説明

穿孔治具

【課題】瓦の所定位置に、容易かつ正確に貫通孔を開設することができる穿孔治具を提供する。
【解決手段】穿孔治具10は、穿孔工具30を瓦40の表面40aに対して一定姿勢に保持する工具保持手段11と、工具保持手段11を瓦40の表面40a上の一定位置に保持するため瓦40の周縁部の複数箇所(辺縁部40L,40R,40U)に着脱可能に係合する位置決め手段12と、位置決め手段12に対する工具保持手段11の相対位置を変更する位置変更手段13と、を備えている。位置決め手段12として、複数の支持部材14,15と、ガイド部材16と、ガイドストッパ17と、を設け、位置変更手段13として、辺縁部40L,40Rと直交する矢線S方向に沿って工具保持手段11を位置変更可能に固定するための係止部材18がガイド部材16に着脱可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔工具を用いて瓦に貫通孔を開設する際に使用する穿孔治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラパネル、太陽光温水パネルなどの屋上設置物を建物の屋根瓦上に取り付ける屋上支持構造として、従来、瓦を貫通して建物の野地板上に立設された支持部材を使用したものがある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1などに記載された屋上支持構造を構築する場合、穿孔工具である回転ドリルや振動ドリルを使用して瓦に貫通孔を開設する作業が行われている。
【0003】
また、被穿孔体の曲面部分に穿孔する際に使用される穿孔治具が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−165883号公報
【特許文献2】特開2006−312222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転ドリルや振動ドリルなどの穿孔工具を使用して瓦に貫通孔を開設する場合、瓦の表面には滑り易い傾斜面や曲面が存在するので、穿孔作業開始時に穿孔工具が滑ったり、逃げたりすることが多い。このため、所定位置に正確に貫通孔を開設することは、熟練技能者であっても、極めて困難な作業となっている。
【0006】
一方、特許文献2記載の穿孔治具は、種々の大きさ及び曲がり具合に対応することができるが、瓦に貫通孔を開口する作業には不向きである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、瓦の所定位置に、容易かつ正確に貫通孔を開設することができる穿孔治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の穿孔治具は、穿孔工具を瓦の表面に対して一定姿勢に保持する工具保持手段と、前記工具保持手段を瓦の表面上の一定位置に保持するため瓦の周縁部の複数箇所に着脱可能に係合する位置決め手段と、前記位置決め手段に対する前記工具保持手段の相対位置を変更する位置変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記位置決め手段として、周縁部の平面視形状が略四角形をなす瓦の対向する辺縁部に着脱可能に係合する複数の支持部材と、前記支持部材の間で前記瓦の表面上を跨ぐ状態に支持されたガイド部材と、前記辺縁部と平行方向の前記ガイド部材の移動を拘束するガイドストッパと、を設けることが望ましい。
【0010】
また、前記位置変更手段として、前記辺縁部と直交する方向に沿って工具保持手段を位置変更可能に固定するための係止部材を前記ガイド部材に取り付けることが望ましい。
【0011】
この場合、前記工具保持手段が、前記係止部材に着脱可能であることが望ましい。
【0012】
一方、瓦の表面と前記工具保持手段との間に介在する支持脚を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、瓦の所定位置に、容易かつ正確に貫通孔を開設することができる穿孔治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態である穿孔治具を示す斜視図である。
【図2】図1中の矢線A方向から見た使用状態を示す図である。
【図3】その他の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、穿孔治具10は、穿孔工具30を瓦40の表面40aに対して一定姿勢に保持する工具保持手段11と、工具保持手段11を瓦40の表面40a上の一定位置に保持するため瓦40の周縁部の複数箇所(辺縁部40L,40R,40U)に着脱可能に係合する位置決め手段12と、位置決め手段12に対する工具保持手段11の相対位置を変更する位置変更手段13と、を備えている。
