説明

窒化物半導体レーザ素子及びその製造方法

【課題】窒化物半導体レーザ素子の光の閉じ込めを制御しながら、連続駆動時の電流又は電圧劣化を防止することができる窒化物半導体レーザ素子とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板10と、基板10上に積層され、その表面にリッジ14を有する窒化物半導体層と、窒化物半導体層を被覆する第1保護膜15と、リッジ14上及び第1保護膜15上に形成された電極17とを備えた窒化物半導体レーザ素子であって、第1保護膜15は、窒化物半導体層の上面からリッジ14基底部及びリッジ14側面に渡って、窒化物半導体層とその一部又は全部が接触するように配置されており、少なくともリッジ14基底部において、第1保護膜15と電極17とで規定された空隙16を備える窒化物半導体レーザ素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体レーザ素子及びその製造方法に関し、より詳細には、リッジ導波路構造を有した窒化物半導体レーザ素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、InxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、0≦x+y≦1)の化合物半導体によって形成されており、これを用いた半導体レーザ素子は、次世代DVDなどの大容量・高密度の情報記録・再生が可能な光ディスクシステムへの利用、パーソナルコンピュータ等の電子機器への利用、光ネットワークへの利用など、種々の要求が高まりつつある。このため、レーザ素子構造に関して、横モードの好適な制御を可能にする構造、低消費電力化、高出力化、高信頼性、小型化、長寿命化などを図るための種々の構造が提案されている。
特に、リッジ導波路構造を用いるレーザ素子において、横モードの光閉じ込めを制御性及び再現性よく行い、水平横モードを安定化させるために、屈折率の低い保護膜をリッジ側面からその両側に至る埋込膜として用い、リッジ上面で電極と接触させる構造が検討されている。
例えば、リッジの両側に誘電体膜からなる埋込層を形成し、リッジ上面と接触し、かつリッジ側壁からリッジの両側の半導体層表面に埋込膜を介して配置された電極を形成した半導体レーザが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、リッジの側方に配置する電極に空隙部を導入することによって、水平横モードを安定化させる方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−111689号公報
【特許文献2】特開2007−109886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年のレーザ素子の小型化によって、リッジ幅が縮小しており、リッジ上面のみで電極と接触させる場合には、電極の半導体層への密着性が低減し、連続駆動時に電圧劣化が起こりやすいという問題があった。
また、リッジ上面と接触する電極を、埋込膜を介してリッジの両側の窒化物半導体層の表面に配置する場合には、電極材料によって、半導体層に負荷する応力が大きくなり、連続駆動時に電流劣化しやすく、また、リッジ側面に形成される電極の膜質によっては、光吸収が増加するという問題があった。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、窒化物半導体レーザ素子の光の閉じ込めを制御しながら、連続駆動時の電流又は電圧劣化を防止することができる窒化物半導体レーザ素子とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、
基板と、
該基板上に積層され、その表面にリッジを有する窒化物半導体層と、
該窒化物半導体層を被覆する第1保護膜と、
リッジ上及び第1保護膜上に形成された電極とを備えた窒化物半導体レーザ素子であって、
前記第1保護膜は、前記窒化物半導体層の上面からリッジ基底部及びリッジ側面に渡って、前記窒化物半導体層とその一部又は全部が接触して配置されており、
少なくとも前記リッジ基底部において、該第1保護膜と電極とで規定された空隙を備えることを特徴とする。
【0006】
このような窒化物半導体レーザ素子では、以下の1以上の要件を備えることが好ましい。
(1)前記空隙は、前記リッジの基底部から前記リッジ側面にわたって配置されている、
(2)前記第1保護膜は、前記リッジの側面の一部を露出しており、かつ前記空隙は、前記リッジ基底部から前記リッジ側面に及んで、前記リッジ側面と接触している、
(3)前記第1保護膜は、窒化物半導体層よりも屈折率が小さい、
(4)前記空隙は、前記リッジ延長方向において該リッジに略平行して配置されている、
(5)前記第1保護膜と前記リッジとの間に、第2の空隙が配置されてなる。
【0007】
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、
(a)基板上に、窒化物半導体層を積層し、
(b)該窒化物半導体層上にマスクパターンを形成して、該マスクパターンを利用してリッジを形成し、
(c)前記リッジの両側面、前記マスクパターン上及びリッジ形成後に露出している窒化物半導体層上に第1保護膜を形成し、
(d)少なくとも前記マスクパターン及び該マスクパターン上に存在する第1保護膜を除去し、
(e)前記リッジを含む窒化物半導体層及び第1保護膜上に、組成の異なる2以上の多層膜からなる導電層を積層するとともに、少なくとも最表面の導電層の前記リッジの基底部から肩部に相当する部位に、部分的にギャップを導入し、
(f)前記ギャップを介して導電層の一部を除去して、少なくとも前記リッジ基底部において前記第1保護膜と導電層とで規定された空隙を形成することを含むことを特徴とする。
【0008】
このような窒化物半導体レーザ素子の製造方法では、以下の1以上の要件を備えることが好ましい。
(1)前記導電層を、第1導電層と、その上に配置する該第1導電層とエッチング速度の異なる第2導電層とによって形成する、
(2)前記導電層を、前記第1導電層の下にさらに、該第1及び第2導電層とエッチング速度の異なる第3導電層を積層することによって形成し、工程(f)の後に、前記リッジの上面、側面及び該リッジ両側の窒化物半導体層の一部表面上にマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて第3導電層の一部を除去する工程を含む、
(3)前記導電層を、前記第1導電層の下にさらに、該第1及び第2導電層とエッチング速度の異なる第3導電層を積層することによって形成し、工程(f)において、第1導電層の一部を除去して空隙を形成し、さらに、工程(f)の後に、前記リッジの上面、側面及び該リッジ両側の窒化物半導体層の一部表面上にマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて第1導電層及び第3導電層の一部を除去する工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の窒化物半導体レーザ素子によれば、光の閉じ込めを制御しながら、連続駆動時の電流又は電圧劣化を防止し、高効率及び高信頼性の窒化物半導体レーザ素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明の窒化物半導体レーザ素子の構造を説明するための概略断面図である。
【図1B】本発明の別の窒化物半導体レーザ素子の構造を説明するための概略断面図である。
【図2A】本発明の窒化物半導体レーザ素子における空隙の変形例を説明するための要部の概略拡大断面図(a)〜(e)である。
【図2B】本発明の窒化物半導体レーザ素子における空隙の変形例を説明するための要部の概略拡大断面図(f)〜(i)である。
【図3】本発明の窒化物半導体レーザ素子における空隙の変形例を説明するための要部の概略拡大断面図(a)〜(e)である。
【図4A】本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法を説明するための概略断面工程図である。
【図4B】本発明の窒化物半導体レーザ素子の別の製造方法を説明するための概略断面工程図である。
【図5】本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法を説明するための要部の概略断面図(a)、(b)である。
【図6】本発明の窒化物半導体レーザ素子の別の製造方法を説明するための概略断面工程図である。
【図7】本発明の窒化物半導体レーザ素子の別の製造方法を説明するための概略断面工程図である。
【図8】本発明の窒化物半導体レーザ素子の構造を説明するための別の概略断面図である。
【図9】本発明の窒化物半導体レーザ素子の構造を説明するための別の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、主として、基板、窒化物半導体層、第1保護膜及び電極を含んで構成される。
例えば、図1Aに示したように、第1主面と第2主面とを有する基板10の第1主面上に、窒化物半導体層として、n側半導体層11、活性層12、p側半導体層13がこの順に形成されている。なお、n側及びp側半導体層は、逆に配置されていてもよい。窒化物半導体の表面にはリッジ14が形成されている。このリッジ14の延長方向に対して略直交する方向の端面には、共振面が形成されている。
【0012】
リッジ14の両側面、リッジ14基底部から、窒化物半導体層であるp側半導体層13の上面には、第1保護膜15が形成されている。ここでリッジ基底部とは、リッジ14の側面を含まず、窒化物半導体上面のリッジの外周部分を指す。つまり、第1保護膜15は、窒化物半導体層上面から、リッジ基底部、リッジ側面に渡って、窒化物半導体層と接触するように配置されている。なお、第1保護膜15は、窒化物半導体層上面からリッジ基底部、リッジ側面の少なくとも一部において、好ましくは全てにおいて、窒化物半導体層と接触している。
リッジ14の上面から、両側面、リッジ14の基底部、さらにp側半導体層13の上面には、電極7が形成されている。この電極7は、リッジ14上面において窒化物半導体層と接触しており、リッジ側面、基底部及びp側半導体層13上面においては、第1保護膜15を介して配置されている。ただし、少なくともリッジ基底部には、第1保護膜15と電極7とで規定された空隙16を備える。よって、リッジ基底部では、電極7は、第1保護膜15と空隙16とを介して、窒化物半導体上に配置されていることになる。この電極7及び上には、通常、p側パッド電極20が形成されている。
