説明

立体形状物の製造方法及び立体形状物

【課題】酸化チタンの光散乱による硬化深度の低下と、光活性による光重合反応の阻害要因を減らし、かつ酸化チタン含有率を増加させても、良好な流動性と光硬化性を示し、光積層造形法により、所望の立体形状物を容易に造形できる酸化チタンを含有する組成物で構成された立体形状物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(C)成分:(A)電子顕微鏡法による数平均粒径が10〜500nmの酸化チタン粒子、(B)重合性官能基を有する化合物、及び(C)光重合開始剤を含有する光硬化性液状組成物に光を照射して、前記組成物の硬化層を形成し、前記硬化層の上に、前記組成物を再度供給し、光を照射して、前記組成物の硬化層をさらに形成することを繰り返すことにより、前記硬化層が積層一体化した立体形状物を造形する立体形状物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス成形用として有用な立体形状物の製造方法に関する。さらに詳しくは、この光硬化性組成物の硬化物からなる立体形状物、及びこの立体形状物を焼成して得られるセラミックス焼成体に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムやシリコン等の金属粉体やセラミックス粉体を、光硬化性液状組成物からなるバインダー中に分散し、これを公知の積層造形法により硬化させて所望の立体形状を形成した後に、焼成し、複雑な形状を有する立体形状を製造する技術は、公知である。
このような積層造形法としては、CAD(Computer Aided Design)/CAM(Computer Aided Manufacturing)を用いて得られた目的とする立体形状の数値データに基づき、各種ラピッドプロトタイピング法により、造形する技術が挙げられる。具体的には、ノズルから樹脂混合物を吐出し、熱硬化させる方法(特許文献1)や、金属粉体を溶融してノズルから吐出して積層する方法(特許文献2)、光積層造形法を利用する方法(特許文献3〜9)等が知られている。光積層造形法は、微細な形状を成形し易い等の利点を有することから、その利用が積極的に検討されている。
ここで、公知の光積層造形法としては、光硬化性樹脂液の薄層液面に光線を照射して所望パターンの断面硬化層を形成し、次に、この硬化層の上に光硬化性樹脂液を1層分供給して、断面硬化層をさらに形成し、この操作を繰り返すことによって、断面硬化層が積層一体化した造形希望形状の立体形状物を造形する方法が代表的である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
一方、酸化チタンは、誘電率や屈折率が高く、誘電損失が少ないため、フォトニック結晶やフォトニックフラクタル等、光や電磁波制御材料としても期待されており、研究開発が活発に行われている。また、高い光触媒機能を有し、水質浄化や抗菌作用等の環境浄化材料として利用されており、大きな発展が期待されている(非特許文献2)。酸化チタンを光触媒として利用する際には粉末や薄膜形態で使用されている。
【0004】
【非特許文献1】ポール・エフ・ジェイコブス(Paul F. Jacobs)著、「高速3次元成形の基礎」、第1版、日経BP出版センター、1993年12月10日、p.379−406
【非特許文献2】清野 学著、「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版、1991年6月
【特許文献1】特開2000−144205号公報
【特許文献2】特開2003−129862号公報
【特許文献3】特開平8−252867号公報
【特許文献4】特開2001−261977号公報
【特許文献5】特開平8−252867号公報
【特許文献6】特開平7−60844号公報
【特許文献7】特開2004−143247
【特許文献8】特開平6−329460号公報
【特許文献9】特開平8−91940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの技術は、積層造形法が熱硬化性樹脂を用いるものである場合には、複雑な形状の立体形状物を造形することが困難であったり、光積層造形法を用いる方法ではあっても、従来は1μm程度以上の比較的粒径の大きいセラミックス粉体を用いていたため、得られる立体形状物の容積中に占めるセラミックス粉体の割合が低く、このため、立体形状物を焼成して得られる焼成体の密度は、セラミック粉体自体の密度の90%未満であった。また、溶媒やバインダー組成物を大量に混和しなければならないために、十分な強度を有するセラミックス焼成体を製造することが困難である等の欠点があった。
本発明者らは、フォトニック結晶やフォトニックフラクタルのような3次元的に複雑な構造物をセラミックスで造形するのに、粒径がきわめて小さいセラミックス粒子を光硬化性液状組成物に分散させて光造形し、その後に樹脂を脱脂し焼結する技術を開発し、既に特許出願を行っている(特願2005−078773号)。
【0006】
しかしながら、酸化チタン粒子を含有する光硬化性液状組成物を用い、前記特許文献1の方法によって光造形する場合、酸化チタンは他のセラミックスとは異なり、屈折率が約2.8と非常に高いため、光を強く散乱し、造形に必要な硬化深度が十分に得られないことや、光エネルギーによって電子を取り込む強力な酸化活性を有するため、カチオン重合系の光硬化性液状組成物に混合した場合、光重合反応を阻害し、光硬化性液状組成物が硬化しにくいという難点があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、酸化チタンの光散乱による硬化深度の低下と、光活性による光重合反応の阻害要因を減らし、かつ酸化チタン含有率を増加させても、良好な流動性と光硬化性を示し、光積層造形法により、所望の立体形状物を容易に造形できる酸化チタンを含有する組成物で構成された立体形状物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意研究を行い、微細な酸化チタン粒子粉体を用い、これを光重合が大きく阻害されないラジカル系光硬化性液状組成物に混合し、積層厚みを極力薄くすることと、積層造形時に形崩れが起きないよう造形時に目的とする造形品の周囲に保護壁を同時に積層造形することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の立体形状物の製造方法、立体形状物、及び酸化チタン系セラミックス焼成体を提供する。
1.下記(A)〜(C)成分:
(A)電子顕微鏡法による数平均粒径が10〜500nmの酸化チタン粒子、
(B)重合性官能基を有する化合物、及び
(C)光重合開始剤
を含有する光硬化性液状組成物に光を照射して、前記組成物の硬化層を形成し、前記硬化層の上に、前記組成物を再度供給し、光を照射して、前記組成物の硬化層をさらに形成することを繰り返すことにより、前記硬化層が積層一体化した立体形状物を造形する立体形状物の製造方法。
