窓
【課題】EL素子を用いた窓において、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をする。
【解決手段】窓1は、透明なEL素子2を複数個、構造物の開口部に配置した発光体3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備える。制御部4が、EL素子2の一部を消灯させて、室外から光を採り入れる、又はEL素子2の一部を消灯させて、室内に光を補うことにより、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる。
【解決手段】窓1は、透明なEL素子2を複数個、構造物の開口部に配置した発光体3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備える。制御部4が、EL素子2の一部を消灯させて、室外から光を採り入れる、又はEL素子2の一部を消灯させて、室内に光を補うことにより、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL素子を用いた窓に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、発光層を陽極及び陰極で挟持させた発光部が透明基板上に形成されたものであり、電極間に電圧印加されたとき、発光層にキャリアとして注入された電子及びホールの再結合により生成された励起子によって発光する。
【0003】
EL素子は、発光層の蛍光物質に有機物を用いた有機EL素子と、無機物を用いた無機EL素子に大別される。特に、有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光が可能であり、蛍光物質の種類によって様々な発光色が得られ、また、平面発光体としての製造が容易であるという特性がある。
【0004】
この特性を活かして、有機EL素子から成るディスプレイ装置を、壁面や窓等に配置して、ディスプレイ装置に画像を再生させることにより、内装デザインを簡易に変更できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/075032パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような有機EL素子から成るディスプレイ装置の使用は、壁面や窓に映像表示をすることによって、擬似的な仮想空間を演出するものであって、壁面等の全面に大型テレビ等の平面ディスプレイを設置することと実質的に変わらない。従って、このものは、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をするには適していない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、EL素子を用い、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、窓において、透明なEL素子を複数個、構造物の開口部に配置した発光体と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記窓において、前記発光体は、複数個のEL素子を格子状に配置したものであり、前記制御部は、前記各EL素子を所定のパターンに従って個別に点灯制御することが好ましい。
【0010】
また、上記窓において、前記EL素子が、構造物の窓ガラス内面に配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御部が、透明なEL素子を個別に点灯又は消灯させることにより、室外から光を採り入れつつ室内へ光を補うことができ、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る窓を用いた室内空間において、EL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図2】同窓を用いた空間におけるシステム構成を示すブロック図。
【図3】同窓の一部分解斜視図。
【図4】同窓に用いられるEL素子が、複数のEL素子(発光セル)を格子状に配置されて構成される例を示す斜視図。
【図5】同窓に用いられるEL素子の概略構成を示す側断面図。
【図6】同窓を用いた室内空間において、EL素子を点灯させない状態を示す図。
【図7】(a)(b)は、同窓におけるEL素子の点灯パターンを示す図。
【図8】(a)(b)(c)は、同窓におけるEL素子の点灯パターンを示す図。
【図9】(a)(b)は、同窓におけるEL素子の点灯パターンを示す図。
【図10】同窓の変形例を示す斜視図。
【図11】同窓の更に別の変形例を示す斜視図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る窓を天井に用いた室内空間において、夜間にEL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図13】同室内空間において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図14】同室内空間において、曇り空又は雨天時等にEL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図15】同室内空間において、夜間にEL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図16】同室内空間において、夜間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る窓を車のサンルーフに用いた車内空間において、夜間にEL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図18】同車内空間において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図19】同車内空間において、夜間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態に係る窓について、図1乃至図10を参照して説明する。本実施形態の窓1は、図1に示すように、一般住宅の壁面W(構造物)に設けられた窓枠F(開口部)に取り付けられるものである。特に、北側に面し、日当たりの悪い部屋に好適に用いられる。ここでは、4枚の窓1が窓枠Fに取り付けられた例を示す。
