説明

窒化ホウ素を含む高温バイオベース潤滑剤組成物

本発明は、改善された高温エンジン潤滑剤組成物の調製方法であって、1)天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つのバイオベース天然油またはバイオベース合成油を準備するステップと、2)少なくとも1つの窒化ホウ素を準備するステップと、3)場合によっては、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI、グループII、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つの基油を準備するステップと、4)場合によっては、抗酸化剤類、腐食防止剤類、金属不活性化剤類、粘度調整剤類、磨耗防止剤類、摩擦改質剤類、および極圧剤類からなる群から選択された少なくとも1つの添加剤または添加剤の組合せを準備するステップと、5)1)、2)、3)、および4)を任意の順序でブレンドして、前記組成物を生成するステップとを含む方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、窒化ホウ素からの高温バイオベース潤滑剤組成物(HIGH TEMPERATURE BIOBASED LUBRICANT COMPOSITIONS FROM BORON NITRIDE)という名称で、2005年4月26日出願の米国特許仮出願第60/675,126号の優先権を主張する。本発明は、天然および/または合成の野菜油、動物油、植物油、または樹木油、ならびに窒化ホウ素から作製されたバイオベース潤滑剤組成物に関する。これらの組成物は、最高1000℃およびそれ以上の極高温における潤滑性、耐摩耗性、および極圧性能の改善をもたらす。これらの組成物は、高温用途で燃焼機関、オーブン、チェーン、ケーブル、ギヤ、軸ピン、軸受、および滑り面を潤滑するのに特に有用であり得る。潤滑剤組成物は、作動液、タービン油、圧縮機油、浸透性潤滑剤、グリース、耐焼付き性コンパウンド、スレッドコンパウンド、深絞り用コンパウンド、圧延油、金属加工流体、離型剤、ならびに耐磨耗性および極圧性能を必要とする任意の潤滑剤に処方することもできる。さらに、これらの潤滑剤組成物は、電気絶縁流体およびコンパウンドにおいて有用な高絶縁耐力をもたらす。
【背景技術】
【0002】
バイオベース油は、野菜、動物、植物、または樹木に由来する再生可能資源から大量に得ることが可能であり、一般に易生分解性または「環境的に無毒性」を特徴とする。そのため、このような油は、広範囲の用途で使用する上で魅力的であるとされており、米国2002年農業法(2002 Farm Bill)にバイオベースと定義されている。これらのバイオベース油は天然および合成の形で得られる。
【0003】
潤滑目的の使用に関して、バイオベース油は完全に望ましいというわけではない。バイオベース油の多くでは、とりわけ流動点、酸化安定性、および添加剤との相溶性に関する特性が所望の範囲にない。しかし、バイオベース油は、潤滑剤として使用する上で望ましい特性も多数有する。具体的には、バイオベース油は、通常引火点が高く、境界潤滑が良好で、燃料節約できるほど非常に粘度指数が高く、NOACK試験による揮発性が1%未満と、エンジン油排出物の低下がすでに示されている値をとる。さらに、バイオベース油は、一般に無毒性および易生分解性である。例えば、標準試験条件下(例えば、OCED 301DおよびASTM D−5864試験方法)で、典型的な野菜油は、最高80%が28日で二酸化炭素と水に生分解することができる。これに比べて、典型的な石油系潤滑流体の場合は25%以下である。本組成物は、環境に潤滑剤が直接損失することのある場合はいつでも、非常に優れた利点を示すこととなる。影響範囲としては、林業、鉱業、海洋業、農業、重工業、輸送、鉄道運送業、パルプ紙製作所、製材所、合板製作所、海上運送業分野におけるホイストケーブルおよびチェーン、ドラグライン、ストラドル・リフト型木材運搬車の駆動装置、オートバイおよびATVのチェーンなどが挙げられる。
【0004】
この組成物中のバイオベース材料および窒化ホウ素は、USDAおよびNSFによって食品用と認証されたものとして挙げられており、環境的に無毒性である。食品加工業で使用される設備は部門によって異なり、主要な3部門は、獣肉および家禽肉、飲料、スナック食品、野菜、ならびに乳製品を含む。設備は部門によって異なるが、軸受、ギヤ、滑り機構などの可動部は同じであり、潤滑を必要とすることが多い。これらの用途で最も多用されている潤滑剤には、オーブン潤滑剤、チェーン潤滑剤、ケーブル潤滑剤、浸透性潤滑剤、耐焼付き性コンパウンド、スレッドコンパウンド、深絞り用コンパウンド、圧延油、離型剤、ギヤ油、および汎用グリースが含まれる。これらの食品産業用油は、他の産業用の潤滑剤より厳しい基準を満たさなければならない。
【0005】
食品の品質の保護および基準を保証し維持することが重要であるため、食品産業は、米国農務省(United States Department of Agriculture)(USDA)によって詳述されている規則および規制に従わなければならない。USDAの食品安全検査局(Food Safety Inspection Service)(FSIS)は、獣肉、家禽肉、卵、乳製品、果実、および野菜の検査、等級付け、および標準化のためのプログラム全部を担う。これらのプログラムは必須であり、連邦政府による検査が行われたプラントで使用される非食品化合物については、この検査が義務付けられている。
【0006】
FSISは、連邦政府による検査が行われたプラントで使用するための公認化合物の公式リストの管理責任者である。公式リスト(米国農務省食品安全検査局(Food Safety and Inspection Service,United States Department of Agriculture)によるList of Proprietary Substances and Nonfood Compounds,Miscellaneous Publication Number 1419 (1989)、11−1頁を参照のこと)には、食品との偶発的接触を受けやすい潤滑剤および他の物質を、USDA規制下で間接食品添加物と見なすと記述されている。したがって、H−1またはH−2として分類されているこれらの潤滑剤は、食品加工プラントで使用する前にUSDAによって認証されなければならない。最も厳しい分類H−1は、食品との偶発的接触が認証された潤滑剤に関するものである。分類H−2は、食品との接触の可能性がないところで使用されるものであり、潤滑剤に既知の毒物または発癌物質が使用されていないことを保証する。本発明は、H−1およびH−2認証潤滑油に関する。本出願では、H−1およびH−2認証油と用語「食品用」は同義で用いられる。
【0007】
USDAは、新規材料および組成物をもはや認証していないが、分類H−1およびH−2は、今でも世界の食品産業で認められている。現在、NSFが、食品用の分類を列挙し、認証している。
【0008】
生成物は、米国の連邦規制機関によって設定された安全性の要件を満たすことに加えて、有効な潤滑剤でなければならない。食品加工プラント用の潤滑油は、機械部品を潤滑し、粘度変化を抑制し、酸化を防止し、発錆および腐食から保護し、磨耗保護をもたらし、使用中に堆積物およびスラッジの生成を抑制すべきである。また、生成物は、流体厚膜条件から境界薄膜条件の範囲の様々な潤滑条件下で有効に機能すべきである。
【0009】
潤滑油の酸化および熱特性から、油がいかに有効に、その潤滑性を経時的に維持し、スラッジおよび堆積物の生成を抑制するかを予想することが容易である。炭化水素油は、高温で酸素と長時間接触すると部分酸化され、硬質の炭素堆積物を生じる恐れがあり、金属間の接触部分の中で許容範囲にある近接箇所で焼付きが引き起こされる。
【0010】
このような潤滑剤は、食品源の汚染要因物として無毒性であるように設計されてきたが、その潤滑性は、通常の潤滑剤、例えば食品との直接接触が認証された材料を含んでいない潤滑剤に比べて、有効でない場合が多い。潤滑剤産業は、特殊添加剤を潤滑剤組成物に組み込むことによって、この問題をある程度克服してきた。例えば、性能添加剤を含有させることによって、耐磨耗性、酸化防止、錆止め/腐食防止、金属不活性化、極圧性、摩擦調整、消泡性、および潤滑性を向上させてきた。このような化学的性質は、次の特許:米国特許第5,538,6545号(ローウェイト(Lawate)ら);米国特許第4,062,785号(ニバート(Nibert));米国特許第4,828,727号(マッカニンチ(McAninch));米国特許第5,338,471号、および米国特許第5,413,7254号(ライ(Lai))に記載されている。
【0011】
関連技術に記載されている食品用潤滑剤の欠点は、耐酸化性、粘度幅処方能力の限界、および粘度保護の限界に関連する。潤滑剤は、長期にわたって熱および機械的ストレスを受けると、酸化およびレオロジー特性が悪くなる場合が多い。
【0012】
したがって、優れた極圧性および耐摩耗性を示し、熱的および機械的ストレスを受けたときの絶縁耐力、耐酸化性、粘度指数、粘度幅処方能力、および粘度安定性が実質的に改善された潤滑剤が求められている。さらに、この組成物は、温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるとき、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供することができる。
【0013】
米国特許第4,783,274号(ヨキネン(Jokinen)ら、1988年11月8日)は、野菜油をベースとし、鉱物潤滑油の代わりに使用し、その主成分として、飽和および/または不飽和の直鎖状C10〜C22脂肪酸とグリセロールのエステルであるトリグリセリドを含有する無水油性潤滑剤に関する。潤滑剤は、ヨウ素価が少なくとも50、かつ125以下であり、粘度指数が少なくとも190であるトリグリセリドを少なくとも70重量パーセント含むことを特徴とする。その基本成分として、前記トリグリセリドの代わりにまたはそれと共に、潤滑油は、前記トリグリセリドまたは対応するトリグリセリドから熱重合によって調製されたポリマーを含有することもできる。添加剤として、潤滑油は、溶媒、脂肪酸誘導体、具体的にはその金属塩、有機または無機の天然または合成のポリマー、および潤滑剤に慣例の添加剤を含有することができる。
【0014】
米国特許第5,538,654号(ローウェイト(Lawate)ら、1996年7月23日)は、外食産業の設備用の作動油、ギヤ油、および圧縮機油として有用な食品用潤滑剤組成物を記載する。この組成物は、(A)多量の遺伝子組換え野菜油、および(B)少量の性能添加剤を含む。他の実施形態では、組成物は、(C)リン化合物、または(D)遺伝子組換えでない野菜油を含有する。
【0015】
米国特許第5,580,482号(シャーサン(Chassan)ら、1996年12月3日)は、熱および酸素の有害な影響に対して安定化された潤滑剤組成物であって、トリグリセリド油、または不飽和がアルコール部分もしくは酸部分に存在するエステルである油、および有効な安定化量のN,N−二置換アミノメチル−1,2,4−トリアゾールまたはN,N−二置換アミノメチルベンゾトリアゾール、および高級アルキル置換ドデシレンコハク酸アミドを含む組成物に関する。
【0016】
