説明

立体映像表示装置

【課題】ユーザの対面側から映像を把握できるように反転表示を行った場合であっても、両眼視差による有効な立体表示を実現することが可能となる。
【解決手段】立体映像表示装置100は、ディスプレイ120に表示させる映像を上下左右反転させるための入力を受け付けると、ディスプレイにおいて両眼視差による立体視を実現させるため、左眼に視認させる左眼映像データまたは右眼に視認させる右眼映像データの一方を第1の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置し、他方を第2の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置した立体表示データに、奇数ライン分の任意のラインデータを挿入し、かつ、立体表示データをライン単位で奇数ライン分シフトし、シフトした立体表示データをディスプレイに上下左右反転させて表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差による立体映像をディスプレイに表示することが可能な立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器に設けられたディスプレイには、その電子機器を利用するユーザが視認し易いように、ユーザの視認姿勢に上下を合わせて映像を出力している。
【0003】
一方、会議や商談、プレゼンテーション等、上述した電子機器を利用するユーザの対面に第三者が位置するとき、その第三者にディスプレイを介して映像を視認させようとしても、対面側からディスプレイを見ると映像の上下左右が反転された状態になっていて、映像が見にくくなる。
【0004】
そこで、通常表示と、通常表示を上下方向に反転した反転表示とを切り替え可能な切り替えスイッチを設け、切り替えスイッチを通じて反転表示が指示された場合に、表示画面に対応した画像信号を最終アドレスから順次読み出し、その読み出された信号単位の最上位ビットと最下位ビットとを反転してディスプレイに表示させる技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−334148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年では、ディスプレイ上に、視差を有する2以上の映像を表示し、ユーザ(観察者)に対してあたかもオブジェクトが立体的に存在するように知覚させる立体映像表示装置が脚光を浴びている。
【0007】
このような映像表示を実現するための技術については、様々な提案がなされており、例えば、偏光フィルタ方式が提案されている。偏光フィルタ方式を採用する立体映像表示装置は、偏光特性が所定角度異なる2種類の偏光フィルタを、隔行で(1表示ライン毎に)配置したディスプレイの、一方の偏光フィルタが配置された表示ラインに左眼映像データを、他方の偏光フィルタが配置された表示ラインに右眼映像データを表示することにより、左眼映像と右眼映像とが交互に並んだ状態で同時に表示される。そして、ユーザは、偏光眼鏡を通じて、隔行の表示ラインに示された左眼映像を左眼で、右眼映像を右眼で視認し、両眼視差による立体映像を認識することが可能となる。
【0008】
ここで、ディスプレイは、インターレース方式や、VGA(Video Graphics Array)等の表示規格、HDTV(High Definition TeleVision)等の映像規格に対応させるために、偶数本の表示ラインを有しているので、最上部の表示ラインに一方の偏光フィルタが配置されていれば、最下部の表示ラインには他方の偏光フィルタが配置されることとなる。
【0009】
しかし、立体映像表示装置において、ユーザの対面に位置する第三者がその立体映像の視認を所望したとき、上述した特許文献1の技術を利用して、ユーザに視認させる場合と読み出し順序を逆にして映像データをディスプレイに反転表示させると、左眼映像および右眼映像と表示ラインとの対応関係がずれてしまい、ユーザの対面側からディスプレイを見た場合に有効な立体映像を得ることができなくなる。
【0010】
詳細に、例えば、図16(a)に示す、1表示ライン毎に偏光特性の異なる偏光フィルタが設けられているディスプレイ10にユーザ16の通常の視認姿勢に合わせた通常表示を行う場合、表示ラインL1、L3、L5、L7、L9、L11(図16中ハッチングで示す)に左眼映像12が、表示ラインR2、R4、R6、R8、R10、R12(図16中クロスハッチングで示す)に右眼映像14が表示され、偏光眼鏡を介して、隣接する表示ライン同士、例えば、表示ラインL5と表示ラインR6や表示ラインR6と表示ラインL7の映像が両眼視差によって結像し、ユーザ16に立体映像を知覚させる。
【0011】
しかし、ユーザ16の対面側の第三者18にその映像を視認させるため、通常表示を上下方向に反転した(視軸を中心に180°回転した)反転表示を試みて、通常表示とは読み出し順序を逆にして映像データをディスプレイ10に表示させると、図16(b)に示すように、左眼映像12に対応すべき表示ラインL1、L3、L5、L7、L9、L11に右眼映像14が、右眼映像14に対応すべき表示ラインR2、R4、R6、R8、R10、R12に左眼映像12が表示されてしまい、通常表示させる場合と反転表示させる場合とで結像位置が異なり、本来表示すべき立体映像を第三者18に知覚させることができない。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑み、ユーザの対面側から映像を把握できるように反転表示を行った場合であっても、両眼視差による有効な立体表示を実現することが可能な、立体映像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の立体映像表示装置は、第1の表示ラインと、第1の表示ラインとは偏光特性が異なる第2の表示ラインとを交互に並置したディスプレイと、ディスプレイにおいて両眼視差による立体視を実現させるため、左眼に視認させる左眼映像データまたは右眼に視認させる右眼映像データの一方を第1の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置し、他方を第2の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置した立体表示データをディスプレイに表示させる表示制御部と、ディスプレイに表示させる映像を上下左右反転させるための入力を受け付ける反転受付部と、を備え、表示制御部は、反転受付部が上下左右反転させるための入力を受け付けると、立体表示データに奇数ライン分の任意のラインデータを挿入し、かつ、立体表示データをライン単位で奇数ライン分シフトし、シフトした立体表示データをディスプレイに上下左右反転させて表示させることを特徴とする。
