説明

空間合成による超音波診断造影画像

【課題】パルス反転技術によって分離される高調波造影剤の空間合成画像を作るための超音波画像診断システム及び方法を提供する。
【解決手段】異なる変調特性を有するビームは、異なる視線方向で送信される。整列されたビームは、パルス反転によって高調波造影信号成分を分離するよう、非線形信号分離装置によって結合される。異なる視線方向からの高調波造影信号は、空間合成された高調波造影画像を作るよう、空間合成処理装置によって結合される。示される実施例において、空間合成された高調波造影画像は、組織画像をオーバーレイする。例えばマルチライン取得のような異なった変調及びビーム操作技術が、また、造影剤画像の空間合成に関して開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断用画像システム、具体的には、空間合成によって人体内の造影剤を画像化する超音波診断画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体内の血流及び組織脈管構造の超音波画像は、超音波造影剤を血流に注入することによって著しく増強され得る。造影剤は、超音波を極めて反射する浮遊超微粒気泡の溶液である。超微粒気泡が画像化される脈管構造及び血管を通って移動する際に、超微粒気泡からの強いエコー反射は、血流を超音波画像中で照らし出し、臨床医学者が心臓及び血管の状態をより明らかに診断することを可能にする。これは、例えば、米国特許第5,833,613号明細書(Averkiou等)に記述される。超微粒気泡からのエコー信号の高調波成分は、脈管構造が、組織背面に対して、より容易に分割され、表示されることを可能にする。これは、米国特許第5,951,478号明細書(Hwang等)に記述される。
【0003】
造影剤は、幾つかの異なる方法で使用され得る。1つは、超微粒気泡を分裂又は破壊する高エネルギー(高MI)超音波を画像フィールドに当てることである。分裂イベントは、容易に検出及び表示をなされ得る強い非線形反射を作る。これは、米国特許第5,456,257号明細書(Johnson等)に記述される。しかし、現在開発されている造影剤の新しい世代により、非線形応答は、超微粒気泡の実質的な分裂を伴わずに導出可能であり、一度の造影剤注入においてより拡大された画像セッションを可能にする。この技術において、超微粒気泡は、低い送信エネルギー(低MI)で連続して画像化可能である。これは、米国特許第6,171,246号明細書(Averkiou等)に記述される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,833,613号明細書(Averkiou等)
【特許文献2】米国特許第5,951,478号明細書(Hwang等)
【特許文献3】米国特許第5,456,257号明細書(Johnson等)
【特許文献4】米国特許第6,171,246号明細書(Averkiou等)
【特許文献5】米国特許第5,706,819号明細書(Hwang)
【特許文献6】米国特許第5,577,505号明細書(Brock−Fisher等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、低MI造影画像は、しばしば、非常に低い信号対雑音比と、欠陥のある距離分解能と、総体的な画像美とをもたらす。これは、帰還エコーの強度を低下させる最小限の超微粒気泡分裂のために、可能な最低MIを用いることを望むことに因る。このような弊害は、また、マルチパルス法が、例えば米国特許第5,706,819号明細書(Hwang)及び米国特許第5,577,505号明細書(Brock−Fisher等)に記述されるように、造影エコーの非線形成分を分離するために用いられる場合に見られる。パルス反転と呼ばれるこのような技術は、高調波分離のために複数のパルスの送信を必要とする。従って、良好な画像美の利点を保ちながら、造影画像の品質を改善することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の原理に従って、超音波画像診断システムは、空間合成によって超音波造影画像化を実行することを可能にする。関心領域は、複数の異なる視線方向からのビームによって調べられ、後方散乱信号は、高調波分離のために処理され、空間合成された高調波造影画像を作るよう結合される。