説明

立体画像表示装置

【課題】専用のメガネを用いること無く、左右同時視が可能で画面解像度の低下とクロストークが低減された立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】立体画像表示装置1は、バックライト2と、複数の水平ライン23からなる第一画像形成領域21および第二画像形成領域22を有する液晶ディスプレイ5との間に集光レンズであるフレネルレンズ3と第一偏光領域31および第二偏光領域32を有する光学手段の位相差板4とを有する。フレーム画像は、第一画像形成領域21に右目用画像を、第二画像形成領域22に左目用画像を表示し、フレーム切り替え毎に画像形成領域を交互に入れ替えるかまたは上書きされる。バックライト2は、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22での右目用画像または左目用画像の表示に合わせ、中央を境にした左右から互いに偏光方向の異なる直線偏光または円偏光を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示パネルを使用した薄型テレビの開発が盛んに行われ、例えば、液晶パネルを使用した液晶テレビの開発が行われている。そして、薄型テレビを高機能化する一つの取り組みとして、立体画像を表示する立体画像表示装置の開発が進められている。
【0003】
液晶パネルからなる液晶ディスプレイを用い、立体画像表示装置を構成する技術については、多数の方式が提案されている。それらは、特許文献1に開示されるような、立体映像を観察する際に観察者が専用のメガネを必要とする方式と、特許文献2に開示されるような、メガネを必要としない方式に分類することができる。
【0004】
専用のメガネを使用する立体画像の表示方式としては、シャッターメガネ方式が知られている。この方式は、解像度の低下が無く、画像表示装置における表示の視野角も広くなるという利点を有する。しかしながら、この方式は、専用のメガネを使用する煩雑さに加え、表示画像がちらつくフリッカーの発生、表示画面における輝度の低下、および左右の眼に映る画像の時間差により観察者は自然な画像を得られないという問題点などを有している。
【0005】
また、特許文献1には、新規な光学手段として、入射した光の偏光軸を互いに直交させるよう二つの異なる偏光領域を有する位相差板を用いる立体画像表示装置が開示されている。この立体画像表示装置は、右目用の画像と左目用の画像をそれぞれ異なる領域に表示させる液晶ディスプレイと、その左右画像表示領域に対応するよう配置された上記の位相差板とを備え、観察者に視差画像を投影させて立体画像が得られるように構成されている。
【0006】
この特許文献1に記載の立体画像表示装置においては、表示画面の右目用映像信号に従う表示の位置と左目用映像信号に従う表示の位置が常に固定されている。したがって、左右映像とも垂直解像度が半減してしまうという課題を有している。また、立体表示装置の鉛直方向に対し、ある視野角の位置から観察すると、液晶ディスプレイ上の右目用画像の一部が左目用の1/2波長板を通過して観察者の左目に届いてしまう。すなわち、観察する位置によりクロストークを生じるという新たな課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−284873号公報
【特許文献2】特開平10−63199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年盛んに開発が進められているのが、立体映像を観察する際に観察者が専用のメガネを必要としない方式である。
専用のメガネを必要としない方式としては、例えば、パララックスバリア方式、レンチキュラレンズ方式、スイッチバックライト式などが知られている。しかし、パララックスバリア方式やレンチキュラレンズ方式においては、水平解像度が低下するなど、画像表示の解像度が低下してしまうという問題点を有する。スイッチバックライト式においては、画像のちらつきであるフリッカーが発生するという不具合を有している。
【0009】
また、別の構成の光学手段を利用し、立体画像を得る立体画像表示装置が提案されている。例えば、特許文献2には、光学手段である偏光フィルタやフレネルレンズを用い、専用のメガネを必要としない立体画像表示装置が開示されている。
【0010】
この特許文献2に記載の立体画像表示装置においては、液晶ディスプレイを挟んで観察者の反対側に配置された光源の前面左右に、偏光方向が直交する右目用偏光フィルタ部と左目用偏光フィルタ部とが配置される。各フィルタ部を通過した互いに直交する偏光光はフレネルレンズにより略平行光とされ、背面側から液晶ディスプレイに向けて照射される。液晶ディスプレイでは、両面に偏光フィルタが配設されている。偏光フィルタのそれぞれにおいては、液晶ディスプレイの1水平ラインに対応するよう、水平ライン毎に、互いに直交する直線偏光フィルタライン部が交互に配置されている。このとき、光源側と観察者側の対向する直線偏光フィルタライン部についても互いに直交する偏光方向となるようにされている。そして、液晶ディスプレイの液晶パネルにおいて、2枚の偏光フィルタの透光ラインに合わせて1水平ライン毎に右眼用と左眼用の映像情報を交互に表示するよう構成する。
【0011】
すなわち、特許文献2に記載の立体画像表示装置は、表示画面の全水平ラインを奇数ラインと偶数ラインに分割し、それぞれのラインに左目用および右目用画像を表示してこれらをその新規な光学手段で観察者の左右の目に振り分けて立体画像を表示するものである。
【0012】
この装置によれば、観察者は専用のメガネ無しで立体画像を観察することができる。そして、観察者の見る位置が多少左右にずれても立体画像が損なわれることは無い。さらに、パララックスバリア方式やレンチキュラレンズ方式において課題とされた水平解像度が半減してしまう現象は回避することができる。
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載の偏光フィルタ等を用いた立体画像表示装置においては、表示画面の右目用映像信号に従う表示の位置と左目用映像信号に従う表示の位置が常に固定されている。したがって、左右映像とも垂直解像度が半減してしまうという課題を有している。
【0014】
したがって、専用のメガネを必要としない方式において、画面での高い輝度を維持しながらフリッカーやクロストークを低減し、さらに解像度の低下を防止するためには、従来の立体画像表示装置では不充分であり、新たな立体画像表示装置が求められている。
【0015】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、専用のメガネを不要とし、フリッカーとクロストークが低減され、画面の解像度を低下させること無く左右画像の同時視ができる、高輝度の立体画像表示装置を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の態様は、画素を水平方向に配列してなる水平ラインを垂直方向に複数並べて構成された液晶パネルおよびその液晶パネルを挟持する一対の偏光板を有する液晶ディスプレイと、
偏光を放射する複数の偏光光源を、左右に隣接する偏光光源の間で放射光の偏光方向が互いに異なるよう、水平方向に配列してなる偏光光源の列を備えたバックライトとを有し、
液晶ディスプレイとバックライトとの間に集光レンズと光学手段とをこの順で配置し、
観察者に立体画像を提供する立体画像表示装置であって、
バックライトは、偏光光源の列を垂直方向に複数列配置するとともに、垂直方向に隣接する偏光光源の列の間では、垂直方向に隣接する偏光光源間で放射光の偏光方向が互いに異なるように構成されており、
集光レンズは、バックライトからの光を観察者に向けて集光する光にするよう構成されたものであり、
液晶ディスプレイは、液晶パネルの連設された複数の水平ラインからなる第一画像形成領域と第二画像形成領域とを交互に配置して有し、第一画像形成領域は右目用画像および左目用画像のいずれか一方の画像を、第二画像形成領域は他方の画像をそれぞれ同時に表示するよう構成され、
第一画像形成領域と第二画像形成領域は、
(1)フレーム切り替え毎に右目用画像と左目用画像の入れ替えを行うか、
または、
(2)(1)以外の場合であって、フレームの切り替え時に右目用画像と左目用画像の入れ替えおよび直前のフレームで表示された画像の上書きのいずれか一方を行うよう構成されており、
光学手段は、第一画像形成領域と第二画像形成領域とに対応する位置と大きさで、第一偏光領域と第二偏光領域とが配置され、第一偏光領域と第二偏光領域とは、いずれか一方が1/2波長板を形成するか、両方が遅相軸が互い45度異なる1/2波長板を形成するか、または両方が遅相軸が互い90度異なる1/4波長板を形成するによう構成されたものであることを特徴とする立体画像表示装置に関する。
【0018】
本発明の態様において、バックライトは、偏光光源の列毎に点灯制御されるよう構成されたものであることが好ましい。
【0019】
本発明の態様において、バックライトは、偏光光源毎に点灯制御されるよう構成されたものであることが好ましい。
【0020】
本発明の態様において、バックライトの偏光光源の列は、4つ以上の偏光光源からなることが好ましい。
【0021】
本発明の態様において、バックライトは、偏光光源の列を、上下方向に4列以上配置して構成されたものであることが好ましい。
【0022】
本発明の態様において、バックライトは、右目用画像と左目用画像を入れ替えるタイミングに合わせて、全体の点灯状態が制御されるよう構成されたものであることが好ましい。
【0023】
本発明の態様において、バックライトの偏光光源は、LEDと偏光板とを用いて構成されたものであることが好ましい。
【0024】
本発明の態様において、光学手段の第一偏光領域と第二偏光領域との境界の少なくとも一部には、遮光部が設けられていることが好ましい。
【0025】
本発明の態様において、第一画像形成領域と第二画像形成領域とはそれぞれ、液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた2本から60本の水平ラインからなる画像形成領域であることが好ましい。
【0026】
本発明の態様において、第一画像形成領域と第二画像形成領域とはそれぞれ、液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた3本から30本の水平ラインからなる画像形成領域であることが好ましい。
【0027】
本発明の態様において、第一画像形成領域と第二画像形成領域とはそれぞれ、液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた5本から15本の水平ラインからなる画像形成領域であることが好ましい。
【0028】
本発明の態様において、液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、120Hz以上の周期で行われることが好ましい。
【0029】
本発明の態様において、液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、240Hz以上の周期で行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、専用のメガネを用いること無く、フリッカーとクロストークが低減され、画面の解像度を低下させること無く左右画像の同時視ができる広視野角の立体画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の立体画像表示装置の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の立体画像表示装置の光学系を模式的に説明する平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の立体画像表示装置のバックライトの有する偏光板の偏光特性を説明する平面図である。
【図4】本実施の形態の立体画像表示装置を構成する液晶パネルの模式的な平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の立体画像表示装置の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態の立体画像表示装置の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態の立体画像表示装置の光学系を模式的に説明する平面図である。
【図8】液晶素子を有するバックライトの構成を模式的に説明する分解斜視図である。
【図9】(a)は、バックライトから放射される光の偏光特性の一例を模式的に示す図であり、(b)は、バックライトから放射される光の偏光特性の別の例を模式的に示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態の立体画像表示装置の有するバックライトを模式的に説明する平面図である。
【図11】本発明の第4実施形態の立体画像表示装置の光学系を模式的に説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<実施の形態1>
