説明

突起付き搬送用平ベルト、及び突起付き搬送用平ベルトの製造方法

【課題】 突起を変形させやすくし、突起の耐久性を向上させる。
【解決手段】 搬送用平ベルト10は、無端状に形成されるベルト本体20を有する。ベルト本体20は、ゴム層21と、ゴム層21の外周側に、平ベルト10の芯体と成る帆布22とを積層して構成する。ベルト本体の外周面20Aには、複数の突起11を設ける。ベルト本体20の内周面20Bには、突起11の対応する位置に複数の凹部13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起付きベルトに関し、特に搬送用途で使用される平ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動釣り銭機等の貨幣処理機内において、硬貨等の搬送物を搬送するために、搬送用平ベルトが広く使用されている。搬送用平ベルトは、搬送物を搬送するために突起が設けられる場合があり、この場合、突起に搬送物を係止させつつ、搬送用平ベルトを回転させて搬送物を搬送させる。
【0003】
搬送用ベルトにおける突起は、例えば、接着剤で搬送面に貼り付けられることにより形成されることが知られている。また、突起成型用の溝が設けられた金型を用いて搬送用平ベルトが加硫成型されることにより、ベルトの一方の面に突起が成形されることが知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−156961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送用平ベルトにおいては、上述したように、突起に搬送物を係止させつつ、ベルトを回転させて搬送物を搬送するので、搬送物から突起に、ベルト搬送面に沿った負荷が作用される。また、搬送物が例えば障害物等に引っかかると、突起には搬送物から大きな負荷が作用されることがある。しかし、搬送用平ベルトにおける突起は、ベルト本体に固定されており、上述の負荷が作用されても、大きく変形または変位することができない。したがって、突起に作用される負荷は、突起とベルトとの接合部分に集中して作用されるので、その部分にクラックが生じ、突起がベルト本体から剥離しやすいという問題がある。
【0005】
そこで、本願発明はこのような問題点に鑑みて成されたものであり、突起を変形または変位させやすくし、突起がベルトから剥離しにくい搬送用平ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る突起付き搬送用平ベルトは、ベルト本体の一方の面に突起が設けられた搬送用平ベルトであって、ベルト本体には、突起の裏側に、中空部が形成されることを特徴とする。このような構成によれば、突起に負荷が作用されると、突起は中空部の内部に沈み込み、突起に作用される負荷は、ベルト本体との接合部分に集中しないので、突起の耐久性を向上させることができる。
【0007】
ベルト本体の他方の面には、例えば、突起に対応する位置に凹部が設けられ、中空部はこの凹部である。また、中空部は、閉塞されていても良い。
【0008】
突起は、例えば、一方の面の幅方向において不連続に設けられる。また、突起は、例えば、一方の面の長手方向において不連続に設けられる。さらに、突起は、ベルトの長手方向及び幅方向の少なくとも一方向に複数並べられても良い。
【0009】
本発明に係る搬送用平ベルトの製造方法は、ベルト本体の一方の面に突起を成形し、一方の面を基台に押し当てることにより、突起に対応するベルト本体の他方の面の一部を膨らませ、その膨らんだ一部を研磨することにより、他方の面に凹部を成形する。このような製造方法によれば、突起の対応する位置に容易に凹部を形成することができる。
【0010】
基台は柱状体であり、ベルト本体は、無端状に成形され、柱状体に巻きつけられて、一方の面が柱状体に押し当てられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る突起付きベルトにおいては、突起に負荷が作用されても、突起は中空部に沈み込み、その負荷がベルトと突起との接合部分に集中されることがない。したがって、突起は、ベルトから剥離しにくくなり、これにより突起付き搬送用ベルトの寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係る搬送用平ベルトの使用状態を示す斜視図である。図2は、図1のII−II線上における搬送用平ベルトの縦断面図である。本実施形態に係る搬送用平ベルト10は、ベルト本体20を有し、ベルト本体20は、ゴム層21と、ゴム層21の外周側に、搬送用平ベルト10の芯体と成る帆布22とが積層されて構成される。
【0013】
