説明

空調制御システムおよび空調制御方法

【課題】 空調対象として複数エリアが含まれる場合にも、各エリアにおいて快適性を保持した空調を行うことが可能な空調制御システムおよび空調制御方法を提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、空調制御システムは、建物二酸化炭素発生量推定部と、空調負荷量取得部と、エリア別二酸化炭素量推定部とを備える。建物二酸化炭素発生量推定部は、外気二酸化炭素濃度センサで計測された外気二酸化炭素濃度計測値と、排気二酸化炭素濃度センサで計測された排気二酸化炭素濃度計測値とから、建物の二酸化炭素発生量の推定値を算出する。空調負荷量取得部は、空調機ごとの空調負荷量を取得する。エリア別二酸化炭素量推定部は、建物二酸化炭素発生推定部で算出された建物の二酸化炭素発生量の推定値と空調負荷量取得部で取得された各空調機の空調負荷量とから、空調エリアごとの二酸化炭素発生量または二酸化炭素濃度の推定値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調制御システムおよび空調制御方法関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化ガスの削減を求める動きは産業だけでなく民生部門でも加速している。そのため、ビルや工場などのエネルギーを消費する需要家に対しても、更なる省エネルギー化が求められている。
【0003】
また、発電時に温暖化ガスを排出しない太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進められている。しかし、これらのエネルギーは発電量が変動するために電力系統の安定運用が難しいという問題がある。
【0004】
電力系統を安定して運用するための一方策として、電力系統運用者の要求に呼応して需要家が電力消費を一時的に削減するデマンドレスポンスの実証が進んでいる。中でも、一般的なビルの消費エネルギーの約4割を占める空調システムに対して、省エネやデマンドレスポンスによる対応が求められている。
【0005】
一方、空調システムは、室内の温度、湿度、二酸化炭素(CO2)濃度などの環境に基づく快適性を維持するための機器群である。そのため、室内における人間の冷温感や人間の在不在を室内の小エリアごとに検出し、それぞれの在室者に応じて空調制御するタスクアンビエント空調に対するニーズも高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−255900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、室内の小エリアごとに空調制御を行うためには、各エリアに温度、湿度、CO2濃度等を計測するセンサを設置する必要があり、コストが高くなってしまう。
【0008】
また、省エネやデマンドレスポンスに対応した空調制御を行うためには室内全体の空調負荷が必要となる。しかし、複数のセンサで検出した温度、湿度、CO2濃度等から室内全体の空調負荷を計算するには、センサや空調機の空間的な配置を考慮する必要があり、処理が煩雑になりエンジニアリングコストも高くなるという問題があった。
【0009】
また、排気ダクトにCO2センサを設置して室内のCO2濃度が基準値を超えない範囲で外気導入量を絞る制御を行うことで、省エネ効果を高める方法もある。
【0010】
しかしこの場合、CO2濃度が高い部屋とCO2濃度の低い部屋の空気が混合した場合、平均的な部屋のCO2濃度が一定量以下になるように制御されるため、排気ダクトのCO2濃度が一定量以下であっても、一部の部屋ではCO2濃度が規定量を超えてしまうことがあり、在室者の快適性が損なわれるおそれがあるという問題があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、空調対象として複数エリアが含まれる場合にも、各エリアにおいて快適性を保持した空調を行うことが可能な空調制御システムおよび空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための実施形態によれば、空調制御システムは、建物二酸化炭素発生量推定部と、空調負荷量取得部と、エリア別二酸化炭素量推定部とを備える。