空間合成は、画像スペックルを低減して、アーチ状の解剖学的特徴の明確さを改善するのみならず、低MI画像の信号対雑音をも改善する。幾つかの示される実施例において、空間合成のための成分画像は、非線形信号成分がパルス反転によって分離されることを可能にする方法で取得される。他の実施例において、空間合成された高調波造影画像の取得レートは、補間によるパルス反転分離により改善される。更なる他の実施例において、基本及び高調波取得はコントラスト増強された血流の空間合成オーバーレイにより組織画像を作るよう交互配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の原理に従って、空間的に合成された造影画像を作る超音波画像診断システムをブロック図形式で表す。
【図2】病理及び脈管構造のコントラスト促進オーバーレイを伴う組織画像を表す。
【図3A】コントラスト促進血流の空間的に合成されたオーバーレイを伴う組織画像を得るための技術を表す。
【図3B】コントラスト促進血流の空間的に合成されたオーバーレイを伴う組織画像を得るための技術を表す。
【図3C】コントラスト促進血流の空間的に合成されたオーバーレイを伴う組織画像を得るための技術を表す。
【図4A】空間的に合成された非線形画像のマルチライン取得のためのビーム形状を表す。
【図4B】空間的に合成された非線形画像のマルチライン取得のためのビーム形状を表す。
【図4C】空間的に合成された非線形画像のマルチライン取得のためのビーム形状を表す。
【図5A】図4Aの技術によって得られる空間合成のための成分画像を表す。
【図5B】図4Bの技術によって得られる空間合成のための成分画像を表す。
【図5C】図4Cの技術によって得られる空間合成のための成分画像を表す。
【図6A】空間的に合成された高調波造影画像の高速取得技術を表す。
【図6B】空間的に合成された高調波造影画像の高速取得技術を表す。
【図6C】空間的に合成された高調波造影画像の高速取得技術を表す。
【図7】パルス反転による空間合成及び高調波分離のための成分画像の結合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、本発明の原理に従って構成された超音波画像診断システムが、ブロック図形式で示されている。このシステムは、超音波送信ビームにより撮像される人体の2又は3次元領域を走査することによって動作する。アレイトランスデューサ12を有する走査ヘッド10は、点線で示された長方形及び平行四辺形によって表された画像フィールドに亘って、異なった角度(視線方向)でビームを送信する。走査線の3つのグループは、夫々、走査ヘッドに対して異なる角度に向けられており、図中でA、B及びCと符号を付されて示されている。ビームの送信は、アレイ沿いの所定の原点から所定の角度で夫々のビームを送信するように、アレイトランスデューサの素子の夫々の作動の位相及び時間を制御する送信器14によって制御される。夫々のビームは、その向けられた経路に沿って、人体を通って送信されるので、ビームは、送信した周波数成分に対応する線形及び非線形な(基本及び高調波)成分を有するエコー信号を戻す。送信信号は、ビームによって衝突された造影剤超微粒気泡の非線形応答によって変調され、それによって、高調波成分を有するエコー信号を発生させる。
【0009】
図1の超音波システムは、人体内の散乱体からの高調波エコー成分の帰還のために、所望のビーム方向で、選ばれた変調特性から成る波又はパルスを送信する送信器16を利用する。送信器は、送信ビームの周波数成分、それらの相対的な強度又は振幅、及び送信信号の位相又は極性を含め、図中に示されている送信ビームの特性を決定する多数の制御パラメータに応答する。送信器は、送信/受信スイッチ14によって、走査ヘッド10のアレイトランスデューサ12の素子へ結合されている。アレイトランスデューサは、平面(2次元)画像化のための1次元配列又は2次元若しくは体積(3次元)画像化のための2次元配列でありうる。
【0010】