米国特許第5,888,947号(ランバート(Lambert)ら、1999年3月30日)は、3つの主成分:基油、ヒドロキシ脂肪酸を含有する油源、および野菜蝋または動物蝋を含有する油源を有する組成物であって、該参考文献で使用される基油が、主にトリグリセロール(トリグリセリド)、モノおよびジグリセロール(グリセリド)、ならびに遊離脂肪酸からなる組成物に関する。組成物は、さらにグリセロールがヒドロキシ脂肪酸を含有する野菜油からなり、油の5%〜20%を構成する。第3の成分は、油添加剤の5体積%〜10体積%を構成する蝋である。追加の合成の擬態物、または動物もしくは野菜化合物に由来する天然物を、組成物の体積の5%まで添加することができる。
【0017】
米国特許第6,300,292号(小西(Konishi)ら、2001年10月9日)は、総不飽和度が0.3以下である野菜油を基油として含み、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、およびジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1つの酸化防止剤を組成物全量に対して0.01〜5質量%の量で含む作動油組成物に関する。
【0018】
米国特許第6,312,623号(オーメン(Oommen)ら、2001年11月6日)は、少なくとも75%のオレイン酸、10%未満の二不飽和脂肪酸成分;3%未満の三不飽和脂肪酸成分;および8%未満の飽和脂肪酸成分を有する脂肪酸成分を含み、さらに絶縁耐力が少なくとも35KV/100ミルギャップ、誘電正接が25℃で0.05%未満、酸性度が0.03mg KOH/g未満、電気導電率が25℃で1pS/m未満、引火点が少なくとも250℃、流動点が少なくとも−15℃であるという特性を有することを特徴とする高オレイン酸トリグリセリド組成物を少なくとも75%、ならびに酸化防止剤、流動点降下剤、および銅不活性化剤の群から選択された1つまたは複数の添加剤を含む電気絶縁流体を対象とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、環境に優しい高温用食品用潤滑剤の特性を改善するのに有用な添加剤および基油の種類と範囲を拡大することである。今回、本出願人は、窒化ホウ素を本発明の組成物に処方すると、組成物が、最高1000℃およびそれ以上の極高温において向上された潤滑性、耐摩耗性、極圧性、および耐酸化性を示すことを発見した。さらに、本発明は、流体および化合物を絶縁する際に有益である高絶縁耐力を提供する。これらの組成物は、高温用途で燃焼機関、オーブン、チェーン、ケーブル、ギヤ、軸ピン、軸受、および滑り面を潤滑するのに特に有用であり得る。潤滑剤組成物を、作動液、タービン油、圧縮機油、浸透剤、グリース、耐焼付き性コンパウンド、スレッドコンパウンド、深絞り用コンパウンド、圧延油、金属加工流体、離型剤、ならびに耐摩耗性および極圧性能を必要とする任意の潤滑剤に処方することもできる。これらの本発明の組成物は、窒化ホウ素を含む潤滑剤基油類の化学構造をとるため、焼けても、研磨性のある硬質炭素堆積物をあまり生じることなく、窒化ホウ素の白色粉末を被潤滑表面上に残すことになる。本発明の組成物は、接触部分の中で許容範囲にある近接箇所において石油系炭化水素の既知の問題である焼付きを引き起こす硬質の炭素堆積物の連続的蓄積を防止する助けにもなる。
【0020】
さらに、本発明の組成物は、500℃を超える温度において、改善された潤滑性、耐摩耗性、および極圧性能が改善されることがわかった。この温度下では、グラファイトでもモリブデンでも実現できないことが知られている。
【0021】
さらに、本発明の組成物は、燃料節約を改善し、排出物を削減することによって、エンジン油の環境上の利点を有することがわかった。
【0022】
さらに、本発明の組成物は、食品用となるように処方することができ、該組成物を環境に対して無毒性にする生分解性が改善されることがわかった。
【0023】
本発明の別の態様は、環境的に無毒性の食品用高温潤滑剤であって、a)天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つのバイオベース天然油およびバイオベース合成油、b)少なくとも1つの窒化ホウ素を準備し、ならびにc)場合によっては、他の基油、およびd)場合によっては、他の添加剤を含み、前記組成物材料が、米国農務省によって要求されたH−1およびH−2の認証を有する組成物に関する。当然のことながら、H−1およびH−2の指定は、ほとんどの場合、米国以外の諸国の類似の分類に対応するに到る。
【0024】
別の態様では、本発明は、環境的に無毒性の食品用高温潤滑剤組成物の調製方法であって、1)天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つのバイオベース天然油またはバイオベース合成油を準備するステップと、2)少なくとも1つの窒化ホウ素を準備するステップと、3)場合によっては、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)基油、グループI、グループII、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つの基油を準備するステップと、4)場合によっては、抗酸化剤類、腐食防止剤類、金属不活性化剤類、粘度調整剤類、磨耗防止剤類、摩擦改質剤類、極圧剤類、および乳化剤類からなる群から選択された少なくとも1つの添加剤を準備するステップと、5)1)、2)、3)、および4)をブレンドして、前記組成物を生成するステップとを含む方法を開示する。
【0025】
本発明の別の態様は、環境排出物を削減し燃料節約を向上させる生分解性流体、エンジン油を必要とする設備、および外食産業で使用される設備の潤滑を向上させる方法であって、1)a)天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つのバイオベース天然油またはバイオベース合成油、b)少なくとも1つの窒化ホウ素、c)場合によっては、他の基油、およびd)場合によっては、他の添加剤を含む少なくとも1つの環境的に無毒性の食品用高温潤滑剤組成物を準備するステップと、2)有効量の前記組成物を前記設備に添加するステップとを含む方法に関する。
【0026】
本発明の別の態様によれば、潤滑剤は、天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つのバイオベース油、および少なくとも1つの窒化ホウ素を含む。
【0027】
本発明の別の態様によれば、潤滑剤は、さらに、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI石油系オイル、グループII石油系オイル、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つの基油を含む。
【0028】
本発明の別の態様によれば、潤滑剤は、さらに、抗酸化剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、粘度調整剤、磨耗防止剤、摩擦改質剤、および極圧剤を含む群から選択された少なくとも1つの添加剤または添加剤の組合せを含む。
【0029】
本発明の別の態様によれば、油は、次式のトリグリセリドである。

式中、R、R、およびRは、約7〜約23個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0030】
本発明の別の態様によれば、脂肪族ヒドロカルビル基は、脂肪族炭化水素基、置換脂肪族炭化水素基、およびヘテロ基を含む群から選択される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、トリグリセリドは、約60%以上のオレイン酸プロファイルを有する。別の実施形態では、オレイン酸プロファイルは、次の百分率のいずれかとすることができる:60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100。
【0032】
本発明の別の態様によれば、トリグリセリドは、約60%以上の単飽和性を有する。別の実施形態では、単飽和性は、次の百分率のいずれかとすることができる:60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100。
【0033】
本発明の別の態様によれば、トリグリセリドは、約70%以上の単飽和性を有する。別の実施形態では、単飽和性は、次の百分率のいずれかとすることができる:70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100。
【0034】
本発明の別の態様によれば、トリグリセリドは、約80%以上の単飽和性を有する。別の実施形態では、単飽和性は、次の百分率のいずれかとすることができる:80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、および100。

【0035】
本発明の別の態様によれば、油は、潤滑剤の約5重量%〜約99.9重量%であり、窒化ホウ素は、潤滑剤の約0.002重量%〜約50重量%である。別の実施形態では、油は、次の百分率のいずれかとすることができる:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、および99。
【0036】
本発明の別の態様によれば、油は、潤滑剤の約65重量%〜約99.9重量%であり、窒化ホウ素は、潤滑剤の約0.002重量%〜約35重量%である。別の実施形態では、窒化ホウ素は、次の百分率のいずれかとすることができる:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、および35。
【0037】
本発明の別の態様によれば、油は、潤滑剤の約95重量%〜約99.998重量%であり、窒化ホウ素は、潤滑剤の約0.002重量%〜約5重量%である。
【0038】
本発明の別の態様によれば、バイオベース油は、潤滑剤の約5重量%〜約90重量%であり、窒化ホウ素は、潤滑剤の約0.002重量%〜約80重量%であり、基油は、潤滑剤の約20重量%〜約80重量%であり、添加剤は、潤滑剤の約0.001重量%〜約80重量%である。
【0039】
本発明の別の態様によれば、バイオベース油は、潤滑剤の約40重量%〜約80重量%であり、窒化ホウ素は、潤滑剤の約0.002重量%〜約35重量%であり、基油は、潤滑剤の約10重量%〜約20重量%であり、添加剤は、潤滑剤の約0.001%〜約40重量%である。
【0040】
本発明の別の態様によれば、バイオベース油は、潤滑剤の約60重量%〜約90重量%であり、窒化ホウ素は、潤滑剤の約0.002重量%〜約5重量%であり、基油は、潤滑剤の約1重量%〜約10重量%であり、添加剤は、潤滑剤の約0.001重量%〜約20重量%である。
【0041】
本発明の別の態様によれば、油は、潤滑剤の約50重量%以下であり、窒化ホウ素は、潤滑剤の約50重量%以上である。
【0042】
本発明の別の態様によれば、バイオベース油は、潤滑剤の約50重量%以下であり、基油、窒化ホウ素、および添加剤は合わせて、潤滑剤の約50重量%以上である。
【0043】
本発明の別の態様によれば、バイオベース油、窒化ホウ素、および添加剤は合わせて、潤滑剤の約50重量%以下であり、基油は、潤滑剤の約50重量%以上である。
【0044】