建物二酸化炭素発生量推定部は、外気二酸化炭素濃度センサで計測された外気二酸化炭素濃度計測値と、排気二酸化炭素濃度センサで計測された排気二酸化炭素濃度計測値とから、建物の二酸化炭素発生量の推定値を算出する。空調負荷量取得部は、空調機ごとの空調負荷量を取得する。エリア別二酸化炭素量推定部は、建物二酸化炭素発生推定部で算出された建物の二酸化炭素発生量の推定値と空調負荷量取得部で取得された各空調機の空調負荷量とから、空調エリアごとの二酸化炭素発生量または二酸化炭素濃度の推定値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態による空調制御システムの構成を示す全体図である。
【図2】一実施形態による空調制御システムの中央制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】一実施形態による空調制御システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態による空調制御システムの構成について、図1を参照して説明する。
【0015】
本実施形態による空調制御システム1は、空調対象のビルX内のAエリア、Bエリア、およびCエリアの3つの空調エリアを制御する。AエリアとBエリアとは壁で空間的に隔離されて隣接し、BエリアとCエリアとはパーテーション等で開放された空間部分を有して隣接されている。
【0016】
Aエリア、Bエリア、およびCエリアにはそれぞれ、室内の空気を屋外に排気するための排気口11A〜11Cと、室内に外気を導入して換気をするための換気口12A〜12Cと、室内の空気を取り込んで設定温度値および設定湿度値になるように調整し給気する室内機13A〜13Cと、室内温度を計測する室内温度センサ141A〜141Cと室内湿度を計測する室内湿度センサ142A〜142Cとを有する。
【0017】
室内機13A〜13Cは、冷却コイルや給気ファン(図示せず)等により室内の空調を行うものであり、調整後の給気温度を計測する給気温度センサ131A〜131Cと、調整後の給気湿度を計測する給気湿度センサ132A〜132Cとを有する。
【0018】
また空調制御システム1は、換気装置15と、換気制御装置16と、風量制御装置17と、室内機制御装置18と、室外機制御装置19と、室外機20と、中央制御装置21とを有する。図1中、実線矢印は空気を搬送するダクトまたは冷媒を搬送する配管を示し、点線矢印はデータを送受信する信号線を示している。
【0019】
換気装置15は、各Aエリア〜Cエリアの排気口11A〜11Cにダクトで接続され、各室内からの排気を建物外に排出する排気ダンパ151と、この排気の二酸化炭素(CO2)濃度を計測する排気CO2濃度センサ152と、各Aエリア〜Cエリアの換気口12A〜12Cにダクトで接続され、各室内へ外気を導入する外気導入ダンパ153と、この外気のCO2濃度を計測する外気CO2濃度センサ154と、外気導入ダンパ153から導入された外気を、各室内の換気のために送風するファン155と、ファン155により室内に送風される空気の温度を換気温度として計測する換気温度センサ156Aと、ファン155により室内に送風される空気の湿度を換気湿度として計測する換気湿度センサ156Bとを有する。
【0020】
換気制御装置16は、換気装置15の排気CO2濃度センサ152で計測された排気CO2濃度値、外気CO2濃度センサ154で計測された外気CO2濃度値、換気温度センサ156Aで計測された換気温度値、および換気湿度センサ156Bで計測された換気湿度値を取得して中央制御装置21に送信する。また換気制御装置16は、これらの値を送信したことにより中央制御装置21から受信する各エリアのCO2発生量推定値に基づいて、建物X内のCO2濃度を所定値以下に保つために必要な外気を導入するための換気風量設定値を算出して風量制御装置17に送信する。
【0021】
風量制御装置17は、換気制御装置16から送信された換気風量設定値に基づいて、排気ダンパ151、外気導入ダンパ153の開閉、およびファン155の回転数を制御することにより、要求された風量で各Aエリア〜Cエリアの換気を行う。
【0022】
風量制御装置17によるファン155の回転数の制御方法には、例えば以下の(i)〜(ii)のような方法がある。
【0023】
