説明

穿刺針組立体

【課題】針先がハウジングから突出する第1の位置から、針先がハウジング内に収納される第2に位置に不本意に穿刺針が移動するのを確実に防止することができる穿刺針組立体を提供すること。
【解決手段】穿刺針組立体1は、針先311を有する穿刺針3と、針先311が突出する第1の位置と針先311が収納される第2の位置とに穿刺針3を移動可能に支持するハウジング2と、ハウジング2に設置され、穿刺針3を基端方向に付勢するコイルバネ4と、ハウジング2に設置され、コイルバネ4の付勢力に抗して、第1の位置にある穿刺針3の第2の位置への移動を規制する規制状態と、規制状態が解除され、第1の位置にある穿刺針3の第2の位置への移動を許可する解除状態とを取り得る規制部材5と、ハウジング2にその長手方向に沿って移動可能に設置され、この移動により、規制部材5を規制状態から解除状態に変位させる操作を行なう操作部材6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の穿刺針組立体は、鋭利な針先を有する穿刺針と、穿刺針を移動可能に支持する筒状のハウジングと、穿刺針を基端方向に付勢する圧縮コイルバネとを備えている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の穿刺針組立体は、穿刺針の針先がハウジングから突出した第1の状態と、針先がハウジング内に収納される第2の状態とを取り得るよう構成されている。そして、第1の状態は、穿刺針に突出形成された操作ボタン(アクチュエータ)がハウジングに形成された側孔(保持穴)の縁部に係合することにより維持される。この状態から操作ボタンをハウジングの軸側に向かって押圧操作すると、当該操作ボタンがハウジングの側孔から抜け出して、前記係合が解除される。このとき、穿刺針が圧縮コイルバネの付勢力により基端方向に移動することができ、よって、第2の状態となる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の穿刺針組立体では、操作ボタンを単に押圧操作するだけで第1の状態から第2の状態へ変化するため、例えばこの穿刺針組立体を用いようとして把持したときに、誤って指先が操作ボタンに触れた場合、当該操作ボタンが不本意に押圧されてしまうという問題があった。前述したように穿刺針組立体は操作ボタンが押圧されると第2の状態となってしまい、針先で生体表面を穿刺することができず、すなわち、使用することができず、結果、未使用状態で廃棄処分しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−330945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、針先がハウジングから突出する第1の位置から、針先がハウジング内に収納される第2に位置に不本意に穿刺針が移動するのを確実に防止することができる穿刺針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 先端に鋭利な針先を有する針管と、該針管の基端部に固定されたハブとを有する穿刺針と、
先端が開口した先端開口を有する筒状をなすものであり、前記穿刺針を、前記針先が前記先端開口から突出する第1の位置と、該第1の位置から基端方向に移動して、前記針先が収納される第2の位置とに移動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに設置され、前記穿刺針を基端方向に付勢する付勢部材と、
前記ハウジングに設置され、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記第1の位置にある前記穿刺針の前記第2の位置への移動を規制する規制状態と、該規制状態が解除され、前記第1の位置にある前記穿刺針の前記第2の位置への移動を許可する解除状態とを取り得る規制部材と、
前記ハウジングにその長手方向または周方向に沿って移動可能であり、さらに前記ハウジングの軸に接近する方向にも移動可能に設置され、当該接近する方向に移動してから前記ハウジングの長手方向または周方向に沿って移動し、当該移動により、前記規制部材を前記規制状態から前記解除状態に変位させる操作を行なう操作部材とを備えることを特徴とする穿刺針組立体。
【0007】
