説明

立体映像表示装置

【課題】従来のレンチキュラーレンズ方式の立体表示装置は、大型の立体映像表示装置に適用した場合に、LED等の表示部とレンチキュラーレンズとを近接配置することができなかった。
【解決手段】立体映像表示装置1は、複数の表示画素21を行列に配列し、右眼用映像と左眼用映像とを一列おきに交互に表示する表示部2と、表示部2の表示画素21の列毎に設けられ、表示画素21の列数と同数で、正の屈折率を有する複数のレンチキュラーレンズ31とを有する。レンチキュラーレンズ31は、表示部2に表示された右眼用映像および左眼用映像の光を、表示画素21の列毎にコリメートする。さらに、コリメートした光を、右眼用および左眼用の立体視領域に到達するように、表示画素2の列毎に偏向する偏向光学素子32を備える。偏向光学素子32は、表示画素21の列方向に延在し、且つ表示部2の法線に対して傾斜した、表示画素21の列数と同数の平面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸眼で立体映像を観察することができる大型の立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、立体映像表示装置として、アクティブシャッター方式が知られている。アクティブシャッター方式では、表示部に、右眼用映像と左眼用映像とを高速で切り替えて交互に表示し(フィールドシーケンシャル方式)、アクティブシャッターメガネを用いて観察する。アクティブシャッターメガネは、液晶シャッターにより、映像の切り替えと同期して左右の視界を交互に遮蔽し、右眼には右眼用映像が見え、左眼には左眼用映像が見える。しかしながら、このアクティブシャッター方式では、観察者がメガネを着用しなければならないという煩雑さがある。
【0003】
一方、観察者が裸眼で立体映像を観察できる立体映像表示装置として、レンチキュラー方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。レンチキュラーレンズ方式では、表示部の前面に、多数のシリンドリカルレンズを配列したレンチキュラーレンズを設ける。表示部には、右眼用映像と左眼用映像とを縦のストライプ状に交互に表示し、これらの右眼用映像と左眼用映像をレンチキュラーレンズによって水平方向に分離する。レンチキュラーレンズは、その焦点面に表示部が位置するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−44995号公報(第1図、第3図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のレンチキュラーレンズ方式を、例えばLED(発光ダイオード)を用いた大画面表示装置に適用すると、以下の問題がある。
【0006】
すなわち、LEDを用いた大画面表示装置では、表示画素(LED)が大きく、配置間隔も広いため、レンチキュラーレンズの曲率半径を大きくする必要がある。そのため、レンチキュラーレンズの焦点距離が長くなり、その焦点面を表示部と一致させるためには、レンチキュラーレンズを表示部から離間した位置に配置しなければならない。その結果、レンチキュラーレンズと表示部とを近接配置することができず、表示装置の薄型化の妨げとなる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、表示部とレンチキュラーレンズとを近接配置することが可能な立体映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る立体映像表示装置は、行列に配列された複数の表示画素を有し、右眼用映像と左眼用映像とを一列おきに交互に表示する表示部と、表示部の表示画素の列毎に設けられ、正の屈折率を有する、表示画素の列数と同数の複数のレンチキュラーレンズであって、表示部に表示された右眼用映像および左眼用映像の光を、表示画素の列毎にコリメートする複数のレンチキュラーレンズと、複数のレンチキュラーレンズによりコリメートされた光を、右眼用の立体視領域および左眼用の立体視領域に到達するように、表示画素の列毎に偏向する偏向光学素子とを備える。偏向光学素子は、表示部の表示画素の列方向に延在し、且つ表示部の法線に対して傾斜した、表示画素の列数と同数の平面を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、立体映像表示装置を大型化した場合であっても、表示部とレンチキュラーレンズとを近接配置することができる。そのため、立体映像表示装置の薄型化に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における大型立体映像表示装置を含む立体映像表示システムの基本構成を示す図である。
【図2】実施の形態1における大型立体映像表示装置のLED表示部と前面レンズとを示す平面図である。
【図3】実施の形態1における大型立体映像表示装置のLED表示部の画面中央のLEDと前面レンズとを含む光学系を示す平面図である。
【図4】実施の形態1における大型立体映像表示装置のLED表示部の画面端部のLEDと前面レンズとを含む光学系を示す平面図である。
【図5】比較例の立体映像表示装置の液晶表示部とレンチキュラーレンズとを含む光学系を示す平面図である。
【図6】比較例の立体映像表示装置のLED表示部とレンチキュラーレンズとを含む光学系を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における大型立体映像表示装置のLED表示部と前面レンズとを示す平面図である。
【図8】実施の形態2における大型立体映像表示装置のLED表示部の画面中央のLEDと前面レンズとを含む光学系を示す平面図である。