【0014】
窓1は、図1及び図2に示すように、EL素子2を複数個、配置された発光体3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備える。窓枠Fには、レール状に配線5(図1において破線で示す)が設けられており、発光体3の一端部に設けられた制御部4の受信部41と電気的に接続されている。配線5は、給電線及び信号線の双方を含んでおり、中継器6を介して制御装置7に接続されている。制御装置7は、給電部ACに接続され、所定電力を窓1の制御部4に供給すると共に、それらの点灯制御信号を出力する。なお、図1では、制御装置7を、壁付けリモコン型のものとして示している。
【0015】
制御部4は、上述した受信部41に加えて、駆動回路42と、記憶部43と、演算部44とを備える。駆動回路42は、演算部44から出力される制御信号に従ってオンオフ動作をする少なくとも1つ以上のスイッチ素子等から成り、各EL素子2を点灯駆動させる。記憶部43は、EEPROM等の汎用のメモリ及びマイコン等から成り、各EL素子2に個別のアドレスを割り宛て、そのアドレスを記憶すると共に、制御装置7から受信した制御信号に従って所定アドレスのEL素子2の点灯パターン等を記憶する。また、演算部44は、汎用のマイコン等から成り、駆動回路42を制御して所定アドレスのEL素子2を記憶部43に記憶された点灯パターンに基づいて点灯させるための出力値を決定し、それを駆動回路42に実行させる。
【0016】
制御装置7は、操作部71と、送信部72と、記憶部73と、演算部74と、入力部75とを備える。操作部71は、ユーザの操作によるEL素子2の点灯制御内容を入力するものである。この操作部71には、EL素子2の点灯状態を表示する表示部等が設けられてもよい。送信部72は、演算部74の命令に従って所定の制御信号を中継器6及び制御部4へ送信する。記憶部73は、窓1が複数である場合、窓1毎の各EL素子2に個別のアドレスを割り宛て、そのアドレスを記憶すると共に、夫々のEL素子2の点灯パターン等を記憶する。演算部74は、記憶部73に記憶された点灯パターンに基づいて所定のEL素子2を点灯させる制御信号を送信部72に出力させる。なお、上述した制御部4の記憶部43及び演算部44は、制御装置7の記憶部73及び演算部74に共用化されていてもよい。
【0017】
入力部75は、外部情報出力手段8から出力された外部情報を受信して、その情報を演算部74に入力する。ここで言う外部情報とは、例えば、日照量や気温といった天候情報や、居住者の有無や家電機器の操作状況といった居住者の生活パターンに関する生活情報等が挙げられる。また、外部情報出力手段8とは、インターネットに接続されたパソコンPや携帯電話Mといった情報処理端末、又は照明器具を含む種々の家電を操作するためのリモコンRや、屋内又は屋外に設置された照度センサ(不図示)等である。外部情報出力手段8から入力部75への外部情報の送受信は、有線でも良いが、例えば、無線LAN等の無線通信で行われることが好ましい。演算部74は、この外部情報を記憶部73に記憶させると共に、この外部情報から所定の点灯パターンを抽出し、抽出された点灯パターンでEL素子2を点灯制御するように、送信部72に所定の制御信号を出力する。
【0018】
中継器6は、制御装置7からの点灯制御信号に従って給電部ACから供給された電力をEL素子2の点灯に適するように整流、変圧する。なお、この中継器6の機能を、上述した制御部4の駆動回路42等に実行させてもよい。
【0019】
窓1は、図3に示す通り、複数個のEL素子2が格子状に配置された発光体3が、対向する2枚の透明な板ガラス10,11に挟持された構成となっている。なお、図例では、一方の板ガラス10の一部を切り欠いて表現している。また、発光体3の各EL素子2は、個別に点灯制御されるように、ITO(酸化インジウムスズ:インジウムチンオキサイド)等の透明な配線12によって制御部4の駆動回路42(図2参照)に接続されている。各EL素子2間の間隔は、絶縁性を確保できる範囲において、なるべく狭く形成されることが望ましい。なお、この間隔に、例えば、光拡散材を含有した絶縁性樹脂膜が設けられてもよい。
【0020】
EL素子2は、無機EL素子であってもよいが、素子の平面化に適した有機EL素子が好ましい。また、その形状は、5〜600mm角、好ましくは50〜100mmの略正方形形状の平面発光体である。一つのEL素子2が、単体の発光パネルを構成するものであってもよいし、例えば、図4に示すように、10mm角のEL素子2c(発光セル)を格子状に100個設けることによって一つの発光パネルを構成するものであってもよい。後者の場合、セル単位で点灯制御されるように透明な配線のパターンニングが施されることが望ましい。また、その場合の駆動方式は、アクティブ型、パッシブ型のいずれであってもよい。
【0021】
また、EL素子2は、図5に示すように、透光性を有する基板22上に、発光部23を形成し、その外側を封止材24で被覆したものである。なお、ここでは、EL素子2が単体の発光パネルとして構成されている例を示すが、上述した図4のような、複数のEL素子2cが格子状に配置された発光パネルにおいても、発光部のサイズや配線のパターンニング等の相違点を除き、基本的な構成は同じである。発光部23は、透明導電膜から成る陽極23a、発光機能を有する発光層23b、透光性を有する陰極23cを、順に基板22上に積層形成したものである。封止材24は、透明な材料から構成されており、各電極の一部が露出するように被覆され、これら電極の露出部は、直接又は透明なリード線等を介して電極端子(不図示)に電気的に接続される。