(2) 前記規制部材は、前記操作部材の移動に連動して、前記ハウジングの軸回りに回転し、その回転角度に応じて前記規制状態と前記解除状態とを取り得る上記(1)に記載の穿刺針組立体。
【0008】
(3) 前記規制部材は、筒状をなすものであり、
前記操作部材は、前記規制部材の外周部に対向して配置されており、
前記規制部材の外周部と前記操作部材の前記規制部材の外周部に対向する部分のうちの一方には、カム溝が形成され、他方には、前記カム溝に挿入され、該カム溝内を移動する突部が突出形成され、前記突部が前記カム溝内を移動することにより、前記規制部材が前記ハウジングの軸回りに回転する上記(2)に記載の穿刺針組立体。
【0009】
(4) 前記操作部材は、前記規制部材に対し接近・離間可能に支持されており、前記規制部材から離間した状態では前記突部が前記カム溝内を移動できず、前記規制部材に対し接近した状態では前記突部が前記カム溝内を移動できる上記(3)に記載の穿刺針組立体。
【0010】
(5) 前記ハブは、筒状をなし、その外周部に外径が拡径した拡径部を有し、
前記規制部材は、筒状をなし、その内周部に内径が縮径した縮径部を有し、
前記規制状態では、前記拡径部が前記縮径部に当接して、前記穿刺針の移動が規制され、前記解除状態では、前記拡径部が前記縮径部から外れて、前記穿刺針の移動が可能となる上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の穿刺針組立体。
【0011】
また、本発明の穿刺針組立体では、前記縮径部の内周と前記拡径部の外周とは、それぞれ、先端側から見た輪郭形状が同じ多角形をなし、前記ハウジングの軸上に同心的に配置されており、
前記規制状態と前記解除状態とでは、前記縮径部の内周の前記輪郭形状と前記拡径部の外周の前記輪郭形状との重なりの程度が異なるのが好ましい。
【0012】
また、本発明の穿刺針組立体では、前記穿刺針が前記第2の位置にあるとき、その状態を維持して前記穿刺針が再度前記第1の位置に移動するのを防止するロック手段を備えるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の穿刺針組立体では、前記ロック手段は、前記第2の位置にある前記穿刺針が前記第1の位置に移動しようとしたときに係合し合う、前記ハブに設けられたハブ側係合部と、前記ハウジングに設けられたハウジング側係合部とで構成されているのが好ましい。
【0014】
また、本発明の穿刺針組立体では、前記付勢部材は、前記穿刺針が前記第1の位置および前記第2の位置のいずれの位置にあるときでも前記ハウジング内に位置しているのが好ましい。
【0015】
また、本発明の穿刺針組立体では、前記付勢部材は、圧縮コイルバネで構成されているのが好ましい。
【0016】
また、本発明の穿刺針組立体では、前記ハブは、筒状をなし、その基端部にチューブが接続されるものであり、
前記針管は、前記ハブを介して、前記チューブと連通するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の穿刺針組立体では、前記ハウジングは、その外周部に突出する開閉可能な一対の翼部を有し、該一対の翼部は、前記第1の位置にある前記穿刺針の前記針先で生体表面を穿刺するときに把持される把持部として機能するのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作部材をハウジングの長手方向または周方向に移動させなければ、規制部材を規制状態から解除状態に変位させる操作を行なうことができない。従って、例えば操作部材をハウジングの軸側に単に押圧したとしても規制部材が変位するのが防止される。これにより、穿刺針の誤作動、すなわち、針先がハウジングから突出する第1の位置から、針先がハウジング内に収納される第2に位置に不本意に穿刺針が移動するのを確実に防止することができる。
【0019】
また、操作部材がハウジングの軸に接近する方向に移動してからハウジングの長手方向または周方向に沿って移動するよう構成されている場合には、操作部材(規制部材)に対する誤操作をより確実に防止することができ、その結果、穿刺針の誤作動もより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の穿刺針組立体の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す穿刺針組立体の作動状態を順に示す縦断面図(図1中のA−A線断面図)である。