本発明の第1実施形態の立体画像表示装置1は、立体画像の観察に好適な視点(観察位置)が1つ形成されるよう構成されている。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態の立体画像表示装置1の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態の立体画像表示装置1の光学系を模式的に説明する平面図である。
【0034】
図1および図2に示すように、立体画像表示装置1は、バックライト2と、集光レンズであるフレネルレンズ3と、光学手段である位相差板4と、液晶ディスプレイ5とをこの順で備える。そして、バックライト2と液晶ディスプレイ5の駆動をそれぞれ制御する制御装置12を備える。これらは図示されない筐体に収容される。そして、図1および図2に示すように、立体画像を観察する観察者50は液晶ディスプレイ5の前面側から画面上の立体画像を観察する。
以下、立体画像表示装置1の主要な構成について説明する。
【0035】
バックライト2は、観察者50から見て立体画像表示装置1の最も奥側に配置される。
本発明の第1実施形態の立体画像表示装置1において、バックライト2は、それぞれ水平方向に伸びる、上下2つの光源の列(第1列と第2列)から構成されている。上下二つの光源の列は、それぞれ、偏光光源2つずつ(偏光光源13aと偏光光源13b、および偏光光源14aと偏光光源14b)から構成されている。
【0036】
すなわち、バックライト2を構成する上下二列の光源の列のうち、上側の第1列では、中央を境にして、2つの偏光光源13a、13bが左右に配置されている。第1列の下側にある第2列では、中央を境にして、2つの偏光光源14a、14bが左右に配置されている。
4つの偏光光源13a、13b、14a、14bは、制御装置12により、それぞれ独立に、点灯状態の制御が可能となるようにされており、上下二つの光源の列ごとに点灯状態の制御を行うことができる。
【0037】
偏光光源13a、13bは、ぞれぞれ、図2に示すように、白色の無偏光を放射する光源15a、15bの前面に偏光板17a、17bを配置して構成される。図2に示されない偏光光源14a、14bについても、同様に、それぞれ、白色の無偏光を放射する光源の前面に偏光板を配置して構成される。偏光板は、透過軸およびその透過軸に直交する吸収軸を有する。例えば、バックライト2の光源15aや光源15bから出射した無偏光が偏光板に入射すると、その無偏光のうち透過軸方向と平行な偏光軸の光を透過し、吸収軸方向と平行な偏光軸の光を遮断する。ここで、偏光軸の方向とは、光における電界の振動方向のことである。
【0038】
偏光光源13a、13b、14a、14bは、例えば、白色の無偏光を放射する点光源を用いて構成することができる。具体的には、偏光光源13a、13b、14a、14bを、LEDなどを用いて構成することができる。
【0039】
図3は、バックライト2の有する偏光板17a、17b、18a、18bの偏光特性を説明する平面図である。図3の中で、各偏光板17a、17b、18a、18b上の矢印は、偏光板17a、17b、18a、18bそれぞれの透過軸を表している。
【0040】
光源の第1列を構成し、中央を境にして左右に配置される偏光光源14aと偏光光源14bとにおいて、偏光板17aと偏光板17bとは、互いに偏光方向が直交する。例えば、図1および図2に示すように、水平な地面に立つ観察者50と向き合うように立体画像表示装置1の画面を設置することができる。その場合、図3に示すように、偏光板17aにおいて、透過軸は水平方向と垂直な方向に設定され、偏光板17bにおいて、透過軸は水平方向に設定される。また、光源の第1列と第2列との関係については、2つの列の間で上下に隣接する偏光光源の偏光板は、互いに偏光方向が直交するように設定される。したがって、図3に示すように、偏光光源14aの有する偏光板18aの透過軸は水平方向に設定され、偏光光源14bの有する偏光板18bの透過軸は、水平方向と垂直な方向となるよう設定される。
【0041】
その結果、光源の第1列を点灯させた場合と、第2列を点灯させた場合とを比較すると、中央を境にして左右の光源から出射される光の偏光特性は異なることになる。すなわち、光源の第1列では、中央を境異にして左側からは水平方向と垂直な方向の直線偏光が出射され、右側からは水平方向と平行な方向の直線偏光が出射される。一方、光源の第2列では、中央を境異にして左側からは水平方向と平行な方向の直線偏光が出射され、右側からは水平方向と垂直な方向の直線偏光が出射される。光源の第1列と第2列とでは、中央を境にして出射される偏光の特性の関係が左右で逆の関係となる。
【0042】
その結果、4つの偏光光源13a、13b、14a、14bから射出される直線偏光の偏光方向は、図1において矢印で示される偏光特性を有するようになる。すなわち、図1に示すように、偏光光源13aと偏光光源13bとからは、互いに偏光方向が直交する直線偏光が液晶ディスプレイ側に向かって射出される。偏光光源14aと偏光光源14bとからも、互いに偏光方向が直交する直線偏光が液晶ディスプレイ側に向かって射出される。そして、偏光光源13aと偏光光源14aとから射出される直線偏光は互いに偏光方向が直交する。偏光光源13bと偏光光源14bとの間でも同様である。
【0043】
尚、立体画像表示装置1において、適当な面積を備えた面光源などを用い、上述した光源の第1列を構成する2つの偏光光源を、1つの白色の無偏光光源から構成することも可能である。すなわち、1つの光源の前面に、中央付近を境にして2枚の偏光板を配置することにより光源の第1列を構成することも可能である。この時、光源の第1列において、隣接する2枚の偏光板の偏光方向は、互いに直交するように設定される。
【0044】
同様に光源の第2列を構成する2つの偏光光源を、1つの白色の無偏光光源と2枚の偏光板とから構成することも可能である。
但し、1つの無偏光白色光源と4枚の偏光板とを用い、4つの偏光光源を構成することは好ましくない。後述するように、少なくとも光源の列ごとにそれぞれ、点灯状態を制御可能とすることが必要となるからである。
【0045】
次に、バックライト2と位相差板4との間には、液晶ディスプレイ5と所定の距離を置くようにして、集光レンズであるシート状のフレネルレンズ3が配置されている。フレネルレンズ3は、一側面に同心上の凹凸するレンズ面を有する。そして、背面側の中心の焦点から入射した光を、液晶ディスプレイ5の置かれた前面側に射出するとともに観察者の目に向けて光を集光させることができる。
【0046】
図1に示すように、フレネルレンズ3の前面側には、後述する光学手段である位相差板4と、液晶ディスプレイ5とが順に配置される。
液晶ディスプレイ5は、一対の偏光板7および偏光板8によって挟持された液晶パネル6により構成される。
【0047】
偏光板7は、液晶ディスプレイ5において、液晶パネル6のバックライト2側に配設される。偏光板7は、上述の偏光板17a、17b、18a、18bと同様、透過軸およびその透過軸に直交する吸収軸を有する。したがって、バックライト2から出射し、位相差板4を通過して、直線偏光が入射すると、透過軸方向と平行な偏光軸の直線偏光を透過し、吸収軸方向と平行な偏光軸の直線偏光を遮断する。偏光板7における透過軸の方向は、図1に矢印で示すように、観察者50が立体画像表示装置1を見たときの水平方向と垂直な方向である。
【0048】
液晶パネル6は、ガラス基板等の基板により液晶を挟持して構成されたものである。液晶を挟持する側の基板の表面には、画素形成のために所望のパターニングがなされた電極が設けられている。電極はITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)等の透明導電性の材料からなる。そして、液晶パネル6としては、例えば、TN(Twisted Nematic)モードやIPS(In−Plane−Switching)モード、あるいはVA(Vertical Alignment)モードのカラー液晶パネルの使用が可能である。これらはいずれも電圧の印加により液晶の配向変化が引き起こされる。そして、液晶パネル6の両面に配設された偏光板7、8の作用と組み合わされて、透過する光量などの調節を可能としている。
そして、液晶パネル6は、立体画像表示装置1において画像形成を担う構成部材であり、一つの画面上で右目用画像と左目用画像とを同時に表示するものである。
【0049】
図4は、本実施の形態の立体画像表示装置1を構成する液晶パネル6の模式的な平面図である。
液晶パネル6は、図4に示すように、画素(図示されない)を水平方向に配列してなる水平ライン23を垂直方向に複数並べて構成される。以下、その構成や画像表示機能について説明する。
【0050】
図1に示すように、液晶パネル6の画像表示部分においては、水平方向に区切られた第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが設けられている。これら第一画像形成領域21および第二画像形成領域22は、図1に示すように、互いに、実質的に同一の面積を有する領域である。液晶パネル6の画像表示部分において、複数の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22は、垂直方向に互い違いに配置されている。
【0051】
そして、図4に示すように、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22は、垂直方向に連続して並べられた複数の水平ライン23からそれぞれ構成されている。なお、図4において示される液晶パネル6では、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22はそれぞれ、連続して並べられた3本の水平ライン23から構成されている。
【0052】
その結果、液晶パネル6の最上部にある1本目の水平ラインから3本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、4本目の水平ラインから6本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成し、さらに、7本目の水平ラインから9本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、10本目の水平ラインから12本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成する。すなわち、3本ずつの水平ライン23を順次束ねて、液晶パネル6では、互い違いに複数の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22が形成されている。
【0053】
このとき、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成する水平ライン23の本数は3本に限られるわけではなく、複数本から構成することが可能である。例えば、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成する水平ライン23の本数を10本とすることなどが可能である。
【0054】
その場合、液晶パネル6の最上部にある1本目の水平ラインから10本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、11本目の水平ラインから20本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成し、さらに、21本目の水平ラインから30本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、31本目の水平ラインから40本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成する。すなわち、10本ずつの水平ライン23を順次束ねて、液晶パネル6では、互い違いに複数の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22が形成されていることになる。
【0055】
そして、後述するように、クロストークを低減して液晶ディスプレイ5の視野角を広げる観点から、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成する水平ライン23の本数は選択される。
【0056】
立体画像表示装置1の液晶ディスプレイ5の液晶パネル6では、表示される一つのフレーム画像の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とにそれぞれ右目用画像と左目用画像とを表示させる。そして、次の(1)または(2)に示す方法に従い、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22との間で右目用画像と左目用画像の入れ替えを行う。
(1)フレーム切り替え毎に右目用画像と左目用画像の入れ替えを行う。
(2)(1)以外の場合であって、フレームの切り替え時に右目用画像と左目用画像の入れ替えおよび直前のフレームで表示された画像の上書きのいずれか一方を行う(尚、入れ替えを行わずにそれぞれが右目用画像と左目用画像を維持し続ける場合は含まない。)。
