説明

窓取付構造

【課題】窓枠に埃が溜まり難くし、所定の清浄度に保持する必要のある部屋内を高清浄度に維持すると共に、工期の短縮化や製造コストの低減化を図る。
【解決手段】本発明は、所定の清浄度に保持する必要のある部屋の扉10又は壁に形成される開口部12に窓材13を取付けるための窓取付構造であって、開口部12の周囲に沿って設けられる窓枠14と、窓枠14に窓材13を固定するための押縁15とを備え、窓枠14の下部14cは外側に向かって下傾しており、押縁15は窓枠14の上部14aに取付け可能なように形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム等の扉又は壁に形成される開口部に窓材を取付けるための窓取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体工場や医薬品工場又は食品工場等のクリーンルーム内は、高清浄度の環境に維持される必要があるため、クリーンルームの周囲に設置される扉や壁には高い気密性とクリーンルーム内を所定の清浄度に保持する機能が要求される。そのため、クリーンルーム内又は外を視認する目的等のために扉や壁に設けられるガラス窓にも高い気密性とクリーンルーム内を所定の清浄度に保持する機能が求められる。
【0003】
従来のクリーンルーム等の所定の清浄度に保持する必要のある部屋に面する扉や壁に設けられるガラス窓の取付構造としては、図6に示すように、開口部1の周囲に沿って取付けられる窓枠2にガラス3を嵌め込んだ後、窓枠2の下部に押縁4を取付けてガラス3を窓枠2に固定する構造を採用するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−63524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の窓取付構造では、窓枠2の下部や押縁4の上面が平坦に形成されているため、埃が溜まり易く、クリーンルーム等の所定の清浄度に保持する必要のある部屋内を高清浄度に維持するのが難しいといった問題があった。
【0006】
また、押縁4の上面に埃が溜まるのを防止するため、押縁4の上面にテーパ(勾配)を付けることも考えられるが、押縁4上面のテーパ加工は難しいため、工期の短縮化や製造コストの低減化を図り難いといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、窓枠に埃が溜まり難くし、所定の清浄度に保持する必要のある部屋内を高清浄度に維持することができると共に、工期の短縮化や製造コストの低減化を図ることのできる窓取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、所定の清浄度に保持する必要のある部屋の扉又は壁に形成される開口部に窓材を取付けるための窓取付構造であって、前記開口部の周囲に沿って設けられる窓枠と、当該窓枠に前記窓材を固定するための押縁とを備え、前記窓枠の下部は外側に向かって下傾しており、前記押縁は前記窓枠の上部に取付け可能なように形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る窓取付構造において、前記窓枠は前記扉又は前記壁を形成するパネルと一体成形されているのが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る窓取付構造において、前記窓材は前記扉又は前記壁の厚み方向の鉛直中心より前記所定の清浄度に保持する必要のある部屋側に偏った位置に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、窓枠に埃が溜まり難くなり、所定の清浄度に保持する必要のある部屋内を高清浄度に維持することができると共に、工期の短縮化や製造コストの低減化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る窓取付構造を適用した扉を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る窓取付構造の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る窓取付構造の別の変形例を示す断面図である。
【図6】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る窓取付構造について説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施の形態に係る窓取付構造を扉に適用した場合について例示して説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る窓取付構造を適用した扉を示す正面図である。この扉10は、クリーンルームに面して気密に設けられる両開きタイプの鋼製扉であり、対向するように鉛直に形成された前後一対の鋼製パネル11の間にロックウール(図示省略)が充填されて形成されており、上部中央には開口部12が形成されている。
【0015】
この開口部12には窓材であるガラス窓13を取り付けるための窓取付構造が設けられている。この窓取付構造は、開口部12の周囲に沿って設けられる窓枠14と、窓枠14にガラス窓13を固定するための押縁15とを備えて構成されており、ガラス窓13は扉10の厚さ方向の鉛直中心に沿って配置されている。