【0016】
位置決め手段12として、平面視形状が略四角形をなす瓦40の対向する一対の辺縁部40L,40Rに着脱可能に係合する複数の支持部材14,15と、支持部材14,15の間で瓦40の表面40a上を跨ぐ状態に支持されたガイド部材16と、辺縁部40L,40Rと平行方向(矢線T方向)へのガイド部材16の移動を拘束するガイドストッパ17と、を設けている。
【0017】
位置変更手段13として、辺縁部40L,40Rと直交する方向(矢線S方向)に沿って工具保持手段11を位置変更可能に固定するための係止部材18が、ガイド部材16に着脱可能に取り付けられている。また、瓦40の表面40aと係止部材18との間に介在する支持脚19が設けられている。
【0018】
支持部材14,15はいずれも平板材で形成され、支持部材14はその平面部14aを瓦40の辺縁部40Lに当接させた状態で係合され、支持部材15はその平面部15aを辺縁部40Rに対向させ、平面部15aを貫通して螺合された支持ボルト20の先端部20aを辺縁部40Rに当接させた状態で係合されている。支持ボルト20を正転、逆転させることにより、その先端部20aを辺縁部40Rに接触、離隔させることができる。
【0019】
平板材で形成されたガイド部材16は、その両端部16a,16bをそれぞれ支持部材14,15に固着することにより、瓦40の表面40aを跨ぐ状態で支持されている。ガイド部材16には、辺縁部40L,40Rと直交する方向(矢線S方向)に沿って複数列の長孔21,22,23が開設されている。ガイド部材16上には、係止部材18が装着され、係止部材18から長孔21,23を貫通した状態で蝶ネジ24,25が螺着されている。
【0020】
また、係止部材18から長孔22を貫通した状態で支持ボルト19が螺着され、支持ボルト19下端には接触部19bが設けられている。支持ボルト19を正転逆転させることにより、接触部19bを昇降させることができる。
【0021】
ガイド部材16上の一方の端部16b寄りの部分には、L字形状をしたガイドストッパ17の基端部17bが複数のネジ27で固定されている。ガイドストッパ17の先端部17aは瓦40の辺縁部40Uの一部に当接した状態で係合している。
【0022】
蝶ネジ24,25を緩めれば、係止部材18は辺縁部40L,40Rと直交する方向(矢線S方向)に移動可能であり、蝶ネジ24,25を締め付けることにより、ガイド部材16の長孔21,23の長径の範囲内の任意の位置に係止部材18を固定することができる。また、ガイド部材16と係止部材18とを常に直交状態に保つため、係止部材18の下面には、ガイド部材16の側面部16cに沿ってスライド可能な摺動部材26が固着されている。なお、図示していないが、ガイド部材16の表面には係止部材18の位置を確認するための目盛りが設けられている。
【0023】
長方形状の平板材で形成された係止部材18は、その長辺方向が辺縁部40L,40Rと平行をなす状態でガイド部材16上に装着され、複数の工具保持手段11がそれぞれ長方形の短辺寄りの部分に複数のネジ28で着脱可能に固定されている。各工具保持手段11は、穿孔工具30が嵌入可能な円筒状の本体部11aと、本体部11aの下端付近に設けられたフランジ部11bと、を有し、本体部11aの下端部11cは係止部材18を貫通して、係止部材18の下面に露出している。
【0024】
図1,図2に基づいて穿孔治具10の使い方について説明する。瓦40の辺縁部40Lから穿孔予定位置までの距離に合わせて、ガイド部材16に沿って係止部材18を移動調整することにより、支持部材14の平面部14aから工具保持手段11の本体部11aの軸心11dまでの距離を設定し、蝶ネジ24,25を締め付けることによって係止部材18をガイド部材16に固定する。また、支持部材15の支持ボルト20を緩め、その先端部20aと支持部材14の平面部14aとの距離が、瓦40の辺縁部40L,40R間の距離より少し広がった状態とする。
【0025】
次に、所定の基準面B上に載置された瓦40の辺縁部40L,40Rを支持部材14,15の間に挟むようにして穿孔治具10を瓦40に装着する。次に、ガイドストッパ17の先端部17aを瓦40の辺縁部40Uに当接させることにより、辺縁部40L,40Rと平行方向(矢線T方向)のガイド部材16の移動を拘束した後、支持ボルト20を回転させ、その先端部20aを0aが瓦40の辺縁部40Rに当接するまで締め付け、係止部材18の位置を定める。そして、支持脚19の頭部19aを回転させて接触部19bを瓦40の表面40aに当接させれば、穿孔治具10のセッティングが完了する。