【0057】
尚、図1には示されないが、液晶パネル6の周縁には外枠が配されており、液晶パネル6における第一画像形成領域21および第二画像形成領域22は、この外枠に支持される。
【0058】
偏光板8は、液晶ディスプレイ5における観察者側に配置される。この偏光板8には、上述の場合の第一画像形成領域21を透過した画像光、および、第二画像形成領域22を透過した画像光が入射する。そして、これら画像光のうち、偏光軸が透過軸と平行な光を透過し、偏光軸が吸収軸と平行(透過軸に垂直)な光を遮断する。ここで、偏光板8における透過軸の方向は、図1に矢印で示すように、観察者が立体画像表示装置1を見たときの水平方向と平行な方向とすることができる。
【0059】
光学手段である位相差板4は、図1に示すように、フレネルレンズ3と液晶ディスプレイ5との間に配置される。位相差板4は、第一偏光領域31および第二偏光領域32を有する。位相差板4における第一偏光領域31および第二偏光領域32の位置および大きさは、図1に示すように、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応している。
【0060】
そして、上述のように、図4に示す本実施の形態の立体画像表示装置1を構成する液晶パネル6においては、液晶パネル6の画像表示にかかる全水平ラインのうち、上から垂直方向に順次3本ずつの水平ライン23が束ねられて便宜上一つの組を構成している。そして、その束ねられた水平ラインの組のそれぞれに対応するよう、同一面積の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが設けられている。よって、この位相差板4における第一偏光領域31および第二偏光領域32の位置および大きさは、図1に示すように、液晶パネル6の束ねられた3本の水平ラインの組である第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応している。
【0061】
したがって、立体画像表示装置1の使用状態において、ある一つのフレーム画像表示時では、位相板4の第一偏光領域31を透過した光が、偏光板7を通過して、液晶パネル6の第一画像形成領域21に入射する。位相差板4の第二偏光領域32を透過した光が、偏光板7を通過して、第二画像形成領域22に入射する。
【0062】
位相差板4の構成については、第一の偏光領域31を、実質的に位相差の無いガラスや樹脂等の部材として構成し、第二の偏光領域32を、入射する直線偏光の偏光方向と対応させて光学軸が水平方向から右上45度方向である1/2波長板として構成することが可能である。また、位相差板4は、第一の偏光領域31を、入射する直線偏光の偏光方向と対応させ、遅相軸が水平方向と水平または垂直である1/2波長板として構成し、併せて、第二の偏光領域32を、光学軸が水平方向から右上45度方向である1/2波長板をとして構成することが可能である。
【0063】
位相差板4の構造を上述のようにすることで、直線偏光である入射光に対し、位相差板4からの出射光は、透過する位相差板の領域に従い、光軸が回転されないままの直線偏光となるか、または光軸の90度回転された直線偏光となる。すなわち、位相差板4に入射し、位相差板4の第一偏光領域31から出射する光は光軸が回転されないままの直線偏光となる。一方、第二偏光領域32を出射する光は光軸が90度回転された直線偏光となる。
【0064】
尚、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、液晶パネル6の画像表示にかかる全水平ラインの各一本それぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けることも可能である。その場合、位相差板4においても、液晶パネル6の各水平ライン23に対応する第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応して、第一偏光領域31および第二偏光領域32が形成される。
【0065】
そして、表示される一つのフレーム画像の水平奇数ラインに対応する第一画像形成領域21と、水平偶数ラインに対応する第二画像形成領域22とにそれぞれ、例えば、右目用画像と左目用画像とを表示させ、フレーム切り替え毎に、その右目用画像と左目用画像の表示された水平ラインを交互に入れ替え、右目用画像と左目用画像がそれぞれインターレースしたフレーム画像を表示するよう構成することができる。
【0066】
しかしながら、その場合、クロストークの問題が顕著となる。
すなわち、立体画像表示装置1の画面を構成する液晶ディスプレイ5の中央鉛直方向からある視野角をもって、観察者50が立体画像表示装置1上の立体画像を観察する場合がある。本来、ある一つのフレーム画像表示時では、位相差板4の第一偏光領域31を透過した光は、液晶パネル6の第一画像形成領域21にのみ入射することが必要である。一方、第二偏光領域32を透過した光は、第二画像形成領域22にのみが入射することが必要である。それに対し、視野角を大きくとった場合、位相差板4の第一偏光領域31を透過した光が液晶パネル6の第二画像形成領域22に入射し、一方、第二偏光領域32を透過した光が、第一画像形成領域21に入射してしまうことがある。
【0067】
こうしたタイプのクロストークは、位相差板4において位相差特性の異なる第一偏光領域31と第二偏光領域32とが互いに隣接するように設けられていることに起因する。
すなわち、クロストークは立体画像表示装置1の画面の上下方向である視野角以上でもって、観察者50がその画面上の画像を観察する場合に起こりやすい。
【0068】
このタイプのクロストークは、位相差板4の互いに隣接する第一偏光領域31と第二偏光領域32との境界領域で起こる。したがって、これを低減するためには、位相差板4において第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域を減らすことが有効である。
【0069】
例えば、液晶パネル6がフルHD(Full High Definition)仕様に対応し、その水平ラインは1080本であるとする。その場合、上記したように全水平ラインのそれぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けるとすると、それらは互い違いに540個ずつ設けられることになる。その結果、位相差板4では、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応するように540個ずつの第一偏光領域31および第二偏光領域32を有することになる。そして、第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域は1079カ所形成されることになる。
【0070】
そして、観察者50がある視野角をもって立体画像表示装置1の画面を観察する場合、この境界領域のそれぞれでクロストークが発生する。そのクロストークの強度は上記したように全水平ラインのそれぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けた場合に最も高いものとなる。
【0071】
それに対し、図1および図2に例示するように、本実施の形態の液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが、複数本の水平ライン23から構成される場合を考察する。その場合、位相差板4では、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応して、第一偏光領域31および第二偏光領域32が形成される。その結果、第一偏光領域31および第二偏光領域32の面積は、束ねて組にする水平ライン23の本数に従い大きくなる。そうして、位相差板4において、第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域を少なくすることができる。
【0072】
すなわち、クロストークを発生させる、第一偏光領域31と第二偏光領域32との境界領域が少なくなることから、クロストークの発生は立体画像表示装置1全体としては少なくなる。よって、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22を形成するために束ねて組にする水平ライン23の本数の増加に従い、クロストークは抑えられる。そして、観察者50はクロストークを感じにくくなる。
【0073】
したがって、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、クロストークが低減され、観察可能な視野角が拡大して視野角特性が向上する。
以上から、クロストークを低減するという観点からは、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22を形成するために、束ねて組にする水平ライン23の本数は、より多いほうが好ましい。
【0074】
また、クロストークの低減には、位相差板4の液晶ディスプレイ5に対向する面における第一偏光領域31と第二偏光領域32との境界領域に、遮光部(図示されない)を設けることも有効である。この遮光部は帯状の形状を有し、第一偏光領域31と第二偏光領域32との境界領域に配設されることが好ましい。
【0075】
こうした遮光部(図示されない)を設けることにより、位相差板4の第一偏光領域31を出射して、液晶パネルの第一画像形成領域21に入射すべき光のうち、その境界を超えて隣接する第二画像形成領域22に入射する光を吸収して遮ることが可能となる。位相差板4に遮光部を設けることにより、立体画像表示装置1で発生するクロストークを生じにくくさせることが可能となる。
【0076】
位相差板4における遮光部(図示されない)は、例えば、バインダー樹脂にフィラー成分を分散させたものなどで形成することが好ましい。フィラー成分は、金属粒子およびその酸化物、または顔料、染料を用いる。フィラー成分の色調は、画像光に対して黒色であることが好ましい。上記顔料および染料を分散あるいは溶解させるバインダー樹脂は、公知の樹脂、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ノボラック樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ニトロセルロース、または、これらの組み合わせ等を用いることができる。
【0077】
ただし、遮光部は、位相差板4と液晶ディスプレイ5とを透過して観察者50の目に届く画像光の一部を遮光する。クロストークの低減には有効であるが、立体画像表示装置1の画像表示における画面輝度は低下する。例えば、上記したように、全水平ラインのそれぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けた場合、その境界領域ごとに形成が必要とされる帯状の遮光部の数は最大となる。その結果、遮光部の形成による輝度の低下は大きなものとなる。
【0078】
遮光部の形成は有効なものの、その形成数を少なくするよう、位相差板4を構成することが好ましい。
したがって、遮光部の形成数を低減するという観点からも、第一画像形成領域21および第二画像形成領域22を形成するよう、束ねて組にする水平ライン23の本数は、多いほうが好ましいことになる。
【0079】
しかしながら、その一つの組にされる水平ライン23の本数を無制限に増大させることにも問題がある。すなわち、観察者にとって、自然な画像が得られないという問題を引き起こす可能性がある。
【0080】
以上から、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、クロストークの低減と画面輝度の低下抑制の観点と、観察者50に自然な立体画像を提供するという観点から、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成するために束ねて一つの組にされる水平ライン23の本数を選択することが好ましい。そして、それに対応する位置と大きさで、位相差板4の第一偏光領域31および第二偏光領域32を形成することが好ましい。
【0081】
そして、鋭意検討の結果から、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とはそれぞれ、液晶パネル6の垂直方向に連続して並べられた2本から60本の水平ライン23からなる画像形成領域であることが好ましいことがわかった。
【0082】
さらに、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とはそれぞれ、液晶パネル6の垂直方向に連続して並べられた3本から30本の水平ライン23からなる画像形成領域であることがより好ましく、5本から15本の水平ライン23からなる画像形成領域であることが最も好ましいことがわかった。そして、それに対応する位置と大きさで位相差板4の第一偏光領域31および第二偏光領域32を形成することが当然に好ましい。
【0083】
