説明

穿孔装置

【課題】作業者が円孔内に入ることなく該円孔の壁面に孔を穿設することができる穿孔装置を提供する。
【解決手段】ドリル2aを備えた穿孔具2と、該ドリル2aの先端を円孔91の壁面97に対向させた状態で穿孔具2を支持する支持部3と、該支持部3を支持し且つドリル2aによって前記壁面97に形成される孔の位置及び角度を変更可能とすべく支持部3の姿勢を変更する姿勢変更機構4とを備え、該姿勢変更機構4は、円孔91の外側から操作可能とすべく円孔91の開口端よりも外側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔装置の内、特にマンホール等の点検口の壁面に孔を穿設するための穿孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、治安維持やセキュリティ強化の目的で、水道・電気・ガス・通信等のライフラインの管路構造に設けられたマンホール等の点検口の円孔の開口端に、特定の施錠構造を有する内蓋を備え付けることがされている。
既存の点検口の円孔に上述の如き内蓋を備え付ける場合、内蓋を受ける受け部材がボルト等の締結具を介して円孔の壁面に取り付けられることとなる。このため、円孔の壁面には、ボルトを嵌合させるためのボルト孔等の孔が穿設されることとなるが、該穿孔作業においては、従来、作業者が点検孔内に入り、手に持った穿孔具を操作して所定位置に孔を穿設するようにしていた。しかし、マンホール等の点検孔は、その直径が600〜900mm程度のものが一般的であり、該点検孔内に作業員が入って所定位置に孔を穿設することは極めて作業性が悪い。
【0003】
また、特に通信用の管路等には、極めて損傷し易い光ファイバー等の情報ケーブルが配設されており、これらの点検口の円孔の壁面に孔を穿設する場合には、情報ケーブルに損傷を与えることなく作業を行うべく、作業者が円孔内に入ることなく作業を行うことが望まれている。
壁面に孔を穿設するための装置として、例えば特許文献1には、円孔の壁面に両端を当接させてドリルを支持するドリル支持部材と、該円孔の底部に当接してドリル支持部材の高さ位置を調整する高さ位置枠体調整手段と、ドリルを壁面に近接離間させるべく該ドリルを操作する操作レバー手段とを備えたドリル装置が開示されている。
【0004】
該特許文献1によれば、ドリルの姿勢を安定させた状態で穿孔作業を行うことができ、該穿孔作業の効率化が図られる。
【特許文献1】特開2002−160111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のドリル装置は、円孔内に設置され、しかも、該円孔の壁面及び底部と連結支持されることによってドリルを支持しているため、該ドリル装置を設置又は操作する場合には、作業者が円孔内に入らなければならなず、これらの作業中に情報ケーブルに損傷を与えてしまう虞があった。
そこで本発明は、作業者が円孔内に入ることなく該円孔の壁面に孔を穿設することができる穿孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、ドリルを備えた穿孔具と、該ドリルの先端を円孔の壁面に対向させた状態で穿孔具を支持する支持部と、該支持部を支持し且つドリルによって前記壁面に形成される孔の位置及び角度を変更可能とすべく支持部の姿勢を変更する姿勢変更機構とを備えている穿孔装置であって、前記姿勢変更機構は、前記円孔の外側から操作可能とすべく前記円孔の開口端よりも外側に設けられている点である。
これによれば、作業者は、円孔内に入ることなく姿勢変更機構を円孔に設置することができ、該姿勢変更機構を円孔に設置することによって支持部に支持された穿孔具を円孔内に設置することができる。
【0007】
しかも、円孔の外側にて該姿勢変更機構を操作することが可能である。これによって、作業者は、円孔内に入ることなく穿孔具の円孔内での位置やドリルの傾きを調整することができるのである。
第2に、前記姿勢変更機構は、前記支持部に連結された梁材と、該梁材を前記円孔の周方向に回転自在に支持する回転支持手段と、該回転支持手段を前記円孔の開口端の縁部に支持するベースプレートとを備えている点である。
これによれば、姿勢変更機構は、円孔の開口端の縁部にベースプレートを装着し、該ベースプレートに回転支持手段を介して梁材を設置する作業によって円孔の開口端の外側に容易に組み立てられる。
【0008】
また、穿孔具を支持する支持部は、梁材、回転支持手段及びベースプレートを介して円孔の開口端の縁部に支持された状態で円孔内に配備されており、穿孔具を円孔の底部や壁面に支持させる必要はない。このため、作業者が孔を穿設する位置を変更するために円孔内に入って穿孔具と円孔の壁面との連結支持状態を解除する必要はなく、作業者が円孔の外側にて梁材を回転させることにより、穿孔具は円孔の周方向に回転移動し、これによって、開口端からの距離(高さ位置)を同一とし、円孔の周方向の位置のみを変更させた複数の孔を円孔の壁面に連続して穿設することができる。
