説明

窒素含有芳香性物質を含有する粉体塗装用フルオロポリマー組成物

(a)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、(d)所望により、相間移動触媒と、を含む組成物が提供される。記載された組成物の反応物、前記組成物及び反応生成物を含む多層物品、並びに組成物、反応生成物、及び物品の製造方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマー組成物に関するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、(a)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、(d)所望により、相間移動触媒と、を含む組成物。
【0003】
別の態様では、本発明は、コーティングを含む物品に関し、該コーティングが、(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、(d)所望により、相間移動触媒と、を含む組成物。前記コーティングは、無機塩基とフッ素樹脂を更に含み、所望により、相間移動触媒を含む。
【0004】
更に別の態様では、本発明は、(a)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、反応生成物に関する。
【0005】
別の態様では、本発明は、基材及び(a)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、フッ素樹脂と、無機塩基と、所望により相間移動触媒と、の反応生成物を含む組成物。芳香族物質と無機塩基とのそれぞれが、基材と前記第1層の残余部との間の界面部に存在するか、前記フッ素樹脂と共に存在するか、又はその両方である。前記第1層は、前記基材に結合している。
【0006】
別の態様では、本発明は、(a)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、芳香族物質を含むフルオロポリマーを提供する方法をもたらす。前記コーティングは、無機塩基、フッ素樹脂を更に含み、及び所望により、相間移動触媒を含む。前記フッ素樹脂は、粒状形態又は粉末形態にて提供される。前記方法は、組成物を芳香族物質の融点を超えた温度まで加熱する工程と、又は組成物を溶液中に提供する工程と、組成物を混合する工程と、を更に含む。
【0007】
更なる態様では、本発明は、フルオロポリマーコーティング表面を提供することに関する。本方法は、基材(所望により、無機材料から選択される)を提供する工程と、第1層を該基材へあてがう工程とを含む。前記第1層は、(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(A)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(B)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(C)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、含む。前記第1層は、フッ素樹脂、所望により無機塩基、所望により相間移動触媒を更に含む。前記芳香族物質は、前記基材と前記第1層との残余部との間との界面部に存在するか、前記フッ素樹脂と共に存在するか、あるいはその両方である。前記方法は、組成物を基材に結合させる工程を更に含む。
【0008】
幾つかの実施形態では、金属などの基材へフルオロポリマーを結合するための組成物を提供することは、本発明の利点である。本発明の他の特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」及び特許請求の範囲から明白であろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で特に指示がない限り、用語「樹脂」とは、ポリマー又はオリゴマーを意味し、これに対して、用語「化合物」は、ポリマーあるいはオリゴマーではない。例えば、化合物は、ポリマー又はオリゴマーに特有の繰返し単位をほとんど有しないか又は全く有しない場合がある。
【0010】
本明細書で記載される芳香性物質は、芳香族化合物と、芳香族樹脂と、複素環式芳香族化合物と、複素環式芳香族樹脂と、から選択される。芳香族化合物及び芳香族樹脂は、少なくとも1つの芳香環を有していてもよく、少なくとも1つの芳香環が、該芳香環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する。芳香族化合物及び芳香族樹脂は、そこへ結合した縮合環を有する少なくとも1つの芳香環を有していてもよい。適切な非ヒンダードアミン基としては、例えば、一級アミン類(例えば、−NH)、及び二級アミン類(例えば、NHR(式中、Rは脂肪族基である))が挙げられる。脂肪族基とは、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基;アルカリル基;アシル基;などを意味する。脂肪族基は、所望により、フッ素化されていても、又はペルフルオロ化されていてもよい。
幾つかの実施形態では、前記芳香族物質は、2つ以上の非ヒンダードアミン基を含んでもよい。前記の2つ以上の非ヒンダードアミン基は、例えば、同一芳香環上の置換基として配置されてもよく、1つの芳香族非ヒンダードアミン及び1つの脂肪族非ヒンダードアミン基を有し、1つの芳香環上の置換基として配置された1つの非ヒンダードアミン基及び第2芳香環上の置換基として配置された第2非ヒンダードアミン基などを有することが可能である。
【0011】
