説明

立体画像処理システム、立体画像処理装置および立体画像処理方法

【課題】3Dカメラから出力されるデータは機器の精度の問題によりエラーデータが含まれ、そのまま使用した場合、綺麗な3次元データとならない。
【解決手段】第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置において、同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元データとを画像入力部からの入力とし、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理部を有することを特徴とする立体画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像処理技術に関し、特に、取得したデータをもとに立体画像をモニタに効果的に表示するための立体画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体画像表示装置の普及が進み、立体画像を生成したり加工したりする立体画像処理技術の開発も盛んになってきている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、コンピュータの演算処理により、被写体の陰影パターンもしくは輪郭パターンを示す左右のテンプレート画像を記憶手段に記憶しておくテンプレート画像記憶ステップと、2台のカメラにより元の被写体を2視点もしくは2方向から撮影して得られた左右の投影画像をコンピュータに入力し、コンピュータの演算処理により、上記記憶手段から左右のテンプレート画像を読み出し、左の投影画像に左のテンプレート画像を合成して、左の投影画像を修正もしくは補足し、この被写体を一方の視点もしくは方向から見たときの左の合成画像を形成すると共に、右の投影画像に右のテンプレート画像を合成して、右の投影画像を修正もしくは補足し、該被写体を他方の視点もしくは方向から見たときの右の合成画像を形成し、陰影もしくは輪郭を付与された左右の合成画像を形成するものである。すなわち、左右の画像の上に他の画像を合成して修正、補正する画像合成について開示するものである。
【0004】
また、一般的に、2次元映像信号から抽出された奥行き情報と2次元映像信号とに基づいて立体映像を生成する実写の2次元映像から視差情報を持たせた立体視用映像を生成することができる。しかしながら、上記従来の技術では大きく回り込んで見た映像を視聴することができない。
【0005】
下記特許文献2に記載の技術は、2次元映像とその立体視用情報とに基づいて立体映像を生成する方法において、観者の頭部位置又は観者が入力した操作情報に基づいて仮想カメラ位置を判定し、所定間隔で複数配置されたカメラで撮影したものに相当する複数の2次元映像のなかで仮想カメラ位置に最も近い位置の2次元映像とその立体視用情報とに基づいて立体映像を生成する。より具体的には、複数の角度から2次元写真を撮影し、これにより、左右の合成画像を形成し、3次元ディスプレイを用いて、左右の合成画像を左右の目で略同時に見ると、修整もしくは補足された被写体を立体的に見せることができる。
【0006】
上記の構成であれば、所定間隔で複数配置されたカメラで撮影したものに相当する複数の2次元映像(複数のカメラ)を利用するので、大きく回り込んで見た映像を視聴することができる。そして、複数の2次元映像のなかで仮想カメラ位置に最も近い位置の2次元映像とその立体視用情報とに基づいて立体映像を生成するので、映像の切り替わりが滑らかに行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−210405号公報
【特許文献2】特開2004−200814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、前後から撮影するものではなく360度全ての立体像を作成することができない。また、テンプレートとして記憶されている画像を、上からの合成に用いるものであり、撮影したそのままのデータに基づいて3次元映像を生成するものではない。
【0009】
また、特許文献2の技術では、複数の角度から2次元写真を撮影して立体的に見せるものであり、2次元映像と3次元映像とに基づいて、立体映像を作成するものではない。
【0010】
本発明は、取得した実際の2次元映像と3次元映像とに基づいて、立体画像を精度良く、かつ、簡単な処理により生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置において、同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元データとを画像入力部からの入力とし、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理部を有することを特徴とする立体画像処理装置が提供される。
【0012】