【0009】
第3に、前記回転支持手段は、前記梁材に枢支された一対のホイールと、該一対のホイールを円孔の周方向に遊転させる無端円状のレールを備えた枠体と、該枠体を前記円孔の開口端から所定の間隔を空けて離間した状態で支持する支持体とを備えている点である。
これによれば、梁材を回転させることによって一対のホイールをレール上が回転移動するため、軽微な力で梁材を回転させるできると共に、該梁材をスムーズに回転させることができる。
また、マンホール等の円孔においては、開口端を覆って円孔を塞ぐ蓋体がヒンジ機構等の開閉機構を介して該開口端に開閉自在に支持されており、該蓋体は、少なくとも円孔の開口端の縁部の一領域を覆った状態で開き状態に設定される。このため、開口端の縁部に枠体を配備すると、レールの軌道が蓋体の干渉を受けてしまう。
【0010】
そこで、本発明においては、支持体を介して枠体を円孔の開口端から所定の間隔を空けて離間した状態に支持することとし、これによって枠体を蓋体よりも円孔の開口端から離間した位置に配備することができる。このため、蓋体の干渉を受けることなく枠体を円孔に配備することができ、レールを蓋体の干渉なく円孔に配備することができるのである。
第4に、前記支持体は、互いに等間隔に離間した状態でベースプレートに立設される3以上の軸体からなり、前記枠体はこれら軸体を挿通する挿通孔を備え、該挿通孔と軸体との間には、円孔の開口端と枠体の間隔及び円孔の軸心に対する枠体の角度を調整可能な枠体調整手段が設けられている点である。
【0011】
これによれば、枠体は、互いに略等間隔に離間した3以上の軸体によって円孔の開口端から離間した位置に支持されるため、安定した姿勢に保たれる。
また、各軸体と挿通孔の間の枠体調整手段をそれぞれ操作することにより、円孔の開口端と枠体の間隔及び円孔の軸心に対する枠体の角度を調整することができ、これによって、円孔の開口端に対するレールの高さ及び角度を調整することができるのである。
第5に、前記枠体調整手段は、前記軸体に形成された雄螺子部と前記挿通孔に形成された雌螺子部とから構成されている点である。
【0012】
これによれば、挿通孔に対して軸体を回転させる容易な操作により、各挿通孔の開口端の縁部からの距離が無段に調整することができ、これによってより正確に円孔の開口端と枠体の間隔及び円孔の軸心に対する枠体の角度を調整することができる。
第6に、前記ベースプレートは、前記開口端の縁部を覆うC字状の内縁を備えた本体部と、該内縁に沿って伸びて前記円孔の開口端の縁部に嵌る円弧状の凸条部とを備え、本体部には、該円弧状の凸条部の円弧軸心から等距離に配備されて前記軸体を支持する軸受部が形成されている点である。
【0013】
これによれば、上述の如き蓋体を備えた円孔においても、本体部の内縁のC字状の両端を開き状態の蓋体とヒンジ機構の何れか一方若しくは両方に対向させることにより、該蓋体及びヒンジ機構の干渉を受けることなくベースプレートを開口端の縁部に装着することができる。
また、ベースプレートは、本体部のC字状の内縁に配備された凸条部を円孔の開口端の縁部に沿わせた状態で円孔に装着され、これによって円孔の軸心と凸条部の円弧軸心とが一致又は略一致する。
【0014】
これにより、軸受部は、円孔の軸心を中心とする円周上に位置することとなり、これに伴って、軸受部に係合する軸体に支持された枠体のレールの円軌道の中心が円孔の軸心と一致又は略一致するのである。
この結果、梁材は、その回転中心と円孔の軸心とを略一致させて回転するため、支持部も円孔の軸心を回転軸として回転することとなり、該支持部が回転動作中に円孔の壁面に接触することはない。
第7に、前記支持部は、前記梁材に連結される基板と、該基板に摺動自在に係合し且つ前記穿孔具を取り付ける取付台と、該取付台を摺動させる操作レバーとを備え、前記操作レバーは、一端が取付台に枢支されると共に他端が前記姿勢変更機構よりも前記円孔の開口端から突出し、中途部が前記梁材に枢支されている点である。
【0015】
これによれば、円孔の外側から操作レバーを操作して穿孔具によって円孔の壁面に孔を穿設することができる。
また、操作レバーの中途部が姿勢変更機構の梁材に枢支されているため、操作レバーの他端を相対移動させる動力が操作レバーの一端にスムーズに伝達されることとなり、これによって作業者は、軽微な力で操作具を円孔の壁面に近接離間移動させることができる。
第8に、前記穿孔具は、前記円孔の径方向にドリルの軸心を一致させた状態で取付台に取り付けられ、該取付台は前記径方向に摺動する点である。
【0016】