芳香族物質が、芳香族化合物又は芳香族樹脂から選択される幾つかの実施形態では、芳香族物質は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントラセン(phenanthracene)環、アントラセン環、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの芳香環を含む。本発明の記載中で明らかであるように、芳香族化合物又は芳香族樹脂は、芳香族化合物又は芳香族樹脂中の全ての芳香環が、芳香環中に炭素原子のみを有する点で、複素環式芳香族化合物又は複素環式芳香族樹脂とは異なる。複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂は、当該用語が本発明の記載中で使用される場合、前記芳香族物質中に存在する芳香環(単一又は複数)の少なくとも1つが、炭素原子及び、窒素、イオウ又は酸素のうち少なくとも1つを含むことを示す。
【0012】
特定の実施形態では、芳香族樹脂又は芳香族化合物中に存在する芳香環(単一又は複数)は、ビフェニル基、フェナンスリル(phenantrhyl)基、アントラシル(anthracyl)基、オキシビフェニル基、ビナフチル基、トリル基、及びこれらの組み合わせから選択される。このような実施形態の例としては、例えば、3,3’−ジアミノベンジジン、9,10−ジアミノフェナントレン、1,8−ジアミノナフタレン、1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジアミン、2,3−ジアミノトルエン、1−ナフチルアミン、1−アミノ−8−ナフトール−2−スルホン酸、2−アミノアントラセン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
更なる実施形態では、芳香環に結合した非ヒンダードアミン基の酸性度を増加させるかあるいは減少させることが望ましい場合がある。当業者は、電子求引性置換基を芳香環に追加することによって、非ヒンダードアミン基の酸性度を増加することができること、並びに電子供与性置換基を芳香環に加えることによって、非ヒンダードアミン基の酸性度を減少(それによって非ヒンダードアミン基の塩基性を増大させる)することができることを理解する。このような効果は、例えば、「有機化学の構造及び機構に対する展望(Perspectives on Structure and Mechanism in Organic Chemistry)」(キャロル(Carroll)著、ブルックス/コール(Brooks/Cole)(パシフィックグローヴ(Pacific Grove))発行、1998年)(特に、366〜386ページ、置換基効果及び自由エネルギー比例関係についての議論)に記載されている。
【0014】
したがって、本発明の幾つかの実施形態としては、少なくとも1つの芳香環が、非ヒンダードアミン基以外かつ水素以外の置換基を有するようなものが挙げられる。このような置換基は、アルキル基、フッ素化アルキル基(ペルフルオロ化アルキル基を含む)、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基(ペルフルオロ化アルコキシ基を含む)、ニトリル基、ニトロ基、芳香族基、フッ素化芳香族基、アルキル芳香族基、フッ素化アルキル芳香族(ペルフルオロ化(アルキル)芳香族基、アルキルペルフルオロ化(芳香族)基、及びペルフルオロ化(アルキル芳香族)基を含む)、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0015】
更なる実施形態では、芳香族物質は、複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂から選択されてもよい。複素環式芳香族化合物又は複素環式芳香族樹脂は、芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を、更に有することが可能である。幾つかの特定の実施形態では、前記芳香族物質は、2つ以上の非ヒンダードアミン基を含む。更に、複素環式芳香族化合物又は複素環式芳香族樹脂は、芳香族複素環に直接結合された2つ以上の非ヒンダードアミン基を有する少なくとも1つの芳香族複素環を有してもよい。本発明で使用する場合、「直接結合した」とは、置換基が芳香環又は芳香族複素環の環原子に結合していることを意味する。
【0016】
更に、本明細書で記載される複素環式芳香族化合物又は複素環式芳香族樹脂は、窒素原子、イオウ原子、酸素原子、又は幾つかのこれらの組み合わせを、1つ以上の炭素原子と共に含有する芳香族複素環を有してもよい。このような複素環式芳香族基の特定例としては、例えば、1,10−フェナントロリン、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、シアヌル酸、ピリミジン、ベンゾトリアゾール、ピラジン、ピリジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。複素環式芳香族化合物又は複素環式芳香族樹脂の特定の実施形態としては、2−アミノベンズイミダゾール、5−アミノ−1,10−フェナントロリン、2−アミノベンゾチアゾール、7−アミノベンゾチアゾール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2,3−ジアミノピリジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
前記複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂は、幾つかの実施形態では、少なくとも1つの芳香族複素環を有し、少なくとも1つの芳香族複素環が、該芳香環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する。適切な非ヒンダードアミン基としては、例えば、一級アミン類(例えば、−NH)、及び二級アミン類(例えば、NHR(式中、Rは脂肪族基である)が挙げられる。脂肪族基とは、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基、直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基、アルカリル基、アシル基などを意味する。前記脂肪族基は、所望により、フッ素化されていてもよく、あるいはペルフルオロ化されていてもよい。