また、本発明は、第1の位置に設けられた第1の撮影装置と前記第1の位置とは異なる第2の位置に設けられた第2の撮影装置の少なくとも2以上の撮影装置により同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元(装飾用画像)データとを画像入力部からの入力とし、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理部を有することを特徴とする立体画像処理装置である。第1の位置に設けられた第1の撮影装置と前記第1の位置とは異なる第2の位置に設けられた第2の撮影装置の少なくとも2以上の撮影装置により同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元(装飾用画像)データとを画像入力部からの入力とすることで、立体画像データの生成処理の負担を軽減することができる。
【0013】
また、本発明は、第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置において、同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元(装飾用画像)データとを画像入力部からの入力とし、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理部を有する立体画像処理装置と、前記第1及び第2の撮影装置と、を有し、前記第1及び第2の撮影装置は、それぞれ、2Dデータと3Dデータとを取得する2Dカメラと3Dカメラとを有することを特徴とする立体画像処理システムである。
【0014】
本発明の他の観点によれば、第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置において、同じタイミングで被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データを取得するとともに、被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元データと取得するステップと、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理ステップとを有することを特徴とする立体画像処理方法が提供される。
【0015】
本発明は、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、当該プログラムを記録するコンピュータ読みとり可能な記憶媒体であっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の立体画像処理技術によれば、3次元立体画像を作成する処理の負担を軽減することができる。また、実際の2次元映像と3次元映像とにより立体画像を作成するため、きれいな立体画像を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態による立体画像処理システムの一構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】本実施の形態による立体画像処理システムにおける撮影装置の一構成例を示す外観図である。
【図3】本実施の形態による立体画像処理システムにおける画像処理装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施の形態による立体画像処理システムにおける2Dデータと3Dデータの一例と、2Dデータと3Dデータの対応付けの例を示す図である。
【図5】本実施の形態による立体画像処理の流れを示すフローチャート図である。
【図6】本実施の形態による立体画像処理のうち、複数画像の合成処理の流れを示すフローチャート図である。
【図7】本実施の形態による立体画像処理のうち、画像の補完処理の流れを示すフローチャート図である。
【図8】本実施の形態による立体画像処理の様子を示す図である。
【図9】本実施の形態による画像補完処理の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、3Dカメラとは、例えば、被写体に赤外線を照射し、その反射データを取得することで、深度を計測し、3Dデータを取得するものであり、例えば、Mesa Imaging社のSwissRanger(登録商標)SR4000を用いることができる。この3Dカメラについては、http://www.mesa-imaging.ch/prodview4k.phpを参照することができる。この3Dカメラは、3D画像生成に必要な。被写体との間の距離のデータ(3Dデータ)を取得するためのカメラ(撮影装置)である。
【0019】
一方、2Dカメラとは、一般的な平面(2次元)画像(2D画像)を撮影するためのデジタルカメラ等を指す。
【0020】
但し、3Dカメラから出力される3Dデータは、機器の精度の問題等によりエラーデータが含まれる場合が多く、そのまま使用した場合には、綺麗な3Dデータとならないという問題がある。
【0021】
また、3Dカメラの解像度と2Dカメラの装飾用2D画像データの解像度とが一致していない場合も多く、3Dデータと2Dデータとを合成する際に、立体画像表示に必要のない部分の画像が立体に表示されてしまうという問題もある。
【0022】
以下に、本実施の形態による、高い視覚効果で3D表示が可能な立体画像処理技術について説明する。
【0023】
図1(a)は、本発明の一実施の形態による立体画像処理システムの一構成例を示す機能ブロック図である。図1(b)は、図1(a)のシステムを上から見た位置関係の例を示す図である。
【0024】
図1(a)に示すように、立体画像処理システムAは、第1の撮影装置(1)101と、第2の撮影装置(2)102と、画像処理装置107と、表示装置108と、を有している。尚、表示装置108は、立体画像処理システムAにおいては任意に設けられる装置である。