【0016】
窓枠14は、鋼製パネル11と一体成形され、ガラス窓13の上縁部13aに当接可能なように一方側(この場合は後側)が下方に突設された上部14aと、ガラス窓13の一側縁部13b(この場合は右側縁部)を挟装可能なように前後両側が側方に突設された一側部14bと、ガラス窓13の他側縁部に当接可能なように一方側(この場合は後側)が側方に突設された他側部(図示省略)と、ガラス窓13の下縁部13cを挟装可能なように前後両側が上方に突設された下部14cとにより構成されている。
【0017】
窓枠14の下部14cは、前後両側が外側に向かってそれぞれ下傾して形成されており、三角形状の断面を有している。
【0018】
押縁15は、細長樋状を成し、窓枠14の上部14aの他方側(この場合は前側)平坦部分に下方からネジ16で取付け可能に形成されている。
【0019】
次に、本発明の実施の形態に係る窓取付構造を備えた扉10の開口部12に窓を取付ける方法について説明する。
【0020】
先ず、窓枠14の溝にバックアップ材18を装着し、ガラス窓13の下縁部13c及び両側縁部13bの両面にそれぞれパッキン17を装着した状態で、他方側(この場合は前側)からガラス窓13の下縁部13c及び両側縁部13bを窓枠14の下部14c及び両側部14bに挿入する。
【0021】
次いで、ガラス窓13の上縁部13aの両面にパッキン17を装着した状態で、ガラス窓13の上縁部13aを窓枠14の上部14aに当接させ、窓枠14の上部14aの他方側(この場合は前側)平坦部分に押縁15を当接させた状態で下方からネジ16を螺挿し、ガラス窓13を開口部12に固定する。その後、ガラス窓13と窓枠14との間をシリコン材19でコーキングする。
【0022】
このように上記した実施の形態に係る窓取付構造によれば、窓枠14の下部14cが外側に向かって下傾しており、窓枠14の下部14cに埃が溜まるのを防止することができるため、クリーンルーム内を高清浄度に維持することが可能となる。
【0023】
また、窓枠14の上部14aに押縁15が取付けられるため、押縁15の上面に埃が溜まることがなく、押縁4の上面にテーパ加工を施す必要もない。また、窓枠14がパネル11と一体成形されているため、組立て工数を削減することもできる。したがって、工期の短縮化や製造コストの低減化を図ることが可能となる。
【0024】
なお、上記した実施の形態では、窓枠14の下部14cの前後両側を外側に向かって下傾させているが、これは単なる例示に過ぎず、例えば、扉10の一方側のみがクリーンルームに面している場合には、図4に示すように、クリーンルームに面する側の窓枠14の下部14cのみを下傾させてもよい。
【0025】
また、上記した実施の形態では、押縁15を窓枠14の上部14aにのみ取り付けた場合について説明したが、窓枠14の溝幅が狭い場合には、上部14aと左右側縁部13bの三方に押縁15を取り付けることもできる。
【0026】
さらに、この場合、図5に示すように、ガラス窓13を扉10の厚み方向の鉛直中心よりクリーンルーム側に偏った位置に配置することにより、窓枠14の下部14cの傾斜角度αを大きく設定することができ、これにより、窓枠14の下部14cに埃が溜まるのをより確実に防止することができる。
【0027】
また、上記した実施の形態では、本発明の窓取付構造をクリーンルームに面する壁に設置する鋼製の扉に適用した場合について説明したが、本発明は、鋼製以外の扉は勿論のこと、クリーンルーム以外の所定の清浄度に保持する必要のある部屋に面する壁に設けられるガラス窓やパネル等、扉や壁に設けられる窓体全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 扉
11 パネル
12 開口部
13 ガラス窓
14 窓枠
14a 上部
14c 下部
15 押縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の清浄度に保持する必要のある部屋の扉又は壁に形成される開口部に窓材を取付けるための窓取付構造であって、
前記開口部の周囲に沿って設けられる窓枠と、
当該窓枠に前記窓材を固定するための押縁と、
を備え、前記窓枠の下部は外側に向かって下傾しており、前記押縁は前記窓枠の上部に取付け可能なように形成されていることを特徴とする窓取付構造。
【請求項2】
前記窓枠は前記扉又は前記壁を形成するパネルと一体成形されている請求項1に記載の窓取付構造。
【請求項3】
前記窓材は前記扉又は前記壁の厚み方向の鉛直中心より前記所定の清浄度に保持する必要のある部屋側に偏った位置に配置されている請求項1又は2に記載の窓取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265723(P2010−265723A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119968(P2009−119968)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(509139243)株式会社エム・デザイン・エンタープライス (1)
【Fターム(参考)】