【0022】
基板22は、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等の透光性ガラスや、透光性樹脂材料等から成り、矩形板状に形成される。なお、窓1を構成する板ガラス11(図3参照)上に発光部23等を形成してもよく、この場合、板ガラス11が実質的な基板22ということになる。
【0023】
陽極23aは、発光層23bにホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、導電性化合物又はこれらの混合物から成る電極材料が用いられ、好ましくは、仕事関数が4eV以上のものが用いられる。特に、ITO、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の透光性の導電材料が好ましい。陽極23aは、これらの電極材料を、基板22の表面に、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により成膜及びパターニングすることによって形成される。
【0024】
発光層23bは、所望の白色光を発光させ得る有機蛍光材料が用いられ、例えば、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及びこれらの発光性化合物から成る基を分子構造の一部に有する化合物、高分子材料、各種蛍光色素の混合材料等が用いられる。なお、図4に示したような複数のEL素子2cによって発光パネルが構成される場合、各EL素子2cがRGBの異なる発光色となるように、適宜に蛍光体が選択されることが望ましい。
【0025】
発光層23bは、陽極23aの表面に上述した化合物を、例えば、真空蒸着法により成膜及びパターニングすることによって形成される。なお、発光層23bは、複数の異なる材料が積層されたものであってもよく、これら複数層の間に電位を調整するためのバッファ層を介在させてもよい。
【0026】
陰極23cは、発光層23bに電子を注入するための電極であり、陽極23aと同様に、ITO、SnO2、ZnO等の透光性の導電材料によって形成される。また、陰極23cも陽極23aと同様の方法により形成される。なお、陽極23a及び発光層23bの間には、陽極23aから発光層23bへのホール注入効果を促進するホール注入・輸送層(不図示)が設けられてもよい。また、発光層23b及び陰極23cの間には、好ましくは、陰極23cから発光層23bへの電子注入効果を促進する電子注入・輸送層(図示せず)が設けられる。
【0027】
このように構成されたEL素子2においては、電極端子を介して所定の電力が供給されることにより、発光層23bが発光する。発光した光は、陽極23a及び陰極23bを透過してEL素子2外へ取り出され、発光体3の両面から出射する。なお、EL素子2の発光面には、基板22を傷や汚れ等から保護するため、アクリル樹脂等から成る保護層や、基板22からの光取り出し効率を高めるための拡散層等が設けられてもよい(不図示)。
【0028】
ここで、窓1の作動例について再び図1を参照して説明する。ここでは、ハッチングされている箇所のパネルが点灯しているものとする。制御装置7からの制御信号を受けて、各窓1の制御部4は、格子状に配置された複数のEL素子2を、例えば、窓1全体の約4分の1の面積を発光させ、約4分の3の面積を発光させないように、かつ発光面が疎らとなるように、夫々のEL素子2を点灯制御させる。こうすれば、室内の居住者は、発光していない透明なEL素子2から、外の景色を見ることができる。また、例えば、北側に面し、日当たりが悪い部屋においても、点灯しているEL素子2から、まるで木漏れ日の光に照らされた南窓のように、室内に光が照射され、室内を明るくすることができる。
【0029】
また、上述した日当たりが悪い部屋においても、日中であれば、ある程度の自然光は窓1から入射することがありえる。すなわち、発光してない透明なEL素子2は、そのような自然光を室内に入射させる採光部として機能する。一方、発光しているEL素子2は、室内を所望の明るさに補光する補光部として機能する。つまり、本実施形態の窓1は、この窓1が設けられた部屋の日照状態に応じて、制御部4が、適宜に格子状に配置された透明なEL素子2を個別に点灯又は消灯させることにより、室外から光を採り入れつつ室内へ光を補うことができる。こうすることで、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができると共に、室内の明るさを確保しながらも、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0030】
以下、窓1におけるEL素子2の点灯パターンの例を挙げる。ここでも、ハッチングされている箇所のパネルが点灯しているものとする。なお、図7(a)、図8(a)、図9(a)は、樹木が生い茂った森が背景となっており、図7(b)、図8(b)(c)、図9(b)は、山波に沈む太陽が背景となっている。制御部4(図2参照)は、例えば、図7(a)(b)に示すように、発光しているパネルと発光してないパネルとが市松模様になるように、窓1の各EL素子2を選択的に点灯制御する。こうすれば、モダンな室内空間を演出することができる。
【0031】
また、図8(a)のように、木の幹や葉が見える箇所のEL素子2を点灯させず、木々の隙間に当たる箇所のEL素子のみを点灯させてもよい。更に、図8(b)に示すように、山波と太陽が見える箇所を点灯させず、空に当たる箇所を点灯させてもよい。このように、窓1における発光させる箇所を、背景と連動させることにより、居住者が窓1から外の景色を楽しむことができると共に、室内を明るくすることができる。また、図8(c)に示すように、窓1全体の中央部を点灯させず、両側枠近傍を点灯させてもよく、中央部から側枠方向へ発光する面積のグラデーションをかけてもよい。なお、図9(a)(b)に示すように、全てのEL素子2を消灯させれば、居住者は、通常の窓と同様に外の景色を眺めることができる。