(i)換気装置15の室内への給気側の出口に圧力センサ(図示せず)を設置し、この圧力センサの計測値が所定の設定値(給気圧力)になるようにファン155の回転数を制御する。この所定の設定値は、風量制御装置17で取得された換気風量設定値に基づいて適宜変更される。
【0024】
(ii)換気装置15の室内への給気側の出口に風量計(図示せず)を設置し、この風量計が、風量制御装置17で取得された換気風量設定値になるようにファン155の回転数を制御する。
【0025】
室内機制御装置18は、給気温度センサ131A〜131Cで計測された給気温度計測値と、給気湿度センサ132A〜132Cで計測された給気湿度計測値と、室内温度センサ141A〜141Cで計測された室内温度計測値と、室内湿度センサ142A〜142Cで計測された室内湿度計測値とを取得して中央制御装置21に送信する。また、取得した室内温度計測値、および室内湿度計測値から、在室者等により設定された所望の温湿度状態に空調するための、室内機13A〜13Cそれぞれの冷却コイルに対する冷却量設定値や給気ファンに対する給気風量設定値を算出し、室内機13A〜13Cに送信する。また、算出した冷却コイルに対する冷却量設定値を室外機制御装置19に送信する。
【0026】
室外機制御装置19は、室内機制御装置18から送信された冷却コイルに対する冷却量設定値に基づいて、各室内機13A〜13Cに対する冷媒要求量を算出し、室外機20および中央制御装置21に送信する。
【0027】
室外機20は、室外機制御装置19から送信された各室内機13A〜13Cに対する冷媒要求量に基づいて、冷媒を各室内機13A〜13Cに配管を介して提供する。
【0028】
中央制御装置21は、図2に示すように、換気条件情報受信部211と、給気条件情報受信部212と、室内環境情報受信部213と、CO2濃度情報受信部214と、エリア別潜熱負荷推定部215と、建物CO2発生量推定部216と、冷媒情報受信部217と、エリア別CO2発生量推定部218とを有する。エリア別潜熱負荷推定部215、および冷媒情報受信部217は、いずれかが空調負荷量取得部として機能する。
【0029】
換気条件情報受信部211は、換気制御装置16から送信された換気温度計測値と、換気湿度計測値と、換気風量設定値とを受信する。
【0030】
給気条件情報受信部212は、室内機制御装置18から送信された各Aエリア〜Cエリアの給気温度計測値、給気湿度計測値、および給気風量設定値を受信する。
【0031】
室内環境情報受信部213と、室内温度センサ141A〜141Cから送信された各Aエリア〜Cエリアの室内温度計測値と、室内湿度センサ142A〜142Cから送信された各Aエリア〜Cエリアの室内湿度計測値とを受信する。
【0032】
CO2濃度情報受信部214は、換気制御装置16から送信された、建物Xの排気CO2濃度計測値および外気CO2濃度計測値を受信する。
【0033】
エリア別潜熱負荷推定部215は、換気条件情報受信部211で受信された換気温度計測値、換気湿度計測値、および換気風量設定値と、給気条件情報受信部212で受信された各Aエリア〜Cエリアの給気温度計測値、給気湿度計測値、および給気風量設定値と、室内環境情報受信部213で受信された各Aエリア〜Cエリアの室内温度計測値および室内湿度計測値とから、各Aエリア〜Cエリアの潜熱負荷推定値を空調負荷量として算出する。
【0034】
建物CO2発生量推定部216は、CO2濃度情報受信部214で受信された排気CO2濃度値および外気CO2濃度値から、建物XのCO2発生量推定値を算出する。
【0035】
冷媒情報受信部217は、室外機制御装置19から送信された各室内機13A〜13Cに対する冷媒要求量を、空調負荷量として受信する。
【0036】
エリア別CO2発生量推定部218は、冷媒情報受信部217で受信された各室内機13A〜13Cに対する冷媒要求量と、建物CO2発生量推定部216で算出された建物XのCO2発生量推定値とから、各Aエリア〜CエリアのCO2発生量推定値を算出する。または、エリア別潜熱負荷推定部215で算出された各Aエリア〜Cエリアの潜熱負荷推定値と、建物CO2発生量推定部216で算出された建物XのCO2発生量推定値とから、各Aエリア〜CエリアのCO2発生量推定値を算出する。
【0037】
このように構成された空調制御システム1の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