【0013】
窒化物半導体層の側面及びn側半導体層11の露出表面には、第2保護膜19が形成されている。
さらに、n側電極21が、電極7が配置されている基板10の第1主面側と異なる側に形成されている。
なお、図9に示したように、n側半導体層11の露出表面にn側電極21が形成されていてもよい。
【0014】
(空隙16等)
空隙は、その断面形状が、図2A(a)、(b)及び(e)に示すように、少なくとも、第1保護膜15、25上のリッジ14基底部上にあればよい。従って、空隙16、26は、少なくともリッジ14基底部においては、第1保護膜15、25と電極(7、17及び18、27及び28)とで規定されている。言い換えると、リッジ基底部においては、実質的には、下から順に窒化物半導体層、第1保護膜、空隙及び電極の順に配置されている。なお、後述するように、下から順に窒化物半導体層、第1保護膜、電極、空隙及び電極の順に配置されている領域が一部に存在してもよい。
このように、リッジ14の基底部においては、少なくとも第1保護膜15、25を介して、空隙が配置されることにより、その上に配置される電極によるレーザ光吸収を低減させることができる。特に、リッジ側面に成膜された膜質の悪い電極を実質的に除去することにより、電極によるレーザ光吸収をさらに低減させることができる。しかも、第1保護膜と空隙との配置により、適切に光を閉じ込めることができる。
【0015】
空隙16、26の大きさ及び形状は、特に限定されることなく、少なくともリッジ14基底部に配置するように適宜調整することができる。これによって、第1保護膜とリッジ、電極と第1保護膜などの界面にかかる応力を緩和することが可能となる。その結果、このような応力を効果的に抑制することができ、さらなる寿命特性の向上を図ることができる。
ただし、空隙は、少なくともリッジ基底部における第1保護膜の上に配置されていれば、電極の上に位置していてもよい。つまり、上述したように窒化物半導体層と、第1保護膜と、電極とを備えた窒化物半導体レーザ素子であって、第1保護膜は、窒化物半導体層の上面からリッジ基底部及びリッジ側面に渡って、窒化物半導体層とその一部又は全部が接触して配置されており、かつ、少なくともリッジ基底部において、電極によって規定された空隙を備えていてもよい。
【0016】
例えば、後述するように電極が積層構造で形成されている場合、空隙の形成方法における条件等により、リッジ基底部における第1保護膜上に成膜された電極材料のうち、第1保護膜に近い側の電極材料が残存し、第1保護膜に遠い側の電極材料が除去された場合など、リッジ基底部の第1保護膜上に、極薄膜の状態で電極が配置された状態となることがある。このような極薄膜の状態の電極は、たとえ第1保護膜上の全体にわたって又は一部において残存し、空隙の下に配置していても、発光層から出射されるレーザ光を吸収することなく、窒化物半導体層への電極による応力を与えることもなく、光閉じ込めに影響することもない。よって、このような形態の空隙の配置は、本発明においては許容される。また、電子顕微鏡観察等の視覚において薄膜状の電極が配置していない場合であっても、STEM等の元素分析等によっては、電極材料が測定される場合があるが、このような状態での空隙の配置も、同様に許容される。
【0017】
例えば、第1保護膜15上のリッジ14基底部における空隙の大きさは、特に限定されるものではないが、具体的には、空隙の幅(図2A(a)中、X)は、150nm程度〜3000nm程度が挙げられ、150nm程度〜1500nm程度が好ましく、300nm程度〜500nm程度がより好ましい。空隙16の厚み(図2A(a)中、H)は、特に限定されることなく、電極7の厚み、空隙16の形成方法等によって適宜調整することができる。
【0018】
また、図2A(c)及び図2B(f)に示すように、空隙16a、26aは、リッジ14基底部からリッジ14の側面の一部に配置されていてもよい。この場合、空隙は、リッジ側面において第1保護膜15を介して配置していてもよい。また、図2A(d)及び図2B(g)に示すように、空隙16b、26bは、リッジ14基底部からリッジ14側面の全面に及んで配置されていてもよい。この場合、空隙は、リッジ側面において第1保護膜15を介して配置していてもよいし、第1保護膜15を介することなく、上側面おいてリッジ側面と直接接触して配置されていてもよい。リッジ14の側面における空隙の高さは特に限定されるものではなく、リッジ高さから第1保護膜の膜厚を引いた高さと同等以下であればよい。また、これらの空隙は、リッジ14の基底部から側面まで繋がっていることが好ましい。
【0019】
なお、後述するように、第1保護膜がリッジの側面(例えば、上側面)の一部を露出して形成されている場合には、図2B(g)に示すように、空隙26bは、リッジ14基底部からリッジ14側面に及び、リッジ14の上側面で窒化物半導体層と接触していてもよい。つまり、リッジ14の上側面に隣接して配置していてもよい。
【0020】
空隙26b(又は16b)は、リッジ14の上面に及んでいてもよいが、リッジ14と電極27等との接触面積の低減及び密着性等を考慮すると、リッジ上面に及んでいないことが好ましい。
ここで、空隙26bのリッジ14側面との接触高さ(図2B(g)中、Z)は、例えば、リッジ14高さの10%程度〜70%程度が挙げられ、20%程度〜40%程度が好ましい。具体的には、リッジ高さが500nm程度の場合、空隙の接触高さは、50nm〜350nm程度が挙げられ、100nm〜200nm程度が好ましい。特にこの高さが高いことにより、空隙の大きさの制御が容易となり、光閉じ込めの制御を効果的に行うことができる。
【0021】
さらに、図3(a)に示すように、後述する電極(37及び38)の一部が、リッジ14の側面近傍(例えば、上側面近傍)でギャップBを有していてもよい。この場合、空隙36は、ギャップBにまで及んで広がることとなる。なお、図3(a)においては、第1保護膜25は、リッジ14の側面を露出しているが、リッジ14の全側面を被覆していてもよい。
【0022】
また、図3(b)に示すように、第1保護膜45がリッジ14側面の上端において一部接しておらず、その形状が変形していることにより、第1保護膜45のリッジ14側面における上端部が、電極(47及び48)と一部接触し、これによって、空隙46が、リッジ14の側面から窒化物半導体層上までの間において電極48によって分断されていてもよい。
図3(c)に示すように、第1保護膜55のリッジ14側面における形状が上記と同様に変形しており、電極(57及び58)の一部が、リッジ14の側面近傍でギャップを有しているために、空隙56の一部が幅狭になり、その一部がギャップにまで及んで広がっていてもよい。
【0023】
これらの空隙は、図示していないが、共振器方向と略平行な方向に延びた形状であることが好ましい。例えば、共振器方向に、1つの連なった空隙であってもよいし、複数の空隙に分割されて存在していてもよい。このような空隙の配置により、上述したように、その上に配置される電極によるレーザ光吸収を、リッジの延長方向にわたって低減させることが可能となる。ただし、共振器方向の全てにおいて配置していなくてもよく、その一部にのみ配置されていればよく、リッジの延長方向において部分的に空隙が存在しない部位が存在してもよい。つまり、図3(d)に示すように、第1保護膜15がリッジ14の側面の略全面を被覆し、その上に電極(67及び18)が連続して密着し、空隙が形成されないか、図3(e)に示すように、リッジ14の側面を第1保護膜25が被覆しないが、その上に配置される電極(77及び28)がリッジ14の露出面及び第1保護膜25の上に密着し、空隙が形成されない部位が、リッジの延長方向の一部に存在していてもよい。
【0024】
空隙は、上述した図2A(a)〜図2B(i)及び図3(a)〜図3(c)のような形態が、リッジの延長方向において混在していてもよい。この場合、これらの空隙は、例えば、リッジ14の延長方向において、50%程度以上配置していることが適しており、80%程度以上が好ましく、実質的に略全共振器方向に配置しているのがより好ましい。
【0025】
共振器端面側における空隙の端部は、保護膜等で塞がれるか、埋め込まれていてもよいし、開放状態であってもよい。従って、空隙は必ずしも全ての領域において上述した幅及び高さを有していなくてもよい。また、空隙は、電極とリッジとの間、第1保護膜と電極との間の完全な空間でなくてもよく、上述した応力緩和、光閉じ込め等の種々の効果に悪影響を及ぼさない限り、第1保護膜、窒化物半導体層、マスクとして用いた材料等の膜残り等が存在していてもよい。
【0026】
このように空隙を配置することにより、その部位に本来存在する電極等によるレーザ光による光吸収を低減させることができる。また、適所における空隙とリッジ(窒化物半導体)との屈折率差により、リッジ内に効率的に光を閉じ込めにも有効に働く。例えば、空隙がエアギャップであった場合、空気は、屈折率が最小(1.0)であるため、リッジの側面に空隙が存在しない(リッジと保護膜の屈折率差により光を閉じ込める)場合と比較して、リッジ内外の屈折率差が大きくなり、リッジ内への光閉じ込めを強くすることができる。しかも、空隙を有することにより、例えば、熱に対して屈折率が変動しやすい材料を第1保護膜に採用したとしても屈折率の変化の影響を受けにくくなるため、安定して横方向の光を閉じ込めることができる。これにより、閾値を低下させることができ、投入電力の低下及び寿命特性の向上を達成することができる。
【0027】
また、空隙によって、リッジ側面と電極との密着に起因する応力をリッジ又は窒化物半導体層に対して低減することができるために、特に連続駆動時の電流劣化を低減させることが可能となる。
さらに、電極は、リッジ上面のみならず、第1保護膜上にまで及んで配置されるために、第1保護膜が接触している部位では、リッジとの密着性を確保することができ、特に連続駆動時の電圧劣化を低減させることができる。
また、リッジ側面には安定材料による第1保護膜が配置されていることから、リッジ側面の窒化物半導体層の酸化等の変質のおそれが少なく、動作時の特性の安定性を図ることができる。