【0032】
また、例えば、窓1の上方に位置するEL素子2を点灯させれば、居住者が読書や手作業を行うとき、窓1が実質的な照明器具として機能する(不図示)。また、窓1の下方に位置するEL素子2を点灯させれば、居住者の目に直接的に光が照射され難くなるので、例えば、寛ぎの時間には、このような点灯制御がなされてもよい。更に、制御部4は、窓1の一方の側部から他方の側部へ向けて、時間の経過と共に点灯させるEL素子2を移動させてもよい。このとき、例えば、パソコンP等の外部情報出力手段8(図1及び図2参照)から、日の出又は日没等の気象データを獲得し、この気象データに基づいて点灯させるEL素子の位置及び発光量を制御することにより、よりリアリティのある照明演出が可能になる。
【0033】
なお、本実施形態では、複数のEL素子2が殆ど隙間無く配置された例を示したが、図10に示すように、複数のEL素子2を、それらの間に一定の間隔が空くように配置してもよい。この場合、窓1を全面発光させることはできないが、窓1の半分程度の面積に各EL素子2が設けられていれば、室内を十分な明るさに補光することができる。また、ITOや蛍光体といった高コスト材料の使用量を低減できるので、生産コストを低減することができる。
【0034】
また、図11に示すように、EL素子2が、建造物の窓ガラス21の内面に配設されていてもよい。より具体的には、EL素子2の基板に柔軟性を有する樹脂シート25を用い、この樹脂シート25上に、所定寸法の夫々透明な発光部23及び封止材24を、複数個設けて、いわゆるフレキシブルEL素子シート26を作成する。このフレキシブルEL素子シート26を窓ガラス21の内面に貼着させて、これを窓1としてもよい。こうすれば、既存の室内の窓ガラスに、本実施形態の窓1と同様の機能を持たせることができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態に係る窓について、図12乃至図16を参照して説明する。本実施形態の窓1は、居住空間の天井Cに設けられた開口部に取り付けられるものである。窓1自体の構成は、上記第1の実施形態と同様である。本実施形態によれば、夜間は、図12に示すように、EL素子2を全点灯させれば、窓1は照明器具として機能し、室内を明るくすることができる。しかも、通常の照明器具では、器具本体等が室内で大きな存在感を示すが、本実施形態の照明装置1は、一見したところ通常の天窓であり、照明器具としての存在感がない。そのため、室内を広々とした開放感ある空間とすることができる。また、昼間は、図13に示すように、EL素子2を全消灯せれば、窓1は、いわゆる天窓として機能し、居住者は解放的な大空を眺めることができ、また、自然光によって室内を明るくすることができる。更に、曇り空や雨天時には、図14に示すように、部分的にEL素子2を点灯させれば、室内の補光をすることができる。また、夜間に、図15に示すように、窓1の周囲のみを点灯させることにより、ムードのある空間演出も可能となる。なお、図16に示すように、夜間に全消灯させれば、居住者が室内に居ながら夜空を眺めることができるようになる。
【0036】
すなわち、本実施形態の窓1を居住空間の天井Cに設けられた開口部に取り付けると共に、日照量や天候、及び居住者のライフスタイルに応じた点灯パターンを用いることで、居住者に寛ぎを感じさせる空間演出をすることができる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施形態に係る窓について、図17乃至図19を参照して説明する。本実施形態の窓1は、自動車のサンルーフUとして用いられるものである。この窓1は、自動車の停車時又は駐車時に、図17に示すように、EL素子2を点灯させる。近年では、自動車の車内が個室空間として認識されるようになってきており、特に、電気自動車ではその傾向が顕著である。本実施形態においては、サンルーフUを点灯させることにより、ドライバーが、例えば、停車時に読書を楽しんだりすることができ、車内を居心地良い空間とすることができる。また、図示を省略しているが、本実施形態においても、窓1の一部のみを個別に点灯させて、ドライバーの嗜好に従って、EL素子2が適宜に点灯制御される。なお、昼間や走行時は、図18、19に示すように、EL素子2を消灯させておけば、窓1は、通常のサンルーフUとして機能する。
【0038】
なお、ここでは、窓1をサンルーフUとして用いた例のみを示すが、例えば、フロントガラス、サイドガラス、リアガラスにも本実施形態の窓1を適用することができ、全ての面を点灯させれば、車外から車内を見ることができなくなり、プライベートな空間をつくることができる。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した本実施形態では、格子状に配置された複数のEL素子2を個別にオンオフ制御して、窓1全体における発光面積を変化させる例を示したが、制御部4が複数のEL素子2の夫々の調光出力を制御するようにしてもよい。また、赤色、青色、黄色の3色を発光可能なEL素子2を用い、制御部4が、これらの発光色を組み合わせて点灯制御することにより、例えば、様々なシチュエーションに室内空間の演色性を変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 窓
2 EL素子
2c EL素子(発光セル)
3 発光体
4 制御部
21 窓ガラス
W 壁面(構造物)
F 窓枠(開口部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL素子を用いた窓に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、発光層を陽極及び陰極で挟持させた発光部が透明基板上に形成されたものであり、電極間に電圧印加されたとき、発光層にキャリアとして注入された電子及びホールの再結合により生成された励起子によって発光する。
