説明

空間の残響時間を変更する方法、装置、及びシステム

本発明は、特に低周波数(必ずしもこれに限定されるものではないが)において空間の残響時間を変更するための、吸音装置、アセンブリ、並びにシステム及び対応する方法に関する。本発明による吸音装置は、基本的に、1つ以上のキャビティ4を含み、その外表面の少なくとも一部が音場Sと接触しており、且つ、前記少なくとも1つのキャビティ4にガスを供給している間、膨張可能/拡張可能であり、またそこからガスを除去している間、折畳み可能/圧縮可能である本体を備え、それにより、前記本体の吸収係数α及び/又は共振周波数を変化させる、従って、最大吸収が起こる吸収係数及び/又は周波数域を決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間の残響時間を変更する方法に関し、特に、低周波数範囲における空間の残響時間を変更する方法に関する。本発明は、更に、空間の残響時間の前記変更に使用される、吸音装置及びそのような装置のシステムに関する。本発明は、更に、そのような装置及び/又はシステムを備え、それによって空間の残響時間を変更することができる空間に関する。
【背景技術】
【0002】
リスニングルーム、例えばコンサートホール又は講堂内において知覚される音質に影響する音響パラメータの1つが空間の残響時間であることは、当該技術分野においてよく知られている。しかし、最適な残響時間は、様々な音楽及びスピーチによって異なり、従って、クラシック音楽が演奏される空間において推奨される残響時間は1.5秒〜2.0秒の範囲であるが、リズミカルな音楽が演奏される空間において推奨される残響時間は、0.8秒〜1.0秒の範囲である。実現し得る最良なスピーチの明瞭度を実現するため、講堂には更に短い残響時間が有益なことがある。更に、残響時間は、理想的には、プログラム構成要素の適切な周波数範囲全体にわたってほぼ同じであるべきである。しかし、一般的には、残響時間は周波数に応じて減少する傾向があり、例えば、高周波数において空気中の吸音がより多くなること、より高い周波数では空間の境界での吸音がより多くなること、並びに空間内に人がいることによって、減少する傾向がある。従って、低周波数の残響は、多くの場合、高周波数の残響に比べて多過ぎる傾向があり、これは、許容し難い程「低音が効いた」音が空間内で再生され、音楽の知覚される詳細が損なわれ、更にはスピーチの明瞭度が悪化することにつながることがある。図1は、音楽の生演奏又は再生に使用されてもよい7室の異なる空間の周波数に応じて変わる、測定された残響時間を示す。図は、500Hz以上では約1秒の平均残響時間T30を示すが、低周波数における平均は63Hzで約1.5秒まで増加する。また、図1から、空間ごとに残響時間が大きく変化することが分かる。
【0003】
上記を考慮して、所望のやり方で所与の空間の残響時間を変更する手段が必要な場合が多く、特に、低周波数において残響時間を選択的に低減させることが有益である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リスニングルームの残響時間を変更する装置は、当該技術分野において知られている。それらのいくつかは、主に高周波数において有効であり、残響時間は、単に吸音性材料の薄い層(例えば保護スクリーンによって覆われたミネラルウールの薄い層)を、空間の選択された境界に提供することによって低減されてもよい。多数の実際の具体例が長年成功裡に適用されてきたが、低周波数における残響時間を選択的に低減させることは、実施するのが更に多少困難である。低周波数における残響時間を低減する(且つ、より高い周波数においてもある程度機能する)3つの異なる具体例が言及されるべきである。
【0005】
1.吸音(多孔質)材料の十分に厚いパネルは、残響時間を有効に低減することが必要な最低周波数における音の波長に比べてパネルの厚さが十分であれば、低周波数(並びにより高い周波数)における吸音をもたらす。そのようなパネルに適用可能な材料の例は、グラスファイバー、ミネラルウール、及び焼結金属である。そのようなパネルは、境界に直接取り付けられても、又は境界から空隙をあけてもよく、それによって低周波数における性能が改善される。パネルはまた、天井から吊り下げられ、それによって両側からパネルにアクセスできるようにしてもよい。音響エネルギーの著しく低い周波数の吸収が求められる場合、1メートルを超えることがある、必要な厚さとは別に、そのようなパネルは、低周波数において音を選択的に吸収しないが、むしろ、所与のより低い限界周波数(特に、パネルの厚さ及び使用される特定の材料の音響特性によって決まる)よりも上ではほぼ一定であり、このより低い限界周波数よりも下では減少する、周波数に応じて決まる吸音を示し、従って、多くの場合求められるように、残響時間の低周波数を選択的に低減することはできない。
【0006】
2.低周波数の吸音は、基本的に壁又は空間の他の境界に取り付けられるようにされた硬質のフレームから成る、いわゆるパネル吸収体又は膜吸収体を適用することによって、例えば、所与の共振周波数周辺の1オクターブの限定された帯域幅内で実現することができる。フレームの上に、且つ前記壁又は境界から所与の距離に、例えば合板の薄い可撓性のパネルが提供され、それが、空間内の音場によって駆動されて振動するようにされる。パネルの質量及び剛性、並びに、フレーム、パネル、及びパネルの後方の境界によって規定される空気量のコンプライアンスによって、吸収体の共振周波数が決まり、内部損失によって、共振器のQ値、従ってその帯域幅が決まる。吸収を増加させ、吸収体のQ値を変えるため、ミネラルウールなどの音響減衰材料がフレーム内のキャビティに導入されてもよい。キャビティ内の空気のコンプライアンスは吸収体内の空気量によって決まるので、共振周波数は、共振器の深さを変化させ、フレームの周辺寸法を維持することによって変えられてもよい。従って、より深い吸収体はより低い共振振動数を提供する。これらのメカニズムのより正確な説明は本発明の概要において行われる。
【0007】