【0018】
複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂の更なる実施形態では、上記のように、芳香族複素環に結合した非ヒンダードアミン基の酸性度を増加させるかあるいは減少させることが望ましい場合がある。
【0019】
したがって、本発明の幾つかの実施形態としては、少なくとも1つの芳香族複素環が、非ヒンダードアミン基以外かつ水素以外の置換基を有するようなものが挙げられる。このような置換基は、アルキル基、フッ素化アルキル基(ペルフルオロ化アルキル基を含む)、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基(ペルフルオロ化アルコキシ基を含む)、ニトリル基、ニトロ基、芳香族基、フッ素化芳香族基、アルキル芳香族基、フッ素化アルキル芳香族(ペルフルオロ化(アルキル)芳香族基、アルキルペルフルオロ化(芳香族)基、及びペルフルオロ化(アルキル芳香族)基を含む)、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの組み合わせから選択されてよい。
【0020】
複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂の特定の実施形態では、複素環式芳香族基が存在する一方で、複素環式芳香族ではないその他の芳香族基が存在してよいと理解されるべきである。
【0021】
その上更なる実施形態では、前記芳香族物質は、複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂から選択されてもよく、芳香族物質は、芳香族複素環内に窒素原子を有する。このような実施形態においては、芳香族物質は、芳香族複素環に直接結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を更に含んでもよい。あるいは、このような芳香族物質は、芳香族複素環に直接結合した非ヒンダードアミン基を有していなくてもよい。更なる実施形態としては、芳香族複素環に直接結合した非ヒンダードアミン基を少なくとも2つ備えた複素環式芳香族化合物又は複素環式芳香族樹脂が挙げられる。
【0022】
前記芳香族複素環は、少なくとも1つの炭素原子に加えて、窒素以外の(例えば、イオウ及び/又は酸素)、いわゆるヘテロ原子を、更に含んでもよい。このような芳香族複素環としては、例えば、1,10−フェナントロリン、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、シアヌル酸、ピリミジン、ベンゾトリアゾール、ピラジン、ピリジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の芳香性物質としては、1,10−フェナントロリン、2−アミノベンズイミダゾール、5−アミノ−1,10−フェナントロリン、2−アミノベンゾチアゾール、7−アミノベンゾチアゾール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2,3−ジアミノピリジン、2−フェニルイミダゾール、シアヌル酸、ベンゾトリアゾール、2,3−ピラジンジカルボキサミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
所望により、芳香族複素環(少なくとも1つの窒素原子を含む)に直接結合している適切な非ヒンダードアミン基としては、例えば、一級非ヒンダードアミン類(例えば、−NH)、及び二級非ヒンダードアミン類(例えば、NHR(式中、Rは脂肪族基である))が挙げられる。脂肪族とは、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基;アルカリル基;アシル基;などを意味する。脂肪族基は、所望により、フッ素化されていてよく、あるいはペルフルオロ化されていてもよい。
【0024】
環内に窒素原子を有する芳香環を少なくとも1つ含む、複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂の更なる実施形態では、芳香族複素環に結合した非ヒンダードアミン基の酸性度を増加させるかあるいは減少させることが望ましい場合がある。当業者は、電子求引性置換基を芳香族複素環に追加することによって、非ヒンダードアミン基の酸性度を増加することができること、並びに電子供与性置換基を芳香族複素環に加えることによって、非ヒンダードアミン基の酸性度を減少することができることを理解する。
【0025】
本明細書で記載する全ての芳香性物質の調製は、当業者によく知られた方法によって実施することが可能である。これらの方法としては、例えば、「有機合成(Organic Synthesis)」(第2版、ファーホップ(Fuhrhop)&ペンツリン(Penzlin)共著、VCH(バインハイム)、1994年);「有機合成の幾つかの現代的方法(Some Modern Methods of Organic Synthesis)」(第3版、カラザーズ(Carruthers)著、ケンブリッジ大学出版局、1993年);及び「マーチ・最新有機化学:反応、機構及び構造(March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanism and Structure)」(第5版・スミス(Smith)&マーチ(March)共著、ジョンワイリー&サンズ(John Wiley&Sons)、2001年)(特に、第11章及び第13章)に記載されるものが挙げられる。
【0026】
幾つかの実施形態では、本発明は、(a)本明細書で記載する芳香族物質;(b)無機塩基;(c)フッ素樹脂;及び所望により、(d)相間移動触媒を含む組成物が基材、特に、金属基材に対する優れた接着性を与え得ることを示している。その上更なる実施形態では、沸騰水試験が使用され、層間の接着力が数時間の暴露後(例えば、24時間後)においても強固に維持されていることが示された。意外にも、幾つかの実施形態では、本明細書で記載される芳香性物質が、金属表面への、フルオロポリマー、特にペルフルオロポリマーの接着力に手助けされる場合もある。
