説明

突入電流保護回路

【課題】起動時には突入電流を充分に制限し、起動時以降では電源供給ラインから無駄な要素をできるだけ排除できる突入電流保護回路を提供する。
【解決手段】本発明の突入電流制限回路100は、電流制限抵抗RSを介して電源を負荷回路に供給する主電源VVと、電源に対して負荷回路70に並列に接続された大容量コンデンサC60とを有する。電流制限抵抗に並列に接続されたスイッチング回路SW1と、電流制限抵抗の両端の電圧を検出し、その電圧がしきい値以下になったとき、切替制御回路PH1を駆動してスイッチング回路をオン状態に切り替える充電状態監視回路20とを有する。したがって、起動時の突入電流のピーク値を抑えるために相当に大きな電流制限抵抗を使用しても、起動時の後では、電流制限抵抗の制限を受けることなく、負荷回路に電源を効率的に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突入電流保護回路に関し、とくに、電流制限抵抗を介して電源を負荷回路に供給する主電源と、電源供給に対して負荷回路に並列に接続された大容量コンデンサとを有する突入電流保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3はこの種の突入電流保護回路の従来例を示す回路図である。この回路においては、抵抗R1とダイオードD1とが比較用の基準電圧を生成し、誤差増幅器IC1が抵抗R2と電流制限抵抗RSとの接続点の電圧を基準電圧と比較し、その比較結果に基づいてトランジスタQ1を制御して、電流制限抵抗RSの両端の電圧を一定にするように制御している(特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−146143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したような従来の突入電流保護回路は、一定電圧の電源が負荷回路に供給されるように、簡潔な回路で巧みに制御している。しかし、起動時の突入電流はできるだけ小さくするが、起動時以外では電流制限抵抗は使用したくないという要望に応えるには、上記の回路は電流制限抵抗RSを取り除くことができないので不都合であった。
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解決するために成されたものであって、起動時には突入電流を充分に制限し、起動時以降では電源供給ラインから無駄な要素をできるだけ排除でき、主電源からできるだけ直接的に負荷回路側に電源を供給することができる突入電流保護回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決するために、本発明は、電流制限抵抗を介して電源を負荷回路に供給する主電源と、電源供給に対する負荷回路に並列に接続された大容量コンデンサとを有する突入電流保護回路において、電流制限抵抗に並列に接続されたスイッチング回路と、電源供給開始後における電流制限抵抗の両端の電圧を検出し、その電圧がしきい値以下になったときスイッチング回路をオン状態に切り替える充電状態監視回路を備えた構成としている。
【0006】
このような構成によれば、起動時には電流制限抵抗が突入電流のピーク値を制限して負荷回路側に電源を供給する。そして、大容量コンデンサの電荷がある程度増加した時点で、充電状態監視回路がスイッチング回路をオン状態にさせ電流制限抵抗を短絡するので、それ以降においては、電源は電流制限抵抗の電流制限を受けることなく、負荷回路に効率的に電源を供給することができる。
【0007】
さらに、本発明においては、充電状態監視回路がスイッチング回路をオン状態に切り替えるまでは、負荷回路およびその周辺回路をインアクティブに保つ制御切替回路を有する。電流制限抵抗の両端の電圧がしきい値以下になって、負荷回路に電力供給を確実にできる以前に負荷回路およびその周辺の回路によって電流が消費されると、異常が発生する可能性があるので、制御切替回路は、負荷回路に電力供給を確実にできる以前において負荷回路およびその周辺の回路が電流を消費しないように、それらをインアクティブにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の突入電流保護回路は、以上において説明したように構成されているので、起動時には電流制限抵抗によって突入電流のピーク値を制限して負荷回路に電源を供給しようとしている。そして、大容量コンデンサの電荷がある程度増加すると、充電状態監視回路が電流制限抵抗の両端にかかる電圧からそのことを検出し、スイッチング回路をオン状態にして電流制限抵抗を短絡させる。このことにより、電流制限抵抗の短絡以降においては、電源は電流制限抵抗の電流制限を受けることなく、負荷回路に効率的に供給される。したがって、突入電流のピーク値を押さえる目的で電流制限抵抗を相当に大きくしても、通常動作時に電流制限抵抗の制限を全く受けることがない。また、電流制限抵抗の両端の電圧に基づいてスイッチング回路の切り替えを判断しているので主電源の変動に影響されることが少ない。