【図9】実施の形態2における大型立体映像表示装置のLED表示部の画面端部のLEDと前面レンズとを含む光学系を示す平面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における大型立体映像表示装置のLED表示部と前面レンズとを示す平面図(A)および側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における大型立体映像表示装置1(立体映像表示装置)を含む立体映像表示システムの基本構成を示す図である。大型立体映像表示装置1は、表示画素としてLED(発光ダイオード)を用い、例えば32V型以上の大画面に映像を表示するものである。大型立体映像表示装置1は、表示部としてのLED表示部2と、このLED表示部2の前面に配置された前面レンズ3とを有している。
【0012】
LED表示部2には、映像信号調整機能を有し、映像信号を出力する表示コントローラ(表示制御部)11が接続されている。表示コントローラ11には、ラインバイライン変換装置13が接続されており、このラインバイライン変換装置13には、3D映像信号(立体映像信号)を出力可能な3D対応プレーヤー(再生装置)12が接続されている。ラインバイライン変換装置13は、3D対応プレーヤー12から出力された3D映像信号である右眼用映像および左眼用映像を、一列(縦一列)おきに交互にストライプ状に表示されるように変換する。
【0013】
表示コントローラ11には、また、PC(パーソナルコンピュータ)24も接続されている。PC24を用いて、予め、右眼用映像と左眼用映像とが一列おきに交互に並ぶようにコンテンツを作成し、これを表示コントローラ11に直接入力してもよい。
【0014】
図1において、LED表示部2の縦方向(上下方向)をY方向とし、横方向(左右方向)をX方向とする。また、LED表示部2の表示面の法線方向(すなわち、X方向とY方向の両方に直交する方向)をZ方向とする。
【0015】
図2は、LED表示部2と前面レンズ3とを示す平面図である。LED表示部2の各表示画素は、LED21で構成されている。ここでは、LED21は、1つの素子で赤色,緑色,青色の3色の光を発光可能な、いわゆる3色発光LEDで構成されている。各LED21の出射光軸方向は、Z方向である。
【0016】
LED21は、X方向(行)およびY方向(列)にいずれも一定の配列ピッチ(配列間隔)dで行列に配列されている。LED21は、表示コントローラ11の制御により、右眼用の映像(R)と左眼用の映像(L)とを一列おきに交互に表示する。
【0017】
前面レンズ3は、透明な樹脂(例えばアクリル樹脂)またはガラスで形成されている。前面レンズ3のLED表示部2側の面には、LED21の列数と同数のレンチキュラーレンズ31が形成されている。レンチキュラーレンズ31は、LED21側に凸となる半円状断面(XZ断面)を有してY方向に延在するシリンドリカルレンズ(レンズ面)を、X方向に多数配列したものである。各シリンドリカルレンズ面は、XZ面内において、正の屈折力(レンズ効果)を有している。レンチキュラーレンズ31は、その焦点面にLED表示部2の表示画素(LED21)が位置するように配置されている。
【0018】
レンチキュラーレンズ31は、LED表示部2に行列に配列されたLED21の列毎に設けられている。右眼用の映像(R)を表示するLED21の列に対向するレンズ面31aは、当該LED21から出射された光が入射し、この光をコリメートして平行光とする。左眼用の映像(L)を表示するLED21の列に対向するレンズ面31bは、当該LED21から出射された光が入射し、この光をコリメートして平行光とする。
【0019】
前面レンズ3のレンチキュラーレンズ31と反対側には、LED21の列数と同数のプリズム(偏向面)32が設けられている。プリズム32は、Y方向に延在する一対のプリズム面(平面)32a,32bを、XZ断面(水平断面)でV字をなすように組み合わせ、これをX方向に多数配列したものである。プリズム面32aは、右眼用映像(R)を表示するLED21の列に対応し、プリズム面32bは、左眼用映像(L)を表示するLED21の列に対応している。
【0020】
プリズム面32aは、右眼用映像(R)を表示するLED21から出射され、レンチキュラーレンズ31のレンズ面31aを通過した平行光を、立体視領域(立体視ゾーン)15Rに到達するように偏向する。また、プリズム面32bは、左眼用映像(L)を表示するLED21から出射され、レンチキュラーレンズ31のレンズ面31bを通過した平行光を、立体視領域15Lに到達するように偏向する。
【0021】
このようにプリズム32(プリズム面32a,32b)で偏向された映像光(R,L)は、平行光のまま、立体視領域15R,15Lに到達する。観察者が、立体視領域15Rに右眼を入れ、立体視領域15Lに左眼を入れることにより、右眼用映像および左眼用映像を観察することができ、立体映像を認識することができる。なお、図2に示した例では、表示装置1の中心線C上にいる観察者が、右眼と左眼をそれぞれ立体視領域15R,15Lに入れている。
【0022】
図3は、LED表示部2の画面中央のLED21と前面レンズ3とを含む光学系を示す平面図である。図3には、右眼用映像(R)を表示するLED21と、これに対向するレンチキュラーレンズ31(レンズ面31a)およびプリズム32(プリズム面32a)が示されている。LED表示部2の画面中央では、LED21の中心軸と、レンチキュラーレンズ31の中心軸とが一致している。
【0023】
ここでは、LED21の幅(X方向寸法)をSで表わし、レンチキュラーレンズ31の焦点から主点Pまでの距離をEFLで表す。
【0024】
画面中央のLED21の端部21a(すなわちLED21の中心から距離S/2の位置)から出射された光線Bは、レンチキュラーレンズ31の主点Pを通過してプリズム32で屈折作用を受けて、観察者に向かってZ方向に進行する。なお、図3では、主点Pを通る光線Bのみを示すが、LED21の端部21aから出射された光(光線の束)は、光線Bを中心とする平行光として観察者に向かって進行する。レンチキュラーレンズ31に対する光線Bの入射角γは、以下の式(1)から求められる。
【0025】
【数1】