【図3】図1に示す穿刺針組立体の作動状態を順に示す縦断面図(図1中のA−A線断面図)である。
【図4】図3に示す状態の穿刺針組立体の基端部付近の縦断面図(図1中のB−B線断面図)である。
【図5】図1に示す穿刺針組立体が有する穿刺針、規制部材および操作部材の位置関係を示す分解斜視図である。
【図6】図5に示す穿刺針、規制部材および操作部材の作動状態を順に示す斜視図である。
【図7】図5に示す穿刺針、規制部材および操作部材の作動状態を順に示す斜視図である。
【図8】図5に示す穿刺針、規制部材および操作部材の作動状態を順に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の穿刺針組立体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の穿刺針組立体の実施形態を示す斜視図、図2および図3は、それぞれ、図1に示す穿刺針組立体の作動状態を順に示す縦断面図(図1中のA−A線断面図)、図4は、図3に示す状態の穿刺針組立体の基端部付近の縦断面図(図1中のB−B線断面図)、図5は、図1に示す穿刺針組立体が有する穿刺針、規制部材および操作部材の位置関係を示す分解斜視図、図6〜図8は、それぞれ、図5に示す穿刺針、規制部材および操作部材の作動状態を順に示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図8中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0022】
図1に示す穿刺針組立体1は、例えば静注針や採血針として使用することができるものであり、ハウジング2と、ハウジング2に移動可能に支持された穿刺針3と、穿刺針3を基端方向に付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネ(以下単に「コイルバネ」という)4と、穿刺針3の移動を規制する規制部材5と、規制部材5に対する操作を行なう操作部材6とを備えている。この穿刺針組立体1は、穿刺針3がハウジング2に対し出没自在に構成されている。そして、穿刺針組立体1を使用する際には、穿刺針3がハウジング2から突出した図2に示す状態で、例えば皮膚等の生体表面に対する穿刺を行なうことができる。また、穿刺針組立体1の使用後には、穿刺針3がハウジング2内に収納された図3に示す状態となり、その状態で破棄に供される。また、穿刺針3は、硬質のハウジング2内に収納されるため、例えば廃棄中に針曲りや針折れが生じるのを確実に防止することができる。
【0023】
なお、図2に示す状態で、穿刺針3の針先311を覆う、例えばポリプロピレンで構成された管状をなすキャップ(図示せず)が装着されていてもよい。この場合、前記キャップを外して穿刺針組立体1を使用するまで穿刺針3の針先311を保護することができ、よって、針先311の破損や針先311による誤穿刺等を確実に防止することができる。
【0024】
以下、穿刺針組立体1の各部の構成について説明する。
図1〜図3に示すように、ハウジング2は、筒体で構成されたハウジング本体21と、ハウジング本体21の外周部211に突出する一対の翼部22a、22bとを有している。
【0025】
ハウジング本体21は、その先端が開口した先端開口212と、基端が開口した基端開口213とを有している。ハウジング本体21は、その長手方向に沿って穿刺針3を移動可能に支持することができる。これにより、穿刺針3は、針先311が先端開口212から突出する第1の位置(図2参照)から、針先311がハウジング本体21内に収納される第2の位置(図3参照)に移動することができる。
【0026】
また、図1に示すように、ハウジング本体21の外周部211には、その基端部に側面視で「コ」字状をなすスリット214がハウジング本体21の軸を介して2つ形成されている。各スリット214は、それぞれ、外周部211を貫通している。そして、各スリット214で囲まれた部分は、それぞれ、先端が固定端、基端が自由端となる片持支持された弾性片23となる。図4に示すように、各弾性片23の自由端には、それぞれ、内側に向かって突出した突部で構成されたハウジング側係合部231が形成されている。このハウジング側係合部231は、後述するロック手段7の一部として機能する。