【0009】
さらに、電源供給ルート切替回路がスイッチング回路をオン状態に切り替えるまでは、負荷回路およびその周辺回路をインアクティブに保つ制御切替回路を有する場合には、電流制限抵抗の両端の電圧がしきい値以下になって、負荷回路に電力供給を確実にできる以前に負荷回路およびその周辺の回路によって電流が消費されると、異常が発生する可能性があるので、制御切替回路は、負荷回路に電力供給を確実にできる以前においては負荷回路及びその周辺の回路が電流を消費しないようにインアクティブにし、誤動作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の突入電流保護回路の実施の形態を示すブロック図であり、図2は、図1の各部の構成を詳細に示す回路図である。
【0011】
図1に示す突入電流保護回路100は、スイッチSW0が“オン”にされたとき、主電源VVからの電力が、電源供給ルート切替回路10と、充電状態監視回路20と、安定化電源回路30と、制御切替回路40と、制御用電源回路50の働きにより、大容量コンデンサC60に蓄積されると共に、インバータ70などの後続の回路に供給される。上述の各回路10,20,30,40,50の詳細は図2に示されている。
【0012】
図2から分かるように、スイッチSW0が“オン”にされると、電流は電源供給ルート切替回路10の電流制限抵抗RSを経由して大容量コンデンサC60への充電動作を開始する。スイッチSW0が“オン”にされた初期においては、大容量コンデンサC60には電荷が少ないので、大きな電流が電流制限抵抗RSを流れる。この場合、流れる電流のピーク値は電流制限抵抗RSによって制限される。
【0013】
電流制限抵抗RSを経由して電力供給を受けた安定化電源回路30は、ゼナーダイオードZDAで決まる電圧の安定化電源を充電状態監視回路20のコンパレータCMに供給し始める。安定化電源の供給を受けたコンパレータCMは、電流制限抵抗RSの両端のノードP1,P2間の電圧がしきい値以下であるか否かをチェックする。スイッチSW0が“オン”にされた初期においては、電流制限抵抗RSの両端のノードP1,P2間の電圧は大きいので、この電圧を入力とするコンパレータCMは、出力を“L”(ロウレベル)レベルにする。そこで、コンパレータCMの出力を受ける否定回路Nは、出力端を“H”(ハイレベル)にする。
【0014】
否定回路Nが出力端を“H”にすると、ノードP3は、ノードP1に比較して電位が低くないので、抵抗R12と、切替制御回路PH1と、ダイオードD21とを結ぶラインに電流は流れず、切替制御回路PH1は、スイッチング回路SW1を“オフ”状態を保ち、電源電流は電流制限抵抗RSを流れ続ける。
【0015】
他方、制御切替回路40については、否定回路Nの出力端が“H”であるので、抵抗R41と、ゼナーダイオードZDBと、ダイオードD23とを結ぶラインにも電流が流れず、制御切替回路40は“オフ”であって、制御用電源回路50をインアクティブに保っている。したがって、後続の回路、例えば、制御用電源回路50から制御電力を受けるインバータ70(図1)は作動を開始しない。
【0016】
次に、スイッチSW0が“オン”にされてから所定の時間が経過すると、大容量コンデンサC60の充電が進み、電流制限抵抗RSを流れる電流は次第に減少し、電流制限抵抗RSの両端のノードP1,P2間の差分電圧がしきい値以下になり、これを検知したコンパレータCMは、出力を“L”から“H”に切り替える。コンパレータCMの出力が“H”になると、否定回路Nの出力は“L”になり、ノードP1からノードP3に向け、抵抗R12と、切替制御回路PH1と、ダイオードD21とを経由して電流が流れ、切換制御回路PH1は、スイッチング回路SW1を“オン”に切り替える。スイッチング回路SW1が“オン”になると、電流は、電流制限抵抗RSの制限を受けることなく抵抗値の極めて少ないスイッチング回路SW1を経由して大容量コンデンサC60およびその負荷回路たる後続の回路に直接的に供給される。
【0017】
また、コンパレータCMの出力が“H”になり、否定回路Nの出力が“L”になると、制御切替回路40の抵抗R41と、ゼナーダイオードZDBと、ダイオードD23とを結ぶラインにも電流が流れ、制御切替回路40は“オン”状態になり、制御用電源回路50をアクティブに切り替える。制御用電源回路50がアクティブになると、後続のインバータ70は、制御用電源回路50から制御電力を受け、スイッチング回路SW1からは駆動電力を受けることとなり、通常の動作を開始する。このとき、駆動電力供給ラインには、電流制限抵抗RS等のように電圧を下げあるいは電力を無駄に消費する素子は存在せず、消費電力の小さいスイッチング回路SW1を経由するだけになる。