【0026】
これにより、瓦40に対する工具保持手段11の位置が一義的に定められるので、図2に示すように、穿孔工具30の先端部を工具保持手段11の本体部11a内に挿入して瓦40の表面40aに当接させ、穿孔工具30を作動させれば、瓦40の所定位置に、容易かつ正確に貫通孔H1を開設することができる。
【0027】
前述したように、蝶ネジ24,25を緩めれば、係止部材18はガイド部材16に沿って移動可能であるため、図3に示すように、瓦40の辺縁部40L,40R間の中央付近に係止部材18の位置を設定すれば、瓦40の谷部分に貫通孔H2を開設することもできる。
【0028】
図1に示すように、穿孔治具10においては、係止部材18の長辺方向に沿って複数の工具保持手段11を配置することにより、一旦、瓦40にセッティングした穿孔治具10を動かすことなく、瓦40の辺縁部40L,40Rと平行方向に沿って複数の貫通孔H1を開設することができるようにしているが、これに限定しないので、工具保持手段11の個数や配置形態などは任意に設定することができる。
【0029】
また、工具保持手段11は係止部材18に着脱可能であるため、本体部11aの内径が異なる複数の工具保持手段11を用意しておいて、選択的に装着すれば、施工条件に適した内径の貫通孔を瓦40に開設することができる。さらに、図1に示すように、ガイドストッパはネジ27を用いてガイド部材16に着脱可能に固定されているため、基端部17b側に、ネジ27が貫通可能な長孔17cを開設しておけば、先端部17aによる拘束位置を変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の穿孔治具は、ソーラパネルや太陽光温水パネルなどの屋上設置物を建物の屋根瓦上に取り付ける施工現場などにおいて、穿孔工具を用いて瓦に貫通孔を開設する際の補助器具として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 穿孔治具
11 工具保持手段
11a 本体部
11b フランジ
11c 下端部
11d 軸心
12 位置決め手段
13 位置変更手段
14,15 支持部材
14a,15a 平面部
16 ガイド部材
16a,16b 端部
16c 側面部
17 ガイドストッパ
17a,20a 先端部
17b 基端部
17c,21,22,23 長孔
18 係止部材
19 支持脚
19a 頭部
19b 接触部
20 支持ボルト
24,25 蝶ネジ
26 摺動部材
27,28 ネジ
30 穿孔工具
40 瓦
40a 表面
40D,40L,40R,40U 辺縁部
A,S,T 矢線
B 基準面
H1,H2 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔工具を瓦の表面に対して一定姿勢に保持する工具保持手段と、前記工具保持手段を瓦の表面上の一定位置に保持するため瓦の周縁部の複数箇所に着脱可能に係合する位置決め手段と、前記位置決め手段に対する前記工具保持手段の相対位置を変更する位置変更手段と、を備えたことを特徴とする穿孔治具。
【請求項2】
前記位置決め手段として、周縁部の平面視形状が略四角形をなす瓦の対向する辺縁部に着脱可能に係合する複数の支持部材と、前記支持部材の間で前記瓦の表面上を跨ぐ状態に支持されたガイド部材と、前記辺縁部と平行方向の前記ガイド部材の移動を拘束するガイドストッパと、を設けたことを特徴とする請求項1記載の穿孔治具。
【請求項3】
前記位置変更手段として、前記辺縁部と直交する方向に沿って工具保持手段を位置変更可能に固定するための係止部材を前記ガイド部材に取り付けたことを特徴とする請求項1または2記載の穿孔治具。
【請求項4】
前記工具保持手段が前記係止部材に着脱可能であることを特徴とする請求項3記載の穿孔治具。
【請求項5】
瓦の表面と前記係止部材との間に介在する支持脚を設けた請求項3または4記載の穿孔治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76318(P2012−76318A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222416(P2010−222416)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(309013358)株式会社ミヤムラ (7)
【Fターム(参考)】