【0025】
第1の撮影装置(1)101は、2Dカメラ(Webカメラ等)103と、3Dカメラ104とを備えており、第2の撮影装置102も同様に、2Dカメラ105と3Dカメラ106とを備えている。3Dカメラ104、106は、3Dカメラ104、106から撮影対象H(ここでは、人間を対象としている例を示す。)までの距離を計測し、撮影対象の立体形状を作成するためのデータを取得する機器である。2Dカメラ103、105は、撮影対象Hの2次元の写真を撮影する機器であり、デジタル画像が撮影できる機器であれば一般的なデジタルカメラを用いることができる。
【0026】
撮影対象となる人物Hが、第1の撮影装置(1)101と第2の撮影装置(2)102とに挟まれるように立つことにより、第1の撮影装置(1)101は背面からの画像、第2の撮影装置(2)102は正面からの画像を、前後から撮影する(図1(b)参照)。
【0027】
なお、本実施の形態では、第1の撮影装置(1)101、第2の撮影装置(2)102は、2Dカメラと3Dカメラとを別々に設ける構成を例としたが、2Dカメラ機能と3Dカメラ機能とを一体化したカメラD1、D2を用いても良い。また、1台の撮影装置101を前後に移動させながら正面画像と背面画像とを順次撮影しても良く、さらに、撮影装置の数を増やして3以上の複数の角度から被写体を撮影する構成としても良い。撮影装置を回転させる等により異なる位置における映像を撮影するようにしても良い。
【0028】
第1の撮影装置(1)101、第2の撮影装置(2)102は、それぞれ、インターフェイス部111、112を介して画像処理装置107のインターフェイス部113と接続されており(有線又は無線接続のいずれでも良い)、画像処理装置107は、第1の撮影装置(1)101、第2の撮影装置(2)102から送られた画像データに対し、補正、補完及び合成処理を行う。画像処理装置107による画像処理の結果、3Dカメラ104、106で撮影した撮影対象の立体形状に、2Dカメラ103、105で撮影した撮影対象の表面画像のデータ(色など)が合成された、3次元画像データが完成する。
【0029】
この3次元画像データに基づいて、画像処理装置107にインターフェイス部114、115を介して接続された(画像処理装置107と一体型でも良い)表示装置108(例えばLCDディスプレイ等)に立体画像が表示される。他の表示手段として、ネットワーク接続された図示しない携帯端末に3次元画像データを送り、携帯端末の表示画面上で3次元画像を確認できるようにしても良く、表示装置を限定するものではない。
【0030】
図2は、第1の撮影装置(1)101および第2の撮影装置(2)102の外観構成例を示す図である。カメラの三脚201の上に、3Dカメラ104もしくは3Dカメラ106が設けられ、その上に2Dカメラ103もしくは2Dカメラ105が取り付けられた簡単な構成である(上下は逆でも良く、左右に並べても良い。要するに近い位置に2Dカメラと3Dカメラが設けられている)。符号D1、D2で示すように、2Dカメラ、3Dカメラが一体であっても良い。要するに、2Dカメラ103、105と3Dカメラ104、106とが、同じカメラであっても良いし、異なるカメラであっても良いが、両者の位置がほぼ同じであることが好ましい。
【0031】
図3は、本実施の形態による画像処理装置107を中心としたシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。図4は、第1の撮影装置(1)101と第2の撮影装置(2)102とによる撮影画像データ及び画像情報の一例を示す図である。図3に示すように、画像処理装置107は、画像入力部301と、画像出力部302と、各画像補正部303と、複数画像合成部304と、画像補完処理部305と、合成後画像補正処理部306と、データ記憶部307と、を有している。各画像補正部303と、複数画像合成部304と、画像補完処理部305と、合成後画像補正処理部306と、により、画像処理部308を構成する。各処理部301〜307に付されている符号501〜507までは、図5の各処理と対応したものである。
【0032】
画像入力部301は、第2の撮影装置(2)102から3Dカメラ106(図1、2)によって撮影された正面立体(データ)401(図4)及び2Dカメラ105によって撮影された正面写真(データ)403(図4)を受け取り、第1の撮影装置(1)101から3Dカメラ104によって撮影された背面立体(データ)402(図4)及び2Dカメラ103によって撮影された背面写真(データ)404(図4)を受け取る。
【0033】
各画像補正部303は、画像入力部301から受け取った画像データに対し、ノイズやデータ誤差を除去し、正面立体(H11)401及び背面立体(H13)402において、カメラから撮影対象までの距離が取れていない部分を周辺の距離データに基づいて補完する処理を行う。
【0034】
複数画像合成部304は、各画像補正部303で処理された画像データを用い、正面立体401と正面写真403を貼り合わせて正面像の3次元画像データを作成し、背面立体402と背面写真404を張り合わせて背面像の3次元画像データを作成する。
【0035】
