更に押し付けることによって該開口スリット15付き該吹出し口部3を該吹出し口部3の内部奥側に押し込むが、このとき該開口スリット15が存在することで該吹出し口部3の押し込みと押し広げがスムーズに完了する。この状態を図7に示す。
【0027】
この状態では、該開口スリット15付き該吹出し口部3の押し広げられた反発力で該相手部品10が該空調ダクト1にしっかりと締め付けられるので、該空調ダクト1と該相手部品10との組付けガタは全く生じることがない。
【0028】
尚、上記各実施例においてベローズ谷部や開口スリットのような吹出し口部の圧縮変形を受容するための部位(ベローズ谷部や開口スリット等を総称して圧縮変形受容部と呼ぶことにする)を4箇所設けた場合を説明したが、圧縮変形受容部は円周上に最低3箇所あれば圧縮変形は充分可能である。
【0029】
また、上記各実施例において吹出し口部が円形の場合を説明したが、四角形や長円形のような非円形でも構わない。
【0030】
以上各実施例に述べたように本発明によれば、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される空調ダクトの吹出し口部に相手部品をガタなく組付けるに際して、
該吹出し口部に圧縮変形受容部を設けたため、該圧縮変形受容部付き吹出し口部の押し広げられた反発力で相手部品が空調ダクトにしっかりと締め付けられるので、該空調ダクトと該相手部品との組付けガタは全く生じることがないという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される自動車用空調ダクトに利用できるが、自動車用に限るものではなく一般の空調ダクトに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 空調ダクト
2 吸込み口部
3,3’ 吹出し口部
5 ベローズ谷部
10 相手部品
15 開口スリット
B 吹出しの向き
d スリットの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成される空調ダクトであって、吹出し口部に少なくとも3箇所の圧縮変形受容部が設けられていることを特徴とする空調ダクト
【請求項2】
請求項1における吹出し口部が吹出しの向きに径が減少して円錐台形を形成していることを特徴とする請求項1記載の空調ダクト
【請求項3】
請求項1または請求項2における圧縮変形受容部がベローズ谷部であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の空調ダクト
【請求項4】
請求項1または請求項2における圧縮変形受容部が開口スリットであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の空調ダクト
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空調ダクトの組付け方法であって、吹出し口部の内部奥側への押し込み前の外面に相手部品を押し付け、該吹出し口部を該吹出し口部の内部奥側に押し込みながら該相手部品を該空調ダクトに嵌合させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空調ダクトの組付け方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−51442(P2011−51442A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201297(P2009−201297)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】