これによれば、ドリルによって形成される孔を円孔の径方向に向けて穿設することができる。
第9に、前記基板には、ドリルの先端が向く方向の反対方向に位置する壁面に当接する当接部材が配備され、該当接部材は、該壁面に当接した位置と該壁面から離間した位置に切換可能とされている点である。
高速回転したドリルの先端を円孔の壁面に圧入する際、該壁面から反力を受けることとなるが、これによれば、該反力は当接部材を介して円孔の壁面に受け止められ、該反力に拘わらず支持部を安定した姿勢に保つことができる。
【0017】
また、支持部を回転させる場合には、当接部材を壁面にと当接した位置から該壁面から離間した位置に切り換える。これにより、当接部材を壁面に引っ掛けることなく支持部を回転させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業者が円孔内に入ることなく該円孔の壁面に孔を穿設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
先ず、本発明に係る穿孔装置1によって孔が穿設されることとなる点検口9について説明する。
点検口9は、水道・電気・ガス・通信等の地下に配備されるの管路構造を点検すべく設けられたマンホール等であって、図2に示す如く、直径600mm〜900mmの略正円からなる円筒状に形成されている。
図1に示す如く、点検口9は、底部が管路構造に連結された円孔91と、該円孔91の開口端を塞ぐ円板状の蓋体92とを備えている。
【0020】
該円孔91は、コンクリートからなる円筒93と、該円筒93の上部に配備されて蓋体92と嵌合する円筒状の嵌合部材94とを備え、該嵌合部材94と円筒93との間には、嵌合部材94の地面に対する高さを調整する高さ調整モルタル95が介在している。
蓋体92は、図2に示す如く、ヒンジ機構96を介して嵌合部材94に開閉自在に支持されており、蓋体92を嵌合部材94に嵌合させることによって点検口9は閉じ状態に設定されると共に、蓋体92を地面に横たえることにより、点検口9は開き状態に設定される。
【0021】
本実施の形態においては、蓋体92を開き状態に設定した場合、ヒンジ機構96が円孔91の開口端よりも上方に突出すると共に、開いた蓋体92によって円孔91の開口端の縁部の一部の領域が覆われることとなる。他の構成として、ヒンジ機構96が円孔91の開口端から突出し、蓋体92を円孔91の開口端から大きく離間した位置に横耐えることとした構成とすることも可能であり、いずれにしろ、円孔91は、開口端の縁部の一領域及びその近傍が蓋体92とヒンジ機構96の一方若しくは両方の干渉を受けることとなる。
【0022】
また、該点検口9は、蓋体92の下方にて円孔91を塞いで施錠する内蓋(図示省略)を備えるものであって、本発明に係る穿孔装置1は、該内蓋を受ける受け部材(図示省略)を円孔91の円筒93の壁面97にボルト締結すべく、該壁面97にボルト孔を開設する装置である。
該穿孔装置1は、図1に示す如く、ドリル2aを備えた穿孔具2と、該ドリル2aの先端を円孔91の壁面97に対向させた状態で穿孔具2を支持する支持部3と、該支持部3を支持し且つドリル2aによって壁面97に形成される孔の位置及び角度を変更可能とすべく支持部3の姿勢を変更する姿勢変更機構4とを備えている。
【0023】
穿孔具2は、ドリル2aと、該ドリル2aを高速回転させる本体とから構成され、本実施の形態においては、電動ハンドドリルが採用されていが、例えば、コンクリートカッター等のカッター刃をドリルとしたチェーンソータイプの小型切断工具を採用することも可能である。
支持部3は、姿勢変更機構4に連結された基板11と、該基板11に摺動自在に係合し且つ穿孔具2を取り付ける取付台12と、該取付台12を摺動させる操作レバー13とを備えている。
【0024】
基板11は、図1及び図5に示す如く、円孔91よりも小さな直径を有する円板状に形成されており、径方向に伸びる長孔11aと、取付台12の側縁に当接して該取付台12の摺動を案内する一対のガイド部11bとを備えている。
取付台12は、図5に示す如く、平面視長方形状の板材に形成されており、その表面には、前記穿孔具2を着脱自在に支持する取付部材14が複数箇所(本実施の形態においては3箇所)に配備されている。該取付部材14を介して穿孔具2を取付台12に取り付けることにより、ドリル2aの先端は、取付台12の一端よりも外方に突出することととなる。また、取付台12には、該一端と反対側の他端に、操作レバー13を枢支する枢支部15が配備されている。
【0025】
また、図1に示す如く、取付台12の裏面にはボルトのヘッド部等からなるピン16が突出状に設けられており、該ピン16を基板11の長孔11aに収容した状態で取付台12を基板11上に装着されている。また、基板11のガイド部11bが取付台12の側縁にそれぞれ当接しており、取付台12は、長孔11a及びガイド部11bの案内によって基板11の径方向に摺動する。そして、取付台12の摺動に伴って、2点鎖線で示す如く、ドリル2aの先端が基板11の縁部から突出する。