【0014】
任意のラインデータは、予め定められたデータであってもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の他の立体映像表示装置は、第1の表示ラインと、第1の表示ラインとは偏光特性が異なる第2の表示ラインとを交互に並置し、第1の表示ラインと第2の表示ラインの総ライン数が奇数であるディスプレイと、ディスプレイに表示させる映像を上下左右反転させるための入力を受け付ける反転受付部と、ディスプレイにおいて両眼視差による立体視を実現させるため、左眼に視認させる左眼映像データまたは右眼に視認させる右眼映像データの一方を第1の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置し、他方を第2の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置した立体表示データをディスプレイに表示させ、反転受付部が上下左右反転させるための入力を受け付けると、立体表示データを上下左右反転させてディスプレイに表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
立体表示データの総ライン数を計数するデータ計数部をさらに備え、表示制御部は、計数された立体表示データの総ライン数が、ディスプレイにおける表示ラインの総ライン数未満、かつ偶数である場合、少なくとも立体表示データの最後のラインデータの後に、奇数ライン分の任意のラインデータを挿入してもよい。
【0017】
任意のラインデータは、予め定められたデータであってもよい。
【0018】
立体表示データの総ライン数を計数するデータ計数部をさらに備え、表示制御部は、計数された立体表示データの総ライン数が、ディスプレイにおける表示ラインの総ライン数を超過し、かつ偶数である場合、超過した分のラインデータのうち、少なくとも立体表示データのラインデータから最後の奇数ライン分のラインデータを削除してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の立体映像表示装置は、ユーザの対面側から映像を把握できるように反転表示を行った場合であっても、両眼視差による有効な立体表示を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態にかかる立体映像表示装置の使用形態図である。
【図2】第1の実施形態にかかる立体映像表示装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態にかかる立体映像表示装置の外観斜視図である。
【図4】立体映像データと立体表示データを説明するための説明図である。
【図5】第1の実施形態にかかるディスプレイを説明するための説明図である。
【図6】表示制御部の処理について説明するための説明図である。
【図7】表示制御部が立体表示データをディスプレイに表示させる際の表示順序を説明するための説明図である。
【図8】反転表示機能を有するディスプレイを説明するための説明図である。
【図9】第1の実施形態にかかる立体映像表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図10】第1の実施形態にかかる立体映像表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図11】第2の実施形態における立体映像表示装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図12】第2の実施形態にかかるディスプレイを説明するための説明図である。
【図13】表示制御部の処理について説明するための説明図である。
【図14】第2の実施形態にかかる立体映像表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図15】第2の実施形態にかかる立体映像表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図16】従来の立体映像表示装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる立体映像表示装置100の使用形態図である。図1(a)に示すように、立体映像表示装置100のディスプレイ120をユーザ102側から視認する場合、立体映像表示装置100は、ユーザ102が視認し易いように、ユーザ102の視認姿勢に上下を合わせて(通常表示で)映像を出力する。
【0023】
一方、立体映像表示装置100を挟んで、ユーザ102の対面に第三者104が位置するとき、その第三者104にディスプレイ120に表示された映像を視認させようとしても、第三者104側からディスプレイ120を見ると映像の上下左右の位置が反転された状態になっていて、映像が見にくくなる。
【0024】
そこで、本実施形態では、図1(b)に示すように、第三者104がユーザ102の対面側からディスプレイ120を見ているとき、映像を把握できるように反転表示を行い、反転表示を行った場合であっても、両眼視差による有効な立体表示を実現することが可能な、立体映像表示装置100について説明する。
【0025】
(立体映像表示装置100)
図2は、第1の実施形態にかかる立体映像表示装置100の概略的な機能を示した機能ブロック図であり、図3は、第1の実施形態にかかる立体映像表示装置100の外観斜視図である。図2に示すように、立体映像表示装置100は、中央制御部110と、ROM(Read On Memory)112と、RAM(Random Access Memory)114と、データ取得部116と、データ保持部118と、ディスプレイ120と、操作部128と、を含んで構成される。
【0026】
ここでは、立体映像表示装置100として、ノート型パーソナルコンピュータを例に挙げて説明するが、携帯電話、PHS(Personal Handy phone System)、カーナビゲーション装置、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、音楽プレイヤー、ポータブルテレビ、ゲーム機器、DVD(Digital Versatile Disk)プレイヤー、リモートコントローラ等、ディスプレイを有する、またはディスプレイと接続可能な様々な電子機器を立体映像表示装置100として用いることができる。
【0027】