さらに、発光部からの熱の影響により、空隙に熱がこもるおそれがあるが、発光部から空隙が離れているため、熱の影響を受けにくい。また、空隙が電極と接しているため、リッジ近傍で生じる熱を、電極を介して効率的に放熱することができる。
【0028】
(窒化物半導体層11、12及び13)
窒化物半導体層としては、一般式InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の半導体層を用いることができる。また、これに加えて、III族元素としてBが一部に置換されたものを用いてもよいし、V族元素としてNの一部をP、Asで置換されたものを用いてもよい。n側半導体層は、n型不純物として、Si、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr、CdなどのIV族元素又はVI族元素等のいずれか1つ以上を含有している。また、p側半導体層は、p型不純物として、Mg、Zn、Be、Mn、Ca、Sr等を含有している。不純物は、例えば、5×1016/cm3〜1×1021/cm3程度の濃度範囲で含有されていることが好ましい。
【0029】
窒化物半導体層は、n側半導体層とp側半導体層とに光導波路を構成する光ガイド層を有することで、活性層を挟んだ分離光閉じ込め型構造であるSCH(Separate Confinement Heterostructure)構造とすることが好ましい。但し、本発明は、これらの構造に限定されるものではない。
活性層は、多重量子井戸構造又は単一量子井戸構造のいずれでもよい。活性層は、後述する第1保護膜よりバンドギャップエネルギーが小さいものであることが好ましい。端面のバンドギャップエネルギーを広げ、言い換えると、共振器面付近の不純物準位を広げ、ウィンドウ構造を形成することにより、CODレベルをより向上させることができる。
【0030】
窒化物半導体層、例えば、p側半導体層の表面に形成されたリッジは、導波路領域として機能する。リッジの幅は1.0μm〜50.0μm程度である。さらに、ビーム形状をシングルモードとする場合にはリッジの幅は1.0μm〜3.0μm程度が好ましい。リッジ高さは、p側半導体層を構成する層の膜厚、材料等によって適宜調整することができ、例えば、0.1〜2μmが挙げられる。なお、リッジは、共振器方向の長さが100μm〜2000μm程度になるように設定することが好ましい。リッジは、共振器方向においてすべて同じ幅でなくてもよいし、その側面が垂直であっても、テーパー状であってもよい。この場合のテーパー角は60〜90°程度が適当である。
【0031】
窒化物半導体層には、例えば、リッジが延びる方向に、共振器が形成されており、その方向に直交して、一対の共振器面が形成されている。共振器面は、例えば、M軸、A軸、C軸及びR軸配向が挙げられ、つまり、M面(1−100)、A面(11−20)、C面(0001)又はR面(1−102)からなる群から選ばれる面であることが好ましい。ここでの共振器面とは、通常、光導波路領域又はNFPに対応する領域を含む領域を意味するが、光導波路領域又はNFPに対応する以外の領域を含んでいてもよい。
【0032】
(基板10)
本発明の窒化物半導体レーザ素子における基板は、絶縁性基板であってもよいし、導電性基板であってもよい。絶縁性基板の場合には、窒化物半導体層の一部が厚さ方向に除去されてn側半導体層を露出し、その露出面に接触するように後述するn電極を配置することができる(図9参照)。導電性基板の場合には、窒化物半導体層が形成された面と反対側の面に接触するようにn電極を配置することができる(図1A、図1B及び図8参照)。
特に、基板は、例えば、第1主面及び/又は第2主面に、0°〜10°程度のオフ角を有する窒化物半導体基板であることが好ましい。その膜厚は、例えば、50μm〜1mm程度が挙げられる。
【0033】
(第1保護膜15等)
本発明の窒化物半導体レーザ素子では、上述したように、窒化物半導体層の表面及びリッジの側面にわたって、第1保護膜15が形成されている。つまり、第1保護膜15は、少なくとも、電極がリッジと直接接触して電気的接続を取る領域における窒化物半導体層上面を露出して、窒化物半導体層の表面に形成されている(図1A、図1B、図2A(a)〜(d)参照)。また、第1保護膜15は、リッジ14の上面に加えて、側面の一部(例えば、上側面)を露出するように形成されていてもよい(図2A(e)、図2B(g)及び図3(a)〜(c)参照)。さらに、第1保護膜15は、リッジ基底部及びリッジ側面の全部と接触していなくてもよい(この非接触の部位を第2の空隙と称することがある。図2B(h)の16aa、図2B(i)の26bb参照)。なお、第1保護膜が窒化物半導体層と接触している部位では、両者は良好に密着している。また、リッジ14の側面に配置された第1保護膜15は、リッジ14両側の窒化物半導体層表面に配置された第1保護膜の膜厚よりも薄膜状に形成されていることが好ましい。
【0034】
第2の空隙は、公知のドライ又はウェットエッチングにより形成することができる。第2の空隙を形成することにより、第1保護膜とリッジとの界面にかかる応力を効果的に抑制することができ、さらなる寿命特性の向上を図ることができる。加えて、この第2の空隙により、光閉じ込めを安定化させることができる。
なお、この第2の空隙の大きさは特に限定されるものではなく、上述した光閉じ込めに有効に作用し、応力緩和に寄与し得る程度であればよく、上述した空隙と同様の大きさにしてもよいし、それよりも幅及び/又は高さ及び/又は容積を小さくしてもよい。
【0035】
第1保護膜は、通常、窒化物半導体層よりも屈折率が小さな絶縁材料によって形成されている。屈折率は、エリプソメトリーを利用した分光エリプソメータ、具体的には、J.A.WOOLLAM社製のHS−190等を用いて測定することができる。例えば、第1保護膜は、Zr、Si、V、Nb、Hf、Ta、Al、Ce、In、Sb、Zn等の酸化物、窒化物、酸化窒化物等の絶縁膜又は誘電体膜の単層又は積層構造が挙げられる。なお、第1保護膜の膜質を制御することにより、上述した部位に容易に形成又は加工配置することができる。よって、第1保護膜は、単結晶、多結晶アモルファス、あるいは、部分的にこれらの結晶状態の膜とすることが好ましい。
【0036】
このように、リッジの下側面から、リッジの両側の窒化物半導体表面にわたって第1保護膜が形成されていることにより、窒化物半導体層、特にp側半導体層に対する屈折率差を確保して、活性層からの光の漏れを制御することができ、リッジ内に効率的に光閉じ込めができるとともに、リッジの両側における絶縁性をより確保することができ、リーク電流の発生を回避することができる。
【0037】
第1保護膜の膜厚は特に限定されるものではないが、その部位によって、例えば、10〜2000nm程度の範囲内、さらに10〜500nmの範囲内とすることが適当である。第1保護膜の膜厚を厚くすることにより、より容量を低減させることができる。なお、第1保護膜は、リッジ側面以外の領域においては、均一な膜厚であることが好ましい。これにより、容量の制御がより容易となる。
【0038】
(電極7、17及び18等)
リッジの上面には電極7、17及び18等が形成されている。この電極は、リッジ14の上面と接触して電気的に接続され、リッジ14の側面においては第1保護膜15を介して又は一部介さないで、かつ一部空隙16等を介して、リッジ14の側面及び窒化物半導体層13の表面を被覆している。ただし、この電極は、リッジの延長方向の全てにわたってこのような構成を有していなくてもよい。つまり、リッジの延長方向の一部において、リッジ側面を被覆していなくても(分断されていても)よく、リッジ側面の全面に渡って第1保護膜を介して配置されていてもよく、リッジ側面に直接接触して配置していてもよく、第1保護膜との間に空隙を有さなくてもよい。このように、電極が、リッジ側面まで、あるいはリッジの両側の窒化物半導体層上にまで配置されていることにより、リッジ側面に形成された第1保護膜について有効に剥がれを防止することができる。
【0039】
ここでの電極は、少なくとも、窒化物半導体層といわゆるオーミックコンタクトを取る目的で形成される電極を指し、この電極は、単層であってもよい(例えば、図1A中、7)が、2層以上の積層構造(例えば、図1B中、17及び18)であることが好ましく、3層以上の積層構造(例えば、図4A(f)中、40、41及び43)であることがより好ましい。この場合の積層構造の電極は、全ての層が同一の平面形状をしていなくてもよく、積層構造のうちの1層以上が他の層と異なる平面形状であってもよい。
【0040】
なお、電極は、上述したように単層であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよいが、そのうちの一部の層が明確な層構造を採っていなくてもよい。例えば、2層の導電層を成膜して電極を形成したが、その後の熱処理等によって導電層が合金化、偏在化、変形等して、薄膜状又は島状等に変化していてもよい。
従って、リッジ14基底部において、電極が第1保護膜とともに空隙を規定する場合には、第1保護膜と、第1保護膜上に島状等に配置する電極と、第1保護膜上に空隙を介して存在する電極等とによって、空隙が規定されることとなる。言い換えると、リッジ基底部においては、部分的に、窒化物半導体層、第1保護膜、電極、空隙及び電極の順に配置されて部位が存在してもよい。
なお、上述したように、空隙が、少なくともリッジ基底部において、電極によって規定されている場合、リッジ基底部における第1保護膜上に極薄膜の状態で電極が配置される場合の極薄膜とは、上述したように、光吸収、窒化物半導体層への応力付与、光閉じ込め等に影響しない程度の厚みである。具体的には、後述する電極材料において、50nm程度以下であることが適している。
また、この電極上にパッド電極等が形成されていてもよい。
【0041】
電極は、例えば、パラジウム、白金、ニッケル、金、チタン、タングステン、銅、銀、亜鉛、錫、インジウム、アルミニウム、イリジウム、ロジウム、ITO等の金属又は合金の単層膜又は積層膜により形成することができる。p電極としては、特に、Ni−Au(例えば、10nm−200nm厚等)、Ni−Au−Pt(例えば、10nm−100nm−100nm厚等)、Pd−Pt、Ni−Ptの電極材料等が挙げられる。電極の膜厚は、用いる材料等により適宜調整することができ、例えば、50〜500nm程度が適当である。