本発明の別の態様によれば、設備の潤滑を向上させる方法は、少なくとも1つの窒化ホウ素を、天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つのバイオベース油とブレンドするステップと、有効量の油および窒化ホウ素を設備に添加するステップを含む。
【0045】
本発明の別の態様によれば、本方法は、さらに、設備に添加する前に、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI石油系オイル、グループII石油系オイル、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つの基油を、バイオベース油および窒化ホウ素とブレンドするステップを含む。
【0046】
本発明の別の態様によれば、本方法は、さらに、設備に添加する前に、抗酸化剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、粘度調整剤、磨耗防止剤、摩擦改質剤、および極圧剤を含む群から選択された少なくとも1つの添加剤または添加剤の組合せを、バイオベース油、基油、および窒化ホウ素とブレンドするステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(A)トリグリセリド油
本発明の実施では、基油は、次式の合成トリグリセリドまたは天然油である。

式中、R、R、およびRは、約7〜約23個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。本明細書では、用語「ヒドロカルビル基」は、上記分子の残部に直接結合している炭素原子を有する基を意味する。脂肪族ヒドロカルビル基としては、下記のものが挙げられる:(1)脂肪族炭化水素基;すなわち、ヘプチル、ノニル、ウンデシル、トリデシル、ヘプタデシルなどのアルキル基;ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニル、トリデセニル、ヘプタデセニル、ヘンエイコセニルなど、二重結合を1個だけ含むアルケニル基;8,11−ヘプタデカジエニルや8,11,14−ヘプタデカトリエニルなど、二重結合を2個または3個含むアルケニル基。これらの異性体はすべて包含されるが、本実施形態では、直鎖基を使用する。(2)置換脂肪族炭化水素基;すなわち、本発明に関しては、基の顕著な炭化水素性を変更しない非炭化水素置換基を含む基。当業者には、適切な置換基は周知であろう。例は、ヒドロキシ、カルブアルコキシ(特に低級カルブアルコキシ)、およびアルコキシ(特に低級アルコキシ)である。用語「低級」は、7個以下の炭素原子を含む基を意味する。(3)ヘテロ基;すなわち、本発明に関しては、顕著な脂肪族炭化水素性を有し、普通なら脂肪族炭素原子から構成される鎖または環に存在する炭素以外の原子を含む基。適切なヘテロ原子は、当業者に明らかであるが、例えば酸素、窒素、および硫黄が挙げられる。
【0048】
本発明での使用に適したトリグリセリド油は、野菜油、動物油、改質野菜油、および改質動物油である。バイオベーストリグリセリド油は天然油である。「天然の」は、油が得られる種子が遺伝子変化を何ら受けていないことを意味する。さらに、「天然の」は、得られた油が、エステル化、水素化、または二不飽和性および三不飽和性を変更する化学処理を何ら受けていないことを意味する。本発明で有用な天然のバイオベース油は、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、ヤシ油、レスクエレラ油、カノーラ油、落花生油、トウモロコシ油、綿実油、パーム油、サフラワー油、メドウフォーム油、動物油、またはヒマシ油の少なくとも1つを含む。
【0049】
トリグリセリド油は、改質野菜油、および改質動物油とすることもできる。トリグリセリド油は、化学改質または遺伝子改質される。天然トリグリセリドの水素化は、化学改質の第1手段である。天然トリグリセリド油は、様々な脂肪酸プロファイルを有する。天然ヒマワリ油の脂肪酸プロファイルは、以下の通りである。
パルミチン酸 70パーセント
ステアリン酸 4.5パーセント
オレイン酸 18.7パーセント
リノール酸 67.5パーセント
リノレン酸 0.8パーセント
他の酸 1.5パーセント
【0050】
水素化によるヒマワリ油の化学改質は、水素が、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸など、存在している不飽和脂肪酸プロファイルと反応できることを意味する。その目的は、不飽和をすべて取り除くことではない。さらに、オレイン酸プロファイルがステアリン酸プロファイルに還元されるように水素化することでもない。水素化による化学改質の目的は、リノール酸プロファイルを使用し、その実質的部分をオレイン酸プロファイルに還元または変換することである。天然ヒマワリ油のリノール酸プロファイルは、67.5パーセントである。化学改質の目標は、リノール酸を約25パーセントに削減するように水素化することである。これは、オレイン酸プロファイルが18.7パーセントから約61パーセント(元のオレイン酸プロファイルの18.7パーセントに、リノール酸から生じたオレイン酸の42.5パーセントを加えた和)に増加することを意味する。
【0051】
水素化は、触媒存在下におけるバイオベース油と水素ガスとの反応である。最も一般的に使用される触媒は、ニッケル触媒である。この処理によって、水素が油に付加され、従ってリノール酸プロファイルおよびリノレン酸プロファイルが還元される。不飽和脂肪酸プロファイルしか水素化反応に関与しない。水素化の最中に、二重結合の新しい位置へのシフト、さらにシス型からより高い融点のトランス型へのねじれなど、他の反応も起こる。
【0052】
表Iは、選択された天然野菜油のオレイン酸(18:1)プロファイル、リノール酸(18:2)プロファイル、およびリノレン酸(18:3)プロファイルを示す。トリグリセリドのリノール酸プロファイルの実質的部分を、水素化によって化学改質して、オレイン酸プロファイルを60パーセント超に増加することができる。
表1

18:1 18:2 18:3
トウモロコシ油 25.4 59.6 1.2
綿実油 18.6 54.4 0.7
落花生油 46.7 32.0 −
サフラワー油 12.0 77.7 0.4
大豆油 23.2 53.7 7.6
ヒマワリ油 18.7 67.5 0.8
【0053】
遺伝子組換えは、種子中で、自然界のハイブリダイゼーションによって行われ、または管理下にある実験室中で、より直接的な遺伝子組換えによって行われる。その後収穫された作物は、抽出時にはるかにより高いオレイン酸プロファイルおよびはるかにより低いリノール酸プロファイルを有するトリグリセリド油を含む。上記の表Iを参照すると、天然ヒマワリ油は、18.7パーセントのオレイン酸プロファイルを有する。遺伝子組換えヒマワリ油は、81.3パーセントのオレイン酸プロファイルおよび9.0パーセントのリノール酸プロファイルを有する。表Iの様々な野菜油を遺伝子改質して、90パーセント超のオレイン酸プロファイルを得ることもできる。化学改質野菜油は、化学改質トウモロコシ油、化学改質綿実油、化学改質落花生油、化学改質パーム油、化学改質ヤシ油、化学改質ヒマシ油、化学改質カノーラ油、化学改質ナタネ油、化学改質サフラワー油、化学改質大豆油、化学改質動物油、および化学改質ヒマワリ油の少なくとも1つを含む。
【0054】
一実施形態では、R、R、およびRの脂肪族ヒドロカルビル基は、トリグリセリドが少なくとも60パーセント、別の実施形態では少なくとも70パーセント、および別の実施形態では少なくとも80パーセントの単不飽和性を有するようなものである。本発明で有用なトリグリセリドの例は、通常より高いオレイン酸含有量を含むように遺伝子組換えされた野菜油である。通常のヒマワリ油は、オレイン酸含有量が25〜30パーセントである。ヒマワリの種を遺伝子改質することによって、オレイン酸含有量が約60パーセントから約90パーセントまでであるヒマワリ油を得ることができる。すなわち、R、R、およびR基はヘプタデセニル基であり、1,2,3−プロパントリイル基CHCHCHに結合しているRCOO−、RCOO−、およびRCOO−は、オレイン酸分子の残基である。米国特許第4,627,192号および米国特許第4,743,402号は、高オレイン酸ヒマワリ油の調製のその開示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
例えば、全くオレイン酸部分のみからなるトリグリセリドは、オレイン酸含有量が100%であり、したがって単不飽和含有量が100%である。トリグリセリドが、70%のオレイン酸、10%のステアリン酸、13%のパルミチン酸、および7%のリノール酸である酸部分で構成されている場合、単不飽和含有量は70%である。一実施形態では、トリグリセリド油は、高オレイン酸の、すなわち遺伝子組換え野菜油(少なくとも60パーセント)トリグリセリド油である。本発明内で使用する典型的な高オレイン酸野菜油は、高オレイン酸サフラワー油、高オレイン酸カノーラ油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸トウモロコシ油、高オレイン酸ナタネ油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸綿実、高オレイン酸レスクエレラ油、高オレイン酸パーム油、高オレイン酸ヒマシ油、高オレイン酸メドウフォーム油、および高オレイン酸大豆油である。カノーラ油は、1パーセント未満のエルカ酸を含む様々なナタネ油である。1つの高オレイン酸野菜油は、ヒマワリ属(Helianthus sp)から得られた高オレイン酸ヒマワリ油である。この生成物は、エー・シー・ヒュムコ(AC Humko)(米国テネシー州コルドバ(Cordova,TN,38018))からTriSun(商標)高オレイン酸ヒマワリ油として入手可能である。TriSun 80は、酸部分が80パーセントのオレイン酸を含む高オレイン酸トリグリセリドである。別の高オレイン酸野菜油は、ブラッシカ・カンペストリス(Brassica campestris)またはブラッシカ・ナパス(Brassica napus)から得られた高オレイン酸カノーラ油であり、これもまたエー・シー・ヒュムコ(AC Humko)からRS高オレイン酸油として入手可能である。RS80油は、酸部分が80パーセントのオレイン酸を含むカノーラ油を意味する。
【0056】
さらに、遺伝子組換え野菜油は、二不飽和酸および三不飽和酸を代償にし、オレイン酸含有量が高くなっていることにも留意すべきである。通常のヒマワリ油は、20〜40パーセントのオレイン酸部分、および50〜70パーセントのリノール酸部分を有する。これによって、単不飽和酸と二不飽和酸の部分の含有量(20+70)または(40+50)が90パーセントとなる。遺伝子改質野菜油は、二不飽和または三不飽和の部分が低い野菜油を生成する。本発明の遺伝子組換え油は、オレイン酸部分:リノール酸部分の比が約2から約90までである。オレイン酸部分含有量60パーセントおよびリノール酸部分含有量30パーセントのトリグリセリド油の比は、2である。80パーセントのオレイン酸部分および10パーセントのリノール酸部分で構成されているトリグリセリド油の比は、8である。90パーセントのオレイン酸部分および1パーセントのリノール酸部分で構成されているトリグリセリド油の比は、90である。通常のヒマワリ油の比は、0.5である(30パーセントのオレイン酸部分および60パーセントのリノール酸部分)。