【0026】
プリズム32(プリズム面32a)のZ方向に対する傾斜角度をαで表わすと、レンチキュラーレンズ31の主点Pを通過した光線Bのプリズム32に対する入射角βは、以下の式(2)から求められる。
【0027】
【数2】

【0028】
ここで、前面レンズ3の屈折率をnで表わすと、屈折の法則から、次の式(3)が成立する。
【0029】
【数3】

【0030】
式(1)〜(3)により、レンチキュラーレンズ31の焦点から主点Pまでの距離EFLと、LED21の幅Sと、前面レンズ3の屈折率nとに基づいて、プリズム32の傾斜角度αを決定することができる。
【0031】
LED21の幅Sを例えば2mmとし、レンチキュラーレンズ31の焦点から主点Pまでの距離EFLを60mm(LED21からレンチキュラーレンズ31までの距離FFLは59mm)とし、前面レンズ3の屈折率nを1.61とすると、プリズム32の傾斜角度αは、例えば、2.5度である。また、光線Bのプリズム32に対する入射角βは、例えば1.55度である。
【0032】
図4は、LED表示部2の画面端部のLED21と前面レンズ3とを含む光学系を示す平面図である。LED表示部2の画面端部では、LED21の中心軸と、レンチキュラーレンズ31の中心軸とが、X方向に所定量(シフト量Aとする)だけずれている。
【0033】
画面端部のLED21の端部21aから出射された光線Bは、レンチキュラーレンズ31の主点Pを通過してプリズム32で屈折作用を受け、Z方向に対して所定の角度(90−θとする)で進行する。前面レンズ3から観察者までのZ方向距離をdとし、レンチキュラーレンズ31の中心軸から観察者の位置までのX方向距離をdとすると、上記の角度θは、以下の式(4)により求められる。
【0034】
【数4】