【0027】
また、ハウジング本体21の外周部211には、その先端部に一対の翼部22a、22bが突出形成されている。翼部22aと翼部22bとは、ハウジング本体21の軸を介して配置されている。このような翼部22aと翼部22bとは、それぞれ、可撓性を有する小片で構成され、互いに接近・離間可能、すなわち、開閉可能なものである。第1の位置にある穿刺針3の針先311で生体表面を穿刺するときには、閉じた状態の翼部22aと翼部22bとを指先で把持して、その穿刺操作を容易に行なうことができる。このように翼部22aと翼部22bとは、把持部として機能する。また、穿刺状態の穿刺針組立体1を生体表面に留置するときには、開いた状態の翼部22aと翼部22bとを生体表面に例えば粘着テープで固定することができる。このように翼部22aと翼部22bとは、固定部としても機能する。
【0028】
なお、ハウジング本体21の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種樹脂材料を用いることができ、その中でも特にポリプロピレンまたはポリカーボネートが好ましい。また、各翼部22a、22bの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種樹脂材料を用いることができ、その中でも特にポリプロピレンまたはポリ塩化ビニルが好ましい。
【0029】
図2〜図7に示すように、穿刺針3は、針管31と、針管31の基端部に固定されたハブ32とで構成されている。
【0030】
針管31は、その先端に鋭利な針先311を有している。
ハブ32は、筒状をなし、針管31の基端部に例えば嵌合により固定されている。
【0031】
ハブ32の基端部は、チューブ20の先端部201が接続される接続部33となっている。接続部33は、その外径が段階的に変化しており、チューブ20が不本意に接続部33から離脱するのを確実に防止することができる。また、ハブ32を介して、針管31とチューブ20とが連通する。
【0032】
なお、チューブ20の基端部には、コネクタ30が設置されている。コネクタ30に、輸液バッグを備えた輸液ライン(図示せず)を接続すると、輸液投与を行なうことができる。また、コネクタ30にシリンジや採血管を接続すると採血を行なうことができる。
【0033】
図5に示すように、ハブ32の外周部の長手方向の途中には、その外径が拡径した拡径部で構成されたハブ側係合部34が設けられている。このハブ側係合部34の外周341の先端側から見た輪郭形状は、多角形(図示の構成ではほぼ正方形)をなしている。
【0034】
ハブ側係合部34は、ハウジング2のハウジング側係合部231とともに、ロック手段7として機能する部分である。ロック手段7は、穿刺針3が第2の位置にあるとき、その状態を維持して穿刺針3が再度第1の位置に移動するのを防止するものである。図4に示す状態では、穿刺針3が第2の位置にある。この穿刺針3をチューブ20を介して先端方向に押し込んだ場合、当該穿刺針3は、第1の位置に戻ろう(移動しよう)とするが、ハブ側係合部34とハウジング2のハウジング側係合部231とが係合し合うこととなる。これにより、穿刺針3の第1の位置への戻りを確実に防止することができ、よって、使用済み状態の穿刺針3の針先311で例えば指先等を誤って穿刺してしまうのを確実に防止することができる。
【0035】
なお、針管31の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等の各種金属材料が挙げられる。また、ハブ32の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料を用いることができ、その中でも特にポリカーボネートまたはポリアセタールが好ましい。
【0036】
図2、図3に示すように、ハウジング2には、線材43を螺旋状に巻回してなるコイルバネ4が収納されている。コイルバネ4は、圧縮状態で、先端41がハウジング本体21の先端内周部に形成された段差部215に当接し、基端42が穿刺針3のハブ32の先端321に当接している。このように設置されたコイルバネ4により、穿刺針3を基端方向に付勢することができ、よって、第1の位置にある穿刺針3が基端方向に向かって第2の位置に確実に移動することができる。