また、基板11には、円孔91の壁面97に当接する当接部17が配備されている。該当接部17は、ドリル2aの先端が向く方向の反対方向に位置して壁面97に当接する当接部材18と、該当接部材18を壁面97に当接させた位置と該壁面97から離間した位置に切換可能に支持する切換部19とから構成されている。
【0026】
本実施の形態においては、当接部材18としてボルトを採用すると共に該ボルトを螺嵌するナットを切換部19として採用しており、該ボルトをその軸心方向に回転させることによってボルトのヘッド部18aを壁面97に当接させ、或いは該壁面97からヘッド部18aを離間させることができる。
また、操作レバー13は、一方の端部が取付台12の枢支部15に枢支される共に、他方の端部が姿勢変更機構4の上方に突出した状態で配備されている。
姿勢変更機構4は、円孔91の外側から操作可能とすべく該円孔91の開口端よりも外側に設けられており、前記支持部3に連結された梁材31と、該梁材31を円孔91の周方向に回転自在に支持する回転支持手段32と、該回転支持手段32を円孔91の開口端の縁部に支持するベースプレート33とを備えている。
【0027】
梁材31は、図1に示す如く、円孔91に配備された状態で該円孔91の径方向に長手方向を有する棒材によって形成されるものであって、本実施の形態においては、円孔91の直径と略同一又は僅かに短い長さを有する筒体によって形成されている。
また、本実施の形態においては、図4に示す如く、2本の梁材31が平面視で互いに直交して配備されているが、4本や8本、又は1本の梁材31によって構成することも可能であり、円孔91に配備された状態で該円孔91の軸心を横切るものであれば、その本数は限定されない。
【0028】
また、互いに直交する2本の梁材31は、環状部材34によって互いの中途部が連結されており、該環状部材34は、梁材31との連結部から45°ずらした中途部に、長軸のボルトからなる軸部材34aが締結され、図1に示す如く、該環状部材34の下方に位置する軸部材34aの端部に支持部3の基板11が締結されている。これによって、支持部3は、軸部材34a及び環状部材34を介して梁材31に懸下されることとなる。
また、図5に示す如く、2本の梁材31の内、1本の梁材31は穿孔具2のドリル2aの軸心方向に対して平行となるように配備されており、前記操作レバー13の他端は、梁材31に長孔状に形成されたガイド孔31aを通じて梁材31の上方に突出している。
【0029】
また、操作レバー13の中途部には、その長手方向に伸びる長孔状の係合孔13aが形成されており、該係合孔13aには、梁材31に配備された係合ピン31bが係合している。これによって、操作レバー13は梁材31に揺動自在に枢支されることとなる。
回転支持手段32は、前記梁材31に枢支された一対のホイール35と、該一対のホイール35を円孔91の周方向に遊転させる無端円状のレール36を備えた枠体37と、該枠体37を円孔91の開口端から所定の間隔を空けて離間した状態で支持する支持体38とを備えている。
【0030】
一対のホイール35は、梁材31を円孔91に配備した状態で該円孔91の軸心から等しい位置に配備されており、本実施の形態においては、梁材31の両端に回転自在に枢支されている。
そして、枠体37は、円孔91の直径と略同径の内径を有するリング状に形成されており、レール36は、図1に示す如く、ホイール35の幅と同一若しくは僅かに大きい幅を有して枠体37の内縁側に切欠き形成されている。該レール36上に梁材31に一対のホイール35配備することにより、該梁材31は回転移動自在に枠体37に配備されることとなる。
【0031】
また、枠体37の外縁側には、支持体38を挿通する複数(本実施の形態においては8つ)の挿通孔37aが等間隔に形成されている。支持体38は、等間隔に離間した複数本(本実施の形態においては8本)の軸体38aによって形成されており、これら各軸体38aがそれぞれ枠体37の挿通孔37aに挿通されている。
また、各軸体38aと挿通孔37aの間には、開口端に対する枠体37の高さ及び円孔の軸心に対する枠体37の角度を調整する枠体調整手段39が設けられている。
本実施の形態においては、図1に示す如く、軸体38aがボルトによって形成されると共に、挿通孔37aにナットを備えており、該ボルトの雄螺子部40とナットの雌螺子部41によって枠体調整手段39が形成されている。また、軸体38aの下端には、雄螺子の切られていない脚部38bが形成されている。
【0032】