まず、換気温度センサ156Aで計測された換気温度計測値と、換気湿度センサ156Bで計測された換気湿度計測値とが、換気制御装置16を介して中央制御装置の換気条件情報受信部211で受信される。
【0039】
また、換気制御装置16において排気CO2濃度計測値、および外気CO2濃度計測値から算出された、建物X内のCO2濃度を所定値(例えば1000 ppm)以下に保つために必要な外気を導入するための換気風量設定値が、換気条件情報受信部211で受信される。
【0040】
また、各Aエリア〜Cエリアの給気温度センサ131A〜131Cで計測された給気温度計測値と、給気湿度センサ132A〜132Cで計測された給気湿度計測値とが、室内機制御装置18を介して中央制御装置21の給気条件情報受信部212で受信される。また、室内温度センサ141A〜141Cで計測された室内温度計測値と、室内湿度センサ142A〜142Cで計測された室内湿度計測値とが、室内機制御装置18を介して中央制御装置21の室内環境情報受信部213で受信される。
【0041】
また、室内機制御装置18において給気温度計測値、給気湿度計測値、室内温度計測値、および室内湿度計測値から算出された、各Aエリア〜Cエリアを所望の温湿度状態に空調するための室内機13A〜13Cそれぞれの給気ファンに対する給気風量設定値が、給気条件情報受信部212で受信される。
【0042】
また、換気装置15の排気CO2濃度センサ152で計測された排気CO2濃度計測値と、外気CO2濃度センサ154で計測された外気CO2濃度計測値とが、換気制御装置16を介して中央制御装置21のCO2濃度情報受信部214で受信される。
【0043】
これらの計測値および設定値が取得されると(S1)、中央制御装置21の建物CO2発生量推定部216では、CO2濃度情報受信部214で受信された排気CO2濃度値および外気CO2濃度値から、建物XのCO2発生量推定値が算出される(S2)。
【0044】
建物XのCO2発生量推定値は、下記式(1)により算出される。
【0045】
〔数1〕
建物XのCO2発生量推定値
=g(外気CO2濃度計測値、排気のCO2濃度計測値、換気風量設定値)
=(排気CO2濃度計測値−外気CO2濃度計測値)×換気風量設定値 (1)
g:CO2発生量推定値を求める関数
また中央制御装置21では、取得された計測値および設定値から、エリア別の空調負荷量が取得される(S3)。
【0046】
各エリアの空調負荷量は、例えば下記のように(a)冷媒要求量に基づく処理、または、(b)潜熱負荷推定量に基づく処理により取得される。それぞれの取得処理について説明する。
【0047】
(a)冷媒要求量に基づく各エリアの空調負荷量の取得処理
冷媒要求量に基づいて空調負荷量が取得される際には、まず室内機制御装置18において、取得された給気温度計測値、室内温度計測値、および給気風量設定値から、所望の温湿度状態に空調するための、室内機13A〜13Cそれぞれの冷却コイルに対する冷却量設定値が算出され、室外機制御装置19に送信される。
【0048】
室外機制御装置19では、室内機制御装置18から送信された冷却コイルに対する冷却量設定値に基づいて、各室内機13A〜13Cに対する冷媒要求量がそれぞれ算出され、中央制御装置21に送信される。
【0049】
中央制御装置21では、室外機制御装置19から送信された各室内機13A〜13Cに対する冷媒要求量が、冷媒情報受信部217において各エリアの空調負荷量として取得される。
【0050】
(b)潜熱負荷推定量に基づく各エリアの空調負荷量の取得処理
潜熱負荷推定量に基づいて空調負荷量が取得される際には、エリア別潜熱負荷推定部215において、換気条件情報受信部211で受信された換気温度計測値、換気湿度計測値、および換気風量設定値と、給気条件情報受信部212で受信された各Aエリア〜Cエリアの給気温度計測値、給気湿度計測値、および給気風量設定値と、室内環境情報受信部213で受信された各Aエリア〜Cエリアの室内温度計測値および室内湿度計測値とから、各Aエリア〜Cエリアの潜熱負荷推定値が、空調負荷量として算出される。
【0051】
具体的には下記式(2)により、各エリアの潜熱負荷推定値が算出される。
【0052】
〔数2〕
潜熱負荷推定値 = f(換気温度計測値、換気湿度計測値、換気風量設定値、給気温度計測値、給気湿度計測値、給気風量設定値、部屋温度計測値、部屋湿度計測値)