中央制御部110は、中央処理装置(CPU)や信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)を含む半導体集積回路で構成され、ROM112に保持された所定のプログラムを用いて立体映像表示装置100全体を管理および制御する。
【0028】
ROM112は、中央制御部110が用いる所定のプログラム等を格納するための不揮発性のメモリである。RAM114は、プログラム実行時の変数等を一時的に格納するための揮発性のメモリである。
【0029】
データ取得部116は、中央制御部110の制御指令に従って、立体表示データを取得し、取得した立体表示データをデータ保持部118に書き込む。本実施形態において、データ取得部116は、立体表示データを直接取得してもよいが、左眼映像データと右眼映像データとが分離した状態で関連付けられる立体映像データを取得して、取得した立体映像データをライン単位で並べ替えて立体表示データを生成し、生成した立体表示データをデータ保持部118に書き込んでもよい。
【0030】
図4は、立体映像データ140と立体表示データ142を説明するための説明図である。図4に示すように、立体映像データ140は、両眼視差による立体視を実現させるための左眼映像データ140aと右眼映像データ140bとが分離した状態で関連付けられている。一方、立体表示データ142は、立体映像データ140の左眼映像データ140aまたは右眼映像データ140bの一方の映像データが後述するディスプレイ120の第1の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置され、他方が第2の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置されている、すなわち、図4に示すように、立体映像データ140の左眼映像データ140aと右眼映像データ140bとがライン単位で交互に並置される。以下、左眼映像データ140aのライン単位のデータを左眼ラインデータ(図4中、LDで示す)と、右眼映像データ140bのライン単位のデータを右眼ラインデータ(図4中、RDで示す)と称する。
【0031】
データ保持部118は、データ取得部116が取得した立体表示データ142を一時的に保持する。
【0032】
ディスプレイ120は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、後述する表示制御部の表示制御に応じて、立体表示データ142を表示する。本実施形態において、ディスプレイ120には、第1の表示ラインと、第1の表示ラインとは偏光特性が異なる第2の表示ラインとが交互に並置されている。
【0033】
操作部128は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等のスイッチ、ディスプレイ120の表示面上に設置されたタッチパネル等で構成され、ユーザ102による操作入力を受け付ける。本実施形態において、操作部128の所定のキーは、反転受付部130としても機能し、ディスプレイ120に表示させる映像を上下左右反転させるための入力を受け付ける。そして、かかる入力を受付けた場合、反転受付部130として機能する操作部128は、映像を上下左右反転させるための入力を受け付けた旨を示す反転信号を後述する表示制御部に伝達する。
【0034】
本実施形態においては、操作部128の所定のキーが反転受付部130として機能するが、これに限定されず、例えば、反転受付部として加速度センサを設け、ディスプレイ120の表示面122と水平面とが為す角度が所定角度を超過した場合に反転信号を伝達したり、反転受付部がディスプレイ120と操作部128との間に位置するヒンジ106(図3参照)の回転角度を測定し所定角度を超過した場合に反転信号を伝達したりしてもよい。
【0035】
また、本実施形態において、中央制御部110は、表示制御部132としても機能する。
【0036】
表示制御部132は、データ保持部118が保持する立体表示データ142を読み出して、ディスプレイ120に表示させる。
【0037】
図5は、第1の実施形態にかかるディスプレイ120を説明するための説明図である。図5に示すようにディスプレイ120の表示面122には、隔行で(1表示ライン毎に)偏光特性が異なる(例えば90度)偏光フィルタが設けられている。したがって、第1の表示ラインとしての奇数番号の表示ライン124a(L1、L3、L5、L(n−1)、nは整数かつ偶数)と、第2の表示ラインとしての偶数番号の表示ライン124b(R2、R4、Rn)とで偏光特性が異なっている。ここでは、奇数番号の表示ライン124aの映像が偏光眼鏡の左眼側の偏光フィルタに、偶数番号の表示ライン124bが右目側の偏光フィルタに対応しており、立体表示データ142における左眼ラインデータが奇数番号の表示ライン124aに、右眼ラインデータが偶数番号の表示ライン124bに表示される。
【0038】
インターレース方式、表示規格、映像規格等に対応させるため、図5に示すように、ディスプレイ120の表示ライン124(図5中、124a、124bで示す)の総ライン数は一般的に偶数である。したがって、図5(a)に示すように、表示ライン124が水平方向に交互に配置されているディスプレイ120をユーザ102側から視認するとき(通常表示させるとき)、ディスプレイ120の最上部が表示ライン124a(L1)である場合には、最下部は表示ライン124b(Rn)となる。すなわち、最上部と最下部の表示ライン124の偏光特性が異なることとなる。
【0039】
表示制御部132は、反転受付部130から反転信号が伝達されない場合、すなわち、ディスプレイ120に立体表示データ142を通常表示させる場合、データ保持部118が保持する立体表示データ142を読み出して、そのままディスプレイ120に表示させる。
【0040】
図6は、表示制御部132の処理について説明するための説明図であり、図7は、表示制御部132が立体表示データ142をディスプレイ120に表示させる際の表示順序を説明するための説明図である。特に図7(a)は、立体表示データ142を通常表示させる場合を、図7(b)は、反転表示させる場合を示す。また図7中、A〜Pは画素を示す。
【0041】
図7(a)に示すように、立体表示データ142を通常表示させる場合、表示制御部132は、立体表示データ142におけるラインデータの並び順に従ってラインデータを読み出し、まず、左眼ラインデータLD1を表示ラインL1の画素Aから画素Bに表示させ、次に、右眼ラインデータRD2を表示ラインR2の画素Cから画素Dに表示させる。同様の表示処理を繰り返し、最後に、左眼ラインデータLD(n−1)を表示ラインL(n−1)の画素Mから画素Nに、右眼ラインデータRDnを表示ラインRnの画素Oから画素Pに表示する。
【0042】