3.低周波数の吸音は、更に、基本的に所与の長さ及び断面積の1つ以上の通路又はチューブから成る、いわゆるヘルムホルツ共振器を使用して実現することができ、それらの1つ以上の通路は音響質量を表し、1つ以上の通路の一方の長手方向端部は空間内の音場に結合され、他方の端部は、本質的にキャビティの体積に比例する音響コンプライアンスを表す所与の体積のキャビティに結合される。質量とコンプライアンスの特定の組み合わせによって、ヘルムホルツ共振器の共振周波数が決まり、内部損失によって、ヘルムホルツ共振器のQ値又は有効帯域幅が決まる。共振振動数及びその付近では、共振器の入力インピーダンスは非常に低くなり、従って、共振器は、共振振動数付近の周波数域において、周囲の音場から選択的に音エネルギーを吸収する。パネル吸収体の場合と同様に、ミネラルウールなどの減衰材料が、そのQ値を変更するためにヘルムホルツ共振器に導入されてもよい。実際上は、ヘルムホルツ共振器は、多くの場合、上述のパネル吸収体にある程度類似した形態のものであり、薄い可撓性のパネルは、パネルを通る通路のパターンを備えたより厚い硬質のパネルに置き換えられる。しかし、単一の通路又はチューブとキャビティとを備えるヘルムホルツ共振器も、残響時間の変更及び/又は望ましくない低周波数空間モードの抑制のために使用されてきた。
【0008】
(膜吸収体に関する背景理論)
膜吸収体は、一般的には、閉じたキャビティの前の軽量プレートから成る。多くの場合、キャビティは多孔質材料で充填され、それがシステムの減衰を提供する。膜吸収体の理論的な特性方程式を導出するとき、壁とキャビティの裏面とは硬質であるものと仮定され、プレートの曲げ剛性は、キャビティ内の気柱の剛性に比べて無視できるものと仮定される。システムは、プレートの単位面積質量m、キャビティの深さd、並びに、多孔質材料の流動抵抗による損失、プレート内の内部損失、及びプレートの縁部に沿った接合部内の損失から成るシステムの内部損失rによって特徴付けられ、ρはキャビティ内の空気又は他のガスの密度、cは音速である。
【0009】
システムの音響インピーダンスは、次式のように示すことができる。
【0010】
【数1】

【0011】
システムの共振振動数は、Im{Z}=0のとき見出される。
【0012】
【数2】

【0013】
これにより、吸収が最大であるべき共振周波数は、膜の質量とキャビティの深さの両方の平方根に反比例することが分かる。この理論によれば、キャビティ深さが0.2mのとき、約63Hzにおいて最大吸収を得るためには、膜は約5kg/mの質量を有していなければならない。しかし、キャビティを加圧することによって、システムの剛性は増加し、より軽量の材料を適用することが可能になり得る。
【0014】
吸収体のインピーダンスを、共振振動数及び吸収体の使用可能な帯域幅(半値幅B)で吸収を最大限にするために調整することができる。インピーダンスが膜の放射抵抗rに比べて高過ぎる場合、入射する音場は膜から離れて反射し、吸収されない。インピーダンスが低過ぎる場合、内部損失は小さ過ぎ、吸収される音エネルギーは十分ではなくなる。内部損失及び外部放射抵抗のインピーダンス比を、次式のように表すことができる。
【0015】
【数3】

【0016】
従って、最大吸収係数及び吸収帯域幅を、次式のように記述することができる。
【0017】
【数4】

【0018】
上記では、吸収装置は装置全体にわたってほぼ同じ深さdのものであると仮定されていた。発明の詳細な説明に記載される本発明の実施例の多くの場合、これは当てはまらず、深さdは、吸収装置の表面全体にわたって特徴的な予め定められた形で変わる。そのような実施例では、やはり上述の式を適用して、装置の深さdの平均値を挿入することにより、共振周波数、吸収係数、及び吸収帯域幅の少なくとも近似値を決定することが可能なことがある。或いは、上述の式は、実際の空気又はガスの体積、並びに音響学分野において知られている対応するコンプライアンスに関して再公式化されてもよい。
【0019】
(残響及び吸収係数の測定)
試験片の吸収係数を、空の残響室及び試験片が存在する残響室の測定された残響時間から、次式のように計算することができる。
【0020】
【数5】


式中、Vは残響室の体積、Sは試験片の面積、
【数6】


は試験片が存在するチャンバ内の残響時間、T60は空のチャンバの残響時間である。
【0021】
上述の従来技術の吸収体は、共振振動数及びその付近において非常に高い吸収係数を実現してもよく、そのような吸収体を用いて0.9程度の吸収係数が良好に実現されてもよい。しかし、そのような従来技術の吸収体には多数の不利な点があり、そのいくつかを以下に記載する。
【0022】
上述の従来技術の吸収体の吸音特性は、吸収体が構築された後では容易に変更できない。具体的には、吸収係数α及び/又は共振振動数の大きな変化は、所与の吸収体の小さな修正によって達成できない。また、吸収係数は、例えば、非常に高い吸収係数と非常に低い吸収係数との間でのシフトを含む変更、即ち、本質的に吸収体のオン/オフ機能など、単純なやり方で系統的に変更できない。
【0023】
上述の吸収体は、所与の空間に設置されるとそこから取り外すことが困難に、又は場合によっては不可能にもなる、やや嵩張る構造である。それらは、特定の空間内における固定の設置物として考えられ、所与の空間から容易に取り除き、別の空間に運搬してそこで使用することができる設置物とは考えられない。除去及び別の空間への運搬が可能であり得たとしても、そのような吸収体が嵩張るため、運搬によって大きなコストが発生する。
【0024】
上述の種類の吸音体が、別の空間に運搬されてそこに適用される必要がない場合であっても、いくつかの状況下では空間内に所与の数の吸収体を適用し、別の状況下ではより少ない数の吸収体を適用することが望ましいことがあり、或いは、例えば、その空間で計画されている音楽演奏の種類によっては、吸収体が全く不要なことさえある。これらの場合、多数のやや嵩張る吸収体の保管も問題になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の背景において、本発明の1つの目的は、低周波数(これに限らないが)における空間の残響時間を選択的に変更する装置、システム、及び方法を提供することである。
【0026】