= 換気風量設定値×(calX(部屋温度計測値, 部屋湿度計測値)−calX(換気温度計測値, 換気湿度計測値))+ 給気風量設定値×(calX(部屋温度計測値, 部屋湿度計測値)−calX(給気温度計測値, 給気湿度計測値)) (2)
f:潜熱負荷推定値を求める関数
ここで、calX(部屋温度計測値、部屋湿度計測値)は、部屋温度計測値と、相対湿度値で示される部屋湿度計測値とから絶対湿度値を計算する関数であり、実用ベースの近似式として以下の式(3)が知られている。温度-20℃〜45℃の間では最大誤差が1.5×10-5程度であり、空調計算の範囲では十分な精度である。
【0053】
〔数3〕
xs = 相対湿度値×exp{ 2.406163E-09・t4 + 1.404653E-07・t3 − 2.874346E-04・t2 + 7.788766E-02・t - 5.580079 − 4.873040E-03・Abs(t)} (3)
xs:絶対湿度値 [kg/kg(DA)]
t:乾球温度値 [℃]
このように算出された各Aエリア〜Cエリアの潜熱負荷推定量は、各エリアの空調負荷量として取得される。
【0054】
次に、ステップS3取得された空調負荷量から、各エリアのCO2発生量が推定される。ここで、上記(a)冷媒要求量に基づく処理により空調負荷量が取得されたときには、冷媒要求量が多い程潜熱負荷が多く、CO2発生量が多いと推定される。また(b)潜熱負荷推定量に基づく処理により空調負荷量が取得されたときも、潜熱負荷量が多い程CO2発生量が多いと推定される。
【0055】
室内の潜熱負荷は、湯沸かし器や厨房設備などの特殊な設備が無い限り人間の呼気や発汗による水蒸気が主要因である。このことから、CO2発生量は潜熱負荷と高い相関をもっているため、下記式(4)に示すように、CO2発生量推定値は潜熱負荷推定値に比例する。
【0056】
〔数4〕
各エリアのCO2発生量 ∝ 各エリアの潜熱負荷推定量 (4)
このとき、算出された各Aエリア〜CエリアのCO2発生量推定値の合計値と、ステップS2において式(1)で求められた建物XのCO2発生量推定値とが比較され、これらの値の差に基づいて、各Aエリア〜CエリアのCO2発生量推定値が補正される(S4)。
【0057】
例えば、算出されたAエリアのCO2発生量推定値を「1.0」としたときに、BエリアのCO2発生量推定値が「0.1」であり、CエリアのCO2発生量推定値が「0.2」であり、また建物XのCO2発生量推定値が「1.5」であったとき、各Aエリア〜CエリアのCO2発生量推定値の合計値は「1.3」になり、この値は建物XのCO2発生量推定値「1.5」と「0.2」の差がある。
【0058】
このとき、AエリアのCO2発生量推定値「1.0」:BエリアのCO2発生量推定値「0.1」:CエリアのCO2発生量推定値「0.2」の比率で、建物XのCO2発生量推定値「1.5」を配分した値で各エリアのCO2発生量推定値を補正することにより、AエリアのCO2発生量推定値が「1.154」、BエリアのCO2発生量推定値が「0.115」、CエリアのCO2発生量推定値が「0.231」に補正される。つまり、各エリアのCO2発生量推定値は、潜熱負荷推定量をα(α:定数)倍した値と、建物XのCO2発生量推定値と各エリアのCO2発生量推定値の合計値との差をβ(β:定数)倍した値との和となる。
【0059】
また、ここで取得された各エリアの潜熱負荷推定量と、冷媒情報受信部217で受信された各エリアの冷媒要求量とから、下記式(5)により各Aエリア〜Cエリアの顕熱負荷推定量が算出できる。
【0060】
〔数5〕
エリア別顕熱負荷推定量 = エリア別冷媒要求量 − エリア別潜熱負荷推定量
(5)
次に、算出された各Aエリア〜CエリアのCO2発生量推定値に基づいて、各エリアのCO2濃度値を所定値以下に保つための、エリア別の必要換気量(必要外気量)が算出される(S5)。
【0061】
次に、算出されたエリア別の必要換気量に基づいて外気を導入するための換気風量設定値が算出される(S6)。
【0062】
この換気風量設定値は、例えば建物X内のAエリア〜Cエリアのうち、最もCO2発生量が多いと推定されるエリアのCO2濃度値が所定値以下になるように、建物Xに対して算出される。このように算出することで、エリアによってCO2発生量が異なる場合にも、建物X内のすべてのエリアのCO2濃度を所定値以下にすることができる。