【0037】
なお、穿刺針3の針管31は、コイルバネ4の内側のほぼ中心部を挿通している。これにより、穿刺針3を安定して付勢することができる。
【0038】
また、コイルバネ4は、穿刺針3が第1の位置および第2の位置のいずれの位置にあるときでもハウジング2内に位置している。これにより、例えば、穿刺針組立体1を操作する際に、指先が隣接する線材43同士の間に挟まれるのを確実に防止することができ、よって、安全に操作を行なうことができる。
【0039】
コイルバネ4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や各種樹脂材料を用いることができ、その中でも特にステンレス鋼が好ましい。
【0040】
図2、図3に示すように、ハウジング2内には、その長手方向の途中に規制部材5が配置されている。規制部材5は、穿刺針3が挿通しており、当該穿刺針3に対する、図2、図6に示す規制状態と、その規制状態が解除される、図3、図7、図8に示す解除状態とを取り得る。規制状態では、コイルバネ4の付勢力に抗して、第1の位置にある穿刺針3の第2の位置への移動が規制される。解除状態では、第1の位置にある穿刺針3の第2の位置への移動が許可される。
【0041】
図5〜図8に示すように、規制部材5は、リング状(筒状)をなすものである。
規制部材5の外周部には、後述する操作部材6のフォロア部(突部)64が挿入されるカム溝52が形成されている。カム溝52は、規制部材5の軸に対し傾斜した方向に沿って形成されている。そして、操作部材6を基端方向に引張り操作すると、操作部材6のフォロア部64がカム溝52内を移動する。これにより、操作部材6のフォロア部64がカム溝52の側壁(側面)を押圧することとなり、よって、規制部材5がハウジング2の軸回りに回転することができる。
【0042】
また、規制部材5の内周部には、その内径が縮径した縮径部で構成された規制部材側係合部51が設けられている。この規制部材側係合部51の内周511の先端側から見た輪郭形状は、ハブ側係合部34の外周341の先端側から見た輪郭形状と同じ、多角形(図示の構成ではほぼ正方形)をなしている。
【0043】
ハウジング2内では、規制部材側係合部51の内周511とハブ側係合部34の外周341とは、ハウジング2の軸上に同心的に配置されている。前述したように規制部材5がハウジング2の軸回りに回転すると、その回転角度に応じて、規制部材側係合部51の内周511の輪郭形状とハブ側係合部34の外周341の輪郭との重なりの程度が異なる(図6〜図8参照)。
【0044】
図6(図2も同様)に示すように、規制部材側係合部51の内周511の輪郭とハブ側係合部34の外周341の輪郭との重なりの程度が最小となる、すなわち、規制部材側係合部51の内周511の輪郭からハブ側係合部34の外周341の輪郭の一部がはみ出た状態では、ハブ側係合部34の基端面が規制部材側係合部51の先端面に当接、係合する。これにより、穿刺針の移動が規制される規制状態となる。
【0045】
また、図7、図8(図3も同様)に示すように、規制部材側係合部51の内周511の輪郭とハブ側係合部34の外周341の輪郭との重なりの程度が最大となる、すなわち、先端側から見たときに規制部材側係合部51の内周511がハブ側係合部34の外周341全体を包含する状態では、ハブ側係合部34が規制部材側係合部51から外れる。これにより、穿刺針3に対する規制部材5の規制が解除され、当該穿刺針3が移動可能な解除状態となる。
【0046】
このように穿刺針組立体1では、操作部材6で規制部材5を回転操作することができ、その回転角度に応じて、規制部材5が規制状態と解除状態とに確実に変位するよう構成されている。
【0047】
なお、規制部材5および操作部材6の構成材料としては、特に限定されず、それぞれ、例えば、各種樹脂材料を用いることができ、その中でも特にポリプロピレンまたはポリアセタールが好ましい。
【0048】
図2、図3に示すように、操作部材6は、ハウジング2の外周部211に形成された貫通孔216に挿入、設置されている。この操作部材6は、ハウジング2の軸に接近する方向(図2、図6中の矢印A方向)と、ハウジング2の軸方向(図3、図7中の矢印B方向)とに移動するものであり、矢印A方向に移動してから矢印B方向に移動することができる。そして、操作部材6を矢印B方向に移動することにより、前述したように、規制部材5を回転操作することができる。