そして、ディスプレイ120を観察するユーザ102は、左右で偏光特性が異なる偏光眼鏡を通じて、奇数番号の表示ライン124aに表示された立体表示データ142を左眼で、偶数番号の表示ライン124bに表示された立体表示データ142を右眼で視認し、両眼視差による立体映像を通じて、表示面122と異なる結像位置でオブジェクトを知覚することが可能となる。
【0043】
一方、図5(b)に示すように、ディスプレイ120をユーザ102の対面(第三者104)側から視認するとき(反転表示させるとき)には、ユーザ102の対面側から見たディスプレイ120の最上部は表示ライン124b(Rn)となり、最下部は表示ライン124a(L1)となる。したがって、図6の「反転表示」に示すように、立体表示データ142を構成するラインデータを、何らの加工無しに単純に、通常表示させる場合の読み出し順序を逆に読み出してディスプレイ120に表示させると、左眼ラインデータが右眼用の表示ライン124bに、右眼ラインデータが左眼用の表示ライン124aに表示されてしまう。
【0044】
そこで、図6の「反転表示A」に示すように、立体表示データ142の読み出し順序を逆にし、さらに、隣接するラインデータ(左眼ラインデータLDと右眼ラインデータRD)同士、例えば、左眼ラインデータLD1と右眼ラインデータRD2とを入れ替え、左眼ラインデータLD3と右眼ラインデータRD4を入れ替えて表示させることで、左眼ラインデータLDを左眼用の表示ライン124aに、右眼ラインデータRDを右眼用の表示ライン124bに表示させることができる。
【0045】
しかし、反転表示させる場合に、立体表示データ142の読み出し順序を逆にする処理に加えて、左眼ラインデータLDと右眼ラインデータRDとをそれぞれ入れ替える処理が必要となり処理負荷も増大し、消費電力が増加してしまう。
【0046】
一方、反転表示させる場合に、図8に示すように、ディスプレイ側で、表示ライン124を構成する画素の表示順序を通常表示させる場合と逆にすることで、立体表示データ142を自動的に反転表示させる機能を有するディスプレイ150も開発されている。立体映像表示装置100がディスプレイ120の代わりにディスプレイ150を有する場合、ラインデータの順番を入れ替えるためのメモリは不要であるが、図6の「反転表示A」に示したように左眼ラインデータLDと右眼ラインデータRDとをそれぞれ入れ替える処理を行うためには、少なくとも別途1ライン分のメモリが必要となり、部品点数が増加し、コストが高くなってしまうといった問題が生ずる。
【0047】
そこで、本実施形態の表示制御部132は、図6中、「反転表示B」または「反転表示C」に示すように、反転受付部130から反転信号が伝達されると、立体表示データ142に奇数ライン分(本実施形態では、1ライン分)の任意のラインデータ(以下、単に挿入データと称する)を挿入し、かつ、立体表示データ142をライン単位で奇数ライン分シフトし、シフトした立体表示データ142をディスプレイ120に上下左右反転させて表示させる。
【0048】
ここでは、立体表示データ142の最後のラインデータRDnの後(反転表示B)、または立体表示データ142の最初のラインデータLD1の前(反転表示C)に、奇数ライン分の挿入データを挿入する。このような簡単な処理だけで、立体表示データ142を奇数ライン分シフトさせることができるので、処理負荷の大幅な増大を招くことなく、映像を反転表示させる場合にも、通常表示させる場合と同様に有効な立体表示を実現することが可能となる。
【0049】
ここで、挿入データを挿入したライン数分、元々の立体表示データ142のラインデータが削除されることとなるが、一般的にラインデータの総ライン数は数百程度であるため、1ライン分のラインデータが表示されないとしても、立体表示には、ほとんど影響を及ぼさない。また、1ライン分の挿入データを、立体表示データ142の最初に挿入する場合には最後のラインデータが、最後に挿入する場合には最初のラインデータが表示されない(削除される)ことになるが、第三者104がディスプレイ120上で注視する位置は、ディスプレイ120の中央であるため、最初または最後のラインデータが表示されないとしても立体表示に与える影響は少ない。
【0050】
上記挿入データは、予め定められたデータ、例えば、黒色(単色)を示す画素値で構成されたデータであるとよい。立体表示データ142をシフトさせるために挿入する挿入データを、立体表示データ142を実際に構成しているラインデータに基づいて生成すると、参照する際に別途メモリを要し、また参照すべきラインデータが格納されるまで無駄に時間を費やし、さらにラインデータを生成する負荷が必要となる。そこで、黒色を示すデータ等、予め定められたデータを挿入データとする構成により、立体表示データ142をシフトさせる度に新たに挿入データを生成しなくて済み、無駄な処理負荷の増加を抑制することが可能となる。
【0051】
また、ディスプレイ120が液晶ディスプレイの場合、有効表示領域とベゼルの間には画像が表示されない領域が存在する。この画像が表示されない領域は、通常黒色である。したがって、挿入データを、この画像が表示されない領域の色と遜色ない色を示すデータすなわち黒色を示すデータにすることで、挿入データが表示される表示ライン124をこの画像が表示されない領域と同化させることができ、かかる挿入データの存在を目立たなくすることが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態にかかる立体映像表示装置100は、立体表示データ142を奇数ライン分シフトさせるといった簡単な処理を遂行するだけで、立体表示データ142と表示ライン124との対応関係を逆にすることができる。そして、表示制御部132が、表示ライン124との対応関係が逆になったシフトした立体表示データ142を、ディスプレイ120に表示させることで、映像を反転表示させる場合にも、通常表示させる場合と同様に有効な立体表示を実現することが可能となる。
【0053】
(立体映像表示方法)
次に、上述した立体映像表示装置100を用いて、両眼視差による立体映像を表示する立体映像表示方法を具体的に説明する。
【0054】
図9および図10は、立体映像表示方法の全体的な流れを示したフローチャートであり、図9は、表示制御部132が立体表示データ142の最初に挿入データを挿入する場合(反転表示B)を、図10は表示制御部132が立体表示データ142の最後に挿入データを挿入する場合(反転表示C)を示す。なお、図10において、図9に記載した処理と実質的に同一な処理については同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