【0035】
プリズム32に対する光線Bの出射角θは、プリズム32の傾斜角度αと上記の角度θとを用いて、以下の式(5)で表わされる。
【0036】
【数5】

【0037】
プリズム32に対する光線Bの入射角θと出射角θとの関係は、前面レンズ3の屈折率nを用いて、以下の式(6)で表わされる。
【0038】
【数6】

【0039】
また、レンチキュラーレンズ31に対する光線Bの入射角θは、上述したプリズム32の傾斜角度αと、プリズム32に対する光線Bの入射角θとを用いて、以下の式(7)で表わされる。
【0040】
【数7】

【0041】
式(7)で求めた入射角θと、レンチキュラーレンズ31の焦点から主点Pまでの距離EFLとから、画面端部のLED21の中心軸とレンチキュラーレンズ31の中心軸とのシフト量Aは、以下の式(8)により決定される。
【0042】
【数8】

【0043】
すなわち、画面端部では、LED21の中心軸に対して、上記の式(8)により求められるシフト量Aを確保するように、レンチキュラーレンズ31が配置される。
【0044】
例えば、前面レンズ3から観察者までのZ方向距離dを1500mmとし、レンチキュラーレンズ31の中心軸から観察者までのX方向距離dを300mmとした場合、画面端部のLED21の中心軸に対するレンチキュラーレンズ31の中心軸のシフト量Aは、7.4mmとなる。
【0045】
このように構成されているため、LED表示部2のLED21に表示された右眼用映像(R)と左眼用映像(L)は、レンチキュラーレンズ31によってコリメートされてそれぞれ平行光となり、プリズム32によって偏向されて立体視領域15R,15Lに到達する。観察者は、立体視領域15R,15Lにそれぞれ右眼と左眼を入れて、立体映像を観察することができる。
【0046】
以上説明したように、この実施の形態1によれば、LED表示部2の各列のLED21に対応してレンチキュラーレンズ31が設けられており、このレンチキュラーレンズ31で映像光をコリメートし、プリズム32によって偏向するため、大型の立体映像表示装置に適用した場合であっても、レンチキュラーレンズ31をLED21に対して近接配置することができる。そのため、立体映像表示装置1の薄型化に資することができる。
【0047】
また、レンチキュラーレンズ31の各シリンドリカルレンズは、一列分のLED21に対応する幅を有していればよいため、レンチキュラーレンズ31のシリンドリカルレンズの半径を小さくすることができる。そのため、レンチキュラーレンズ31の製造が容易になる。
【0048】
比較例.
ここで、実施の形態1に対する比較例について説明する。図5は、比較例の立体映像表示装置の光学系を示す図である。図5に示す立体映像表示装置は、液晶表示部7を有し、その前面にはレンチキュラーレンズ8が配置されている。但し、レンチキュラーレンズ8は、そのシリンドリカルレンズが、液晶表示部7とは反対の側を向くように配置されている。
【0049】
液晶表示部7は、レンチキュラーレンズ8の焦点面に位置する表示面を有し、右眼用映像(R)と左眼用映像(L)とをストライプ状に交互に表示する。レンチキュラーレンズ8の各シリンドリカルレンズは、液晶表示部7の2列分の画素の映像光(R,L)が入射し、右眼用の立体視領域15Rと左眼用の立体視領域15Lに導く。
【0050】
図6は、図5に示した比較例の立体映像表示装置を、LEDを用いた大型の立体映像表示装置に適用した例を示す。図6に示した大型立体映像表示装置は、液晶表示部7(図5)の代わりに、LED表示部9を有している。
【0051】
図6に示した大型立体映像表示装置では、LED表示部9の表示画素であるLEDが大きく、間隔も広い。そのため、レンチキュラーレンズ8のシリンドリカルレンズの曲率半径を大きくする必要があり、焦点距離が長くなる。その結果、レンチキュラーレンズ8をLED表示部9から離れた位置に配置しなければならず、レンチキュラーレンズ8とLED表示部9とを近接配置することが困難になる。