【0057】
さらに、トリグリセリドをバイオベース合成エステルに加工することができ、本特許にさらに記載されたエステル化方法で、上記の天然、化学改質、および遺伝子改質の野菜油、樹木油、植物油、および動物油のいずれも、合成エステルにすることができることにも留意されたい。合成エステルとしては、ポリエステル、ジエステル、複合エステル、ならびにメチルエステルおよびエチルエステルを含めて、単純エステルが挙げられる。エステル化を記載する追加の特許としては、米国特許第6,051,539号;第6,018,063号;第5,885,946号;第5,427,704号;第5,338,471号;第6,018,063号;第5,994,278号;第5,773,391号;第6,583,302号(B1);第6,774,091号;および米国特許出願公開第2003/0069146号が挙げられる。
【0058】
(B)窒化ホウ素
アドバンスド・セラミックス・コーポレーション(Advanced Ceramics Corporation)は、窒化ホウ素の粉末、成形体、およびコーティング剤、ならびに他の特殊セラミックの世界最大の製造業者である。
【0059】
窒化ホウ素粉末は、グラファイト、二硫化モリブデン、および他の頻用される無機固体潤滑剤に代わって、魅力的な性能向上用物質となる特有の特性を有する軟質で滑らかな(滑りやすい)白色粉末である。窒化ホウ素は、密着性および熱化学的安定性が優れているので、通常の固体潤滑剤であれば分解したり所望の性能が得られなかったりする用途でも適用の可能性がある。
【0060】
この無機固体粉末は、極寒または極暑において潤滑する能力を保持し、極圧(EP)用途によく適している。これは、環境に優しく、大部分の化学物質に対して不活性である。これは、グラファイトと異なって、優れた電気絶縁性を示し、その特性を真空中で維持する。
【0061】
現在の潤滑用途としては、固体高分子複合成形体;石油溶媒、油、およびグリース中での添加剤の分散;金属−セラミック電着塗装;離型剤として使用される水性および油性分散液;ならびにエポキシ塗装、溶射塗装、およびプラズマスプレー塗装の構成要素がある。
【0062】
窒化ホウ素は、グラファイトに類似の物理的および化学的諸特性を有する高耐火性(耐熱性、熱安定性)の材料である。しかし、グラファイトと異なって、自然界に自然に生じるものではない。通常は、尿素または尿素誘導体、およびアンモニアの存在下、酸化ホウ素またはホウ酸から、800℃〜2000℃の範囲の温度で合成される。
【0063】
BNの一般的な2つの結晶構造は、立方晶系および六方晶系である。立方晶系窒化ホウ素(c)BNは、ダイヤモンドに類似しており、硬質で研磨性であり、六方晶系窒化ホウ素(h)BNは、グラファイトに類似しており、軟質で滑らかである。
【0064】
下記では、高性能用途向けの理想的な固体潤滑剤にする(h)BNの重要な材料特性を述べる。
【0065】
六方晶系窒化ホウ素粉末は、グラファイトおよび二硫化モリブデンに見られる固体潤滑剤特性と同じ特性を示す。これらには、結晶構造、低せん断強さ、固体潤滑剤膜の密着性、低研磨性、および熱化学的安定性が含まれる。多くの場合、(h)BNは、上記のような通常の固体潤滑剤特性、特に密着性および熱化学的安定性の性能レベルを上回る。
【0066】
最近まで、粉末の摩擦係数、または「滑り」特性の測定方法は、ひいき目で見ても明確でなかった。例えば、(h)BN粉末の様々な等級間の相異は、感触ではっきりと知覚できるが、摩擦係数を決定するために一般的に使用されるインストロン(INSTRON)方法では識別することができない。(h)BNと他の固体潤滑剤の「滑り」を比較するために、ファレックス・コーポレーション(Falex Corporation)と共に新しい試験装置を開発した。
【0067】
図1に示すこの試験結果から、(h)BNは、この方法で試験された他の全材料に対して、摩擦係数が最も低かったことがはっきりとわかる。
【0068】
(h)BNと、グラファイト、二硫化モリブデン、および他の潤滑剤の極圧(EP)特性を比較するために、各材料を5重量%含むFOMBLIN(登録商標)油試料について、ファレックス四球式極圧(Falex 4−Ball EP)試験を行った。
【0069】
2つの等級の(h)BN、2つの等級のグラファイト、二硫化モリブデン(MoS)、酸化アンチモン(SbO)、およびTeflon(PTFE)を試験した。表2はこれらの試験結果を示す。(h)BN試料は両方とも、他のどれよりも高い溶着点を示した(溶着点は、潤滑剤を分割し、溶着または金属間移動を生じさせる荷重の重量キログラム[kgf]の量である)。磨耗痕径データ(溶着点に到達する前の金属移動のsパターン)によると、基準荷重では、一方の等級の(h)BNが、他の固体潤滑剤よりわずかに高い値を有するが、400kgfにすると、本試験群では、両方の等級の(h)BNが優れていることがわかる(基準荷重は、純粋な試験流体の溶着点と定義され、本図の場合、315kgfとした)。
【0070】
アドバンスド・セラミックス(Advanced Ceramics)は、複数の等級の潤滑剤用窒化ホウ素を生産している。潤滑剤用の新しい窒化ホウ素粉末としてNX等級が挙げられており、これには、NX1、NX5、NX9、およびNX10が含まれる。一実施形態では、濾過および溶解性のための等級は、粒径が1ミクロン以下のNX1である。
【0071】
表2

【0072】
(C)他の油
本発明の(A)および(B)組成物は、さらに、(C)(1)合成エステル基油、(C)(2)ポリアルファオレフィン、または(C)(3)未精製、精製、もしくは再精製の油、(C)(4)合成の完全水素化分解された油およびフィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)基油、ならびに(C)(1)、(C)(2)、(C)(3)、および(C)(4)のいずれか2つ以上の混合物を含む、他の添加剤および油を含むことができる。合成エステル基油(C)(1)は、次式のモノカルボン酸RCOOH、次式のジカルボン酸

または次式のアリールカルボン酸R10−Ar(COOH)、式中、Rは、約4〜約24個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、Rは、水素、または約4〜約50個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、R10は、水素、または1個から約24個までの炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、mは0〜約6の整数であり、pは1〜約4の整数である;と、次式のアルコール

式中、R11は、1〜約24個の炭素原子を含む脂肪族基、または6〜約18個の炭素原子を含む芳香族基であり、R12は、水素、または1もしくは2個の炭素原子を含むアルキル基であり、tは0〜約40であり、nは1〜約6である;との反応を含む。
【0073】
モノカルボン酸内のRは、この実施形態では約6〜約18個の炭素原子を含む。モノカルボン酸の例示的かつ非限定的なリストは、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸のカルボン酸、ならびにこれらの酸の異性体およびその混合物である。
【0074】
ジカルボン酸内のRは、この実施形態では約4〜約24個の炭素原子を含み、mは1〜約3の整数である。ジカルボン酸の例示的かつ非限定的なリストは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、およびフマル酸である。
【0075】
アリールカルボン酸のR10は、この実施形態では約6〜約18個の炭素原子を含み、pは2である。有用なアリールカルボン酸は、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメリック酸、およびピロメリト酸である。
【0076】
アルコール内のR11は、この実施形態では約3〜約18個の炭素原子を含み、tは0〜約20である。アルコールは、1価、多価、またはアルコキシル化された1価および多価とすることができる。1価アルコールは、例えば第一級および第二級のアルコールを含むことができる。しかし、一実施形態では、1価アルコールは、第一級脂肪族アルコール、特にアルケノールやアルカノールなどの脂肪族炭化水素アルコールである。R11を誘導する1価アルコールの例としては、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、フィトール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびベヘニルアルコールが挙げられる。
【0077】
多価アルコールの例は、2〜約6個のヒドロキシ基を含むものである。これらは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、および他のアルキレングリコールなどのアルキレングリコールが例示される。本発明での使用に適したアルコールの一クラスは、最高約12個の炭素原子を含む多価アルコールである。このクラスのアルコールには、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、グルコン酸、グリセルアルデヒド、グルコース、アラビノース、1,7−ヘプタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、キナ酸、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、1−10−デカンジオール、ジギタロアールなどが含まれる。
【0078】
本発明で使用するための多価アルコールの別のクラスは、3〜10個の炭素原子を含む多価アルコール、具体的には3〜6個の炭素原子を含み、少なくとも3個のヒドロキシル基を有するものである。このようなアルコールは、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、マンニトール、ソルビトール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、ビス−トリメチロールプロパン、1,2,4−ヘキサントリオールなどが例示される。
【0079】
アルコキシル化アルコールは、アルコキシル化された1価アルコール、またはアルコキシル化された多価アルコールとすることができる。アルコキシアルコールは、一般にアルコールを過剰のエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドで処理することによって生成される。例えば、約6〜約40モルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを脂肪族アルコールと縮合することができる。
【0080】
一実施形態では、脂肪族アルコールは約14〜約24個の炭素原子を含み、ステアリルアルコールやオレイルアルコールなどの長鎖脂肪アルコールから誘導することができる。
【0081】