以上、本実施の形態の立体画像表示装置1の主な構成について説明したが、次に図1および図2を用いて、本実施の形態の立体画像表示装置1によって立体画像を形成する方法および観察者がその立体画像を観察する方法について説明する。
【0084】
観察者50が、立体画像表示装置1により立体画像を観察する場合、制御装置12に制御され、ある一つのフレーム画像が表示される。その時、液晶ディスプレイ5には、右目用画像および左目用画像が同時に形成される。すなわち、液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22には、偏光板7、8および液晶パネル5の作用によって、例えば、右目用画像および左目用画像がそれぞれ形成される。
【0085】
液晶ディスプレイ5での右目用画像および左目用画像の形成に対応し、制御装置12に制御され、バックライト2からは、光源の第1列を構成する2つの偏光光源13a、13bから直線偏光が射出される。偏光光源13a、13bから射出される直線偏光の偏光方向は、中央を境にして、図1において矢印で示される偏光特性を有する。すなわち、図1に示すように、左右に並べられた偏光光源13aと偏光光源13bとからは、互いに偏光方向が直交する直線偏光が、フレネルレンズ3や位相差板4に向かって射出される。
【0086】
そして、図2に示すように、バックライト2の偏光光源13aから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者50の右目41aの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4と液晶ディスプレイ5を通過した場合、所定の観察位置に位置する観察者の右目41aに入射する。一方、偏光光源13bから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者の左目41bの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4と液晶ディスプレイ5を通過した場合、所定の観察位置に位置する観察者の左目41bに入射する。
【0087】
このとき、上述のように、位相差板4に入射し、位相差板4の第一偏光領域31から出射する光は光軸が回転されないままの直線偏光となり、第二偏光領域32から出射する光は光軸の90度回転された直線偏光となる。
【0088】
したがって、偏光光源13aから射出した水平方向と垂直な偏光方向の直線偏光は、フレネルレンズ3と位相差板4を通過し、液晶ディスプレイ5を照射する。液晶ディスプレイ5の偏光板7の透過軸は、水平方向と垂直な方向に設定されている。したがって、位相差板4を出射した光のうち、第一偏光領域31から出射した光は、偏光板7を通過することができ、液晶パネル6の第一画像形成領域21に入射する。一方、位相差板4の第二偏光領域32を出射した光は、水平方向と平行な方向に偏光方向を有する直線偏光となっており、偏光板7によって遮断され、液晶パネル6に到達することはできない。
【0089】
液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21では、上述のように、右目用画像が形成され、第二画像形成領域22では、左目用画像が形成されている。したがって、位相差板4の第一偏光領域31を出射した光は、液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21に入射し、そこから透過する光は右目用画像の画像光(以下、「右目用画像光」と略称する)となって、観察者の右目41aに到達する。このとき、偏光光源13aから出射し、位相差板4の第二偏光領域32を通過した光は、上述したように、観察者50の右目41aに到達することは無い。
【0090】
また、偏光光源13bから射出した水平方向と平行な偏光方向の直線偏光は、フレネルレンズ3と位相差板4を通過し、液晶ディスプレイ5を照射する。このとき、偏光板7の透過軸は、水平方向と垂直な方向に設定されている。したがって、位相差板4を出射した光のうち、第一偏光領域31から出射した光は、偏光板7によって遮断され、液晶パネル6に到達することはできない。
一方、位相差板4の第二偏光領域32を出射した光は、水平方向と垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光となっており、偏光板7を通過することができ、液晶パネル6の第二画像形成領域22に入射する。
【0091】
液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21では、上述のように、右目用画像が形成され、第二画像形成領域22では、左目用画像が形成されている。したがって、位相差板4の第二偏光領域32を出射した光は、液晶ディスプレイ5の第二画像形成領域21に入射し、そこから透過する光は左目用画像の画像光(以下、「左目用画像光」と略称する)となって、観察者の左目41bに到達する。このとき、偏光光源13bから出射し、位相差板4の第一偏光領域31を通過した光は、上述したように、観察者50の左目41bに到達することは無い。
【0092】
こうして、観察者50は、立体画像表示装置1の画像を観察するに際し、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者50は、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0093】
次に、観察者50が、立体画像表示装置1により立体画像を観察するに際し、上述のように、フレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えが行われた場合について説明する。すなわち、制御装置12による制御によって、ある一つのフレームにおいて、液晶ディスプレイ5における第一画像形成領域21に左目用画像が形成され、第二画像形成領域22に右目用画像が形成されるようになった場合について説明する。
【0094】
液晶ディスプレイ5において、フレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えが行われた場合、制御装置12に制御され、バックライト2における使用する偏光光源の列の切り替えが行われる。すなわち、右目用画像と左目用画像の形成領域の入れ替えに際し、光源の切り替えが行われ、光源の第1列に代わって、第2列が使用されるようになる。その結果、第2列を構成する2つの偏光光源14a、14bから直線偏光が射出されるようになる。
【0095】
そして、偏光光源14a、14bから射出される直線偏光の偏光方向は、図1において矢印で示される偏光特性を有し、互いに偏光方向が直交する直線偏光が、フレネルレンズ3や位相差板4に向かって射出される。
【0096】
そして、上述した偏光光源の第1列を使用する場合と同様、偏光光源14aから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者50の右目41aの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4と液晶ディスプレイ5を通過した場合、所定の観察位置に位置する観察者の右目41aに入射する。一方、偏光光源14bから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者の左目41bの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4と液晶ディスプレイ5を通過した場合、所定の観察位置に位置する観察者の左目41bに入射する。
【0097】
このとき、上述のように、位相差板4に入射し、位相差板4の第一偏光領域31から出射する光は光軸が回転されないままの直線偏光となり、第二偏光領域32から出射する光は光軸の90度回転された直線偏光となる。
【0098】
したがって、偏光光源14aから射出した水平方向と水平な偏光方向の直線偏光は、フレネルレンズ3と位相差板4を通過し、液晶ディスプレイ5を照射する。このとき、偏光板7の透過軸は、水平方向と垂直な方向に設定されている。したがって、第一偏光領域31から出射した光は、偏光板7によって遮断され、液晶パネル6に到達することはできない。一方、位相差板4を出射した光のうち、位相差板4の第二偏光領域32を出射した光は、水平方向と垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光となっており、偏光板7を通過することができ、液晶パネル6の第二画像形成領域22に入射する。
【0099】
液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21では、上述のように、左目用画像が形成され、第二画像形成領域22では、右目用画像が形成されている。したがって、位相差板4の第二偏光領域32を出射した光は、液晶ディスプレイ5の第二画像形成領域22に入射し、そこから透過する光は右目用画像光となって、観察者の右目41aに到達する。このとき、偏光光源14aから出射し、位相差板4の第一偏光領域31を通過した光は、上述したように、観察者50の右目41aに到達することは無い。
【0100】
また、偏光光源14bから射出した水平方向と垂直な偏光方向の直線偏光は、フレネルレンズ3と位相差板4を通過し、液晶ディスプレイ5を照射する。このとき、偏光板7の透過軸は、水平方向と垂直な方向に設定されている。したがって、位相差板4を出射した光のうち、第一偏光領域31から出射した光は、偏光板7を通過することができ、液晶パネル6の第一画像形成領域21に入射する。
一方、位相差板4の第二偏光領域32を出射した光は、水平方向と平行な方向に偏光方向を有する直線偏光となっており、偏光板7によって遮断され、液晶パネル6に到達することはできない。
【0101】
液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21では、上述のように、左目用画像が形成され、第二画像形成領域22では、右目用画像が形成されている。したがって、位相差板4の第一偏光領域31を出射した光は、液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21に入射し、そこから透過する光は左目用画像光となって、観察者の左目41bに到達する。このとき、偏光光源14bから出射し、位相差板4の第二偏光領域32を通過した光は、上述したように、観察者50の左目41bに到達することは無い。
【0102】
こうして、観察者50は、立体画像表示装置1の画像を観察するに際し、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者50は、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0103】
以上のように、液晶ディスプレイ5でのフレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えに同期させて、バックライト2のから出射される左目用の光と右目用の光との間で、変更の状態を交互に入れ替えできるように構成する。こうすることにより、液晶ディスプレイ5において、フレーム切り替えに伴い右目用および左目用画像を形成する領域が入れ替わる画像領域の入れ替えが行われたとしても、観察者50は、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。よって、観察者50は、常に、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0104】
したがって、従来の立体画像表示装置においては、右目用および左目用画像を形成する画像領域が固定されていたため、垂直解像度が半減するなど、解像度が低下する問題があったが、本実施の形態の立体画像表示装置1は解像度を全く減じることなく、液晶ディスプレイ5の性能をフルに発揮させたフル解像度での表示が可能となる。
【0105】
また、従来の立体画像表示装置においては、常に左右の目の映像のいずれか一方しか表示されず、立体を認識する場合の時間差が生じてしまう場合があったが、本実施の形態の立体画像表示装置1では、常に左右の絵目の映像が表示されていることから、観視者の疲労感を軽減することができる。また、激しい動きをしている立体画像の場合におきる左右の映像のずれに伴う立体視の違和感を生じさせないという効果もある。
【0106】
次に、第1実施形態の立体画像表示装置1における立体画像の形成とフレーム周波数との関係について説明する。
立体画像表示装置1の液晶ディスプレイ5は、一つのフレーム画像上で右目用画像と左目用画像とを同時に形成する。すなわち、図1に示す液晶ディスプレイ5の液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とにそれぞれ右目用画像と左目用画像とを形成する。
【0107】
そして、フレーム切り替えに毎に、その右目用画像と左目用画像の表示された画像形成領域を交互に入れ替え、右目用画像と左目用画像がそれぞれ互い違いに配置されたフレーム画像を表示することができるように構成されている。しかしながら、フレーム画像の切り替え時に発生する、右目用画像と左目用画像との混在によるクロストークの影響を低減するため、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをするように制御し、上書き画像を少なくとも次の一フレーム期間、液晶ディスプレイ5に表示させることができる。