【0027】
本発明の記載に含まれているフルオロポリマーとしては、部分的ペルフルオロ化フッ素樹脂などのフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニリデン(VDF)、フルオロビニルエーテル類、ペルフルオロビニルエーテル類、並びにこれらの1つ以上の組み合わせなどの1つ以上のフッ素化又はペルフルオロ化モノマーのインターポリマー化単位を有するようなものが挙げられる。フッ素樹脂類は、エチレン、プロピレン、及びその他の低級オレフィン類(例えば、C2〜C9含有α−オレフィン類)などの非フッ素化コモノマーの1つ以上と組み合わされた、フッ素化又はペルフルオロ化モノマー類の1つ以上を含むコポリマーを更に含んでもよい。
【0028】
その他の実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、本発明の記載に従うフッ素樹脂であることができる。PTFEを使用する場合、それは、別のフルオロポリマーとのブレンドとして使用してよく、フルオロポリマー充填剤を(ブレンドで又はPTFE中のみで)含有していてもよい。
【0029】
より具体的には、有用なフッ素樹脂類としては、更にTHV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのコポリマー)、FEP(テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)、PFA(テトラフルオロエチレン及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー)、HTE(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンのコポリマー)、ETFE(テトラフルオロエチレン及びエチレンのコポリマー)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン及びエチレンのコポリマー)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリクロロトリフルオロエチレン(CPTFE)の表記にて市販されているようなもの並びにこれらのフッ素樹脂の1つ以上の組み合わせ及びブレンドが挙げられる。
【0030】
上述フルオロポリマー類の任意のものは、追加のモノマー類(例えば、TFE、HFP、VDF、エチレン)のインターポリマー化単位、又はペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)及び/若しくはペルフルオロ(アルコキシビニル)エーテル(PAOVE)などのペルフルオロビニルエーテルのコポリマー類を更に含んでもよい。2種以上のフッ素樹脂の組み合わせを使用してもよい。幾つかの実施形態では、THV及び/又はETFE及び/又はHTEなどのフッ素樹脂が好ましい。
【0031】
幾つかの実施形態では、本発明の記載は、芳香族物質を提供し、芳香族物質はフッ素樹脂表面にて提供される。更なる実施形態では、前記フッ素樹脂は、1種以上の芳香族物質、無機塩基、及び所望により、相間移動触媒を含むコーティングを有してもよい。
【0032】
上述のフッ素樹脂及び芳香族物質に加えて、明細書は、また、無機塩基を提供する。無機塩基としては、7以下のpKbを有する無機化合物が挙げられる。より具体的には、有用な無機塩基としては、マグネシウム、カルシウム、及びその他の物質の酸化物及び/又は水酸化物が挙げられる。本発明の一態様では、前記無機塩基は、芳香族物質とのアミド塩を形成することができる十分に小さなpKbを有する。幾つかの実施形態では、前記無機塩基は、約6以下、約5以下、約4以下、約2以下、約0以下、あるいは約0.6以下のpKbを有する。
【0033】
記載された、芳香族物質及び/又は塩形成化合物は、フッ素樹脂の重量に対して、一般的には少量で存在する。例えば、芳香族物質及び/又は塩形成化合物の量(合一され又は単独で)は、一般に、全組成物(芳香族物質、塩形成剤、相間移動触媒、(もしあれば)、及びフルオロポリマー(使用される場合、基材は含まない))の約60重量%(wt%)以下、約50重量%以下、約35重量%以下、約20重量%以下、あるいは15重量%以下である。別の態様では、前記芳香族物質及び/又は塩形成剤(合体され又は単独で)は、一般に、全組成物の約0.1重量%超、0.5重量%超、あるいは1重量%超である。
【0034】
幾つかの実施形態では、相間移動触媒(PTC)を、本明細書で記載される組成物中で使用してもよい。このような物質は、当技術分野において既知であると共に、例えば、トリフェニルベンジルホスホニウム塩類、トリブチルアルキルホスホニウム塩類、テトラフェニルホスホニウム塩類、テトラブチルホスホニウム塩類、トリブチルベンジルアンモニウム塩類、テトラブチルアンモニウム塩類、テトラプロピルアンモニウム塩類、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム塩類、テトラメチルアンモニウム塩類、テトラアルキルアルソニウム塩類、テトラアリールアルソニウム塩類、及びトリアリールスルホニウム塩類が挙げられる。多価オニウム塩類もまた考えられる。即ち、2つ以上の正電荷の箇所を有する、多価カチオン類である、塩類である。記載された塩類としては、例えば、臭化物塩、塩化物塩、及びヨウ化物塩などのハロゲン化物塩が挙げられる。クラウンエーテル含有相間移動触媒もまた、本明細書で検討される。
【0035】