合成エステルを調製するためのカルボン酸との反応で有用なアルコキシアルコールは、ユニオン・カーバイド(Union Carbide)からのTRITON(登録商標)やTERGITOL(登録商標)、ビスタ・ケミカル(Vista Chemical)からのALFONIC(登録商標)、およびシェル・ケミカル・カンパニー(Shell Chemical Company)からのNeodol(登録商標)などの商標名で市販されている。TRITON(登録商標)材料は、一般に直鎖または分枝鎖のアルキルフェノールから誘導することができるポリエトキシル化アルキルフェノールとして同定される。TERGITOL(登録商標)は、第一級または第二級のアルコールのポリエチレングリコールエーテルとして同定される。ALFONIC(登録商標)材料は、次の一般構造式で表すことができるエチオキシル化直鎖アルコール
CH(CHCH(OCHCHOH
として同定される。式中、xは4〜16の間の値をとり、nは約3〜11の間の数である。
上記の式を特徴とするALFONIC(登録商標)エトキシレートの具体的例としては、ALFONIC(登録商標)1012−60、式中、xは約8〜10であり、nは平均約5.7である;ALFONIC(登録商標)1214−70、式中、xは約10〜12であり、nは平均約10.6である;ALFONIC(登録商標)1412−60、式中、xは10〜12であり、nは平均約7である;およびALFONIC(登録商標)1218−70、式中、xは約10〜16であり、nは平均約10.7である;が挙げられる。
【0082】
NEODOL(登録商標)エトキシレートは、9個〜約15個の炭素原子を含む線状および分枝状のアルコールの混合物であるエトキシ化アルコールである。このエトキシレートは、アルコールを、エチレンオキシド約3〜約12モルまたはそれ以上/アルコール1モルなど、過剰のエチレンオキシドと反応させることによって得られる。例えば、NEODOL(登録商標)エトキシレート23−6.5は、平均約6.5個のエトキシ単位を有する、12〜13個の炭素原子を含む線状および分枝鎖の混合アルコラートである。
【0083】
上記に記載する通り、合成エステル基油は、当技術分野で周知のエステル化手順、条件、および触媒を使用して、上記に同定した任意の酸またはその混合物と上記に同定した任意のアルコールまたはその混合物を、COOH 1個以下/OH基1個の比で反応させることを含む。
【0084】
場合によっては、OH基のすべてをCOOH基と反応させるわけではない。これらの合成エステル基油の例は、グリセロールモノオレエートおよびグリセロールジオレエートであり、その反応はそれぞれ、下記の通りである。

【0085】
グリセロールモノオレエートおよびグリセロールジオレエートを(C)(1)として使用すると、グリセロールモノオレエートの異性体の混合物が存在し、グリセロールジオレエートの異性体の混合物も存在することが一般的である。
【0086】
バイオベース合成エステルおよびエステル化手順に関する追加の情報は、米国オハイオ州コロンバス(Columbus,Ohio)のバテル記念研究所(Battelle Memorial Institute)の研究者であるハーマン・ベネッケ博士(Dr.Herman Benecke)によって全米大豆基金財団(United Soybean Board)に贈呈された「大豆油ベースバイオ潤滑剤の最近の開発(Recent Developments in Soybean Oil−Based Biolubricants)」というタイトルの最近出版された論文に含まれている。ベネッケ博士(Dr.Benecke)は、バテル(Battelle)の発明バイオベース合成エステルを使用するための適用方法を評価および決定するようにバテル(Battelle)が依頼し、リニューアブル・ルブリカント(Renewable Lubricants,Inc.)が実施した研究を報告した。
【0087】
合成エステルを生成する企業およびその商標名の非限定的なリストは、ビーエーエスエフ(BASF)のGlissofluid、チバ・ガイギー(Ciba−Geigy)のReolube、JCIのEmkarote、オレオフィナ(Oleofina)のRadialube、およびヘンケル・コーポレーションのエメリー・グループ(Emery Group of Henkel Corporation)のEmeryである。
【0088】
末端のヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などで改質された、アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、ならびにその誘導体などのポリアルファオレフィン(C)(2)は、使用することができる油の別のクラスを構成する。これらは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、平均分子量が約1000のメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量が約500〜1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が約1000〜1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)、またはそのモノおよびポリカルボン酸エステル、例えばテトラエチレングリコールの酢酸エステル、C−C混合脂肪酸エステル、もしくはC13オキソ酸ジエステルによって調製された油が例示される。
【0089】
未精製、精製、および再精製の油(C)(3)、ならびにこれらのいずれか2つ以上の混合物を、本発明の潤滑剤組成物で使用することができ、未精製油は、天然または合成の供給源から、さらなる精製処理をすることなく直接得られたものである。例えば、レトルト操作によって直接得られた頁岩油、蒸留によって直接得られた石油系オイル、またはエステル化方法で直接得られ、さらなる処理をすることなく使用されたエステル油が、未精製油となる。本発明の文脈内において、鉱物油は、石油系オイルの範囲内にある。精製油は、1つまたは複数の特性が改善されるように、さらに1つまたは複数の精製ステップで処理する点以外は未精製油と同様である。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過、およびパーコレーションなど、このような精製技法の多くは、当業者に周知である。再精製油は、すでに使用された精製油を利用して精製油を得るために使用される方法と同様な方法によって得られる。このような再精製油は、再生油または再処理油とも呼ばれ、さらに使用済み添加剤および油分解生成物の除去技法によって処理されることが多い。
【0090】
完全水素化分解された基油(C)(4)は、合成基油とみなされ、潤滑剤産業から市販されている。最近の精製方法によって、新しいクラスの合成油が生成されている。例えば、1999年潤滑剤&ワックス会議(Lubricants & Waxes Meeting)、11月11〜12日、米国テキサス州ヒューストン(Houston TX)(米国石油化学・石油精製業者協会(National Petrochemical & Refiners Association))で発表された、シェブロン・プロダクツ・カンパニー(Chevron Products Company)による「グループIII基油の合成性(The Synthetic Nature Of Group III Base Oils)」というタイトルの技術文献は、3つの触媒プロセスを組み合わせて、分子のサイズ、形状、およびヘテロ原子含有量を大幅にかつ選択的に変更して、その潤滑性を改善する完全水素化分解製造経路を開示する。3つのステップ全部において、水素を高温および高圧で添加して、特に優れた安定性を有する油を作製する。硫黄や窒素などの不純物は、基本的に完全に除去される。グループIIIの製造に際して、供給原料を飽和物に変換し、イソパラフィン中に濃縮する。芳香族物質、硫黄、および窒素を含有するものなどの反応性種は事実上なくなっており、ノルマルパラフィンなど、低温性能について問題を引き起こす種もなくなっている。最後に、該文献は、現代の完全水素化分解されたグループIII基油を作製するために使用する3つの触媒プロセスによって、供給分子の大部分が合成的に変更されていると述べ、グループIIIの商業生産の実施における供給物および生成物の分析の結論としている。これらの結果は、完全水素化分解経路を利用して作製された現代のグループIII基油は本質的に人工または合成のものであり、旧技術で水素化分解された基油に比べて利点を有するという主張の裏付けとなる。さらに、上記の基油は、潤滑剤用途において高性能であるので、ポリアルファオレフィン(PAO)など、従来の合成物質を用いて処方されることが多い高性能製品でも使用することができる。該参考文献は、生分解性野菜油ベース潤滑剤の調製用原材料として、完全水素化分解されたグループIII基油を使用することを教示していなかった。
【0091】
野菜油およびグループIII油を使用して生成することができる潤滑剤を一般に開示する特許には、米国特許第6,103,673号;米国特許第6,251,840号;米国特許第6,451,745号;および米国特許第6,528,458号(すべて、ルーブリゾール・コーポレーション(Lubrizol Corporation)(米国オハイオ州ウィクリフ(Wickliffe,OH))による)がある。さらなる特許としては、米国特許第6,303,547号および米国特許第6,444,622号(両方とも、エチル・コーポレーション(Ethyl Corporation)(米国バージニア州リッチモンド(Richmond,VA))による)がある。
【0092】
米国特許第6,528,458号は、(a)潤滑粘性を有する油;(b)2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(DMTD)、DMTD誘導体、またはその混合物;(c)摩擦改質剤;および(d)分散剤を含む組成物が、係合部分伝動軸と非係合部分伝動軸との同期化および湿式クラッチの係合を含む方法でギヤシフティングが生じる複数の湿式クラッチおよび複数の部分動力伝動軸を有する伝動装置を潤滑するのに有用であることを開示する。
【0093】
米国特許第6,451,745号は、(a)潤滑粘性を有する油;(b)分散剤;および(c)洗浄剤の組成物を供給することによって、連続可変伝動装置を潤滑できることを開示する。分散剤(b)および洗浄剤(c)の少なくとも1つは、ホウ素含有種であり、組成物中に存在するホウ素量は、前記伝動装置で使用する場合に、改善された摩擦性および耐焼付き性を組成物に付与するのに十分な程度である。
【0094】
米国特許第6,444,622号は、少なくとも1つのC−C60カルボン酸とグアニジン、アミノグアニジン、尿素、チオルエア、およびその塩を含む群から選択された少なくとも1つのアミンとの反応生成物、ならびにリン含有分散剤の混合物が、ギヤ油添加剤として有用であることを開示する。
【0095】
米国特許第6,303,547号は、少なくとも1つのC−C60カルボン酸とグアニジン、アミノグアニジン、尿素、チオルエア、およびその塩を含む群から選択された少なくとも1つのアミンとの反応生成物が、ギヤ油添加剤として有用であることを開示する。
【0096】
米国特許第6,251,840号は、使用時に改善された耐摩耗性および消泡性を示す潤滑/機能性流体組成物を開示する。この改善は、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールおよびその誘導体と、シリコーンおよび/またはフルオロシリコーン消泡剤との併用に起因する。
【0097】