【0108】
その場合、制御装置12は、バックライト2全体の点滅を同時に制御することができる。すなわち、一つのフレーム画像を表示する期間はバックライト2の上下いずれかの列を点灯させておき、そしてその前後にある、右目用画像と左目用画像の表示された画像形成領域を入れ替えるフレームではバックライト2全体を消灯する、または適当に輝度を低下させるように制御する。こうすることで、右目用画像と左目用画像の残像と画像領域の入れ替えに基づく上述のクロストークを、観察者50に感知されなくすることが可能となる。
【0109】
このように、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをする場合、最適なフレーム周波数の設定を行うことにより、表示画像のスムーズさが失われることは無い。また、バックライト2においては、フレーム毎に行われるバックライトの点滅が観察者50に感知され、そのことに起因するフリッカーを観察者が感じる懸念もなくなる。
【0110】
したがって、液晶ディスプレイ5におけるフレーム周波数を、例えば、フレーム周波数は120Hz以上とすることが好ましい。そうすることにより、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをする場合でも、フレーム周波数60Hzに対応する立体画像の形成が可能となり、画像の切り替え可能な回数も多くなり、また、フリッカーが観察者50によって感じられる懸念はない。さらに、上述のバックライト2の点滅に由来するフリッカーも観察者50に感知されなくなる。したがって、本実施の形態の立体画像表示装置1により提供される表示画像も自然なものとなる。
【0111】
さらに、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、制御装置12によって制御される液晶ディスプレイ5におけるフレーム周波数を240Hzとすることも可能である。その場合、制御装置12によって、フレーム切り替えによって一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、引き続く3回のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをするように制御することができる。すなわち、画像領域の入れ替えの後に続く3フレーム期間、上書き画像を液晶ディスプレイ5に表示させ、立体画像の形成をすることが可能となる。
【0112】
そのような制御を行う場合、最初の1フレーム期間である1/240秒間だけ、バックライト2を消灯させ、その後の上書き画像表示を行う、3フレーム期間である3/240秒間は、バックライト2を点灯させることができる。その結果、上述の120Hzでの駆動で可能とされた、フレーム毎に、液晶ディスプレイ5における右目用画像と左目用画像の表示領域の入れ替えとそのままの上書きとを繰り返すというパターンに比べて、バックライトが消灯している期間を減らすことができる。その結果、立体画像表示装置1における立体表示画像の輝度をより向上することが可能となる。
【0113】
以上のように、液晶ディスプレイ5におけるフレーム周波数を120Hzや240Hzなど向上させることにより、自然で高画質な立体表示画像表示を楽しむことが可能となる。
【0114】
<実施の形態2>
本発明の第2実施形態の立体画像表示装置61は、立体画像の観察に好適な視点(観察位置)が1つ形成されるよう構成される。上述した同様の第1実施形態の立体画像表示装置1の別の例となる。
以下、図面を用いて、本発明の第2実施形態の立体画像表示装置61を説明するが、上述した第1実施形態の立体画像表示装置1と共通する構成要素については、共通する符号を用いて説明する。
【0115】
図5は、本発明の第2実施形態の立体画像表示装置61の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【0116】
図5に示すように、立体画像表示装置61は、バックライト62と、集光レンズであるフレネルレンズ3と、光学手段である位相差板74と、液晶ディスプレイ5とをこの順で備える。そして、バックライト62と液晶ディスプレイ5の駆動をそれぞれ制御する制御装置12を備える。これらは図示されない筐体に収容される。そして、図1に示すように、立体画像を観察する観察者80は液晶ディスプレイ5の前面側から画面上の立体画像を観察する。
【0117】
そして、第2実施形態の立体画像表示装置61は、特に、バックライト62と位相差板74の構造が上述の第1実施形態の立体画像表示装置1と異なっている。フレネルレンズ3、液晶ディスプレイ5および制御装置12など、その他の主要な構成要素については、上述の立体画像表示装置1と同様の構造を有し、同様に機能する。したがって、主要部の構成について、重複する説明は省略する。
【0118】
立体画像表示装置61のバックライト62は、上述の立体画像表示装置1と同様の配列で、4つの偏光光源63a、63b、64a、64bを有する。これらは、いずれも左右いずれかの円偏光を放射する偏光光源である。これら偏光光源は、例えばLEDなど、白色の無偏光を放射する点光源の上に、直線偏光板と1/4波長板とを重ねて設けることにより構成することができる。
【0119】
具体的には、立体画像表示装置61の有する4つの点光源それぞれの上に、例えば、透過軸が水平方向と平行な直線偏光板を配設する。そして、その直線偏光板の上に、遅相軸が水平方向に対して右上45度にある1/4波長板または遅相軸が水平方向に対して左上45度にある1/4波長板を積層して、4つの偏光光源63a、63b、64a、64bを構成することができる。4つの偏光光源は、例えば、図5で矢印を用いて示すように、偏光光源63aが右円偏光を放射し、偏光光源63bが左円偏光を放射し、偏光光源64aが左円偏光を放射し、偏光光源64bが右円偏光を放射するように構成することができる。
【0120】
立体画像表示装置61の光学手段である位相差板74は、図5に示すように、フレネルレンズ3と液晶ディスプレイ5との間に配置される。位相差板74は、第一偏光領域71および第二偏光領域72を有する。位相差板74における第一偏光領域71および第二偏光領域72の位置および大きさは、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応している。
【0121】
立体画像表示装置61では、上述した立体画像表示装置1と同様、液晶パネル6において、画像表示にかかる全水平ラインのうち、複数本の水平ラインが束ねられて便宜上一つの組を構成することができる。組にする水平ラインの数は、例えば、上から垂直方向に順次3本ずつとすることができる。そして、その束ねられた水平ラインの組のそれぞれに対応するよう、同一面積の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが設けられる。その場合、位相差板74における第一偏光領域71および第二偏光領域72の位置および大きさは、図5に示すように、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応するようにされる。例えば、液晶パネル6の束ねられた水平ラインが3本である場合、第一偏光領域71および第二偏光領域72は、その3本の水平ラインの組に対応する位置と大きさとすることができる。
【0122】
したがって、立体画像表示装置61の使用状態のある一つのフレーム画像表示時において、位相板74の第一偏光領域71を透過した光が、偏光板7を通過して、液晶パネル6の第一画像形成領域21に入射する。位相差板74の第二偏光領域72を透過した光が、偏光板7を通過して、第二画像形成領域22に入射する。
【0123】
位相差板74の構造については、第一偏光領域71と第二偏光領域72とが、それぞれ光学軸が直交する1/4波長板から構成される。例えば、第一偏光領域31を、遅相軸が水平方向から右上45度方向である1/4波長板が用いて構成することができる。併せて、第二偏光領域32を、光学軸が水平方向から左上45度方向である1/4波長板を用いて構成することができる。
【0124】
位相差板74をこのような構造にすることで、位相差板74は、入射する光の偏光特性を、第一偏光領域および第二偏光領域の偏光領域毎に制御することができる。すなわち、バックライト62から放射され、位相差板74には左円偏光および右円偏光が入射する。そして、入射する位相差板74の偏光領域に従い、水平方向と平行な直線偏光を出射させるか、またはそれと直交する、水平方向と垂直な直線偏光を出射させるようすることができる。
【0125】
以上、本実施の形態の立体画像表示装置61のバックライト62と位相差板74について主に説明した。他の構成要素については、上述のように、第1実施形態の立体画像表示装置1と同様の構造を有する。次に、図5を用いて、本実施の形態の立体画像表示装置61によって立体画像を形成する方法および観察者80がその立体画像を観察する方法について説明する。
【0126】
観察者80が立体画像表示装置61の立体画像を観察する場合、一つのフレーム画像表示時において、液晶ディスプレイ5には、右目用画像および左目用画像が同時に形成される。すなわち、液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22には、偏光板7、8および液晶パネル6の作用によって、例えば、右目用画像および左目用画像がそれぞれ形成される。
【0127】
液晶ディスプレイ5での右目用画像および左目用画像の形成に対応し、制御装置12に制御され、バックライト62からは、光源の第1列を構成する2つの偏光光源63a、63bから円偏光が射出される。偏光光源63a、63bから射出される円偏光は、中央を境にして、それぞれ図5に示される偏光特性を有する。すなわち、図5で矢印を用いて模式的に示すように、偏光光源63aからは右円偏光が射出され、偏光光源63bからは左円偏光が射出される。
【0128】
そして、図5に示すように、バックライト62の偏光光源63aから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者80の右目81aの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板74と液晶ディスプレイ5を通過した場合、所定の観察位置に位置する観察者の右目81aに入射する。一方、偏光光源63bから射出した光は、フレネルレンズ3の作用によって観察者の左目81bの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板74と液晶ディスプレイ5を通過した場合、所定の観察位置に位置する観察者の左目81bに入射する。
【0129】
このとき、偏光光源63aから射出した右円偏光は、フレネルレンズ3と位相差板74を通過し、水平方向と垂直な直線偏光となって液晶ディスプレイ5を照射する。液晶ディスプレイ5の偏光板7の透過軸は、水平方向と垂直な方向に設定されている。したがって、位相差板74を出射した光のうち、第一偏光領域71から出射した光は、偏光板7を通過することができ、液晶パネル6の第一画像形成領域21に入射する。一方、位相差板74の第二偏光領域72を出射した光は、位相差板74を通過して、水平方向と平行な方向に偏光方向を有する直線偏光となっており、偏光板7によって遮断され、液晶パネル6に到達することはできない。
【0130】
液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21では、上述のように、右目用画像が形成され、第二画像形成領域22では、左目用画像が形成されている。したがって、位相差板74の第一偏光領域71を出射した光は、液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21に入射し、そこから透過する光は右目用画像光となって、観察者の右目81aに到達する。このとき、偏光光源63aから出射し、位相差板74の第二偏光領域32を通過した光は、上述したように、観察者80の右目81aに到達することは無い。
【0131】
また、偏光光源63bから射出した左円偏光は、フレネルレンズ3と位相差板74を通過して、水平方向と平行な直線偏光となって、液晶ディスプレイ5を照射する。このとき、偏光板7の透過軸は、水平方向と垂直な方向に設定されている。したがって、位相差板74を出射した光のうち、第一偏光領域71から出射した光は、偏光板7によって遮断され、液晶パネル6に到達することはできない。
一方、位相差板74の第二偏光領域72を出射した光は、水平方向と垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光となっており、偏光板7を通過することができ、液晶パネル6の第二画像形成領域22に入射する。
【0132】