ベルト本体20は、無端状に形成され、その外周面20Aから垂直に突出し、ベルト本体20と一体に成形された突起11が設けられる。突起11は外周面20Aの幅方向における一部において設けられるとともに、外周面20Aの長手方向における一部において設けられ、すなわち、突起11は、ベルトの幅方向、長手方向において不連続に設けられる。具体的には、本実施形態においては、複数の突起11が、幅方向に2つ等間隔に並べられるとともに、長手方向にも複数個(例えば8個)等間隔に並べられる。
【0014】
ベルト本体20の内周面20Bには、複数の凹部13が形成される。各突起11及び各凹部13の断面形状(搬送面に沿った断面)はほぼ同一形状で、幅方向に長い矩形を呈する。そして、それら矩形は、略同一の大きさで、または凹部13が僅かに大きい。凹部13はそれぞれ突起11に対応する位置に設けられ、すなわち、ベルト本体20における各突起11の裏側には、凹部13により中空部が設けられる。
【0015】
帆布22は、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、綿糸のいずれかまたはこれらの2種以上の混合繊維によって形成される。帆布22は、上記繊維が、例えば無端状に織り上げられて形成される織物、また編み上げられて形成される編物である。
【0016】
ゴム層21及び各突起11は、弾性材料であるエラストマーから形成され、エラストマー成分としては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体配合物(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロプレン、ウレタンゴム(例えばミラブルウレタン)、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムのいずれか、またはこれらの2種以上の混合物が使用される。
【0017】
次に、本実施形態に係る搬送用平ベルト10の作用について説明する。搬送用平ベルト10は、例えばその外周面20Aの搬送面が水平面に対して図1中左上に傾くように、2つのプーリPに掛け回されて使用される。搬送用平ベルト10の外周面において、搬送物C(例えば硬貨)は、幅方向に2つ並べられた突起11の図1中左側に係止されて、突起11の幅方向の中間位置に載置される。搬送用平ベルト10は、図1中反時計回りに回転され、その回転に伴い、搬送物Cは突起11に係止されつつ搬送され、このとき、突起11には搬送物Cから、搬送面に沿った方向に負荷が作用される。また、搬送物Cは、例えば搬送中に障害物等に引っ掛かった場合、突起11には、搬送面に沿った方向にその搬送物Cから大きな負荷が作用される場合がある。
【0018】
本実施形態においては、突起11は弾性材料で形成されるとともに、各突起11の内周面側には凹部13が設けられているので、上述の搬送物Cからの負荷により、突起11は、僅かに図1中右側に変形するとともに、凹部13の内部に大きく沈み込んで変形することができる。すなわち、突起11に作用される負荷は、その一部がベルトの内周側に作用される負荷として分散され、突起11は大きく変形するので、これにより搬送物Cから作用された負荷は、突起11とベルト本体20との接合部分に集中することがない。したがって、この接合部分にクラック等が生じにくくなり、搬送用平ベルト10の寿命を長くすることができる。
【0019】
図3〜7を用いて、本実施形態に係る搬送用平ベルト10の製造方法について説明する。図3は搬送用平ベルト10を製造するための加硫成型装置を示す。図4は、加硫成形装置の内型を示す。
【0020】
図3に示すように本実施形態に係る加硫成型装置30は、内型40と、その内型40に対して、所定の距離を空けつつ径方向外側に取り囲むように配置される外型50を備える。
【0021】
内型40は、軸Xを中心とする略円柱状に金属で形成され、その内型40内部には熱媒体が通過するための通路(不図示)が設けられ、熱媒体が通過することにより、内型40の外周面47が加熱させられる。内型40の上面および下面には、内型40内部に熱媒体を送入出するための配管44、45が設けられる。熱媒体としては、例えば、温水、水蒸気、オイル等が使用される。内型40の外周面47には、図4に示すように、ゴムシート21’が筒状に巻きつけられ、その上に、無端状の帆布22が被せられる。
【0022】
外型50は、図3に示すように、互いにその周方向に所定の間隙を空けて配置される複数(本実施形態では8つ)の外型片51を有する。外型片51は、それぞれ湾曲する円弧片であって、これらの内周面51Bが同一の曲率を有する円弧であるとともにその曲率中心が、軸Xに一致する。すなわち、外型50は、軸Xを中心とする同一円筒が、その上端から下端まで軸X方向に平行に延びる間隙54により、8つの外型片51に均等に周方向に分割されて、構成される。
【0023】