図4(a)は3Dデータ、図4(b)は2Dデータの一例を示す図である。図4(a)に示すように、正面立体データ401は、被写体Hの正面に置かれた第2の撮影装置(2)102の3Dカメラ106によって撮影された結果として得られる画像データであり、画像入力部301から入力される。3Dカメラ106によって撮影された正面立体データ401は立体的形状のデータのみを有し、撮影対象Hの衣装などの色彩的な要素は有さない。撮影対象Hの正面像(H11)407を90度回転させて側面(横)から見ると、側面像(H12)408のような形態を有する。
【0036】
図4(b)に示すように、第2の撮影装置(2)102からは、2Dカメラ105によって撮影された正面写真データ403も得られる。正面写真データ403は、被写体の顔や衣装などの表面的な色彩を有する2次元の写真画像である。
【0037】
同様に、被写体Hの背面に置かれた第1の撮影装置(1)101の3Dカメラ104からは背面立体データ(H13)402が得られ、2Dカメラ103からは背面写真データ(H2)404を得ることができる。
【0038】
【表1】

【0039】
表1は、写真の位置合わせ用パラメータの一例を示す表であり、実際には、正面のデータの他に背面のデータを保持している。図4に示す正面立体データ401と背面立体データ402とは、それぞれ、表1に示すような写真の位置合わせ用パラメータを有している。
【0040】
例えば、図4(b)に示す四角形の頂点P、P、P、Pのそれぞれの座標の位置を示すパラメータを有している。この2D画像(正面写真)データ403から上記頂点P、P、P、Pによって画定される四角形の領域の正面画像H1を抜き出し、これを図4(a)に示す正面立体データ401に、被写体H1が被写体H11に合うように位置合わせする。正面立体データ401の矩形の領域P’、P’、P’、P’によって画定される四角形の領域にそれぞれに当てはめる。同様に背面立体データ402についても、2D画像(背面写真データ)404に、被写体H2がH13に合うように位置合わせされる。これらの位置合わせデータは、データ記憶部307に保持される。
【0041】
画像補完処理部305は、複数画像合成部304で作成した正面像の3次元画像データ801(図8)と、背面像の3次元画像データ802(図8)を、左右の側面で縫い合わせて撮影対象全体の3次元画像データを作成し、縫い合わせ部分を滑らかにする補完処理を行う。
【0042】
合成後画像補正処理部306は、画像補完処理部305で作成した撮影対象全体の3次元画像データに対し、全体的な立体的形状に不整合がないか否かを確認して、不整合があれば整形する処理を行う。
【0043】
合成後画像補正処理部306が作成した3次元画像データは、画像出力部302から表示装置108に出力される。表示装置108では、360度全ての方向から立体的に見ることができる3次元画像が表示される。画像データや画像パラメータ情報、各種処理に用いるパラメータ値等はデータ記憶部307に格納されている。
【0044】
図5は、本実施の形態による立体画像処理の流れを示すフローチャート図である。まずステップ501で、第2の撮影装置(2)102で撮影した画像は、図4(a)の正面立体データ401として画像入力部301に取り込まれる。立体データが取り込まれるタイミングと同じタイミングで(図示しない同期手段により同期させて)、第2の撮影装置(2)102で撮影した画像は、図4(b)の正面写真403として画像入力部301に取り込まれる。さらに、第1の撮影装置(1)101で撮影した画像は、図4(a)の背面立体データ402として画像入力部301に取り込まれる。立体データが取り込まれるタイミングと同じタイミングで(図示しない同期手段により同期させて)、第1の撮影装置(1)101で撮影した画像は、図4(b)の背面写真404として画像入力部301に取り込まれる。
【0045】
ステップ502では、図3の各画像補正部303における各画像の補正処理が行われる。ステップ501で取得された正面立体データ401と背面立体データ402に、異常値や想定されていない値が含まれている場合には、それらの値の除去する処理を行う。データの一部が欠落している場合には、周囲のデータを元に補完処理を行う。例えば、被写体との間の距離を測定し、その平均値を採用し、この平均値から外れたデータは、背景として除去する。また、背景を除去した後の被写体のデータについて、平均値から突出したデータ(凸凹したデータ)は、ノイズとして除去する。これにより、3Dデータから背景を除去して被写体の3Dデータを抽出するとともに、抽出された被写体の3Dデータにおける細かな凹凸として検出されるノイズも除去し、ノイズが除去された被写体の3Dデータのみを残す。すなわち、3Dデータにおける閾値との比較、中央値との比較、平均値との比較、隣接する領域(周辺)との間の差分の大小比較などの標準値との比較に基づいて、ノイズと考えられる3Dデータを除去する。
【0046】
【数1】

【0047】