本発明の更なる目的は、残響時間に対する影響を、例えば、装置又はシステムの吸収係数α及び/又は共振周波数(1つ以上)或いはその有効帯域幅を変えることによって、容易に変えることができる、装置、システム、及び方法を提供することである。具体的には、上述したように、吸収装置の本質的なオン/オフ機能、即ち、ある特定の周波数域内での非常に高い吸収係数と非常に低い吸収係数との間の切り替えが望ましい。
【0027】
本発明の更なる目的は、装置及びシステムの運搬及び保管を容易にする、装置及びシステムを提供することである。
【0028】
これら及び他の目的及び利点は、空気中の音場に配置され、予め定められた周波数域内、特に、低周波数域(これに限らないが)内で前記音場からの音響エネルギーを吸収する吸音装置によって実現される発明によるものであり、装置は、1つ以上のキャビティを含む少なくとも部分的に可撓性の本体を備え、本体の外表面の少なくとも一部は前記音場と接触しており、且つ、前記本体は、前記少なくとも1つのキャビティにガスを供給することによって膨張可能であり、またそこからガスを除去することによって折畳み可能であり、それにより、前記本体の吸収係数α及び共振周波数を変化させることができ、従って、最大吸収が起こる周波数域を決定する。
【0029】
原則として、所与の空間の残響時間の所望の変更は、例えば、空間の寸法、吸収装置の寸法、及び装置の様々な音響特性に応じて、上述したような単一の装置を使用することによって達成されてもよいが、多くの例では、空間の十分に大きな予め定められた面積に及ぶようにシステムを形成するため、複数のそのような装置が有利に使用される。そのようなシステムの多くの構成が考えられ、そのいくつかの実施例を発明の詳細な説明において記載する。
【0030】
基本的に、空間の残響時間を低減するためのシステムは、本発明に従って、上述の基本的構成の複数の吸音装置を含み、システムは、ガスを供給源から本体それぞれに供給し、そこから除去することができる導管を更に含む。前記本体は、それぞれ、前記本体それぞれへのガスの供給、及びそこからのガスの除去を別個に制御するバルブ手段を備えることができ、或いは、別の方法として、システムのすべての本体又はシステム内の本体群が、共通のバルブ手段を備えることもできる。
【0031】
具体的には、バルブ手段は遠隔制御可能であり、システムは、各本体内の静圧、従って、本体それぞれのコンプライアンス又は寸法を別個に制御する、集中制御装置を備えることができる。制御量として本体内の静圧を使用する代わりに、例えば、圧電素子によって本体の材料の張力を監視することができ、或いは、他の手段によって本体の寸法及び形状を監視することもできる。
【0032】
システムは、システムが設置される空間の残響時間を測定する手段を更に備え、それによってシステムの適切な設定を容易にすることができる。当然ながら、そのような手段は、本発明による単一の装置のみと接続して提供することができる。更に、システムは、後の分析及び検索のために、装置又はシステムの測定された残響時間及び対応するパラメータ設定を格納するデータ記憶手段を備え、それによって、装置又はシステムのパラメータ選択(装置の全体的な吸収面積、必要な膨張、最適な材料特性など)の経験的な改善を容易にすることができる。
【0033】
或いは、本体に空気又は他の適切なガスを供給し、そこから抜取ることによって、本発明による装置の本体を実際に膨張及び収縮させる代わりに、本体は、発明に従って、自己膨張可能なエアマットレス(発明の詳細な説明に簡単に記載される代替例)の形で自己膨張可能な手段を備えることができる。
【0034】
本発明は、更に、請求項1から7のいずれかに記載の1つ以上の本体を空間内に導入する工程を含み、前記1つ以上の本体の必要な総面積Sを次式によって決められる、少なくとも低周波数域における空間の残響時間を、所与の残響時間(T60)から所望の残響時間(T60.S)まで低減する方法に関する。
【数7】


式中、αは吸収係数、Vは空間の体積、cは音速である。従って、本発明による装置又はシステムを適用する前の、空間の残響時間の特定の値、空間の所望の残響時間、及び特定の周波数域において装置によって実現可能な吸収係数αを前提として、吸収体の必要な総表面積、従って吸収体の必要数を計算することが可能である。
【0035】
本発明の特定の実施例によれば、装置、システム、及び方法は、具体的には、最大吸収係数が少なくとも0.7、且つ使用可能な帯域幅が少なくとも1オクターブのとき、約63Hz〜約125Hzの周波数域において、即ち、多くの空間が図1に関連して冒頭に記載したような受容れ難い高い残響時間を示す周波数域において、残響時間を変更するように設計される。
【0036】
上述の膨張可能/収縮可能な本体を補足するものとして、本発明による装置は、より高い周波数で有効な吸収装置を更に備えることができることが強調される。そのような結合装置は発明の詳細な説明に記載され、高周波数吸収体は、例えば、より高い周波数における吸音体として有効になるように、十分に高い流動抵抗の適切な布地の薄いシートとして提供することができる。
【0037】
本発明は、以下の様々な実施例の詳細な説明を図面と併せ読むことにより、より十分に理解されるであろう。
【実施例】
【0038】
図2を参照すると、ここで、中央部1’を取り囲む縁部1”を含み、従って開いた箱状又はトレイ状の支持構造を形成する十分に硬いフレーム構造体1を含む、本発明による装置の第1の実施例の概略図が示される。中央部1’の反対側には、縁部1”に支持されて、薄い可撓性の膜2が浮いている。フレーム構造体及び膜は内部キャビティ4を形成し、それは、参照番号10で示される導管及びバルブ装置を介して、空気又は別の適切なガスを用いて膨張/収縮させることができる。キャビティ4には、任意に、例えば、中央部1’に設けられた多孔質材料のパネル3の形態で、又は適切な流動抵抗を有する布地の、中央部1’から適切な距離で縁部1”の間で浮かせたシートの形態で、特定の量の音響減衰材料を設けることができる。膨張した状態では、図2のSによって概略的に示される入射音場の音響エネルギーは、部分的には可撓性の膜2内の内部摩擦により、また、吸音材料がキャビティ4内に導入された場合、部分的に摩擦により、従ってこの材料に熱が発生することにより、装置によって吸収される。最大吸収は、膜の共振振動数において生じ、共振周波数は、膜及び空気キャビティのコンプライアンス、並びに質量、又は発明の開示に記載したような膜によって決定される。膜自体の振動によって最大吸収を実現するため、膜は、音響エネルギーの入射音場からの吸収に関与する内部摩擦を生じる、従って振動エネルギーを熱に変換する、適切な材料で作られなければならない。また、膜の質量(m当たり)、従って装置の共振振動数は、膜の材料の選択による影響を受ける。本発明による様々な装置の膜に適した材料の例を下記に示す。