ベースプレート33は、図2に示す如く、円孔91の開口端の縁部を一部の領域を残して覆うC字状に形成された本体部42と、該本体部42のC字状の内縁に沿って伸びて円孔91の開口端の縁部に嵌る円弧状の凸条部43とを備え、本体部42の上面には、該円弧状の凸条部43の円弧軸心から等距離に配備されて前記複数の軸体38aを受ける軸受部44を備えている。
本実施の形態において、軸受部44は、円弧状の凸条部43の円弧軸心と同一軸心を有し且つ該円弧状の凸条部43の円弧の半径よりも大きい半径を有する円周上に溝状に形成されている。
【0033】
また、本体部42の軸受部44の外側には、該本体部42を地面に締結固定するための複数(本実施の形態にいては8つ)の孔部が開設されている。
本発明の穿孔装置1は、以上の構成からなるものであって、次に、該穿孔装置1を点検口9に配備する過程について説明する。
先ず、点検口9の蓋体92を開き状態に設定し、円孔91を開放する。
次に、図2に示す如く、ベースプレート33を円孔91の開口端の縁部に装着する。このとき、ベースプレート33の本体部42がC字状に形成されているため、そのC字状の両端を開き状態の蓋体92及びヒンジ機構96と対向させることにより、蓋体92及びヒンジ機構96の干渉を受けることなくベースプレート33を前記縁部に装着することができる。
【0034】
また、円孔91は、必ずしも正円状の開口端を有しておらず、該開口端が僅かに楕円状に形成されていることも少なくない。このため、梁材31の回転中心とすべき円孔91の軸心を検出し難い。
しかし、円孔91の開口端の縁部に凸条部43を沿わせた状態でベースプレート33を開口端に配備することにより、円孔91の軸心と円弧状の凸条部43の円弧軸心を極めて一致させた状態でベースプレート33が前記縁部に配備されるのである。
これによって、凸条部43の円弧軸心(C字状の内縁の円弧軸心)を円孔91の軸心とみなすことができ、該ベースプレート33を円孔91の軸心を定めるゲージとして機能させることができるのである。そして、該ベースプレート33上に回転支持手段32や梁材31を組み立てることにより、レール36の円軌道の軸心や梁材31の回転中心をベースプレート33の凸条部43の円弧軸心と一致させ、ひいては円孔91の軸心に一致させることが可能となる。
【0035】
そして、かかる状態で開口端の縁部に装着した本体部42の孔部にボルトを挿通させて締結し、これによってベースプレート33を地面に固定する。
次に、枠体37の各挿通孔37aに軸体38aを螺合させる。そして、図3に示す如く、該軸体38aの脚部38bをベースプレート33の軸受部44に係合させる。これによって、枠体37が軸体38aを介してベースプレート33に組み付けられることとなる。このとき、ベースプレート33の軸受部44の円弧軸心が円孔91の軸心と一致しているため、該軸受部44に各軸体38aを係合させることにより、枠体37に形成されたレール36の円軌道の中心が円孔91の軸心に一致することとなる。
【0036】
また、枠体37は、軸体38aを介して開口端の縁部から浮かせた状態でベースプレート33に支持されている。これによって、開き状態の蓋体92よりも上方に枠体37が配備されることとなり、蓋体92干渉なく枠体37がベースプレート33上に配備される。即ち、蓋体92の干渉なくレール36が円孔91の開口端に配備されるのである。
このとき、各軸体38aをその軸心方向の回転させることにより、枠体37の挿通孔37a及びその近傍を軸体に沿って上下動することとなり、これによって円孔91の軸心に対する枠体36の角度を調整し、レール36を円孔91の軸心に対して垂直な平面上に位置させる。
【0037】
なお、図3にて蓋体92とオーバラップしている軸体38aは、脚部38bを蓋体92に当接若しくは離間させた状態で枠体37に配備されている。
次に、穿孔具2を取り付けた支持部3を軸部材34aを介して環状部材34に連結した後、梁材31の一対のホイール35をレール36上に配備する。このとき、レール36の軸心が円孔91の軸心に一致しているので、図4に示す如く、一対のホイール35を両端に枢支した梁材31は円孔91の軸心を回転中心として回転可能に枠体37に装着されることとなる。
【0038】
これによって、穿孔装置1の組立が完了し、図1、図5及び図4に示す如く、穿孔具2は、ドリル2aの先端を円孔91の壁面97に対向させた状態で円孔91内に配備されると共に、支持部3及び姿勢変更機構4を介して円孔91の開口端の縁部に支持されることとなるのである。
次に、本発明に係る穿孔装置1を用いて、円孔91の開口端からの高さが同一である複数の孔を該円孔91の壁面97に穿設する方法について説明する。
まず、ドリル2aの高さを穿孔位置と同一の高さに設定する。この高さ設定方法は、前記枠体調整手段39を操作して枠体37の開口端からの高さを設定する方法と、軸部材34aを介して連結される環状部材34と基板11の間の距離をあらかじめ調整することによって設定する方法の一方若しくは両方を採用可能である。