トランスデューサアレイ12は、トランスデューサ通過域の範囲内にある基本及び高調波成分を含む人体からのエコーを受信する。これらのエコー信号は、スイッチ14によって、ビームフォーマ18へ結合される。ビームフォーマ18は、異なるトランスデューサ素子からのエコー信号を適切に遅延させて、それらを、受信ビーム方向に沿って浅いところからより深い深さまで一連の基本及び高調波信号を形成するよう結合する。望ましくは、ビームフォーマは、近くのフィールドから遠くのフィールドまで一連の不連続なコヒーレント・デジタル・エコー信号を作るよう、デジタル化されたエコー信号に作用するデジタル式ビームフォーマである。ビームフォーマは、単一の送信ビームに応答して複数の空間的に不連続な受信走査ラインに沿ってエコー信号の2又はそれ以上の列を作るマルチライン・ビームフォーマであっても良い。このようなビームフォーマは、特に、以下の実施例のうちの幾つかで述べられるように、3次元画像化、及び空間的に合成された造影画像の高速取得のために、有益である。ビーム形成されたエコー信号は、集合体メモリ22へ結合される。送信器16及びビームフォーマ18は、システム制御部60の制御下で動作する。システム制御部60は、超音波システムのユーザによって操作されるユーザインターフェース20における制御設定に応答する。システム制御部60は、所望の角度、送信エネルギー、周波数及び変調特性で所望の数の走査ライン群を送信するよう、送信器を制御する。システム制御部60は、また、用いられる開口度及び画像深度に関して受信したエコー信号を適切に遅延させて結合するよう、デジタル式ビームフォーマを制御する。
【0011】
本発明の1つの態様に従って、複数の波又はパルスは、異なる変調技術を用いて、夫々のビーム方向で送信され、結果として、画像フィールド内の夫々の走査点に係る複数のエコーが受信される。共通の空間配置に対応するエコーは、本明細書中でエコーの集合体と呼ばれ、集合体メモリ22に記憶される。集合体メモリ22から、それらエコーは取り出されて、まとめて処理される。集合体のエコーは、造影剤の所望の非線形信号又は高調波信号を作るよう、非線形信号分離装置24によって、以下で更に詳細に述べられるような種々の方法で結合される。この高調波分離は、非線形成分を増強によって強め、結合されたエコー信号の異なる送信変調による相殺によって基本成分を抑えるよう動作する。用いられる変調技術は、振幅変調、位相変調、極性変調又はそれらの組合せでありうる。「非線形エコー結合を用いる超音波スペックル低減(Ultrasonic Speckle Reduction Using Nonlinear Echo Combinations)」と題された同時出願の米国特許(出願代理人明細書ATL−347)によると、異なる変調を受けた信号のエコーは、非線形分離のために結合される。分離された信号は、不要な周波数成分を取り除くよう、フィルタ62によってフィルタ処理をなされる。高調波造影剤を画像化する際に、フィルタ62の通過帯域は、送信帯域の高調波を通すよう設定される。フィルタ処理された信号は、検出装置64によってBモード又はドップラー検出を受ける。Bモード画像化のために、検出装置64は、エコー信号エンベロープの振幅検出を実行しうる。ドップラー画像化のために、エコーの集合体は、画像内の夫々の点に関してまとめられ、ドップラー偏移又はドップラー電力強度を推定するようドップラー処理される。
【0012】
本発明の他の態様に従って、デジタルエコー信号は、処理装置30における空間合成によって処理される。デジタルエコー信号は、予備処理装置32によって最初に予備的処理をなされる。予備処理装置32は、必要に応じて、重み係数により信号サンプルを予め重み付けすることができる。サンプルは、特定の合成画像を形成するために用いられる成分フレームの数の関数である重み係数により予め重み付け可能である。予備処理装置は、また、合成されたサンプル又は画像の数が変化するところの遷移を滑らかにするように、1つの重複成分画像の端にあるエッジラインを重み付けすることができる。次に、予備的処理をなされた信号サンプルは、再サンプリング装置34において再サンプリングを受けても良い。再サンプリング装置34は、1つの成分画像の推定を、他の成分画像の推定へ、又は表示空間の画素へ、と空間的に再編成することができる。
【0013】
再サンプリングの後に、成分画像は、結合装置36によって空間ベースで合成される。結合は、合計、平均、ピーク検出、又は他の結合手段を有しうる。結合されたサンプルは、また、この処理ステップにおける結合の前に、重み付けされても良い。最後的に、後処理が、後処理装置38によって実行される。後処理装置38は、結合された値を表示範囲の値へと正規化する。後処理は、参照テーブルによって最も容易に実施され、合成画像の表示に適した値の範囲への、合成値の範囲の圧縮及びマッピングを同時に実行することができる。