各外型片51の径方向の外側には、それぞれシリンダ52が取り付けられる。各シリンダ52は、油圧、水圧、空気圧、蒸気圧、またはこれらの2以上の組み合わせである流体圧によって、各外型片51全体を径方向に変位させることができる。外型50は、各外型片51が径方向に変位されることにより、その全体が縮径しまたは拡径する。なお、各外型片51は剛体の金属であるので、実質的に形状が変形されずに、各シリンダ52によって径方向に変位される。
【0024】
各外型片51の模式的な斜視図を図5に示す。図5に示すように、各外型片51の内周面51Bには、軸X(図3参照)に沿う方向に一列に並べられた複数の凹陥部53が設けられる。すなわち、凹陥部53は、内周面51Bにおいて、軸Xの方向に一部しか設けられておらず、換言すると軸Xの方向において不連続に設けられている。なお、最上及び最下位置に設けられた凹陥部53は、外型50の内周面51Bの上端部51C、下端部51Dに接続されていない。各凹陥部53は、突起を成形するための凹陥部であり、突起11と略同一形状を呈し、各凹陥部53の断面形状は、軸方向に長い矩形を呈する。
【0025】
次に図3、6を用いて本実施形態に係る加硫成型方法を説明する。本実施形態においては、まず、上述したように、内型40にゴムシート21’および帆布22が装着される。その後、内型40内に熱媒体が供給され、内型40の外周面47が加熱され、ゴムシート21’、帆布22の加熱が開始される。その加熱と同時に、各シリンダ52が駆動させられ、各外型片51が径方向内側に変位させられ、外型50の内周面が縮径される。各外型片51が内側に変位させられると、これらの各内周面51Bが、帆布22に沿うように密着させられる。各外型片51は、帆布22に密着後、さらに径方向内側に変位させられ、ゴムシート21’、帆布22は、各外型片51と、内型40の外周面47によって挟圧される。
【0026】
なお、各外型片51が径方向内側に変位されると、外型50全体は縮径し、各外型片51の間に設けられた間隙54は狭められる。これにより、各外型片51は漸次近づくが、各外型片51が帆布22に密着し押圧しているとき、各外型片51同士が接していても良いし、離間していても良い。
【0027】
ゴムシート21’及び帆布22が挟圧されるとともに、熱媒体により加熱されると、ゴムシート21’の粘度は低下し、ゴムシート21’は流動化する。この流動化により、ゴムシート21’は、帆布22の各繊維間の隙間に含浸するとともに、その隙間から径方向外側に流れ、各凹陥部53(図5参照)の内部に流入される。凹陥部53に流入したゴムシート21’は、搬送用平ベルト10における突起11を形成する。ゴムシート21’及び帆布22への挟圧及び加熱は、凹陥部53へのゴムシート21’の流入後も継続され、ゴムシート21’は加硫成型させられるとともに、帆布22とゴムシート21’が加硫接着させられる。これにより、ゴムシート21’によって成形されたゴム層21(図2参照)に、帆布22が積層されて構成される円筒状のベルトスリーブ31が得られ、このベルトスリーブ31の一方の面31A(図6においては外周面)には、径方向外側に突出し、ベルト本体20(図2参照)と一体に成形される突起11が形成されている。
【0028】
ベルトスリーブ31が成形された後、熱媒体の供給が停止され、内型40内部には冷却媒体(例えば冷却水)の供給が開始され、加硫が終了する。加硫が終了すると、各外型片51が、それぞれ各シリンダ52により径方向外側に変位され、外型50の内周面が拡径され、ベルトスリーブ31から離型される。ここで、各外型片51がベルトスリーブ31から離型されるとき、各外型片51は突起11の突出する方向と一致する方向に変位させられるので、外型片51は、突起11に引っ掛かることなく、離型することができる。外型片51が離型されると、次に、ベルトスリーブ31に軸Xの方向への力が作用され、ベルトスリーブ31が内型40から離型される。
【0029】
次に、図7を用いてベルトスリーブ31への凹部13の成形方法について説明する。図7に示すように、内型40から脱型されたベルトスリーブ31は、まず、その外周面が内周面になるように、裏返され、突起11が、ベルトスリーブ31の内周面側に配置される。裏返されたベルトスリーブ31は、その周方向に伸ばされて、円柱状の研磨芯55に、巻き付けられる。
【0030】
ここで、ベルトスリーブ31のベルト本体は弾性材料で形成されており、伸ばされつつ研磨芯55に巻き付けられると、ベルトスリーブ31から径方向内側に力が作用され、ベルトスリーブ31の一方の面31A(図7においては内周面)及び突起11は、研磨芯55の外周面に押し当てられる。これにより、ベルトスリーブ31の他方の面31B(図7においては外周面)において突起11に対応する部分34は、その突起11の高さに応じて膨らむ。
【0031】