【0042】
(その他の構成)
第1保護膜15上の一部領域には第2保護膜19が形成されていることが好ましい。第2保護膜19は、窒化物半導体層11、12及び13の側面及び/又は基板10の表面又は側面等をさらに被覆していることが好ましい。第2保護膜19は、Si、Mg、Al、Hf、Nb、Zr、Sc、Ta、Ga、Zn、Y、B、Ti等の酸化物が挙げられ、なかでもAl又はSiO膜が好ましい。第2保護膜19は、第1保護膜15と同様の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。これにより、絶縁性のみならず、露出した窒化物半導体層の側面又は表面等を確実に保護することができる。第2保護膜19は、単層構造及び積層構造のいずれでもよい。具体的には、Siの酸化物の単層、Alの酸化物の単層、Siの酸化物とAlの酸化物の積層構造等が挙げられる。このような膜が形成されていることにより、第1保護膜をより強固に共振器面に密着させることができる。その結果、安定な動作を確保することができ、CODレベルを向上させることができる。
【0043】
第2保護膜19の膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば、100〜1000nm程度が適当である。さらに好ましくは、第1保護膜と同一材料であることが好ましい。これにより、第1保護膜及び第2保護膜の熱膨張係数が一致するため第1保護膜及び第2保護膜にクラックが発生することを抑制することができる。
【0044】
(窒化物半導体レーサ素子の製造方法)
本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(a)窒化物半導体層の形成
まず、基板として、例えば、第1主面及び第2主面に0〜10°程度のオフ角を有する窒化物半導体基板を準備する。
窒化物半導体基板は、MOCVD法(有機金属化学気相成長法)、MOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE法(ハイドライド気相成長法)、MBE法(分子線エピタキシー法)等の気相成長法、超臨界流体中で結晶育成させる水熱合成法、高圧法、フラックス法、溶融法等により形成することができる。また、例えば、特開2006−24703号公報に例示されている種々の基板等の公知の基板、市販の基板等を用いてもよい。
【0045】
この窒化物半導体基板の第1主面上に、窒化物半導体層を成長させる。
窒化物半導体層は、n側半導体層、活性層、p側半導体層を、この順に又は逆の順序で形成することが好ましい。
窒化物半導体層の成長方法は、特に限定されないが、MOCVD、MOVPE、HVPE、MBEなど、窒化物半導体の成長方法として知られている全ての方法を好適に用いることができる。特に、MOCVDは結晶性良く成長させることができるので好ましい。具体的には、MOCVD法等により、減圧〜大気圧の条件で成長させる方法が挙げられる。
【0046】
n側半導体層は、多層膜で形成することが好ましい。例えば、第1のn側半導体層としてはAlxGa1-xN(0≦x≦0.5)、好ましくはAlxGa1-xN(0<x≦0.3)である。具体的な成長条件としては、反応炉内での成長温度を1000℃以上、圧力を600Torr以下が挙げられる。また、第1のn側半導体層はクラッド層として機能させることができる。膜厚は0.5〜5μm程度が適当である。
第2のn側半導体層は、光ガイド層として機能させることができ、AlxGa1-xN(0≦x≦0.3)によって形成することができる。膜厚は0.5〜5μmが適当である。
【0047】
活性層は、少なくともInを含有している一般式InxAlyGa1-x-yN(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)を有することが好ましい。Al含有量を高くすることで紫外域の発光が可能となる。また、長波長側の発光も可能であり360nm〜580nmまでが発光可能となる。活性層を量子井戸構造で形成することにより、発光効率を向上させることができる。
【0048】
活性層上にp側半導体層を積層する。第1のp側半導体層としてはp型不純物を含有したAlxGa1-xN(0≦x≦0.5)が挙げられる。
第1のp側半導体層はp側電子閉じ込め層として機能する。
第2のp側半導体層は、AlxGa1-xN(0≦x≦0.3)、第3のp側半導体層は、p型不純物を含有したAlxGa1-xN(0≦x≦0.5)で形成することができる。第3のp側半導体層はGaNとAlGaNとからなる超格子構造であることが好ましく、クラッド層として機能する。
第4のp側半導体層は、p型不純物を含有したAlxGa1-xN(0≦x≦1)で形成することができる。これらの半導体層にInを混晶させてもよい。なお、第1のp側半導体層、第2のp側半導体層は省略可能である。各層の膜厚は、3nm〜5μm程度が適当である。
【0049】
なお、n側半導体層、p側半導体層は、単一膜構造、多層膜構造又は組成比が互いに異なる2層からなる超格子構造としてもよい。また、多層膜構造又は超格子構造の場合は、n側半導体層及びp側半導体層の全ての層が、必ずしも、n型不純物及びp型不純物を含有していなくてもよい。
【0050】
任意に、窒化物半導体層をエッチングして、n側半導体層(例えば、第1のn側半導体層等)を露出させてもよい。露出は、例えば、RIE(反応性イオンエッチング)法により、Cl2、CCl4、BCl3、SiCl4ガス等の塩素系ガスを用いて行うことができる。これによって、応力を緩和させることができる。上述したn側半導体層の露出の際に、エッチングによって、共振器面を同時に形成してもよい。ただし、共振器面の形成は、劈開によって、これとは別工程で行ってもよい。
その後の任意の段階で、反応容器内において、得られた基板を窒素雰囲気中、700℃程度以上の温度でアニールして、p側半導体層を低抵抗化することが好ましい。
【0051】
(b)リッジの形成
窒化物半導体層上にリッジ形状に対応するマスクパターンを形成し、このマスクパターンを利用して、リッジを形成する。
マスクパターンは、例えば、SiO2等の酸化膜、SiN等の窒化物を用いて、フォトリソグラフィ及びエッチング工程等の公知の方法を利用して、任意の形状に形成することができる。マスクパターンの膜厚は、リッジが形成された後に、リッジ上に残存するマスクパターンが、後の工程でリフトオフ法により除去することができるような膜厚となることが適当である。例えば、0.1〜5.0μm程度が挙げられる。例えば、マスクパターンは、CVD装置等を用いて形成することが好ましい。また、RIE法等を用いてマスクパターンを任意の形状にエッチングすることが好ましい。エッチングは、RIE法を用い、上述した塩素系ガスを用いることが適している。
【0052】
その後、マスクパターンを利用して、窒化物半導体層表面をエッチングすることによりリッジを形成する。エッチングは、RIE法を用い、例えば、上述した塩素系のガスを用いることが適している。エッチングの際の基板温度は、特に限定されないが、低温(例えば、60〜200℃程度)とすることが好ましい。
【0053】
(c)第1保護膜の形成
リッジを含む窒化物半導体層上に第1保護膜を形成する。この場合、上述したリッジの形成の際に用いたマスクパターンをそのまま存在させた状態で、窒化物半導体層上に第1保護膜を形成することが好ましい。
【0054】
第1保護膜は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法又はこれらの方法の2種以上を組み合わせる方法、あるいはこれらの方法と熱処理とを組み合わせた方法等、種々の方法を利用することができる。この場合、任意の材料を用いて、任意の膜厚で、単層又は積層構造で形成することができる。
【0055】
ここでの第1保護膜の成膜方法、成膜条件等を制御するとともに、材料の適切な選択を行うことによって、リッジ側面における膜厚が、リッジ側面以外の領域の窒化物半導体層表面に成膜される膜厚よりも薄膜状となるように形成することが好ましい。
【0056】
なお、第1保護膜は、リッジの肩部(リッジ側面近傍、つまり、リッジの側面から上面に及ぶ部位)に相当する部位において、リフトオフされやすい膜質の薄膜を配置することが好ましい。この場合、後述する工程によって、容易にリッジ側面を露出させることができる。
例えば、単層の膜を、1回又は2回以上、製造方法又は条件を変化させることにより、組成は同じであるが、膜質及び部位によって膜厚の異なる膜を形成してもよい。具体的には、マグネトロンスパッタ法によって形成した第1保護膜は、ECRスパッタ法で形成した第1保護膜よりも、エッチング速度を大きくすることができ、特にリッジ側面への成膜厚みの異なる膜を容易に形成することができる。
【0057】
また、ECRスパッタ法で形成した第1保護膜は、窒化物半導体層の突出した角部において膜質が悪く、その部分のみリフトオフされやすくなり、このような第1保護膜を利用することができる。
第1保護膜は、窒化物半導体レーザ素子の製造後において、結果的に、窒化物半導体層の上面からリッジ基底部及びリッジ側面の一部において第2の空隙が形成されるように形成してもよい。このような形成方法としては、その膜の一部においてエッチングされやすい膜質を配置する、第1保護膜を形成する前に窒化物半導体表面に部分的な処理を行う、第1保護膜を部分的に処理する、これらを組み合わせるなどの方法が挙げられる。
【0058】
(d)第1保護膜の除去
少なくともマスクパターン及びマスクパターン上に存在する第1保護膜を除去する。例えば、リッジを形成する際に用いたマスクパターンをリフトオフ法に付することにより、リッジ上面の上方に位置するマスクパターン及びその上の第1保護膜を除去することができる。
【0059】
この際、リフトオフに用いるエッチャントを選択するか、種類の異なるエッチャントを順次用いるか、エッチャントの濃度を調整するか、エッチング時間を調整することなどにより、マスクパターンと、その直上に存在する第1保護膜とを除去することができる。また、マスクパターンの直上の第1保護膜のみならず、リッジの側面を第1保護膜から露出させるように、第1保護膜を除去してもよい。さらに、上述したように、リッジ側面が薄膜及び/又はリッジ肩部の膜質等を異ならせることなどにより、マスクパターンとその直上に存在する第1保護膜とを除去してもよいし、マスクパターンの直上の第1保護膜のみならず、第1保護膜のリッジ肩部又は側面部に存在する第1保護膜の一部を除去してもよい。また、リフトオフ法を行った後に、別途のエッチングによって、任意にマスクパターンを利用して、リッジ肩部に相当する部位の第1保護膜を除去してもよい。