【0014】
合成処理は、推定データ空間又は表示画素空間において実行されても良い。構成された実施例において、走査変換は、走査変換装置40によって合成処理に続いて行われる。合成画像は、推定又は表示画素のいずれかの形式で、シネループ(Cineloop)メモリ42に記憶されても良い。推定形式で記憶される場合には、画像は、表示装置にシネループメモリから再生される際に走査変換をなされうる。走査変換装置40及びシネループメモリ42は、また、米国特許第5,485,842号明細書及び米国特許第5,860,924号明細書に記述されるような空間的に合成された画像の3次元表示をレンダリングするために用いられても良い。走査変換の後に、空間的に合成された画像は、ビデオ処理装置44によって表示のために処理され、画像表示装置50に表示される。
【0015】
図2は、上述した米国特許第6,171,246号明細書(Averkiou等による。)に記述されている形式のオーバーレイ造影画像70を表す。この画像70は、造影剤超微粒気泡の高調波造影画像によりオーバーレイされている76によって境界を示された領域を含むエコー組織背景72を有する。画像信号を取得するために用いられる複数の視線方向は、78で表されるような、画像フィールド内の腫瘍及び塊を識別する能力を改善する。異なる視線方向からの信号の結合は、塊78から返された信号の信号対雑音比を改善して、塊78が背景に対してより明確に顕著となるようにする。異なる視線方向により、塊78の輪郭がより鮮明となる。更に、画像スペックルによって不明瞭となりうる僅かな塊は、より容易に識別可能となる。高調波造影画像は、塊における脈管構造をより良く強調表示するよう、着色されても良い。
【0016】
この画像70を取得するための技術が、図3a〜3cに表されている。超音波プローブ10は、ビーム82、84及び86を人体内に異なる視線方向A、B及びCで送信する。これは、他の視線方向のビームを送信する前に、特定の視線方向のビームの全てを送信することによってなされ得る。代替的には、それは、異なる視線方向のビームの送信を交互配置することによってなされ得る。それは、また、「複数の同時発生するビーム送信による超音波空間合成(Ultrasonic Spatial Compounding With Multiple Simultaneous Beam Transmission)」と題された米国特許出願第60/501,795号明細書に記述されるように、異なる視線方向で同時にビームを送信することによってもなされ得る。図3aは、視線方向Aで送信されるビーム群82を表し、図3bは、視線方向Cで送信されるビーム群84を表し、図3cは、視線方向Bで送信されるビーム群86を表す。
【0017】
図2及び3の実施例において、基本及び高調波の両信号は、オーバーレイ造影画像70を作るために用いられる。これを行うための1つの方法は、基本周波数で夫々のビームを送信し、基本及び高調波の両周波数でエコーを受信することである。基本周波数で異なる視線方向から送信される信号は、空間的に結合され、エコー組織画像72を形成するために用いられる。高調波周波数で異なる視線方向から送信される信号は、空間的に結合され、高調波造影オーバーレイ画像74を形成するために用いられる。この技術の変形例は、エコー組織背景を形成するために1つの視線方向のみからの基本周波数信号を用い、高調波造影オーバーレイ画像を形成するために複数の視線方向からの高調波周波数信号を用いることである。この変形例は、組織画像72の空間合成を作らないが、塊78が診断されている領域76における高調波造影信号を空間的に合成する。これらの技術の両方で、高調波周波数は、帯域通過フィルタリングによって基本周波数から分けられ得る。
【0018】
他のアプローチは、高調波分離のためにパルス反転を用いることである。これを行うための1つの方法は、夫々のビーム82、84及び86に沿って、異なる変調特性により少なくとも2度送信することである。夫々のビーム方向に沿うエコー集合体は、集合体メモリ22に一時的に保存され、次に、非線形信号分離装置24によって空間ベースで結合される。結合されるエコーの異なる変調(例えば、位相変調、振幅変調、極性変調、又はそれらの組合せ)は、基本成分を抑制し、高調波成分を強める。少なくとも1つの視線方向からの基本信号は、フィルタリングによって、又はパルス反転によって分離される(例えば、異なる変調を受けたエコーを付加結合する代わりに、それらは、基本周波数成分を強める間に、第2の高調波を抑制するために減結合される。)。パルス反転により分離された、異なる視線方向からの高調波信号は、高調波造影画像74を作るよう、空間合成処理装置30によって空間的に合成される。複数の視線方向からの基本信号は、また、エコー組織画像72を作るよう、処理装置30によって空間的に合成されても良い。