液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21では、上述のように、右目用画像が形成され、第二画像形成領域22では、左目用画像が形成されている。したがって、位相差板4の第二偏光領域32を出射した光は、液晶ディスプレイ5の第二画像形成領域21に入射し、そこから透過する光は左目用画像光となって、観察者の左目81bに到達する。このとき、偏光光源63bから出射し、位相差板74の第一偏光領域71を通過した光は、上述したように、観察者80の左目81bに到達することは無い。
【0133】
こうして、観察者80は、立体画像表示装置61の画像を観察するに際し、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者80は、これら右目用画像光および左目用画像光を受けて立体画像として認識することができる。
【0134】
次に、観察者80が、立体画像表示装置61により立体画像を観察するに際し、フレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えが行われた場合について説明する。その場合、液晶ディスプレイ5における第一画像形成領域21に左目用画像が形成され、第二画像形成領域22に右目用画像が形成されるようになる。
【0135】
そのような画像領域の切り替えが行われた場合、上述した立体画像表示装置1と同様に、制御装置12により、使用する偏光光源の切り替えが行われる。すなわち、バックライト62の光源の第2列を構成する2つの偏光光源64a、64bが使用されるようになる。そして、偏光光源64aからは左円偏光が放射され、偏光光源64bからは右円偏光が放射される。
【0136】
こうして、バックライト62において、中央を境にして、左右の光源から放射される円偏光の偏光特性が、画像領域の切り替えと同期して、切替前と逆の特性を有するようになる。このようなバックライト62の特性と、フルネルレンズ3と上記構成の位相差板74の作用により、液晶ディスプレイ5の第二画像形成領域22で形成された右目用画像光は観察者80の右目81aにのみ届く。併せて、第一画像形成領域21で形成された左目用画像光は、観察者80の左目81bにのみ届くようになる。したがって、観察者80は、これら右目用画像光および左目用画像光を受けて、立体画像として認識することができる。
【0137】
<実施の形態3>
本発明の第3実施形態の立体画像表示装置101は、立体画像の観察に好適な視点(観察位置)が複数となるよう構成されている。
以下、図面を用いて、本発明の第3実施形態の立体画像表示装置101を説明するが、上述した第1実施形態の立体画像表示装置1と共通する構成要素については、共通する符号を用い、重複する説明を省略する。
【0138】
図6は、本発明の第3実施形態の立体画像表示装置の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【0139】
本発明の第3実施形態の立体画像表示装置101は、複数の観察者などに対応できるよう、複数の視点(観察位置)が提供されるよう構成されている。図6に例示される立体画像表示装置101では、4人の観察者150a〜150dに対応可能な4視点(観察位置)に対応するよう構成されている。そして、観察者が一人で立体画像表示装置101の立体画像を観察する場合においては、左右に複数の視点があることから、左右の複数の位置から立体画像表示装置101の立体画像の観察をすることができる。したがって、左右に広い視野角の立体画像を観察することが可能となる。
【0140】
図6に示すように、立体画像表示装置101では、バックライト102は、観察者150a〜150dから見て立体画像表示装置1の最も奥側に配置される。バックライト102は、それぞれ水平方向に伸びる、上下2つの光源の列(第1列と第2列)から構成されている。上下二つの光源の列は、それぞれ、偏光光源8つずつ(113a〜113h、および114a〜114h)から構成されている。
【0141】
バックライト102を構成する上下二列の光源の列のうち、上側の第1列では、中央を境にして2つの偏光光源、例えば、偏光光源113aと偏光光源113bが左右に配置されて1つの組を構成している。他の偏光光源(113c〜113h)についても、それぞれ、偏光光源113cと偏光光源113dが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成し、偏光光源113eと偏光光源113fが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成し、偏光光源113gと偏光光源113hが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成している。これら4組の偏光光源の組を水平方向に並べて光源の第1列を構成する。2つずつの偏光光源からなる4つの偏光光源の組は、それぞれ上記4つの視点に対応する。すなわち、4つの視点それぞれの観察者150a〜150dの左右の目に入射させる画像を形成するため、4つの偏光光源の組は光源として使用される。
【0142】
同様に、下側の第2列においても、中央を境にして2つの偏光光源、例えば、偏光光源114aと偏光光源114bが左右に配置されて1つの組を構成している。他の偏光光源(114c〜114h)についても、それぞれ、偏光光源114cと偏光光源114dが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成し、偏光光源114eと偏光光源114fが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成し、偏光光源114gと偏光光源114hが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成している。これら、光源の第1列を構成する、2つずつの偏光光源からなる4つの組は、それぞれ上記4つの視点に対応する。すなわち、4つの視点のそれぞれの観察者150a〜150dの左右の目に入射させる画像を形成するため、4つの偏光光源の組は光源として使用される。
【0143】
16個の偏光光源113a〜113h、114a〜114hは、制御装置12により、それぞれ独立に、点灯状態の制御が可能となるようにされており、上下二つの光源の列ごとに点灯状態の制御を行うことができる。
【0144】
偏光光源113a〜113hおよび偏光光源114a〜114hは、ぞれぞれ、上述した偏光光源113a等と同様に、白色の無偏光を放射する光源の前面に偏光板を配置して構成される。
【0145】
偏光光源113a〜113h、および偏光光源114a〜114hは、例えば、白色の無偏光を放射する点光源を用いて構成することができる。具体的には、LEDなどを用いて構成することができる。
【0146】
光源の第1列を構成し、中央を境にして左右に配置される偏光光源の組のそれぞれにおいて、具備する偏光板は、互いに偏光方向が直交する。例えば、偏光光源の1つの組を構成する偏光光源113aの偏光板は、透過軸は水平方向と垂直な方向に設定され、偏光光源113bの偏光板は、透過軸は水平方向に設定される。偏光光源の他の組においても、偏光板の設定状態は同様である。
【0147】
また、光源の第1列と第2列との関係については、上述した第1実施形態である立体画像表示装置1のバックライト2と同様、2つの列の間で上下に隣接する偏光光源の偏光板は、互いに偏光方向が直交するように設定される。したがって、偏光光源の第2列においては、偏光光源114aの有する偏光板の透過軸は水平方向に設定され、それと組をなす偏光光源114bの有する偏光板の透過軸は、水平方向と垂直な方向に設定される。偏光光源の第2列を構成する他の偏光光源の組においても、偏光板の設定状態は同様である。
【0148】
その結果、光源の第1列を点灯させた場合と、第2列を点灯させた場合とを比較すると、上下に隣接する偏光光源間で、出射される光の偏光特性は異なることになる。例えば、第1列を点灯した場合、ある偏光光源から水平方向と垂直な方向の直線偏光が出射された場合、下方側に隣接して、対応する第2列の偏光光源からは、水平方向と平行な方向の直線偏光が出射される。その逆に、第1列を点灯した場合、ある偏光光源から水平方向と平行な方向の直線偏光が出射された場合、下方側に隣接して、対応する第2列の偏光光源からは、水平方向と垂直な方向の直線偏光が出射される。
【0149】
その結果、上下2列の光源の列の間で、例えば、2つの偏光光源113aと偏光光源114aとから射出される直線偏光の偏光方向は、図6において矢印で示される偏光特性を有するようになり、互いに偏光方向が直交する直線偏光が液晶ディスプレイ側に向かって射出される。偏光光源113bと偏光光源114bとからも、互いに偏光方向が直交する直線偏光が液晶ディスプレイ側に向かって射出される。他の偏光光源(113c〜113h、および114c〜114h)についても同様である。
【0150】
尚、立体画像表示装置101において、適当な面積を備えた面光源などを用い、上述した光源の第1列を構成する8つの偏光光源を、1つの白色の無偏光光源から構成することも可能である。すなわち、1つの光源の前面に、適宜、複数の偏光板を配置することにより光源の第1列を構成することも可能である。この時、光源の第1列において、隣接する2枚の偏光板の偏光方向は、互いに直交するように設定される。
【0151】
同様に光源の第2列を構成する8つの偏光光源を、1つの白色の無偏光光源と8枚の偏光板とから構成することも可能である。
【0152】
本発明の第3実施形態である立体画像表示装置101において、観察者150a〜150dが、立体画像を観察する場合、制御装置12に制御され、ある一つのフレーム画像表示時において、液晶ディスプレイ5には、右目用画像および左目用画像が同時に成される。すなわち、液晶ディスプレイ5の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22には、偏光板7、8および液晶パネル6の作用によって、例えば、右目用画像および左目用画像がそれぞれ形成される。
【0153】
液晶ディスプレイ5での右目用画像および左目用画像の形成に対応し、制御装置12に制御されて、バックライト102の、光源の第1列を構成する8つの偏光光源113a〜113hからは、図6に示す偏光方向を有する直線偏光が射出される。そして、図6に示すように、互いに偏光方向が直交する直線偏光が、フレネルレンズ3や位相差板4に向かって射出される。
【0154】
図7は、本発明の第3実施形態の立体画像表示装置の光学系を模式的に説明する平面図である。
【0155】
図7に示すように、バックライト102の偏光光源113aから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150dの右目141gの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した右目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150dの右目141gにのみ入射する。一方、偏光光源113bから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150dの左目141hの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した左目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150dの左目141hにのみ入射する。
【0156】
同様に、バックライト102の偏光光源113cから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150cの右目141eの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した右目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150cの右目141eにのみ入射する。一方、偏光光源113dから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150cの左目141fの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した左目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150cの左目141fにのみ入射する。
【0157】
同様に、バックライト102の偏光光源113eから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150bの右目141cの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した右目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150bの右目141cにのみ入射する。一方、偏光光源113fから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150bの左目141dの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した左目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150bの左目141dにのみ入射する。