なお、少なくともリッジの下側面の第1保護膜は除去せずに、リッジの側面の一部を被覆、密着させることが好ましい。これにより、第1保護膜の剥がれを有効に防止することができる。
【0060】
(e)導電層の積層
得られた窒化物半導体層及び第1保護膜の上に、単層の導電層又は組成の異なる2以上の多層膜からなる導電層を積層する。多層膜からなる導電層を積層する場合には、例えば、所定のエッチング方法及び条件等に応じて、互いに異なるエッチング速度を有する多層膜を選択することが好ましい。この際、少なくとも最表面の導電層であって、そのリッジの基底部から肩部に相当する部位に、部分的にギャップを導入することが適している。
【0061】
導電層の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、Auからなる単層構造であれば、Auを50〜300nm程度の膜厚で形成する。例えば、NiとAuとからなる2層構造であれば、まず、窒化物半導体層上にNiを5〜20nm程度の膜厚で形成し、次に、Auを50〜300nm程度の膜厚で形成する。AuとPtとからなる2層構造であれば、まず、窒化物半導体層上にAuを50〜200nm程度の膜厚で形成し、次に、Ptを50〜200nm程度の膜厚で形成する。また、p電極を3層構造とする場合にはNi−Au−Pt又はNi−Au−Pdの順に形成することが好ましい。例えば、Niを10nm、Auを100nm形成し、最表面層となるPt又はPd等を50〜500nm程度で形成する。さらに、Rh、Pd、Ag、Pt、Au等を任意の膜厚で、任意に組み合わせて、任意の位置に、任意の成膜方法で形成してもよい。ただし、導電層を3層以上で形成する場合には、全てが異なるエッチング速度であってもよいが、必ずしも全てが異なるエッチング速度でなくてもよく、少なくとも2つの導電層で組成が異なり及び/又はエッチング速度が異なるものが好ましい。
【0062】
成膜方法は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、CVD法又はこれらの方法の2種以上を組み合わせる方法等、種々の方法を利用することができる。この場合、任意の材料を用いて、任意の膜厚で、任意の条件を選択して形成することが好ましい。
【0063】
導電層の積層と同時又は連続して、少なくとも最表面の導電層のリッジの基底部から肩部に相当する部位に部分的にギャップを導入する場合、例えば、(i)上述した方法により導電層を積層した後、ギャップに相当する部分に開口を有するマスクパターンを形成して、このマスクパターンを利用してウェット又はドライエッチングする方法が挙げられる。また、(ii)このようなマスクパターンを任意に利用して、部分的に導電層を薄くし得る角度を選択して、導電層をスパッタリングして部分的にギャップを導入してもよい。
【0064】
さらに、(iii) 上述した導電層の成膜の際に、成膜レートを早くするなどの条件を変更することにより、最上層の導電層を劣膜質に形成してギャップを導入するか、(iv) 最上層の導電層を劣膜質に形成して最上層の導電層を部分的にエッチングしてギャップを導入する方法、(v) 最上層の導電層を成膜する際にその条件又は材料等を選択して、リッジ肩部から基底部に相当する最上層の導電層の部位に、下地である第1保護膜の有無等を利用して、部分的にギャップを導入する方法、(vi) リッジを形成する際に、通常の導電層の成膜方法によって、リッジ肩部から基底部に相当する最上層の導電層の部位に、ギャップが導入できるようなリッジ側面の傾斜角度を調整する方法など、種々の方法を利用することができる。
【0065】
これらの方法は、用いる装置、条件、材料などによって当該分野で公知のものを利用して実現することができる。これによって、例えば、図5(a)及び(b)に示したように、最上層の導電層43において、複数のギャップ22、23を導入することができる。
この場合、例えば、図5(b)に示すように、最上層の導電層43(又は導電層の最表面)の基底部近傍にのみギャップ23を導入することにより、後工程において、図2A(a)又は図2A(b)及び図2A(e)に示した位置に空隙を形成することができる。
また、図5(a)に示すように、最上層の導電層43の肩部近傍にもギャップ22を導入することにより、後工程において、図2A(c)、図2A(d)、図2B(f)及び図2B(g)に示した位置に空隙を形成することができる。
この場合のギャップの大きさ及び密度は特に限定されるものではないが、最終的に電極として機能し得る程度の厚み及び成膜面積を有していることが好ましい。なお、このようなギャップを導入する成膜方法は、最上層のみならず、下層に配置する導電層の成膜に利用してもよい。
【0066】
リッジ上面に接触する電極は、上述した導電層の積層によって形成される。この場合の電極形成方法としては、公知の方法のいずれを利用してもよい。例えば、積層構造の導電層のうちの最上層以外の導電層を形成し、その後、電極形成部分にのみ開口を有するリフトオフ用パターンを形成し、その上に最上層の導電層を形成してリフトオフ法に付す方法が挙げられる。これにより、最上層を所望の形状の電極にパターニングし、このパターニングした電極をマスクとして利用して、さらに下層の導電層をパターニングして、所望の形状の電極を形成することができる。
また、導電層を形成する前に、電極形成部分にのみ開口を有するリフトオフ用パターンを形成し、その上に積層構造の導電層を形成し、その後、積層構造の導電層をリフトオフ法に付すことにより、所望の形状の電極を形成する方法を利用してもよい。
【0067】
従って、上述した積層構造の導電層を形成してその最上層にギャップを形成する方法を、上述した電極形成方法と適宜組み合わせて、積層構造の導電層を所望の電極にパターニングすることが好ましい。
【0068】
(f)空隙の形成
上述した導電層の最上層(又は最表面)のギャップを利用して、単層の導電層では内側の一部、積層構造の導電層では、それよりも下層に位置する導電層の一部を除去する。これにより、少なくともリッジ基底部において、第1保護膜と導電層とで規定された空隙を形成することができる。
このような導電層の一部の除去は、公知のドライ又はウェットエッチングにより行うことができる。例えば、HF(フッ酸)溶液、BHF(バッファードフッ酸)溶液、塩酸と酢酸等との混合液等の塩酸系溶液、硝酸系又は熱濃硫酸系等の酸化作用のある溶液、王水、ヨウ素ヨウ化カリウム系溶液等の1種又は2種以上を混合して又は2種以上を順次用いたウェットエッチング、リフトオフ法、あるいは、塩素系ガス等を用いたドライエッチング等により行うことが適当である。この際、上述したように最上層(又は最表面)の導電層におけるギャップを利用するとともに、その下層の導電層の材料、膜厚、積層構造、成膜方法、エッチング方法、エッチャントの種類、エッチャントの濃度、エッチング時間等の種々の条件を適宜調整することにより、リッジの側面の一部に隣接する空隙を形成するようにエッチングする。
【0069】
第1保護膜がリッジ側面を露出せずに残存した場合、そのまま次工程を行ってもよいが、第1保護膜の材料、膜質、膜厚、上述した下層の導電層の材料等を適宜選択することにより、この導電層の除去と同時に、第1保護膜のリッジ側面の一部を露出するように、第1保護膜を除去してもよい。この段階で、リッジの傾斜角度、エッチャントの種類、濃度、処理(浸潰)時間等の種々のパラメータを調整することによって、空隙の形状及び大きさを調整することができる。具体的には、下層にNiが含まれている場合には、Niは、塩酸と酢酸等との混合液のような塩酸系溶液等でエッチングすることができ、Rh、Pd、Agは硝酸系又は熱濃硫酸系の溶液等でエッチングすることができ、Ptは王水等、Auはヨウ素ヨウ化カリウム系又は王水等でエッチングすることができる。従って、これらの材料の選択及び積層順序並びにエッチャントを適宜選択する方法が好ましい。
【0070】
なお、導電層が、3層構造以上の積層構造を有している場合であって、例えば、最下層の導電層(つまり、第3導電層)が、それより上層の導電層、最上層の導電層(つまり、第2導電層)と、エッチング速度の異なる材料で形成されている場合には、工程(f)の後に、リッジの上面、側面及びリッジ両側の窒化物半導体層の一部表面上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンを用いて最下層の導電層の一部を除去してもよい。
また、工程(f)において、上層の導電層(つまり、第1導電層)の一部のみを除去しその一部が残存している場合には、工程(f)の後に、上述したマスクパターンを用いて最下層の導電層(つまり、第3導電層)の一部又は全部とともに、上層の導電層(つまり、第1導電層)をさらに除去してもよい。
このように、マスクパターンを別途形成して、導電層の一部を除去することにより、最上層の導電層にエッチングダメージを与えずに、空隙をより確実に形成することができる。つまり、空隙のリッジの延長方向への延長をより助長し、かつリッジの両側の窒化物半導体層上に確実に延長させることができる。
【0071】
ここでの導電層の除去は、結果的に空隙が配置される部位において完全に除去されていてもよいし、薄膜状又は島状等の形態で残存していてもよい。残存する場合の導電層の厚みは、少なくとも、活性層から出射された光の閉じ込め等に対して影響しない程度が許容される。また、後工程におけるアニールによる合金化等によって、光の閉じ込め等に対して影響しない程度に止められる厚みであってもよい。具体的には、材料にもよるが、5〜20nm程度が挙げられる。
【0072】
多層構造の導電層を形成した後、導電層のパターニング(空隙の形成)の後等、任意の段階において、オーミックアニールを行うことが好ましい。例えば、窒素及び/又は酸素含有雰囲気下で、300℃程度以上、好ましくは500℃程度以上のアニール条件が適当である。
なお、上述した工程において、導電層を積層構造で形成した場合であっても、アニール後においては、その材料によってはその内の2層以上の層が合金化して、単層構造に変化したり、その内の1層以上が薄膜化又は偏在化することがある。