【0019】
更なる他の実施例において、異なる視線方向のビームは、異なる送信周波数で送信される。例えば、視線方向Aで送信されたビームは、1.9MHzの公称周波数で送信され、高調波は、3.8MHzの周波数で受信されて、帯域通過フィルタリング又はパルス反転によって分離され得る(複数である場合には、異なる変調を受けた送信が用いられる。)。視線方向Cで送信されたビームは、3.0MHzの公称周波数で送信され、エコーは3.0MHzのその基本周波数で受信され得る。視線方向Bで送信されたビームは、視線方向Aと同じように動作する。即ち、送信は、1.9MHzの公称周波数でなされ、高調波は、3.8MHzの周波数で受信されて、帯域通過フィルタリング又はパルス反転によって分離される。エコー組織画像は、視線方向Cで受信される基本周波数エコーから形成され、高調波造影画像は、視線方向A及びBで受信された高調波信号を空間的に合成することによって形成される。組織画像は、空間的に合成されない一方で、それが基本成分から形成されるという事実に基づいて良好な解像度を示しうる。解像度は、より高い送信周波数が用いられることによって、更に改善される。
【0020】
より高い表示フレームレートをもたらす本実施例の変形例は、視線方向Aにおいて1つの変調特性により夫々のビーム方向82に沿って1度、且つ、視線方向Bにおいて他の変調特性により夫々のビーム方向86に沿って1度送信することである。パルス反転高調波分離は、その場合に、異なる変調を受けたビームからのエコーが空間ベースで結合されるように、空間合成処理によって実行され、結果として、空間合成及び高調波分離の両方をもたらす。この場合に、高調波造影画像は、図7に表されるように、台形状となる。画像フィールドの中央の領域90において、エコーは、全ての3つの視線方向から存在し、2又は3の視線方向からのエコーを結合することは、この領域90において高調波分離と、高度な空間合成とを発生させうる。領域92及び94において、エコーは、2つの視線方向(即ち、領域92に関しては方向A及びC、領域94に関しては方向B及びC)からしか存在しない。従って、上述した1.9MHz〜3.0MHz〜1.9MHz送信法により、より低度の空間合成が、これらの領域において発生しうるが、パルス反転高調波分離は起こり得ない。高調波分離は、これらの領域において、夫々の送信ビームが異なる変調特性により1.9MHzにある場合にパルス反転によってなされ得るので、2又はそれ以上の如何なるビームからのエコーも、パルス反転分離のために使用可能である。その場合には、空間合成及び高調波分離の両方が、領域92及び94に対して実行可能である。例えば、ビーム82は、第1の位相特性により1.9MHzで送信され、ビーム84は、異なる振幅特性により1.9MHzで送信され、ビーム86は、ビーム82の振幅と同じであるが、異なる位相特性で送信され得る。これらのビームの幾つか又は全てからのエコーを結合することは、空間合成及びパルス反転非線形分離の両方をもたらす。領域96及び98では、1つのエコーしか、3つの視線方向送信方式からは存在せず、空間合成及びパルス反転分離のいずれも、これらの領域では実行され得ない。
【0021】
明らかなように、3よりも多い視線方向を用いることは、空間合成及びパルス反転分離の両方のために、更なる領域及び異なる形の領域を作り得る。構成された実施例では、9までの視線方向が使用された。
【0022】