処理の具体的な一例について説明する。まず、式(1)に基づく閾値カットフィルタ処理を行う。この処理により、背景部分など被写体以外の対象外の部分をカットすることができる。次いで、式(2)に基づくMedianフィルタ処理を行う。対象となる被写体でも、3Dカメラによる例えば赤外線の反射に基づいて取得した距離データは、必ずしもきれいなデータではなく、部分的に中間値としての距離よりも大きく外れた値が得られることが多い。そこで、式(2)により、中間値の距離(被写体と3Dカメラとの距離Z)を大きく外れた部分は、被写体部分であっても用いないフィルタ処理を行う。式(3)に基づく信頼性フィルタ処理は任意の処理であるが、カメラ固有の信頼性に起因する無効な値を取り除く処理である。次いで、式(4)に示すように、平均値フィルタを用いて、細かな凹凸を付近の値で平均する処理を行うことで、平滑な3Dデータを得ることができる。この際、全体をスキャンして、凹凸があればその凹凸を消す処理を行う。最後に、2Dデータを3Dデータに張り付けて、例えば色付きの3Dデータとする。すなわち、前述した表1のパラメータ405を元に、図4に示すように、正面立体データ401に正面写真データ403を位置合わせして貼り付ける処理を行う。
【0048】
図8は、本実施の形態による立体画像処理に沿って形成される立体画像の遷移の様子を示す図である。図8の立体(3D)データ401・402、写真(2D)データ403・404を作成するまでの様子は、図4に示す処理と同様である。上記正面立体データ401に正面写真データ403を位置合わせして貼り付ける処理により、立体画像に色等の施された立体画像合成データ(正面)801が作成される。同じように、背面立体データ402に背面写真データ404を貼り付ける処理により、立体画像に色等の施された立体画像合成データ(背面)802が作成される。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
表2は、複数データの位置合わせパラメータ406aを正面について保持した表であり、複数データの位置あわせパラメータの画像情報を有する。実際には、表3のように正面のデータの他に背面のデータ406bを保持している。
【0052】
ステップ503では、複数画像合成部304において、複数画像の合成処理を行う。表2・表3に示すパラメータは、立体画像合成データ(正面)801、立体画像合成データ(背面)802でそれぞれ保持しており、複数画像の合成処理の際に使用する。複数画像の合成処理は、図6のフローチャート図で示す処理に沿って行われる。図6は、図5のステップ503の複数画像の合成処理の詳細な処理の流れを示す図である。
【0053】
まずステップ601では、表2、表3のパラメータ406・407の空間座標X、空間座標Y、空間座標Zを元に、立体画像合成データ(正面)801、立体画像合成データ(背面)802の位置をそれぞれ調整する。尚(X,Y)は、2次元平面内の位置座標であり、Zは、2次元平面と垂直な方向の位置(距離)である。ステップ602では、パラメータ406・407の回転角度を元に、立体画像合成データ(正面)801、立体画像合成データ(背面)802の向きを調整する。ステップ603では、立体画像合成データ(正面)801と立体画像合成データ(背面)802のデータを解析し、合成箇所を検出する。ステップ604ではステップ603で検出された合成箇所を元に、立体画像合成データ(正面)801と立体画像合成データ(背面)802との合成処理(この場合は側面を繋げることで合成する。)を行い、側面で関連付けされた立体画像合成データ803を作成する。
【0054】
ステップ503の処理後においても、合成箇所(側面等)にデータが不足している場合があるため、ステップ504では、画像補完処理部305において、この例では側面部の立体画像の補完を行う。画像の補完処理の詳細については図7のフローチャート図に示された処理に基づいて行われる。
【0055】
図7に示すように、まず、ステップ701で、立体画像合成データ(正面)801、立体画像合成データ(背面)802の合成時にデータを補完する必要がある箇所(この場合には側面部)を検出する。補完箇所が検出された場合は、ステップ702で、まず立体部分の補完処理を行う。立体部分の補完処理は、立体画像合成データ(正面)801、立体画像合成データ(背面)802(正面立体データ401と背面立体データ402)との立体形状から推測する。
【0056】
この補完処理について具体的に例示して説明する。
1)Z値がINVALIDでない点について、輪郭追跡処理を行う(例えば、http://homepage2.nifty.com/tsugu/sotuken/binedge/参照)。この処理により、輪郭の位置が複数検出される。
2)正面と背面とのそれぞれ複数検出された輪郭の位置から、正面と背面との間(前後)で距離の近い輪郭同士を関連付けする(図8の803参照)。
3)2)で関連付けした輪郭同士に含まれる全ての(X、Y)座標に対して正面と背面との対応点を算出する。
4)3)で関連付けした(X、Y)座標について、Zデータを含めて、対応する3Dデータの点を結合する。(以上ステップ702)
5)上記4)までで補完した3Dデータに貼り付ける、2Dデータ(写真部分)の補完処理を行う(ステップ703)。すなわち、ステップ702で立体部分を補完した場合において、補完箇所に貼り付ける写真データは存在しないため、ステップ703で写真部分の補完処理を行う。写真部分の補完処理は、正面写真データ403と背面写真データ404とから補完部分の色等を推測する。例えば、正面写真データ403の色と背面写真データ404の色が同じであれば、その同じ色を側面の補完部分にも適用する。前後の色が異なる場合には、前の色から後ろの色に徐々に変化するようにしても良い。
【0057】
ステップ704では、ステップ702で補完された立体部分のデータにステップ703で補完された写真部分のデータを貼り付ける処理を行い、立体画像合成データ801、立体画像合成データ802を合成することで、側面部の補完処理が終了する。