【0003】
EL素子は、発光層の蛍光物質に有機物を用いた有機EL素子と、無機物を用いた無機EL素子に大別される。特に、有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光が可能であり、蛍光物質の種類によって様々な発光色が得られ、また、平面発光体としての製造が容易であるという特性がある。
【0004】
この特性を活かして、有機EL素子から成るディスプレイ装置を、壁面や窓等に配置して、ディスプレイ装置に画像を再生させることにより、内装デザインを簡易に変更できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/075032パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような有機EL素子から成るディスプレイ装置の使用は、壁面や窓に映像表示をすることによって、擬似的な仮想空間を演出するものであって、壁面等の全面に大型テレビ等の平面ディスプレイを設置することと実質的に変わらない。従って、このものは、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をするには適していない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、EL素子を用い、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、窓において、透明なEL素子を複数個、構造物の開口部に配置した発光体と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記窓において、前記発光体は、複数個のEL素子を格子状に配置したものであり、前記制御部は、前記各EL素子を所定のパターンに従って個別に点灯制御することが好ましい。
【0010】
また、上記窓において、前記EL素子が、構造物の窓ガラス内面に配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御部が、透明なEL素子を個別に点灯又は消灯させることにより、室外から光を採り入れつつ室内へ光を補うことができ、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る窓を用いた室内空間において、EL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図2】同窓を用いた空間におけるシステム構成を示すブロック図。
【図3】同窓の一部分解斜視図。
【図4】同窓に用いられるEL素子が、複数のEL素子(発光セル)を格子状に配置されて構成される例を示す斜視図。
【図5】同窓に用いられるEL素子の概略構成を示す側断面図。
【図6】同窓を用いた室内空間において、EL素子を点灯させない状態を示す図。
【図7】(a)(b)は、同窓におけるEL素子の点灯パターンを示す図。
【図8】(a)(b)(c)は、同窓におけるEL素子の点灯パターンを示す図。
【図9】(a)(b)は、同窓におけるEL素子の点灯パターンを示す図。
【図10】同窓の変形例を示す斜視図。
【図11】同窓の更に別の変形例を示す斜視図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る窓を天井に用いた室内空間において、夜間にEL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図13】同室内空間において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図14】同室内空間において、曇り空又は雨天時等にEL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図15】同室内空間において、夜間にEL素子を部分的に点灯させている状態を示す図。
【図16】同室内空間において、夜間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る窓を車のサンルーフに用いた車内空間において、夜間にEL素子を全点灯させている状態を示す図。
【図18】同車内空間において、昼間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【図19】同車内空間において、夜間にEL素子を全消灯させている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態に係る窓について、図1乃至図10を参照して説明する。本実施形態の窓1は、図1に示すように、一般住宅の壁面W(構造物)に設けられた窓枠F(開口部)に取り付けられるものである。特に、北側に面し、日当たりの悪い部屋に好適に用いられる。ここでは、4枚の窓1が窓枠Fに取り付けられた例を示す。
【0014】
窓1は、図1及び図2に示すように、EL素子2を複数個、配置された発光体3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備える。窓枠Fには、レール状に配線5(図1において破線で示す)が設けられており、発光体3の一端部に設けられた制御部4の受信部41と電気的に接続されている。配線5は、給電線及び信号線の双方を含んでおり、中継器6を介して制御装置7に接続されている。制御装置7は、給電部ACに接続され、所定電力を窓1の制御部4に供給すると共に、それらの点灯制御信号を出力する。なお、図1では、制御装置7を、壁付けリモコン型のものとして示している。
【0015】