【0039】
図3は、図2に示される種類の、上述の吸収パネル3を備える本発明による装置の周波数に応じて変わる、吸収係数(α)の実際の測定値を示す。膨張した状態では、約0.8の吸収係数、即ち膜に入射する音エネルギーの約80%は、装置に吸収され、63Hzの周波数に達し、この周波数付近の約1オクターブの周波数範囲において、かなり高い吸収係数が実現される。装置のキャビティ4内に吸収物質3が存在することにより、収縮(「真空」)状態において、吸収材料3の表面に載っていない膜のコンプライアンスが低減される(即ち、剛性が増加する)ことによるより高い周波数であっても、約0.6の比較的高い吸収係数が依然として実現されている。
【0040】
従って、装置の状態に応じて、2つの異なる周波数において、且つその付近で音響エネルギーの非常に高い吸収を実現することができ、即ち、装置の状態に応じて、装置が設置される空間の残響時間を2つの異なる周波数において変更することができる。吸収パネル3がキャビティ4内に設けられていなかった場合、依然として、周波数63Hzにおいて、且つその付近において著しい吸収が実現されたが、収縮状態では本質的に吸収が実現されず、従って、残響時間を変更するオン/オフ装置にならなかった。
【0041】
図3に示される装置は、上述の実質的に硬質のフレーム構造体を含み、それは、例えば、合板又は成型プラスチック材料で作ることができるが、多くの応用例では、少なくとも大抵の場合、本発明による装置において硬質構造体を回避し、それによってそれらの装置の運搬及び保管を容易にすることが有益である。これは、複数のそのような装置がある場所から別の場所に移動され、一時的に設定されて、大面積の空間におよぶシステムを形成する、移動式の応用例の場合に特に重要になる。そのような応用例では、本発明による装置が実際に完全に折り畳まれる場合、且つ比較的重い支持構造体を更に回避することができる場合に望ましい。図4、図5、図6、及び図7に示される本発明による装置の実施例は、すべてこの折畳み可能なタイプである。
【0042】
従って、図4a、図4b、及び図4cは、「マットレス」構成の本発明による装置の第2の実施例の様々な種類の概略図を示す。図4aに示されるように、装置は、縁部7’、7”によって境界が定められた、上側及び下側(図示なし)のほぼ平坦な表面5を含み、従ってマットレス内に内部キャビティを形成する、従来のマットレスの矩形形状を有してもよい。平坦な部分5及び縁部7’、7”は両方とも、適切な可撓性材料で作られ、それにより、マットレスは、適切なバルブ手段を備えた入口10を介して、加圧状態の空気又は他のガスを供給することにより、図4aに示されるような膨張状態にされうる。膨張したマットレスをその適切なほぼ矩形形状で維持するため、よく知られているように、2つの向かい合った平坦な表面5間の内部にクロス・コネクション6が設けられる。本発明から逸脱することなく、図4aに示される矩形形状以外のマットレスの他の形状も考えられることを理解されたい。
【0043】
図4b及び図4cは、本発明のマットレスの実施例における2つの異なる種類の2つの断面図を示す。従って、図4bに示される種類は、マットレスの一方の向かい合った側面に可撓性の表面5を含み、クロス・コネクション6及び可撓性の縁部7”を備える。このタイプの装置は、例えば、天井又は他方の支持構造から吊り下げられ、従って、装置の向かい合ったほぼ平坦な表面のどちらかにおいて、入射する音場に対するアクセスを提供することができる。図4bに示される装置とは対照的に、図4cに示される装置は、1つのみの可撓性の表面5を含むが、「マットレス」構造の向かい合った平坦な側面は実質的に硬いパネル44から成る。このパネルは、参照番号45によって示されるように、縁部7”を超えて延び、従って、装置を例えば天井又は壁に取り付けるのを容易にする、フランジ状の縁部を提供する。
【0044】
図5は、少なくとも1つの可撓性の膜9を浮かせるための膨張可能なフレーム構造体8’、8”を含み、ただしこれらの1つは上述の実施例のように実質的に硬いパネルであってもよい、折畳み可能なタイプの本発明による装置の第3の実施例の概略図を示す。フレーム構造体は、図5に示される中空の環状構造体8’及び8”によって提供され、比較的硬いフレーム構造体を実現するため、入口及びバルブ部材11を介して大気圧を超える圧力pの空気で膨張されてもよい。このフレーム構造体の上には、1つ又は2つの可撓性の膜9が浮いており、それによって膜の間にキャビティ12が形成される。キャビティ12を、キャビティ内の空気又は他のガスの圧力pを制御することによって変化(膨張/収縮)させることができ、キャビティは、入口及びバルブ手段10も備える。また、この実施例では、当然ながら、本発明から逸脱することなく、膨張可能な縁部15’、15”を含み、可撓性の膜(又は1つの膜と実質的に硬いパネル)13、14をその上で浮かせることができる膨張可能な矩形フレーム構造体を形成する、図6に示される実施例に例示されるように、図示される円筒形状以外の他の形状が考えられてもよい。この実施例では、個々のキャビティ内の圧力を制御するため、別個の入口及びバルブ部材16、17も存在する。
【0045】