PTCは、塩形成化合物、芳香族物質、及びフルオロポリマー(使用する場合、基材の重量は含まない)の総重量を基準として、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、あるいは約2重量%以下の量で使用してもよい。別の態様では、PTCは、塩形成化合物、芳香族物質、及びフルオロポリマーの総重量を基準として、0.1重量%超、0.3重量%超、あるいは0.5重量%超の量で使用してもよい。幾つかの実施形態では、相間移動触媒の量を調製することで、本明細書で記載するコーティング内に観察される発泡の量を減らすことができることが見出された。即ち、本明細書で記載されるコーティングの幾つかは、基材と共に加熱される場合、気泡を形成する。相間移動触媒の量を調整することによって、発泡量を減らすことができる。例えば、幾つかの実施形態では、相間移動触媒の量を増加させることで、観察される発泡量を低減する場合がある。
【0036】
本明細書で記載される組成物としては更に、そこに組み込まれる添加剤も挙げられる。添加剤としては、不活性充填剤、酸化防止剤、安定剤、色素、補強剤、潤滑剤、流動性添加剤(flow additives)、その他のポリマー類、などが挙げられるが、これらに限定されない。更なる添加剤としては、例えば、酸化クロム、クロム、酸化亜鉛、酸化銅、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、二酸化チタン、酸化スズ、鉄、酸化鉄、などの金属及び金属酸化物が挙げられる。このような金属類は、例えば、耐磨耗性充填剤又は相溶化剤として提供してよい。本明細書では、ポリフェニレンスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、及びこれらの組み合わせなどの高分子添加剤も更に挙げられる。その他の耐磨耗性充填剤としては、例えば、セラミックス、高温耐性かつ/又は耐磨耗性のポリマー、などが挙げられる。更なる添加剤としては、増大した硬度、磨耗耐性、電気伝導性及び熱伝導率、並びに色などの望ましいコーティング性を付与できるようなものが挙げられる。流動性添加剤は、一般に、ポリマー組成物(低分子量材料、オリゴマー、ポリマー、及びこれらの組み合わせを含む)の濡れ及び流れを向上させることが知られている物質である。流動性添加剤は、例えば、低粘度物質及びフルオロポリマー(例えば、ポリアクリレートなどの炭化水素ポリマー)と相溶性でない物質から選択されてよい。幾つかの実施形態では、前記組成物は、フッ素樹脂又は上記フッ素樹脂の組み合わせ以外のポリマーを実質的に含まない。即ち、前記組成物は、25重量%未満の高分子添加剤、10重量%未満の高分子添加剤、5重量%未満の高分子添加剤を含んでもよく、あるいは高分子添加剤を全く含んでいなくてもよい。
【0037】
別の態様では、本発明の記載は、(a)本明細書で記載する芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、所望により、(d)相間移動触媒と、の反応生成物を含む組成物を提供する。更なる態様では、本発明の記載は、コーティングを含む物品を提供し、該コーティングは、(a)本明細書で記載する芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、所望により、(d)相間移動触媒と、の反応生成物を含む組成物を含む。更なる実施形態では、前記物品は、コーティングを含み、コーティングは(a)本明細書で記載する芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、及び所望により、(d)相間移動触媒と、を含む。
【0038】
他の態様では、本発明の記載は、基材及び第1層を含む多層物品を提供する。前記第1層は、(a)本明細書で記載する芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、及び所望により、(d)相間移動触媒と、の反応生成物を含む。
【0039】
更なる実施形態では、本発明の記載は、(a)本明細書で記載する芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、及び所望により(d)相間移動触媒と、の反応生成物を含む第1層と、を含む多層物品であって、(i)前記芳香族物質と(ii)前記塩基とのそれぞれが、独立して、前記基材と前記第1層の残余部との間の界面部に存在するか、前記フッ素樹脂中に存在するか、あるいはその両方である。幾つかの実施形態では、前記第1層は、前記基材に結合している。
【0040】
その上更なる実施形態では、本発明の記載は、基材及びコーティングを含む多層物品を提供する。前記基材は、実質的な有機物質又は実質的な無機物質を含んでもよい。前記の実質的有機物質は、所望により、フェノラート又はチオレート塩を本質的に含まなくてもよい。幾つかの実施形態では、多層物品のコーティングは、フルオロエラストマーを実質的に含まなくてもよいフッ素樹脂を含む。即ち、フッ素樹脂を含む層は、約10重量%未満のフルオロエラストマー、5重量%未満のフルオロエラストマー、1重量%未満のフルオロエラストマー、0.5重量%未満のフルオロエラストマーを含有してもよく、あるいはフルオロエラストマーを全く含んでいなくてもよい。
【0041】
実質的な無機基材は、例えば、ガラス、セラミックス、金属類、鉄、ステンレス鋼、鋼鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、及び合金並びにこれらの組み合わせであることができる。ある実施形態では、前記基材は、金属基材から選択される。他の好適な基材としては、フルオロポリマー、ナイロン、ポリアミド、などが挙げられる。
【0042】
基材形状に特に制限はない。例えば、前記基材は、繊維、フレーク、粒子、又はこれらの組み合わせの表面であることができる。具体的な例としては、化学的操作又は半導体を取り扱う際の排気ダクトなどに有用な、配管の形状をした金属シートが挙げられる。
【0043】
幾つかの実施形態では、多層物品は、前記第1層に隣接した第2層を更に含んでよい。第2の層は、フルオロポリマーを含んでよい。更に、第3層は、所望により存在してもよく、これは更に、フルオロポリマーを含んでもよい。任意の第2層及び第3層は、2種以上のフルオロポリマーの混合物を更に含んでもよい。