【0058】
尚、ステップ504の後、ステップ505では、合成後画像補正処理部306で立体画像合成データ803の補正処理を行う。立体画像合成データ803に異常値や想定しない値がある場合は、それらの値の除去を行う。また立体画像合成データ(正面)801と立体画像合成データ(背面)802との色調や形状の差が大きく、立体画像合成データ803において、期待していたデータと乖離した場合には、色調補正や形状補正等を行う。
【0059】
【数2】

【0060】
式(5)は、4点ベジェ曲線に沿って、輪郭部分を丸める処理を行うための式の具体例である。図9は、4点ベジェ曲線に沿って、輪郭部分を丸める処理の概要を示す図である。9つの点P11からP19までからなる正方格子において、4点を結ぶ四角形の輪郭を丸める処理について説明する。V1は結合する点(正面)、V4は結合する点(背面)のベクトルであり、V2、V3は、それぞれ正面と背面の補正ベクトルであり、Vtは出力3次元ベクトルである。式(5)に基づいて、V11、V12、V13、V14の合成ベクトル(ベクトル平均)の逆ベクトルを求めると、これが、V又はVとなる。このV又はVに基づいて、側部の輪郭を丸めることができる。
【0061】
尚、ステップ504の補完処理は、被写体の種類によって異なるようにしても良い。例えば、冷蔵庫のような直方体では、側面を平面で補完することができ、人間であれば、有る程度丸みを帯びた側面になる。第3の撮影装置によって、側面に関する処理を行っても良いし、2台のカメラのうち第2の撮影装置を、背面ではなく側面を撮影できる位置に設置して側面を測定できるようにしても良い。
【0062】
ステップ506では、以上の処理を行った点集合のデータをデータ記憶部307に出力し、記憶部307でこれらのデータ群を記憶する。
【0063】
例えば、ステップ507において、データ記憶部307から立体画像803のデータを読み込み表示装置108に出力することにより、立体画像を表示装置108に表示させることができる。
【0064】
以上の処理により生成されたデータに基づいて、立体画像合成803を360°立体視可能な最終立体画像804として、表示装置108に表示することができる。
【0065】
例えば、本実施の形態による画像処理により得られた最終立体画像データ804の背景として、例えば教会の画像を適用することにより、その教会に被写体(自分など)が立っているような演出がインタラクティブに出来るようになり、魅力的な商品(ビデオなど)を提供することができる。
【0066】
尚、上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0067】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、3次元立体画像処理装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
101 撮影装置
102 撮影装置
103 2D(Web)カメラ
104 3Dカメラ
105 2D(Web)カメラ
106 3Dカメラ
107 画像処理装置
108 表示装置
201 三脚
301 画像入力部
302 画像出力部
303 各画像補正部
304 複数画像合成部
305 画像補完処理部
306 合成後画像補正処理部
307 データ記憶部
308 CPU
401 正面立体データ
402 背面立体データ
403 正面写真
404 背面写真
405 写真の位置合わせ用パラメータ
406 複数データの位置合わせパラメータ
501 撮影装置での撮影処理
502 各画像の合成処理
503 複数画像の合成処理
504 画像の補完処理
505 合成後画像の補正処理
506 結果データの保存処理
507 結果データの表示処理
601 各画像の位置を調整処理
602 各画像の向きを調整処理
603 各画像の合成箇所を検出する処理
604 各画像を合成する処理
701 合成画像の補完箇所の検出処理
702 立体部分の補完処理
703 写真部分の補完処理
704 補完部分の合成処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置において、同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元データとを画像入力部からの入力とし、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理部を有することを特徴とする立体画像処理装置。
【請求項2】
第1の位置に設けられた第1の撮影装置と前記第1の位置とは異なる第2の位置に設けられた第2の撮影装置の少なくとも2以上の撮影装置により同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元データとを画像入力部からの入力とし、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理部を有することを特徴とする立体画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、
入力された前記第1及び第2の3次元データの前記撮影装置と前記被写体との間の距離に関するエラーデータを、距離に関する標準値と比較することにより除去する各画像補正部を有することを特徴とする請求項2に記載の立体画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、