【0018】
したがって、この突入電流保護回路100においては、スイッチSW0が“オン”にされた初期においては、電流制限抵抗RSを大きくすることにより突入電流のピークを所望通りに低下でき、且つ、所定の時間が経過し、大容量コンデンサC60の充電が進んだ時点では、電流制限抵抗RSを切り離して無駄な電圧低下あるいは電力消費を無くすことができる。この例においては、安定化電源回路30を設けたことにより、充電状態監視回路20は安定的に動作可能であり、さらに、充電状態監視回路20は充電の度合いを電流制限抵抗RSの両端の電位差で判定しているために主電源VVの電圧変動に影響されにくいという利点がある。
【0019】
すなわち、充電状態監視回路20は、電流制限抵抗RSの第1端部と第2端部の電位差で充電の度合いをみている。このため、充電状態監視回路20は、とくに主電源VVが二次電池のような充放電可能なバッテリであるときに、主電源VVの電圧が低下しても、その電圧低下に影響されずに充電状態を確実に監視することができる。
【0020】
電源供給ルート切替回路10のスイッチング回路SW1には、好ましい例としてFET(電界効果型トランジスタ)を用いている。このため、主電源VVからスイッチング回路SW1を介してインバータ70側に電圧を供給する際に、電圧降下をほとんど生じることがなく、通常のNPNトランジスタをスイッチとして用いた場合に比べて突入電流保護回路100の消費電力の低減を図ることができる。
【0021】
また、図1及び図2に示すように、主電源VVのプラス側に対してスイッチSW0が直接設けてあり、主電源VV及びスイッチSW0で構成される第1ユニットと、突入電源保護回路100、インバータ70及び大容量コンデンサC60で構成される第2ユニットとを別々に設定することができる。これにより、第1ユニットは使用者の手元側に置いて、第2ユニットはモータを含む実際の機器側に配置できるメリットがあり、実用上有効である。
【0022】
なお、この種の回路においては、制御用電源回路50が消費する電流と、電流制限抵抗RS(例えば、突入電流ピーク値を下げるために電流制限抵抗RSを大きくしたような場合)を経由して流れ込む電流とが同等になり、電流制限抵抗RSの両端の電圧が一定値よりも下がらなくなってしまうという現象が推定できる。しかし、この例では、制御切替回路40および制御用電源回路50を設けたことにより、大容量コンデンサC60への充電が所望のレベルまで到達するまでは、制御切替回路40が制御用電源回路50を“オフ”状態に保つので、このような現象を確実に防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の突入電流保護回路の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1の各部の構成を詳細に示す回路図である。
【図3】突入電流保護回路の従来例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0024】
10 電源供給ルート切替回路
20 充電状態監視回路
30 安定化電源
40 制御切替回路
50 制御切替回路
60 大容量コンデンサ
70 インバータ
100 突入電流保護回路
RS 電流制限抵抗
SW0 スイッチ
SW1 スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流制限抵抗を介して電源を負荷回路に供給する主電源と、電源供給に対する負荷回路に並列に接続された大容量コンデンサとを有する突入電流保護回路において、
電流制限抵抗に並列に接続されたスイッチング回路と、
電源供給開始後における電流制限抵抗の両端の電圧を検出し、その電圧がしきい値以下になったときスイッチング回路をオン状態に切り替える充電状態監視回路を備えたことを特徴とする突入電流保護回路。
【請求項2】
充電状態監視回路が、スイッチング回路をオン状態に切り替えるまでは、負荷回路およびその周辺回路をインアクティブに保つ制御切替回路を備えていることを特徴とする請求項1記載の突入電流保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−189873(P2007−189873A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7747(P2006−7747)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(592059437)特殊電装株式会社 (3)
【Fターム(参考)】