制御部4は、上述した受信部41に加えて、駆動回路42と、記憶部43と、演算部44とを備える。駆動回路42は、演算部44から出力される制御信号に従ってオンオフ動作をする少なくとも1つ以上のスイッチ素子等から成り、各EL素子2を点灯駆動させる。記憶部43は、EEPROM等の汎用のメモリ及びマイコン等から成り、各EL素子2に個別のアドレスを割り宛て、そのアドレスを記憶すると共に、制御装置7から受信した制御信号に従って所定アドレスのEL素子2の点灯パターン等を記憶する。また、演算部44は、汎用のマイコン等から成り、駆動回路42を制御して所定アドレスのEL素子2を記憶部43に記憶された点灯パターンに基づいて点灯させるための出力値を決定し、それを駆動回路42に実行させる。
【0016】
制御装置7は、操作部71と、送信部72と、記憶部73と、演算部74と、入力部75とを備える。操作部71は、ユーザの操作によるEL素子2の点灯制御内容を入力するものである。この操作部71には、EL素子2の点灯状態を表示する表示部等が設けられてもよい。送信部72は、演算部74の命令に従って所定の制御信号を中継器6及び制御部4へ送信する。記憶部73は、窓1が複数である場合、窓1毎の各EL素子2に個別のアドレスを割り宛て、そのアドレスを記憶すると共に、夫々のEL素子2の点灯パターン等を記憶する。演算部74は、記憶部73に記憶された点灯パターンに基づいて所定のEL素子2を点灯させる制御信号を送信部72に出力させる。なお、上述した制御部4の記憶部43及び演算部44は、制御装置7の記憶部73及び演算部74に共用化されていてもよい。
【0017】
入力部75は、外部情報出力手段8から出力された外部情報を受信して、その情報を演算部74に入力する。ここで言う外部情報とは、例えば、日照量や気温といった天候情報や、居住者の有無や家電機器の操作状況といった居住者の生活パターンに関する生活情報等が挙げられる。また、外部情報出力手段8とは、インターネットに接続されたパソコンPや携帯電話Mといった情報処理端末、又は照明器具を含む種々の家電を操作するためのリモコンRや、屋内又は屋外に設置された照度センサ(不図示)等である。外部情報出力手段8から入力部75への外部情報の送受信は、有線でも良いが、例えば、無線LAN等の無線通信で行われることが好ましい。演算部74は、この外部情報を記憶部73に記憶させると共に、この外部情報から所定の点灯パターンを抽出し、抽出された点灯パターンでEL素子2を点灯制御するように、送信部72に所定の制御信号を出力する。
【0018】
中継器6は、制御装置7からの点灯制御信号に従って給電部ACから供給された電力をEL素子2の点灯に適するように整流、変圧する。なお、この中継器6の機能を、上述した制御部4の駆動回路42等に実行させてもよい。
【0019】
窓1は、図3に示す通り、複数個のEL素子2が格子状に配置された発光体3が、対向する2枚の透明な板ガラス10,11に挟持された構成となっている。なお、図例では、一方の板ガラス10の一部を切り欠いて表現している。また、発光体3の各EL素子2は、個別に点灯制御されるように、ITO(酸化インジウムスズ:インジウムチンオキサイド)等の透明な配線12によって制御部4の駆動回路42(図2参照)に接続されている。各EL素子2間の間隔は、絶縁性を確保できる範囲において、なるべく狭く形成されることが望ましい。なお、この間隔に、例えば、光拡散材を含有した絶縁性樹脂膜が設けられてもよい。
【0020】
EL素子2は、無機EL素子であってもよいが、素子の平面化に適した有機EL素子が好ましい。また、その形状は、5〜600mm角、好ましくは50〜100mmの略正方形形状の平面発光体である。一つのEL素子2が、単体の発光パネルを構成するものであってもよいし、例えば、図4に示すように、10mm角のEL素子2c(発光セル)を格子状に100個設けることによって一つの発光パネルを構成するものであってもよい。後者の場合、セル単位で点灯制御されるように透明な配線のパターンニングが施されることが望ましい。また、その場合の駆動方式は、アクティブ型、パッシブ型のいずれであってもよい。
【0021】
また、EL素子2は、図5に示すように、透光性を有する基板22上に、発光部23を形成し、その外側を封止材24で被覆したものである。なお、ここでは、EL素子2が単体の発光パネルとして構成されている例を示すが、上述した図4のような、複数のEL素子2cが格子状に配置された発光パネルにおいても、発光部のサイズや配線のパターンニング等の相違点を除き、基本的な構成は同じである。発光部23は、透明導電膜から成る陽極23a、発光機能を有する発光層23b、透光性を有する陰極23cを、順に基板22上に積層形成したものである。封止材24は、透明な材料から構成されており、各電極の一部が露出するように被覆され、これら電極の露出部は、直接又は透明なリード線等を介して電極端子(不図示)に電気的に接続される。
【0022】
基板22は、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等の透光性ガラスや、透光性樹脂材料等から成り、矩形板状に形成される。なお、窓1を構成する板ガラス11(図3参照)上に発光部23等を形成してもよく、この場合、板ガラス11が実質的な基板22ということになる。
【0023】
陽極23aは、発光層23bにホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、導電性化合物又はこれらの混合物から成る電極材料が用いられ、好ましくは、仕事関数が4eV以上のものが用いられる。特に、ITO、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の透光性の導電材料が好ましい。陽極23aは、これらの電極材料を、基板22の表面に、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により成膜及びパターニングすることによって形成される。
【0024】