【0073】
工程の(f)後の任意の段階で、第1保護膜の上に、第2の保護膜を形成してもよい。
第2の保護膜は、当該分野で公知の方法により形成することができる。
また、任意に、上述したリッジ上に形成した電極の上に、パッド電極20を形成してもよい。パッド電極は、Ni、Ti、Au、Pt、Pd、W等の金属からなる積層体とすることが好ましい。具体的には、パッド電極は、電極側からW−Pd−Au又はNi−Ti−Auの順に形成することができる。パッド電極の膜厚は特に限定されないが、最終層のAuの膜厚を100nm程度以上とすることが好ましい。
【0074】
さらに、窒化物半導体基板の第1主面上の任意の半導体層上に別の電極を形成してもよいし(図9中、21参照)、窒化物半導体基板の第2主面に、部分的又は全面に、別の電極を形成してもよい(図1A、図1B及び図8中、21参照)。例えば、基板の第2主面側から、V(膜厚10nm)、Pt(膜厚200nm)、Au(膜厚300nm)を形成することができる。この別の電極は、例えば、スパッタ法、CVD、蒸着等で形成することができ、好ましくはV/Pt/Au、Ti/Au/Pt/Au、Mo/Pt/Au、W/Pt/Au、Ti/Pd/Al、Ti/Al、Cr/Au、W/Al、Rh/Al、Ti/Pt/Auからなる2層構造〜4層構造である。別の電極の形成には、リフトオフ法を利用することが好ましく、別の電極を形成した後、500℃程度以上でアニールを行うことが好ましいが、アニールは省略可能である。さらに、この別の電極上に、メタライズ電極を形成してもよい。メタライズ電極は、例えば、Ti−Pt−Au−(Au/Sn)、Ti−Pt−Au−(Au/Si)、Ti−Pt−Au−(Au/Ge)、Ti−Pt−Au−In、Au/Sn、In、Au/Si、Au/Ge等により形成することができる。
【0075】
(チップの形成)
任意の段階で、好ましくは電極を形成した後、リッジに垂直な方向であって、窒化物半導体層の共振器端面を形成するために、通常、窒化物半導体層を含む基板をバー状に分割する。ここで、共振器端面は、M面(1−100)又はA面(11−20)とすることが好ましい。窒化物半導体層を含む基板をバー状に分割する方法としては、ブレードブレイク、ローラーブレイク又はプレスブレイクがある。
【0076】
また、共振器端面に、反射ミラーを形成してもよい。反射ミラーはSiO2、ZrO2、TiO2、Al23、Nb25、AlN、Ta等からなる誘電体多層膜とすることが好ましい。反射ミラーは、共振面の光反射側及び光出射面に形成することが好ましい。劈開によって形成された共振面であれば、反射ミラーを再現性よく形成することができる。また、空隙の端面がミラーによって被覆されていてもよい。これにより、この後の工程やレーザの駆動時に粉塵等が空隙に入り込み、空隙の機能を低下させることを防ぐことができる。
バー状となった窒化物半導体基板は、通常、電極のストライプ方向に平行に分割して、窒化物半導体レーザ素子をチップ化する。
なお、第2の空隙は、第1保護膜の形成時、上述した第1の空隙の形成時、電極のパターニング又はエッチング時などにおいて、これらの形成等と同時に形成することができる。
【0077】
以下に、本発明の窒化物半導体レーザ素子及びその製造方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施例1:窒化物半導体レーザ素子
この実施例のレーザ素子は、500nm帯以下で発振する素子であって、図8に示すように、n型GaNからなる基板10上に、n側半導体層11として、SiドープAl0.33Ga0.67Nよりなるn側クラッド層(2μm)、アンドープGaNよりなるn側光ガイド層(0.15μm)が形成されている。さらに、活性層12として、SiドープIn0.02Ga0.98Nよりなる障壁層(7nm)、アンドープIn0.06Ga0.94Nよりなる井戸層(10nm)を2回繰り返した後、SiドープIn0.02Ga0.98Nよりなる障壁層(5nm)が形成されている。この上には、p側半導体層13として、Mgドープp側Al0.30Ga0.70Nよりなるp側キャップ層(10nm)、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層(0.15μm)、アンドープAl0.05Ga0.95Nよりなる層(2.5nm)とMgドープGaNよりなる層(2.5nm)との総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層、Mgドープp側GaNよりなるp側コンタクト層(15nm)が形成されている。
【0078】
エッチングによりp側半導体層の表面には、高さ0.7μm程度、幅2μm程度のストライプ状のリッジ14(傾斜角度80°)が形成されている。
リッジ14の上面及び肩部を除くp側半導体層の表面には、ZrO2からなる第1保護膜25が形成されている。
リッジ14の側面には、それに隣接する位置に空隙26bが形成されている。この空隙26bは、リッジ14の下側面及びリッジ14の両側の窒化物半導体層上の一部において、第1保護膜25を介して、配置している。空隙26bは、リッジ14の側面においてはその高さZ(図2B(g)参照)が150nm程度、リッジ14の両側の窒化物半導体層上においてはその幅Xが400nm程度である。
【0079】
リッジ14上面からリッジ14両側の窒化物半導体層上の一部にわたって、電極(27b及び28)が形成されている。電極27bは、Ni膜(例えば、膜厚10nm程度)とAu膜(例えば、膜厚100nm程度)とがこの順に積層されて形成されており、リッジ14の側面の一部において、空隙26bによって分断されている。また、電極28は、Pt膜(例えば、膜厚100nm程度)によって形成されている。この電極(27b及び28)上には、p側パッド電極20が形成されている。
窒化物半導体層の側面及びn側半導体層11の露出表面には、第2保護膜19が形成されている。
さらに、基板10の裏面には、n側電極21が形成されている。
【0080】
この半導体レーザチップについて、各電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振させた。なお、比較例として、後述する半導体レーザの製造方法と基本的には同様であるが、空隙を導入しないように、レーザ素子を形成して、同様に、各電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振させた。
その結果、本実施例のレーザ素子は、空隙を有していないものに比較して、駆動電流が15%程度低下し、長時間にわたって安定した動作電流及び動作電圧を示すことが確認された。
また、その上に配置される電極によるレーザ光吸収を、リッジの延長方向にわたって低減させることができ、発光効率を増大させることができる。
【0081】
実施例2:窒化物半導体レーザ素子の製造方法
実施例1のレーザ素子は、以下の方法によって製造することができる。
(a)窒化物半導体層の形成
まず、n型GaNからなる基板1をMOVPE反応容器内にセットし、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3)、不純物ガスにシランガス(SiH4)を用い、SiをドープしたAl0.33Ga0.67Nよりなるn型クラッド層を成長させる。
続いて、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNからなるn側光ガイド層を成長させる。
【0082】
次に、トリメチルインジウム(TMI)、TMG、アンモニア及びシランガスを用い、SiをドープしたIn0.02Ga0.98Nよりなる障壁層を成長させた。シランガスを止め、TMI、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのIn0.06Ga0.94Nよりなる井戸層を成長させる。これを2回繰り返した後、TMI、TMG及びアンモニアを用い、In0.02Ga0.98Nよりなる障壁層を成長させて、2ペアの多重量子井戸(MQW)からなる活性層(屈折率:約2.5)を成長させる。TMIを止め、TMA、TMG及びアンモニアを用い、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を流し、Mgをドープしたp型Al0.30Ga0.70Nよりなるp型キャップ層を成長させる。
【0083】
続いて、CpMg、TMAを止め、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層を成長させる。続いて、アンドープAl0.05Ga0.95Nよりなる層(2.5nm)とMgドープGaNよりなる層(2.5nm)との総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層を成長させる。最後に、この上に、TMG及びアンモニアを用い、CpMgを流し、Mgをドープしたp型GaNよりなるp型コンタクト層を成長させる。
【0084】
(b)リッジの形成
基板上に窒化物半導体層を積層させたウェハを、反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面に、幅2μmのストライプからなるSiO2からなるマスクパターンを形成する。
その後、RIEを用い、p側クラッド層とp側光ガイド層との界面付近までエッチングを行い、ストライプ状のリッジ14を形成する。また、この同時に、窒化物半導体層をRIE法によりエッチングして、例えば、n側クラッド層の一部表面を露出させる。
【0085】
(c)第1保護膜の形成
次に、マスクパターンが残存した状態で、窒化物半導体層の表面にECRスパッタ装置を用いて、ZrO2の単層からなる第1保護膜25を形成する。この第1保護膜25は、膜厚200nmで形成する。なお、ここでの成膜条件を変更することにより、以下の工程における第1保護膜の除去の程度を調整することができる。
【0086】
(d)第1保護膜の除去
リフトオフ法により、SiO2からなるマスクパターンとともに、p側コンタクト層上に形成されている第1保護膜25を除去する。第1保護膜25の除去は、例えば、BHFを用いたウェットエッチングによって行うことができ、そのエッチング時間を調整するか、BHFの濃度を調整するなどにより、第1保護膜25は、リッジ14の側面の一部も除去する。
【0087】
(e)導電層の積層