本実施形態においては、このような状態で、他方の面31Bが研磨され、この研磨により膨らんだ部分34が集中的に研磨され、ベルトスリーブ31の他方の面31Bに凹部13(図1,2参照)が成形される。凹部13が成形されたベルトスリーブ31は、所定幅に切断され、さらに再度、外周面が内周面になるように裏返され、突起11が外周面側に配置され、これにより搬送用平ベルト10が得られる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、ベルトの一方の面に突起11が、他方の面の突起11に対応する部分に凹部13が容易に形成される。また本実施形態における突起11はベルト本体と一体に成形されるので、突起11は高い耐久性を有する。
【0033】
図8を用いて本発明に係る第2の実施形態について説明する。第1の実施形態においてベルト本体に設けられた中空部は、ベルト本体の内周面側に設けられた凹部であったが、本実施形態においては、中空部はベルト本体の内部に設けられ、閉塞されている。なお、以下の説明においては、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付す。
【0034】
図8に示すように第2の実施形態の搬送用平ベルト10は、ベルト本体20を有し、ベルト本体20は、第2ゴム層21bに、第1ゴム層21a、及び帆布22が順に積層されて構成され、帆布22がベルトの外周面20Aを構成するとともに、第2ゴム層22bがベルトの内周面20Bを構成する。
【0035】
ベルト本体20は、第1の実施形態と同様に無端状に形成され、その外周面20Aには第1の実施形態と同様に突起11が設けられる。ベルト本体20内部において、突起11の裏側には中空部63が設けられる。ここで中空部63は、第1ゴム層21aの内周側に設けられた凹部として形成されるとともに、第1ゴム層21aの内周側には第2ゴム層21bが積層されているので、中空部63はベルト本体20内部において、ゴム層によって閉塞されている。本実施形態においても、各突起11及び各中空部63の断面形状は、ほぼ同一形状の幅方向に長い矩形を呈する。また、それら矩形は、略同一の大きさで、または中空部63が僅かに大きい。
【0036】
以上のように、本実施形態においても、突起11は弾性材料で形成されるとともに、各突起11の内周面側には中空部63が設けられているので、突起11に、搬送面に沿った負荷が作用されると、突起11は、僅かにその搬送面に沿って変形されるとともに、中空部63の内部に大きく沈み込んで変形することができる。したがって、突起11に作用される負荷は、その根元に集中することがなく、突起11の根元にクラック等が生じにくくなり、搬送用平ベルト10の突起の耐久性を向上させることができる。
【0037】
次に、第2の実施形態に係る搬送用平ベルト10の製造方法について説明する。本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、まず、帆布22に第1のゴム層21aが積層され、その外周面側に突起11が、内周面側に凹部が設けられたベルトスリーブが製造される。次に、ベルトスリーブの内周面側にさらに、第2のゴム層21bが加硫接着され、これにより第2の実施形態に係る搬送用平ベルト10が製造される。なお、第2のゴム層21bが積層される前の、ベルトスリーブの製造工程においては、その加硫工程において、温度を低くし、または加熱時間を短くすることにより、第1のゴム層21aを完全に加硫しないほうが良い。このように、加硫を完全にしないと、第1のゴム層21aに第2のゴム層21bを加硫接着しやすいからである。
【0038】
なお、第2の実施形態においては、ベルトの内周面側に第2のゴム層21bの代わりに帆布を積層しても良い。この場合においても、搬送用平ベルト10は、上述の方法と同様の方法により製造することができる。
【0039】
なお、第1及び第2の実施形態において、突起の形状は、その断面形状が略矩形であったが、その他の形状であって良く、例えば円形、楕円形等であっても良い。そして、中空部(凹部13または中空部63)の断面形状も同様に、例えば円形、楕円形等であっても良い。また、第1及び第2の実施形態では、突起11と中空部(凹部13または中空部63)は同一形状であったが、異なる形状であって良い。ただし、突起11に負荷が作用されたとき、突起11が中空部内部に沈み込めるように、中空部の断面形状は突起11の断面形状より大きい方が良い。また、第1及び第2の実施形態において、使用態様に応じて、突起はベルトの内周面側に、凹部はベルトの外周面側に設けられても良い。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の効果を説明するために、実施例を用いて説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるわけではない。
【0041】
[実施例のベルト]