発光層23bは、所望の白色光を発光させ得る有機蛍光材料が用いられ、例えば、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及びこれらの発光性化合物から成る基を分子構造の一部に有する化合物、高分子材料、各種蛍光色素の混合材料等が用いられる。なお、図4に示したような複数のEL素子2cによって発光パネルが構成される場合、各EL素子2cがRGBの異なる発光色となるように、適宜に蛍光体が選択されることが望ましい。
【0025】
発光層23bは、陽極23aの表面に上述した化合物を、例えば、真空蒸着法により成膜及びパターニングすることによって形成される。なお、発光層23bは、複数の異なる材料が積層されたものであってもよく、これら複数層の間に電位を調整するためのバッファ層を介在させてもよい。
【0026】
陰極23cは、発光層23bに電子を注入するための電極であり、陽極23aと同様に、ITO、SnO2、ZnO等の透光性の導電材料によって形成される。また、陰極23cも陽極23aと同様の方法により形成される。なお、陽極23a及び発光層23bの間には、陽極23aから発光層23bへのホール注入効果を促進するホール注入・輸送層(不図示)が設けられてもよい。また、発光層23b及び陰極23cの間には、好ましくは、陰極23cから発光層23bへの電子注入効果を促進する電子注入・輸送層(図示せず)が設けられる。
【0027】
このように構成されたEL素子2においては、電極端子を介して所定の電力が供給されることにより、発光層23bが発光する。発光した光は、陽極23a及び陰極23bを透過してEL素子2外へ取り出され、発光体3の両面から出射する。なお、EL素子2の発光面には、基板22を傷や汚れ等から保護するため、アクリル樹脂等から成る保護層や、基板22からの光取り出し効率を高めるための拡散層等が設けられてもよい(不図示)。
【0028】
ここで、窓1の作動例について再び図1を参照して説明する。ここでは、ハッチングされている箇所のパネルが点灯しているものとする。制御装置7からの制御信号を受けて、各窓1の制御部4は、格子状に配置された複数のEL素子2を、例えば、窓1全体の約4分の1の面積を発光させ、約4分の3の面積を発光させないように、かつ発光面が疎らとなるように、夫々のEL素子2を点灯制御させる。こうすれば、室内の居住者は、発光していない透明なEL素子2から、外の景色を見ることができる。また、例えば、北側に面し、日当たりが悪い部屋においても、点灯しているEL素子2から、まるで木漏れ日の光に照らされた南窓のように、室内に光が照射され、室内を明るくすることができる。
【0029】
また、上述した日当たりが悪い部屋においても、日中であれば、ある程度の自然光は窓1から入射することがありえる。すなわち、発光してない透明なEL素子2は、そのような自然光を室内に入射させる採光部として機能する。一方、発光しているEL素子2は、室内を所望の明るさに補光する補光部として機能する。つまり、本実施形態の窓1は、この窓1が設けられた部屋の日照状態に応じて、制御部4が、適宜に格子状に配置された透明なEL素子2を個別に点灯又は消灯させることにより、室外から光を採り入れつつ室内へ光を補うことができる。こうすることで、自然との調和が取れた、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができると共に、室内の明るさを確保しながらも、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0030】
以下、窓1におけるEL素子2の点灯パターンの例を挙げる。ここでも、ハッチングされている箇所のパネルが点灯しているものとする。なお、図7(a)、図8(a)、図9(a)は、樹木が生い茂った森が背景となっており、図7(b)、図8(b)(c)、図9(b)は、山波に沈む太陽が背景となっている。制御部4(図2参照)は、例えば、図7(a)(b)に示すように、発光しているパネルと発光してないパネルとが市松模様になるように、窓1の各EL素子2を選択的に点灯制御する。こうすれば、モダンな室内空間を演出することができる。
【0031】
また、図8(a)のように、木の幹や葉が見える箇所のEL素子2を点灯させず、木々の隙間に当たる箇所のEL素子のみを点灯させてもよい。更に、図8(b)に示すように、山波と太陽が見える箇所を点灯させず、空に当たる箇所を点灯させてもよい。このように、窓1における発光させる箇所を、背景と連動させることにより、居住者が窓1から外の景色を楽しむことができると共に、室内を明るくすることができる。また、図8(c)に示すように、窓1全体の中央部を点灯させず、両側枠近傍を点灯させてもよく、中央部から側枠方向へ発光する面積のグラデーションをかけてもよい。なお、図9(a)(b)に示すように、全てのEL素子2を消灯させれば、居住者は、通常の窓と同様に外の景色を眺めることができる。
【0032】
また、例えば、窓1の上方に位置するEL素子2を点灯させれば、居住者が読書や手作業を行うとき、窓1が実質的な照明器具として機能する(不図示)。また、窓1の下方に位置するEL素子2を点灯させれば、居住者の目に直接的に光が照射され難くなるので、例えば、寛ぎの時間には、このような点灯制御がなされてもよい。更に、制御部4は、窓1の一方の側部から他方の側部へ向けて、時間の経過と共に点灯させるEL素子2を移動させてもよい。このとき、例えば、パソコンP等の外部情報出力手段8(図1及び図2参照)から、日の出又は日没等の気象データを獲得し、この気象データに基づいて点灯させるEL素子の位置及び発光量を制御することにより、よりリアリティのある照明演出が可能になる。
【0033】
なお、本実施形態では、複数のEL素子2が殆ど隙間無く配置された例を示したが、図10に示すように、複数のEL素子2を、それらの間に一定の間隔が空くように配置してもよい。この場合、窓1を全面発光させることはできないが、窓1の半分程度の面積に各EL素子2が設けられていれば、室内を十分な明るさに補光することができる。また、ITOや蛍光体といった高コスト材料の使用量を低減できるので、生産コストを低減することができる。