次に、図4A(a)に示すように、リッジ14を含むp側コンタクト層上に、Ni膜からなる導電層40とAu膜からなる導電層41とを、スパッタ法によって積層する。その上に、図4A(b)に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって、p側電極に相当する領域に開口を有するマスクパターン42を、レジストにより形成する。
その後、図4A(c)に示すように、マスクパターン42を含む導電層40、41上に、Pt膜からなる導電層43を、スパッタ法によって形成し、リフトオフ法によって、Pt膜からなる導電層43をパターニングする(図4A(d)参照)。
【0088】
ここで、図示しないが、リッジ14の肩部に相当するPt膜からなる導電層43の一部に開口を有するマスクパターンを形成し、このマスクパターンをマスクとして用いるとともに、王水を用いて、比較的単時間ウェットエッチングすることにより、リッジ14の肩部に相当する導電層43に、ギャップ22を導入する(図5(a)参照)。ここでのギャップ22の導入は、王水の濃度、エッチング時間等を調整することにより、適宜導入することができる。また、この際、マスクパターンの形状を変化させることにより、リッジ14の基底部に相当する導電層43に、ギャップ23を導入してもよい(図5(b)参照)し、リッジの肩部及び基底部の双方に相当する導電層43にギャップを導入してもよい。
【0089】
続いて、図4A(e)に示すように、Pt膜からなる導電層43をマスクとして、ヨウ素ヨウ化カリウム系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、Au膜からなる導電層41をパターニングする。この際、先に導入された導電層43のギャップを介して、リッジ14の肩部から基底部に相当する部位のAu膜からなる導電層41もともに除去され、その部位に空隙が導入される。
【0090】
図4A(f)に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって、Pt膜からなる導電層43を被覆するマスクパターン44を、レジストにより形成する。
このマスクパターン44をマスクとして利用して、塩酸及び酢酸の混合液からなる塩酸系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、Ni膜からなる導電層40をパターニングし、電極を形成する。ここでのマスクパターン44は、先に導入された導電層43のギャップを介してリッジの上面に形成された導電層40が除去されないように形成される。これにより、マスクパターン44で被覆されたリッジの上面、リッジの側面、空隙の下部においてはNi膜からなる導電層40が残存し、マスクパターン44から露出した部位では、Ni膜が除去される。
その後、電極の上に、p側電極と電気的に接続したp側パッド電極を形成する。
【0091】
これらの工程の後、オーミック性を確保するために、酸素雰囲気下にて、500℃程度でアニールを行う。これにより、空隙26bに隣接するNi膜からなる導電層40の一部又は全部が偏在化し、第1保護膜25上において島状に配置される部位ができる。また、Ni膜からなる導電層40とAuからなる導電層41とが合金化し、部分的又は全体的にこれらが単層構造として配置される。
その後、n側電極をn型GaN基板の裏面に形成する。
【0092】
このようにして、p及びn両電極を形成した後、GaN基板のM面(窒化物半導体を六角柱で表した場合にその六角柱の側面に相当する面)でGaNを劈開してウェハをバー状とし、そのバーの劈開面に共振面を作製する。その後、さらに共振面に垂直な方向でバー状のウェハを切断してチップ化する。
なお、上述したNi膜からなる導電層の合金化、変形又は偏在化は、得られたレーザ素子においては、駆動電流、安定した動作電流及び動作電圧の確保、レーザ光の吸収及び発光効率には実質的に影響していないことが確認されており、実施例1のレーザ素子と同様の効果が得られる。
【0093】
実施例3:窒化物半導体レーザ素子の製造方法
実施例1のレーザ素子は、以下の方法によっても製造することができる。
工程(a)窒化物半導体層の形成から工程(d)第1保護膜の除去は、実施例2と同様に行う。
【0094】
この実施例の製造方法では、工程(d)において第1保護膜の除去によって、リッジの側面に段差部を形成することで、その段差部を利用して、工程(e)において、導電層を積層し、電極を形成する。ここで形成された電極は、リッジの側面の段差部に起因して、導電層43の一部にギャップが導入されている。
【0095】
(e)導電層の積層
図6(a)に示すように、第1保護膜25を形成した窒化物半導体層上に、p側電極を形成する領域に開口を有するマスクパターン52を形成する。
図6(b)に示すように、このマスクパターン52を含む窒化物半導体層上に、Ni膜からなる導電層50、Au膜からなる導電層51、Pt膜からなる導電層53を、それぞれスパッタ法により形成し、積層する。
【0096】
図6(c)に示すように、リフトオフ法によってパターニングし、電極を形成する。この際、上述したリッジ側面における段差部を利用することにより、導電層53の肩部にギャップを導入する。
その後、図示しないが、ヨウ素ヨウ化カリウム系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、Au膜からなる導電層51をエッチングする。これにより、先に導入された導電層53のギャップを介して、リッジ14の肩部に相当する部位のAu膜からなる導電層51もともに除去され、その部位に空隙が導入される。
その後、実施例2と同様に半導体レーザ素子を形成する。得られたレーザ素子は、実施例1のレーザ素子と同様の効果が得られる。
【0097】
実施例4:窒化物半導体レーザ素子の製造方法
実施例1のレーザ素子は、以下の方法によっても製造することができる。
工程(a)窒化物半導体層の形成から工程(d)第1保護膜の除去は、実施例2と同様に行う。
【0098】
(e)導電層の積層
次に、実施例2と同様に、図4B(a)に示すように、リッジ14を含むp側コンタクト層上に、Ni膜からなる導電層40とAu膜からなる導電層41とを、スパッタ法によって積層する。その上に、図4B(b)に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって、p側電極に相当する領域に開口を有するマスクパターン42を、レジストにより形成する。
その後、図4B(c)に示すように、マスクパターン42を含む導電層40、41上に、Pt膜からなる導電層43を、スパッタ法によって形成し、リフトオフ法によって、Pt膜からなる導電層43をパターニングする(図4B(d)参照)。
その後、実施例2と同様に、マスクパターンを利用して、導電層43にギャップを導入する。
【0099】
続いて、図4B(e)に示すように、ヨウ素ヨウ化カリウム系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、導電層43をマスクとして、Au膜からなる導電層41をパターニングする。この際、先に導入された導電層43のギャップを介して、リッジ14の肩部から基底部に相当する部位のAu膜からなる導電層41もともに除去され、その部位に空隙26bが導入される。
【0100】
続いて、図4B(f)に示すように、塩酸及び酢酸の混合液からなる塩酸系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、導電層43及びAu膜からなる導電層41をマスクとして、Ni膜からなる導電層40をパターニングし、電極を形成する 。この際、先に導入された導電層43のギャップ、リッジ14の肩部から基底部に相当する部位の空隙26bを介して、空隙26bに隣接するNi膜からなる導電層40もともに除去され、その部位に空隙26b’が確保される。
その後、実施例2と同様に半導体レーザ素子を形成する。
なお、このような製造方法では、上述したNi膜からなる導電層は、アニールによって、それと接触するAu膜からなる導電層41と合金化される。得られたレーザ素子は、実施例1のレーザ素子と同様の効果が得られる。
【0101】
実施例5:窒化物半導体レーザ素子の製造方法
実施例1のレーザ素子は、以下の方法によっても製造することができる。
工程(a)窒化物半導体層の形成から工程(d)第1保護膜の除去は、実施例2と同様に行う。
この実施例の製造方法では、工程(d)において第1保護膜の除去によって、リッジの側面に段差部を形成することで、その段差部を利用して、工程(e)において、導電層を積層し、電極を形成する。ここで形成された電極は、リッジの側面の段差部に起因して、導電層43の一部にギャップが導入されている。
その後、実施例2と同様にして、ギャップが導入された導電層43をマスクとしてAu膜からなる導電層41をパターニングし、リッジ14の肩部から基底部に相当する部位のAu膜からなる導電層41の一部が除去されて、その部位に空隙を形成する。
【0102】
続いて図4A(f)に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチング工程によって、Pt膜からなる導電層43を被覆するマスクパターン44を、レジストにより形成する。
このマスクパターン44をマスクとして利用して、塩酸及び酢酸の混合液からなる塩酸系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、Ni膜からなる導電層40をパターニングし、電極を形成する。ここでのマスクパターン44は、先に導入された導電層43のギャップを介してリッジの上面に形成された導電層40が除去されないように形成される。これにより、マスクパターン44で被覆されたリッジの上面、リッジの側面、空隙の下部においてはNi膜からなる導電層40が残存し、マスクパターン44から露出した部位では、Ni膜が除去される。
その後、実施例2と同様に半導体レーザ素子を形成する。得られたレーザ素子は、実施例1のレーザ素子と同様の効果が得られる。
【0103】
実施例6:窒化物半導体レーザ素子の製造方法
この実施例におけるレーザ素子の製造方法では、実施例2における工程(e)導電層の積層において、リッジの肩部に相当するPt膜からなる導電層43にギャップを導入する際、マスクパターンを形成せずに、リッジの肩部に相当する導電層43を集中的にスパッタリングし得る条件を設定して、導電層43をエッチバックすることにより、導電層43にギャップを導入する以外、実施例2と実質的に同様に製造することができる。得られたレーザ素子は、実施例1のレーザ素子と同様の効果が得られる。