2.前記組成物全量に対して、前記(A)酸化チタン粒子を10容量%以上含有してなる、上記1に記載の立体形状物の製造方法。
3.前記(B)成分が、ラジカル重合性化合物である、上記1又は2に記載の立体形状物の製造方法。
4.前記ラジカル重合性化合物の少なくとも一部が、3個以上の重合性官能基を有するラジカル重合性化合物である、上記3に記載の立体形状物の製造方法。
5.前記積層一体化される前記組成物の硬化層の一層の厚みが2〜20μmである、上記1〜4のいずれかに記載の立体形状物の製造方法。
6.前記組成物の硬化層の積層一体化と並行して、目的とする立体形状物の周囲に、前記組成物の硬化層を積層一体化してなる保護壁を形成する、上記1〜5のいずれかに記載の立体形状物の製造方法。
7.前記組成物が、(D)焼結助剤として、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム及び酸化ケイ素からなる群から選択される1種以上の金属酸化物を、前記組成物全体に対して、0.5〜20重量%含有する、上記1〜6のいずれかに記載の立体形状物の製造方法。
8.下記(A)〜(C)成分を含有してなる光硬化性液状組成物を硬化させて得られる、立体形状物。
(A)電子顕微鏡法による数平均粒径10〜500nmの酸化チタン粒子、
(B)重合性官能基を有する化合物、及び
(C)光重合開始剤
9.上記8に記載の立体形状物を焼成して得られる、酸化チタン系セラミックス焼成体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化チタンの光散乱による硬化深度の低下と、光活性による光重合反応の阻害要因を減らし、かつ酸化チタン含有率を増加させても、良好な流動性と光硬化性を示し、光積層造形法により、所望の立体形状物を容易に造形できる酸化チタン又は酸化チタンを含有する複合材で構成された立体形状物の製造方法を提供することができる。
本発明の酸化チタンを含有する立体形状物の製造方法は、酸化チタン粉体等とバインダー組成物との混合物中に占める酸化チタン充填率を増加させても、良好な塗布性と光硬化性を示し、その結果、光積層造形法により所望の立体形状物を容易に造形できるという効果を奏する。このため、本発明の立体形状物の製造方法は、酸化チタン系焼結体の製造に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の立体形状物の製造方法について説明する。
本発明の立体形状物の製造方法は、(A)電子顕微鏡法による数平均粒径が10〜500nmの酸化チタン粒子、(B)重合性官能基を有する化合物、及び(C)光重合開始剤を含有する光硬化性組成物スラリーを用いた光積層造形法である。このような構成の光硬化性組成物スラリーは、チクソトロピックな特性を示すため流動させるときには粘性抵抗が小さく、未硬化の組成物スラリーをノズルから容易に吐出でき、保存する際には粘性が高く長時間にわたり均一な粒子分散状態を維持できる他、既存の硬化層の上に未硬化の組成物スラリーを塗布した後には容易に流動性を失い、安定した塗布層を得ることができる。また、積層する層厚を20μm以下に制御することによって各層の硬化と層間の接合を十分果たすことが可能となる。
【0012】
1.光硬化性液状組成物
本発明に使用する光硬化性液状組成物は、(A)電子顕微鏡法による数平均粒径10〜500nmの酸化チタン粒子、(B)重合性官能基を有する化合物、及び(C)光重合開始剤を含有してなる。
【0013】
(A)成分は、酸化チタン粒子である。ここで、粒子とは、粉体を含む概念である。その数平均粒径は、電子顕微鏡法による測定で、通常、10〜500nmである、好ましくは、100〜300nmであり、さらに好ましくは、200〜300nmである。粒径が極めて小さい酸化チタン粒子を用いることにより流動性及び光積層造形の際の硬化性に優れた光硬化性液状組成物(スラリー)となる。(A)成分の粒径は、電子顕微鏡法により測定されるが、特に、走査型電子顕微鏡法が好ましい。(A)成分の形状は、粒径を定義できる程度の粒状性を有していれば、特に限定されるものではない。例えば、球状に限らず、粉砕体等であってもよい。球状以外の形状である場合の粒径は、電子顕微鏡像における最大径により定義される。
【0014】
(A)成分を構成する酸化チタン粒子の市販品としては、例えば、TTO(10〜50nm)、PT−401W(70nm)及びCR−EL(250nm)(以上、岩谷産業株式会社製)等を挙げることができる。
【0015】
(A)成分の含有割合は、光硬化性液状組成物全体に対して、通常、10容量%以上であり、好ましくは、20容量%以上であり、さらに好ましくは、30容量%以上であり、特に好ましくは、35容量%以上である。酸化チタンにはアナターゼ型とルチル型の結晶構造が混在している場合があり、容量%としての上限値は一定に定まるものではないが、重量%としては、光硬化性液状組成物全体に対して、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下がさらに好ましく、86重量%以下が特に好ましい。例えばルチル型の比重は4.26であり、(B)及び(C)成分の比重を略1.0とすると、95重量%は、約82容量%に該当する。またアナターゼ型の比重は3.82であり、95重量%は、約83容量%に該当する。酸化チタンの含有割合が35容量%以上であれば、立体形状物において本成分が十分に緻密となるため、良好なセラミックスを製造できる。また、95重量%以下であれば、本組成物中に酸化チタンを均一に分散することができる。
【0016】
(B)重合性官能基を有する化合物(以下、(B)成分)として用いられる化合物には、(B1)ラジカル重合性化合物及び(B2)カチオン重合性化合物がある。本発明においては、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0017】
(B1)ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合(C=C)を分子中に有する化合物であり、(メタ)アクリル系モノマーを含む概念である。(B1)成分としては、1分子中に1個のエチレン性不飽和結合を有する単官能性モノマー、及び1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマーが挙げられる。
【0018】
(B1)成分として好適に使用できる単官能性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、テトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及び下記一般式(1)〜(3)で表される化合物を例示することができる。
【0019】
【化1】