図7は、図4a、図4b、及び図4cに示されるマットレス構造にある程度類似した「氷嚢」構造の、本発明による装置の一実施例の概要図を示す。装置は、全体が参照番号18によって示され、複数の部分20、20’に分割されるマットレス状構造の本体を含み、それらの部分は同一の形状及び寸法のものであってもよいが、これは必須ではなく、また、個々の部分は梁構造19によって境界が定められる。それぞれ内部キャビティ21を形成する個々の部分は、互いに流体連通していてもよく、或いは、所与の部分が特定の他の隣接する部分と流体連通していてもよく、それにより、所与の入口及びバルブ部材において、装置を膨張させるのに使用される空気又は他のガスを供給し、前記部分の他のものに流れるようにすることができる。しかし、隣接する部分の間に隔壁22を設け、それによって、装置を多数の区画に、例えば図7に示されるようなマトリックス状の列と行に分割することも可能である。従って、これらの区画はそれぞれ、特定の区画の部分を膨張/収縮させるため、別個の入口及びバルブ部材10を備える。
【0046】
次に図8を参照すると、本発明による装置の第6の実施例が示されている。具体的には、図8aは、この実施例の概略分解斜視図を示しており、スリット35を備えた切り離された円筒状構成の、向かい合ったほぼ直線の長手方向縁部29の間で浮いている向かい合った膜25及び26を含み、スリットを通して膜25、26を縁部内に導入し、後で気密状態に縁部に(且つ互いに)取り付け、それによって膜と向かい合った端部27との間に内部キャビティを形成することができ、縁部は、気密状態で膜及び縁部にも固定される。縁部27は、適切な可撓性材料の単一のシートで作ることができるが、関連する平面周囲の硬さ(慣性モーメント)を増加させ、それによって装置の膨張状態における円筒状構成を妨げるため、縁部27を膨張可能な本体として形成することも可能である。膨張状態及び収縮状態における装置の所望の形状を実現するため、1つ以上の中間形状保持部材28が、内部キャビティ内の適切な場所に設けられてもよい。形状保持部材28は、部材28を導入することによって装置内に形成された様々な区画間で空気又は他のガスが通過できるようにする、適切な通路36を備える。長手方向縁部29は、対応して形作られた(即ち、図8の場合はほぼ円筒状の)長手方向に延びるロッド32を収容することができ、ロッドは、縁部内の窪み31を通してアクセス可能であり、装置を浮かせるか、又は図8cに示されるように所与の装置を隣接する装置に接続して、それによって装置のシステムを構築できるようにする目的と、ロッド32が、その少なくとも特定の長手方向の長さに沿って、側枝33を通して装置のキャビティと連通している内部通路を備える場合に、管又は他のパイプライン34(適切なバルブ手段を備える)を介して、外部供給源から装置の内部キャビティに空気又は他のガスを供給する目的との、2つの目的に役立ってもよい。図8bでは、平面図及び線II−IIに沿った断面図が示され、従って、図8に示される実施例の両凸レンズ形状の構成が示される。ただし、本発明から逸脱することなく、他の断面形状も選択されてもよいことを理解されたい。最後に、図8cは、本発明のこの実施例による装置のシステムの一部を示し、装置の個々の縦列は、例えば天井又は他の支持構造から吊り下げられ、各装置は、上述の縁部にある窪み31を通してロッド32と解放可能に係合するように形成された接続部材37によって、隣接する装置に接続されている。空気又は他の適切なガスは、図8cに示されるような装置の最も外側の列にある管又はパイプライン34を介して、また短い管又はパイプライン38を介して隣接する列の装置間で、外部供給源から装置に供給される。本発明による装置のシステムから逸脱することなく、様々な装置間の流体相互接続の他のパターンも考えられることを理解されたい。
【0047】
具体的に図示又は詳細に記載していないが、本発明による個々の装置への、又は本発明による装置の様々な群への空気又はガスの供給ラインは、装置への若しくは装置からの空気又は他のガスのフローを制御するため、バルブ手段を備えることができることを理解されたい。従って、例えば、個々の装置にその別個のバルブ手段を提供することが可能であり、それによって個々の装置それぞれの膨張を別個に制御することができる。バルブは、手動式であるが遠隔制御可能なバルブであってもよく、例えば、以下に言及するような集中制御システムによって制御されることも考えられる。
【0048】
次に図9を参照すると、本発明による装置の第7の実施例の概略斜視図が示され、装置は、空間の境界40上に取り付けられ、低周波数吸収部材42と高周波数吸収部材46の両方を備え、それにより、空間の残響時間が、低周波数だけでなくより高い周波数においても変更される。この実施例による装置は、境界上に取り付けられるものとして図示され記載されるが、別の方法として、例えば天井から自由に浮くように設計されてもよく、その場合、高周波数吸収装置(布地など)46は、中央の低周波数吸収装置42のどちらかの側に設けられてもよいことが強調されるべきである。
【0049】
図9aに戻ると、本発明による低周波数吸収装置42、例えば、図4a、図4b、及び図7それぞれに関連して上述した「マットレス」デザイン又は「氷嚢」デザインの装置と、高周波数吸収装置46、例えば適切な布地とを含む、本発明による装置の第7の実施例が示される。収縮された状態では、低周波数吸収装置42はドラム43に巻き付けられており、ドラムは、その長手方向軸線の周りで、支持/吊り構造体又はブラケット41内で回転するように取り付けられ、ベルト44又は他の同等の手段を通してモータ45によって駆動される。モータは、例えば集中制御システムから遠隔制御されてもよく、それにより、装置又は装置のシステムの他の機能も制御、監視されてもよい。同様に、高周波数吸収装置46は、この実施例では、ドラム47に巻き付けられ、低周波数吸収装置とほぼ平行な巻出し位置まで適切なローラ48の上を案内されている。図9aに示されるように、モータは吸収装置42及び46の両方を駆動するが、これらの装置それぞれに別個の駆動部を提供することも可能であり、それにより、他方の装置を非作動状態にしたまま、装置の1つをその作動された巻出し位置に至らせることができる。所望に応じて、吸収装置は手動で操作されてもよい。
【0050】