表示のフレームレートを増大させるための他の技術は、空間合成及びパルス反転非線形信号分離の両方を行う場合に、マルチライン取得を用いることである。上述した1つのマルチライン技術は、上記米国特許出願第60/501,795号明細書に記述されるように、異なる視線方向で同時発生するビームを送信することである。他のマルチライン技術は、図4及び5に表される。図4a〜4cにおいて、ビームは、3つの異なる視線方向で送信される。ビームは、複数の受信ビームを包含するビーム・プロフィールを有する。例えば、図4aにおいて、夫々のビーム・プロフィール102は、破線の中心ラインを有し、中心ラインのいずれか一方の端において2つの受信ビームを包含する。符号「+」は、所定の変調特性により送信されるビームを示し、符号「−」は、異なる変調特性により送信されるビームを示す。図面中で、対をなす送受信ビームの中心は、説明を明確にするために、互いに並列に示されている。実際には、これらのビームは、互いに一列に並べられうる。図4aにおいて、プラスビームは、所定のビーム方向で送信され、2又はそれ以上のプラス受信ビームは、送信に応答して受信され、集合体メモリ22に保持される。その場合に、マイナスビームは、前記ビーム方向で送信され、2又はそれ以上のマイナスビームが、それに応じて受信される。一列に並べられたプラス/マイナス受信ビームは、非線形信号分離装置24によって結合され、それによって、送信ビーム102の破線中心のいずれか一方の端に1つである、2つの高調波造影ビームを作る。従って、2又はそれ以上の高調波ビームは、2つの送信イベントにのみ応答して受信される。この送信/受信シーケンスは、図5aに示されるような開口に亘って繰り返され、一列に配列された、異なる変調を受けた受信ビームの対を作る。その場合に、該受信ビームは、第1の視線方向で夫々のビーム182に沿ってパルス反転分離をなされた高調波造影信号を作るよう、結合され得る。
【0023】
送信、受信及び結合のこの同一シーケンスは、次に、図4b及び5bにおいてビーム・プロフィール104及びビーム184によって示される第2の視線方向で実行される。シーケンスは、第3に、図4c及び5cにおいてビーム・プロフィール106及びビーム186によって示される第3の視線方向で繰り返される。異なる視線方向からの高調波エコーは、その場合に、高調波造影画像を形成するよう、空間合成処理装置30によって処理され、結合される。
【0024】
マルチライン受信を用いて又は用いずにフレームレートを増大させるための他の技術は、図6a〜6cに示す補間技術による。一連のビームは、図6aに示すように、開口に亘って送信及び受信をなされる。これらのビームは、夫々のビーム配置上でプラス及びマイナスによって表される交互送信特性を有する。本例で、ビーム122は、第1の方法で変調され、ビーム124は、第2の方法で変調される。隣り合うビーム122、124における受信ビームは、その場合に、中間走査ライン130を挿入するよう結合される。異なる変調を受けたビームからのエコーの結合は、夫々の走査ライン130に沿って高調波分離を引き起こす。従って、走査ライン130は、第1の視線方向で一組の高調波造影走査ラインを有する。
【0025】
シーケンスは、第2に、図6bに示すように、第2の視線方向で繰り返される。交互変調特性の送信ビームが送信され、エコーが、ビーム142及び144によって示されるように、夫々のビームに沿って受信される。隣り合う受信ビームは、第2の視線方向で取得された分離高調波信号の中間走査ライン150を挿入するために用いられる。シーケンスは、第3に、図6cに示すように、第3の視線方向で繰り返される。交互送信/受信ビーム162、164は、中間分離高調波走査ライン170を挿入するために取得され、用いられる。高調波走査ライン130、150、170は、その場合に、空間的に合成された高調波造影画像を作るよう空間的に合成される。表示のフレームレートは、nの走査ラインを有する夫々のグループがn+1のビームを送信及び受信することによって取得されるので、比較的高い。
【0026】
パルス反転分離を達成するために2の受信ライン(+,−)を結合する代わりに、3又はそれ以上の横方向に隣り合うラインが、非線形信号成分を分離するよう、適切な重み付けにより結合され得る。例えば、3のライン(+,−,+)は、中心(−)のラインの位置で非線形信号を形成するよう結合され得る。非線形信号の隣接ラインは、同様に適切な重み付け及びその他により、(−,+,−)ラインの結合から隣接(+)ラインの位置で形成されても良い。
【0027】