【0039】
次に、基板11に配備された当接部17の当接部材18を回転させ、該当接部材18のヘッド部を円孔91の壁面97に当接させる。
そして、穿孔具2のドリル2aを高速回転状態に設定すると共に、操作レバー13の前記他方の端部を円孔91の軸心にから離間する方向に揺動させ、ドリル2aを円孔91の壁面97に押し付ける。これによって該壁面97に孔が穿設されるのである。
ここで、操作レバー13の係合孔13aに係合ピン31bが係合しているため、操作レバー13は梁材31に対して相対回転及び相対移動可能に支持されている。
【0040】
したがって、操作レバー13の他方の端部を上述の如く揺動させた場合にも、一方の端部を同一平面上にて平行移動させることができる。これにより、操作レバー13の他方の端部の揺動に伴って該操作レバー13の一方の端部に枢支された取付台12を基板11上にて摺動させることができる。また、操作レバー13は係合孔13aと係合ピン13bによる係合部を支点として揺動するため、軽微な力で操作レバー13を操作することができる。
また、取付台12は、長孔11aによるピン16の案内やガイド部11bによる両側縁の案内によって円孔91の径方向に移動するのである。
【0041】
また、穿孔中のドリル2aは、壁面97に押し付けられることによって該壁面97から反力を受けることとなるが、該反力は、当接部材18を介して円孔91の壁面97に受け止められる。したがって、該反力が作用する場合にも、取付台12及び基板11の姿勢がぶれることはない。
また、ドリル2aは円孔91の径方向に一致するように配備されているため、該ドリル2aによって穿設される孔は円孔91の径方向に向けて形成されることとなる。
そして、所定の深さまで孔が穿設されたことを確認した後、再び操作レバー13を操作することにより、ドリル2aが円孔91の壁面97から離間する位置まで取付台12を移動させる。その後、当接部材18を操作し、そのヘッド部を円孔91の壁面97から離間させる。これにより、支持部3は壁面97との接触が解除された状態となる。
【0042】
その後、梁材31を円孔91の周方向に回転させる。このとき、レール36の軌道の中心が円孔91の軸心と一致しているため、梁材31の回転中心も円孔91の軸心と一致する。このため、該梁材31に連結された支持部3は円孔91の軸心を回転中心として回転することとなり、該回転に伴って支持部3やドリル2a等が円孔91の壁面97に接触することはなく、梁材31と共にスムーズに回転することとなる。
また、レール36は、円孔91の軸心に垂直な平面上に位置しているため、穿孔具2のドリル2aも円孔91の軸心に垂直な平面上を回転することとなり、これによって、ドリル2aをその高さ位置を同一とした次の穿孔位置まで平行移動させることができるのである。そして、該穿孔位置にて先程と同じ作業工程を経ることにより、該穿孔位置にも孔が穿設されることとなり、かかる操作を繰り返すことによって、円孔91の開口端からの高さ位置を同一とした複数の孔が連続して穿設されるのである。
【0043】
本発明に係る穿孔装置1によれば、装置全体は円孔91の外側から組み立てられ、装置を円孔91に設置するために作業者が円孔91内に入る必要がない。また、穿孔具2の位置を変更する姿勢変更機構4は円孔91の開口端の外側に配備されるため、穿孔位置を変更する操作は円孔91の外側にて行われることとなり、かかる作業においても作業者が円孔91内に入ることはない。したがって、円孔91に孔を穿設するために作業者が円孔91内に入ることはなく、これによって、円孔91の底部に配設される情報ケーブル等に損傷を与える虞は解消される。
【0044】
また、穿孔具2を支持する支持部3は梁材31に懸下された状態で円孔91内に配備されており、該梁材31は、円孔91の開口端の上方にて該円孔91の軸心に垂直な平面上を回転可能に支持されているため、該支持部3に支持された穿孔具2のドリル2aを円孔91の軸心に垂直な平面内を円孔91の周方向に平行移動させることができ、これによって、円孔91の開口端からの高さ位置を同一とした複数の孔を円孔91の壁面97に連続して穿設することができるのである。
また、梁材31は円孔91の軸心を回転中心として回転可能に支持されているため、支持部3及び穿孔具2も円孔91の軸心を回転中心として回転することとなり、梁材31を回転させることによって支持部3やドリル2aが円孔91の壁面97に接触することはなく、これら支持部3及び穿孔具2はスムーズに回転移動する。
【0045】