米国特許第6,103,673号は、潤滑粘性を有する油;せん断安定性粘度調整剤;少なくとも0.1重量パーセントのオーバーベース金属塩;少なくとも0.1重量パーセントの少なくとも1つのリン化合物;および0.1〜0.25重量パーセントの少なくとも2つの摩擦改質剤の組合せを含む組成物が、連続可変伝動装置用の流体の改善をもたらすことを開示する。摩擦改質剤の少なくとも1つは、少なくとも10個の炭素原子を有する脂肪酸の亜鉛塩、ヒドロカルビル基中に少なくとも12個の炭素原子を含むヒドロカルビルイミダゾリン、およびホウ素含有エポキシドを含む群から選択される。摩擦改質剤の全量は、金属間摩擦係数が、ASTM G−77により110℃で測定して少なくとも約0.120となる量に限定される。
【0098】
上記の参考文献は、野菜油および水素化分解された基油(グループIII)の組合せを含む潤滑剤処方物を可能にすることを開示せず、したがって、このような処方物に関連する利点の教示も示唆もない。完全水素化分解されたグループIIIストックは、溶剤精製ステップなしで製造されるので、純度に関して言えば、何らかの溶媒処理を維持する「ハイブリッド」植物で生成したグループIIまたはIII基油よりはるかに優れている。実際、上記のストックは、鉱物ベース油で現在得られている最低レベルの不純物しか含有しておらず、これによって、顕著な性能の利点が得られる。
【0099】
完全水素化分解は、水素化分解、水素化異性化、および水素化精製の3ステップを含む。最初のステップである水素化分解では、硫黄、窒素の大部分が除去されるほか、基本的に非炭化水素不純物すべてが除去され、大部分の芳香族物質が水素添加により飽和される。環が開くと、残留する飽和種の分子再形成が生じ、パラフィン異性体の分布が新しくなる。これは、触媒によって促進された反応速度で熱力学的に進む。清浄な燃料は、このステップおよびその後のステップの副生物である。次のステップである水素化異性化では、n−パラフィン、およびワックス質の側鎖を有する他の分子が、はるかに低い流動点をもつ分枝状分子に異性化される。残留する芳香族物質の大部分は飽和され、残留する硫黄種および窒素種の大部分は除去される。最終ステップである水素化精製では、残留する非イソパラフィン不純物(硫黄種、窒素種、芳香族物質、およびオレフィン)がどれも、微量レベルまで除去される。
【0100】
完全水素化分解された合成物質は旧グループIII基油に分類されるが、合成方法により、これらを(化学的にかつ物理的に)改善し、構築して、グループIIIの範囲を性能で凌ぐことができることが知られている。
【0101】
別の文献:シェブロン・テキサコ・グローバル・ルブリカンツ(Chevron Texaco Global Lubricants)、2002年1月29日〜2月1日、シンガポールのシャングリラホテルで行われた第8回燃料&潤滑油アジア年次総会およびエキジビション(the 8th Annual Fuels & Lubes Asia Conference and Exhibition at the Shangri−La Hotel,Singapore)で、デイブ・クレイマー(Dave Kramer)によって発表された「基油供給/需要および本質問題(Base Oil Supply / Demand And Quality Issues)」では、別法が論じられ、「2007年までに、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)基油(FTBO)が、基油品質において次の大飛躍として出現するはずである。これらの油は、PAOより高いVIを有し、大部分の点でPAOおよび既存のグループIIIを凌ぐはずである。フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)プロジェクトは、環境保全および原油生産のインセンティブによって推進されているので、生成されたFTBOの生成量は、グループIIIおよびPAOの需要を大幅に超える可能性がある。クライン&カンパニー(Kline & Company)によると、FTBO供給は2015年までに10MM MT、または基油市場全体の約30%に増大すると推定される」と記載されている。
【0102】
(C)のこれらの油は、さらに本特許の参考文献および次の特許に述べられている:米国特許第5,990,055号、第5,863,872号、第5,736,493号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。
【0103】
(D)他の添加剤:
本発明で有用な抗酸化剤類としては、酪酸化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェンル−a−ナフチルアミン(PANA)が挙げられるが、これらに限定されず、抗酸化剤に関するさらなる情報は、次の特許に列挙され、説明されている:米国特許第5,536,493号、第5,863,872号、第5,990,055号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。
【0104】
腐食防止剤類、分散剤阻害剤類としては、先に列挙したもの、さらには下記のもの:界面活性有機酸、オキシ酸、ヒドロキシ酸、ケト酸、ホウ素含有アミン、パラフィン蝋、イマダゾリン誘導体、アルケニルコハク酸半エステル、有機ポリカルボン酸、パラフィン蝋、ノニルフェノキシ酢酸、フェネート、フェノール系およびアミン系アニトキシダント、n−オレイルサルコシン、リン、カルボン酸誘導体、ナフテン酸亜鉛、スルホン酸Ca類、スルホン酸Ba類、ジアルキルベンゼンスルホン酸Ca類、スルホン酸Mg類、ジアルカベゼンスルホン酸カルシウム、ナトリウムオキシデート、カルシウムオキシデート、バリウムオキシデート、脂肪酸アミン、硫化脂肪酸、亜硝酸アミン塩、亜硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、二クロム酸カルシウム、次亜リン酸カルシウム、セバシン酸ジナトリウム、スルホン酸ナトリウム類、メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、亜硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、コハク酸/スルホン酸のナトリウム塩、亜硝酸バリウム、臭素酸バリウム、ホウ酸モノエタノールアミン、ジメルカプト、チエジアポール、リン酸アミン、カリウム塩、水酸化カリウム、リン酸エステル、カルボン酸のアミン塩、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トール油イミダゾリン、オレイルイミダゾリン、野菜蝋、ジチオリン酸アルキル亜鉛、スクシンイミド、エステル、またはマンニッヒ(Mannich)分散剤などが挙げられるが、これらに限定されず、腐食防止剤および分散剤阻害剤に関するさらなる情報は、次の特許に列挙され、説明されている:米国特許第5,536,493号、第5,863,872号、第5,990,055号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。
【0105】
金属不活性化剤類としては、トルトリアゾール、トリトリアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、およびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。これらの金属不活性化剤などは、さらに本特許の参考文献および次の特許に述べられている:米国特許第5,990,055号、第5,863,872号、第5,736,493号、第6,774,091号。
【0106】
粘度調整剤類、流動点降下剤としては、エチレンビニルアセタートコポリマー、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメタクリラート、オレフィンコポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマーのエステル、水素化スチレン−ジエンコポリマー、スチレンイソプレン化合物、アルキル化ポリスチレン、水素化ラジアルポリイソプレン、ポリアクリル酸エステル、ヒュームドシリカ、天然ゴムのような食品用粘着付与剤などが単独または組み合わせて挙げられるが、これらに限定されない。これらの粘度調整剤および流動点降下剤などは、さらに本特許の参考文献および次の特許に述べられている:米国特許第5,990,055号、第5,863,872号、第5,736,493号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。
【0107】
磨耗防止剤類、摩擦改質剤類、極圧剤類としては、合成エステル、硫化合成エステル、合成エステルポリマー、リン系硫黄、脂肪亜リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホウ酸エステル、酸化ホウ素、スルホン酸カルシウム、スルホン酸ナトリウム、多硫化物、硫化脂肪、サルフェライズドオレフィン、サルフェライズド野菜油、アンチモン、亜鉛(ZDP)、銅、ポリテトラフルオロエチレン、モリブデン、およびグラファイト化合物が単独または組み合わせて挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤の一部は、酸化防止剤を含めて、多機能性添加剤として働き、例えばジチオリン酸亜鉛は、有機材料に添加されて、酸化を抑制する腐食防止剤、磨耗防止剤、および酸化防止剤として機能するという点で多機能性添加剤である。これらの添加剤などは、さらに本特許の参考文献および次の特許に述べられている:米国特許第5,990,055号、第5,863,872号、第5,736,493号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。
【0108】
乳化剤類(アニオン性および非イオン性が挙げられるが、これらに限定されない)を本発明に添加して、処方物の水との乳化または溶解性を改善することもできる。
【0109】
本発明は、本発明の潤滑性および機能性の流体組成物中で有効量の他の添加剤の使用も考慮する。このような添加剤としては、例えば灰生成型または無灰型の洗浄剤および分散剤、腐食防止剤、酸化防止剤、流動点降下剤、補助極圧剤および/または磨耗防止剤、色安定剤、ならびに消泡剤が挙げられる。
【0110】
分散剤・阻害剤を通常の洗浄剤および/または腐食防止剤と組み込む完全な添加剤パッケージは、分散液・阻害剤と共にまたはその代わりに既製品として購入することができる。ルブリゾール(Lubrizol)のLZ8955および/もしくはLZ9802、またはその組合せを互いと共に、かつ/または他の分散液・阻害剤と共に使用することができる。ルブリゾール(Lubrizol)によって製造された最新の添加剤パッケージとしては、ILSAC GF3/GF4のCore API SL LZ 20001、抗酸化剤ブースターLZ 8676、および摩擦改質剤ブースターLZ 8650が挙げられる。
【0111】
これらの添加剤などは、さらにルブリゾール(Lubrizol)のデータおよびMSDSシート、本特許の参考文献、および次の特許に述べられている:米国特許第5,990,055号、第5,863,872号、第5,736,493号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。