【0052】
これに対し、上述した実施の形態1(図1〜4)では、LED表示部2の各列のLED21に対応してレンチキュラーレンズ31が設けられており、このレンチキュラーレンズ31により映像光(R,L)をコリメートし、プリズム32により偏向して立体視領域15R,15Lに導いている。そのため、レンチキュラーレンズ31をLED21に対して近接配置しても、LED21からの映像光(R,L)を立体視領域15R,15Lに導いて立体視を実現することができる。さらに、レンチキュラーレンズ31をLED21に対して近接配置することにより、LED21とレンチキュラーレンズ31との間の空間での光の拡散を最小限に抑えることができ、その結果、コントラストの高い映像表示が可能となる。
【0053】
また、図6に示したようにレンチキュラーレンズ31を大型化する必要がないため、レンチキュラーレンズ31の製造が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0054】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2における大型立体映像表示装置について説明する。実施の形態2における大型立体映像表示装置および立体映像表示システムの全体構成は、実施の形態1で説明したとおりである。
【0055】
図7は、実施の形態2における大型立体映像表示装置のLED表示部5と前面レンズ3とを含む光学系を示す平面図である。LED表示部5は、表示画素としてLED51を有している。LED51は、X方向およびY方向にいずれも一定の配列ピッチdで行列に配列されている。LED51は、実施の形態1で説明したLED21と同様に構成されているが、大きさがLED21よりも小さい。
【0056】
この実施の形態2では、LED51は、それぞれが隔壁52によって分離されている。隔壁52は、例えば、X方向およびY方向に碁盤の目状に形成されている。隔壁52は、その表面に、LED51からの光を反射する反射面(ミラー面)を有している。
【0057】
隔壁52には、LED51と対向するように、拡散部材としての拡散シート53が取り付けられている。拡散シート53は、LED51からの光を拡散して出射するものであり、例えばすり板ガラス(ガラスに限らず、樹脂であってもよい)で形成されている。
【0058】
前面レンズ3は、実施の形態1で説明した構成を有している。但し、レンチキュラーレンズ31の焦点面には、拡散シート53の表面が位置している(すなわち、レンチキュラーレンズ31は、拡散シート53から距離FFLの位置にある)。
【0059】
レンチキュラーレンズ31は、LED51から出射されて拡散シート53で拡散された光をコリメートして平行光とする。コリメートされた平行光は、プリズム32により、立体視領域15R,15Lに到達するように偏向される。観察者が、立体視領域15R,15Lに右眼と左眼を入れることにより、立体映像を観察することができる。他の構成は、実施の形態1で説明したとおりである。
【0060】
図8は、LED表示部5の画面中央のLED51と前面レンズ3を含む光学系を示す平面図である。図8には、右眼用の映像(R)を表示するLED51と、これに対応するレンチキュラーレンズ31(レンズ面31a)およびプリズム32(プリズム面32a)が示されている。
【0061】
ここでは、拡散シート53の幅をSで表し、レンチキュラーレンズ31の焦点(拡散シート53の表面)から主点Pまでの距離をEFLで表す。画面中央の拡散シート53の端部53aから出射された光線Bは、レンチキュラーレンズ31の主点Pを通過してプリズム32で屈折作用を受けて、観察者に向かってZ方向に進行する。レンチキュラーレンズ31に対する光線Bの入射角γは、以下の式(9)から求められる。
【0062】
【数9】