また、該穿孔具2のドリル2aが円孔91の径方向に向けて配備されているため、該ドリル2aによって穿設される複数の孔は、すべて円孔91の径方向に向けて穿設されることとなるのである。このことを円孔91の壁面97からみれば、該穿孔装置1によって円孔91の壁面97に孔を穿設することにより、すべての孔が円孔91の壁面97に対して垂直若しくは略垂直に穿設されることとなるのである。
図6及び図7は本発明に係る穿孔装置1の他の実施の形態である。
該実施の形態においては、枠体調整手段39、レール36及び軸受部44が上記実施の形態と異なっている。
【0046】
図6に示す如く、枠体調整手段39は、軸体38aの軸心方向に等間隔に形成された複数の貫通孔51と、該貫通孔51に抜き差し自在に配備されるピン部材52とから構成されており、軸体38aを挿通孔37aに挿通した後、所定の高さ位置に位置している貫通孔51にピン部材52を挿通し、該ピン部材52に枠体37を支持させることにより、該枠体37を所定の円孔91の開口端から高さ位置に配備することができる。
また、レール36は、枠体37の上面に断面コ字状に凹設されており、これによって、レール36からホイール35が外れることはなく、しかも、より確実にホイール35の回転移動が案内されるのである。
【0047】
また、図7に示す如く、軸受部44は、凸条部43の円弧軸心を中心とする円の円周上に配備された複数の軸孔53によって形成されている。該軸孔53は、枠体37の挿通孔37aに挿通されたすべての軸体38aを同時に嵌入させることができるように開設されている。
該軸受部44においては、軸孔53にすべての軸体38aの脚部38bを嵌入させることにより、複数の軸体38aを通過する円周の中心はベースプレート33の凸条部43の円弧軸心と一致することとなり、これによって該複数の軸体38aに支持される枠体37のレール36の軸心と円孔91の軸心とが一致することとなる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。ホイール35と該ホイール35を受けるレール36の形状は上記構成に限定されず、例えば、ホイール35をピニオンとし、レール36をラックとした構成を採用した場合にも、本実施の形態と同様の効果を示す。また、支持体38を構成する軸体38a及び支持部3の基板11を環状部材34に連結する軸部材34aの数は適宜変更可能であるが、軸体38aを3以上、軸部材34aを2以上の構成とすることが望ましい。
また、梁材31に軸部材34aの一端が締結され、該軸部材34aの他端に支持部3の基板11を締結する構成とすることももちろん可能である。
【0049】
また、上述の如き穿孔方法に代えて、円孔91の軸心に垂直な面からずらしてレール36を配備することにより、ドリル2aが円孔91の軸心に垂直な平面に対して角度を有して壁面97と対向させ、これによって、円孔91の軸心に垂直な平面に対して角度を有する孔を壁面97に穿設する穿孔方法を採用することも可能である。
また、各部材の形状は、本発明を実施可能な範囲で適宜変更可能であり、例えばベースプレート33は、C字状の内縁を備えた本体部42、凸条部43及び軸受部44を備えた構成であれば全体の形状がC字状である必要はなく、例えば、C字状の内縁を備えた平面視四角形状の本体部を備えた構成であっても構わない。
【0050】
同様に、枠体37は無端円状のレール36を備えていれば、楕円状や四角形状に形成することも可能である。また、レール36は、円孔91の軸心と同一軸心となる円周上に配備されるものであれば、その直径は如何なる大きさでも良く、円孔91の直径よりも大きくても小さくても構わない。また、該レール36の直径に応じて、梁材31の大きさは適宜変更されることとなる。
また、梁材31においても、レール36上を遊転する一対のホイール35を枢支するものであれば、一方若しくは両方の端部を枠体37の外方に突出させた構成とすることもでき、これらの端部を梁材31をより軽微な力で回転させるための把持部とすることも可能である。
【0051】
また、穿孔位置にドリル2aの先端を対向させた状態に保つべく、梁材31を一時的に回転不能とする回転係止機構を枠体37と梁材31の間やホイール35とレール36の間に配備することも可能である。
また、所定の間隔を有して孔を穿設すべく、梁材31が所定の回転角度(例えば15°、30°、45°)だけ回転したことを通知する通知手段を枠体37等に配備することも可能である。同様に、一の穿孔位置から次の穿孔位置までの回転角度を検出可能な角度検出機構を梁材31等に配備することも可能である。
【0052】
さらには、穿孔時の削りかすを収容するかす受けボックスを基板11に支持させた状態でドリル2aの下方に配備することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る穿孔装置の横断面図である。
【図2】円孔にベースプレートを配備した状態を示す平面図である。