1ライン分の挿入データを立体表示データ142の最後のラインデータRDnの後に挿入してディスプレイ120に表示させる場合、図9に示すように、データ取得部116は立体表示データ142を取得し(S200)、かかる立体表示データ142をデータ保持部118に書き込む(S202)。
【0056】
表示制御部132は、反転受付部130から反転信号が伝達されたか否かを判定し(S204)、伝達されていれば(S204のYES)、まず、黒色を示す挿入データをディスプレイ120のユーザ102の対面側から見た場合の最下部の表示ライン124に表示させる(S206)。そして、表示制御部132は、i番目のラインデータのiに表示ライン124の総ライン数であるnを代入し(S208)、i番目のラインデータをデータ保持部118から読み出して(S210)、ディスプレイ120に表示させる(S212)。
【0057】
表示制御部132は、立体表示データ142の2番目のラインデータをディスプレイ120に表示させたか否かを判定し(S214)、まだ、2番目のラインデータを表示していなければ(S214のNO)、i番目のラインデータのiに前回値からデクリメントした(i−1)を代入し(S216)、データ読み出しステップS210へ戻り、立体表示データ142の2番目のラインデータがディスプレイ120に表示される(S214のYES)まで、立体表示データ142をラインデータ単位でディスプレイ120に表示させる。
【0058】
反転受付部130から反転信号が伝達されていなければ(S204のNO)、表示制御部132は、i番目のラインデータのiに1を代入し(S218)、i番目のラインデータをデータ保持部118から読み出して(S220)、ディスプレイ120に表示させる(S222)。そして、表示制御部132は、立体表示データ142のn番目のラインデータをディスプレイ120に表示させたか否かを判定し(S224)、まだ、n番目のラインデータを表示していなければ(S224のNO)、i番目のラインデータのiに前回値からインクリメントした(i+1)を代入し(S226)、データ読み出しステップS220へ戻り、立体表示データ142のn番目のラインデータがディスプレイ120に表示される(S224のYES)まで、立体表示データ142をラインデータ単位でディスプレイ120に表示させる。
【0059】
一方、挿入データを立体表示データ142の最初のラインデータL1の前に挿入してディスプレイ120に表示させる場合、図10に示すように、表示制御部132は、反転受付部130から反転信号が伝達されたか否かを判定し(S204)、伝達されていれば(S204のYES)、まず、i番目のラインデータのiに、表示ライン124の総ライン数であるnからデクリメントした(n−1)を代入し(S250)、i番目のラインデータをデータ保持部118から読み出して(S210)、ディスプレイ120に表示させる(S212)。
【0060】
表示制御部132は、立体表示データ142の1番目のラインデータをディスプレイ120に表示させたか否かを判定し(S252)、まだ、1番目のラインデータを表示していなければ(S252のNO)、i番目のラインデータのiに前回値からデクリメントした(i−1)を代入し(S216)、データ読み出しステップS210へ戻り、立体表示データ142の1番目のラインデータがディスプレイ120に表示される(S252のYES)まで、立体表示データ142をラインデータ単位でディスプレイ120に表示させる。
【0061】
そして、表示制御部132は、1表示ライン分の挿入データをディスプレイ120のユーザ102の対面側から見た場合の最上部の表示ライン124に表示させる(S254)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態にかかる立体映像表示方法においても、立体表示データ142を奇数ライン分シフトさせるといった簡単な処理を遂行するだけで、映像を反転表示させる場合にも、通常表示させる場合と同様に有効な立体表示を実現することが可能となる。さらに、シフトレジスタ等特別の装置を用いず、表示タイミングを工夫するだけで奇数ライン分のシフトを実現しているので、処理負荷やコストを大幅に削減することができる。
【0063】
(第2の実施形態:立体映像表示装置300)
上述した第1の実施形態において、立体表示データ142を奇数ライン分シフトさせて表示させることで、反転表示させる場合にも、有効な立体表示を実現できる立体映像表示装置100について説明した。本実施形態では、立体表示データ142をシフトさえさせることなく、映像を反転表示させる場合にも、通常表示させる場合と同様に有効な立体表示を実現することが可能な立体映像表示装置300について説明する。
【0064】
図11は、第2の実施形態における立体映像表示装置300の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図11に示すように、立体映像表示装置300は、中央制御部310と、ROM112と、RAM114と、データ取得部116と、データ保持部118と、ディスプレイ320と、操作部128と、を含んで構成される。なお、上述した第1の実施形態における構成要素として既に述べたROM112と、RAM114と、データ取得部116と、データ保持部118と、操作部128は、実質的に機能が同一なので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違するディスプレイ320および中央制御部310を主に説明する。
【0065】
ディスプレイ320は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、後述する表示制御部の表示制御に応じて、立体表示データ142を表示する。本実施形態において、ディスプレイ320には、第1の表示ラインと、第1の表示ラインとは偏光特性が異なる第2の表示ラインとが交互に並置されており、かつ、第1の表示ラインと第2の表示ラインとを合わせた総ライン数が奇数である。
【0066】
中央制御部310は、中央処理装置(CPU)や信号処理装置(DSP)を含む半導体集積回路で構成され、ROM112に保持された所定のプログラムを用いて立体映像表示装置300全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部310は、データ計数部330、表示制御部332としても機能する。
【0067】
データ計数部330は、立体表示データ142を構成するラインデータの数を計数する。
【0068】
表示制御部332は、データ保持部118が保持する立体表示データ142を読み出して、ディスプレイ320に表示させる。
【0069】