【0020】
式中、R21は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R22は、炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R23は、水素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、R24は、炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示す。uは、0〜12、好ましくは1〜8の整数であり、vは、1〜8、好ましくは1〜4の整数である。
【0021】
これらの単官能性モノマーのうち、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0022】
(B1)成分として好適に使用できる多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート等を例示することができる。
【0023】
これらの多官能性モノマーのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0024】
上記の単官能性モノマーの市販品としては、例えば、ACMO(以上、興人製)、アロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亞合成(株)製)、IBXA(以上、共栄社化学製)、KAYARAD TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート160、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート320、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0025】
また、多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700、ビスコート3PA(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0026】
本発明では、(B1)成分の少なくとも一部が、3官能以上、即ち、1分子中に3個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能性モノマー、好ましくは、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーであることが好ましい。また、3官能以上の多官能性モノマーの含有割合は、(B)成分全体を100重量%としたとき、好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは15重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。含有割合が10重量%以上であることにより、本組成物が良好な光硬化性を示すと共に、良好な強度を有する立体形状物が得られる。
【0027】
上記の単官能性モノマー及び多官能性モノマーは、各々一種単独で、又は二種以上組み合わせるか、あるいは単官能性モノマーの少なくとも一種と多官能性モノマーの少なくとも一種とを組み合わせて(B)成分を構成することができる。
【0028】
(B2)カチオン重合性化合物は、カチオン性光重合開始剤の存在下で光照射することにより重合反応や架橋反応を起こす有機化合物である。(B2)成分としては、エポキシ化合物、オキセタニル基含有化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応生成物であるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等を挙げることができる。
【0029】
(B2)成分として好適に使用できるエポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド基含有化合物及びグリシジル基含有化合物が好ましい。
シクロヘキセンオキシド基含有化合物はカチオン重合性に優れている。また、グリシジル基含有化合物は、得られる重合体に柔軟性を付与し、重合系のモビリティを増加させ、硬化性を一層向上させることができる。
【0030】
(B2)成分として好適に使用できるシクロヘキセンオキシド基含有化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を例示することができ、これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
これらのうち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートが好ましい。
【0032】
シクロヘキセンオキシド基含有化合物の市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6199、UVR−6200、UVR−6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2100、KRM−2110、KRM−2199(以上、旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
【0033】
(B2)成分として好適に使用できるグリシジル基含有化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類等を例示することができ、これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
これらのうち、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0035】
グリシジル基含有化合物の市販品としては、エポライト1600(共栄社化学(株)製)、UVR−6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)等を挙げることができる。
【0036】
(B2)成分として好適に使用できるオキセタニル基含有化合物(以下「オキセタン化合物」という。)は、下記式(4)で表されるオキセタン環を分子内に1個以上有する化合物である。
分子内に1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
上記式(5)において、Zは酸素原子又は硫黄原子を示す。Rは水素原子;フッ素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜6のフルオロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基;フリル基又はチエニル基である。
は、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素原子数2〜6のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、アントニル基、フェナントリル基等の炭素原子数6〜18のアリール基;ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、エトキシベンジル基等の置換又は非置換の炭素原子数7〜18のアラルキル基;フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等のアリーロキシアルキル等のその他の芳香環を有する基;エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等の炭素原子数2〜6のアルキルカルボニル基;エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基;エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等の炭素原子数2〜6のN−アルキルカルバモイル基等である。
【0040】
分子内に2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(6)で示される化合物が挙げられる。
【0041】
【化4】