【0063】
プリズム32の傾斜角度をαで表わすと、レンチキュラーレンズ31の主点Pを通過した光線Bのプリズム32に対する入射角βは、以下の式(10)から求められる。
【数10】

【0064】
ここで、前面レンズ3の屈折率をnで表わすと、屈折の法則から、次の式(11)が成立する。
【0065】
【数11】

【0066】
式(9)〜(11)により、レンチキュラーレンズ31の焦点から主点Pまでの距離EFLと、拡散シート53の幅Sと、前面レンズ3の屈折率nとに基づいて、プリズム32の傾斜角度αを決定することができる。
【0067】
図9は、LED表示部5の画面端部のLED51と前面レンズ3とを含む光学系を示す平面図である。画面端部では、LED51の中心軸と、レンチキュラーレンズ31の中心軸とが、X方向に所定量(シフト量A)だけずれている。
【0068】
画面端部の拡散シート53の端部53aから出射された光線Bは、レンチキュラーレンズ31の主点Pを通過してプリズム32で屈折作用を受け、Z方向に対して所定の角度(90−θとする)で進行する。前面レンズ3から観察者までのZ方向距離をdとし、レンチキュラーレンズ31の中心軸から観察者までのX方向距離をdとすると、上記の角度θは、以下の式(12)により求められる。
【0069】
【数12】

【0070】
プリズム32に対する光線Bの出射角θは、プリズム32の傾斜角度αと上記の角度θとを用いて、以下の式(13)で表わされる。
【0071】
【数13】

【0072】
プリズム32に対する光線Bの入射角θと出射角θとの関係は、前面レンズ3の屈折率nを用いて、以下の式(14)で表わされる。
【0073】
【数14】

【0074】
また、レンチキュラーレンズ31に対する光線Bの入射角θは、上述したプリズム32の傾斜角度αと、プリズム32に対する光線Bの入射角θとを用いて、以下の式(15)で表わされる。
【0075】
【数15】

【0076】
式(15)で求めた入射角θと、レンチキュラーレンズ31の焦点から主点Pまでの距離EFLとから、画面端部のLED51の中心軸とレンチキュラーレンズ31の中心軸とのシフト量Aは、以下の式(16)により決定される。
【0077】
【数16】