図12は、本実施形態にかかるディスプレイ320を説明するための説明図である。図12に示すように、ディスプレイ320の表示面322には、隔行で(1表示ライン毎に)偏光特性が異なる(例えば90度)偏光フィルタが設けられている。したがって、第1の表示ラインとしての奇数番号の表示ライン324a(L1、L3、L5、L(n)、nは奇数)と、第2の表示ラインとしての偶数番号の表示ライン324b(R2、R4、R(n−1))とで偏光特性が異なっている。ここでは、立体表示データ142における左眼ラインデータが奇数番号の表示ライン324aに、右眼ラインデータが偶数番号の表示ライン324bに表示される。
【0070】
上述したように、ディスプレイ320の表示ライン324(図12中、324a、324bで示す)の総ライン数は奇数であるため、一方の表示ライン324、ここでは奇数番号の表示ライン324aが偶数番号の表示ライン324bよりライン数が多くなり、図12(a)および(b)に示すように、表示ライン324が水平方向に交互に配置されているディスプレイ320は、ユーザ102側から視認する場合(通常表示させる場合)であっても、ユーザ102の対面側から視認する場合(反転表示させる場合)であっても、最上部の表示ライン324と最下部の表示ライン324は同一となる、すなわち、偏光特性の異なるそれぞれの表示ライン324の配列が同一になる。
【0071】
図13は、本実施形態にかかる表示制御部332の処理について説明するための説明図である。表示制御部332は、データ保持部118が保持する立体表示データ142を構成するラインデータの数が表示ライン324の総ライン数と等しいときであって、反転受付部130から反転信号が伝達されない場合、すなわち、ディスプレイ320に立体表示データ142を通常表示させる場合(図13(a)の「通常表示A」で示す)、データ保持部118が保持する立体表示データ142を読み出して、そのままディスプレイ320に表示させる。なお、データ保持部118が保持する立体表示データ142を構成するラインデータの数は、データ計数部330により算出される。
【0072】
一方、表示制御部332は、立体表示データ142を構成するラインデータの数と表示ライン324の総ライン数とが等しいときであって、反転受付部130から反転信号が伝達された場合、すなわち、立体表示データ142を反転表示させる場合、図13(a)の「反転表示A」に示すように立体表示データ142を上下左右反転させてディスプレイ320に表示させる。
【0073】
また、図13(b)の「通常表示B」および「反転表示B」に示すように、立体表示データ142aのラインデータの数が、表示ライン324の総ライン数未満、かつ偶数である場合、少なくとも立体表示データ142の最後のラインデータRD(n−1)の後に、奇数ライン分の挿入データを挿入するとよい。
【0074】
立体表示データ142aを構成するラインデータの数が、ディスプレイ320の表示ライン324の総ライン数未満である場合、ラインデータが表示されない表示ライン324ができてしまう。したがって、不足しているラインデータを補う必要が生じる。この際、ラインデータの数が奇数である場合、すなわち、ラインデータの数と表示ライン324の本数との差分が偶数である場合には、挿入データを挿入する位置は、立体表示データ142の最初のラインデータLD1の前であっても最後のラインデータRD(n−1)の後であっても、それぞれのラインデータを適切な表示ライン324に表示させることができる。
【0075】
しかし、ラインデータの数が偶数である場合、すなわち、ラインデータの数と表示ライン324の本数との差分が奇数である場合に、無作為にラインデータを追加すると、立体表示データ142aの各ラインデータが不規則になり、反転表示させたときに所望する映像が得られない場合がある。
【0076】
そこで、少なくとも立体表示データ142の最後のラインデータRD(n−1)の後に、挿入データを奇数ライン分挿入する構成により、立体表示データ142aを構成するそれぞれのラインデータを適切な表示ライン324に確実に表示させつつ、ラインデータが表示されない表示ライン324に任意のラインデータを表示させることが可能となる。
【0077】
このとき挿入データは、上述したように予め定められたデータ、例えば、黒色(単色)を示す画素値で構成されたデータであるとよい。上述した第1の実施形態と同様に、立体表示データ142aと表示ライン324との差分を補うために挿入する挿入データを、立体表示データ142aを構成する任意のラインデータを複製して作成すると、参照する際に別途メモリを要し、また参照すべきラインデータが格納されるまで無駄に時間を費やし、さらにラインデータを生成する負荷が必要となる。ここでも、黒色を示すデータ等予め定められた所定の色を示すデータを挿入データとする構成により、立体表示データ142aと表示ライン324とのライン数の差分を補う度に新たに挿入データを生成しなくて済み、無駄な処理負荷の増加を抑制することが可能となる。
【0078】
また、上記第1の実施形態と同様、ディスプレイ320が液晶ディスプレイの場合、有効表示領域とベゼルの間には画像が表示されない領域が存在する。そして、この画像が表示されない領域は、通常黒色である。したがって、挿入データを、この画像が表示されない領域の色と遜色ない色を示すデータすなわち黒色を示すデータにすることで、挿入データが表示される表示ライン324をこの画像が表示されない領域と同化させることができ、かかる挿入データの存在を目立たなくすることが可能となる。
【0079】
さらに、図13(c)の「通常表示C」および「反転表示C」に示すように、データ計数部330が計数したラインデータの数が、ディスプレイ320における表示ライン324の本数を超過し、かつ偶数である場合、超過した分のラインデータのうち、少なくとも立体表示データ142の最後のラインデータRD(n+1)を含む奇数ライン分のラインデータを削除してもよい。
【0080】
一方、立体表示データ142bを構成するラインデータの数が、表示ライン324の総ライン数を超過する場合、表示ライン324に表示されない余剰したラインデータが存在することになる。この際、ラインデータの数が奇数である場合、すなわち、ラインデータの数と表示ライン324の本数との差分が偶数である場合には、削除するラインデータは、最初のラインデータであっても最後のラインデータであっても、それぞれのラインデータを適切な表示ラインに表示させることができる。
【0081】
しかし、ラインデータの数が偶数の場合、すなわち、ラインデータの数と表示ラインの総ライン数との差分が奇数である場合に、削除するラインデータを無作為に抽出すると、立体表示データ142bの各ラインデータが不規則になり、反転表示させたときに所望する映像が得られない場合がある。そこで、上記少なくとも立体表示データ142の最後のラインデータRD(n+1)を削除する構成により、立体表示データ142bを構成するそれぞれのラインデータを適切な表示ライン324に確実に表示させることができ立体表示を実現することが可能となる。