吸収装置42及び46の下側端部には、下側レール49及び50がそれぞれ設けられ、高周波数吸収装置の下側レール50は主に、この装置の下側端部に必要な重量を提供して、それが、実質的に平坦な形で、低周波数吸収装置と平行に下向きに延びるようにするのに役立っている。低周波数吸収装置42は、概ね、高周波数吸収装置46よりも大幅に重く、低周波数吸収装置42の下側レール49は主に、壁46に取り付けられた下側支持部51に対する固定の取付け具を提供し、空気又は他のガスがそれを通して装置42に供給され、そこから抜かれる入口及びバルブ部材52を提供するために使用することができる。下側支持部51は、入口及びバルブ部材52と供給源との間に流体接続を確立する手段を備えてもよいが、装置42には、他の手段によって空気又はガスが供給されてもよい。バルブはまた、装置42への入口52の代わりに下側支持部51に設けられてもよい。図9b、図9c、及び図9dは、本発明のこの実施例の3つの異なる状態、即ち、(b)本質的に非作動の状態、(c)高周波数吸収装置は作動状態であるが、低周波数吸収装置は非作動で、まだ膨張していない状態、並びに(d)両方の装置が作動している状態を示す。
【0051】
図9a〜図9dは、低周波数吸収部42と高周波数吸収部46の両方を含む装置を示すが、高周波数残響時間の修正が不要の場合、支持/吊り構造体41は、低周波数吸収装置42のみを含むように形成することもできることが強調される。また、構造体41は、低周波数装置42のどちらかの側(前面と後面)に高周波数吸収装置46を含むように形成されてもよい。
【0052】
図4〜図9の中で示される実施例のいずれにおいても、膨張可能な低周波吸収装置は、音響減衰材料がキャビティ内に提供されていない1つ以上の内部キャビティを含んでもよい。これらの場合、吸収効果は、主として膜自体の内部摩擦による。しかし、キャビティ内に音響減衰材料を設けることも可能であり、その材料は、例えば、十分に高い耐音響流動性を有する、ミネラルウールなどの多孔質材料のパネル、又は布地などの薄いシートであることができる。
【0053】
本発明による様々な吸収装置が、空間の残響時間に対する所望の効果を実現するのに十分な表面積のものである場合、それらを別個に使用することは可能であるが、本発明による吸収装置のより大型のモジュラーシステムを組み立てて、それによって、空間の残響時間に対する必要な効果を実現するのに必要な所望の表面積を実現することも可能である。そのようなシステムは、例えば、所与の行数及び列数の吸収装置のマトリックス構造を含むことができ、個々の装置は、必要な共振周波数及び上述したような吸収係数を実現するのに必要な程度まで吸収装置を膨張させる空気/ガスを供給し、実施例のいくつかに関連して記載した膨張可能なフレーム部分に空気/ガスを供給するパイプラインによって、選択された方法で接続される。
【0054】
個々の吸収装置はそれぞれ、上述したようにそれ自体のバルブ手段を備えてもよく、又はバルブ手段は装置の特定の群に提供されてもよい。バルブ手段は、例えば集中制御コンソールから遠隔制御可能(赤外線、ブルートゥースなど)であってもよく、コンソールから装置の膨張/収縮が制御されてもよい。また、システムは、装置の圧力を測定するセンサを含み、それによって、システムが正確に機能していることを制御コンソールから監視できるようにする。更に、システムは、例えば吸収装置を膨張させる前後に、空間の残響時間を測定する手段を含んでもよい。本発明による吸収装置のシステムを使用して、装置を異なる共振周波数に調整し、例えば、空間の残響時間を変更するためにより広い有効周波数域を実現するようにすることも可能である。
【0055】
通常は、吸収装置は、63Hz又は125Hzの共振振動数に調整することができるが、これは単に一般的な共振振動数と見なされる。
【0056】
実際の具体例では、システムは、例えば、本発明による100個の吸収装置を含むことができ、専用の制御コンソールから制御可能である。或いは、システムと共に供給される適切なソフトウェアを備えた可搬型のパーソナルコンピュータから制御及び監視を行うことができる。このソフトウェアは、上述したように残響時間を測定することができるようにし、更に、入力された空間の物理的寸法及び予期される聴衆の数に基づいて、最適な残響時間を実現するために必要な吸収装置の総数を計算することができるアルゴリズムを含む。過去のデータ(例えば、システムが使用されていた他の空間の前後の残響時間)も、後の分析及び検索のため、適切なデータ記憶手段に格納することができる。
【0057】
発明の開示において言及したように、装置の空気又はガスで充填された本体を自己膨張(又は自己拡張)させる手段を含む、本発明の装置の代替実施例もまた、本発明の範囲内にある。この実施例は、例えばキャンプなどに使用される自己膨張式のマットレスにある程度類似しており、内部に例えばスポンジゴム構造を備える、外部の空気又はガス浸透性の包囲体を含んで、装置がその適切な深さ/寸法まで拡張するのが妨げられないとき、そのような拡張を容易にすることができる。従って、吸収装置のこの実施例は、例えば、第7の実施例として上述した装置の一部を形成することができるが、他の多くの関連で使用することもできる。
【0058】
更に、膨張可能/拡張可能な本体のキャビティ内の空気又はガスの圧力pが周囲の大気圧に等しい場合、本体に対する供給ラインのバルブ手段を、本発明による装置、アセンブリ、及びシステムの動作中、開いたままにしてもよいことに留意されたい。
【0059】
図10aを参照すると、上述の本発明の第7の実施例の支持/吊り構造体41の実際の設計が示される。この構造は、低周波数及び高周波数吸収装置のローラを収容するハウジング55として形成され、それによって、これらの装置又はその1つが部分的若しくは完全にハウジング内に収容されてもよい、図示される具体例に従ったものである。ハウジングを提供することにより、それが、装置が使用中ではないときの一般的な保護手段として、並びに防火手段として役立ってもよい。従って、アセンブリ又はシステム、火/煙を検出する手段を備えてもよく、その手段はアセンブリの駆動機構を起動し、それによって、吸収装置42、46の一方又は両方をハウジング内に引き戻す。具体的には、図10a及び図10bに示されるように、ハウジングは、ハウジング54の本体に旋回可能に接続された上側部分55を備えてもよく、それによって、上側部分55は、火災時に、図10bの左側に示されるようなハウジングの閉止状態まで自動的に回転する。当然ながら、ハウジングはまた、ハウジングに収容された吸収体の一般的な保護対策として、上側部分55によって閉止されてもよい。