【0034】
また、図11に示すように、EL素子2が、建造物の窓ガラス21の内面に配設されていてもよい。より具体的には、EL素子2の基板に柔軟性を有する樹脂シート25を用い、この樹脂シート25上に、所定寸法の夫々透明な発光部23及び封止材24を、複数個設けて、いわゆるフレキシブルEL素子シート26を作成する。このフレキシブルEL素子シート26を窓ガラス21の内面に貼着させて、これを窓1としてもよい。こうすれば、既存の室内の窓ガラスに、本実施形態の窓1と同様の機能を持たせることができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態に係る窓について、図12乃至図16を参照して説明する。本実施形態の窓1は、居住空間の天井Cに設けられた開口部に取り付けられるものである。窓1自体の構成は、上記第1の実施形態と同様である。本実施形態によれば、夜間は、図12に示すように、EL素子2を全点灯させれば、窓1は照明器具として機能し、室内を明るくすることができる。しかも、通常の照明器具では、器具本体等が室内で大きな存在感を示すが、本実施形態の照明装置1は、一見したところ通常の天窓であり、照明器具としての存在感がない。そのため、室内を広々とした開放感ある空間とすることができる。また、昼間は、図13に示すように、EL素子2を全消灯せれば、窓1は、いわゆる天窓として機能し、居住者は解放的な大空を眺めることができ、また、自然光によって室内を明るくすることができる。更に、曇り空や雨天時には、図14に示すように、部分的にEL素子2を点灯させれば、室内の補光をすることができる。また、夜間に、図15に示すように、窓1の周囲のみを点灯させることにより、ムードのある空間演出も可能となる。なお、図16に示すように、夜間に全消灯させれば、居住者が室内に居ながら夜空を眺めることができるようになる。
【0036】
すなわち、本実施形態の窓1を居住空間の天井Cに設けられた開口部に取り付けると共に、日照量や天候、及び居住者のライフスタイルに応じた点灯パターンを用いることで、居住者に寛ぎを感じさせる空間演出をすることができる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施形態に係る窓について、図17乃至図19を参照して説明する。本実施形態の窓1は、自動車のサンルーフUとして用いられるものである。この窓1は、自動車の停車時又は駐車時に、図17に示すように、EL素子2を点灯させる。近年では、自動車の車内が個室空間として認識されるようになってきており、特に、電気自動車ではその傾向が顕著である。本実施形態においては、サンルーフUを点灯させることにより、ドライバーが、例えば、停車時に読書を楽しんだりすることができ、車内を居心地良い空間とすることができる。また、図示を省略しているが、本実施形態においても、窓1の一部のみを個別に点灯させて、ドライバーの嗜好に従って、EL素子2が適宜に点灯制御される。なお、昼間や走行時は、図18、19に示すように、EL素子2を消灯させておけば、窓1は、通常のサンルーフUとして機能する。
【0038】
なお、ここでは、窓1をサンルーフUとして用いた例のみを示すが、例えば、フロントガラス、サイドガラス、リアガラスにも本実施形態の窓1を適用することができ、全ての面を点灯させれば、車外から車内を見ることができなくなり、プライベートな空間をつくることができる。
【0039】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した本実施形態では、格子状に配置された複数のEL素子2を個別にオンオフ制御して、窓1全体における発光面積を変化させる例を示したが、制御部4が複数のEL素子2の夫々の調光出力を制御するようにしてもよい。また、赤色、青色、黄色の3色を発光可能なEL素子2を用い、制御部4が、これらの発光色を組み合わせて点灯制御することにより、例えば、様々なシチュエーションに室内空間の演色性を変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 窓
2 EL素子
2c EL素子(発光セル)
3 発光体
4 制御部
21 窓ガラス
W 壁面(構造物)
F 窓枠(開口部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なEL素子を複数個、構造物の開口部に配置した発光体と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えたことを特徴とする窓。
【請求項2】
前記発光体は、複数個のEL素子を格子状に配置したものであり、
前記制御部は、前記各EL素子を所定のパターンに従って個別に点灯制御することを特徴とする請求項1に記載の窓。
【請求項3】
前記EL素子が、構造物の窓ガラス内面に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窓。
【請求項1】
透明なEL素子を複数個、構造物の開口部に配置した発光体と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えたことを特徴とする窓。
【請求項2】
前記発光体は、複数個のEL素子を格子状に配置したものであり、
前記制御部は、前記各EL素子を所定のパターンに従って個別に点灯制御することを特徴とする請求項1に記載の窓。
【請求項3】
前記EL素子が、構造物の窓ガラス内面に配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−15080(P2012−15080A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153488(P2010−153488)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]