【0158】
同様に、バックライト102の偏光光源113gから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150aの右目141aの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した右目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150aの右目141aにのみ入射する。一方、偏光光源113hから射出した光は、上述したフレネルレンズ3の作用によって観察者150aの左目141bの有る領域に向かう光となる。そして、位相差板4の作用により、液晶ディスプレイ5を通過した左目用画像光は、所定の観察位置に位置する観察者150aの左目141bにのみ入射する。
【0159】
こうして、観察者150a〜150dは、立体画像表示装置101の画像を観察するに際し、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者150a〜150dは、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0160】
また、観察者150a〜150dが、立体画像表示装置101により立体画像を観察するに際し、上述の第1実施形態の立体画像表示装置1と同様、フレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えが行われた場合、同様に、バックライト102を構成する偏光光源の切り替え場行われ、偏光光源の第2列が使用されるようになる。そして、上述した偏光光源の第1列を使用する場合と同様、第1実施形態である立体画像表示装置1において説明した位相差板4等の作用により、観察者150a〜150dは、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができる。したがって、観察者150a〜150dは、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0161】
したがって、従来の立体画像表示装置においては、右目用および左目用画像を形成する画像領域が固定されていたため、垂直解像度が半減するなど、解像度が低下する問題があったが、本実施の形態の立体画像表示装置101は解像度を全く減じることなく、液晶ディスプレイ5の性能をフルに発揮させたフル解像度での表示が可能となる。さらに、本実施の形態の立体画像表示装置101は、図5および図6に例示された4つの視点など、複数の視点を提供することができる。したがって、第2実施形態の立体画像表示装置101は、左右方向の視覚を拡大し、多様な方向から立体画像を観察できるという効果を有する。
【0162】
尚、第3実施形態の立体画像表示装置101において、バックライト102の光源の第1列(113a〜113h)または第2列(114a〜114h)を点灯させる場合、全ての偏光光源を点灯させる必要はない。
例えば、立体画像表示装置101に観察者の位置を感知するセンサーを設けておく。そして、観察者が一人である場合、その観察位置(視点)をセンサーによって確認するとともに、視点に対応する偏光光源のみが点灯するよう制御し、一人の観察者の視点に対してのみ最適な立体画像を提供することも可能である。
【0163】
また、第3実施形態の立体画像表示装置101の別の構成例として、例えば、90度の旋光性を有するTN(Twisted Nematic)モードの液晶素子を用いることにより、バックライトを1列の光源から構成し、立体画像表示装置を提供することも可能である。
【0164】
図8は、液晶素子を有するバックライトの構成を模式的に説明する分解斜視図である。
【0165】
図8に示すように、第3実施形態の立体画像表示装置101の別の構成例で用いられるバックライト172は、水平方向に伸びる、1列の光源173a〜173hの列から構成されている。光源の列は、例えば、白色の無偏光を放射する、8個の光源173a〜173hにより構成される。そして、8個の光源173a〜173hの上にはそれぞれ偏光板174が配置される。例えば、水平方向と垂直な方向に偏光方向を有する偏光板174が配置されて、8個の光源173a〜173hは、水平方向と垂直な方向に直線偏光を放射する偏光光源となる。
【0166】
8個の光源173a〜173h上の偏光板174の上には、さらに液晶素子175が配置される。液晶素子は、表面にITOなどの透明電極が形成された一対の透明基板によって、90度ツイストのネマティック液晶を挟持して構成された液晶素子である。この液晶素子は、電圧の印加により基板間の液晶の配向変化が可能である。そして、液晶素子175は、電圧無印加時には90度の旋光性を有し、電圧が印加されるとその旋光性は消失する。
【0167】
したがって、光源173a〜173hと偏光板174と液晶素子175とからなるバックライト172では、液晶素子175への電圧印加の有無により、各光源から放射される光の偏光特性を個別に選択することができる。
【0168】
図9は、バックライトから放射される光の偏光特性を模式的に示す図である。図9(a)は、バックライトから放射される光の偏光特性の一例を模式的に示す図であり、図9(b)は、バックライトから放射される光の偏光特性の別の例を模式的に示す図である。
【0169】
その結果、図9(a)に示すように、バックライト172において、光源173a、173c、173e、173gと偏光板174と液晶素子175とからは、水平方向と垂直な偏光方向の直線偏光を放射することができ、光源173b、173d、173f、173hと偏光板174と液晶素子175とからは、水平方向と水平な偏光方向の直線偏光を放射することができる。
【0170】
また、液晶素子を駆動させ、放射される光の偏光状態を切り替えて、図9(b)に示すように、光源173a、173c、173e、173gと偏光板174と液晶素子175とからは、水平方向と水平な偏光方向の直線偏光を放射することができ、光源173b、173d、173f、173hと偏光板174と液晶素子175とからは、水平方向と垂直な偏光方向の直線偏光を放射することができる。
【0171】
バックライト172は、上記の構成を備えることにより、光源の列において各偏光光源から放射される光の偏向特性を制御することができ、上述の第3実施形態の立体画像表示装置101のバックライト102と同様の機能を水平方向一列の光源の列によって果たすことができる。
したがって、第3実施形態の立体画像表示装置101の別の構成例では、バックライト102の代わりにバックライト172を用い、第3実施形態の立体画像表示装置101と同様に立体画像を形成することができる。
【0172】
尚、第3実施形態の立体画像表示装置101の別の構成例において、バックライト172の光源の列を点灯させる場合、全ての光源173a〜173hを点灯させる必要はない。
例えば、立体画像表示装置に観察者の位置を感知するセンサーを設けておく。そして、観察者が一人である場合、その観察位置(視点)をセンサーによって確認するとともに、視点に対応する光源のみが点灯するよう制御し、液晶素子の制御も行い、一人の観察者の視点に対してのみ最適な立体画像を提供することも可能である。
【0173】
また、図6に示す第3実施形態の立体画像表示装置101のバックライト102では、上側の第1列において、中央を境にして2つの偏光光源113aと偏光光源113bが左右に配置されて1つの組を構成している。他の偏光光源(113c〜113h)についても、それぞれ、偏光光源113cと偏光光源113dが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成し、偏光光源113eと偏光光源113fが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成し、偏光光源113gと偏光光源113hが中央を境にして左右に配置されて1つの組を構成している。
【0174】
それに対し、第3実施形態の立体画像表示装置101の別の構成例においては、対応するように、光源の組を形成する必要はない。例えば、光源173bと光源173cのみを点灯させ、中央を境にして左右に配置された光源の組を構成することも可能である。その場合、具備する液晶素子を制御して、光源173b、173cから出射される光を所望の特性の直線偏光に変換し、立体画像の形成に用いることができる。
【0175】
その結果、立体画像表示装置に観察者の位置を感知するセンサーを設けておき、観察者が左右方向に移動した際に、その観察位置を確認し、その位置に対応して、光源の列の中から最適な左右画像を観察者に提供可能な二つの隣接する光源を選択することができる。そして、選択された光源の組から放射される直線偏光の特性を制御して、観察者に対し、左右の逆の画像を提供すること無く、最適な左目用画像と右目用画像を提供し、立体画像を観察できるようにすることが可能となる。
【0176】
また、第3実施形態の立体画像表示装置101のさらに別の構成例として、バックライト102について、偏光光源113a〜113hおよび偏光光源114a〜114hを、それぞれ、上述した第2実施形態の立体画像表示装置61の偏光光源63a等と同様に、円偏光を放射する偏光光源とすることも可能である。その場合、光源の列の、中央を境にして左右に配置される偏光光源の組のそれぞれにおいて、放射する円偏光の偏光方向が、左円偏光および右円偏光と左右逆になるように構成する。
【0177】
また、光源の第1列と第2列との関係についても、上述した第2実施形態の立体画像表示装置61のバックライト62と同様、2つの列の間で上下に隣接する偏光光源の偏光特性は、左円偏光および右円偏光と左右逆になるように構成する。
【0178】
そして、位相差板には、上述した図5の第2実施形態の立体画像表示装置61の位相差板74と同様、第一偏光領域と第二偏光領域とが、それぞれ光学軸が直交する1/4波長板から構成された位相差板を用いる。こうして、図5に示す立体画像表示装置61と同様、他の構成要素と組み合わせ、第3実施形態の立体画像表示装置101のさらに別の例を構成することが可能である。
【0179】
<実施の形態4>
本発明の第4実施形態の立体画像表示装置201は、立体画像の観察に好適な視点(観察位置)が、左右方向に複数配置されるよう構成されるとともに、上下方向の視野角を拡大するよう構成されている。
第4実施形態の立体画像表示装置201は、上下方向の視角を拡大するよう、バックライト202の構成が異なること以外、上述した第3実施形態の立体画像表示装置101と同様の構造を有する。
【0180】
したがって、図面を用いてバックライト202の構造について説明し、その後、立体画像表示装置201の効果について説明する。そして、上述した第1実施形態の立体画像表示装置1および第3実施形態の立体画像表示装置101と共通する構成要素については、共通する符号を用いるようにし、重複する説明を省略する。
【0181】
図10は、本発明の第4実施形態の立体画像表示装置の有するバックライトを模式的に説明する平面図である。
【0182】
第4実施形態の立体画像表示装置201は、例えば、図10に示されるバックライト202を有する。したがって、上述した第3実施形態の立体画像表示装置101と同様、左右方向の4つ視点(観察位置)に対応するよう構成されている。また、1人の観察者250が、第4実施形態の立体画像表示装置201により立体画像を観察する場合においては、左右に複数の視点があることから、左右の複数の位置から立体画像の観察をすることができ、左右方向に広い視野角が改善された立体画像を観察することが可能となる。
【0183】
また、本発明の第4実施形態の立体画像表示装置201では、液晶ディスプレイ5の液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22は、垂直方向に連続して並べられた複数の水平ライン23からそれぞれ構成されている。位相差板4においても、複数の水平ライン23からなる第一画像形成領域21と第二画像形成領域22に対応するよう、第一偏光領域31および第二偏光領域32が設けられている。したがって、画面の上下方向に広い視角を有する。
【0184】
したがって、本発明の第4実施形態の立体画像表示装置201では、そうした液晶ディスプレイ5での広い視角を利用して、バックライト202は、偏光光源の列が上下2列より多い数の光源の列を有することが可能である。例えば、図10に示すように上下方向に8列の光源の列を有することが可能である。このように、バックライト202において、多数の偏光光源の列を備えることにより、後述するように、立体画像表示装置201においては、上下方向の視野角を拡大することができる。
尚、上下方向に配置される光源の列は上記例の8列に限られず、4列や6列やそれより多い数とすることも可能である。
【0185】
本発明の第4実施形態の立体画像表示装置201では、図6に示す第3の実施形態の立体画像表示装置101と同様、バックライト202は、観察者から見て立体画像表示装置201の最も奥側に配置される。