【0060】
図11を参照すると、最後に、1つの実例として、コンサートホールの残響時間を変更するため、ホールの1つの境界に沿って浮かせた本発明による吸音アセンブリのシステムのコンピュータシミュレーションが示される。
【0061】
本発明による膨張可能/拡張可能、且つ折畳み可能/圧縮可能な本体は、周囲の音場から音響エネルギーを吸収することができなければならない。背景技術において上述したように、この能力は、吸収体の可撓性材料の内部損失と吸収体の外部放射抵抗とのインピーダンス比に関する。図2に示される実施例の場合、且つ図3に示される結果として得られる吸収係数により、2.96kg/mの密度を有するPVC材料である2mm厚のRianyl(登録商標)が適用されている。しかし、本発明による吸収体に、他の材料、例えば、砂又は他の粒状材料と混合された適切なポリマー材料が使用されてもよく、それにより、吸収体の壁厚を増加させることなく、材料の重量/密度が増加されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】音楽の生演奏並びに音の再生に使用することができる7室の異なる空間における残響時間T30の実際の測定値を示す図である。
【図2】薄い可撓性の膜によって覆われた実質的に硬いフレーム構造を含む、本発明による装置の第1の実施例の概略図である。
【図3】図2に示される種類の本発明による装置の周波数に応じて変わる吸収係数(α)を示す図である。
【図4a】「マットレス」構成の本発明による装置の第2の実施例の概略図である。
【図4b】「マットレス」構成の本発明による装置の第2の実施例の概略図である。
【図4c】「マットレス」構成の本発明による装置の第2の実施例の概略図である。
【図5】少なくとも1つの可撓性の膜を浮かせるための膨張可能なフレーム構造体を含む、本発明による装置の第3の実施例の概略図である。
【図6】図5に示されるものの代替例である、本発明による装置の第4の実施例の概略図である。
【図7】「氷嚢」構造の本発明による装置の第5の実施例の概略図である。
【図8a】本発明による装置の第6の実施例の概略分解斜視図である。
【図8b】図8aに示される実施例の平面図及び断面図である。
【図8c】空間の残響時間を変更するシステムを形成するために組み立てられた、本発明による装置のシステムの概略斜視図である。
【図9a】空間の境界上に取り付けられた、低周波数及び高周波数吸収部材の両方を備えた本発明による装置の第7の実施例の概略斜視図である。
【図9b】異なる状態における、図9aに示される本発明の実施例の概略斜視図である。
【図9c】異なる状態における、図9aに示される本発明の実施例の概略斜視図である。
【図9d】異なる状態における、図9aに示される本発明の実施例の概略斜視図である。
【図10a】本発明の第7の実施例の実際の具体例の概略斜視図である。
【図10b】本発明の第7の実施例の実際の具体例の概略斜視図である。
【図10c】本発明の第7の実施例の実際の具体例の概略斜視図である。
【図11】コンサートホール内における本発明によるシステムの設置のコンピュータシミュレーションを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の音場に配置され、少なくとも予め定められた低周波数域内で前記音場からの音響エネルギーを吸収する吸音装置であって、1つ以上のキャビティ(4、12、13)を含み、その外表面の少なくとも一部が前記音場と接触しており、且つ、前記少なくとも1つのキャビティ(4、12、13)にガスを供給している間、膨張可能/拡張可能であり、またそこからガスを除去している間、折畳み可能/圧縮可能である本体を備え、それにより、前記本体の吸収係数(α)及び/又は共振周波数を変化させることができ、従って、最大吸収が起こる吸収係数及び/又は周波数域を決定する、吸音装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸音装置において、前記低周波数域が約200Hzの上限周波数を有する、吸音装置。
【請求項3】
請求項1に記載の吸音装置において、前記低周波数域が50Hzから125Hzである、吸音装置。
【請求項4】
請求項1に記載の吸音装置において、前記本体の材料が、少なくとも前記低周波数域において、前記本体とそれを取り囲む前記音場との間に実質的なインピーダンス整合が存在するように選択されている、吸音装置。
【請求項5】
請求項1に記載の吸音装置において、前記ガスが、前記少なくとも1つのキャビティと前記ガスの供給源との間の導管内に設けられたバルブを介して、前記少なくとも1つのキャビティ(4、12、13)に供給され、またそこから除去され、前記バルブが、前記バルブを遠隔制御する手段を備える、吸音装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の吸音装置において、前記本体には、請求項1から5のいずれかに記載の1つ以上の吸音装置上に設けられた対応する取付け手段と係合する取付け手段(32、37)が更に設けられている、吸音装置。
【請求項7】
請求項1に記載の吸音装置において、前記少なくとも1つのキャビティ(4、12、13)の少なくとも1つには、該キャビティ内に吸音材(3)が設けられている、吸音装置。
【請求項8】
請求項1に記載の吸音装置において、前記少なくとも1つのキャビティには、内部自己膨張/自己拡張手段が設けられている、吸音装置。
【請求項9】
請求項1に記載の吸音装置において、前記本体に十分な硬さ及び/又は所望の形状及び/又は所望の深さを提供するため、前記本体が、膨張可能/拡張可能且つ折畳み可能/圧縮可能なフレーム構造体(8、15’、15”)によって取り囲まれている、吸音装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の吸音装置を少なくとも1つ有する吸音アセンブリであって、前記装置を巻き取ることができるローラ手段(43)と、前記ローラ手段(43)を回転させる駆動手段とを備える支持構造体又は吊り構造体(41)を備える、吸音アセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載の吸音アセンブリにおいて、高周波数吸収手段(46)を巻き取ることができる1つ以上の第2のローラ手段(47)上に、前記支持構造体又は吊り構造体(41)に支持された少なくとも1つの高周波数吸収手段(46)を更に備える、吸音アセンブリ。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の吸音アセンブリにおいて、前記支持構造体又は吊り構造体(41)が、前記アセンブリの非作動状態のとき、低周波数及び高周波数吸収装置を収容するハウジングとして形成されている、吸音アセンブリ。