【0078】
すなわち、画面端部では、LED51の中心軸に対して、上記の式(16)により求められるシフト量Aを確保するように、レンチキュラーレンズ31が配置される。
【0079】
このように構成されているため、LED表示部5のLED51に表示された右眼用映像(R)と左眼用映像(L)は、拡散シート53で拡散され、レンチキュラーレンズ31によってコリメートされて平行光となり、プリズム32によって偏向されて立体視領域15R,15Lに到達する。観察者は、立体視領域15R,15Lにそれぞれ右眼と左眼を入れて、立体映像を認識することができる。
【0080】
実施の形態2によれば、実施の形態1で説明した各効果に加えて、LED51の出射側に拡散シート53を設けることにより、比較的小さなLEDを用いても大きな発光面積を確保することができ、光の利用効率(開口率)を高めることができる。
【0081】
加えて、LED51を囲む隔壁52の内面が、LED51からの光を反射することにより、光の利用効率をさらに高めることができる。
【0082】
なお、この実施の形態2では、LED51を囲むように隔壁52を設け、LED51の前方(出射側)に拡散シート53を設けているが、隔壁52のみ、あるいは拡散シート53のみを設けた構成も可能である。
【0083】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3における大型立体映像表示装置について説明する。実施の形態3における大型立体映像表示装置および立体映像表示システムの全体構成は、実施の形態1で説明したとおりである。
【0084】
図10(A)および(B)は、実施の形態3におけるLED表示部6と前面レンズ3とを含む光学系を示す平面図および側面図である。実施の形態3のLED表示部6は、実施の形態2のLED表示部5(図7〜9)とほぼ同様に構成されているが、各LED51に対応する拡散シート53の出射側(前面レンズ3側)で且つ上方に、上方からの光(例えば日光等の外部光)が拡散シート53に直接入射しないようにするための遮光部材としての遮光板(サンバイザー)61が設けられている。他の構成は、実施の形態1および2で説明したとおりである。
【0085】
実施の形態3によれば、実施の形態1および2で説明した各効果に加えて、各LED51に対応する拡散シート53の上側に、遮光板61を設けたことにより、例えば大型立体表示装置を屋外に設置した場合であっても、日光によるコントラストの低下を防止することができる。
【0086】
なお、実施の形態3の遮光板61は、実施の形態1のLED表示部2に取り付けてもよく、この場合にも、日光によるコントラストの低下を防止する効果が得られる。
【0087】
上記の実施の形態1〜3では、映像を表示する表示装置として、LED表示部2,5,6を用いたが、右眼用映像と左眼用映像とを一列ずつ交互に表示できるものであれば、他の表示部、例えば、液晶表示部、あるいは有機EL(Electro−Luminescence)表示部などを用いてもよい。
【0088】
また、上記の実施の形態1〜3では、前面レンズ3にレンチキュラーレンズ31とプリズム32とを設けたが、表示部に表示された右眼用映像および左眼用映像の光を、正の屈折力を有する複数のレンズによって表示画素の列毎にコリメートし、コリメートした光を表示画素の列毎に(各立体視領域に到達するように)偏向する構成であればよい。
【0089】
本発明は、例えば、3Dテレビジョン装置などの立体映像表示装置(より好ましくは、表示画素としてLEDを用いた大型の立体映像表示装置)に適用される。
【符号の説明】
【0090】
1 大型立体映像表示装置(立体映像表示装置)、 11 表示コントローラ、 12 3D対応プレーヤー、 13 ラインバイライン変換装置、 14 PC、 15R,15L 立体視領域、 2,5,6 LED表示部(表示部)、 21,51 LED(表示画素)、 3 前面レンズ、 31,31a,31b レンチキュラーレンズ(レンズ)、 32 プリズム(偏向光学素子)、 32a,32b プリズム面(平面、偏向面)、 52 隔壁、 53 拡散シート(拡散部材)、 61 遮光板(遮光部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列に配列された複数の表示画素を有し、右眼用映像と左眼用映像とを一列おきに交互に表示する表示部と、
前記表示部の表示画素の列毎に設けられ、正の屈折力を有する、表示画素の列数と同数の複数のレンチキュラーレンズであって、前記表示部に表示された右眼用映像および左眼用映像の光を、表示画素の列毎にコリメートする複数のレンチキュラーレンズと、
前記複数のレンチキュラーレンズによりコリメートされた光を、右眼用の立体視領域および左眼用の立体視領域に到達するように、表示画素の列毎に偏向する偏向光学素子と
を備え、
前記偏向光学素子は、前記表示部の表示画素の列方向に延在し、且つ前記表示部の法線に対して傾斜した、表示画素の列数と同数の平面を有していること
を特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
前記偏向光学素子は、前記レンチキュラーレンズと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項3】
隣り合う一対の前記面が、上面視でV字状に組み合わせられ、
前記一対の前記面のうち、一方の面が、右眼用映像の光を右眼用の立体視領域に到達するように偏向し、
他方の面が、左眼用映像の光を左眼用の立体視領域に到達するように偏向すること
を特徴とする請求項1または2に記載の立体映像表示装置。
【請求項4】
前記表示部の画面中央では、表示画素の中心軸とレンチキュラーレンズの中心軸とは略一致し、
前記表示部の画面端部では、表示画素の中心軸に対してレンチキュラーレンズの中心軸がシフトしていること
を特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、各表示画素を構成する複数のLEDを有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項6】
前記表示部は、各表示画素を互いに分離する隔壁を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項7】
前記隔壁は、前記表示画素から出射された光を反射することを特徴とする請求項6に記載の立体映像表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、各表示画素からの光を拡散する拡散部材を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項9】
前記表示部は、各表示画素の上方に、外部光を遮る遮光部材を有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の立体映像表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−68932(P2013−68932A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155421(P2012−155421)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】