【0063】
算出された換気風量設定値は風量制御装置17に送信され、この換気風量設定値に基づいて、風量制御装置17により排気ダンパ151、外気導入ダンパ153の開閉、およびファン155の回転数が制御され、要求された量の換気が換気装置15において行われる(S7)。
【0064】
以上の本実施系形態によれば、空調対象として壁やパーテーション等で区切られた複数エリアが含まれ、それぞれ在室者の人数が異なりCO2発生量が異なる場合にも、各エリアにおいて適切な温湿度に空調され、且つ各エリアにCO2濃度センサを配置しなくても所定値以下のCO2濃度に確実に保たれるため快適性を保持した空調を行うことができる。
【0065】
また本実施形態において算出されたCO2発生量推定値を用いることにより、外気の導入量を最小化した換気制御を実行することが可能になり、省エネ効果を向上させることができる。
【0066】
また本実施形態において、空調機器だけでなく熱源機を含めた空調システムに関する省エネ制御システム、あるいは空調システムのデマンドレスポンス機能を備えた省エネ制御システムを組み込むことにより、省エネ効果を兼ね備えた精度の高い空調制御を実現することが可能になる。
【0067】
また本実施形態において、換気装置の中に冷却機構や加湿機構を設け、外気を導入した際に冷却または加湿して空調対象エリアに供給するように構成することにより、さらに効率良くシステム内の空調制御を行うことができる。
【0068】
上記実施形態においては、ステップS6において換気風量設定値が算出される際に、最もCO2発生量が多いと推定されるエリアのCO2濃度値が所定値以下になるように建物Xに対する換気風量設定値が算出される場合について説明したが、各Aエリア〜CエリアのCO2濃度値が所定値以下になるように各Aエリア〜Cエリアに対する換気風量設定値を算出するようにしてもよい。この場合、各Aエリア〜Cエリアの換気口12A〜12Cにそれぞれ換気風量を調整するダンパ(図示せず)を設置し、各エリアに対して算出された換気風量設定値でそれぞれ対応するダンパの開度が制御される。
【0069】
また上記実施形態においては、エリア別の空調負荷量からCO2発生量推定値を算出し、これに基づいて換気風量設定値を算出する場合について説明したが、CO2発生量推定値に替えてCO2濃度推定値を用い、これに基づいて換気風量設定値を算出するようにしてもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…空調制御システム
11A〜11C…排気口
12A〜12C…換気口
13A〜13C…室内機
15…換気装置
16…換気制御装置
17…ダンパ制御装置
18…室内機制御装置
19…室外機制御装置
20…室外機
21…中央制御装置
131A〜131C…給気温度センサ
132A〜132C…給気湿度センサ
141A〜141C…室内温度センサ
142A〜142C…室内湿度センサ
151…排気ダンパ
152…排気CO2濃度センサ
153…外気導入ダンパ
154…外気CO2濃度センサ
155…ファン
156A…換気温度センサ
156B…換気湿度センサ
211…換気条件情報受信部
212…給気条件情報受信部
213…室内環境情報受信部
214…CO2濃度情報受信部
215…エリア別潜熱負荷推定部
216…建物CO2発生量推定部
217…冷媒情報受信部
218…エリア別CO2発生量推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調制御対象の建物内の複数の空調エリアに外気を取り入れるとともに、前記空調エリアの空気を排気する換気装置と、前記複数の空調エリアにそれぞれ設置され、前記空調エリア内を所定の温度設定値に基づいて空調する室内機と、前記換気装置により前記建物内に導入される外気の二酸化炭素濃度を計測する外気二酸化炭素濃度センサと、前記建物から排気される空気の二酸化炭素濃度を計測する排気二酸化炭素濃度センサとに接続された空調制御システムにおいて、
前記外気二酸化炭素濃度センサで計測された外気二酸化炭素濃度計測値と、前記排気二酸化炭素濃度センサで計測された排気二酸化炭素濃度計測値とから、前記建物の二酸化炭素発生量の推定値を算出する建物二酸化炭素発生量推定部と、
前記空調機ごとの空調負荷量を取得する空調負荷量取得部と、