【0044】
本明細書で記載される多層物品は、基材とフッ素樹脂コーティング組成物との間で結合(後述の剥離強度試験で測定する)を提供し得る。例えば、22℃〜25℃にて、サンプルを高温でベーキング後、本明細書で記載される組成物は、各種基材に結合する。幾つかの実施形態では、多層物品は、増大する過酷さの各種曝露条件及び熱湯への継続的暴露後に、望ましい剥離強度を維持する。例えば、幾つかの実施形態では、前記多層物品は、熱湯へ、1時間、5時間、15時間、あるいは24時間曝露した後であっても、大きな又は非常に大きな剥離強度を提供する。前記多層物品は、所望により熱湯への曝露後に、少なくとも0.7N/mm、少なくとも0.9N/mm、少なくとも1.8N/mm、少なくとも2.6N/mm、少なくとも3.5N/mm、あるいは少なくとも4.3N/mm剥離強度を示してよい。
【0045】
別の態様では、本発明の記載は、(a)本明細書で記載する芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、及び所望により、(d)相間移動触媒の組成物を提供することを含む、フルオロポリマーコーティング組成物の提供方法を提供する。前記フッ素樹脂は、粒状形態又は粉末形態にて提供してよい。前記方法は、組成物を芳香族物質の融点を超えた温度まで加熱すること及び組成物を混合することを更に含む。ある実施形態では、加熱は、高速撹拌することによって提供されてもよい。幾つかの実施形態では、芳香族物質は、25℃、1大気圧にて、液体であり、かつ組成物の残部に、液状で提供される。その他の実施形態では、芳香族物質は、溶媒中に溶解することが可能で、かつ前記方法は、芳香族物質を含有する溶媒を、フッ素樹脂と共に、組成物の加熱前に混合することを更に含んでよい。
【0046】
別の態様では、本発明の記載は、フルオロポリマーコーティング表面の提供方法を提供する。本方法は、基材を提供する工程(所望により、無機材料から選択される)と、組成物を基材へあてがう工程と、組成物を基材に結合させて、結合した組成物を得る工程から構成される。組成物を結合させる工程は、組成物を基材へ融着させることを含んでもよい。基材へあてがわれた組成物は、(a)本明細書で記載する芳香族物質と、(b)無機塩基と、(c)フッ素樹脂と、所望により(d)相間移動触媒と、を含むことが可能である。芳香族物質及び塩基とのそれぞれが、独立して、基材と第1層の残余部との間の界面部に存在するか、フッ素樹脂内に存在するか、あるいはその両方である。前記組成物は、所望により、コーティングを有するフッ素樹脂として提供されてもよく、コーティングは、1種以上の芳香族物質、無機塩基、又は相間移動触媒を含む。
【0047】
更なる実施形態では、前記方法は、結合した組成物へ第2層(当該第2層は、フルオロポリマーを含む)を結合させる工程を含んでもよい。幾つかの実施形態では、結合は融着を含んでもよい。
【0048】
ある実施形態では、組成物を基材へあてがう工程が、例えば、静電粉末コーティング、組成物と基材との共押出、及びフィルム、シート、又は成形部品として基材へ組成物をあてがう工程から選択される方法を含む。その他の実施形態では、芳香族物質と、相間移動触媒と、塩基との少なくとも1つを基材へあてがって、本明細書で記載するように、組成物の残余部をあてがう前に、プライマー層を形成することが可能である。
【0049】
本発明の各種実施形態は、用途の2〜3例挙げると、化学物質保管用タンク、排気管用コーティング、生物医学デバイス、電子材料、調理器具及び耐熱皿、及び建築用コーティングにおいて有用である。
【0050】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0051】
下記説明において、パーセントとは、本明細書中にて特に指示しない限り、重量%を意味する。特に指示しない限り、材料はアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から入手した。
【表A】

供給元:
1.アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)
2.アルファ・エイサー(Alpha Aesar)(ランカシャー州へイシャム)
3.ランカスター(ニューハンプシャー州ペラム)
4.TCI(オレゴン州ポートランド)
5.アトランティック・イクウィップメント・エンジニアズ(Atlantic Equipment Engineers)(ニュージャージー州バーゲンフィールド)
【0052】
方法及び手順
処方
特に指示が無い限り、芳香性物質及びPCTは、メタノールと共に溶液へと溶解させた。表中の各実施例について示した乾燥成分及び液体成分を計量し、スパチュラを使い、塩形成剤及びフッ素樹脂を容器中で予備ブレンドした。前記液体溶液を容器に加え、スパチュラを使用して攪拌し、混合物をベルアート・マイクロミル(Bel-Art Micro Mill)(ベルアート・プロダクツ(Bel-Art Products)(ニュージャージー州ペクアノック)から入手可能)のミリングチャンバに加えた。前記ミルを20秒〜30秒間動作させて、成分を分散させた。粉末/スラリーを容器に注ぎ戻して、攪拌し、そしてミルに戻し、更に20秒〜30秒間ブレンドした。簡単にはアルコール溶液にできない固形分は、5ミクロン未満の中央粒径にてそのまま使用するか、又は5ミクロン未満まで乳鉢及び乳棒にて挽くかのいずれかとした。
【0053】
剥離試験サンプル調製