【0042】
上記式(6)において、Rは、上記式(5)における定義に同じである。
は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の線状或いは分枝状の、炭素原子数1〜20のアルキレン基;ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の線状或いは分枝状の、炭素原子数1〜120のポリ(アルキレンオキシ)基;プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等の線状或いは分枝状の不飽和炭化水素基;カルボニル基;カルボニル基を含むアルキレン基;分子鎖の途中にカルボキシル基を含むアルキレン基;分子鎖の途中にカルバモイル基を含むアルキレン基である。また、Rは、下記式(7)、式(8)及び式(9)の何れかで示される基から選択される多価の基でもよい。
【0043】
【化5】

【0044】
上記式(7)において、Rは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;低級アルキルカルボキシル基;カルボキシル基又はカルバモイル基であり、xは1〜4の整数である。
【0045】
【化6】

【0046】
上記式(8)において、Rは、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、−NH−、−SO−、−SO−、−C(CF−又は−C(CH−である。
【0047】
【化7】

【0048】
上記式(9)において、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。yは、0〜200の整数である。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基、又は下記式(10)で示される基である。
【0049】
【化8】

【0050】
上記式(10)において、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜18のアリール基である。zは、0〜100の整数である。
【0051】
分子内に2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(11)、式(12)及び式(13)の何れかで示される化合物等が挙げられる。
【0052】
【化9】

【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
上記式(13)において、Rは、上記式(5)における定義と同じである。
【0056】
分子内に3個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(14)で示される化合物等が挙げられる。
【0057】
【化12】

【0058】
上記式(14)において、Rは、上記式(5)における定義と同じである。Rは、3〜10価の有機基を示し、例えば下記式(15)〜(17)の何れかで示される基等の炭素原子数1〜30の分枝状又は線状のアルキレン基、下記式(18)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、下記式(19)又は式(20)で示される線状又は分枝状ポリシロキサン含有基等が挙げられる。jは、Rの価数に等しい3〜10の整数を示す。
【0059】
【化13】

【0060】
上記式(15)において、R10は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
上記式(18)において、Lは同一又は異なる、1〜10の整数である。
【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
分子内に3個以上のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(21)で示される化合物等が挙げられる。
【0068】
【化19】

【0069】
下記式(22)で表される化合物は、分子内に1〜10個のオキセタン環を有し得る。
【0070】
【化20】

【0071】
上記式(22)において、Rは、上記式(5)における定義と同じであり、R11は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基(ここで、アルキル基は同一又は異なり、炭素原子数3〜12のアルキル基である。トリアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基等を挙げることができる。)であり、rは1〜10の整数を示す。
【0072】
さらに、オキセタン化合物としては、上述の例以外にも、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量1,000〜5,000程度の高分子量を有する化合物も挙げられる。このような例として、下記式(23)、式(24)、式(25)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【0073】
【化21】

(ここで、pは20〜200の整数である。)
【0074】
【化22】

(ここで、qは15〜100の整数である。)
【0075】
【化23】

(ここで、sは20〜200の整数である。)
【0076】
以上説明したオキセタン化合物の具体例は次の通りである。
〔分子内にオキセタン環を1個有する化合物〕
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等。
【0077】
〔分子内にオキセタン環を2個以上有する化合物〕
3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等。
これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
これらのうち、(B2)成分として好適に使用できるオキセタン化合物は、分子内に有するオキセタン環の数が1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは2の化合物である。具体的には、下記式(26)で示される(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、下記式(27)で示される1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、下記式(28)で示される1,2−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エタン、下記式(29)で示されるトリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、下記式(30)で示される3−エチル−3−オキセタニルメトキシベンゼン及び上記式(22)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
【化24】