前記建物二酸化炭素発生推定部で算出された前記建物の二酸化炭素発生量の推定値と前記空調負荷量取得部で取得された前記各空調機の空調負荷量とから、前記空調エリアごとの二酸化炭素発生量または二酸化炭素濃度の推定値を算出するエリア別二酸化炭素量推定部と
を備えることを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
前記空調負荷量取得部で取得される空調負荷量は、各前記室内機に対してそれぞれ要求される冷媒要求量である
ことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記換気装置により前記空調エリアに導入される外気の、温度を計測する換気温度センサと、湿度を計測する換気湿度センサと、
各前記空調エリアに設置され、前記室内機により調整され給気される空気の、温度を計測する給気温度センサと、湿度を計測する給気湿度センサと、
各前記空調エリアに設置され、各空調エリア内の温度を計測する室内温度センサと、湿度を計測する室内湿度センサとにさらに接続され、
前記空調負荷量取得部は、前記換気温度センサで計測された換気温度計測値と、前記換気湿度センサで計測された換気湿度計測値と、前記給気温度センサで計測された給気温度計測値と、前記給気湿度センサで計測された給気湿度計測値と、前記室内温度センサで計測された室内温度計測値と、前記室内湿度センサで計測された室内湿度計測値と、前記給気温度計測値、給気湿度計測値、室内温度計測値、および室内湿度計測値から算出された給気風量設定値と、前記建物の二酸化炭素発生量の推定値から算出された換気風量設定値とから、前記空調負荷量として各前記空調エリアのエリア別潜熱負荷推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記エリア別二酸化炭素量推定部で算出された前記空調エリアごとの二酸化炭素発生量または二酸化炭素濃度の推定値から、前記各空調エリアの二酸化炭素濃度を所定値以下に保つためのエリア別の必要外気量を算出し、このエリア別の必要外気量を導入するための換気風量設定値を算出する換気制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記換気制御部は、
前記二酸化炭素発生量または二酸化炭素濃度の推定量が最も多い空調エリアの二酸化炭素濃度が所定値以下になるように前記建物に対する前記換気風量設定値を算出するかまたは、
前記各空調エリアの前記二酸化炭素発生量または二酸化炭素濃度の推定量に基づいてそれぞれの空調エリアの二酸化炭素濃度が所定値以下になるように各空調エリアに対する換気風量設定値を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の空調制御システム。
【請求項6】
空調制御対象の建物内の複数の空調エリアに外気を取り入れるとともに、前記空調エリアの空気を排気する換気装置と、前記複数の空調エリアにそれぞれ設置され、前記空調エリア内を所定の温度設定値に基づいて空調する室内機と、前記換気装置により前記建物内に導入される外気の二酸化炭素濃度を計測する外気二酸化炭素濃度センサと、前記建物から排気される空気の二酸化炭素濃度を計測する排気二酸化炭素濃度センサとに接続された空調制御システムが、
前記外気二酸化炭素濃度センサで計測された外気二酸化炭素濃度計測値と、前記排気二酸化炭素濃度センサで計測された排気二酸化炭素濃度計測値とから、前記建物の二酸化炭素発生量の推定値を算出する建物二酸化炭素発生量推定ステップと、
前記空調機ごとの空調負荷量を取得する空調負荷量取得ステップと、
前記建物二酸化炭素発生推定ステップで算出された前記建物の二酸化炭素発生量の推定値と前記空調負荷量取得ステップで取得された前記各空調機の空調負荷量とから、前記空調エリアごとの二酸化炭素発生量または二酸化炭素濃度の推定値を算出するエリア別二酸化炭素量推定ステップと
を有することを特徴とする空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−47579(P2013−47579A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185701(P2011−185701)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】