【0112】
成分(A)および(B)、または(A)、(B)、および(C)、または(A)、(B)、(C)、および(D)を含む本発明の組成物は、高温生分解性潤滑剤、食品用潤滑剤、およびエンジン油として有用である。
【0113】
組成物が成分(A)および(B)を含む場合について、これらの成分の範囲を重量部で以下に示す。
成分 第1の実施形態 第2の実施形態 第3の実施形態
(A) 5−99.9 65−99.9 95−99.998
(B) 0.002−50 0.002−35 0.002−5
【0114】
組成物が成分(A)、(B)、(C)、および(D)を含む場合について、これらの成分の範囲を重量部で以下に示す。
成分 第1の実施形態 第2の実施形態 第3の実施形態
(A) 5−90 40−80 60−90
(B) 0.002−80 0.002−35 0.002−5
(C) 20−80 10−20 1−10
(D) 0.001−80 0.001−40 0.001−20
【0115】
当然のことながら、本発明の濃縮物も生成することができる。濃縮物は、少量の(A)と多量の(B)、少量の(A)と多量の(B)、(C)、および(D)の組合せ、または少量の(A)、(C)、および(D)の組合せと多量の(B)を含む。
【0116】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する用語「少量」は、組成物が「少量」の特定の材料を含有する場合、その量が組成物の50重量パーセント未満であることを意味するものとする。
【0117】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する用語「多量」は、組成物が「多量」の特定の材料を含有する場合、その量が組成物の50重量パーセント超であることを意味するものとする。
【0118】
当然のことながら、(A)、(B)、(C)、および(D)に加えて、他の成分が、本発明の組成物内に存在してもよい。
【0119】
本発明の成分を、上記の範囲に従って一緒にブレンドして、溶液を得る。通常は、(B)、(C)、および(D)を(A)に添加するが、添加の順序は重要でない。
【0120】
いくつかの処方例を下記に示す。
【0121】
NP 343は、USDAによってバイオベースであると同定された、エクソン・モービル(Exxon Mobil)のポリオールエステルであり、Indopol H1500は、ブリティッシュ・ペトロリアム(British Petroleum)(BP)の食品用ポリブテンであり、PD23は、ウィトコ・コーポレーション(Witco Corporation)の食品用白色鉱物油であり、窒化ホウ素は、食品用である。
【0122】
処方#883 バイオ高温(HT)オーブンチェーンおよびケーブル潤滑剤
成分 粘度 重量%
NP343 19.30 73.00
NX5 窒化ホウ素 粉末 3.00
Indopol H1500 50,000.00 24.00
15.6℃における比重 0.952
40℃における粘度, cSt 174.16
【0123】
処方#883A バイオHT潤滑剤ISO 100(多機能用途向け)
成分 粘度 重量%
NP343 19.30 80.00
NX5 窒化ホウ素 粉末 3.00
Indopol H1500 50,000.00 17.00
40℃における粘度, cSt 96.35
【0124】
処方#883B バイオHTオーブンチェーン潤滑剤USDA H−2
成分 粘度 重量%
NP343 19.30 73.00
NX5 窒化ホウ素 粉末 3.00
Indopol H1500 50,000.00 19.00
PD 23 2.40 5.00
40℃における粘度, cSt 97.19
【0125】
処方#883C バイオHTグリース基油
成分 粘度 重量%
NP343 19.30 79.50
NX1窒化ホウ素 粉末 2.50
Indopol H1500 50,000.00 18.00
40℃における粘度, cSt 131.64
【0126】
処方#883D バイオHTオーブンチェーン潤滑剤USDA H−1
成分 粘度 重量%
高オレイン酸カノーラ 38.71 82.50
NX1窒化ホウ素 1.10 2.50
Indopol H1500 50,000.00 15.00
40℃における粘度, cSt 156.92
【0127】
本発明の別の態様は、酸化安定性の改善、排出揮発性物質の削減、および燃料節約を改善する摩擦低減によって、エンジンの潤滑を向上させる方法に関する。高温酸化安定性、堆積物および揮発性物質の削減、および摩擦低減を教示する参考特許としては、下記が挙げられる:米国特許第5,990,055号、第5,863,872号、第5,736,493号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。
【0128】
これらの特許は、2つ以上の酸化防止剤および/または耐摩耗性極圧剤の相乗作用の利用、ならびにこれらの成分を組み合わせて、酸化を低減し、摩擦係数を大幅に低下させることの利点も教示している。
【0129】
情報価値のある上記参考特許のほとんどが本出願人および/またはリニューアブル・ルブリカント(Renewable Lubricants,Inc.)によって所有されており、米国特許第6,774,091号(バルボリン(Valvoline))だけがアッシュランド(Ashland Inc.)によって所有されている。
【0130】
本出願人は、今回、窒化ホウ素をモリブデン化合物および/またはポリテトラフルオロエチレンと組み合わせて使用して、添加剤の1つを置き換えることができることを見い出した。
【0131】
本発明は、改善された高温エンジン潤滑剤組成物の調製方法であって、1)天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つのバイオベース天然油またはバイオベース合成油を準備するステップと、2)少なくとも1つの窒化ホウ素を準備するステップと、3)場合によっては、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI、グループII、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つの基油を準備するステップと、4)場合によっては、米国特許第5,990,055号、第5,863,872号、第5,736,493号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号、第6,620,772号、第6,624,124号、第6,383,992号、および米国特許仮出願第60/474,572号および第60/502,669号を含むリニューアブル・ルブリカント(Renewable Lubricants,Inc.)によって出願された米国特許仮出願で選択された、抗酸化剤類、腐食防止剤類、金属不活性化剤類、粘度調整剤類、磨耗防止剤類、摩擦改質剤類、および極圧剤類からなる群から選択された少なくとも1つの添加剤または添加剤の組合せを準備するステップと、5)1)、2)、3)、および4)を任意の順序でブレンドして、前記組成物を生成するステップとを含む方法を開示する。
【0132】
本発明を含む化学的構成要素の組合せにより、エンジンの可動部間の摩擦の低減がもたらされ、したがって運転中に、化学的構成要素の極めて優れた膜が金属表面上に形成されると推論される。
【0133】
界面活性成分は、エンジン内の高温および高圧下で該膜と反応し、その上に極温および極圧下でも極めて低い摩擦係数および磨耗性を有する極めて薄い潤滑層を連続的に形成し、エンジンの始動および運行段階中に優れた潤滑性をもたらす。
【0134】
−35℃でのミニローター粘度計(Mini Rotor Viscometer)による低温ポンプ吐出性を5Wとし、10.5〜10.7 cSt.(SAE 30)に処方したいくつかの処方例を下記に示す。
【0135】
乗用車モーター油 (PCMO) 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
グループIII 4.10 67.35
LZ7070D 1150.00 9.20
LZ20001 210.00 9.15
NP343 4.30 13.00
LZ6662 500.00 1.00
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
Molyvan855 55.00 0.15
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0136】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
PAO4 4.10 9.85
PAO6 5.80 61.20
LZ7070D 1150.00 6.50
LZ20001 210.00 9.15
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
NP343 4.30 13.00
Molyvan855 55.00 0.15
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0137】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
グループIII 4.10 66.70
LZ7070D 1150.00 9.20
LZ20001 210.00 9.15
NP343 4.30 13.00
LZ6662 500.00 1.00
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
Molyvan855 55.00 0.10
NX1窒化ホウ素 粉末 0.10
Teflon 8.00 0.10
【0138】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 LZ20001 Molyvan855
PAO4 LZ8676 NX1窒化ホウ素
PAO6 LZ8650 Teflon
LZ7070D NP343 粘度
4.10 55.00 9.15
5.80 粉末 0.50
1150.00 8.00 0.50
210.00 重量% 13.00
8.00 11.20 0.10
8.00 61.20 0.10
4.30 6.50 0.10
【0139】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
グループIII 4.10 67.50
LZ7070D 1150.00 9.20
LZ20001 210.00 9.15
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
NP343 4.30 13.00
LZ6662 500.00 1.00
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0140】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
PAO4 4.10 10.00
PAO6 5.80 61.20
LZ7070D 1150.00 6.50
LZ20001 210.00 9.15
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
NP343 4.30 13.00