【0080】
【化25】

【0081】
【化26】

【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
これらのオキセタン化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
(B)成分の含有割合は、(B1)成分、(B2)成分のいずれを用いるかを問わず、光硬化性液状組成物全体に対して、通常、1〜65重量%であり、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。(B)成分の含有割合が1重量%以上であれば、(A)成分が、均一に本組成物中に分散される。また、20重量%以下であれば、本組成物における(A)成分の含有割合が増大し、焼成後の立体形状物の体積収縮を低減できる。
一方、(B)成分の含有割合が過小である場合には、粘度が増大し、本組成物は、十分な流動性が得られない。また、この含有割合が過大である場合には、(A)成分の含有割合が減少し、立体形状物の強度が低下したり、立体形状物を脱脂、焼成する際に、ひび割れ等の欠損を生じたりする。
また、(B)成分としては、(B1)成分と(B2)成分を併用することもできる。
【0086】
(C)光重合開始剤(以下、(C)成分)は、(B)成分として(B1)ラジカル重合性化合物を用いる場合には、(C1)ラジカル性光重合開始剤であり、(B2)カチオン重合性化合物を用いる場合には、(C2)カチオン性光重合開始剤である。
【0087】
(C1)ラジカル性光重合開始剤は、光等のエネルギー線を受けることにより分解し、発生するラジカルによって、ラジカル重合反応を開始させる化合物である。ここで、光等のエネルギー線とは可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線、γ線等を意味する。(C1)成分の具体例としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−2−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、及びBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンその他の色素増感剤との組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が特に好ましい。これらは、一種単独又は二種以上を組み合わせて、(C1)成分を構成することができる。
【0088】
(C2)カチオン性光重合開始剤は、光等のエネルギー線を受けることによって、前記(B2)成分のカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物である。
(C2)成分の化合物の例として、下記式(31)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光を受けることによりルイス酸を放出する化合物(光酸発生剤)である。
【0089】
[R01020304W]m+[MXn+mm− (31)
〔式中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O,I、Br、Cl又は−N≡Nであり、R01、R02、R03及びR04は同一又は異なる有機基であり、a、b、c及びdは各々0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mはハロゲン化物錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属又はメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは、例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。〕
【0090】
上記式(31)に示されるオニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジエニル)[1,2,3,4,5,6−η]−(メチルエチル)−ベンゼン]−鉄(1+)等が挙げられる。
上記式(31)中におけるアニオン[MXn+m]の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)等が挙げられる。
【0091】
また、一般式[MX(OH)]で表されるアニオンを有するオニウム塩を使用することができる。さらに、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CFSO)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等の他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
【0092】
このようなオニウム塩のうち、(C2)成分として特に有効な化合物は芳香族オニウム塩である。例えば特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報等に記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩等が好ましい。また、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤等も挙げることができる。
【0093】
(C2)成分として好適に使用できる化合物の市販品としては、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−171、SP−172(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure 261(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)等を挙げることができる。これらのうち、UVI−6970、UVI−6974、アデカオプトマーSP−170、SP−171、SP−172、CD−1012、MPI−103は、これらを含有してなる樹脂組成物に高い光硬化感度を発現させることができることから特に好ましい。
上記の光酸発生剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて(C2)成分を構成することができる。
【0094】