【0082】
また、一般的に、ユーザ102または第三者104がディスプレイ320上で注視する位置は、ディスプレイ320の中央であるため、立体表示データ142の最初または最後のラインデータを削除しても立体表示に与える影響は少ない。
【0083】
本実施形態において、表示制御部332は、計数されたラインデータの数が、ディスプレイ320における表示ライン324の本数を超過し、かつ偶数である場合、超過した分のラインデータのうち、少なくとも立体表示データ142の最後のラインデータRD(n+1)から奇数ライン分のラインデータを削除するが、少なくとも最後の奇数ライン分をディスプレイ320に表示させないことで削除する処理を省略することができる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態にかかる立体映像表示装置300においても、ディスプレイ320の表示ライン324の総ライン数が奇数である場合、例えば、表示ライン324が水平方向に交互に配置されているディスプレイにおいて、ユーザ102側から視認する場合であっても、ユーザ102の対面側から視認する場合であっても、偏光特性の異なるそれぞれの表示ライン324の配列が同一になる。したがって、立体映像表示装置300は、映像を反転表示させる場合に、立体表示データ142を上下左右反転させてディスプレイ320に表示させるだけで、通常表示させる場合と同様に有効な立体表示を実現することが可能となる。
【0085】
(立体映像表示方法)
次に、上述した立体映像表示装置300を用いて、両眼視差による立体映像を表示する立体映像表示方法を具体的に説明する。
【0086】
図14および図15は、立体映像表示方法の全体的な流れを示したフローチャートである。図14に示すように、データ取得部116は立体表示データ142を取得すると(S400)、データ計数部330は、立体表示データ142を構成するラインデータの数を計数する(S402)。そして、データ取得部116はかかる立体表示データ142をデータ保持部118に順次書き込む(S404)。データ計数部330がすべてのラインデータの数の計数を終了していない場合はステップS400に戻る。データ計数部330がすべてのラインデータの数の計数を終了した場合(S406のYES)、表示制御部332は、ディスプレイ320の表示ライン324の総ライン数nからデータ計数ステップS402〜S406において計数されたラインデータの数を引いた値dを算出する(S408)。
【0087】
つぎに表示制御部332は、反転受付部130から反転信号が伝達されたか否かを判定し(S410)、伝達されていれば(S410のYES)、差分算出ステップS408で算出した値dが、0以下であるか否かを判定する(S412)。
【0088】
値dが0以下であれば(S412のYES)、表示制御部332は、i番目のラインデータのiに、表示ライン324の総ライン数であるnを代入し(S414)、i番目のラインデータをデータ保持部118から読み出して(S416)、ディスプレイ320に表示させる(S418)。
【0089】
表示制御部332は、立体表示データ142の1番目のラインデータをディスプレイ320に表示させたか否かを判定し(S420)、まだ、1番目のラインデータを表示していなければ(S420のNO)、i番目のラインデータのiに前回値からデクリメントした(i−1)を代入し(S422)、データ読み出しステップS416へ戻り、立体表示データ142の1番目のラインデータがディスプレイ320に表示される(S420のYES)まで、立体表示データ142をラインデータ単位でディスプレイ320に表示させる。このとき、d<0である場合は、立体表示データ142の(n+1)番目から(n+d)番目までのラインデータが表示されないこととなる。
【0090】
値dが0より大きければ(S412のNO)、ディスプレイ320のユーザ102の対面側から見た場合の最下部の表示ライン324からd番目の表示ライン324まで挿入データを表示させる(S424)。そして、表示制御部332は、i番目のラインデータのiに(n−d)を代入し(S426)、i番目のラインデータをデータ保持部118から読み出して(S428)、ディスプレイ320に表示させる(S430)。
【0091】
表示制御部332は、立体表示データ142の1番目のラインデータをディスプレイ320に表示させたか否かを判定し(S432)、まだ、1番目のラインデータを表示していなければ(S432のNO)、i番目のラインデータのiに前回値からデクリメントした(i−1)を代入し(S434)、データ読み出しステップS428へ戻り、立体表示データ142の1番目のラインデータがディスプレイ320に表示される(S432のYES)まで、立体表示データ142をラインデータ単位でディスプレイ320に表示させる。
【0092】
一方、図15に示すように、反転受付部130から反転信号が伝達されない場合、すなわち、通常表示させる場合(S410のNO)、図14に示す差分算出ステップS408で算出した値dが、0以下であるか否かを判定する(S502)。
【0093】
値dが0以下であれば(S502のYES)、表示制御部332は、i番目のラインデータのiに1を代入し(S504)、i番目のラインデータをデータ保持部118から読み出して(S506)、ディスプレイ320に表示させる(S508)。
【0094】
表示制御部332は、表示ライン324の総ライン数であるn番目のラインデータをディスプレイ320に表示させたか否かを判定し(S510)、まだ、n番目のラインデータを表示していなければ(S510のNO)、i番目のラインデータのiに前回値からインクリメント(i+1)を代入し(S512)、データ読み出しステップS506へ戻り、立体表示データ142のn番目のラインデータがディスプレイ320に表示される(S510のYES)まで、立体表示データ142をラインデータ単位でディスプレイ320に表示させる。
【0095】
値dが0より大きければ(S502のNO)、表示制御部332は、i番目のラインデータのiに1を代入し(S514)、i番目のラインデータをデータ保持部118から読み出して(S516)、ディスプレイ320に表示させる(S518)。
【0096】