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0141】
窒化ホウ素粒子添加剤は、処方前に基油担体および/またはバイオベース油に処方すると、よりよく分散することがある。例は、1部の窒化ホウ素を3〜10部のNP343に分散するものであるが、これに限定されない。
【0142】
乗用車モーター油 通常のモーター油をトップトリートするための濃縮添加剤処方(バイオベースブースターパッケージ(Bio−Booster Pak))
成分 粘度 重量%
NP343 4.30 66.85
LZ8676 8.00 59.00
LZ7070D 1150.00 9.00
LZ20001 210.00 9.15
LZ6662 500.00 1.00
LZ8650 8.00 3.00
Molyvan855 55.00 2.00
NX1窒化ホウ素 粉末 2.00
Teflon 8.00 2.00
【0143】
この濃縮添加剤は、8オンスボトルで4〜5クォートのモーター油を処理するよう処方される。Bio−Booster Pakがガソリンエンジンに添加されると、磨耗が低減し、燃料節約が改善され、これによって、油寿命を延ばし、エンジン寿命を延ばすことができる。該パッケージでは、極圧摩擦改質剤、および耐摩耗剤(ルーブリゾール(Lubrizol)がクランクケースのエンジン油用の摩擦改質剤補助物としているLZ8650)、および酸化防止剤(ルーブリゾール(Lubrizol)が新API SL/SMおよびILSAC GF3/GF4を満たすクランクケースのエンジン油用の酸化防止剤補助物としているLZ8676)のパーセントがさらに高くなっている。これらの添加剤の濃縮時のバランスは、濃縮物としてモーター油に添加したとき、規定の処理割合を超えないようになっている。エンジン添加剤パッケージLZ20001、流動点降下剤LZ6662、および粘度調整剤LZ7070Dは、完全に処方されたエンジン油中にすでに存在する添加剤のバランスを保ち、それを希釈しないように適切な百分率で添加される。Molyvan855、NX1窒化ホウ素、およびTeflonも、処方が完了したとき上記の処方のパーセントに適合するように増加させる。Bio−Booster Pakは12cSt.の粘度に処方されているので、この添加剤を約5%(5クォートに対して8オンス)でSAE20、SAE30、SAE40、またはSAE50の粘度に添加しても、処方物はSAEのエンジン油粘度仕様から外れない。
【0144】
上記に記載するのと同じ方法で、LZ20001を、ルーブリゾール・コーポレーション(Lubrizol Corporation)による市販のブースター添加剤LZ8790、LZ8791、およびLZ8791Zを含むLZ4998ディーゼルエンジン添加剤パッケージで置き換えることによって、高馬力ディーゼルモーター(HDMO)の仕様を満たすように、Bio−Booster Pakを処方することができる。Bio−Booster Pakは粘度の変更も可能であり、例えば古めの車両の場合、工場調合時の標準的な10.5cSt.の油をSAE等級の高い側の12cSt.に引き上げることによって利益となる。これは、ポリマーの増加、またはより高い粘度のバイオベース油の添加によって実現することができる。ポリマーは、LZ7070Dの代わりにLZ7075Fなど、より高いせん断安定性のポリマーを添加することによって改善することもできる。適切な手順に従えば、HDMO用のブースターパック、およびPCMO用のブースターパックも処方されることになる。
【0145】
変更形態
記載した特定の組成物、方法、または実施形態は、本明細書によって開示される本発明を例示するものにすぎない。これらの組成物、方法、または実施形態の変形は、本明細書の教示に基づいて当業者には明らかであり、したがって本明細書に開示する本発明の部分として包含されるものとする。
【0146】
上記の詳細な説明は、主に理解を明確にするために記載されたもので、そこから不必要な限定を解釈してはならない。というのは、この開示を読んだ当業者にとって変更は自明のことであり、添付の特許請求の範囲の本発明の趣旨および範囲から逸脱して行うことができる。したがって、本発明は、上記に記載する特定の例示によって限定されるものではない。むしろ、保護の対象は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある。
【0147】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載されている数値はできるだけ正確に報告されている。しかし、どの数値も、各試験測定で見られる標準偏差から必ず生じるいくつかの誤差を実質的に含む。
【0148】
本発明を、いくつかの実施形態を参照にして説明してきた。他者が本明細書を読み、理解すると、変更形態および変化形態を考えつくことは明らかである。本出願人は、このような変更形態および変化形態が、添付の特許請求の範囲またはその等価形態の範囲内にあるのであれば、すべて本発明に含めるものとする。
【0149】
このように本発明を説明したので、ここで特許請求を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】ファレックス・コーポレーションと共に開発した新しい試験装置による試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つのバイオベース油、および
少なくとも1つの窒化ホウ素
を特徴とする潤滑剤。
【請求項2】
さらに、潤滑剤が、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI石油系オイル、グループII石油系オイル、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つの基油を特徴とする請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項3】
さらに、潤滑剤が、
抗酸化剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、粘度調整剤、磨耗防止剤、摩擦改質剤、および極圧剤を含む群から選択された少なくとも1つの添加剤または添加剤の組合せ
を特徴とする請求項2に記載の潤滑剤。
【請求項4】
油が、次式を有するトリグリセリドであり、
【化1】

式中、R、R、およびRは、約7〜約23個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項5】
脂肪族ヒドロカルビル基が、脂肪族炭化水素基、置換脂肪族炭化水素基、およびヘテロ基を含む群から選択される請求項4に記載の潤滑剤。
【請求項6】
トリグリセリドが、約60%以上のオレイン酸プロファイルを有する請求項5に記載の潤滑剤。
【請求項7】
トリグリセリドが、約60%以上の単飽和性を有する請求項4に記載の潤滑剤。
【請求項8】
トリグリセリドが、約70%以上の単飽和性を有する請求項7に記載の潤滑剤。
【請求項9】
トリグリセリドが、約80%以上の単飽和性を有する請求項8に記載の潤滑剤。
【請求項10】
油が、潤滑剤の約5重量%〜約99.9重量%であり、窒化ホウ素が、潤滑剤の約0.002重量%〜約50重量%である請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項11】
油が、潤滑剤の約65重量%〜約99.9重量%であり、窒化ホウ素が、潤滑剤の約0.002重量%〜約35重量%である請求項10に記載の潤滑剤。
【請求項12】
油が、潤滑剤の約95重量%〜約99.998重量%であり、窒化ホウ素が、潤滑剤の約0.002重量%〜約5重量%である請求項11に記載の潤滑剤。
【請求項13】
バイオベース油が、潤滑剤の約5重量%〜約90重量%であり、窒化ホウ素が、潤滑剤の約0.002重量%〜約80重量%であり、基油が、潤滑剤の約20重量%〜約80重量%であり、添加剤が、潤滑剤の約0.001重量%〜約80重量%である請求項3に記載の潤滑剤。
【請求項14】
バイオベース油が、潤滑剤の約40重量%〜約80重量%であり、窒化ホウ素が、潤滑剤の約0.002重量%〜約35重量%であり、基油が、潤滑剤の約10重量%〜約20重量%であり、添加剤が、潤滑剤の約0.001重量%〜約40重量%である請求項13に記載の潤滑剤。
【請求項15】
バイオベース油が、潤滑剤の約60重量%〜約90重量%であり、窒化ホウ素が、潤滑剤の約0.002重量%〜約5重量%であり、基油が、潤滑剤の約1重量%〜約10重量%であり、添加剤が、潤滑剤の約0.001重量%〜約20重量%である請求項14に記載の潤滑剤。
【請求項16】
油が、潤滑剤の約50重量%以下であり、窒化ホウ素が、潤滑剤の約50重量%以上である請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項17】
バイオベース油が、潤滑剤の約50重量%以下であり、基油、窒化ホウ素、および添加剤は合わせて、潤滑剤の約50重量%以上である請求項3に記載の潤滑剤
【請求項18】
バイオベース油、窒化ホウ素、および添加剤は合わせて、潤滑剤の約50重量%以下であり、基油が、潤滑剤の約50重量%以上である請求項3に記載の潤滑剤。
【請求項19】
設備の潤滑を向上させる方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの窒化ホウ素を、天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つのバイオベース油とブレンドするステップと、
有効量の前記油および窒化ホウ素を前記設備に添加するステップ
を特徴とする方法。
【請求項20】
さらに、前記方法が、
前記設備に添加する前に、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI石油系オイル、グループII石油系オイル、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つの基油を、前記バイオベース油および窒化ホウ素とブレンドするステップ
を特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、前記方法が、
前記設備に添加する前に、抗酸化剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、粘度調整剤、磨耗防止剤、摩擦改質剤、および極圧剤を含む群から選択された少なくとも1つの添加剤または添加剤の組合せを、前記バイオベース油、前記基油、および前記窒化ホウ素とブレンドするステップ
を特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−539316(P2008−539316A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509082(P2008−509082)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/015820
【国際公開番号】WO2006/116502
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(507356257)リニューアブル リューブリカンツ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】