(C)成分の含有割合は、(C1)成分、(C2)成分のいずれを用いるかを問わず、光硬化性液状組成物全体に対して、通常、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜8重量%である。(C)成分の含有割合が過小である場合には、本組成物のラジカル重合反応速度(硬化速度)が低くなるため、造形に時間を要したり、解像度が低下したりする。一方、(C)成分の含有割合が過大である場合には、過剰量の本成分が、本組成物の硬化特性をかえって低下させたり、立体形状物の強度を低下させたりする。また、(B)成分として、(B1)成分と(B2)成分を併用する場合には、(C)成分として、(C1)成分と(C2)成分を併用することができる。
【0095】
本発明の組成物には、(D)焼結助剤(以下、成分(D))を添加することができる。焼結助剤を添加することにより、焼結温度の低下、緻密化の促進、粒成長の抑制の効果が得られる。
本発明で用いられる焼結助剤としては、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム及び酸化ケイ素等が挙げられ、酸化アルミニウムが好ましい。これらの化合物を単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(D)成分の含有量は、光硬化性液状組成物全体に対して、1〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。1重量%未満であると、添加した効果が得られない場合があり、20重量%を超えると、酸化チタンが化合して誘電率等の特性が低下してしまう場合がある。
【0097】
本発明に使用される光硬化性液状組成物には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として、各種の添加剤が含有されていてもよい。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、アリルエーテルコポリマー等のポリマー及びオリゴマー;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料;トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン系化合物、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル等の光増感剤(重合促進剤);ビニルエーテル類、ビニルスルフィド類、ビニルウレタン類、ウレタンアクリレート類、ビニルウレア類等の反応性希釈剤等が挙げられる。
【0098】
本発明に使用される光硬化性液状組成物は、上記(A)〜(C)成分、及び必要に応じて上記任意成分を均一に混合することによって製造することができる。
また、予め(B)及び(C)成分を混合したベース樹脂液に、(A)成分を分散させる方法によっても製造することができる。
【0099】
このようにして得られる光硬化性液状組成物の粘度は、外力によって流動する範囲であれば特に限定しないが、外力が加わらない状態では流動せず、外力が加わることで流動するチクソトロピックな特性を有することが好ましい。
【0100】
2.立体形状物の製造方法
本発明の立体形状物の製造方法は、光積層造形法に、上記の光硬化性液状組成物を採用するものである。光積層造形法としては、特に限定されない。本発明の光学的立体造形法の代表的な一例を、図を用いて説明する。
まず、図1(a)に示すように、光硬化性液状組成物1を収容した容器2内に、昇降自在に設けられた支持ステージ3を、組成物1の液面4から微小量降下(沈降)させることにより、支持ステージ3上に、組成物1を供給して、組成物1の薄層を形成する。次いで、この薄層に対して、選択的に光を照射し、組成物1の硬化物(硬化樹脂層)6を形成する。
次に、図1(b)に示すように、支持ステージ3を微小量降下(沈降)させて、この硬化物6の上に、組成物1を供給して、組成物の薄層を再度形成する。次いで、この薄層に対して、選択的に光照射し、硬化物6の上に、これと連続して一体的に積層するように新しい硬化物7をさらに形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら又は変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、連続する複数層の硬化物が一体的に積層されてなる立体形状物が造形される。
【0101】
このとき、積層一体化される組成物の硬化層の一層の厚みが、2〜20μmであることが好ましく、5〜10μmであることがより好ましい。硬化層一層の厚みを、積層厚みを20μm以下とすることにより、酸化チタンの光触媒作用及び光散乱作用による重合硬化反応阻害の影響を無くし、かつ、十分な各層の硬化と層間の接合を達成することができる。
【0102】
光硬化性液状組成物に光を選択的に照射する手段としては、特に制限されるものではなく、種々の手段を採用することができる。例えば、レーザ光、又はレンズ、ミラー等を用いて得られた収束光等を走査させながら組成物に照射する手段、所定のパターンの光透過部を有するマスクを用い、このマスクを介して非収束光を組成物に照射する手段、多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して光を組成物に照射する手段、デジタルミラーデバイスを用いて各ミラーを画素として光照射のON/OFFを制御する手段等を採用することができる。また、マスクを用いる手段においては、マスクとして、液晶表示装置と同様の原理により、所定のパターンに従って、光透過領域と光不透過領域とよりなるマスク像を電気光学的に形成するものを用いることもできる。
以上において、目的とする立体形状物が微細な部分を有するもの、又は高い寸法精度が要求されるものである場合には、組成物に選択的に光を照射する手段として、スポット径の小さいレーザ光を走査する手段を採用することが好ましい。尚、容器内に組成物が収容されている場合、光の照射面(例えば、収束光の走査平面)は、組成物の液面、透光性容器の器壁との接触面の何れであってもよい。組成物の液面又は器壁との接触面を光の照射面とする場合には、容器の外部から直接又は器壁を介して光を照射することができる。
【0103】
光積層造形法においては、通常、組成物の特定部分を硬化させた後、光の照射位置(照射面)を、既硬化部分から未硬化部分に連続的に又は段階的に移動させることにより、硬化部分を積層させて所望の立体形状とする。ここで、照射位置の移動は、種々の方法によって行うことができ、例えば、光源、組成物の収容容器、組成物の既硬化部分の何れかを移動させたり、収容容器に組成物を追加供給したりする等の方法が挙げられる。
【0104】
本発明で用いる光造形装置の一例を図2に示す。
図2に示す光造形装置100は、光源1、デジタルミラーデバイス(DMD)2、集光レンズ3、造形テーブル4、ディスペンサ5、リコータ6、制御部7、記憶部8を備え、前記光硬化性液状組成物10をディスペンサ5から造形テーブル4上に順次供給し、硬化層を積層一体化して立体形状物を造形する。