【請求項13】
請求項10、11、又は12に記載の吸音アセンブリにおいて、前記アセンブリが、火災時に少なくとも前記低周波数吸収装置(42)を自動的に巻き取る手段を更に備える、吸音アセンブリ。
【請求項14】
請求項11に記載の吸音アセンブリにおいて、前記高周波数吸収装置(46)が、高周波数吸音を提供するのに十分な流動抵抗を有する材料の1枚の布地である、吸音アセンブリ。
【請求項15】
少なくとも1つの少なくとも部分的に弾性の本体を導入する工程を含む、空気中の音場から音を吸収する方法であって、音響質量及び音響コンプライアンスが、共振周波数を、従って前記音場からの音響エネルギーを実質的に吸収する有効周波数域を決定し、外表面が媒体に対する選択された音響抵抗を示し、その結果、前記媒体が前記少なくとも1つの本体の外表面の少なくとも一部と接触し、それによって前記少なくとも1つの本体が前記音場から音響エネルギーを吸収する方法であって、
前記本体の少なくとも1つが、少なくとも1つのキャビティにガスを供給している間、膨張可能/拡張可能であり、またそこからガスを除去している間、折畳み可能/圧縮可能であり、それにより、前記本体の吸収係数(α)及び/又は共振周波数を変化させることができ、従って、最大吸収が起こる周波数域を決定することを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記1つ以上の本体の前記音場と接触している部分の音響抵抗が、それらの部分とそれを取り囲む前記音場との間に実質的なインピーダンス整合が存在するように選択されることを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法において、前記共振振動数f、音響抵抗比□、最大吸収係数αmax、及び吸収帯域幅Brが、次式
【数1】


によって与えられる、方法。
【請求項18】
請求項1から9のいずれかに記載の装置を1つ以上、或いは請求項10から14のいずれかに記載の吸音アセンブリの1つ以上を空間内に導入する工程を含む、少なくとも低周波数域における前記空間の残響時間を所与の残響時間(T60)から所望の残響時間(T60.S)まで低減する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記1つ以上の本体の必要総表面積Sが、次式
【数2】


によって決定され、式中、αは吸収装置(1つ以上)の吸収係数、Vは前記空間の容積、cは音速である、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、残響時間の前記低減が、請求項17に従って決定された共振振動数及び吸収帯域幅によって決定される低周波数域で主に起こる、方法。
【請求項21】
請求項1から9のいずれかに記載の吸音装置の複数、及び/又は請求項10から14のいずれかに記載の吸音アセンブリの複数を備え、前記装置及び/又はアセンブリのそれぞれに個別に、若しくは前記装置又はアセンブリの予め定められた群単位で、それを通して供給源からガスを供給し、且つ除去することができる導管を更に備える、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記装置又は/及びアセンブリが、前記装置又はアセンブリへのガスの供給、並びにそれらからのガスの除去を制御するバルブ手段を備える、システム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記バルブ手段が遠隔制御可能であり、前記システムが、前記装置又はアセンブリの膨張/拡張の程度を制御する集中制御装置を更に備える、システム。
【請求項24】
請求項21から23のいずれかに記載のシステムにおいて、前記システムが、前記システムが設置される空間の残響時間を測定する手段を更に備える、システム。
【請求項25】
請求項21から24のいずれかに記載のシステムにおいて、前記装置又は/及びアセンブリの、例えば、測定された残響時間及び様々な対応するパラメータを格納するデータ格納手段を更に備える、システム。
【請求項26】
請求項1から9のいずれかに記載の前記吸音装置の1つ以上、且つ/又は請求項10から14のいずれかに記載の前記吸音アセンブリの1つ以上、且つ/又は請求項21から25のいずれかに記載の前記システムを備える、例えば生の又は録音された音楽の演奏に使用される、リスニングルーム。
【請求項27】
空間の残響時間を変更するための、請求項1から9のいずれかに記載の吸音装置の使用。
【請求項28】
空間の残響時間を変更するための、請求項10から14のいずれかに記載の吸音アセンブリの使用。
【請求項29】
空間の残響時間を変更するための、請求項21から25のいずれかに記載のシステムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図9(d)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−545900(P2008−545900A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510408(P2008−510408)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000322
【国際公開番号】WO2006/119763
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507375616)
【Fターム(参考)】