マルチライン取得が取得可能である場合には、表示のフレームレートは、より一層高く増大しうる。図6a〜6cでプラスビーム方向に沿って中心にあるプラス変調ビームの夫々の送信は、送信ビーム中心のいずれか一方の端における複数の受信ビームの取得が後に続き、走査ライン130、150又は170により整列され得る。マイナスビーム方向に沿って中心にあるマイナス変調ビームの夫々の送信は、走査ライン配置により整列される送信ビームのいずれか一方の端における複数の受信ビームの取得が後に続く。同じ走査ライン配置により整列された受信ビームは、走査ライン130、150及び170に沿ってパルス反転によって非線形信号を分離するよう結合される。2の受信ビームが夫々の送信ビームに対して受信される場合に、フレームレートは、前の実施例でのフレームレートと同じとなる。即ち、n+1のビームが、1つの視線方向で夫々のnのビームに対して送信される。例えば4x、6x又は8xマルチライン受信といった、より高い次数のマルチラインが用いられる場合には、より大きなフレームレートが得られる。これらのより高い取得レートは、マルチライン・アーティファクト、時間的なアーティファクト、又はその両方に付随して起こり得るが、特定のアプリケーションにおいては適さないこともある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤を用いる超音波画像化方法であって、
画像フィールドにおける各点に、第1の視線方向で前記画像フィールドにおける当該点に向けられている第1の変調技術によって変調された変調送信ビームにより、高周波を当てるステップと、
前記画像フィールドにおける各点に、第2の視線方向で前記画像フィールドにおける当該点に向けられている異なった変調技術によって変調された変調送信ビームにより、高周波を当てるステップと、
結合された信号を形成するよう2つの前記ビームに応答して前記画像フィールドにおける各点から受け取られるエコーを結合するステップであって、スペックルが空間結合によって低減され、高調波信号成分が単一の結合ステップの結果として非線形分離によって分離されるステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記高周波を当てるステップは、位相、振幅又は極性のうちの1つ又はそれ以上において異なった変調を受けた送信信号を用いて前記関心領域に高周波を当てるステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
空間的に合成された組織画像を生成するよう、異なった視線方向からの基本周波数信号を結合するステップと、
前記造影剤の空間的に合成された画像によりオーバーレイされた前記空間的に合成された組織画像の画像を生成するステップと
を更に有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
組織画像を生成するステップと、
前記造影剤の空間的に合成された画像によりオーバーレイされた前記組織画像の画像を生成するステップと
を更に有する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記高周波を当てるステップは、2又はそれ以上の視線方向において夫々のビーム方向に沿って異なった送信特性によって複数回送信するステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記高周波を当てるステップは、2又はそれ以上の視線方向において夫々のビーム方向に沿って異なった送信特性によって複数回送信し、夫々の送信イベントに応答して、複数の、空間的に異なった受信ビーム方向に沿って受信するステップを更に有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記高周波を当てるステップは、2又はそれ以上のビーム方向で、異なった送信特性の空間的に交互配置されたビームを送信するステップを更に有し、
前記結合するステップは、前記交互配置された送信ビームの中心に走査線を挿入するステップを更に有する、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−87965(P2011−87965A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62(P2011−62)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2006−544643(P2006−544643)の分割
【原出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】