【図3】枠体を配備した状態を示す平面図である。
【図4】梁材を配備した状態を示す平面図である。
【図5】円孔内に支持部及び穿孔具が配備された状態を示す断面図である。
【図6】他の実施の形態の軸体及びその近傍を示す断面図である。
【図7】他の実施の形態のベースプレートの一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 穿孔装置
2 穿孔具
2a ドリル
3 支持部
4 姿勢変更機構
9 点検口
11 基板
12 取付台
13 操作レバー
18 当接部材
31 梁材
32 回転支持手段
33 ベースプレート
35 ホイール
36 レール
37 枠体
38 支持体
38a 軸体
39 枠体調整手段
40 雄螺子部
41 雌螺子部
43 凸条部
44 軸受部
91 円孔
92 蓋体
97 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルを備えた穿孔具と、該ドリルの先端を円孔の壁面に対向させた状態で穿孔具を支持する支持部と、該支持部を支持し且つドリルによって前記壁面に形成される孔の位置及び角度を変更可能とすべく支持部の姿勢を変更する姿勢変更機構とを備えている穿孔装置であって、
前記姿勢変更機構は、前記円孔の外側から操作可能とすべく前記円孔の開口端よりも外側に設けられていることを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
前記姿勢変更機構は、前記支持部に連結された梁材と、該梁材を前記円孔の周方向に回転自在に支持する回転支持手段と、該回転支持手段を前記円孔の開口端の縁部に支持するベースプレートとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
前記回転支持手段は、前記梁材に枢支された一対のホイールと、該一対のホイールを円孔の周方向に遊転させる無端円状のレールを備えた枠体と、該枠体を前記円孔の開口端から所定の間隔を空けて離間した状態で支持する支持体とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の穿孔装置。
【請求項4】
前記支持体は、互いに等間隔に離間した状態でベースプレートに立設される3以上の軸体からなり、前記枠体はこれら軸体を挿通する挿通孔を備え、該挿通孔と軸体との間には、円孔の開口端と枠体の間隔及び円孔の軸心に対する枠体の角度を調整可能な枠体調整手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の穿孔装置。
【請求項5】
前記枠体調整手段は、前記軸体に形成された雄螺子部と前記挿通孔に形成された雌螺子部とから構成されていることを特徴とする請求項4に記載の穿孔装置。
【請求項6】
前記ベースプレートは、前記開口端の縁部を覆うC字状の内縁を備えた本体部と、該内縁に沿って伸びて前記円孔の開口端の縁部に嵌る円弧状の凸条部とを備え、本体部には、該円弧状の凸条部の円弧軸心から等距離に配備されて前記軸体を支持する軸受部が形成されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の穿孔装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記梁材に連結される基板と、該基板に摺動自在に係合し且つ前記穿孔具を取り付ける取付台と、該取付台を摺動させる操作レバーとを備え、前記操作レバーは、一端が取付台に枢支されると共に他端が前記姿勢変更機構よりも前記円孔の開口端から突出し、中途部が前記梁材に枢支されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6の何れかに記載の穿孔装置。
【請求項8】
前記穿孔具は、前記円孔の径方向にドリルの軸心を一致させた状態で取付台に取り付けられ、該取付台は前記径方向に摺動することを特徴とする請求項7に記載の穿孔装置。
【請求項9】
前記基板には、ドリルの先端が向く方向の反対方向に位置する壁面に当接する当接部材が配備され、該当接部材は、該壁面に当接した位置と該壁面から離間した位置に切換可能とされていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−326722(P2006−326722A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151210(P2005−151210)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(591275687)ナミテイ株式会社 (6)
【出願人】(000163394)株式会社コミューチュア (12)
【Fターム(参考)】