ここでの集中的なスパッタリングは、例えば、Arによるスパッタリング、Arに塩素又は窒素等を混合したガスによるスパッタリングが挙げられる。
【0104】
実施例7:窒化物半導体レーザ素子
この実施例のレーザ素子は、図1Bに示すように、500nm帯以下で発振する素子であって、実施例1と同様の窒化物半導体層の積層構造及びリッジ14を有している。
リッジ14の上面を除くp側半導体層の表面には、ZrO2からなる第1保護膜15が形成されている。
リッジ14の基底部に対応する位置には、第1保護膜15を介して空隙16が配置されている。この空隙16の幅(図2A(a)中のX)は、例えば、400nmであり、高さHは110nm程度である。
【0105】
リッジ14上面からリッジ14両側の窒化物半導体層上の一部にわたって、電極(17及び18)が形成されている。電極(17及び18)は、実施例1と同様の積層構造であり、この電極(17及び18)上には、p側パッド電極20が形成されている。
また、窒化物半導体層の側面及びn側半導体層11の露出表面には、第2保護膜19が形成されている。
さらに、基板10裏面にはn側電極21が形成されている。
このような空隙を有する窒化物半導体レーザ素子においても、実施例1と同様の効果を有する。
つまり、その上に配置される電極によるレーザ光吸収を、リッジの延長方向にわたって低減させることができるとともに、駆動電流が15%程度低下し、長時間にわたって安定した動作電流及び動作電圧を示す。
【0106】
実施例8:窒化物半導体レーザ素子の製造方法
実施例7のレーザ素子は、以下の方法によって製造することができる。
第1保護膜の成膜条件を制御することにより、実施例2と実質的に同様にして、図7(a)に示すように、リッジ上面を露出する第1保護膜15を形成し、実施例2と実質的に同様にしてNi膜からなる導電層40、Au膜からなる導電層41を形成する。その上に、図7(b)に示すように、マスクパターン42を形成する。
その後、図7(c)に示すように、Pt膜からなる導電層43を形成し、リフトオフ法によって、導電層43をパターニングする(図7(d)参照)。
図示しないが、リッジ14の基底部に相当する部位に開口を有するマスクを形成することにより、導電層43のリッジ14の基底部に相当する位置に、図5(b)に示すように、ギャップ23を導入する。
【0107】
続いて、図7(e)に示すように、導電層43をマスクとして、ヨウ素ヨウ化カリウム系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、Au膜からなる導電層41をパターニングする。この際、先に導入された導電層43のギャップを介して、リッジ14の基底部に相当する部位のAu膜からなる導電層41の一部もともに除去され、その部位に空隙が導入される。
その後、図7(f)に示すように、Pt膜からなる導電層43を被覆するマスクパターン44を形成する。
【0108】
このマスクパターン44をマスクとして利用して、塩酸及び酢酸の混合液からなる塩酸系溶液をエッチャントとして用いるウェットエッチングによって、Ni膜からなる導電層40をパターニングし、電極を形成する。ここでのマスクパターン44は、先に導入された導電層43のギャップを介してリッジの上面に形成された導電層40が除去されないように形成される。これにより、マスクパターン44で被覆されたリッジの上面、リッジの側面、空隙の下部においてはNi膜からなる導電層40が残存し、マスクパターン44から露出した部位では、Ni膜が除去される。
その後、実施例2と同様に半導体レーザ素子を形成する。得られたレーザ素子は、実施例7のレーザ素子と同様の効果が得られる。
【0109】
なお、この製造方法においても、オーミック性を確保するためにアニールを行った後には、空隙26bに隣接するNi膜からなる導電層40の一部又は全部が偏在化し、第1保護膜25上において島状に配置される部位ができることがある。また、Ni膜からなる導電層40とAuからなる導電層41とが合金化し、部分的又は全体的にこれらが単層構造として配置され、図1Aで表されたような、電極構造を採り得る場合がある。
【0110】
実施例9:窒化物半導体レーザ素子及び製造方法
この実施例は、実質的に実施例2の工程(a)〜(c)を行い、工程(d)の第1保護膜の除去の際に、BHFを用いたウェットエッチングの時間を実施例2よりも長くすることにより、例えば、図2Bの(h)における第2の空隙16aaに相当する空隙を形成することができる。これ以外は実質的に、実施例2と同様に半導体レーザ素子を形成する。得られたレーザ素子は、実施例1のレーザ素子と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、光ディスク用途、光通信システム、印刷機、露光用途、測定等に利用することができる。また、特定波長に感度を有する物質に窒化物半導体レーザから得た光を照射することで、その物質の有無または位置を検出することができるバイオ関連の励起用光源等に利用することもできる。
【符号の説明】
【0112】
10 基板
11 n側半導体層
12 活性層
13 p側半導体層
14 リッジ
15、25、45、55 第1保護膜
16、16a、16b、26、26a、26b、26b’36、46、56 空隙
16aa、26bb 第2の空隙
7、17、17a、17b、18、27、27a、27b、28、37、38、47、48、57、58、67、77 電極
19 第2保護膜
20 パッド電極
21 n側電極
22、23 ギャップ
40、43、50、51、53 (Ni膜からなる)導電層
41、43、50、51、53 (Au膜からなる)導電層
43、50、51、53 (Pt膜からなる)導電層
42、44、52 マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に積層され、その表面にリッジを有する窒化物半導体層と、
該窒化物半導体層を被覆する第1保護膜と、
リッジ上及び第1保護膜上に形成された電極とを備えた窒化物半導体レーザ素子であって、
前記第1保護膜は、前記窒化物半導体層の上面からリッジ基底部及びリッジ側面に渡って、前記窒化物半導体層とその一部又は全部が接触して配置されており、
少なくとも前記リッジ基底部において、該第1保護膜と電極とで規定された空隙を備えることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記空隙は、前記リッジの基底部から前記リッジ側面にわたって配置されている請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記第1保護膜は、前記リッジの側面の一部を露出しており、かつ
前記空隙は、前記リッジ基底部から前記リッジ側面に及んで、前記リッジ側面と接触している請求項1又は2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記第1保護膜は、窒化物半導体層よりも屈折率が小さい請求項1〜3のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記空隙は、前記リッジ延長方向において該リッジに略平行して配置されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記第1保護膜と前記リッジとの間に、第2の空隙が配置されてなる請求項1〜5のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
【請求項7】
(a)基板上に、窒化物半導体層を積層し、
(b)該窒化物半導体層上にマスクパターンを形成して、該マスクパターンを利用してリッジを形成し、
(c)前記リッジの両側面、前記マスクパターン上及びリッジ形成後に露出している窒化物半導体層上に第1保護膜を形成し、
(d)少なくとも前記マスクパターン及び該マスクパターン上に存在する第1保護膜を除去し、
(e)前記リッジを含む窒化物半導体層及び第1保護膜上に、組成の異なる2以上の多層膜からなる導電層を積層するとともに、少なくとも最表面の導電層の前記リッジの基底部から肩部に相当する部位に、部分的にギャップを導入し、
(f)前記ギャップを介して導電層の一部を除去して、少なくとも前記リッジ基底部において前記第1保護膜と導電層とで規定された空隙を形成することを含む窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項8】
前記導電層を、第1導電層と、その上に配置する該第1導電層とエッチング速度の異なる第2導電層とによって形成する請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記導電層を、前記第1導電層の下にさらに、該第1及び第2導電層とエッチング速度の異なる第3導電層を積層することによって形成し、
工程(f)の後に、前記リッジの上面、側面及び該リッジ両側の窒化物半導体層の一部表面上にマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて第3導電層の一部を除去する工程を含む請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記導電層を、前記第1導電層の下にさらに、該第1及び第2導電層とエッチング速度の異なる第3導電層を積層することによって形成し、
工程(f)において、第1導電層の一部を除去して空隙を形成し、
さらに、工程(f)の後に、前記リッジの上面、側面及び該リッジ両側の窒化物半導体層の一部表面上にマスクパターンを形成し、該マスクパターンを用いて第1導電層及び第3導電層の一部を除去する工程を含む請求項8に記載の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59890(P2012−59890A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201087(P2010−201087)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】