光源1には、例えば、405nmのレーザ光を発生させるレーザダイオード(LD)や紫外線(UV)ランプが用いられる。デジタルミラーデバイス(DMD)2は、テキサス・インスツルメンツ社によって開発されたデバイスであり、CMOS半導体上に独立して動くマイクロミラーが数十万〜数百万個、例えば、48万〜131万個敷き詰められている。かかるマイクロミラーは、静電界作用によって対角線を軸に約±10度、例えば、±12度程度傾けることが可能である。マイクロミラーは、各マイクロミラーのピッチの1辺の長さが約10μm、例えば、13.68μmの四角形の形状を有している。隣接するマイクロミラーの間隔は、例えば1μmである。DMD2は、光源1から出射されたレーザ光線を個々のマイクロミラーによって反射させ、制御部7によって所定の角度に制御されたマイクロミラーによって反射されたレーザ光のみ集光レンズ3を介して造形テーブル4上に供給された光硬化性液状組成物9に照射する。
【0105】
造形テーブル4は、硬化させた樹脂を順次堆積させ、載置する平板状の台である。この造形テーブル4は、図示しない駆動機構、即ち移動機構によって、水平移動及び垂直移動が可能である。この駆動機構により、所望の範囲に亘って光造形を行なうことができる。
ディスペンサ5は、光硬化性液状組成物10を収容し、予め定められた量の光硬化性液状組成物10を所定位置に供給する。
リコータ6は、例えば、ブレード機構と移動機構を備え、光硬化性樹脂10を、造形テーブル上又は硬化層上に均一に塗布する。
【0106】
制御部7は、露光データを含む制御データに応じて光源1、DMD2、造形テーブル4、ディスペンサ5、リコータ6を制御する。制御部7は、典型的には、コンピュータに所定のプログラムをインストールすることによって構成することができる。典型的なコンピュータの構成は、中央処理装置(CPU)とメモリとを含んでいる。CPUとメモリとは、バスを介して補助記憶装置としてのハードディスク装置等の外部記憶装置に接続される。この外部記憶装置が、制御部7の記憶部8として機能する。
記憶部8には、造形しようとする立体形状物を複数の層にスライスして得られる断面群の露光データを含む制御データが格納されている。制御部7は、記憶部8に格納された露光データに基づいて、主としてDMD2における各マイクロミラーの角度制御、造形テーブル4の移動(即ち、立体モデルに対するレーザ光の照射範囲の位置)を制御し、立体形状物の造形を実行する。
【0107】
また、組成物の硬化層の積層一体化と並行して、目的とする立体形状物の周囲に、組成物の硬化層を積層一体化してなる保護壁を形成することが好ましい。目的とする立体形状物の積層造形と同時に、立体形状物の周囲に保護壁を積層造形することにより、立体形状物の形崩れを防止することができる。
【0108】
図3に、目的とする立体形状物の周囲に保護壁を形成した模式図を示す。やや左よりに窓状の空間22を有する外側の大きな長方体が保護壁20であり、目的とする5つの立体形状物30が、前記窓状の空間22に形成されている。保護壁20の窓状空間側の端部(端部A)から反対側の端部(端部B)に向かってスキージを往復させ、光硬化性組成物表面を平滑にする。保護壁20は、目的とする立体形状物30の造形と共に、目的とする立体形状物30の硬化層と同じ高さの硬化層を順次積層し、一体化することによって形成されていく。
目的とする立体形状物30の高さが、通常0.5mmより高い場合、好ましくは0.3mmより高い場合、窓状空間の反対側の端部(端部B)の長さをより長くすることが好ましい。端部Bをより長くすることにより、目的とする立体形状物30の形崩れを防止する効果が高くなる。保護壁を並行して形成することで目的とする立体形状物の形崩れを防止できるのは、復路のスキージによって立体形状物の端部が損傷を受けるのを防ぐことができるからである。
【0109】
3.立体形状物
次に、本発明の立体形状物について説明する。本発明の立体形状物は、上記の光硬化性液状組成物を所望の形状に光硬化させた硬化物からなるものである。得られた立体形状物を、収容容器から取り出し、その表面に残存する未反応の組成物(未硬化)を除去した後、必要に応じて洗浄する。ここで、洗浄剤としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤;低粘度の熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。
【0110】
4.酸化チタン系セラミックス焼成体
上記3の立体形状物の後処理の後、本発明の立体形状物を焼成すると、酸化チタン系セラミックス焼成体となり得る。ここで用いる焼成方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0111】
以上述べたように、本発明の立体形状物の製造方法を用いることにより、酸化チタン粒子とバインダー組成物との混合物中に占める酸化チタン粒子の充填率を増加させても、良好な流動性と光硬化性を示し、その結果、光積層造形法により、所望の立体形状物を容易に造形できる。本発明の立体形状物は、通常、50〜300MPaの曲げ強度を有している。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により、本発明の具体的態様を説明するが、本発明は、以下の実施例に記載の態様に限定されるものではない。
【0113】
製造例1
光硬化性液状組成物の調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート23.8g、及び、ビニルカプロラクタム5.9g、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド(Irgacure819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2,4−ジエチルチオキサントン0.6g、Yellow6G Gran(バイエル社製)0.6g、N,N−ジメチル安息香酸エチル0.1g、SH28PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.1gと平均粒子径200nmの酸化チタン粒子(アナターゼ型)68g、平均粒径170μmのアルミナ粒子3.4g及び攪拌用のジルコニアセラミックボール30gを容器に入れ、遠心脱泡装置にかけて、酸化チタン粒子を均一分散し、光硬化性液状組成物を調製した。酸化チタン粒子は40容量%含有されている。
【0114】
実施例1
(1)立体形状物の作製