表示制御部332は、(n−d)番目のラインデータをディスプレイ320に表示させたか否かを判定し(S520)、まだ、(n−d)番目のラインデータを表示していなければ(S520のNO)、i番目のラインデータのiに前回の値からインクリメントした(i+1)を代入し(S522)、データ読み出しステップS516へ戻り、立体表示データ142の(n−d)番目のラインデータがディスプレイ320に表示される(S520のYES)まで、立体表示データ142をラインデータ単位でディスプレイ320に表示させる。
【0097】
そして、表示制御部332は、dライン分の挿入データをディスプレイ320のユーザ102側から見た場合の最上部の表示ライン324に表示させる(S524)。
【0098】
以上説明したように、本実施形態にかかる立体映像表示方法においても、ディスプレイ320の総ライン数を奇数にするといった構成にするだけで、映像を反転表示させる場合にも、通常表示させる場合と同様に有効な立体表示を実現することが可能となる。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0100】
例えば、上述した実施形態において、ディスプレイには、表示ラインが水平方向に並置されたディスプレイを用いて説明をしたが、表示ラインが鉛直方向に並置されたディスプレイを用いても本発明の効果を得ることができる。また、ディスプレイにおける1表示ラインを1画素ラインとして説明したが、任意の数の画素ラインを1表示ラインとしてもよい。
【0101】
さらに、上記第2の実施形態において、反転表示機能を有していないディスプレイ320を例に挙げて説明したが、図8に示した反転表示機能を有し、かつ表示ラインの総ライン数が奇数のものを用いてもよい。かかる場合ラインデータの順番を入れ替えるためのメモリは不要となり、部品点数を減らすことができる。
【0102】
また、上述した実施形態において、挿入ラインは少なくともディスプレイの最下部の表示ラインに1つ挿入しているが、最上部に偶数ライン、最下部に奇数ライン挿入してもよい。
【0103】
なお、本明細書の立体映像表示方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、両眼視差による立体映像をディスプレイに表示することが可能な立体映像表示装置および立体映像表示方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
100、300 …立体映像表示装置
110、310 …中央制御部
112 …ROM
114 …RAM
116 …データ取得部
118 …データ保持部
120、150、320 …ディスプレイ
122、322 …表示面
124、324 …表示ライン
128 …操作部
130 …反転受付部
132、332 …表示制御部
140 …立体映像データ
142 …立体表示データ
330 …データ計数部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示ラインと、前記第1の表示ラインとは偏光特性が異なる第2の表示ラインとを交互に並置したディスプレイと、
前記ディスプレイにおいて両眼視差による立体視を実現させるため、左眼に視認させる左眼映像データまたは右眼に視認させる右眼映像データの一方を前記第1の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置し、他方を前記第2の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置した立体表示データを前記ディスプレイに表示させる表示制御部と、
前記ディスプレイに表示させる映像を上下左右反転させるための入力を受け付ける反転受付部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記反転受付部が前記上下左右反転させるための入力を受け付けると、前記立体表示データに奇数ライン分の任意のラインデータを挿入し、かつ、前記立体表示データをライン単位で前記奇数ライン分シフトし、前記シフトした立体表示データを前記ディスプレイに上下左右反転させて表示させることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
前記任意のラインデータは、予め定められたデータであることを特徴とする請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項3】
第1の表示ラインと、前記第1の表示ラインとは偏光特性が異なる第2の表示ラインとを交互に並置し、前記第1の表示ラインと前記第2の表示ラインの総ライン数が奇数であるディスプレイと、
前記ディスプレイに表示させる映像を上下左右反転させるための入力を受け付ける反転受付部と、
前記ディスプレイおいて両眼視差による立体視を実現させるため、左眼に視認させる左眼映像データまたは右眼に視認させる右眼映像データの一方を前記第1の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置し、他方を前記第2の表示ラインに対応する位置にライン単位で配置した立体表示データを前記ディスプレイに表示させ、前記前記反転受付部が前記上下左右反転させるための入力を受け付けると、前記立体表示データを上下左右反転させて前記ディスプレイに表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項4】
前記立体表示データの総ライン数を計数するデータ計数部をさらに備え、
前記表示制御部は、計数された前記立体表示データの総ライン数が、前記ディスプレイにおける表示ラインの総ライン数未満、かつ偶数である場合、少なくとも前記立体表示データの最後のラインデータの後に、奇数ライン分の任意のラインデータを挿入することを特徴とする請求項3に記載の立体映像表示装置。
【請求項5】
前記任意のラインデータは、予め定められたデータであることを特徴とする請求項4に記載の立体映像表示装置。
【請求項6】
前記立体表示データの総ライン数を計数するデータ計数部をさらに備え、
前記表示制御部は、計数された前記立体表示データの総ライン数が、前記ディスプレイにおける表示ラインの総ライン数を超過し、かつ偶数である場合、超過した分の前記ラインデータのうち、少なくとも前記立体表示データのラインデータから最後の奇数ライン分のラインデータを削除することを特徴とする請求項3に記載の立体映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−49938(P2011−49938A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197866(P2009−197866)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】