そして、本発明の第4実施形態の立体画像表示装置201では、図10に示すように、バックライト202が、それぞれ水平方向に伸びる8つの光源の列から構成されている。具体的には、第1列である光源の列211、第2列である列212、第3列である列213、第4列である列214、第5列である列215、第6列である列216、第7列である列217および第8列である列218の8つ列から構成されている。これら光源の列211〜218の構成は、上述した第3の実施形態である立体画像表示装置101のバックライト102の光源の第1列や第2列と同様である。すなわち、バックライト202の光源の列211〜218は、それぞれ8つの偏光光源から構成されている。
【0186】
そして、バックライト202の光源の列である第1列211、第3列213、第5列215および第7列217は、それぞれ、上述の第3実施形態である立体画像表示装置101のバックライト102の光源の第1列と同様の構造を有する。また、バックライト202の光源の列である第2列212、第4列214、第6列216および第8列218は、それぞれ、上述の第3実施形態である立体画像表示装置101のバックライト102の光源の第2列と同様の構造を有する。
【0187】
そして、光源の第1列である列211〜第8列である列218を構成する64個の偏光光源は、それぞれ独立に、点灯状態の制御が可能となるようにされている。したがって、バックライト202においては、光源の列211〜218ごとに点灯状態の制御を行うことができる。
【0188】
以上の構成を有する本発明の第4実施形態の立体画像表示装置201のバックライト202では、上述した第3実施形態の立体画像表示装置101のバックライト102が上下方向に4つ並べられて配置されているのと同様の構成となる。すなわち、バックライト202の光源の第1列である列211と第2列である列212の組が、第3実施形態の立体画像表示装置101のバックライト102と同様に機能する。同様に、バックライト202の光源の第3列である列213と第4列である列214の組、第5列である列215と第6列である列216の組、および第7列である列217と第8列である列218の組が、それぞれ、第3実施形態の立体画像表示装置101のバックライト102と同様に機能する。
【0189】
その場合、バックライト202の光源の第1列である列211、第3列である列213、第5列である列215および第7列である列217が、それぞれ、上述の第3実施形態である立体画像表示装置101のバックライト102の光源の第1列に対応し、同様の機能を果たす。そして、バックライト202の光源の第2列である列212、第4列である列214、第6列である列216および第8列である列218が、それぞれ、上述の第3実施形態である立体画像表示装置101のバックライト102の光源の第2列に対応し、同様の機能を果たす。
【0190】
図11は、本発明の第4実施形態の立体画像表示装置の光学系を模式的に説明する側面図である。
図11に示すように、立体画像表示装置201において、立体画像を観察するのに最適な観察者250の視点の位置は、上下方向については、バックライト202の最上部にある光源の第1列である列211と第2列である列212の組に最適な位置から、最下部にある光源の第7列である列217と第8列である列218の組に最適な位置まで広がることになる。
【0191】
すなわち、図11に示す立体画像表示装置201の上下方向に視点については、バックライト202の最上部にある光源の第1列211と第2列212の組に最適な位置と、光源の第3列213と第4列214の組に最適な位置と、光源の第5列215と第6列216の組に最適な位置と、光源の第7列217と第8列218の組に最適な位置とからなる、4つの視点を有する。尚、上述した第3実施形態の立体画像表示装置101のバックライト102においては、光源の列の組は、第1列と第2列からなる一組である。したがって、立体画像表示装置201の上下方向に視角については、第3実施形態の立体画像表示装置101に比べて広がることになる。
【0192】
以上より、第4実施形態の立体画像表示装置201は、左右方向の視覚拡大に加え、上下方向の視角拡大も可能であり、多様な方向から立体画像を観察できるという効果を有する。
【0193】
尚、第4実施形態の立体画像表示装置201において、バックライト202の光源の第1列である列211、第3列である列213、第5列である列215および第7列である列217を点灯させる場合、全ての列を同時に点灯させる必要はない。同様に、光源の第2列である列212、第4列である列214、第6列である列216および第8列である列218を点灯させる場合、全ての光源の列を点灯させる必要はない。
例えば、立体画像表示装置201に観察者の位置を感知するセンサーを設けておく。そして、観察者が一人である場合、その観察位置(視点)をセンサーによって確認するとともに、視点に対応する偏光光源のみが点灯するよう制御し、一人の観察者の視点に対してのみ最適な立体画像を提供することも可能である。
【0194】
また、第4実施形態の立体画像表示装置201の別の構成例として、バックライト202の各偏光光源を、上述した第2実施形態の立体画像表示装置61の偏光光源63a等と同様に、円偏光を放射する偏光光源とすることも可能である。その場合、8列の光源のそれぞれにおいて、中央を境にして左右に配置される偏光光源の各組を、放射する円偏光の偏光方向が、左円偏光および右円偏光と左右逆になるように構成する。
【0195】
光源の上下に隣接する列同士の関係についても、上述した第2実施形態の立体画像表示装置61のバックライト62と同様とし、2つの列の間で上下に隣接する偏光光源の偏光特性は、左円偏光および右円偏光と左右逆になるように構成する。
【0196】
そして、位相差板には、上述した図5の第2実施形態の立体画像表示装置61の位相差板74と同様、第一偏光領域と第二偏光領域とが、それぞれ光学軸が直交する1/4波長板から構成された位相差板を用いる。こうして、図5に示す立体画像表示装置61と同様、他の構成要素と組み合わせ、第4実施形態の立体画像表示装置201のさらに別の例を構成することが可能である。
【0197】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0198】
1、61、101,201 立体画像表示装置
2、62、102、172、202 バックライト
3 フレネルレンズ
4、74 位相差板
5 液晶ディスプレイ
6 液晶パネル
7、8、17a、17b、18a、18b、174 偏光板
12 制御装置
13a、13b、14a、14b、63a、63b、64a、64b、113a、113b、113c、113d、113e、113f、113g、113h、114a、114b、114c、114d、114e、114f、114g、114h 偏光光源
15a、15b、173a、173b、173c、173d、173e、173f、173g、173h 光源
21 第一画像形成領域
22 第二画像形成領域
23 水平ライン
31、71 第一偏光領域
32、72 第二偏光領域
41a、81a、141a、141c、141e、141g 右目
41b、81b、141b、141d、141f、141h 左目
50、80、150a、150b、150c、150d、250 観察者
175 液晶素子
211、212、213、214、215、216、217、218 光源の列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素を水平方向に配列してなる水平ラインを垂直方向に複数並べて構成された液晶パネルおよび前記液晶パネルを挟持する一対の偏光板を有する液晶ディスプレイと、
偏光を放射する複数の偏光光源を、左右に隣接する前記偏光光源の間で放射光の偏光方向が互いに異なるよう、水平方向に配列してなる偏光光源の列を備えたバックライトとを有し、
前記液晶ディスプレイと前記バックライトとの間に集光レンズと光学手段とをこの順で配置し、
観察者に立体画像を提供する立体画像表示装置であって、
前記バックライトは、前記偏光光源の列を垂直方向に複数列配置するとともに、垂直方向に隣接する前記偏光光源の列の間では、垂直方向に隣接する前記偏光光源間で放射光の偏光方向が互いに異なるように構成されており、
前記集光レンズは、前記バックライトからの光を前記観察者に向けて集光する光にするよう構成されたものであり、
前記液晶ディスプレイは、前記液晶パネルの連設された複数の前記水平ラインからなる第一画像形成領域と第二画像形成領域とを交互に配置して有し、前記第一画像形成領域は右目用画像および左目用画像のいずれか一方の画像を、前記第二画像形成領域は他方の画像をそれぞれ同時に表示するよう構成され、
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域は、
(1)フレーム切り替え毎に右目用画像と左目用画像の入れ替えを行うか、
または、
(2)(1)以外の場合であって、フレームの切り替え時に右目用画像と左目用画像の入れ替えおよび直前のフレームで表示された画像の上書きのいずれか一方を行うよう構成されており、
前記光学手段は、前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域とに対応する位置と大きさで、第一偏光領域と第二偏光領域とが配置され、前記第一偏光領域と前記第二偏光領域とは、いずれか一方が1/2波長板を形成するか、両方が遅相軸が互い45度異なる1/2波長板を形成するか、または両方が遅相軸が互い90度異なる1/4波長板を形成するによう構成されたものであることを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記バックライトは、前記偏光光源の列毎に点灯制御されるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記バックライトは、前記偏光光源毎に点灯制御されるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記バックライトの前記偏光光源の列は、4つ以上の前記偏光光源からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記バックライトは、前記偏光光源の列を、上下方向に4列以上配置して構成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記バックライトは、前記右目用画像と前記左目用画像を入れ替えるタイミングに合わせて、全体の点灯状態が制御されるよう構成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記バックライトの前記偏光光源は、LEDと偏光板とを用いて構成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項8】
前記光学手段の前記第一偏光領域と第二偏光領域との境界の少なくとも一部には、遮光部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項9】
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域とはそれぞれ、前記液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた2本から60本の水平ラインからなる画像形成領域であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項10】
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域とはそれぞれ、前記液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた3本から30本の水平ラインからなる画像形成領域であることを特徴とする請求項9に記載の立体画像表示装置。
【請求項11】
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域とはそれぞれ、前記液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた5本から15本の水平ラインからなる画像形成領域であることを特徴とする請求項9に記載の立体画像表示装置。
【請求項12】
前記液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、120Hz以上の周期で行われることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項13】
前記液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、240Hz以上の周期で行われることを特徴とする請求項12に記載の立体画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−203111(P2012−203111A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66159(P2011−66159)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】