ステンレス鋼(400シリーズ)又はアルミパネル(0.94mm(0.037インチ)厚み)を、2.54×15.2cm(1×6インチ)のストリップに切り分け、鋼鉄ストリップを、1リットルの水についてOAKITEクリーナ164(オアキテ・プロダクツ(Oakite Products)(ニュージャージー州バークレーハイツ)から入手可能)75gの加熱したアルカリ性溶液中に浸漬して、80℃(180°F)で10分間維持して脱脂させた。次に、ストリップを蒸留水で何度かすすぎ洗いし、空気循環オーブン内にて71℃(160°F)で10分間乾燥させた。特に記載のない限り、各ストリップは30メッシュのアルミナグリット及び552kPa(80psi)の空気圧を使用して、グリットブラスト仕上げをして、表面を粗くした。残留ダストは、エアガンにて全て取り除いた。ストリップを大きな金属プレートに締め付け、各ストリップの一端の5cm(1.5インチ〜2インチ)に亘って、PFA 6503 B EPC粉末(ダイネオンから入手可能)の薄層でブラシした。これにより、コーティングが金属に接着しない領域が得られ、剥離試験のためのタブが作成された。
【0054】
次に、ノルドソン・シュアコート(Nordson SureCoat)(ノルドソン・コーポレーション(Nordson Corporation)(オハイオ州アマースト))を使用して、70ボルト、150kPaの空気流にて、ストリップを約40グラムのプライマーと共に、静電気的に粉体コーティングした。次に、前記ストリップを空気循環オーブン内で10分間(特に指示しない限り)、400℃にてベークした。ストリップをオーブンから取り除いた際、特定のフルオロポリマートップコートと共に、70kボルト、150kPaの空気流にて、ストリップを直ちにホットフロック加工し、オーブン内に戻して更に10分間処理した。追加のトップコート(合計2つ又は3つ)をあてがい、ベークして400〜1,000ミクロンのコーティングの厚みを得た。試料を冷却後、各細片の端を鋭利な刃で削って、その試験片の端に蓄積したコーティングを除去した。サンプルは、熱湯に24時間浸漬した。水から取り出した後、剥離試験に先立って、サンプルを室温まで冷却した。
【0055】
剥離試験
剥離強度は、前記サンプルについて、フローティングローラー剥離試験付属品を備えたインストロン社製型式5564試験機(インストロン社(マサチューセッツ州、カントン)から入手可能)を使用して、15cm/分(6インチ/分)のクロスヘッド速度にてかつ9.5cm(3.75インチ)まで引っ張って剥離し、ASTM D3167−97に従って試験することによって測定した。剥離強度は、1.3cm〜8.9cm(0.5インチ〜3.5インチ)まで引っ張り、積算平均を使用して計算し、N/mm幅(ポンド/インチ)により3個のサンプルの平均として報告した。全ての剥離試験は、サンプルを24時間熱湯に晒した後で実施した。
【0056】
実施例1〜18及び比較実施例C1〜C6
フルオロポリマーブレンド類は、表1〜3に示した量にて、芳香族物質、無機塩基、及び特定のフルオロポリマー並びに相間移動触媒の溶液を、メタノール中でブレンドすることによって調製した(表中の重量は、固形分のものである)。別途注記のない限り、使用した手順は、「処方」にて記載したものであり、全てのオーブン温度条件は、400℃(750°F)で10分間であった。次に、結果として得られるフルオロポリマーブレンドを粉末コーティングし、かつ「剥離試験サンプル調製」及び「剥離試験」(特に記載のない限り)にて記載した手順を使用して剥離試験を行った。処方及び剥離試験結果を、表1〜3に示す。剥離強度が、「0.3N/mm(<2ポンド/インチ)未満」と示されている場合、これは剥離試験方法によって、熱湯への曝露後の結合強度を定量化することができなかったことを示す。剥離強度が、「0」と示されている場合、これは熱湯への曝露後に結合が観察されなかったことを示す。比較実施例C1〜C6は、実施例と同様に実施し、表4にまとめられている。
【0057】
表1は、各種芳香性物質をPTCと共に使用する、記載したフルオロポリマーブレンド類及び多層物品についての多数の実施形態を示す。表2は、異なったフルオロポリマー類を使用する、記載したフルオロポリマーブレンド類及び多層物品についての多数の実施形態を示す。表3は、各種相間移動触媒を使用する実施形態を示す。表4は、比較実施例C1〜C6の一群を示す。表4で分かるように前記芳香族物質が、フルオロポリマーブレンドから除外される場合、あるいは塩基が使用されない場合、あるいは芳香族物質と異なる結合添加剤が使用された場合、熱湯に24時間に曝露後、ステンレス鋼あるいはアルミニウムのいずれかに、結合が観察されないかあるいは貧弱な結合しか観察されなかった。
【表B】


【表C】


PTC(熱メタノール中で予め混合)
【表D】


【表E】


アロジン(Alodine)5700(ヘンケル・サーフェス・テクノロジーズ(Henkel Surface Technologies)(ミシガン州マディソンハイツ)から入手可能)を使用して作製したストリップ(即ち、ストリップはグリットブラスト仕上げしていなかった);Ca(OH)混合に先立って、1,1’−ビ−2−ナフトール及びPTCを、MeOH中で、湿式混合した。
【表F】


手動式剥離に基づく推定結合強度
ボイル前剥離強度、10N/mm超
ボイル前剥離強度、5N/mm未満

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、
(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、
(b)無機塩基と、
(c)フッ素樹脂と、
(d)所望により、相間移動触媒と、を含む組成物。
【請求項2】