前記各画像補正部により補正された前記第1及び第2の3次元データと、前記第1及び第2の2次元データとを、写真位置合わせ用の2次元パラメータを一致させるように2次元平面上で合成することで第1及び第2の立体画像合成データを作成することを特徴とする請求項3に記載の立体画像処理装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、
前記第1及び第2の3次元データのそれぞれの空間座標X、空間座標Y、空間座標Zを元に、第1及び第2の立体画像合成データの位置をそれぞれ調整し、前記第1及び第2の3次元データのそれぞれの回転角度を元に、第1及び第2の立体画像合成データの向きを調整し、位置と向きとを調整した前記第1及び第2の3次元データの合成箇所を検出し、検出された合成箇所で前記第1及び第2の3次元データを合成する処理を行うことで、前記合成箇所で関連付けされた立体画像合成データを作成することを特徴とする請求項4に記載の立体画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、
前記第1及び第2の3次元データの合成処理において、前記合成箇所を、前記第1及び第2の3次元データにおける距離が近い位置の輪郭同士を関連付けし、関連付けした輪郭同士に含まれる前記空間座標(X,Y)に対して、前記第1及び第2の3次元データにおける対応点を算出し、前記空間座標Zを用いて前記第1及び第2の3次元データを結合することを特徴とする請求項5に記載の立体画像処理装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、
前記第1及び第2の3次元データを合成する際に、立体的な補完が必要な箇所を検出し、前記第1の3次元データと第2の3次元データとの立体形状から検出された前記立体的な補完が必要な箇所の3次元形状を推測して補完部分とする立体画像の補完処理を行う立体画像補完処理部を有することを特徴とする請求項6に記載の立体画像処理装置。
【請求項8】
前記立体画像補完処理部は、
さらに、補完された前記前記第1及び第2の3次元データに対して、前記補完が必要な箇所における前記第1及び第2の2次元データを補完して、前記補完部分に貼り付ける処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の立体画像処理装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、
前記画像補完処理部により補完された前記立体画像合成データのうち、補完処理を行った部分について、輪郭部分を丸める処理を行う合成後画像補正処理部を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の立体画像処理装置。
【請求項10】
第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置において、同じタイミングで取得した、被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データと被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元データとを画像入力部からの入力とし、入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理部を有する立体画像処理装置と、
前記第1及び第2の撮影装置と、を有し、
前記第1及び第2の撮影装置は、それぞれ、2Dデータと3Dデータとを取得する2Dカメラと3Dカメラとを有することを特徴とする立体画像処理システム。
【請求項11】
前記第1又は第2の3次元データと前記第1又は第2の2次元データとのそれぞれを同じタイミングで取得する同期手段が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の立体画像処理システム。
【請求項12】
第1の位置と前記第1の位置とは異なる第2の位置において、同じタイミングで被写体との間の距離データを含む第1及び第2の3次元データを取得するとともに、被写体との間の距離データを含まない第1及び第2の2次元データと取得するステップと、
入力された前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データとを合成して立体画像データを生成する画像処理ステップとを有することを特徴とする立体画像処理方法。
【請求項13】
入力された前記第1及び第2の3次元データの取得位置と前記被写体の位置との間の距離に関するエラーデータを、標準値と比較することにより除去する各画像補正ステップの後に、前記第1及び第2の3次元データと前記第1及び第2の2次元データを合成することを特徴とする請求項12に記載の立体画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−156961(P2012−156961A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16760(P2011−16760)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】