【0049】
なお、ハウジング2には、操作部材6を矢印A方向と反対方向に付勢する付勢部(図示せず)が設けられている。これにより、例えば指先が誤って操作部材6に触れて当該操作部材6が矢印A方向に押圧されたとしても、その押圧力を解除すれば、操作部材6が迅速かつ確実に押圧前の状態に戻ることができる。これにより、操作部材6が矢印B方向に移動するのを確実に防止することができ、よって、規制部材5が規制状態から解除状態となって、穿刺針3が不本意に退避してしまうのを確実に防止することができる。
【0050】
また、操作部材6は、小片で構成され、その表面61が外方に向かって露出し、裏面62が規制部材5の外周部のカム溝52が形成された部分に対向している。表面61には、その一部が隆起した隆起部63が形成されている。この隆起部63は、操作部材6を移動する際に指を当てることができる指当て部として機能する。裏面62には、規制部材5のカム溝52に挿入される円柱状のフォロア部64が突出形成されている。
【0051】
操作部材6は、前述したように矢印A方向に移動することができるため、規制部材5に対し接近・離間可能である。換言すれば、操作部材6は、矢印A方向に移動する前は規制部材5から離間した状態となり、矢印A方向に移動した後は規制部材5に接近した状態となる。そして、操作部材6が規制部材5から離間した状態では、操作部材6の一対の羽部65がそれぞれハウジング本体21の貫通孔216の上部に設けられた溝217に当接して(係合して)、フォロア部64が規制部材5のカム溝52内を移動することができない(図2、図6参照)。一方、操作部材6が規制部材5に接近した状態では、操作部材6の一対の羽部65がそれぞれハウジング本体21の溝217から退避して、フォロア部64が規制部材5のカム溝52内を移動可能となる(図3、図7参照)。この状態で操作部材6を矢印B方向に引張れば、規制部材5を回転させることができる。
【0052】
なお、離間した状態でも、フォロア部64がカム溝52に挿入されることで、操作部材6を操作しないのに、規制部材5が回転することを防止することができる。
【0053】
このように、穿刺針組立体1では、操作部材6を矢印A方向に一旦押圧しなければ、矢印B方向に引張ることができない、すなわち、操作部材6の操作には2つの段階がある。さらに、この2つの段階を経なれれば、規制部材5を回転操作して、第1の位置にある穿刺針3を第2の位置へ移動させることができない。従って、穿刺針組立体1では、例えば操作部材6を単に押圧したとしても規制部材5を回転操作するまでには至らず、よって、穿刺針3が第1の位置から第2の位置に不本意に移動する誤作動を確実に防止することができる。
【0054】
また、一般的に、穿刺針組立体1の操作者にとっては、「押圧する」という動作は、「引張る」という動作よりも安易な動作である。従来の穿刺針組立体では、操作ボタン(操作部材)を押圧するのみであったため、不注意で操作ボタンを操作してしまうことがあった。しかしながら、本発明の穿刺針組立体1では、「押圧」よりも意識を必要とする「引張り」でも操作部材6を操作するよう構成されているため、注意して操作部材6を操作することができる。これにより、規制部材5に対する誤操作をより確実に防止することができ、その結果、穿刺針3の誤作動も確実に防止することができる。
【0055】
以上、本発明の穿刺針組立体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、穿刺針組立体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0056】
また、前記実施形態では規制部材にカム溝が形成され、操作部材にフォロア部(突部)が形成されているが、これに限定されず、例えば、操作部材にカム溝が形成され、規制部材にカム溝が形成されていてもよい。
【0057】
また、規制部材の規制部材側係合部(縮径部)の内周の先端側から見た輪郭形状と、ハブのハブ側係合部(拡径部)の外周の先端側から見た輪郭形状とは、それぞれ、前記実施形態では正方形(四角形)をなしているが、これに限定されず、例えば、三角形、五角形、六角形等の多角形をなしていてもよいし、その他、楕円形や長円形をなしていてもよい。
【0058】