前記芳香族物質が2つ又はそれ以上の非ヒンダードアミン基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族物質が、芳香環に直接結合した2つ以上の非ヒンダードアミン基を有する芳香環を少なくとも1つ含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記芳香族物質が、3,3’−ジアミノベンジジン、9,10−ジアミノフェナントレン、1,8−ジアミノナフタレン、1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジアミン、2,3−ジアミノトルエン、1−ナフチルアミン、1−アミノ−8−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノアントラセン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの芳香環が、電子供与性基又は電子求引性基であることができる少なくとも1つの置換基を有し、それが、アルキル基、フッ素化アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、フッ素化アルコキシ基、アルケニル基、フッ素化アルケニル基、ニトリル基、ニトロ基、芳香族基、フッ素化芳香族基、アルキル芳香族基、フッ素化アルキル芳香族基、アシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記芳香族物質が、複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂から選択され、
前記芳香族物質が、芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記芳香族複素環が、窒素、イオウ、酸素、又はこれらの組み合わせを含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記芳香族物質が、2−アミノベンズイミダゾール、5−アミノ−1,10−フェナントロリン、2−アミノベンゾチアゾール、7−アミノベンゾチアゾール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2,3−ジアミノピリジン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記芳香族物質が、複素環式芳香族化合物及び複素環式芳香族樹脂から選択され、前記芳香族物質が、芳香族複素環内に窒素原子を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記芳香族複素環が、炭素、イオウ、酸素、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記芳香族物質が、1,10−フェナントロリン、2−アミノベンズイミダゾール、5−アミノ−1,10−フェナントロリン、2−アミノベンゾチアゾール、7−アミノベンゾチアゾール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2,3−ジアミノピリジン、2−フェニルイミダゾール、シアヌル酸、ベンゾトリアゾール、2,3−ピラジンジカルボキサミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
(a)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、
(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、
(b)無機塩基と、
(c)フッ素樹脂と、
(d)所望により相間移動触媒と、の反応生成物を含む組成物。
【請求項13】
a)基材と、
b)
(A)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、
(1)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(2)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(3)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、
(B)無機塩基と、
(C)フッ素樹脂と、
(D)所望により相間移動触媒と、の反応生成物を含む第1層と、
を含む多層物品であって、
前記芳香族物質と前記無機塩基とのそれぞれが、(i)独立して、前記基材と前記第1層の残余部との間の界面部に存在する、(ii)独立して、フッ素樹脂と共に存在する、又は(iii)その両方であり、
前記第1層が前記基材に結合している、多層物品。
【請求項14】
前記基材が、鉄、鋼鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、及びこれらの合金類、セラミックス、並びに熱的に安定な有機基材から選択される、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
(a)基材を提供する工程と、
(b)
(1)(i)芳香族化合物、(ii)芳香族樹脂、(iii)複素環式芳香族化合物、及び(iv)複素環式芳香族樹脂から選択され、(A)芳香環若しくは芳香族複素環に結合した少なくとも1つの非ヒンダードアミン基を有する、(B)芳香族複素環を有しかつ前記芳香族複素環内に窒素原子を有する、又は(C)それらの組み合わせを有する、芳香族物質と、
(2)フッ素樹脂と、
(3)所望により無機塩基と、
(4)所望により相間移動触媒と、を含む第1層(前記芳香族物質は、前記基材と前記第1層の残余部との間の界面部に存在する、フッ素樹脂と共に存在する、又はその両方である)を、前記基材にあてがう工程と、
(c)前記組成物を前記基材に結合させる工程と、
を含むフルオロポリマーコーティング表面の提供方法。
【請求項16】
組成物を基材へあてがう工程が、静電粉末コーティングする工程と、前記組成物及び前記基材を共押出する工程と、フィルム、シート、又は成形部品として基材へ前記組成物をあてがう工程と、から選択される方法を含む、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2010−506981(P2010−506981A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532599(P2009−532599)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/081223
【国際公開番号】WO2008/048888
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】