製造例1で調製した光硬化性液状組成物を用いて、光造形装置((株)レーザーソリューションズ製、SI−C1000型)を用いて、図3に示すように、ダイヤモンド格子型フォトニック結晶構造を有する立体形状物(30a)及びメンジャースポンジ型フラクタル構造を有する立体形状物(30b:2−ステージ型、30c:3ステージ型)を、その周囲に保護壁(20)を形成しながら作製した。用いた光造形装置の動作条件等を下記に示す。
レーザ:波長405nm、直径2μm、出力1000mJ/m
スキージ間隔:往路30μm厚、復路5μm厚
硬化層一層の層厚:5μm
立体造形物高さ:約1mm
ダイヤモンド格子型フォトニック結晶の格子定数:0.5mm
保護壁寸法:端部A側 1mm、端部B側 1mm
【0115】
得られた立体形状物(3a、3b、3c)の電子顕微鏡写真を図4〜6に示す。
【0116】
(2)焼成体の作製
上記(1)で得られた立体形状物(3a、3b、3c)を、大気脱脂炉(KM−100、アドバンテック株式会社製)を用いて、400℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、その後600℃まで1℃/分で昇温し、600℃で2時間保持した後、自然冷却することにより、脱脂した。その後、さらに、大気焼結炉(SUPER BURN SH−1415C MS0373、株式会社モトヤマ製)を用いて、昇温速度℃/min.で℃まで加温し、℃で時間維持した後、自然冷却することにより、焼成体を得た。
得られた焼成体の電子顕微鏡写真を図7〜9に示す。
焼成による線収縮率は23%であり、焼成体の相対密度は95%であった。
【0117】
実施例1の結果から、平均粒径の小さいアルミナ粒子を用いることにより、立体形状物の造形精度に優れた立体形状物を得ることができ、かつ、それを焼成してなる焼成体は線収縮率が小さいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の酸化チタンを含有する立体形状物の製造方法は、酸化チタン粉体等とバインダー組成物との混合物中に占める酸化チタン充填率を増加させても、良好な塗布性と光硬化性を示し、その結果、光積層造形法により所望の立体形状物を容易に造形できるという効果を奏する。このため、本発明の立体形状物の製造方法は、酸化チタン系焼結体の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の光学的立体造形法(立体形状物の製造方法)の代表的な一例を示す図である。
【図2】本発明で用いることができる光造形装置の一例を示す模式図である。
【図3】目的とする立体形状物の周囲に保護壁を形成した態様を示す模式図である。
【図4−1】実施例1で作製した立体形状物30a(脱脂前)の電子顕微鏡像である。
【図4−2】実施例1で作製した立体形状物30a(脱脂前)を、さらに拡大した電子顕微鏡像である。
【図5】実施例1で作製した立体形状物30b(脱脂前)の電子顕微鏡像である。
【図6】実施例1で作製した立体形状物30c(脱脂前)の電子顕微鏡像である。
【図7−1】実施例1で作製した焼成体(ダイヤモンド格子型フォトニック結晶構造)の電子顕微鏡像である。
【図7−2】実施例1で作製した焼成体(ダイヤモンド格子型フォトニック結晶構造)を、さらに拡大した電子顕微鏡像である。
【図8】実施例1で作製した焼成体(2−ステージメンジャースポンジ型フラクタル構造)の電子顕微鏡像である。
【図9】実施例1で作製した焼成体(3−ステージメンジャースポンジ型フラクタル構造)の電子顕微鏡像である。
【符号の説明】
【0120】
11 光硬化性液状組成物
12 容器
13 支持ステージ
14 光硬化性液状組成物の液面
16 硬化物(硬化樹脂層)
17 新しい硬化物(硬化樹脂層)
100 光造形装置
1 光源
2 デジタルミラーデバイス
3 集光レンズ
4 造形テーブル
5 ディスペンサ
6 リコータ
7 制御部
8 記憶部
9 光硬化性液状組成物
10 光硬化性液状組成物
20 保護壁
22 窓状空間
30a ダイヤモンド格子型フォトニック結晶構造を有する立体形状物
30b 2−ステージメンジャースポンジ型フラクタル構造を有する立体形状物
30c 3−ステージメンジャースポンジ型フラクタル構造を有する立体形状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分:
(A)電子顕微鏡法による数平均粒径が10〜500nmの酸化チタン粒子、
(B)重合性官能基を有する化合物、及び
(C)光重合開始剤
を含有する光硬化性液状組成物に光を照射して、前記組成物の硬化層を形成し、前記硬化層の上に、前記組成物を再度供給し、光を照射して、前記組成物の硬化層をさらに形成することを繰り返すことにより、前記硬化層が積層一体化した立体形状物を造形する立体形状物の製造方法。
【請求項2】
前記組成物全量に対して、前記(A)酸化チタン粒子を10容量%以上含有してなる、請求項1に記載の立体形状物の製造方法。
【請求項3】
前記(B)成分が、ラジカル重合性化合物である、請求項1又は2に記載の立体形状物の製造方法。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物の少なくとも一部が、3個以上の重合性官能基を有するラジカル重合性化合物である、請求項3に記載の立体形状物の製造方法。
【請求項5】
前記積層一体化される前記組成物の硬化層の一層の厚みが2〜20μmである、請求項1〜4のいずれか一に記載の立体形状物の製造方法。
【請求項6】
前記組成物の硬化層の積層一体化と並行して、目的とする立体形状物の周囲に、前記組成物の硬化層を積層一体化してなる保護壁を形成する、請求項1〜5のいずれか一に記載の立体形状物の製造方法。
【請求項7】
前記組成物が、(D)焼結助剤として、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム及び酸化ケイ素からなる群から選択される1種以上の金属酸化物を、前記組成物全体に対して、0.5〜20重量%含有する、請求項1〜6のいずれか一に記載の立体形状物の製造方法。
【請求項8】
下記(A)〜(C)成分を含有してなる光硬化性液状組成物を硬化させて得られる、立体形状物。
(A)電子顕微鏡法による数平均粒径10〜500nmの酸化チタン粒子、
(B)重合性官能基を有する化合物、及び
(C)光重合開始剤
【請求項9】
請求項8に記載の立体形状物を焼成して得られる、酸化チタン系セラミックス焼成体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−260926(P2007−260926A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85224(P2006−85224)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】