実施例のベルトは、第1の実施形態の構成を有する搬送用平ベルトであって、ゴム層の外周面側に帆布が積層されて構成され、外周面には複数の突起が、内周面には各突起に対応するように複数の凹部が設けられる無端状のベルトであった。実施例のベルトにおいて、ゴム層及び突起のゴム成分はミラブルウレタンであった。帆布は、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維が編み上げられて形成された編物であった。また、ベルトの幅は30mm、長さは230mmであった。突起は幅方向に10mm離間して2つ並べられると共に、長手方向には等間隔で8個並べられていた。各突起及び各凹部の断面形状は同一形状で同一の大きさの矩形であり、その矩形は1辺が5mm、他の1辺が3mmであり、その矩形は幅方向に長い。突起はその高さが0.5mm、凹部はその深さが0.5mmであった。
【0042】
[比較例のベルト]
比較例のベルトは、凹部が設けられない以外は、実施例のベルトと同様の構成を有するベルトであった。
【0043】
[ベルトの評価方法]
上記実施例、比較例のベルトを以下の試験により突起の耐久性を評価した。上記実施例及び比較例のベルトBは、図9に示すように、それぞれ2つのプーリPに、取り付け張力7%で掛け回して取り付け、ベルトの外周面には搬送物Cとして10円硬貨を載置させた。ベルトBは、100mm/秒で回転させる一方、搬送物Cは一定位置に静止させるとともに、搬送物Cにはその上方から40gの負荷Lを作用させ、これにより各突起に回転するごとに搬送物Cから負荷が作用させるようにした。
【0044】
この試験において、比較例のベルトは、試験開始後から5時間後において、突起の根元にクラックが生じ、ベルト本体から突起が剥離された。一方、実施例のベルトは、48時後においても、各突起はベルト本体から剥離されなかった。
【0045】
以上の試験結果から明らかなように突起付き平ベルトにおいて、突起の裏側に中空部(凹部)が設けられると、中空部が設けられないベルトに比べて耐久性が向上することが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態に係る使用状態における平ベルトの斜視図である。
【図2】図1のII−II線上における平ベルトの縦断面図である。
【図3】加硫成型装置の上面図である。
【図4】ゴムシート及び帆布が装着された内型の斜視図である。
【図5】各外型片の斜視図である。
【図6】ゴムシート及び帆布が外型と内型により狭圧され、ベルトスリーブが成型される工程を示すための加硫成型装置の上面図である。
【図7】凹部の成形方法を示すための平面図である。
【図8】第2の実施形態に係る平ベルトの縦断面図である。
【図9】突起の耐久性を評価するための試験方法を示すための模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 搬送用平ベルト
11 突起
13 凹部
20 ベルト本体
20A 外周面
20B 内周面
21 ゴム層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体の一方の面に突起が設けられた搬送用平ベルトであって、前記ベルト本体には、前記突起の裏側に、中空部が形成されることを特徴とする搬送用平ベルト。
【請求項2】
前記ベルト本体の他方の面には、前記突起に対応する位置に凹部が設けられ、前記中空部はこの凹部であることを特徴とする請求項1に記載の搬送用平ベルト。
【請求項3】
前記中空部は、閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送用平ベルト。
【請求項4】
前記突起は、前記一方の面の幅方向及び長手方向の少なくとも一方向において、不連続に設けられることを特徴とする請求項1に記載の搬送用平ベルト。
【請求項5】
前記突起は、ベルトの長手方向及び幅方向の少なくとも一方向に複数並べられることを特徴とする請求項1に記載の搬送用平ベルト。
【請求項6】
ベルト本体の一方の面に突起を成形し、前記一方の面を基台に押し当てることにより、前記突起に対応する前記ベルト本体の他方の面の一部を膨らませ、その膨らんだ一部を研磨することにより、前記他方の面に凹部を成形する搬送用平ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記基台は柱状体であり、前記ベルト本体は、無端状に成形され、前記柱状体に巻きつけられて、前記一方の面が前記柱状体に押し当てられることを特徴とする請求項6に記載の搬送用平ベルトの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−62938(P2007−62938A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251506(P2005−251506)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】