また、操作部材は、前記実施形態ではハウジングの軸に接近する方向とハウジングの長手方向(軸方向)とに順に移動可能に設置されているが、これに限定されず、例えば、ハウジングの軸に接近する方向とハウジングの周方向とに順に移動可能に設置されていてもよし、ハウジングの軸に接近する方向への移動が規制され、ハウジングの長手方向または周方向のみに移動可能に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 穿刺針組立体
2 ハウジング
21 ハウジング本体
211 外周部
212 先端開口
213 基端開口
214 スリット
215 段差部
216 貫通孔
217 溝
22a、22b 翼部
23 弾性片
231 ハウジング側係合部
3 穿刺針
31 針管
311 針先
32 ハブ
321 先端
33 接続部
34 ハブ側係合部
341 外周
4 圧縮コイルバネ(コイルバネ)
41 先端
42 基端
43 線材
5 規制部材
51 規制部材側係合部
511 内周
52 カム溝
6 操作部材
61 表面
62 裏面
63 隆起部
64 フォロア部(突部)
65 羽部
7 ロック手段
20 チューブ
201 先端部
30 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に鋭利な針先を有する針管と、該針管の基端部に固定されたハブとを有する穿刺針と、
先端が開口した先端開口を有する筒状をなすものであり、前記穿刺針を、前記針先が前記先端開口から突出する第1の位置と、該第1の位置から基端方向に移動して、前記針先が収納される第2の位置とに移動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに設置され、前記穿刺針を基端方向に付勢する付勢部材と、
前記ハウジングに設置され、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記第1の位置にある前記穿刺針の前記第2の位置への移動を規制する規制状態と、該規制状態が解除され、前記第1の位置にある前記穿刺針の前記第2の位置への移動を許可する解除状態とを取り得る規制部材と、
前記ハウジングにその長手方向または周方向に沿って移動可能であり、さらに前記ハウジングの軸に接近する方向にも移動可能に設置され、当該接近する方向に移動してから前記ハウジングの長手方向または周方向に沿って移動し、当該移動により、前記規制部材を前記規制状態から前記解除状態に変位させる操作を行なう操作部材とを備えることを特徴とする穿刺針組立体。
【請求項2】
前記規制部材は、前記操作部材の移動に連動して、前記ハウジングの軸回りに回転し、その回転角度に応じて前記規制状態と前記解除状態とを取り得る請求項1に記載の穿刺針組立体。
【請求項3】
前記規制部材は、筒状をなすものであり、
前記操作部材は、前記規制部材の外周部に対向して配置されており、
前記規制部材の外周部と前記操作部材の前記規制部材の外周部に対向する部分のうちの一方には、カム溝が形成され、他方には、前記カム溝に挿入され、該カム溝内を移動する突部が突出形成され、前記突部が前記カム溝内を移動することにより、前記規制部材が前記ハウジングの軸回りに回転する請求項2に記載の穿刺針組立体。
【請求項4】
前記操作部材は、前記規制部材に対し接近・離間可能に支持されており、前記規制部材から離間した状態では前記突部が前記カム溝内を移動できず、前記規制部材に対し接近した状態では前記突部が前記カム溝内を移動できる請求項3に記載の穿刺針組立体。
【請求項5】
前記ハブは、筒状をなし、その外周部に外径が拡径した拡径部を有し、
前記規制部材は、筒状をなし、その内周部に内径が縮径した縮径部を有し、
前記規制状態では、前記拡径部が前記縮径部に当接して、前記穿刺針の移動が規制され、前記解除状態では、前記拡径部が前記縮径部から外れて、前記穿刺針の移動が可能となる請求項1ないし4のいずれかに記載の穿刺針組立体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−200599(P2011−200599A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73427(P2010−73427)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】